勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国は、周辺諸国への領土的野心をあからさまにして非難を浴びている。南シナ海については、90%が中国領海と根拠ゼロの主張を始めて、他国の島嶼を占領するなど目に余る行動を続けている。米国は7月、中国の違法な行為を断じて許さないと声明した。こうして、米国はいつでも南シナ海で軍事行動を開始できる体制を整えている。

     

    『大紀元』(8月14日付)は「米、インド洋にB-2爆撃機配備『南シナ海まで5時間』中国への明確なメッセージ」と題する記事を掲載した。

     

    Washington Examinerは8月11日の記事で、マーク・エスパー米国防長官は同日、ディエゴガルシア島にB-2爆撃機を3機配備し、それは中国当局への明確なメッセージだと述べた。B-2は、ステルス戦略爆撃機である。水平尾翼および垂直尾翼が無い、いわゆる全翼機と呼ばれる特徴的な形を持つ航空機である。高価な爆撃機でも有名だ。

     

    (1)「ディエゴガルシア島はインドの南1000マイル(1609km)のインド洋に位置し、元はイギリスの軍事基地だった。この基地は主に米軍の後方支援や攻撃の拠点として機能している。2003年、B-2爆撃機専用のシェルターとして改修された。ニュースサイト、Washington Examinerに掲載された政治ジャーナリスト、トム・ローガン氏の分析によると、「米軍は同島に駐留することで、B-2爆撃機の南シナ海への飛行時間が短縮されるというメリットがある」という。仮にB-2がミズーリ州のホワイトマン空軍基地から出発した場合、最速でも南シナ海に到達するには12時間かかる。しかし、同島からだと飛行時間はわずか5時間である」

     

    -2爆撃機が3機、インド洋に駐留する。これで南シナ海まで5時間で到達可能という。中国にとっては、不気味な存在だ。ステルス型戦略爆撃機だけに、捕捉は困難である。ある日、突然の攻撃があっても不思議ないだけに、改めて南シナ海侵略を後悔するであろう。

     


    (2)「トランプ政権が南シナ海をめぐる中国の所有権主張を拒否していることを受けて、両国の緊張が高まっている。同氏は空軍の公式発表とB-2の作戦上の性格から、今回の配備は中国を対象としていることは明らかだと分析した。さらに、「中国の地上指揮統制センターを攻撃する用意ができていることを中国に示した。戦略レベルでは『核の三本柱』(地上、潜水艦、爆撃機)を展開する準備も整っているとのメッセージを送った」という。同氏は、「今回の配備は北京への警告であり、戦争が差し迫っていることを示すものではない」と分析した」

     

    インド洋へのB-2配備によって米軍が、「核の三本柱」(地上、潜水艦、爆撃機)を展開する準備も整っていると無言で中国へ警告したのと同然という。惜しむらくは、こういう警告をもっと早くから行なえば、ここまで中国を増長させなかったであろう。中国には、「目には目を歯には歯を」という因果応報論で示さなければ分からないのだ。

     

    (3)「B-2の戦時任務は、幾重にも重なる防空網と敵の要塞の奥深くに侵入するように設計されており、人工的に作られた南シナ海の島々にある中国の指揮統制網を破壊することが可能だ。一方、米海軍の空母打撃群に対する中国の弾道ミサイルの脅威に直面して、「B-2はさらに重要性を増している」と同氏は指摘する。また、中国はこれらのB-2を中国本土の軍事司令部に対する脅威と見なしている。香港のすぐ隣の広州市に中国軍南部戦区司令部がある。中国が本土への攻撃を非常に敏感にとらえ、米国本土に対する相互行動を正当化するものと考え、「ここでの国防総省のメッセージは明らかに中国政府を揺さぶることを意図している」と同氏はみている」 

     

    インド洋へのB-2配備は、深い意味を持っているという。これまで中国の独壇場であったアジアに、米軍という最精鋭部隊が登場したことを意味している。これで、中国の軍事行動はかなりのけん制を受けるであろう。

     


