勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    日韓首脳の電話協議が9月24日、韓国側の要請で20分間行われた。話合われたテーマは、旧徴用工賠償問題がメインであった。菅首相は、これまでの日本側の主張を繰返し、韓国が解決策を提示するように求めた。これに対して、文大統領は「両国で受入れ可能な策を探す」と答えたという。この文発言が実行されれば、昨年末、文国会議長提案がもう一度、俎上に上がる可能性も出て来た。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月24日付)は、「首相『元徴用工など是正要求』、文氏『受け入れ可能な解決策探る』」と題する記事を掲載した。

    菅義偉首相は9月24日、首相官邸で韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と電話で協議した。元徴用工問題に触れ「非常に厳しい状況にある両国関係をこのまま放置してはいけない」と伝えた。文氏は「両国政府とすべての当事者が受け入れられる最適な解決方法をともに探したい」と提起した。菅首相の就任後、初めてとなる文氏との協議は約20分間だった。

     

    (1)「首相は、「日韓両国は極めて重要な隣国だ」と述べ、北朝鮮情勢を巡る日韓、日米韓の連携が重要だとの認識を示した。元徴用工問題は日韓関係を健全に戻すきっかけをつくるよう文氏に求めた。首相は協議後、記者団に「様々な問題に関する日本の一貫した立場に基づいて、韓国に適切な対応を強く求めていきたい」と訴えた」

     

    私のメルマガ193号(9月24日発行)で、韓国外交は行き詰まっており、中国の「恫喝発言」によって一層、孤立感を深めている。それゆえ、日本へ救いを求めると予測した。24日、韓国側の要請で日韓首脳協議が行なわれた。その結果は、日本側へ歩み寄る姿勢を見せたのだ。

     

    (2)「日本は徴用工問題を巡り2018年10月の韓国大法院(最高裁)判決が1965年の日韓請求権協定を踏まえておらず、国際法違反だと主張してきた。政府は関係改善には、まず韓国側が解決策を示す必要があるとの立場だ。外務省幹部は「新政権でも原則は全く変わらない」と語る。韓国側からは菅政権下での関係改善への期待がにじんだ。同国政府によると、文氏は電話協議で「菅首相の就任を契機に両国間の懸案解決のため、心を新たにして意思疎通への努力を加速していこう」と呼びかけた」

     

    韓国は、菅首相就任を祝賀する外交文書を送ってきた。それは、美辞麗句が並びこれまでの反日攻撃からは想像もできない「親愛の情」を示したのだ。韓国はこの文章通り、首脳協議では、心を新たにして問題解決へ向けて努力しようとの態度を明らかにした。これまでにないことかも知れない。

     

    (3)「文氏はこれまで元徴用工問題に関して「司法判決を尊重する」と話し、原告が受け入れ可能な案が必要との立場を示してきた。今回は「両国政府とすべての当事者が受け入れられる最適な解決方法」に言及した。日本政府の立場に沿う姿勢を示した点で踏み込んだ。韓国は内政では新型コロナウイルスに伴う経済の悪化からの回復が見通せない。外交では最優先課題である北朝鮮との融和が行き詰まった。元徴用工訴訟で原告が差し押さえた日本企業の資産の現金化の手続きが進み、このままでは日本と報復合戦に陥るとの想定が韓国政府内にあった。首相交代を機に対話を進め事態悪化を避ける判断に傾いたとみられる」

     


    文氏は、「両国政府とすべての当事者が受け入れられる最適な解決方法」に言及した。日本政府の立場に沿う姿勢を示した点で、韓国が歩み寄る姿勢を見せ始めた。韓国が、差し押さえている日本企業の資産を売却すれば、日本のさらなる報復を招き、韓国経済は大きな打撃を受ける局面に向かうところであった。今回の、日韓首脳協議をきっかけに韓国の譲歩案が明らかになれば、日韓の調整が進む可能性も生まれよう。

     

