勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    新型コロナウイルスによって、欧米は地獄の日々を送ってきたが、ようやく曙光が指してきた。感染率の「基本再生産数」(RO)が1を下回ってきたからだ。1人の感染者が、1人以下の感染者を出す状況にまで事態が改善されてきたのである。こうして、経済活動再開が具体的な日程に上がってきた。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月21日付)は、「コロナ感染の変数『RO』封鎖解除に向け注目」とだいする記事を掲載した。

     

    欧米各国は、新型コロナウイルスの流行に関する重要な変数をある水準まで低下させることに成功したとしている。それは、各国経済を凍結状態に陥れたロックダウン(都市封鎖)によって、感染拡大の抑制に成功したことを示唆しているという。

     

    (1)「この変数は基本再生産数(RO)で、新型コロナウイルスの感染者1人が平均で何人に感染させるかを示す。各国政府が何億人もの人々に自宅待機を強いている施策の緩和を模索する中で、この数値が大いに注目されるだろう。基本再生産数が1未満であれば、流行は収まりつつある。1未満でも1に近ければ近いほど感染者の減少は遅く、流行再燃のリスクが高い。1以上にとどまれば、流行は勢いを増す。欧州全域と米国の一部では1未満に低下しており、これは良い知らせだ。基本再生算数の推定値は、確認された感染者数および入院者数の伸びに関する情報に基づいている」

     

    RO(基本再生産数)が、1未満になると流行が収まりつつあるというシグナルである。欧州全域と米国の一部に、明るさが見えて来た。これは、日本にとっても良い情報である。

     

    (2)「厄介なのは、この数値が1をわずかに下回るか上回るかという点に、ウイルスの流行が非常に敏感に反応することだ。このため、各国政府は学校・工場・店舗の再開といった規制緩和措置がこの数値にどう影響するかを予測し、その影響をモニターし続けなければならない。数値が再び1を上回れば、一部の規制を復活させざるを得なくなるかもしれない」

     

    ROが、1を大きく割り込むこと(例えば0.2~0.3)が経済活動再開のメルクマールになる。1を僅かに下回る程度では、再び1を上回る危険性が高いのだ。

     


    (3)「米国でコロナ危機の中心となっているニューヨーク州では、アンドリュー・クオモ知事が19日、同州の基本再生産数が0.9に低下したことを明らかにした。ただ、「ここから先に進む上で許される誤差の範囲は極めて小さい」と指摘。数値がわずかに上昇して1.2となれば、「ウイルスは拡散し、流行となり、大流行となり、制御不能ということになる」と語った」

     

    注目の米国ニューヨーク州では、ROが0.9になった。この程度では、再び大流行の危機が高まる。

     

    (4)「欧州の政府も、数値が1未満になったと述べているが、新型コロナとの戦いに勝利したと言うにはほど遠く、数値は再び上昇する可能性があると強調している。フランスのエドゥアール・フィリップ首相は19日、フランスではこの変数が0.6に低下したと述べ317日から実施されている封鎖措置のおかげで感染拡大のスピードが「急激に落ちている」ことを示すものだと語った。武漢での事例について中国の科学者が主導して行った研究では、厳格な都市封鎖によって再生算数は3.86から0.32に低下したことが示されている」

     

    フランスも、ROが0.6にまで低下してきた。封鎖措置の効果が急激にでてきたもの。最近の数値は、何も対策がなされなかった場合の再生算数として多くの研究で推定されている平均34から大幅に低下している。感染のスピードが落ちなければ、一部の重症患者によって大半の国々の医療システムが崩壊する恐れがあった。

     


    (5)「フランスのフィリップ首相は19日、再生算数の推定値について、現在511日までとなっている封鎖措置を段階的に解除する際に使用する数値の1つになると述べた。英国では政府の主席科学顧問パトリック・バランス氏が先週、国内の再生産数は1を割り込んだ可能性が非常に高いが、恐らく0.5を上回っていると述べた。これは、新型ウイルスの流行は縮小しているが縮小ペースは不透明という意味だ」

     

    英国でも、封鎖措置解除の目安はROの低下である。現状では、0.5程度だが、これではまだ、自信をもって解除に踏み切れないという。

     