    (4)「今年の夏、米軍は記録的な数の軍用機を送り込み、南シナ海とその周辺地域で複数回の軍事演習を行った。中国共産党のシンクタンク、「南海戦略態勢感知計画」(SCSPI)」の記録によると、「米軍は1日に35機の偵察機を南シナ海に派遣し、7月の最初の3週間だけでも50回以上だ」という。一方、香港紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」11日、中国は、南シナ海での米軍と対立した際に、「最初の一発を発射しない」と軍に命じた」と報道した」

     

    中国は現在、鎖国経済を模索するというこれまで考えられなかった対応を始めている。米軍が、じわりじわりと包囲網を狭めていることに対応しているのかも知れない。中国の脆弱性が100%浮かび上がっており、国内では習近平氏の責任問題が起こってもおかしくない状況になっている。

     

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    中国は、米中対立がもたらす危機感で深刻な事態に落込んでいる。米中デカップリング(分断)が現実化すれば、米国によって「鉄のカーテン」が敷かれるのだ。中国は、そこまで深く考えずに、やりたい放題のスパイ行為や南シナ海への侵略を重ねてきた。その報いが、米国から突付けられたのである。

     

    南シナ海には、米海軍が2隻の原子力空母を派遣した。米・日・豪が合同訓練を実施している。「いざ」という事態になれば、これら海軍が動き出す。中国にとっては悪夢以外の何ものでもない。こうなると、中国にとって唯一と言える「友軍」の北朝鮮が重要な援軍になる。こうして、北朝鮮への姿勢がにわかに変わってきたという指摘が出ている。

     

    『朝鮮日報』(8月16日付)は、「『第2の抗美援朝』戦略なのか?」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のパク・スチャン北京特派員である。

     

    「藍庁」(青い部屋)と呼ばれる中国外交部(省に相当)の内外信ブリーフィングルームでは、毎日午後3時(現地時間)に中国関連の各種の問答がやりとりされる。北朝鮮の核もその一つだ。このところ米中関係が「新冷戦」へと突き進む中、北朝鮮の核問題を巡る中国のトーンが変化していると感じられる。7月28日に開かれたブリーフィングでも、そういう印象を受けた。

     


    (1)「前日(7月27日)に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は「われわれの頼もしく効果的な自衛的核抑制力で、この地にもはや戦争という言葉はないだろう」と発言した。核を放棄する意思はないという点を明らかにした言葉だ。汪報道官に、「どう思うか」と尋ねた。汪報道官は「韓半島対話プロセスが強硬局面に陥り、問題は北朝鮮の合理的な利益が尊重されないから」と答えた。「韓半島非核化が中国の一貫した立場」という言及もなかった」

     

    下線部の「合理的利益」とは、核放棄に見合う利益という意味だ。その「合理的利益」が得られなければ、北朝鮮は核を保有するという結論になる。

     

    (2)中国外交部が、「北朝鮮の合理的な利益」という表現を使い始めたのは6月12日からだ。華春瑩報道官は「(韓半島問題の行き詰まりは)北朝鮮の合理的利益が解決されないことが主因」と発言した。その後、中国外交部は北朝鮮の核問題が出るたびに「北朝鮮の合理的利益」という言葉を繰り返し使っている]

     

    (3)「こうした変化は、米中対立が本格化したころと時を同じくしている。今年6月にハワイで会談した楊潔チ中国共産党政治局委員(外交担当)とマイク・ポンペオ国務長官は、韓半島問題について議論したと発表した。米中が連日殴り合っていた時期に、韓半島問題を議論したという言及が視線を引き付けた」

     

    中国が、従来の態度を変えて北朝鮮の核保有に一定の理解を示し始めている点に注目すべきだ。北に核を持たせて米国に対抗しようという戦術と見られる。これを見抜いた米国は、「日韓に核保有を認める」とのアドバルーン発言を始めた。中国にとって、日韓が核開発することは、死活的な問題になる。これまでの「核保有国」中国という位置が崩れるからだ。米国は、強かな戦術で中国に対抗している。中国の裏をかく戦術である。

     