    (4)「日本政府によると協議は韓国側から打診があった。日本側には「関係改善への意思だ」との受け止めがある。元徴用工問題以外にも日韓間の懸案は多く、関係改善の糸口は見いだせていない。日本の対韓輸出管理の厳格化では、韓国が世界貿易機関(WTO)での協議を提起し、WTO7月に第一審にあたる紛争処理小委員会(パネル)を設置した」

     

    今回の電話協議は、韓国側の申入れである。韓国が、解決に向けて動き出したという見方もできるが、次の動きを見守るほかない。

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    中国は、世界覇権への執念を燃やし続けている。外交部予算よりも、中国共産党中央委員会の「海外宣伝工作」を主導・運営する「統一戦線工作部」予算が多いという事実が、それを証明している。中国は、中身から滲み出る「実質主義」でなく、デコレーションで飾った中国を海外へ宣伝させる方針を貫いている。このほか、スパイなど「機密工作費」も含まれている。その金額は、外交部予算を上回っている。米シンクタンクが分析した。

     

    外面をよく見せるのが、中華社会の伝統である。結婚式と葬祭は、人生二大イベントとして突拍子もない派手さを見せている。こういう見栄っ張りの中国が、「統一戦線工作部」予算を増やして、諸外国を機密工作費で懐柔しようと狙っているのだ。

     

    『大紀元』(8月24日付)は、「中国外務省よりも予算の多い共産党の統一戦線部」と題する記事を掲載した。

     

    中国政府は海外で影響力を拡大し続けている。中国共産党中央委員会のプロパガンダ推進計画「大外宣」を主導・運営する統一戦線工作部の予算は外交部(外務省に相当)よりも多い。米シンクタンクがその予算と経費を分析した。統一戦線とは、共産主義の影響力と統制を国内および海外で強めるため、党員の指導や管理を行う統括組織である。

     

    ワシントンのシンクタンク・ジェームズタウン財団は9月17日、「党の代弁者に金を入れる:中国はいかにして統一戦線工作部の資金を動員しているか」を発表した。統一戦線部の運営費について、中国の中央政府、地方政府および共産党の組織から発表された160件以上の予算と経費報告書から得た情報をまとめた。

     


    (1)「中国共産党は、長らく西側メディアに「海外に政治的影響力を行使している」と批判されていることについて、「根拠なき偏見だ」と否定してきた。しかし、今回の報告は「予算は言葉よりも語る」として、外務省よりも予算を多く割り当てられた統一戦線部の活動規模は大きいと指摘している。報告によると、中央と地方の統一戦線組織は、2019年に最低でも26億ドル以上を支出し、中国外務省の資金を上回った。中央の予算は公表されていないため、実際はこれよりはるかに多いと考えられている。さらに、その6億ドル近くが、外国人や在外中国人社会に影響を与えるために開設された党の事務所に投じられた」

     

    秘密のベールに包まれているが、中央と地方の統一戦線組織は、2019年に最低でも26億ドル以上を支出し、中国外交部(外務省)の資金を上回ったという。外交部は表組織、統一戦線組織は裏組織である。中華帝国時代からの秘密組織を継承しているのだろう。

     

    (2)「中国各省庁の年間予算を公表している中国財務省は、4機関(中国人民政治協商会議、国家宗教委員会、中国外交部、工商連合会)の予算を公開しているが、活動の中枢的な役割となる中国共産党の中央委員会統一戦線工作部の予算は公開していない。4機関の予算総額は14億ドルで、中国公安部とほぼ同額である」

     

    中国共産党の中央委員会統一戦線工作部予算は公開されていない。それだけに、不気味さを感じる。

     

    (3)「報告書によると、中国民族宗教委員会は主に統一戦線部の国内での影響力を担当している。年間12億ドル以上を費やして貴州、甘粛、雲南、広西、内モンゴルなど少数民族が集中している地域の工作を行っている。しかし、新疆ウイグル自治区やチベット自治区などの重要な地域における「再教育活動の監督」、そして海外の技術移転の調整、若手の育成などの活動は、中国共産党の中央委員会統一戦線工作部が直接出資するため、予算は26億ドルよりもはるかに多いと考えられている

     

