勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    日常的に韓国を観察して気付くのは、極めて単純な国民性であることだ。単眼であって、複眼的な構想力を持たないのである。文大統領は、韓国社会のこの単純さを熟知しており、選挙戦に利用して勝利を得てきた。自らの大統領選と昨年4月の総選挙がそれだ。

     

    文氏は、どちらの選挙でも「積弊排斥」「公正の実現」である。いずれも、植民地時代の日本をヤリ玉に上げており、今こそ朝鮮民族の公正を実現すべきだという論法である。これは、韓国人の魂を奮い立たせるに十分な迫力を持つ。だが、過去の日本を批判して何が戻ってくるのか。日本は反発を強めるだけである。韓国の日本批判は、叫んでみても虚しいだけであろう。

     

    単眼発想の「公正論」でなく、複眼発想の「平等論」が必要であることだ。日韓関係を例にとれば、日本批判からは何も生まれない。日本の反発を呼ぶだけである。複眼発想になれば、植民地時代の朝鮮近代化がどのように進んだか。それを冷静に分析すれば、現在の日本への理解も深まるに違いない。協力の道も開けるだろう。

     


    韓国の大学には「日本学科」が多く設置されている。そこでは、まさか「反日のやり方」を教えているはずがない。相互文化の交流論による成果であろう。こういう学問成果を無視するのが韓国政治である。次に取り上げるコラムは、日本問題を直接扱ってはいないが、韓国社会の単純さを厳しく指摘している。

     

    『ハンギョレ新聞』(9月21日付)は、「『正のわな』にはまった韓国社会」と題するコラムを掲載した。筆者は、キム・ヌリ韓国中央大学独語独文学科教授である。

     

    (1)「大統領選の候補がみな公正を最重要公約に掲げる現象は実に奇異だ。考えてみよう。果たして公正が実現すれば、韓国社会は良い社会になるのか。世界で最も多くの人が自殺し、世界で最も多くの労働者が仕事で死に、世界で最も多くの子どもたちがうつ病にかかっており、世界で最も子どもを産まないこのヘル朝鮮が幸せの国に変わるのか。社会集団間の対立を意味する「文化戦争」が世界で最も深刻な国(イプソスとキングス・カレッジの共同調査、2021)が平和の国に変わるのか」

     

    韓国では、自らの道徳性の高さを自慢して日本を批判する。だが、現実の犯罪発生率(人口比)は、韓国が日本をはるかに上回っている。韓国人が、こういう日本の低い犯罪発生率を認識すれば、決して韓国人の道徳の高さを自慢できるはずがない。韓国人の思い込みと現実にはこれだけの差があるのだ。公正論を叫びながら、不平等を認識しない点は、実に良く似ているのだ。

     


    (2)「国民の苦しみと不幸が急速に極端へと向かっているにもかかわらず、大統領になろうと名乗りをあげた人々の現実認識はあまりにもおめでたく、原因診断はあまりにも安易だ。不公正という反則を正したからといって、この国が良くなろうか。韓国社会の根本問題は不公正ではなく不平等だ。これほど不平等な国はどこにもない。長きにわたって経済的不平等の代名詞だったメキシコや米国をも追い越して久しい

     

    下線部分は、正しい指摘である。韓国では不公正といえば、不平等の実態を覆い隠してしまう力がある。不公正=不道徳という認識があるのだろう。韓国朱子学では、道徳性が最も重視されている。朝鮮李朝の置き土産である儒教が、韓国国民の思考パターンを決めているのだろう。

     

    不平等は、現実問題と関わってくる。韓国では、不公正が不道徳とみなされて、不平等よりも「上位概念」になっているから、不平等の解決に真剣にならないのだ。ここが、韓国社会の持つ一大欠陥である。日韓併合も不公正概念として取り上げる。それゆえ、日韓併合によって実現した平等性は、平然と無視している。邪悪な結果として、取り合わないのである。つまり、韓国朱子学では実証概念が成立せず、最初から「善悪」の二分法で分けられている。

