勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    韓国は、「K防疫モデル」の名前でコロナ検査キットの輸出が急増した。今は、世界の供給過剰が鮮明になり、企業の採算が悪化している。日本では、厚生労働省が感染を調べるPCR検査の検体に唾液を使えるように決めた。鼻の粘液を採る従来の方法よりも医療従事者の感染リスクが低く、効率的な検査が可能になる。韓国は、鼻の粘液を採る方法だ。検体に唾液を使えるようになれば、一段と韓国企業は苦境に立たされる。

     

    『中央日報』(6月2日付)は、「輸出疾走していた韓国製コロナ検査キッ『3大悪材料』で急ブレーキ」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルス大流行以降に世界の「ラブコール」を受けた韓国の検査キット企業が「3大悪材料」に足踏みしている。検査キットの生産量増加で販売価格は下がり、主原料である抽出試薬価格は急上昇しているためだ。業界では予想より早く売り上げピークに達し下落傾向が始まるかもしれないとの悲観的な見通しが出ている。

    (1)「6月1日に産業通商資源部が発表した「5月の輸出入動向」によると、韓国の検査キット企業の輸出代金は1億3128万ドルで前月の2億65万ドルより34.5%減った。輸出金額は新型コロナウイルスが本格的に流行した2月に64万3000ドルで3月2410万ドル、4月に2億65万ドルに急増していたが上昇傾向が鈍化したのだ。マッコーリー投信運用ファンドマネジャーのノ・スンウォン氏は、「恐怖に包まれひとまず検査キットの在庫を積み上げていた時期は終わった。各国が許可を受けた会社の製品だけ輸入するなど障壁が高まっている」と指摘した」

     

    韓国の検査キット輸出代金

    2月 64万3000ドル

    3月 2410万ドル

    4月 2億65万ドル

    5月 1億3128万ドル

     

    この推移を見ると、コロナ第1波は終わった感じである。

     

    (2)「過剰供給による価格下落も本格化している。4月に1個当たり12~14ドルを上回った検査キット供給価格は最近半分以下に落ち込んだ。食品医薬品安全処から検査キット輸出許可を受けた韓国企業は84社だ。ここに米国と欧州の企業を中心に検査キット生産も増加している。業界関係者は「受注競争が激しくなり一部の国は1個当たり5ドル前後を要求したりもする」と話した」

     

    検査キット供給価格は、4月に1個当たり12~14ドルを上回った。現在は、5ドル前後と急落している。韓国だけでメーカーは84社もある。当然、過当競争に陥る。新型コロナウイルスの感染が下火になった証拠で結構なことだ。

    (3)「生産設備を100%稼動していた雰囲気も変わっている。先月から工場稼動率が大きく落ち込んだ。コジェンバイオテクは先月最後の週に在庫負担のため生産を中断した。同社関係者は「今月は在庫減少など推移を見守った後で生産量を決めるだろう」と話した。ある企業は先月、生産量の3分の1しか輸出できなかった」

     

    コロナ特需は終わった。設備稼働率が急減している。製品在庫増で、操業中止の企業も出ている。あっけない特需であった。



    (4)「検査キットの核心材料である試薬と容器(チューブ)をほとんど外部から調達しているのも不安要因だ。ソルジェントのユ・ジェヒョン代表は、「試薬供給価格は新型コロナウイルス以前より2~5倍上がった。外部依存度が高い企業は収益下落につながるだろう」と話した。韓国企業は主に分子診断方式の新型コロナウイルス検査キットを輸出した。人のたんなど呼吸器検体を採取した後に核酸抽出試薬を混ぜ遺伝子増幅(PCR)を通じて陽性かどうかを判定する」

    韓国企業は、商売上手である。検査キットの核心部分の試薬と容器(チューブ)は、ほとんど外部から調達という。これでは、利益率は低い。輸出金額は増えても、手取りが少ないのだ。

     

    (5)「この検査キットには5種類の試薬が容器に入っている。このうち3種類の試薬は生体で各種の化学反応を起こす蛋白質である「エンザイム」だ。患者からリボ核酸(RNA)を抽出してDNAに変えこれを数万倍に増幅させてRNA情報が損傷しないように化学反応を抑制する役割をする。これを独自に生産できる韓国企業はバイオニア、ソルジェントなど一部企業にすぎない

