勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    米中閣僚会議による通商協議は、北京で14~15日にわたり開催された。合意には達しなかったので、引き続き来週、舞台をワシントンに移して開かれる。完全な決裂であれば、継続協議にはならないので、合意への期待はまだ残っている。

     

    中国の方が、米国よりも合意への期待度は高い。ここで合意できなければ、中国経済は「マジノ線」を突破され、収拾のつかない混乱が想定されるからだ。企業同士が、債務の保証をし合うという最も危険な状態に落込んでいる。1月までなんとか持ちこたえてきた企業が、債務の相互保証による相手企業のつまずきで、倒産の淵に立たされるケースが増加しているのだ。こうした連鎖倒産を防ぐ上でも、中国は貿易戦争に歯止めを掛けなければならない切羽詰まった事情に追い込まれている。

     

    『ロイター』(2月16日付)は、「米中通商協議、来週も継続、トランプ氏は合意期限延長を示唆」と題する記事を掲載した。

     

    米中政府は15日、北京で行っていた閣僚級貿易協議を終え、来週ワシントンで通商協議を再開する方針を明らかにした。米中双方とも今週の協議で進展があったと主張しているが、関係筋の間からは争点を巡りなお溝は埋まっていないとの声が聞かれた。

     

    (1)「トランプ米大統領はホワイトハウスで開いた記者会見で、3月1日の合意期限を延長する可能性に言及。期限を60日延長する考えがあるかとの質問に、合意に近いか、合意が正しい方に向かいつつあると判断すれば、現在の関税を維持しつつ、「期限を延長する可能性がある」と述べた。また、米国が中国との「偽りのない通商協定」締結にこれまでになく近づいているとし、「ディール(取引)が成立するなら、敬意を持って関税措置を引き揚げたい」と述べた。ただ、協議は「非常に複雑」とも語った。このほか、通商協議の最終段階で民主党のペロシ下院議長やシューマー上院院内総務の意見も聞く考えも示した」

     

    トランプ氏が、「通商協議の最終段階で、民主党のペロシ下院議長やシューマー上院院内総務の意見も聞く」と発言している点に注目していただきたい。トランプ氏の頭では、「協議が合意の範囲内」に来ているという感じに見える。このメドが最終的に立てば、米中首脳の会談になって、最終合意となるのだろう。

     

     

    (2)「ホワイトハウスのサンダース報道官は声明で、「米中両国は3月1日の期限に向け、すべての問題について引き続き取り組んでいく」とした上で、「今週行われた詳細かつ踏み込んだ討議では進展が見られたが、なお多くの課題が残されている」と語った。中国国営の新華社も、両国が今週の協議で複数の主要分野で原則的合意に達したと報じた。さらに、通商と経済を巡る問題に関する覚書(MOU)について踏み込んだ協議を行ったとしたが、詳細は明らかにしていない。サンダース報道官によると、両国は今週の協議で技術移転、知的財産権、農業やサービス部門、非関税障壁、通貨などについて討議したほか、巨額の米貿易赤字解消に向けて中国が米国から製品・サービスを購入する可能性についても協議した」

     

    米国報道官は、慎重な姿勢を見せている。中国国営の新華社は、両国が今週の協議で複数の主要分野で原則的合意に達したと報じた。貿易不均衡問題は解決しやすい。新華社は、これを指しているのだろう。残っている問題は、中国の構造問題である。中国の技術移転、知的財産権、農業やサービス部門、非関税障壁、通貨など、すべて中国マターである。米国の要求にどこまで応じるか。それが、通商協議解決のカギを握っている。

     

    (3)「両国とも関税合戦解消に向けた具体策は示しておらず、複数の関係筋は、交渉の進展を妨げている問題で、米中首脳会談の実施に道を開くような大幅な進展があった形跡はみられないと指摘する。ある関係筋は、「重要な問題を巡って停滞している」とし「構造問題や施行の問題を巡って大きな隔たりが残っている。壁にぶち当たっているとは言わないが、夢のような状態でもない」と述べた」

     

    米中双方が具体案を示さず、相手の腹の内を読みあっている段階である。これは、解決を意識した最後のつばぜり合いという雰囲気だ。この状況を表現するのは、いかようにも言い表せるもの。中国は明るく表現し、米国は100%満足の回答でないから、競(せ)りでよく聞く、「あと一声」の状況のように思える。とすれば、米中ともに合意を意識しつつ、それを先に言い出さないという、「最後の駆け引き場面」と見える。さて、どうか。