     


    (3)「我々の生活世界も不平等が蔓延している。大企業と中小企業、正規労働者と非正規労働者、首都圏と地方との不平等と差別は、すでに危険水位を越えている。学閥、性別による不平等も想像を絶する。にもかかわらず、これを解決しようとする政治家は見当たらない。本当におかしな国ではないか。このような不平等な国で「公正」ばかりを叫ぶというのは、どういうことを意味するのか。公正になれば自然に平等になるのか。公正の理念が実現されれば、韓国社会は「不公正な不平等社会」から「公正な不平等社会」へと進化するだろう。しかし公正な不平等社会は、ともすると不平等をさらに正当化し、合理化する社会へと堕落しうる」

     

    下線部分は、韓国の抱える「断層」である。大企業は、中小企業を足場(食い物)にして成長している。この結果、大きな賃金格差が生まれている。大企業労組の組合員は、それを不平等と思わないのだ。労働者の当然の権利と見ているから、公正と判断している。「同じ労働者」という連帯感が希薄な結果であろう。

     


    韓国には、公正な市場競争が疎外されている。その結果、満足すべき転職市場が育たずにいる。終身雇用と年功賃金を頑なに守ろうとする大企業労組のエゴである。公正が、エゴに利用されている。ここに、韓国社会の深刻な「連帯感喪失」を生み出す背景がある。

     

    (4)「今回の大統領選挙は、世界最悪の不平等国家を改革する選挙にならなければならない。しかし、選挙戦のどこにもこのような問題意識は見られない。韓国社会は今、「公正のわな」にはまっている。大統領から与党候補から野党候補に至るまで、みな同じだ。不平等は言わず、公正を訴えてばかりだ。公正は韓国社会では正義のわなとなった。深刻に傾いた運動場で「公正」ばかりを叫ぶのは、不平等を正当化するのと同じだ。公正は、厳格な視点から見れば社会的な既得権を持つ者の論理だ。不平等や差別が支配する社会で叫ぶべきなのは手続き上の公正ではなく、社会的正義だ

     

    下線部は、痛烈な既得権益側への批判である。既得権益は、自らの行動を公正として認識している。大企業労組員の得ている経済的利益は、中小企業・零細企業の労働者が得べかりし経済的利益を横取りしている集団である。それを文政権が容認し強化しているから事態は悪化するばかりである。

     

    反日運動は、韓国人による日本企業への就職機会を奪っている。就職先を選ぶのは、「職業選択の自由」で基本的人権の一つである。韓国の過激集団(与党支持派)は、国民の平等な権利を奪っていることに気付くべきだ。反日には、犯罪的側面が含まれている。

     

     

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    中国政府が今月16日、TPP(環太平洋経済連携協定)参加の正式申請を行った。台湾政権もこれを受けて、正式申請を発表した。中台が、TPP加盟をめぐって競合する形だが、TPP精神からみれば、台湾有利と言えよう。

     

    こうした外交関係の複雑さを反映し、あえて台湾もTPPへ中国と同時申入れになったと見られる。台湾の場合、2017年当時から、TPP加盟国と下打ち合わせをする用意周到ぶりを見せてきた。中国の急造な申請とは状況が異なる。その点で、台湾が数段も中国より有利な立場にある。

     


    『日本経済新聞 電子版』(9月22日付)は、「台湾、TPPに加盟申請 中国の反発必至」と題する記事を掲載した。

     

    台湾当局がTPPへの加盟を22日に正式に申請したことが分かった。23日に当局者が詳細を発表する。すでに事務局の役割を担うニュージーランド政府に申請書類を提出し、すべての加盟国に参加への支持を要請した。

     