    (6)「科学者はなお、ロックダウンを緩和していく手順を調整するのに役立つとみられる予測モデルを研究している。デンマークでは、11歳未満の児童を対象に学校を再開した。これは、他の国でも初期に採用される緩和策の1つになるとみられる。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの科学者らによる学校閉鎖に関する研究によると、学校閉鎖だけでは「死者数を24%減らすだけで、他のソーシャルディスタンシング(対人距離の確保)措置と比べ効果が非常に小さい」という」

     

    ソーシャルディスタンシング(対人距離の確保)措置が、RO値を下げるうえで最も効果があるという。新型コロナウイルスが、ヒトからヒトへの感染である以上、対人距離の確保が最優先策になるのは当然であろう。RO値を0.2~0.3まで引下げるのは、人間の忍耐度に比例するようだ。

     

     

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    韓国が、朝鮮戦争参加国へマスク贈呈検討中と報じられた。朝鮮戦争で、日本は自衛隊の前身である警察予備隊が発足したばかりであり、正式な支援要請は受けなかった。ただ、旧日本海軍の関係者が、米軍の要請により秘かに機雷の掃海作業で出動していたことは伝えられている。

     

    韓国が、マスク外交によって、国連軍の一員として戦闘行為へ参加した諸国へマスクを贈呈することは、独自判断で行なえばよいことで、日本を除外しても当然であろう。日本の国民感情から言えば、むしろ「貰わない」方を選ぶかも知れない。それほど、日韓関係は悪化しているからだ。

     

    『朝鮮日報』(4月21日付)は、「韓国政府、米国・日本と韓国戦争参戦国にマスク支援を検討」と題する記事を掲載した。

     

    韓国政府が米国と日本、そして韓国戦争(朝鮮戦争)参戦国などにマスク支援を検討していることがわかった。

     

    (1)「韓国日報は20日、韓国政府関係者の話として、丁世均(チョン・セギュン)首相が新型コロナウイルス対策会議で、「保健用マスクを輸出・支援すれば国格をアップグレードするのに助けになるだろう」としながら対象国として米国と日本を具体的に取り上げたと報じた。これに対し食品医薬品安全処と外交部などが必要な措置を論議中だという」

     

    韓国から、これ見よがしにマスクを支援して貰えば、後になって外交面で何を言ってくるか分からないという危惧はある。

     


    (2)「日本に対する支援は慎重に推進中だという。韓国政府関係者は韓国日報に「1日のマスク生産量が1500万枚まで上がる今月末または5月初めごろには方針を決められるだろう。世論調査など国民の意見を聴取する過程を必ず経て、特に日本に対する支援はより慎重に決めることになるだろう」と話した」

     

    日本は、支援を受けるべきでなかろう。韓国政府が、世論調査という「スクリーニング」をかけてまで、支援先を決めるというお情けでマスク支援をして貰う必要はない、と断るべきだ。日本政府に意地があるならば、毅然として石にかじりついてでもマスク増産体制を早急に立てるべきだ。安倍政権の鼎の軽重が問われる。


    (3)「一方、米国と日本以外に韓国戦争に参戦した国に対し「恩返し次元」のマスク支援検討も進められているという。該当国は米国、フランス、英国、カナダ、コロンビア、フィリピン、タイ、エチオピアなど16カ国だ」

     

    国連軍として、朝鮮戦争に参戦した国には「恩返し次元」のマスク支援を検討中という。それは結構なことであり、大いにやるべきだろう。

     

    韓国政府が、日本へのマスク支援について世論調査するとは、日本としても聞き捨てならぬ話である。これでは、日本の立場はない。施しを受けるに等しい行為であるからだ。

     

    韓国では、先の総選挙で与党が「反日」を高く掲げ、「韓日戦争」と銘打って国民に反日を訴えた経緯がある。これほどまでに侮辱してきた韓国から、マスク一枚といえども恵んで貰うような振る舞いを受けることはない。日本政府が、その気になればマスク増産は困難な問題でないはずだ。

     

    韓国での日本関連記事では、日本のコロナ感染者急増を大喜びするコメントが列をなしているという。やっぱり、予想通りの事態が起こっていたのだ。大統領が「反日」を堂々と宣言する国である。国民が、これに呼応して「日本批判」を大合唱するのは致し方ないであろう。

     

    日本経済が、消えるという説まで唱えているほどだ。韓国経済が、日本の分を引き受ける「反射利益」(漁夫の利益)で大発展する。こういうコメントまで登場しているのだ。韓国経済の置かれている苦境を代弁している。劣等感の裏返しだ。