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    米国政府と議会は、これまで韓国政府との間に、対北朝鮮政策をめぐって大きな溝ができていた。韓国が、北朝鮮への融和姿勢を取り過ぎており、米国の対北朝鮮交渉に障害になっているという点の批判だ。韓国政府は、この警告を無視していると突然、重大な事態に陥る危険性が出てきた。

     

    米議会上院のテッド・クルーズ議員(共和党)とメネンデス議員(民主党)が、今月11日(米国時間)「韓国政府が北朝鮮制裁の緩和に乗り出せば、韓国の銀行や企業が制裁対象になるかも知れない」とする警告の書簡をポンペオ国務長官に送っていたことが明らかになった。

     

    この問題については、すでに伏線があった。米議会下院のナンシー・ペロシ議長(民主党)は12日(現地時間)、韓国の文喜相(ムン・ヒサン)国会議長や与野党代表団と面会した際、「北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の本当の意図は非核化ではなく、韓国を武装解除することだ」と述べた点である。ペロシ議長は、「(北朝鮮の非核化は)言葉ではなく証拠が必要だ」とも指摘した。韓国政府は、証拠でなく言葉に酔っている感が強い。

     

    『朝鮮日報』(2月16日付)は、「米議会から名指しで批判された文大統領・康外相、これ以上警告を聞き流すな」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「米ワシントン・ポスト紙のコラムニスト、ジョシュ・ロギン氏が14日に同紙を通じ、米議会上院のテッド・クルーズ議員(共和党)とメネンデス議員(民主党)の書簡を公表した。両議員は書簡で「北朝鮮による核兵器開発と弾道ミサイル開発に対する制裁を実行するにあたり、韓米両国の協力の現状に深い懸念を表明する」「とりわけ南北間と米朝間の外交は互いに進展の度合いが異なっているため、韓国の銀行や企業が米国の制裁に直面する潜在的リスクにも懸念している」などと直接的に表現した」

     

    米国政府は、トランプ大統領を初め韓国政府に不信感を持っている。余りにも北朝鮮へ前のめりの融和姿勢に出ているからだ。これに呼応する形で、米上下院の共和・民主両党議員が12日(現地時間)、「米韓同盟と日米同盟は重要であり、日米韓の三角協力も必須だ」という内容の超党派の決議案を発議していた。米上下院が、こうした内容の決議案を同時に発議するのは異例とされる。最近の日韓関係の悪化が、米国の対北朝鮮政策遂行において障害になっている点を示唆し、韓国に自省を求めたと見られる。今回、米議会が超党派で韓国政府を批判した書簡を国務長官に送った裏には、諸々の韓国政府批判が込められていると見るべきだ。

     

    書簡で、「韓国の銀行や企業が、米国の制裁に直面する潜在的リスクにも懸念している」と警告したのは、韓国政府の進めている対北朝鮮政策が、米国の制裁にとって邪魔であると率直に指摘したものだ。韓国政府は、この警告を軽視していると大きなペナルティーを受けることになろう。


    (2)「両議員が文在寅(ムン・ジェイン)大統領と康京和(カン・ギョンファ)外交部(省に相当)長官を名指しし、米国における制裁関連の法律に違反している可能性に言及したことは大きな問題だ。まず文大統領が昨年9月の南北首脳会談に韓国の大手企業トップを引き連れ、開城工業団地や金剛山観光の再開について話し合った事実、そして康長官が開城工団に現金ではなく現物を持ち込む方策について検討中と発言したことなどが問題視された。さらに韓国の複数の銀行が北朝鮮向け投資を行う部署を立ち上げた点にも言及した」

     

    米議員は、具体的に韓国政府の問題点を指摘している。韓国政府は、言い逃れできなくなってきた。

     

    (3)「米国務省のビーガン対北朝鮮政策特別代表はワシントンで韓国国会の文喜相(ムン・ヒサン)議長や与野党の代表団と面会した際「南北関係の発展は国際社会における対北朝鮮制裁の枠の中で行われねばならない」と発言したが、これも聞き流してはならない言葉だ。ビーガン代表は「両親が子供を叱る時に、母親と父親が違うことを言ってはならない」という例えを話したが、これも韓国と米国が異なった行動を取っていることへの不満を遠回しに伝えたものだ。それにも関わらず文議長は「訪問団は北朝鮮の非核化を疑う米国国内の雰囲気を希望的な方向に転換した」と自画自賛した。顔を合わせた相手とは無難なやり取りしかしない外交的な態度を相手の本心と勘違いしているのだ」

     

    米国務省高官も、韓国国会の文喜相議長らと面会の際、韓国政府の突出した北朝鮮政策を間接的に批判していた。外交であるから婉曲的話法だが、これに気付かない韓国は、相当の鈍感体質というべきだ。