    中央委員会統一戦線工作部予算は、26億ドルよりもはるかに多いと見積もられている。4機関(中国人民政治協商会議、国家宗教委員会、中国外交部、工商連合会)の予算は、合計で14億ドルである。中国外交部予算は当然、多くて数億ドル程度であろうか。機密工作費の26億ドルにはるかに及ばないのだ。

     

    (4)「中国共産党中央弁公庁が915日に公表した指針によれば、民営企業に対して統一戦線工作を強化するよう指示。この指針は、中国本土でビジネスを展開する香港とマカオの企業家も含まれている。指針は企業家に対して「党中央と同じ政治的立場を取る必要がある」と要求している。さらに、民間実業家のデータベースを構築し、「党が人材を管理する」と明言した。中国では民営企業が国内総生産(GDP)の6割を占める」

     

    GDPの6割を占める民営企業に対しても、統一戦線工作を強化するようという。締め付けである。戦時中の日本では、「憲兵」が目を光らしていたが、それと同じことを始めるのだ。

     

    (5)「中国共産党は表向きには、統一戦線工作部による活動を「行政組織の良心的なネットワーク」と表現し、外交政策を「相互尊重、相互内政不干渉」を原則としていると主張している。ジェームズタウン財団の報告は、中央委員会統一戦線部の予算や経費を始め、多くの統一戦線工作の会計が開示されていないことから、機密工作を行っていることが窺えると指摘している」

     

    予算も明示しない統一戦線工作が、公明正大なことをやっているはずがない。こういう裏工作をやらなければ保たない中国という国家組織の異常性が浮かび上がるのだ。

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    中国は、環境破壊の張本人である。それが、急に環境保護に熱心な国という評価が立ち始めたから不思議だ。大気汚染・水質汚染・土壌汚染とやりたい放題であった。限界にぶつかって目を覚ましたら、「環境保護派」という義士になっている。本当に不思議な話しだ。

     

    過去を知らないで、現状だけを見つめていると、こういう誤解をするのだろう。独裁政権が、環境保護派になるのはその裏で何かを狙っていると考えるべきだ。国民の監視という目的の遂行である。

     

    英誌『エコノミスト』(9月12日付)は、「『環境保護を強める中国』の実態」と題する記事を掲載した。

     

    このほど出版された『環境保護を強める中国』の著者らは、中国の非政府組織(NGO)と政府当局との関係の近さが、しばしば国外の活動団体にそうしたNGOには近づきたくないと思わせる原因になっていると指摘する。中国は「生態系に配慮した文明(エコ文明)」を構築し、そのモデルを世界と共有するという大胆な目標を掲げており、それを分析したのが本著だ。共著者の一人である米アメリカン大学のジュディス・シャピロ教授は、こんなエピソードを紹介している。

     

    (1)「中国で成功している環境保護政策には共通点があると同書は指摘する。一度決めた目標に固執したり、「すべての物を同じ刀で切る」(あらゆる問題に同じ解決策で当たるという意味の中国の成句)ような画一的な解決方法を上から押しつけたりはしない。成功するケースでは国がボランティア団体と協力して、市民社会から意見を募る点も共通する。同書は1990年代後半に中国北西部の黄河の上流と中流域に広がる黄土高原で実施された植生復元計画を例に挙げる。同プロジェクトの設計者は2年かけて現地の農民や科学者らと相談し、計画を現地の状況に合わせて調整していった。砂漠柳を植え、伝統的な造園技術でクルミやナツメヤシの果樹園を造り、不毛な土地に徐々に生命を取り戻していった」

     

    黄土高原は、中国社会が環境に無頓着な結果、現在のような荒土になった歴史がある。過去は、うっそうとした森林であったのだ。ここを、昔の状況に戻すには「伝統的な造園技術でクルミやナツメヤシの果樹園を造る」という手法を取るしかないのだ。

     

    (2)「その後、成果を急いだ当局は成長が早く、大量の水を吸い上げる数種類だけの樹木を多数植えて計画の規模拡大を図った際は失敗に終わった。同書は中央計画経済の限界を示すだけでなく、中国指導部が環境政策を自分たちがこれまで通り独裁を長期的に維持していくという野望の隠れみのに利用しているとも批判している