     


    『中央日報』(4月14日付)は、「
    日本のコロナ感染拡大、喜ぶことか」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のナム・ジョンホ論説委員である。

     

    (4)「日本国内の新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)の感染者数が急増しながら、関連記事に反日コメントが列をなしている。「地獄の門が開かれた。1万人突破は時間の問題」「絶対に助けてはいけない」--背筋が寒くなるような内容ばかりだ。2011年東日本大震災の時に560億ウォン(現レートで約49億5000万円)以上の寄付を集めた韓国人の性格がなぜここまで殺伐とするようになったのか」

     

    日本を羨ましく思ってきた気持ちが、逆転して「日本を呪う」気持ちに変わっている。その背後には、韓国経済の疲弊による閉塞感が、こういう感情を引き起していると見る。


    (5)「日本国内の新型コロナの感染拡大を心配しなければならないのは人道主義のためだけではない。在日同胞だけで60万人、日本への留学生も1万7000人になる。一方ではコロナで日本経済が消える場合、韓国側が反射利益を得るだろうという期待もあるようだ。日本企業が路頭に迷えば、ライバルの韓国会社側が海外占有率が高まるという論理だ。だが、他の外国にも競争者が山程いる世の中だ。日本の分をすべて韓国会社が占めることができるという保障はない」

    下線部分では、日本経済が消えるという期待感まで出ている。こういう「空想」に胸を膨らませているところに、韓国経済の行き詰まりが現れている。ここまで、日本を貶めようという国民から支援されたマスクに、日本人は喜ぶだろうか。

     

     

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    新型コロナウイルスによるビジネス中断は、日本企業に新たな「働き方改革」を迫っている。同じオフィスに定時に出勤する。これまでのスタイルが、テレワークで変わるという説を唱える経営者が登場してきた。

     

    日本電産の永守社長が、次のように宣言したのだ。「コロナ終息後は全く違った景色になる。テレワークをどんどん取り入れる劇的な変化が起きる。東京都内の会社に勤める人が、山梨県に仕事部屋のある広い家を建てるようなケースが増えるだろう。企業は通勤手当をなくす代わりに給与を上げるほか、サテライトオフィスを作るなど抜本的に環境を改善すべきだ」(『日本経済新聞』4月20日付)。

     

    言行一致で有名な永守社長の発言である。必ず実行するだろう。通勤手当がなくなって、その代わり、本給が上がるというのだ。永守氏は、郊外の広い一軒家での生活が、テレワークにピッタリという。誰でもこの条件を満たせる訳でない。そこで、考案されるのが住宅リフォームである。テレワークが可能なスペースを確保して、能率を上げるという趣向である。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(4月19日付)は、「在宅勤務に厳しい日本の住宅」と題する記事を掲載した。

     

    企業戦士として世界最大級の経済を築き上げた日本のサラリーマンとサラリーウーマンが今、経験したことのない厳しい戦いを強いられている。その戦いの前線は自宅、格闘する相手は、テントや耳栓、部屋を歩き回る幼子だ。

     

    (1)「日本の大手住宅メーカーのトップによれば、新型コロナウイルス対策でテレワークを強いられるなかで、日本の労働者は仕切りのないリビングルームと奮闘している。この状況は日本の住宅設計のあり方に根本的な再考を迫るという。こう語るのは住友林業の市川晃会長。同氏の発言の背景には、日本のオフィスワーカーが在宅勤務のロジスティクスと悪戦苦闘し、普通のマンションや家がいかに仕事に不向きかを思い知らされている実態がある。大抵の日本の住宅は非常に小さい。ホワイトカラーの共働き夫婦2人分はもとより、1人が邪魔されずに働ける独立した空間すら設けられている住宅はほとんどない」

     

    昔と言っても、つい30年ぐらい前までは、「男の城」と称して書斎を持つのが夢だった。新居を持つと、先ずは書斎が通り相場であったのだ。親の遺産を引き継いだ家庭では、書斎があると思う。だが、共稼ぎで通勤に便利なマンション暮らしになると、書斎など贅沢品だ。

     

    一方、テレワーク時代になれば、無理して都心の値段の高いマンションに住む必要はない。親の旧宅を見直すのも一法であろう。住宅ローンが減って蓄財も可能となり、人生2000万円貯蓄時代を乗り切れる希望が出てくるにちがいない。

     