    (4)「
    過去数年間、米中は北朝鮮の非核化を共同の関心事にして共通の利益と考えてきた。だが、北朝鮮の利益を連日強調する中国の態度を見ていて、中国が北朝鮮を対米戦略の「カード」として使おうとしているのではないか-という疑問を持つようになった。さらには、625の時のように「抗美援朝(米国に対抗して北朝鮮を助ける)」戦略が再稼働していると懸念する見方もある」

     

    北朝鮮「核カード」には、「日韓核カード」が対応してくる。むろん、日韓が核を持つべきでないが、中国の対応次第で話がどう展開するか分らない瀬戸際に来ているのだ。中国が、例によって一時的な思惑で北朝鮮の核保有を庇うと、日韓が核を持つという悲劇的な事態を招くだろう。

     

    (5)「今年に入って、中国がコロナ・香港問題で西側の攻撃を受けるたび、真っ先に中国をかばった国は北朝鮮だった。金正恩は、核保有国を強調した7月27日の演説で「革命戦争(625)を血で助けてくれたことで戦闘的友誼の真の模範を示してくれた中国人民志願軍烈士と老兵にも崇高な敬意を表する」と語った。今年は、中国が北朝鮮を支援するため625に参戦してから70周年になる年だ」

     

    北朝鮮は核を持って有頂天である。日韓も核を持つとなれば、その軍事的な優位性は一挙に消える。こういうあやふやな戦略を捨てて、真面目な国づくりをすることだ。


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    韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は8月15日、光復節(日本の植民地支配からの解放記念日)記念式典の演説で、「1人の人権を尊重する韓国と日本の共同努力が、両国国民間の友好と未来協力の橋渡しとなる」と述べた。その上で、「韓国政府はいつでも日本政府と向き合う準備ができている。今も協議の扉を開いている」と強調した。

     

    具体論のない書生の演説である。文大統領は、高らかに理念を語れるが、具体策がないという「演説大統領」である。「日韓両国国民間の友好と未来協力の橋渡しとなる」と語ってみせるが、中身はないのだ。これは、国内政治でも同じである。経済成長目標を掲げても、具体的な対策がゼロである。文大統領は、こうして時間稼ぎをして任期を終わるのだ。

     

    『中央日報』(8月14日付)は、「ジョセフ・ナイ、ハーバード大学特別功労教授、文大統領の平和主義『同盟と武装なしでは現実性がない』」と題する記事を掲載した。


    国際関係分野の碩学、ジョセフ・ナイ、ハーバード大学特別功労教授(同大学ケネディスクール元学長)が、米中対立が深刻化すればするほど韓国は米国との関係を強固にすべきだと助言した。また、日韓関係改善には、韓国が過去に固執せず、現在の日本をありがままに受入れよ、と注目すべき発言をしている。

     


    (1)「11月の大統領選挙でバイデン民主党候補が当選した場合、同盟関係の回復と多国間協力に努めるなどトランプ政権の「米国優先主義」政策に大きな変化があると予想した。ただ、北朝鮮に対して平和主義を貫く路線には懐疑的な見方を示した。ナイ教授はバイデン候補の陣営で外交戦略に関する諮問活動をしているものと知られている。ナイ教授は今回の発言で、「韓国は(中国と日本の間に)サンドイッチのように挟まれているため気の毒だと思うことがある」とし「韓国の適切な戦略は、もっと距離のある国に行って力を借りてくること」と助言した」

     

    「韓国の適切な戦略は、もっと距離のある国に行って力を借りること」としている。それは、米国との関係を密接にすることで解決できる、と示唆しているのだ。ところが、文政権は潜在的な「親中朝・反日米」で米国から離れようとし、中国へ接近したがる傾向を持っている。文政権が、本質的に現実感覚が乏しい「書生政権」であることが災いしている。

     

    (2)「続けて、「離れている同盟国の米国との関係が韓国の保護膜となるだろう」とし「米国と同盟関係を維持することが保護であり保険」と繰り返し強調した。中国の過度な介入を遮断するためには、米国との同盟関係を強固にすることが不可欠ということだ。ただし、ナイ教授は「だからと言って中国と経済的な関係を切れというわけではない」とし「逆に中国経済から繁栄を享受することができなければならない」と付け加えた」

     