    (1)「台湾の行政院(内閣)が22日夜、明らかにした。TPPを巡っては台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)政権と対立を深める中国が16日に加盟申請したと発表したばかり。TPPには現在、日本など11カ国が加盟しており、英国も2月に加盟を申請している。参加には加盟国すべての同意が必要となる。台湾は中国が主導する日中韓や東南アジア諸国が加盟する地域的な包括的経済連携(RCEP)には加盟せず、TPP加盟と米国との自由貿易協定(FTA)締結を目指してきた。台湾はTPP加盟国のうち、ニュージーランドとシンガポールの2カ国とすでにFTAを結んでいる。蔡政権はこれまで非公式にTPPへの加盟希望を関係国に伝えてきた」

     

    台湾政府は、TPP加盟国11ヶ国と事前の下交渉を済ませている。その点で、中国のようにスタートラインに立ったばかりの国と状況は異なる。

     


    (2)「台湾のTPP加盟に向けたハードルは高い。中国大陸と台湾は1つの国に属するという「一つの中国」を唱える中国の習近平政権は、台湾の加盟阻止に向けた関係国への外交的な働きかけを強めるとみられる。中国共産党系メディアの環球時報(電子版)は22日、台湾のTPP加盟申請について「かく乱だ」と批判した。国務院台湾事務弁公室の報道官が「中国と国交を結んだ国が台湾と協定を締結することに断固反対する」とコメントしたとも伝えた」

     

    このパラグラフは、かなり中国サイドの情報で書かれた記事の印象である。現実には、中国の台湾への軍事的圧力が高まる中で、台湾への同情論が高まっている。中国が「戦狼外交」によって台湾の加盟阻止で加盟国へ圧力を掛ければ逆効果となろう。

     

    台湾が、TPP加盟条件を完璧に満たしていれば、中国の圧力で阻止することは不可能なはず。かえって、自らの加盟を阻止する「オウンゴール」になりかねないだろう。中国は、「やぶ蛇」という最悪事態に陥るだろう。

     


    (3)「一方、台湾当局は民主主義の価値観を共有する日本などに加入を支持するよう強く働きかける方針。今後、中台のTPP加盟を巡る外交的な駆け引きが激しくなりそうだ。中国からの圧力が強まるなか、蔡政権は米国とのFTA交渉にも動いている。6月には米国と1994年に署名した「貿易投資枠組み協定」に基づく協議の再開にこぎ着け、FTA交渉への準備作業を開始した」

     

    台湾外交部(外務省)は昨年12月時点で、すでにTPP参加に向け、既存の参加11カ国と非公式協議を進めてきた。協議を終えた段階で、正式に申請を行う意向も示していたので、中国の正式申請に刺激されたということではない。

     

    台湾は、WTO(世界貿易機関)に加盟している。多くの国は、中国の反発を懸念して台湾との貿易協定締結に慎重で、台湾は多国間協定への参加拡大を模索しているところ。だが、中国の「戦狼外交」に反発する西側諸国も出ており、東欧のリトアニアが中国の反対を押し切って台湾との関係強化が始まっている。

     


    台湾は、すでに事前にTPP11ヶ国との下折衝を終わっている。準備万端整っての正式加盟申請である。その点で、中国の「付け焼き刃」的な申請とは異なっている。

     

    台湾は、2017年当時からTPPへの参加意欲を示していた。これを知った日本の菅義偉官房長官(当時)が、「歓迎したい」と台湾を支持する発言をしたほど。台湾の蔡総統は、自身のツイッターで大きな自信を得たとともに日本の支援を感謝すると投稿した(2017年6月28日)ほど。日本との意気はピタリと一致している。

    台湾の正式申請に対して、日本政府は次のように語っている。

    「台湾は(TPP参加国と)普遍的価値を共有している」としたうえで、「台湾はTPP加入に向けて関係法令を整備するなど準備を進めてきており、国有企業への補助金や電子商取引、労働などTPPで定められているルールを巡る問題点はあまりないだろう」との認識を示した。『読売新聞 電子版』(9月22日付)が報じている。

     

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    土地問題で苦しむ4千年

    恒大問題処理に2つの道

    これから胸突き八丁突入

    パンデミック後遺症襲う

     