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    TPP11(米国を除く環太平洋経済連携協定)は、昨年12月30日に発効した。新たな参加希望国を募っていく段階である。韓国は、TPP11ヶ国のうち、FTA(自由貿易協定)を結んでいないのは日本とメキシコだけだ。日本とFTAを結ばなかったのは、関税を引下げれば、日本の工業製品に負けるという危惧にあった。

     

    すでにTPPが発効している以上、韓国の加盟が遅れればそれだけ不利になるという計算も働いている。ただ、韓国政府部内でも意見集約が終わっていないのが実情だ。産業通商資源部は、慎重な姿勢である。関税が引下げられる影響を最も強く受ける産業を所管に持っているからだ。一方、外交部や企画財政部は積極的と伝えられている。その理由は、後で取り上げたい。

     

    『中央日報』(2月15日付)は、「事実上の韓日FTA加速か、CPTPP加盟国と協議へ」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国政府が事実上の「韓日自由貿易協定(FTA)」と評価される包括的および先進的な環太平洋経済連携協定(CPTPP)の主要加盟国と非公式協議に入ることにした。CPTPP加盟に一歩近づいたという分析が出ている。洪楠基(ホン・ナムギ)副首相兼企画財政部長官は14日、「不確かな通商環境に積極的に対応するためCPTPP主要加盟国と非公式予備協議を進めることにした」と明らかにした。この日、政府ソウル庁舎で開かれた対外経済長官会議である。ただ、洪副首相は「参加を前提にしているわけではない」と述べた」

     

    韓国は、最初のTPP加盟国として米国から強い呼びかけを受けたが、朴槿惠政権時に中国への遠慮で参加を見送った。原加盟国であれば、韓国の希望を入れられたが遅れて参加するから、すべて「受け身」になる。情勢が読めなかった結果だ。文政権が、日韓問題で「暴走」しているのと似たような「外交音痴」ぶりを見せていた。

     

    (2)「CPTPPはアジア太平洋地域を中心にした「メガFTA」である。韓国はCPTPP加盟国のうち、日本とメキシコを除いた国とすでにFTAを締結している。従来の11カ国以外の国がCPTPPに加盟するには、CPTPPに基づく市場開放はもちろん、11カ国の要求事項を受け入れなければいけない。企画財政部の関係者は「加盟手続き前の段階として加盟国と接触し、もし加盟するならどんな条件で参加できるかを検討する段階」とし「後に総合的に検討して最終的に加わるかどうかを決めることになる」と伝えた。加盟時期については「決まっていないが、年内に検討を終えるだろう」と話した」

     

    韓国は、加盟各国との下交渉を行い、各国の感触を確かめて年内の検討を終えたいという。参加するとなれば、来年以降の話となる。

     

    (3)「CPTPP加盟をめぐる政府内の意見は分かれる。企画財政部の関係者は「我々もいつかは(加盟)しなければいけない」とし「早期に加わるのがよいという意見、加盟してもプラスはないという意見があり、総合的な検討に時間が必要」と述べた。企画財政部と韓日関係改善カードが必要な外交部は加盟に比較的積極的だという。産業通商資源部は慎重論に近い。参加すれば事実上、日本とFTAを締結する効果があり、対日貿易赤字がさらに増える可能性がある」

     

    外交部と企画財政部はTPP参加に積極的と言われている。理由は、日韓の関係改善を狙っていることだ。特に、企画財政部は日韓通貨協定の復活を実現できれば、通貨危機が起ったさい、日本に支援を求めやすいという「虫の良いこと」が念頭にある。最近の日韓関係の悪化から見れば、日本はTPPと通貨協定復活を切り離して扱うべきだろう。

     

    産業通商資源部は、TPP参加に慎重論という。韓国の対日貿易赤字は、次のような経緯を辿って、増えているからだ。

    2015年 203億ドルの赤字

      16年 231億ドルの赤字

      17年 283億ドルの赤字

    日本から半導体製造用装備など輸入が急増した結果である。TPPへ加盟すれば、日本車の輸入関税(8%)が消え、自動車産業への打撃も予想される。


    (4)「農水産当局は、CPTPPに加盟すれば、韓国の農水産物市場を追加で開放しなければいけないという負担がある。キム・サンボン漢城大経済学科教授は「市場開放度が非常に高まるため国内への影響を分析して慎重に決める必要がある」と述べた」