    韓国で検査キットの試薬を生産できるのは、バイオニア、ソルジェントなど一部企業にすぎないという。文大統領は、「わが国バイオ技術の勝利」と宣伝しているが、実態はかくのごとしである。韓国の自画自賛は、度を過ぎている。


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    中国の国有企業には、一片の誠実さもない。貧困国パキスタンの「中パ経済回廊」工事で30億ドル規模の巨額水増し請求をしていたことが発覚した。中国政府は、「一帯一路」という大義でインフラ工事を促進している。真意は、相手国から暴利を貪ることが目的である。すでに、多くの発展途上国を「債務漬け」にし、担保を取り上げる「高利貸し稼業」を行なっている。中国に手玉に取られている国は、悲劇と言うほかない。

     

    『大紀元』(6月2日付)は、「中パ経済回廊、中国企業が建設費用水増し請求、30億ドル規模=報告書」と題する記事を掲載した。

     

    中国政府が推進する巨大経済圏構想「一帯一路」の目玉の1つ、「中パ経済回廊」(CPEC)計画は、中国の融資や契約内容の不透明さで窮地に立たされている。パキスタンのイムラン・カーン首相が国民に高額な電気代を支払わせた問題を調査するために発足した監査委員会は、中国企業の略奪行為を非難した。

     

    (1)「620億ドル(約6兆6400億円)規模の同プロジェクトは当初は、港湾や道路の整備、パイプライン、数十カ所の生産施設、パキスタン国内最大規模の空港などを建設する目標を掲げた。米外交誌『ザ・ディプロマット』の5月18日報道によると、同プロジェクトの建設を請け負った華能山東如意電力会社(HSR)サヒワル石炭火力発電所と電力会社ポート・カシム(PQEPCL)が建設費用を水増し、過大請求などの問題が発覚した。パキスタン政府は、中国と「鉄の友情」で結ばれたと国民にアピールしてきた。しかし、中国の会社はパキスタンから利益を巻き上げたとき、少しも手加減しなかった

     

    パキスタンと言えば万年、外貨不足の国として有名である。IMF(国際通貨基金)から、緊急融資を受ける常連国だ。その資金欠乏症に悩むパキスタンから30億ドルもの「巨額詐欺」も同然の水増し請求をしていたとは驚く。中国と接近して損する国は後を絶たないのだ。

     


    (2)「『電力セクター監査委員会』は278ページの報告書をまとめた。独立系電気セクターだけでも(パキスタンにとって)6.25億ドルの損失を算出し、少なくとも三分の一の損失は中国系企業が請け負ったプロジェクトに関わっていると結論付けた。パキスタン政権を主導するパキスタン軍はCPECプロジェクトに深く関与している。同プロジェクトのトップである軍幹部のジャバン・アシム・サリム・バジワ氏は情報放送相(SAPM)の特別補佐官も務め、軍メディア部門である軍統合広報局(ISPR)の局長をも兼任している」

     

    パキスタン政権を支配する軍部は、「中パ経済回廊」(CPEC)計画に深くコミットしている。軍部は裏で中国政府と結びつき、パキスタン政権をコントロールしている。現パキスタン政権発足時に、中国外相が厳しい要求を突付け、IMFからの要求でも中国からの借款条件を公表しないように圧力を掛けたほど。公表されれば、中国に不都合な契約条件が明らかになるためだ。周辺国は、中国の食いものにされている。その一つが、パキスタンである。

     

    (3)「報告書によると、関連プロジェクトのセットアップコストが高すぎたという。例えば、中国企業が請け負った2箇所の火力発電所とも、ミスによって「建設中の利子」がコストとして計算され、早期竣工の可能性も考慮しなかったため、建設費用は大幅に増加、2.04億ドルにものぼった。契約書に記載された工期は48カ月、つまり48カ月分の利息を支払わなければいけないが、実際には27~29カ月で完成した。これで18億ドルも無駄になった。パキスタンの専門チームがこの2つの火力発電所プロジェクトの建設費用を審査したところ、30億ドルも水増しされていたと発覚した。水増し部分は中国山東省の電力会社に23億ドル、PQEPCL社に6.72億ドルがそれぞれ支払われた」