    中国は、これまで不動産バブルの「不倒記録」を続けてきた。それもついに、恒大集団の債務返済が不可能になって、幕を閉じようとしている。厳密に言えば、すでに終焉を迎えた。7~8月の住宅販売額が、前年比で2桁の減少になっていたからだ。

     

    中国共産党は土地を公有制にし、地価決定権を握っている。地方政府は、民間への土地利用権の売却代金を有力財源にしているのだ。不動産バブルが、「長期不倒記録」を続けられた裏には、こうした地方政府の財政事情に大きな影響を受けてきた。中国財政には、有力財源が存在しない宿命を負っている。この点については、後で取り上げたい。

     


    不動産バブルという公営賭博の「勧進元」は、地方政府であった。まさに「公営賭博」ゆえに、10年以上も続いた理由である。これが、中国のGDPを無理矢理に押し上げ、米国経済と覇権を争うという錯覚まで抱かせたのである。その意味では、日本経済の方が期間は短かったが、同じ道を歩んできた。最後は、同様に「バブル破裂」で終焉をみることになった。

     

    土地問題で苦しむ4千年

    中国4000年の歴史において、土地問題が繰り返し害毒を流してきた。私有化による土地集積の失敗を是正すべく公有化する。これが、農地の荒廃を招いて経済を疲弊させる。こういう循環を重ねてきたのである。そこで、辛亥革命(1911年)を成功させた孫文は、土地問題について重要な提案をした。土地私有制を基本とし、値上り分は全て税金で吸い上げるというもの。これは、土地の私有制と公有制を合体したアイデアである。孫文は、土地問題について、ここまで神経を使っていたのである。

     


    毛沢東は、この孫文構想を取り入れずに土地公有制にした。鄧小平時代になって、個人に土地利用権を売買するという便法で事実上、私有制を認める形としたが、これも今回のような問題を引き起すことになった。土地公有制によって、土地を「打ち出の小槌」に使って住宅価格を引き上げさせたからだ。

     

    現在の中国では、土地公有制が基本にある以上、不動産税も相続税も創設できないという「理屈」によって、富裕層をますます富ます結果になった。富の偏在が起った裏には、「土地公有制」が潜んでいることに気付くことだ。歴史的な土地保有問題点が、今回も浮き彫りになっている。結局は、孫文構想が正しかったのである。

     

    習近平氏は、富の偏在が「中国式社会主義」に不似合いと判断している以上、不動産バブルは消滅の運命にある。中国恒大集団が、店仕舞いを迫られていることは疑いない。もはや、現状のままで生き残れないのだ。となると、どのような形で終息させるのか、が問われる。

     


    恒大問題処理に2つの道

    今後の辿るべき道として、次のようなものが話題に上がっている。

     

    1)リーマン・ショック当時(2008年)に指摘されたミンスキー・モーメントか。

    2)ロング・ターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)的な局面か。

     

    この二案を提示しているのは、ジョン・オーサーズ氏(ブルームバーグ・コラムニスト。元フィナンシャル・タイムズ記者を29年間勤めたベテラン)である。『ブルームバーグ』(9月21日付)から引用した。

     

    それぞれの理由を見ると、次のようなものだ。

     

    1)経済学者ハイマン・ミンスキーの名が付けられた、「ミンスキー・モーメント」は長期間続いた投機の結果として信用が失われる現象である。2008年のリーマン・ショックの破綻が最も有名な例とされている。この「ミンスキー・モーメント」になると、信用機構は根本から揺らぐことになる。バブルを引き起した企業を罰するには良いとしても、無関係なところまで巻き込む点で「劇薬」になる。

     

    中国政府は、恒大集団に対して最終的な方針を示さず、銀行には金融取引期限の延長を求めているだけである。中国の名目GDPの約2%にも相当する債務総額(約3000億ドル以上=約33兆円以上)を抱える恒大集団には、自力解決は不可能になっている。「大きすぎて潰せない」という声も聞えてくるほど、こうなると「ミンスキー・モーメント」的な対応は不可能である。