    米中対立激化に伴う「米中デカップリング」が、現実化しそうな現在、韓国の二股外交は不可能になる。韓国は、その差し迫った事態に気付いていないのだ。書生政権では致し方ないにしても、世界情勢の変化に敏感になるべきだ。

     

    (3)「現在の国際情勢についてナイ教授は、「習近平-トランプのリーダーシップは失敗した」と断言した。「米中が新型コロナウイルス感染症(コロナ19)問題で国際的リーダーシップを見せることができずにいるがどう思うか」という質問に対する答えだ。また、「習首席は党の統制権があるため、中国が内部的に大きく変わるとは思わない」と述べた。米大統領選挙でバイデン候補が勝利しても、中国の変化がない限り、米中の対立を解消することは困難だということを示唆したものだ」

     

    米大統領選挙でバイデン候補が勝利しても、中国の変化がない限り、米中の対立を解消することは困難であるとの示唆は重要だ。中国が、そこまで米国を過剰刺激したことで、米中の信頼関係は完全に崩壊している。

     

    (4)「ナイ教授は、韓日関係についてより未来志向的な形に変わらなければならないと強調した。ナイ教授は「リーダーにとって重要なのは過去にこだわらず未来を見ること」とし「北東アジア地域の平和と北朝鮮の抑制のためにも、日本を過去に韓国に傷つけた悪魔とみなしてはならない」と述べた。「今の日本は軍事力で韓国を支配していた1930年代の日本ではない」ではないかということだ

     

    下線をつけた部分は、世界的な日本への認識になっている。韓国はそれが理解できず、古い殻に閉じこもったままだ。文大統領は、光復節の演説で次のように語った。

     

    憲法10条に言及して、『個人が国のために存在するのではなく、個人の人間らしい生き方を保障するために存在する国を考える』と述べた。『果たして一人ひとりにも光復がなされたのか、振り返ってみなければならない』と」。

     

    典型的な書生論である。国家が安全保障で確固たる基盤を持たぬ限り、「個人の人間らしい生き方は保障されない」のだ。国家があってこそ個人の人権が保障されるものである。文氏がこの「屁理屈」を持ち出した意図は、慰安婦問題や徴用工賠償問題を遠隔的に取り上げている。人権問題が解決されない限り、日韓関係は一歩も進まないと示唆しているのだ。ナイ教授の主張によれば、余りにも過去に固執した「偏見」と言うべきだ。


    韓国は、現在の日本を認めるべきである。「反日」が、韓国のレゾンデートルと間違えた思考が、韓国をのっぴきならぬ窮地へ追い込んでいる。米中対立の激化が、韓国の居場所を狭めるに違いない。そういう中で、韓国はどのように生きてゆくのか。もはや、中国へにじり寄ることは不可能になるのだ。

     

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    文在寅(ムン・ジェイン)政権の足元が大揺れである。4月15日の総選挙では、「コロナ大勝」して支持率はウナギ上りとなった。5月には71%と「お化け数字」を出したが、その後は見る見るうちに急落した。与党の暴走と不動産暴騰が嫌気されたものだ。

     

    韓国ギャラップの世論調査で8月14日、文大統領の支持率は39%まで落込んだ。不支持率は53%にも上がり、大統領府と与党「共に民主党」に衝撃を与えた。国民不在政治を行なう文政権へ、まさに世論の鉄槌が下った感じである。

     

    『ハンギョレ新聞』(8月15日付)は、「39%、文大統領の支持率、就任後で最低」と題する記事を掲載した。

     

    「支持する39%、支持しない53%」。韓国ギャラップの世論調査で文在寅(ムン・ジェイン)大統領の国政遂行に対する支持率が初めて40%を割り込んだ。就任後で最も低い数値だ。同じ調査で一時は70%前後に達していた国政支持率が、わずか3カ月ほどで30ポイント以上が“蒸発”してしまったのだ。不動産価格の高騰により、主要な支持層である30代が揺れたのが決定的だった」

     