     

    当局は、植生バランスを無視した促成方式に転換した失敗した。土壌には、それにあった植物しか生きられないのだ。こういう簡単な事実を忘れている。

     

    (3)「国外では、世界的なインフラ整備計画「一帯一路」の環境保護実績をアピールする。途上国に低コストで環境保護技術を提供していると胸を張るが、指導部が本当に環境を重視するかは自分たちの都合による。国益のために遠く離れた海に漁船団を派遣して水産資源を略奪させ、外国政府と不透明な契約を結んで、その国に石炭火力発電所や環境汚染につながる鉱山開発、生態系を破壊するダム建設などを進めてきた。そして地元で抗議運動が起きると、その国の独裁的な政府にその鎮圧を任せることが多い」

     

    中国は、表の顔と裏の顔を使い分けている。表の顔だけを見て、環境保護派というのはおこがましいのだ。

     

    (4)「同書は、中国の容赦ない上意下達式の統治こそが国内外の環境に直接害を及ぼしているのではないかとも問いかけている。これは重要な問題だ。自由民主主義諸国が環境問題にうまく対応できていないようにみえる今、中国のテクノクラートによる断固とした一党独裁モデルこそが地球に残された最後の期待できる望みではないかと考える外国人が増えているためだ」

     

    環境保護精神と独裁主義では、全く相容れない存在である。「自然に優しい」ことは、「人間に優しい」のである。この物差しで、中国政府を眺めれば、その噓が分るであろう。

     

    (5)「『中国が地球環境問題の救世主となるのか』といった書籍や『環境独裁主義の到来』といった論文が登場し、気候変動への取り組みに対する中国の誓いや、風力発電や電気自動車への巨額投資を称賛している。しかし、こうした国外の称賛者の中には後に、独裁政権による強制は、環境に悪影響を与える行動を抑制する唯一の方法なのかと(後悔の念を持って、その度合いは様々だが)自問するケースが少なくない」

     

    環境独裁主義など、存在できるはずがない。「自然に優しい」ことは、「人間に優しい」という単純な事実によって論破できるだろう。ともかく、中国が環境保護派とは聞くに堪えない言葉である。その前に、国民に自由な考えを認めるべきである。

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    韓国経済にまた一つ、重荷が増えた。ムーディーズは、韓国を代表する企業26社中の15社に対して、上半期業績不振を理由に信用格付け引下げを警告した。これは、韓国のマクロ経済にも重大な影響を及ぼすものだ。

     

    『朝鮮日報』(9月24日付)は、「ムーディーズ、韓国大企業の信用格付け引き下げを警告」と題する記事を掲載した。

     

    世界的な信用格付け会社、ムーディーズは23日、韓国の大企業の信用格付けを一斉に引き下げる可能性を警告した。ムーディーズは韓国の非金融分野の企業26社を分析した結果、半数を超える15社の上半期の業績が不振だったと評価した。

     

    (1)「ムーディーズは、「世界的な景気低迷が続く中、韓国の非金融企業の信用度に圧力が続きそうだ」と予想した。特に石油精製、化学、鉄鋼、自動車産業など景気に敏感な産業が大きな打撃を受けた。ムーディーズは「これら産業はコロナによって最も大きな打撃を受け、景気回復遅延など外部のショックに弱い」と分析した。一方、通信業などはコロナによる影響をさほど受けていないとされた」

     

    韓国経済を代表する企業の業績不振が明らかになっている。石油精製、化学、鉄鋼、自動車産業などだ。コロナ・パンデミックの大波を被った結果である。世界景気の回復を待つほかない。

     


    (2)「今後の景気回復は、コロナの広がりをどれだけ抑制できるかにかかっているが、現時点で楽観は難しいとの見方を示した。ムーディーズは、「最近新規患者数が急増したのは、効果的なワクチンが登場するまでは(コロナの拡散を)継続的に抑制するのが難しいことを示している」と指摘した。ムーディーズは韓国を代表する企業の信用格付けが引き下げられる可能性が高いとした

