勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    韓国人ジャーナリストで、日本の歴史と現状を細大漏らさず研究しているのは、『朝鮮日報』副編集局長・鮮于鉦(ソンウ・ジョン)氏である。日本特派員を経験し豊かな学殖に裏付けられたコラムは秀逸である。私は、鮮氏の書くコラムにいつも最大の関心を持って読んできたが今回、取り挙げるテーマも素晴らしい。

     

    『朝鮮日報』(3月7日付)は、「外交で滅んだ国の外交行動」と題するコラムを掲載した。筆者は、前記の鮮于鉦氏である。

     

    (1)「日本で征韓論問題が起きたのは1873年のことだ。韓国史の教科書は、日本がこのとき韓国併呑まで目標を定めて武力を通して一直線に押していったかのように記述する。結果は正しいが、内容は違う。征韓論問題は内戦(西南戦争)まで経る中で、武士の旧勢力の退場と外交を重視する新勢力の台頭に帰結した。日本の国際化に強い動力を提供した事件だ。韓国の記述は、日本の新勢力がその後、巨大な国際外交の舞台においてどのような手法で韓国を飲み込んでいったかを教えることができない」

     

    この場面は、NHKの大河ドラマでも描かれている。西郷隆盛は、朝鮮半島の日本人を保護すべく、外交交渉のために朝鮮へ単身でも行くと主張するシーンである。韓国では、西郷を征韓論の頭目と誤解している。このパラグラフは、これを指摘しているのだ。

     


    (2)「日露戦争の初期、フランス紙『ル・プチ・パリジャン』に載った有名な漫評がある。ちっぽけな日本人と体格が3倍くらいあるロシア人がリングで向き合っている。リングの床には北東アジアの地図が描かれている。ロシア人は満州と韓半島北部、日本選手は韓半島南部を踏んでいる。観客席の前列には大柄な英国人、次の列にはフランス人とドイツ人が座っている。さらにその次の列には米国人が立っている。競技場に入ることもできず、テントの上からのぞき込む中国人の様子が哀れだ」

     

    日本はロシアと対決するとき、外交戦術で英国、フランス、ドイツ、米国を味方に引入れていたことを指摘している。

     

    (3)「日本が英国と同盟を結んだのは1902年だ。実権を握っていた井上馨は「拾い物」だと言った。日本には、地球の反対側でチョウが羽ばたくのを鋭く読み取る卓越した外交官(注:井上馨)がいた。国際外交の力学変化を神業のごとくつかみ取り、敏速に反応した。日英同盟でロシアを孤立させた後、戦争に突入した。日本海軍は韓国の鎮海基地でロシアを待ち構えた。作家の司馬遼太郎の著書『街道をゆく』には、李舜臣(イ・スンシン)鎮魂祭を開く日本海軍の様子が出てくる。戦場へ向かう軍人らが李舜臣に向かって礼を尽くしたという記録もある。かつての敵将に対し礼儀を備えることで、戦勝を祈願した。征韓論問題もモロッコ危機も知らない韓国は、李舜臣の価値すら日本よりも理解していなかったのだ」

     

    日本は、日露戦争で欧米への外交的根回しを十分に行なっていた。太平洋戦争では、全く異なる行動に出た。軍部が外交権を支配したからだ。日本でも外交の巧拙が、こういう差を生むことを立証している。

     


    (4)「外交史で見れば、韓国は1907年のハーグ会談(第2回万国平和会議)まで息も絶え絶えだった。韓国史の教科書は、ハーグ密使事件を高宗の反日抵抗と独立外交の出発点と見なしている。ロシアは韓国独立を議題に上げ、日本を圧迫しようとした。ロシアは韓国カードを途中で諦めた。ロシア革命で、再び戦争を起こす余力を失ったからだ。韓国は撤回の事実も知らなかった。ロシアは英国と協商体制を構築し、日本とは満州の利権を分割する協約を結んだ。英国とロシアが繰り広げた「グレートゲーム」は、英仏ロ日の4カ国協商体制という形でけりがついた。韓国の味方は消えた。韓国は外交で滅んだのだ

     

    朝鮮は、ロシア一ヶ国に外交の主眼を置いていた。これが失敗して、日本の支配に道を開く結果になった。そのロシアとも、十分な意思疎通を行なっていなかったのである。下線のように、朝鮮の味方が消えたのである。