     


    2)LTCMは、1998年に米国で破綻したヘッジファンドである。長期にわたる過剰投機の結果、突然信用が収縮して破綻した。LTCM破綻後の米連邦準備制度理事会(FRB)は、債権者を集めて救済措置をまとめ上げ、政策金利の引き下げに踏み切るという「温情」溢れる救済策となった。これが、モラル・ハザードを生んだという批判から、2008年のリーマン・ショックでは一切の救済策を講じない荒療治へ走った。これもまた後刻、大きな批判を受けることになった。

    左前になっている中国経済が、1)のミンスキー・モーメント型の突き放し策は、波紋が大きすぎて採用できないだろう。となれば、自ずと2)のLTCM型の救済策を採用するであろうという結論になるはずだ。ジョン・オーサーズ氏は、中国恒大が本拠を置く広東省の規制当局が、会計や法律の専門家を派遣した中に、事業再編を専門とする法律事務所キング&ウッド・マレソンズが含まれると指摘する。恒大集団は、事業再編という大手術が行われる見通しである。(つづく)

     

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    農林水産省は9月22日、米食品医薬品局(FDA)が東電福島第一原発の事故発生時から続けていた、米や牛肉を含む、日本産食品に対する輸入規制を全面撤廃したと発表した。これによって、原発事故にからむ日本産食品への偏見が消えることになった。

     

    欧州連合(EU)も9月20日、日本産食品の輸入規制を緩和すると発表。これまで、日本産の農産物をEUに輸出するためには、放射性物質検査証明書や産地証明書の発行が必要だったが、10月10日からは検査証書は不要となり、産地証書の発行枚数は規制対象品目のうち7割程度が削減される見通しという。

     

    このように、米欧が大きく動いている反面、韓国は反日を貫いている。先の東京五輪とパラリンピックでも、韓国選手団へ日本食材を使わない料理を提供するなど、「差別」を行った。やむなく日本産を使う場合は、汚染度を調べるという「嫌がらせ」を行っていたのである。

     


    『大紀元』(9月22日付)は、「米FDA、福島産含む輸入規制の全面撤廃 EUも大幅緩和へ」と題する記事を掲載した。

     

    米国はこれまで、県単位で輸入停止措置を講じていたが、これらを撤廃し、22日から輸出可能となる。輸入制限対象は、東北、甲信越、関東地域の14県で生産された合計100種類の農産物に及んでいた。

     

    (1)「福島第一原発の事故以来、日本の農業従事者は国内外の消費者の安心感を回復するために、放射能検査証明書や産地証明書を記載するなどして尽力してきた。一部には風評被害の影響が残るものの、徐々に解消されつつある。米国は第3位の日本産農林水産物および食品の輸出相手国で、2020年の輸出額は1188億円。農林水産省は、米国以外の輸入規制国の解除も目指す。現在もなお、香港や中国など14カ国・地域が輸入規制を行なっている。22日朝、菅首相はツイッターで、4月の日米首脳会談でも、バイデン大統領に直接規制の撤廃を働きかけてきたことを強調し、今回の決定を「大変感慨深く思う」と述べた」

     

    米国は、日本農林水産物の輸出第3位の国である。その米国が、全面的な輸入規制撤廃を発表しことで、今後の輸出増加が期待される。この効果は、他国にも及ぶはず。日本食が、世界的ブームになっていることから、喜ばしいことである。農家出身の菅首相が、いち早く感謝のメールを送ったという。その心情は、痛いほど伝わってくるものがある。

     


    (2)「日本は、農林水産物食品の輸出額を2025年に2兆円、2030年に5兆円に達成する目標を掲げている。菅首相は「引き続き、各国・地域の輸入規制の撤廃に向け、政府一丸となって取り組んでいかねばならない」と意気込みを語った」

     