    (2)「日本の住宅メーカーは、これまで意図的に住宅内の共有スペースを最大化し、これを家族にとっての恩恵として売り込んできたと市川氏は指摘する。日本の職場では「プレゼンティーイズム(職場で長時間居残ることを良しとする考え)」が根強く、在宅勤務の普及を妨げていたことがその背景にある。「共有のオープンスペースが広ければ家族が必然的に互いに顔を合わせることができ、互いの距離が近くなるという考え方で、支持されていた。しかしこれからは、人々はそれを求めつつも、自宅内に個室も欲しがるようになるだろう」(市川氏)という。新築住宅では「SOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)」設備の設置が不可欠になるとみている」

     

    これからはテレワークの普及で、SOHO設備がビジネスパースンの必需品になる。住宅メーカーも抜け目なく、売り込む時代になるのだろう。

     

    (3)「ホームセンター大手のDCMホールディングスでは、この2週間でキャンプ用小型テントの売り上げが3倍に増えた。在宅勤務を迫られた会社員が、自分の空間を確保し、仕事のビデオ会議に子供が映り込まないようにと入念な対策を講じているというわけだ。日本有数のオフィス機器大手サンワサプライ(岡山市)は、組み立ててリビングの隅に設置できる「プライバシーテント」を発売した。高さは150センチで、机1台と椅子1脚がぎりぎり収まる完全に囲い込まれた部屋になる。誕生したばかりのホームディビジョン(住居空間分割)市場への参入だ」

     

    緊急対応で、「プライバシーテント」なるものが人気を集めているという。

     

    (4)「同社には問い合わせが殺到しているという。だが、日本、そして世界でこの危機が今、この先何年も繰り返し再発するかもしれないことを考えれば、174ドルの新製品は一時的な解決策にしかならない。天窓と側面のカバーを閉め、外が見える窓のブラインドを下ろしても、周囲の音は遮断されないからだ」

     

    前記の「プライバシーテント」は、74ドル(約8000円)と手頃なお値段である。緊急避難用には良いとしても、やっぱり本格的な「書斎」がほしくなるだろう。

     


    (5)「住友林業と競合の大和ハウス工業、旭化成は、新築住宅の設計の見直しに取り組み始めた。既存の一軒家、マンションを対象にリフォームサービスも始めた。日本政府は近年、企業に対して、従業員により柔軟な勤務体系を認める「働き方改革」を進めるよう働きかけてきた。新型コロナウイルスに関連して日本人従業員に出された在宅勤務の指令は、その一方で、実際の準備が整っていなかった実態を露呈させた。東京商工会議所が最近実施した調査によると、東京都内の中小企業の間では、在宅勤務制度を導入した企業は4分の1程度にとどまり、半数以上が導入の計画はないという」

     

    日本の大手住宅メーカーは、すでにリフォームサービスに着手しているという。働き方改革が、住み方改革をもたらそうとしている。早いスピードで、世の中を変えていくであろう。


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    韓国与党は、先の総選挙で国民全員へコロナ見舞金を支給すると公約した。だが、財源不足が明らかになって立ち往生している。そこで編み出されたのが、資産家への寄付依頼案という杜撰さである。選挙のために甘言を弄したが、選挙後5日で早くも馬脚を現すというみっともない姿をさらしている。

     

    韓国財政は、文政権になってから急速に悪化している。これまで韓国は、国債格付けが日本よりも2階級上で、それを自慢してきた。対GDP比の国債発行残高は、少ないことが理由である。「反日韓国」として、財政悪化で日本への優位点を失うことを恐れたのか、資産家に寄付を募る案は、国家の体裁をなしていない無様さである。

     

    「中央日報」(4月21日付)は、「全国民に災難支援金を与えるから『金持ちは寄付してほしい』という韓国与党」と題する記事を掲載した。

     

    「共に民主党」が、新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)事態にともなう緊急災難支援金をめぐり全国民の支給に向けた妙手を苦心している。財政はギリギリとなっているのに総選挙で「全国民100%災難支援金支給」を約束したためだ。

     

    (1)「民主党の李仁栄(イ・イニョン)院内代表はこの日、KBSラジオ番組に出演して「選挙過程で国民の100%に緊急災難支援金を支給することが望ましいという立場を貫いてきた。また、そのような方針で国民的共感が形成されている」として「(政府側と)バランスの取れた解決方法を探っている」とした。政府は公式的には与党と3月調整した通りに下位70%(中位所得150%)まで支給する方針で準備を終えた。丁世均(チョン・セギュン)首相はこの日、国会施政演説で「支援対象間公平性とかぎられた財源などを考えて一部の高所得層を支給対象からやむを得ず外した」と明らかにした」