     

    (5)「今、北東アジアのリング上では中国選手と日本選手が向かい合っている。米国のバイデン大統領の視線で見れば、「専制政治」対「民主主義同盟」の対決だ。最前列に米国人が、その後ろにはオーストラリア人とインド人が座っている。英国人がドアを開けて入ってこようとしている。韓国はどこにいるのだろうか? 重要なのは、米中が繰り広げる「グレートゲーム」に日本が加わり、中心的な役割を果たしているという事実だ。さらに重要なのは、韓国は日本が何をしているのか知らないだけでなく、知る価値も感じていないということだ」

     

    現在の国際情勢に目をやれば、北東アジアで日本と中国が向き合っている。日本の味方には、米国、豪州、印度がおり、新たに英国が加わろうとしている。韓国の姿はどこにも見えないのだ。韓国は、こうした情勢変化に無頓着である。

     

    (6)「安倍政権の韓国政策には逆説的な部分があった。政権8年の間、終始関係が良くなかった韓国に外務省のエリートを集中的に配置したという点だ。親韓・嫌韓とは別に、自国の利益を重視する有能な外交官という印象を受けた。駐米日本大使をはじめ、この外交官らが各所で何か新しい枠組みをつくっていることだろう。気になりもするし、やや怖くもある」

     

    安倍首相は、韓国への交渉でエリート外交官を当てた。これは、日本でも知られている事実である。外交交渉で日韓の障害を取り除く努力をしたのである。文政権は、朴政権で対日交渉に加わった外交官をすべて「追放」した。対日交渉では「素人」を当てたのである。これでは、まとまる話もまとまらない。文政権は、李朝の外交的失敗をそのまま繰返している。

     

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    韓国、「衝撃」日米外務・防衛4者会談が3月中旬に東京で開催「コリア置き去り

     

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    自動車は、いよいよEV(電気自動車)主流時代へ移行する段階へ来た。部品点数が、ガソリン車の3分の1で済むことが、新規参入のハードルを引下げている。これまで、自動車と無縁の企業が、相次いでEV参入意向を示している。

     

    ソニーは昨年1月、米国ラスベガスで開催されたIT家電ショー「CES(セス)2020」で、電気自動車「VISION-S」を発表した。ソニーでは、これまでの10年間、生活を根本から変えたのはスマートフォンであった。今後は、クルマのEV化が新たな移動手段を生み出すきっかけになるという見通しを固めている。

     

    自動車評論家によれば、「VISION-S」は、ソニーならではのアイデアが随所に生かされているという。例えば、ソニーはビデオカメラ等で培ったイメージセンサーで世界を席巻しており、その勢いはスマートフォンから自動車用デバイスにも及んでいると指摘している。

     


    ソニーは今年1月11日、オーストリアで公道走行テストを開始したと発表した。いよいよ、「ソニーEV」が現実になろうとしている。ところが、自動車企業でないソニーは、どうやって組立てを行なうのか。試作車をつくった
    オーストリアのマグナ・シュタイヤーが、「手の内」を明らかにした。

     

    『日本経済新聞 電子版』(3月5日付)は、「ソニーも頼る車体生産のマグナ EV分業のモデルに」と題する記事を掲載した。

     

    米アップルが電気自動車(EV)参入を検討し、車業界で開発や生産を分担する「水平分業」の機運が高まる。注目されるのが車の開発・生産受託の世界大手でソニーのEVも試作するマグナ・シュタイヤー(オーストリア)。フランク・クライン社長は日本経済新聞の取材に「マグナは車業界のフォックスコン(台湾・鴻海=ホンハイ=精密工業傘下)になりつつある」と述べた。

     

    マグナはこれまでに10社、30モデル、累計370万台の車を生産した。独メルセデス・ベンツの高級多目的スポーツ車(SUV)「Gクラス」、独BMWのセダン「5シリーズ」、トヨタ自動車のスポーツ車「GRスープラ」などだ。ソニーのコンセプトEV「VISION-S(ビジョンS)」の製造を受託し、最近は一部報道で、アップルが参入を検討しているEVの提携先の候補として取り沙汰された。