    (1)「与党側の雰囲気は“パニック”に近かった。共に民主党のイ・へチャン代表は「この問題を非常に重く受け止めなければならない」と述べた。1週間の間に肯定的評価は5ポイント減少した一方、否定的評価は7ポイントも増えた。このような肯定と否定の評価の割合は、チョ・グク前法相が辞任した昨年10月第3週と同じだ。否定的評価の理由としては「不動産政策」が35%と最も多く、「全般的に不足」(12%)「経済・民生問題の解決不足」(8%)「独断的・一方的・偏向的」「北朝鮮関係」「人事問題」(以上5%)などの順だった」

     

    野党を無視し続けた与党が、国民の目を逃れることはできなかった。大統領支持率が過去最低の39%に落込んだのである。大統領選での得票率は46%であった。それすら下回ったことは、岩盤の支持層が崩れたという意味である。誰も、文在寅氏の演説に騙されなくなったのだ。「巧言令色鮮(すくな)し仁」である。

     

    (2)「目立つ部分は、支持層の中心だった30代で最も大きな減少幅(43%、17ポイント減)を示したという点だ。ライフサイクルの上で30代は不動産問題を最も敏感に感じる年齢層だ。ギャラップの関係者は、「文大統領の『住宅価格の上昇傾向が沈静化した』発言と複数の住宅を保有する大統領府高官に関する議論などが、30代年齢層に失望感を抱かせたものと見られる」と診断した。国政遂行に対する肯定的評価は、18~29歳の年齢層を除くすべての年齢層で減少した」

     

    「巧言令色」に最も酔いしれがちな30代が、反旗を翻したのだ。これから住宅を購入しようという30代が、気付いたら住宅高騰で足元を掬(すく)われたのである。この痛手は大きい。当の大統領は、見当違いの発言を繰返している。演説は上手いが、中身は空っぽなのだ。

     

    (3)「地域別では、ソウルで肯定的評価(35%、13ポイント減)の減少幅が最も大きかった。その次が仁川(インチョン)・京畿道(38%、7ポイント減)、釜山(プサン)・蔚山(ウルサン)・慶尚南道(32%、5ポイント減)、大田(テジョン)・世宗(セジョン)・忠清道(39%、2ポイント減)の順だった」

     

    住宅高騰の激しいソウル市の支持率低下が、最も大きかった。そのほかの大都市の低下も大幅である。人間、「衣食住」の恨みが最も怖いのだ。

     


    (4)「国政支持率の減少には不動産の要因以外にも、与党の広域自治体首長のセクハラ、民主党の立法独走、チュ・ミエ法相の就任後に深まった法務部と検察の対立などが、同じく影響を及ぼしたというのが政界内外で共通した分析だ。大統領府の関係者は「我々の支持層が揺らいでいるというのが最も恐ろしい点だ。不動産の悪材料に与党の立法独走、道徳性の議論まで重なり、私たちの支持層が『文在寅を支持する』と堂々とは言いにくい状況になってしまった」と述べた。別の関係者は「大統領府自体に対する調査結果もよくない。日ごとに支持率が下がっていくのが目に見える」と述べた。

     

    与党の横暴ぶりも酷いものだ。

    1)与党の広域自治体首長のセクハラ

    2)民主党の立法独走

    3)チュ・ミエ法相の就任後に深まった法務部と検察の対立

     

    本欄もこうした異常ぶりを取り上げ、「義憤」の筆を進めてきた。日本人が怒っても不思議がないほど、デタラメをやってきたのだ。韓国国民が、怒って当り前である。私は、文大統領とチュ・ミエ法相は、ぜひとも法廷に立たせて「真意」を聞き出したいと思うほどである。

     

    政権支持メディアの『ハンギョレ新聞』が、ここまで書くのは相当の危機感によるのだろう。文政権は危機に直面していると見るべきだ。

     

    (5)「同日のギャラップの調査結果では、2022年の大統領選挙に関連し、「政権交替のために野党候補が当選すべきだ」という意見(45%)が、「現政権を維持するために与党候補が当選すべきだ」という回答(41%)より多かった。政党支持率は共に民主党が先週より4ポイント減少した33%であり、未来統合党は2ポイント増えた27%だった」

     

    22年の大統領選挙では、野党候補の当選を支持するのが45%もいる。与党候補は41%である。現状では、2年後を推し測れないが、与党にとっては頂門の一針になったはずだ。