     

    下線部のように、「建設中の利子」がコストとして計算されたという。コストの二重計算になる。この初歩的な「ミス」は、故意に行なわれたに違いない。こういうミスを冒すほど経理に暗い人間が、何十億ドルという契約当事者になっているはずがない。明らかに、故意である。それを見逃す「共謀者」が、パキスタンと中国でタッグを組んでいたのである。

     


    (4)「調査委員会は、華能山東如意電力会社とPQEPCLから2.04億ドルのコストカット、利息計算の修正および関税の調整を提案した。また、ただ2年で、華能山東如意電力会社はすでに初期投資の約72%を回収し、PQEPCL社も運営開始初年度に投資総額の約32%回収したという。報告書は、620億ドル規模の同プロジェクトから中国企業が暴利を得たことが誰にも気付かれなかったとは考えられないとし、会社内部やパキスタン協力会社の油断か意図的に見過ごされた可能性もあると分析した。スリランカ政府とモルディブ政府の経験から、これらの過剰支払いはパキスタン政府指導者の共謀と関係者の汚職によるものだと報告書は示唆した」

     

    下線部のように、初期投資の回収が2年間で72%とか、初年度で32%というのは、あり得ない話だ。「泥棒」にも匹敵する超暴利を貪っている。その分、パキスタンが極貧に追い込まれているのだ。これが、中国の標榜する「一帯一路」の搾取メカニズムである。中国の甘言を信じてはいけない。私は、強くそれを訴えたい。


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    韓国は、日本の半導体輸出手続き規制の撤廃を要求している。その回答期日が、6月1日であった。日本が回答しなかったため、韓国はきょう態度を表明する。GSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)の破棄などをちらつかせている。日本は、旧徴用工補償案を韓国で成立させることに期待しており、この問題が解決しない限り、規制撤廃には応じない姿勢だ。こういう日韓の方針食違いから、また騒ぎが起こりそうである。

     

    『韓国経済新聞』(6月2日付)は、「韓国の輸出規制撤回要請に返答しない日本」と題する記事を掲載した。

     

    日本から輸出規制の解除を引き出そうとしていた韓国政府の圧力戦略が無に帰した。日本に要請した輸出規制解除の期限が過ぎたが、日本側の立場には変化はなかった。韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)効力停止、世界貿易機関(WTO)提訴など報復措置が考慮される中、韓日関係にまた荒波が押し寄せるのではという懸念が出ている。

    (1)「韓国の産業通商資源部は1日、「日本側から輸出規制措置原状復旧に関連して明確な返答を受けることができなかった」と明らかにした。産業通商資源部は5月12日、日本が問題視する点を補完しただけに日本が韓国に取った3大品目輸出規制とホワイト国(輸出管理の優遇対象国)除外決定を緩和する立場を5月末までに明らかにしてほしいと日本側に通知した」

     

    日本が、半導体輸出手続き規制を行なったのは、韓国の半導体3品目の管理状態が緩いためである。その後、韓国は日本の要求通りに管理組織を強化したから、輸出手続き規制を撤廃せよ、と迫っているものだ。この問題は、管理組織を強化したから「明日から大丈夫」という安易なものでない。高度の専門性ゆえ、習熟するまでにかなりの時間を必要とする。日本が、韓国の要求通りに輸出手続き規制撤廃をできない理由だ。

     


    もう一つ重要な点は、この半導体輸出手続き規制が半導体輸出にブレーキとならなかったことである。韓国政府が胸を張って発言しているとおり、何らの損害も発生していない。実損が出ていなければ、韓国が日本に対抗措置を取る理由はないはずだ。韓国国内でのメンツの問題だけであろう。

     

    日韓で暗黙の了解事項されているのは、旧徴用工補償案を韓国が独自で成立させることである。前国会議長の文氏が、補償案を上程した狙いはここにあった。廃案になったため、この問題は宙に浮いている。韓国は、先ずこの旧徴用工補償案を成立させるべきである。日本側は、補償案が成立すれば輸出手続き規制を撤廃すると内々で伝えている。

     

    韓国は、自らのやるべきことを行なわないで、輸出手続き規制の撤廃だけを要求するのでは、実現が遅れるであろう。それに伴う実損はなんら出ていない以上、韓国の要求の意味は薄いのだ。