    (1)「マグナの生産拠点はオーストリアのグラーツを中心に、スロベニア、中国などにある。年間35万~40万台の車を生産できる。これまでは完成車メーカーの高級車など、生産台数の少ないモデルを中心に開発や生産を受託してきた。脱炭素で世界的にEVの需要が高まる見通しのなか、自動車以外の業種による参入が増える可能性があり、マグナはその受け皿になりうる」

     

    マグナは、年間35万~40万台の生産実績を持っている。歴とした自動車メーカーである。

     

    (2)「フランク・クライン社長は、「マグナは車業界で既にフォックスコンのような存在になっていると思う。自動車生産は多くの経験が必要だ。車は時速200キロメートル以上で高速道路を走行できなければならず、マグナが手がける受託生産に参入するのは難しいだろう」と指摘する」

     

    マグナは、社名こそ表面に現れないが、車づくりのノウハウは十分に身につけている。台湾のアイフォーン受託企業の鴻海が、EVへ進出するといっても単独での進出は不可能である。中国の自動車企業と提携関係を結んでいる。

     


    (3)「クライン社長は、また「ソニーとの関係は長く、2年ほど前から開発に取り組んできた。ソニーのチームとしての速さに驚かされた。オーストリアでは完全に機能する試作車を走らせることができた。ソニーが自動車産業に参入するかどうかはソニー自身が決めることだが、(ビジョンSは)突出した品質だと思う」と付け加える」

     

    ソニーの担当役員が、トヨタのGRスープラも生産するマグナの生産現場を見て気づいたのは「EVならソニーも新たなモビリティとしては関われるかもしれない」ということだった。それが2018年初頭のこと。そこからVISION-Sの開発はスタートした。

     

    開発にあたって、全体のデザインをソニーが行い、そのデザインに基づいてマグナが完成車までを担当した。マグナには、多くのサプライヤーをまとめ上げるノウハウがあり、わずか2年で実走行できるレベルにこぎ着けられた。マグナの協力があったのは間違いない。ITジャーナリストの会田肇氏が、以上のように指摘している。

     

    下線のように、マグナはソニーEVの優秀性に太鼓判を押している。すでに走行テストに入っていることは、販売を目標に掲げた証拠であろう。ソニーのイメージで売り出すEVが、世界の市場でどのような反応を呼び起こすか興味深い。

     

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    韓国は、在韓米軍の兵員2万8500人が削減されることに神経を使っている。その一方では、在韓米軍の握る統帥権を韓国軍に返還するように求める矛楯した行動を取っている。韓国軍が、統帥権を欲しいというのならば、在韓米軍の兵員数が減っても関係がないはずだ。

     

    韓国は、在韓米軍兵員減少が韓国の重要性の低下と見ている。ならば、米韓同盟をより緊密化する意味で、「インド太平洋戦略」のクアッド(日米豪印)に加われば、在韓米軍兵員減少を気にしなくても済むはずである。だが、こういう複眼的な発想法を受入れないのである。

     


    『朝鮮日報』(3月6日付)は、「在韓米軍2万8500人「魔法の数ではない」米国防次官指名者が削減の可能性を示唆」と題する記事を掲載した。

     

    米国防総省政策担当次官に指名された人物が米議会の公聴会で在韓米軍の兵力について「魔法の数ではない」と証言した。中国への圧力戦略など米国の戦略的選択によっては現在2万8500人レベルの在韓米軍はいつでも削減可能という意味だ。

     

    (1)「米国防総省政策担当次官に指名されたコリン・カール氏は3月4日(現地時間)、米議会上院軍事委員会の承認公聴会で、「韓半島の米軍態勢に調整が必要か」との質問に「韓国に対する米国の安全保障の意思は揺るがず、相互防衛条約と一致する」としながらも「(韓国防衛に対する)約束は兵力の『魔法の数』や特定の力量維持に縛られない」との考えを示した」

     

    在韓米軍は、その配置が流動的という意味である。世界全体の米軍配置計画に基づいて行なわれるのは当然であろう。米韓同盟が現に存在している以上、米韓関係に隙間がなければ、取り立てて懸念する必要はあるまい。

     

    だが、米韓同盟は一枚岩でない。米国の要請する「インド太平洋戦略」参加を留保しているからだ。韓国は、自分勝手な振舞で米国の動きに一喜一憂するのは本末転倒である。

     