     

     

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    中国は、米国から「殴られ」て初めて目が覚めるのだろうか。米国は、2022年までに外国企業で米国の上場条件に合わぬ企業を上場廃止させる見込みだ。それにも関わらず、中国企業の新規公開が目白押しである。中国は、愚かにも貴重な「金づる」米国と対立したのである。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月14日付)は、「米国でのIPO、中国企業がなお殺到する理由」と題する記事を掲載した。

     

    米国は依然として、中国ハイテク企業の新規株式公開(IPO)を引きつけている。米中間で政治・貿易・規制面での緊張が高まっているにもかかわらずだ。ディールロジックのデータによると、中国からナスダック株式市場またはニューヨーク証券取引所(NYSE)に今年上場した企業は20社を超え、調達総額は40億ドルに上る。大半はソフトウエアや電気自動車(EV)などハイテク業界の企業だ。2019年には中国企業25社がIPOで35億ドルを調達した。

     

    (1)「8月13日には、中国のオンライン不動産業者KEホールディングスがNYSEに上場し、約21億ドルを調達。IPO価格は仮条件の上限を上回った。同社はソフトバンクグループなど著名企業を後ろ盾に持つ。中国企業による米国でのIPOとしては2018年以降で最大だった。IPOにより、同社の企業価値は225億ドル超とされそうだ。株価は上場初日に87%上昇した」

     

    中国のオンライン不動産業者KEホールディングスがNYSEに上場し、約21億ドルを調達。株価は上場初日に87%も上昇したという。こういう派手な取引が可能なのは、米国であるからだ。中国企業が、米国市場から締め出されれば、いかに大きな損害を被るかを示唆している。

     


    (2)「米中の緊張は数年ぶりの高まりをみせている。両国は貿易、テクノロジー、外交問題で火花を散らしている。トランプ政権は最近、2022年までに米会計基準に従わない中国企業については上場廃止にするよう勧告した。上院も今年、同様の法案を可決しているが、下院はまだ通過していない。それにもかかわらず、中国企業の米預託証券のバンク・オブ・ニューヨーク・メロン指数は年初来18%上昇し、S&P500種株価指数の4.4%高をアウトパフォームしている」

     

    中国株が人気を得ているのは、「奇想天外」なアイデアを事業化させる点にある。一種の「博打株」扱いであろう。

     

    (3)「投資銀行筋や他のアドバイザーによると、中国企業はなお米国でのIPOに列をなしており、これまで米国など世界の投資家からの資金調達におおむね成功している。世界最大かつ最も活発な資本市場で上場すれば、企業の国際認知度が高まり、より多様な投資家を集められるという。また、中国企業の大半の株は、米国での上場初日にかなりの上昇を記録している。UBSグループのアジア株式資本市場部門を率いるPeihao Huang氏によると、多くの企業にとって、短期的な資本の必要性は長期的なリスクを上回っている」

     

    米国株式市場は、世界一である。中国企業は、その庇を借りて資金調達や認知度を高められるという。この「宝物」の米国に向かって喧嘩を売るのは、習近平氏の世間知らずの結果だ。怖いもの知らずの無鉄砲さが招いた、大きな落し穴である。

     


    (4)「創業5年のEVメーカー、リ・オートは7月下旬にナスダックでのIPOで11億ドルを調達した。幹事はゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、UBS、チャイナ・インターナショナル・キャピタルが努めた。IPO価格は仮条件の上限に決まり、株価は上場初日に急騰した。現在の時価総額は131億ドル。リ・オートに初期から投資しているフューチャー・キャピタル・ディスカバリー・ファンドのファンディングパートナー、Mingming Huang氏は「中国は世界で最も速い成長を遂げている新興企業の本拠地であり、それらの持つポテンシャルは世界の投資家にとって非常に魅力的だ」と述べた」

     

    下線の通り、中国は新興企業の生まれる基盤を持っている。その資金調達先が、米国である。IPO後、米国から締め出されれば、中国新興企業は成長できないのだ。米国が、中国ベンチャー企業の生殺与奪の権を握っていることに気付くべきであろう。

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