    (2)「強硬論者の間では政府がGSOMIA効力停止を通じて日本に対する圧力の程度をさらに高めるべきだという声が出ている。韓国政府は昨年11月、日本の輸出規制問題を解消するために韓日対話の突破口を開く条件でGSOMIA終了決定を一時的に延期しただけに、名分があるという主張だ」

     

    韓国は、GSOMIAの効力停止を再び行なう動きもあるという。昨年10月末の期限前、効力停止か継続かで、米韓は鋭い意見の対立を見た。米国防長官らの首脳が、相次いで訪韓して説得した問題である。最後は、米国の圧力でGSOMIAを継続することになったが、「いつでも打ち切る」という前提条件付きである。韓国は、この前提条件を実現すれば良いという主張で、米韓対立の再燃は必至だ。米中対立が深刻化している現在、GSOMIAの果たす役割は大きい。米国から「何を寝言いっているのか」と一喝されそうな話だ。

     

    (3)「米中間の対立が深まる状況で外交戦に乗り出す場合、韓米同盟にまで影響を及ぼすという懸念もある。韓東大の朴元坤(パク・ウォンゴン)国際地域学科教授は「米国は貿易紛争をはじめ、新型コロナ対応、香港国家安全法問題などで中国と激しく対立していて、対中国包囲網を構築する状況で韓日米安保協力の核心であるGSOMIAの終了を望まないだろう」と述べた。政府は次善策として輸出規制をめぐるWTO提訴も検討しているという。しかしWTO提訴手続きを再開しても輸出規制の原状復旧に対する強力な圧力手段になるかは不透明だ」

     

    韓国は、WTO提訴を復活させるとも言っている。だが、輸出手続き規制によって韓国への輸出が止まった訳でない。安全保障上の理由で輸出手続き規制を行なっただけである。WTOでは、安全保障は別格の扱いだ。こういう状況からみて、韓国のWTO提訴復活は、さらに意義が薄れるであろう。


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    ここ5ヶ月の世界は、中国によって完全に振り回されている。コロナによるパンデミックと領土拡張への野望である。同時に、コロナ禍で苦悩する先進国企業の乗っ取り戦術を進めている。西側諸国は、こうして中国への警戒姿勢を強めざるを得なくなった。グローバル主義は、はるか遠くに消えた。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月1日付)は、「世界で保護主義台頭、背後にコロナと中国の影」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルス感染拡大による景気低迷や中国の影響力拡大を背景に主要国で外国からの投資を制限する動きが強まっている。

     

    (1)「コロナ危機の発生以降、世界では自由市場を掲げる国が巨額の補助金を投入し、ハイテクや鉱山、製薬など、自国の有力企業を安値で買い上げようと狙う外国資本への防御策を強化している。これまで国外の投資家を受け入れてきた英国もここにきて、中国系企業による国内ハイテク企業の買収を阻止し、こうした保護主義的な動きに加わった。米国型の外資制限を導入するよう議会の要求が強まる中、ボリス・ジョンソン英首相は5月20日、「われわれは技術的な根幹を確実に守るための措置を必ず導入する」と述べた」

     

    ジョンソン英首相は、新型コロナウイルスに感染し入院して以来、これまでの中国に対する寛容な姿勢が消えたといわれている。病床で、コロナの発症地が中国であることに怒りの炎を燃やしたのかも知れない。中国にとっては、貴重な理解者を敵に回すことになった。

     

    (2)「米国は2月、対米外国投資委員会(CFIUS)の権限を拡大。外資による買収だけでなく、少数株の取得も阻止できるようにした。また、対象セクターも広げ、不動産なども含めた。ドナルド・トランプ米大統領は4月、外国からの望まない投資を阻止するため、「チーム・テレコム」と呼ばれる連邦機関グループによる諮問組織を正式に発足させる大統領令を出した。その5日後、チーム・テレコムは中国国有の中国電信(チャイナ・テレコム)の米国内での営業免許取り消しを勧告した」

     

    米国は連邦機関グループによる諮問組織が、国内で営業免許を持つ中国国有の中国電信(チャイナ・テレコム)に対し、免許取り消しを勧告した。米国にとって望まない投資であるという判断だ。すでに、既存投資ですら営業停止という強硬手段が取られている。米国が、中国企業のスパイ活動を警戒している証拠である。