     

    与党が、総選挙での公約を財源面での理由で守れないとは、どういうことだろうか。選挙に勝つためには、「何でもあり」という不信感を国民に与えるだけだ。しかも、大統領府との予算面での調整もしていないとは、国家と言い難い不統一を曝け出している。

     


    (2)「この日、民主党では「全国民支給」と「財源限界」を合わせるために

        高所得層の自主的な辞退

        1世帯当たり支給額の下方修正

    などのアイディアが登場した。キム・ソンファン代表秘書室長は、フェイスブックに投稿して「基本的に今回のコロナ災難は性格上全国民に支給するのがはるかに正しいと考える」として「ただし、高所得層への支援と行き過ぎた財政が問題であれば所得余力がある層は支援金寄付キャンペーンでも積極的な消費を促すことを通じて還流させ、財政に困難があれば4人世帯の基準で100万ウォン(約8万7000円)を80万ウォンに引き下げれば良いと考える」と提案した」

     

    国民全員にコロナ見舞金を支給すると言いながら、高額所得者は辞退せよという案は、公約違反である。しかも、財源不足を理由に4人世帯の基準で100万ウォン(約8万7000円)を80万ウォンに引き下げるとは、言語道断の振る舞いである。まさに、「公約の食い逃げ」に等しい行為だ。

     

    (3)「「支援金寄付」では、一種の「ノブレス・オブリージュ(指導層が持つ道徳的義務)」キャンペーンを展開するということだ。ウォン・ヘヨン議員もこの日、フェイスブックに「全国民に災難支援金を支給する一方で、高所得層の自主的な寄付で社会連帯協力基金を作ろうという金慶洙(キム・ギョンス)慶南(キョンナム)知事の提案に同意する」と書いた。これに先立って金知事が6日出したアイディアに注目した。支給額を100万ウォンから80万ウォンに引き下げる案は、当初支給対象から外された上位30%まで支給する代わりに100万ウォン(4人世帯基準)だった支給額を減らそうという提案だ

     

    支給額を100万ウォンから80万ウォンに引下げる案は、最初の提案に戻ることだ。所得上位30%を含めると財源が足りないから、公約違反であるが支給しない、とする案である。要約すれば、次のようになる。

     

    与党は選挙に勝つため大風呂敷を広げ、所得上位30%まで含む全国民に支給するから投票してくれと言った。だが、総選挙では予想外の大勝になったので、やっぱり高所得者には支給しない。「だまし討ち」である。しかも、寄付を強要するとは、完全な公約違反である。

     


    (4)「青瓦台(チョンワデ、大統領府)は22日、非常経済会議で大々的な雇用対策を発表する予定だが、この時「雇用金融緩和」を出しながら1世帯当たり支給額を減らす場合、支援金の縮小に対する反発を和らげることができるのではないかという見方も党内にある。だが、金額を引き下げるのは「下位70%」に与える金を「上位30%」にも与えるという論議を呼んで、当初100万ウォンを期待していた人々を刺激する可能性がある。また、社会指導層の支援金返済も「与えたものを取り戻すこと」という論議の中で富裕層が自主的に行動するかどうかが不透明であるうえに、結果的には企業家、公務員、著名人の顔色をうかがうような寄付になるのではないかという声もある」

     

    いかにも、韓国的なやり方である。日韓問題もすべてこの便宜主義で反古にされてきた。韓国ドラマを見ていて気付いたのは、「約束」という言葉(発音)が出てくることだ。朝鮮社会には古来、「約束」という言葉がなかったのであろう。それが、日本統治下で日本から持込まれた概念として使われている。いはば、約束は「外来語」であるから、未だに単なる言葉に過ぎないのだ。約束=契約は、近代市民社会の基本ルールである。韓国には、それが根付かないのである。

     

     

    テイカカズラ
       

    英国政府が、都市封鎖の解除を巡って意見が対立している。解除派は経済重視である。反対派は、再発を恐れているもの。この議論は、いずれは日本でも直面する問題である。あらかじめ、警戒宣言解除の際の条件を決めておくことが重要であろう。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(4月20日付)は、「英内閣、都市封鎖の解除巡り亀裂」と題する記事を掲載した。