    (2)「その一方で、「バイデン大統領は先日、全世界の米軍配置態勢を検討すると発表したが、私は(在韓米軍配置に関する)結果を勝手に予測しない」とも伝えた。バイデン政権発足後、ドイツ駐留米軍の撤収計画中断が決まったため、在韓米軍にも大きな変化はないとの見方も出ているが、実際は全面的な米軍再配置の検討作業は今も行われており、在韓米軍もその対象になっていることをカール氏が認めた形だ」

     

    韓国は、在韓米軍が米軍の世界配置の一環であることを忘れてはならない。

     

    (3)「トランプ前大統領の時に、米国は米軍削減を交渉カードとし、同盟国に防衛費分担金の引き上げを要求した。しかし在韓米軍再配置カードは実際のところトランプ前大統領の意向とは関係なく、米国防総省内部で引き続き検討されてきたという。米中の覇権争いが激しくなる中、米軍を韓国や日本など東北アジアに集中配置するのは戦力運用にプラスにならないことがその理由だ」

     

    今後の米中対立の長期化を前提にすれば、在韓米軍の兵員数が減らされることは、十分にあり得る。そういう事態になっても韓国が安心できる条件は、米韓が一体化することだろう。その努力を欠いてはダメなのだ。

     

    (4)「実際にカール氏はこの日、中国の脅威に関する質問に「有事の際、中国が米国と同盟国に勝てないようにしなければならない」「インド・太平洋地域における米軍配置態勢はより幅広い地域に分散すべきだ」などの考えを示した。現在米軍は東南アジアなどで新たな米軍基地となる場所を物色しているという」

     

    米軍は、小部隊ごとに島嶼で陣地を構える分散主義に変更している。中国軍の奇襲攻撃に備える戦術である。米軍が、対中国戦でここまで神経を配っているのだ。韓国が、われ関せずでいられないのは当然であろう。韓国は、自ら進んで「インド太平洋戦略」へ参加するくらいの気配りをしなければ、米韓同盟に軋みを生じよう。

     

    (5)「カール氏はこの日、「在韓米軍は韓国防衛に集中すべきか、あるいは他の地域の問題にも活用されるべきか」との質問に「我が軍が最適化され、全世界で浮上する新たな脅威に対して効果的に対処するためには、作戦の柔軟性を必ず維持しなければならない」と回答した。在韓米軍を東北アジアやそれ以外の国際紛争地域に投入するための準備が必要という意味だ」

     

    米軍の最大の関心事は、インド太平洋戦略である。朝鮮半島防衛ではない。ただ、米韓同盟という誼を考えれば、米国へ協力する姿勢が、朝鮮半島の安全保障に寄与することくらい、外交の常識だ。それに気付かずに「我が儘」な行動を取れば、いずれ米国が冷たい対応になることも覚悟すべきであろう。

     

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    中国経済は、第14次5カ年経済計画(21~25年)の経済成長率目標を掲示することを中止した。米中対立の長期化という従来にない事態を迎えて、余にも不確定要素が多く、予測できないのであろう。こういう事態に陥っているにもかかわらず、2028年の中国GDPが米国を上回るという予測が出ている。いったい、何を根拠にして予測値を弾き出したのか、大恥をかかされた格好である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(3月6日付)は、「中国、国有企業重視一段と 民営50社を傘下に 米制裁対抗」と題する記事を掲載した。

     

    中国が国有企業を重視する姿勢を強めている。5日開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)での政府活動報告で「国有企業を発展させて民営企業を導く」との方針を示した。2020年に国有企業や政府系ファンドが民営上場企業50社近くの経営権を獲得し、存在感を強める。ただ中国経済をけん引してきた民営企業の活力が損なわれれば経済成長を下押しする恐れもある。

     


    (1)「従来の政府活動報告では国有企業の改革を進める方針を示してきたが、今年の同報告には「国有企業を強く優秀に大きくする」とも盛り込んだ。米国との対立継続をにらみ「国家経済安全保障を強化する」とも記載し、国有企業を活用する狙いが透ける。実際、国有企業が民営企業を実質的に傘下に収める動きが加速している。中国メディアによると、20年に国有企業や政府系ファンドから出資を受けて経営権を譲渡した中国の上場企業は48社にのぼる。なかでもIT業界など習近平指導部が重視するハイテク分野が目立つ」

     