     

    (3)「日本やカナダ、オーストラリア、ドイツ、フランス、イタリアなどの先進国も足元、コロナ流行に伴う不況で敵対的買収を仕掛けられかねないとの懸念から、外資規制を強化している。各国政府は、対象セクターを広げたり、審査が必要となる外資の基準を引き下げたりしている。イスラエルも最近、米国からの圧力を受けて、国内最大の淡水化施設の建設計画で、香港の複合企業による入札を却下した。これまで保護主義的な措置に強く反対してきた欧州連合(EU)も、政府による企業救済を認めているほか、規模を問わず重要セクターが投げ売りされる事態に対して警鐘を鳴らしている

     

    G7は、すべて中国の投資に警戒警報を出している。日本も同調した。従来の外資投資は、株式の10%以上について届け制であった。それが、何と1%以上と規制を下げ、水も漏らさぬ体制で「中国資本」排除姿勢を鮮明にしている。EUも従来の姿勢を変えて「中国警戒論」に転じるほど。中国は、毛嫌いされる存在に成り下がった。

     

    (4)「こうした中、EUの執行機関である欧州委員会は、市場の定義に関する規定を見直しており、巨額の補助金を受けた外国企業からの買収を阻止できるようにする見通しだ。新規定は主に、中国を念頭に置いたものだとみられている。防御策はハイテク企業に限らない。フランスは3月、国家安全保障上の懸念を理由に、中国投資家への鉄鋼所の売却を却下した。同国はまた、政府が持ち分を握る上場企業70社を守るため、200億ユーロ(約2兆4000億円)の基金を創設した」

     

    EUは、中国資本と名前を出さないまでも、「巨額の補助金を受けた外国企業からの買収を阻止」という名目で、撃退する体制を取る。中国資本が海外企業を傘下に収める夢は、もはや不可能になった。

     


    (5)「中国による投資への反発が強まる中、保護主義も広がっている。国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、経済規模の大きい世界主要10カ国のうち9カ国は2017年以降、外資を規制する新たな措置を導入した。少なくとも20の案件(合計およそ1620億ドル相当=約17兆4600億円)が2016~2019年に国家安全保障を理由に阻止、または撤回された。経済協力開発機構(OECD)によると、外国からの投資は今年、少なくとも前年比で3割落ち込む可能性が高いとみられている」

     

    中国が、グローバル主義を壊した張本人である。世界主要9ヶ国は、中国資本の乗っ取りを防ぐために、外資を規制する新たな措置を導入した。これだけ警戒されている中国が、世界のリーダーになれるはずがない。中国は、そういう客観的な見方ができない状況で猪突猛進している。極めて危険と言うほかない。


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    中国は、自らが発症地となった新型コロナウイルスによる都市封鎖によって、経済基盤は大きな痛手を受けている。先進国は、一斉に財政支出を拡大し救済に乗出している。中国には、もはやその力が尽きたのか、2005年に禁止したはずの露店を奨励し、雇用対策の柱にし始めている。李首相までがこれを奨励する事態だ。中国経済の基盤は、これほどまでに脆弱そのものだ。

     

    習氏は48日、中国共産党の最高指導部の会議で「我々は複雑で厳しい国際的な感染状況と世界経済の情勢に直面しており『底線思考』を堅持しなければならない」と訴えた。「底線思考」とは、最悪の事態も想定して行動するとの意味である。『日本経済新聞』(6月1日付)がこう報じるように、中国経済は「最悪事態」へ嵌り込んだ。すべて、習氏の独裁体制がもたらした危機である。

     

    『大紀元』(6月1日付)は、「中国、取り締まる対象の『露店』を奨励へ 景気回復の対策に」と題する記事を掲載した。

     

    中国当局が5月下旬、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)と全国人民政治協商会議の閉幕後、景気回復対策として、「地攤(ディータン、露店)経済」を推し進めている。当局は2005年以降、都市景観を悪化させているなどとして、各地の「城市管理行政執法局(城管)」を通じて、露天商への取り締まりを強化してきた。当局の政策転換について、中国ネット上では、もてあそばれたとの声が上がった。