    韓国も農産物の関税引下げは難物である。農家の反対闘争は、きわめて過激である。一騒動起るのは十分に想像できる。日本の農家もTPPでは反対運動を展開した。だが、農家の高齢化で、日本農業を守れないという認識が強まり「条件闘争」になった。韓国もそういう合理的な判断ができるかどうか。それは、未知数である。
     



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    文大統領の演説は、常に高い理想を語り、弱者の味方であることを強調する。政治家として当然であるが、現実は空回りしている。言葉だけが、虚しくこだまするだけだ。次の演説もその典型である。

     

    14日、大統領府で自営業・小商工人代表160人余りを前に挨拶した。今後は、「最低賃金の引き上げを決める過程で自営業者と小商工人の意見も十分に代弁されるようにする」と明らかにした。これは、過去二回の最賃引き上げ幅が、自営業者の負担を考慮して決めたことでないことを告白したようなものである。大統領が、こう言って弁解する以上、現在の最賃引上げが不適切であることを認めたに等しい。ならば、すぐに改めるのが大統領の職務である。要するに、謝罪するようで謝罪していない、きわめて巧妙なやり口である

     

    文大統領が、こういう高等戦術を取り始めたのは理由がある。4月に国会議員の補欠選挙と、来年の一斉国会議員選挙を控えて、人気挽回策に出てきたと見られる。

     

    『朝鮮日報』(2月15日付)は、「政権運営より来年の選挙を優先する文在寅大統領」と題する社説を掲載した。

     

    文大統領は、解決済みでタブー視されていた韓国南部での新空港建設に言及して、地域での空港争奪戦に火を付ける形になった。文氏が、与党に有利な空港建設案(釜山と慶尚南道が支持する加徳島案)を支援するような口振りをしたのだ。大統領は、こういう問題では中立でなければならない。その立場を投げ捨て、与党に肩入れする動きを見せた。これが、文氏の限界である。自らの職務を忘れた行動をするからだ。

    いま少し、話を説明しておこう。

     

    韓国南部には、金海国際空港が1976年に開港している。釜山のみならず、ソウル(金浦国際空港)や済州など国内線への乗り換えも可能な、韓国南部の空の玄関口である。この金海国際空港のほかに、韓国南部で新空港を建設する案が2006年から出ており、地域の利害と絡んで大もめ状態に陥ってきた。釜山と慶尚南道は加徳島、大邱と慶尚北道は密陽での建設を主張して激しい対立を引き起こしたのである。結局、この新空港案は消えて金海国際空港の拡張に落ち着いた経緯がある。国土交通部(省に相当)は今年中に金海空港拡張案を正式決定して告示し、2026年までに完成させる方針を明らかにしていた。その矢先に、文氏が「利益誘導発言」をして混乱させている。

     

    文大統領による韓国南部の新空港建設案のぶり返しは、日韓問題の蒸し返しによく似ている感じだ。慰安婦問題や徴用工問題は、いずれも日韓政府間で解決済みである。文氏はそれをひっくり返して、文氏に有利なような解決に持ち込んでいる。あえて、「文氏に有利になるような」と限定をつけたのは、日韓の関係悪化が韓国の利益にならないという意味である。文氏は、韓国の国益を損ねても、文氏個人と与党の利益を図るという「政治屋」に堕したのだ。

     

    文氏とは、こういう性格の人間と見るべきである。自己利益を優先するという油断ならぬ政治家である。はしなくも、新空港案のぶり返しで、自己の利益になるならば何でもやる警戒すべき人物であることを露見した。

     

    (1)「文大統領がこのような言動(空港建設案)を示す理由は、一つは43日に予定されている再選挙・補欠選挙、そしてもう一つは来年の国会議員選挙を意識しているからだ。4月の選挙は加徳島と近い慶尚南道昌原市城山、統営市、固城郡で行われる。共に民主党は来年の国会議員選挙とその先の大統領選挙で釜山・慶尚南道地域を重点戦略地域と見なしているが、最近は支持率が伸び悩んでいるため、税金の無駄遣いや国論分裂、地域対立を間違いなく引き起こす新空港問題を取り上げ始めたのだ。大邱・慶尚北道は最初から高い支持率など期待できないので放棄し、釜山・慶尚南道での支持拡大に全力投入するのがその狙いだ」

     

    文大統領と与党「共に民主党」は、解決済みの新空港案をわざわざ持出して、与党の選挙に有利なように持ち込もうとしている。日韓問題の悪化も、反日気運を高めて選挙に利用する魂胆であることは間違いなさそうだ。この空港問題と関連づけ日韓問題を眺めると、そこに共通項を発見する。文氏は、敬虔なクスチャンを装うっているが、実は大変な策略家と見るほかない。文氏の構想では、次期大統領も「共に民主党」から出して南北統一を目指すというグランドデザインがあるはずだ。それには、反日色を強めて国民を煽ることが必要なのだろう。