    国有企業改革論が後退して、「国有企業を強く優秀に大きくする」となった。戦時中の日本では、強制的に企業集約が行なわれたが、そういう暗い時代を想起させるほどだ。中国は、準戦時体制に変わった。

     

    民営のIT企業が、国有企業傘下に入っているという。米国による半導体とソフトの禁輸措置が響いているのであろう。この先、中国のIT産業には停滞期が訪れる感じだ。

     

    (2)「中国は民営企業を国有企業の傘下入りさせるとともに、国有企業自体も再編・統合して強化し始めた。背景には長引く米国との対立がある。中国の国有IT(情報技術)大手、中国電子科技集団(中国電科)は2月、同業の国有大手、中国普天信息産業集団(中国普天)の吸収統合に乗り出した。売上高の合計は5.6兆円に達する。中国電科は「軍工集団」と呼ばれる軍系大手の一角で、傘下に監視カメラ世界最大手、杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)を持つ。中国電科は米国の制裁対象で、規模拡大で制裁への抵抗力を高める狙いとの見方もある」

     

    国有企業同士の再編合併が行なわれる。これも米国の禁輸措置の影響が及んでいる。

     

    (3)「国有企業を統括する国務院国有資産監督管理委員会の郝鵬主任は2月の記者会見で「国有企業は中国共産党が政権を握る国で重要な支柱だ」としたうえで、今年からの5カ年計画で「競争力強化のために重点業界の再編統合を進める」と強調したさらに米国から経済制裁で攻められている半導体などの「弱点」の技術について、郝主任は「国有大手は新たな5カ年計画で規模拡大を進め、研究開発への投入を加速し、カギとなる中核技術の開発に打ち勝つ」と意気込む」

     

    今後5年間、重点業界の再編統合を行なうという。まさに、米国の禁輸措置の影響である。中国経済の脆弱性がはっきりと現れている。これでは、とても米国とは対抗不可能である。

     


    (4)「一方で民営企業への統制は強まる。政府活動報告では、上場延期に追い込まれたアリババ傘下の金融会社アント・グループを念頭に「独占禁止への取り組みを強化し、無秩序な資本の拡大を防ぎ、公平な競争ができる市場環境を守る」と盛り込み、民営ネット大手をけん制した。国有企業を優遇して民営企業が圧迫される「国進民退」が進む。ただ外資系投資会社の幹部は、「中国経済の活力だった民営企業が元気をなくせば、今後の成長に悪影響が出る可能性を否定できない」と分析する」

     

    民営企業の活力を落とすような政策は、中国経済の成長率にはね返る。だが、国有企業中心主義を打ち出した以上、引っ込みがつかないのであろう。矛楯した政策に落込んでいる。

     


    (5)「中国経済で民営企業の存在感は高まってきた。中国の税収に占める民営企業の比率は15年の5割から6割に上昇した。中華全国工商業聯合会によると、民営企業は雇用の8割以上、国内総生産の6割以上を占める。国家統計局が一定規模以上の工業企業を対象に実施した調査でも民営企業の利潤総額は2兆元(約33兆円)で、国有企業の1兆4000億元を上回った。民営企業が萎縮すれば技術革新にも影響しかねない」

     

    中国経済に占める民営企業の比率は、次のように高いウエイトを占める

    1)税収に占める比率は6

    2)雇用に占める比率は8割以上

    3)GDPに占める比率は6割以上

     

    これだけ高い比率を占める民営企業が、「国進民退」という国営企業中心主義によって粗末に扱われると、中国経済は落勢を強めるであろう。

     

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    米中対立の長期化に伴い、米国バイデン政権は外交・経済における対中対抗策を練っているが、軍事面での対抗策も樹立した。その内容は、次のようなものである。

     

    米政府と議会が、インド太平洋地域で中国への抑止力を強化するため、2022会計年度(21年10月~22年9月)から6年間で273億ドル(約2.9兆円)の予算を投じる案を検討するというもの。沖縄からフィリピンを結ぶ第1列島線に沿って米軍の対中ミサイル網を築く。台湾や南シナ海の有事を想定している。『日本経済新聞』(3月5日付)が報じた。

     

    前記の対中ミサイル網の設置場所には、日本や韓国が想定される。中国は、すでに日韓へ照準を定めたミサイル網を設置済みである。米国が、これに対抗するのは当然であるとしても、韓国は厄介な問題を抱えている。