     

    (1)「中国の李克強首相は5月28日、全人代閉幕後の記者会見で、月収1000元(約1万5000円)の中国国民は6億人いると発言した。また、「1000元では、中規模の都市で部屋を借りるのも難しい」と話した。李首相は「雇用の安定、国民生活を守ること」が政府の最も重要な任務だと強調し、四川省成都市政府が雇用のために「露店経済」を導入したことを称賛した。中国当局は1980年代初期、文化大革命で壊滅的な打撃を受けた経済を立て直すために、露店や屋台などの路上の経済活動を奨励していた

     

    「朝令暮改」と言うが、「露店経済」もその類いだ。2005年、都市の美観を損ねるとして、強引に露店を禁止した。それから15年、今度はその露店を奨励するという。2005年と言えば、中国経済がGDP世界2位に向けて大車輪の急成長を遂げていた時期である。最早、露店に依存せずとも雇用を確保できるという強気の姿勢であった。それが現在は、露店を奨励しない限り失業者を減らせない。そういう切羽詰まった環境に追い込まれている。習近平氏の完全な敗北である。1980年代の文化大革命時、経済の大混乱を乗り切る手段として露店経営が奨励された。現在は、その二の舞いを演じているのだ。

     

    (2)「新型コロナウイルスのまん延に伴い、国内での経済活動停止や消費低迷、海外からの受注激減などで、中国経済は大打撃を受けた。今年3月、成都市の都市管理当局、城市管理委員会は新たな規定を公表し、市民が繁華街で露店や屋台を経営することや、商店が道端に臨時の出店を置くことを許可した。これ以降、上海市、甘粛省、浙江省など各地の地方政府も同様の政策を打ち出した

     

    成都市で、この3月から始まった露店奨励は現在、上海市、甘粛省、浙江省など各地に広がっている。華やかな都市の上海の路地裏では、この露店が軒を連ねて呼び込みをやっているのだろうか。

     

    (3)「5月27日、中国共産党中央精神文明建設指導委員会は、今年の「文明都市」ランキング評価の基準に、「道端での露店や市場の開設、露天商による営業」の項目を設けないと発表した。李首相の発言を受けて、「露店経済」はSNSやメディアの注目ワードとなった。中国メディア・証券日報などは、相次いで評論記事を掲載し、露店経済は雇用の安定化に重要な役割を果たすと主張し、「露店は不衛生で無秩序だ」とする今までの論調を変えた」

     

    「文明都市」ランキング評価では、「露店のない」ことが基準に入っていた。それが、今ではこの露店項目を削除しているという。メディアの評論記事では、「露店経済は雇用の安定化に重要な役割を果たす」と主張する始末だ。中国経済が、1980年代の文化大革命時に匹敵する混乱状態であることを物語っている。

     


    (4)「一部の中国人ネットユーザーは、当局の政策転換について深刻な経済悪化を反映したと冷ややかな見方を示した。

    「露店を推進しているということは、景気がかなり悪いということだ」

    「中国経済に冬がやってきた。単に資金を供給するだけでは、もう問題を解決できないという状況だ」

    「私が子どもの時、(文化大革命の)四人組が失脚した後、中国は露店経済を発展させた。自分が中年の大人になった今、またも露店経済に出会うなんて」と、中国経済の現状は文化大革命が終わった後の状況に似ていると示唆した」

     

    (5)「中国当局が2005年に各地で屋台や露店への取り締まりを強めて以降、城管の職員と露天商の衝突や、職員らによる暴力事件が頻発した。ネットユーザーは、当局の政策に翻弄されていると不満の声を上げた。

    「景気が悪くなったから、(メディアは)毎日喜んで露店経済を報道して、政策をほめている。でも、城管が露天商に暴力をふるって、商品を無理やり没収した時、なぜ報道しなかったのか?」

    「露店や屋台を排除するとき、景観に悪いとか不衛生だとか批判していたのに、今は『(屋台から食べ物の)いい匂いがする』と称賛しているのはおかしい」

     

    SNSに現れた庶民の怒りと嘆きだ。習氏は、「中国の夢」を煽って8年、追放したはずの露店経済を奨励せざるを得なくなった。習氏の罪は重い。


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