    かつて、日本の農産物といえば輸入品にどう対抗するかがテーマであった。小泉首相が、日本農産物の輸出目標1000億円を立てたころは、夢物語であった。農協が、日本のTPP加盟反対の急先鋒となり、自民党議員の落選運動を行ったほどだ。全て、時代の変化というのでなく、受け身の日本農業が、こうして前向きに変わったことは特筆に値する。

     

    (3)「農林水産省によると、EUもまた規制を大幅緩和する。EUは20日、日本産食品の輸入規制を緩和すると発表。これまで、日本産の農産物をEUに輸出するためには、放射性物質検査証明書や産地証明書の発行が必要だったが、10月10日からは検査証書は不要となり、産地証書の発行枚数は規制対象品目のうち7割程度が削減される見通し」

     

    日本食がブームになっている背景には、日本人の平均寿命が世界で一、二を争うという長寿国であること。また、日本人の肥満度がOECDの中で最も低い事実が、これを立証している。こうして、日本の食材が世界から注目される理由になっている。

     


    (4)「今回、米国の規制撤廃は、菅首相の訪米直前に発表された。首相は、23日から26日まで訪米し、日米豪印首脳会合(通称クワッド)に臨む。政府は、新型コロナウイルス対策など地域課題を首脳間で議論し、ルールに基づく透明性ある地域構想「自由で開かれたインド太平洋」を推進すると発表している」

     

    米国も、菅首相へ粋な計らいをしてくれた。米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、菅氏が首相就任の際、「イチゴ農家の息子が首相へ」という記事を書いている。米国では広く、この事実を知っていたのであろう。 

     

     

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    中国は先に、TPP(環太平洋経済連携協定)へ正式加盟申請した。国内の国有企業中心の産業体制のままで、「TPP加盟」とは正気の沙汰ではない。私は、一昨日発行した「メルマガ294号」で、中国の舞台裏を想像して、中国国内の経済派をなだめる「ジェスチャー」に過ぎないとの結論を出した。

     

    こういう拙論と同様の報道が現れたので紹介する。中国経済が、厳しい局面に立たされていることで、舞台効果を狙った「目眩まし」を放り込んだと見られるのである。悪質な行為である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月22日付)は、「侮れない中国TPP『300日計画』、習主席と李首相も連携」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙の中沢克二編集委員である。

     


    中国が環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟を正式に申請した。一見、唐突にみえる習近平政権の行動だが、その裏には300日にわたる周到な計画と準備があった。日本政府には米国不在となったTPPを苦労してまとめあげた成功体験がある。しかし、中国の戦略的な動きを十分、把握したうえで、先回りできなければ、かつての大きな功績も雲散霧消しかねない。

     

    (1)「国家主席の習近平が20年11月20日、オンライン開催だったアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で「TPP11参加を積極的に考える」と公式に表明する直前、正式申請に向けた「300日計画」が始動していたことになる。ここにはTPP加盟に意欲をみせる台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)民主進歩党政権をけん制する思惑もあった。李は、習発言に先立つ20年5月の段階でTPP参加に「中国は前向きで、開放的な態度だ」と話していた。習と李をつなぐキーマンは、習が信頼する副首相の劉鶴(リュウ・ハァ)と、商務省の次官で国際貿易交渉代表の兪建華である。司令塔は国務院(政府)に置かれ、重要事項を判断する際は必ず会議が開かれた」

     


    中国は、TPP加盟申請を単なる「儀式」として行ったことが分かる。それに伴う、制度改革もなしに、TPP申請するとは加盟国を冒涜した行為である。受理せず、突き返すべき代物である。その策略計画が、「300日計画」と呼ばれたもので始まっていたという。

     

    (2)「300日計画」の最初の標的はニュージーランド(NZ)だった。同国はTPPに発展した原協定の4当事国(ほかはシンガポール、ブルネイ、チリ)の一つで、現在も大きな役割を担っている。域外国が加盟意思を通知する際の寄託国で、中国が正式な加盟を申請した先もNZだ。21年のTPP委員会の議長国である日本ではないのもポイントだった。中国は何かと関係がギクシャクしていたNZとの意思疎通を重視する方向にカジを切っていた。習によるTPP参加検討の表明から間もない21年1月には、NZ側のメリットが大きい2国間の自由貿易協定の改定に署名した。中国との関係が悪化してゆくオーストラリアとは対照的な対応なのが興味深い」