     


    韓国文政権は2017年、中国へ「3不」を約束する文書を手渡したとされている。3不とは、次のような内容である。

    1)米国のミサイル網への参加しない

    2)THAAD(超高高度ミサイル)追加配備しない

    3)日米韓軍事同盟を行わない

    いずれも国家安全保障に関わる重大内容である。自衛権は、国家固有の権利だ。文政権は、それを不用意にも放棄も同然の約束をしたのである。前後の見境のない、幼稚な政権と揶揄されている。

     

    中国が、韓国へ制裁すれば半導体輸出を止めると応酬すれば良いだろう。中国の最大に泣き所は、半導体で自給体制が取れない点にある。今度は、韓国が強気で対抗する番である。中国の脅しを恐れることはない。韓国は、自国の「武器」に気付くべきなのだ。

     


    『朝鮮日報』(3月6日付)は、「対中軍事圧迫に乗り出した米、中国に『3不』約束した韓国にブーメラン刺さるか」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米国が推進している対中ミサイル網は、アジア・太平洋地域で米国の海洋主導権をけん制するための中国の戦略である「接近阻止・領域拒否(A2AD)」に対応する性格が強い。中国は1980年代から、太平洋上の島と島を結ぶ「列島線」を引いて段階的に米海軍などの活動領域を狭めようとする戦略を進めてきた。その第1段階である第1列島線は沖縄-フィリピン-マラッカ海峡を、第2列島線はグアム-サイパン-パプアニューギニア近海を連結するラインだ。中国は2020年代初頭までに第2列島線までを事実上「自分たちの庭」にしようと、努力を続けてきた」。

     

    中国は、勝手に防衛戦を引いている。1列島線は、沖縄-フィリピン-マラッカ海峡。第2列島線は、グアム-サイパン-パプアニューギニア近海を連結するラインをマジノ線にしている。中国のミサイル網は、これに添って設置されている。

     

    となれば、米国がこれに対抗するミサイル網を設置するのは当然のことだ。米中のミサイル網が対等になれば、中国は事実上、ミサイルを発射できないという「軍事均衡」が生まれる。核を保持しながら使えないのは、核報復を受けるリスクがあるからだ。ミサイル網もこれと同じ理屈である。

     

    (2)「米国は、第2列島線までの中国進出は受け入れられないため、沖縄・フィリピンなど第1列島線に沿って中国に対する精密攻撃ネットワークを構築しようというのだ。海軍と空軍を中心として中国に対応する従来の戦略を修正し、地上発射ミサイルなどに重点を置いているといわれる」

     

    米国は、地上発射ミサイルなどに重点を置いて対中防衛線を固める。海軍や空軍を中心として防衛するよりも効率的であるからだ。次第に、「ボタン戦争」の様相を呈してきた。

     

    (3)「対中封鎖のための米国の代表的な新型地上発射ミサイルとしては、中距離巡航・弾道ミサイルなどがある。中距離新型巡航・弾道ミサイルは、2019年に米国が中距離核戦力(INF)全廃条約から脱退した直後に試射を行うなど、開発に拍車をかけている。射程は1000キロ以上で、沖縄やフィリピンなどから中国本土沿岸部を攻撃できる

     

    下線のように射程1000キロ以上で、沖縄やフィリピンがその適地とされている。一見、ミサイル基地になると危険という意識は高まるが、報復攻撃という現代戦の立場から言えばそうではない。「無力」が一番危険という理屈になる。中国は、すでに日本や韓国へミサイル発射準備を終えているのだ。

     


    (4)「米国の対中圧迫は、次第により具体的かつ強硬になりつつある。トニー・ブリンケン国務長官は「中国は21世紀最大の地政学上の宿題」と語り、「用いうる全ての手段の動員」も公言した。こうした流れの中で、中国を直接狙うミサイル網というカードまで本格的に切り出しているのだ。バイデン政権が「同盟と友邦の協力」を強調しているだけあって、北東アジアの中心的パートナーである韓日に対する賛同要求は予定されているも同然だ」

     

    日韓が、米国の同盟国である以上、ミサイル基地として防衛することは当然であろう。戦争は、相手が弱いと誤解したときに引き起される。完璧な防衛ラインを引いていれば、誤解してミサイルを撃ち込まれることはないのだ。

     

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