     


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    習近平氏は、国家主席就任に当たり、経済政策の根幹を勝手に変える暴挙を行なった。従来の「民進国退」という民営企業中心の経済システムを、「国進民退」という国有企業優遇策に変えたのだ。この裏には、共産党元老の直系である「紅二代」の利権を守る陰謀が働いていた。

     

    経済政策に、陰謀は不適きである。習氏は自らの権力を守るべく、こうした公私混同を行なった。その結果が、現在の経済的な混乱である。自業自得とはいえ、多くの中国国民が巻き添えを食っている。独裁政権は、国民の幸せよりも国家主席の利益が優先する、政治システムである。

     

    『ロイター』(2月15日付)は、「中国経済の大幅減速、犯人は国有企業の逆襲か」と題するコラムを掲載した。

     

    (1)「ブームは終わった。中国経済はハードランディングにこそ見舞われていないものの、大幅に減速しており、世界中の資本市場を揺るがしている。しかし、こうした状況の回避は可能だった。グローバル金融危機を受けた中国の景気減速は、政策の不手際が原因だった──。ピーターソン国際戦略研究所のニコラス・ラディー氏は新刊『ステート・ストライクス・バック(国有企業の逆襲):中国の経済改革は終わったのか』の中でそう分析している」

     

    「ハードランディングにこそ見舞われていないものの」としているが、バブル崩壊は始ったばかりである。ハードランディング(金融システム崩壊)という全面的な経済崩壊を避けられるかどうか。それは、これからの動きである。まだ、結論を出す段階ではない。

     

    (2)「ラディー氏によると、企業向け融資全体に占める国有企業の比率は2011年に28%だったが16年には80%余りに上昇。一方で民間企業向けの比率は半分強からわずか11%に低下した。要するに資源の配分ミスが起きたのだ。国有企業のROA(総資産利益率)は民間企業に劣っており、そのギャップは金融危機以降に広がった。ラディー氏の試算によると、国有企業の経営効率が民間企業並みであれば、中国の2007~15年の平均年間成長率は最大で2%ポイント押し上げられていたはずだという」

     

    企業向け融資全体に占める国有企業の比率は、2011年に28%だった。16年には80%余りに上昇。一方で民間企業向けの比率は半分強からわずか11%に低下した。この事実は、国有企業がゾンビ化して、「追貸し」状態に追い込まれている結果と思われる。資金が、利益を生まない「追貸し」につぎ込まれた以上、中国経済全体が活力を奪われたのは不可避であった。習氏が独断で、強引にこういう無駄を生む経済システムへ持ち込んだ。その罪はきわめて重い。

     

    国有企業の経営効率が民間企業並みであれば、中国の2007~15年の平均年間成長率は最大で2%ポイント押し上げられていた指摘している。これは、完全な市場経済であったという前提に基づくのであろう。計画経済の非効率性を証明する話だ。

     

    (3)「発展途上国では通常、先進国並みを目指す急成長がいずれ勢いを失うものだが、中国はまだその段階に近づいていない、というのだ。日本や韓国、台湾、シンガポールはいずれも、1人当たりGDPで見て今の中国と同じ発展段階を踏み、さらに成長を続けた。ラディー氏によると、仮に中国政府が改革を再開すればさらに20年間にわたり8%以上の成長を続けることが可能だという」

     

    このパラグラフの指摘には、首肯できない点が含まれている。生産年齢人口比率という要因が脱落しているからだ。中国は「一人っ子政策」を36年間も行い、2010年までは「人口ボーナス期」で経済成長率を押上げた。だが、2011年以降は、逆に「人口オーナス期」に移行しており、潜在成長率は急低下している。また、これまで投資主導型経済であったこと。これを消費主導型経済に切り替えるには、必ずその間に成長率の断層が発生する。この重要な点も見落としている。

     

    合計特殊出生率は、すでに1を割っているはずだ。中国政府が、関連データの発表を止めたこと事態に深刻さが窺える。中国のウィークポイントは、人口動態に現れている。この点を無視した議論は、一片の価値もない。改革を実行すれば、「20年間にわたり8%以上の成長を続ける」ことなど空想物語である。前記の合計特殊出生率が1を割った事態は、人類が初めて経験することだ。中国は、その悪いモデルになる。20年間に8%成長でなく、20年後にゼロ成長の可能性を議論した方がはるかに現実的である。


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