     

    中国は、TPPの環の弱そうなニュージーランドを窓口に選んだという。ニュージーランドは、そういう事情を知らず今年1月、中国と自由貿易協定の改定を行い、手なずけられたのである。

     


    (3)「中国は、マレーシアが中国加盟に向けた交渉を支持したように、東南アジアの多くの国は交渉入りに反対しないとみている。驚くのは中国側が「最終的には日本も中国の交渉入りに真っ向から反対できない」と読んでいることだ。中国にとってTPP加盟申請は国際政治・経済戦略上、主導権を確保するための重要な手段である。英国に加盟申請で先を越されたとはいえ、時期の設定は中国の命運に関わる。

     

    下線部分で、日本が中国のTPP加入を認めるという前提をしている。これは、驚くべき錯覚である。TPP条項を100%確実に突付ければ、中国の加盟は不可能である。中国は、日本を舐めきっている。ピシャリと叩かねばならないだろう。

     

    (4)「ここで問われるのは、習政権として、高いハードルを課すTPPに入るために徹底的な国内改革に踏み切る用意があるかどうか、である。「皆、誤解している。(中国の)国内政治情勢を考えればいま、直ちに真心を持ってTPPに入る気などさらさらない。ギリギリの交渉をする用意もない。そもそも交渉入りさえ全加盟国の同意が必要なのだ。仮に交渉入りしても、肝心な部分はズルズルと引き延ばしになる」。

     

    下線部分は、中国の傲慢な姿勢を見せつけている。この状態で、TPPへ加盟することなどできるはずがない。中国の恐ろしさは、中国という国家の存在によって好き勝手なことが可能という錯覚に陥っている点だ。この感覚で、戦争を始められたら大変な事態になる。中国へは、絶対に甘い姿勢を見せず警戒心を解いてはならぬという悲しい現実を忘れてはならない。善意は通じない国である。

     


    (5)「中国の「本気度」に疑問を呈する識者の声は、一面の真実を言い当てている。ここ数年、中国ではTPPの方向性とは逆の施策が次々と打ち出された。大きな国有企業同士の合併は典型例だ。民間の大企業には独占禁止などを理由に罰金を科したり、分割を迫ったりしているのに、国有企業への補助金問題には手がついていない」

     

    中国の産業政策は、ことごとくTPPとは異なる方向である。この姿勢を堅持したまま、TPPへ加盟するとは言語道断の振る舞いである。

     


    (6)「習近平が進める「左旋回」の路線、統制強化を支える有力なグループは左派だ。過去、彼らは一貫してTPPに反対してきた。国有企業への補助規制といったTPPの規則は「主権の侵害につながる」という理屈だった。対外強硬策が特徴の「戦狼外交」を支持してきた中国内の学者らもTPPを「新型資本帝国統治」につながると批判してきた経緯がある。政治情勢を考えれば、いま中国がTPPに名乗りを上げるのはある種の自己矛盾だ。一方、別の関係者は「(TPP加盟申請は)中国はあくまで『市場経済国家』としてとどまる、という(国の)内外へのアピールでもある」と指摘する。急激に社会主義へ傾斜する中国に疑問の目が向けられているのを強く意識した防御的な行動でもあるというのだ」

     

    私はこれまで、習近平氏が中国国内の経済派へ配慮して、TPP加盟を言い出したに過ぎないと見てきた。このパラグラフの下線では、同様の見方をしている。こういうインチキなTPP申入れごとに、ニュージーランドは利用されたのだ。気の毒な、「メッセンジャー」である。

     

    次の記事もご参考に。

    2021-09-20

    メルマガ294号 「ダメ元」で申込んだ中国のTPP、狙いは経済混乱の目眩まし 傾く「屋台骨」

     

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