     

    英国のジョンソン首相は、新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウン(都市封鎖)を解除するペースを巡る閣内の意見対立に直面している。同時に、コロナ危機が最初に英国で表面化した時に「職務中に行方不明」(注:首相のコロナ入院)になったとの批判にも晒されている。ロンドン郊外にある英首相別荘「チェッカーズ」で新型コロナウイルス感染症から回復しつつあるジョンソン氏は、首相の職務に復帰した際に、感染が完全に収束する前に経済活動を再開すべきかどうかの決断を下すという大きな試練に直面する。

    ゴーブ内閣府担当相とスナク財務相は迅速な経済活動の再開を主張する一方、ハンコック保健相は感染が収束してからロックダウンを緩和すべきだとしている。

     

    (1)「ある政府高官によると、ジョンソン首相の最側近であるカミングス首席顧問は、慎重派のハンコック氏を支持しているのに対し、セドウィル内閣官房長官はより強硬な路線を取っており、閣僚間の緊張が一段と高まりつつある。スナク氏は財務省に対し、コロナ危機から経済を「U字回復」させるモデルの策定を指示した。「U字」は迅速な景気回復は期待できないとの懸念を反映している。同氏が最も懸念しているのは、失業した労働者が早期に再就職できないのではという点だ。だが同氏の盟友らは、外出制限が解除されても一部の人はすぐに職場に戻らないのではないかと懸念している」

     

    内閣は、早期の封鎖解除派と慎重派の二つが対立している。解除派は、早期の職場復帰を重視しているもの。反対派は、労働者がすぐに職場に戻らないのでないかと危惧している。

     


    (2)「対立の争点は、1人が平均して感染させる人数である「基本再生産数(R値)」がどこまで低下してからロックダウン解除を始めるかだ。政府関係者によると、ゴーブ氏とスナク氏はR値を新規感染者数が増加しない1未満に持続的に維持できる状態になれば制限の解除を開始できると考えている。閣内の対立について最初に報じた英紙サンデー・タイムズは、ゴーブ氏が他の閣僚に対し、新規感染者(と死亡者)が引き続き出てもNHS(国民医療制度)が対応できる範囲内に留まるよう「ギリギリの線を攻める必要がある」と語ったと伝えた。だがハンコック氏は、再び感染のピークが訪れれば英国は耐えられないとして、R値がゼロに近くなってから経済活動を再開すべきだと主張する。最大の問題は現在の政府によるウイルス検査能力が不十分なことだ」。

     

    都市封鎖解除のポイントは、「基本再生産数(R値)」が1未満か、「ゼロ」近傍になるかの点である。経済重視派は、「R≦1」の場合。慎重派は「R=0」である。理想的には、慎重派の条件が実現したときであろう。

     

    (3)「(解除積極派)ゴーブ氏は19日、「今月末までに110万件の検査を可能になる」と述べたが、現時点の検査能力は1日当たり38000件に過ぎない。検査能力の強化と接触者追跡は解除戦略のカギを握る。ある政府顧問は、ジョンソン氏は極めて重大な決断を迫られると語った。「(R値を)ゼロまで持っていくのか、それともロックダウンの解除を開始するのか。英国が直面する最大の政策課題だ」。世論調査では英国民の多くがロックダウンの維持を支持しており、この方針を支持する関係者は、ゴーブ氏とスナク氏の考え方はリスクが大きすぎると主張する

     

    英国世論調査では、国民の多くが依然としてロックダウンを支持しているという。不安でマスクを外せない人たちは、早期の封鎖解除に反対している。

     

    (4)「保守党のある有力政治家は、「R値を1未満に保つことができるという考え方は、ウイルスの感染拡大を水道の蛇口をひねるように制御できるという前提に立っている」と述べた。英政府は、ロックダウン解除のスケジュールは政府の緊急時科学諮問グループ(SAGE)からの助言に従って策定したいとしている。同グループは様々な解除戦略が与える影響について来週報告書を出す予定だ。ウィリアムソン教育相は、511日にも学校を再開する計画があるとの報道を否定した」

     

    「R≦1」という考え方は、ウイルスの感染拡大を自由自在に制御できるという前提に立っていると批判している。再感染防止には、「R=0」近傍にまで引下げる必要があるというのだ。国民は、こちらの方に共感を覚えるのでなかろうか。


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