     

    韓国大企業の信用格付けが、引下げられれば株価へ影響する。それは、通貨危機への序章となりかねず、韓国は緊張を強いられるのだ。

     

    (3)「ムーディーズが格付けの対象にしている韓国の民間・非金融企業は、サムスン電子、現代自動車などを含む26社だ。うち格付け見通しが「ネガティブ(弱含み)」なのが13社、「ステイブル(安定的)」なのが9社となっている。格付け見通しが「ポジティブ(強含み)」の企業はなかった。信用格付けが「ネガティブ」とは、今後2年以内に信用格付けが低下する可能性が高いことを意味する」

     

    格付け見通しが「ネガティブ(弱含み)」になれば、2年以内に格付け引下げの可能性が高まる。韓国経済には悪材料だ。ここで、先々の経営環境がさらに悪化するという悲観的な見通しが高まっている。それは、文政権による企業規制立法が実現することである。

     

    『中央日報』(9月24日付)は、「外国資本の投機との訴訟を助長しながら経済活性化を望むのか」と題する社説を掲載した。

     

    企業は来るべきものが来たという雰囲気だ。文在寅(ムン・ジェイン)政権が国政課題として推進してきた「企業規制3法」(公正取引法・商法・金融グループ監督法)が国務会議の議決を経て国会通過の直前段階に入った。第20代国会でも企業の経営に致命打になるという懸念のためブレーキがかかったこの法案が、巨大与党の国会掌握をきっかけに推進力を得ることになり、企業は危機を迎えている。

    (1)「現在の法案は世界的に類例がない急進性を帯びているのが問題だ。憲法が保障する経営の自律性はもちろん、国際的な慣行から見ても反企業的な条項を持つ。最も大きな問題は資産2兆ウォン(約1800億円)以上の企業に対する多重代表訴訟制と監査委員分離選任だ。この2つの条項は企業の経営に対する無差別的な訴訟と投機の口実を与える。「財閥の経営透明」という名分の中、国内企業に対する投機資本の攻撃が日常化する可能性があるということだ」

     

    資産1800億円以上の企業は、多重代表訴訟制と監査委員分離選任という2つの新たな問題が課されることになった。それぞれの内容は、後のパラグラグで説明する。

     

    (2)「多重代表訴訟は、親会社の株主が子会社の経営不信を理由に子会社の取締役を相手に訴訟を提起できる制度だ。子会社の上場の有無とも関係がないため、企業の新規事業もすべて訴訟の対象になる。訴訟乱発の可能性が高く、米国・日本でも親会社が子会社の株式100%を保有する場合に限り認められる。実情がこうであるにもかかわらずそのまま導入する場合、持ち株会社体制の国内企業は子会社の経営の失策を口実に限りなく訴訟に巻き込まれる可能性がある」

    子会社をつくる理由は、将来の成長が不透明な場合、とりあえず「子会社」として発足させて様子を見るケースだ。ベンチャー的な色彩もある。親会社役員が、この子会社まで業績不振を理由にして訴訟対象になるのは、子会社をつくれないという消極経営に追い込む。

     

    (3)「監査委員の分離選任は、企業の取締役会に投機資本のトロイの木馬を入れるような格好になりかねない。3人で構成される監査委員会で社内監査委員の議決権行使を制限する規定があり、大株主の影響力はすでに遮断されている。今回の改正案はこのルールの対象を外部監査委員2人に拡大する。この場合、投機的な外国資本が株主総会で力を合わせて監査委員選任に影響力を行使することができる。これも米国や日本では導入されていない」

     

    監査委員は、3人で構成される。具体的には、企業出身監査委員と外部出身監査委員である。だが、企業出身監査委員は議決権行使を制限し、外部監査委員が2人へ増やされ、大幅な決定権を握る。ドイツ流監査役制度の導入であろう。これは、投機的な株主の恣意的な運営にもなりかねず「危険」というもの。韓国株式市場は、外国資金が大きな影響力を持っているので、韓国企業が振り回される公算があるとしている。

     


    (4)「結局、過度な企業規制は新型コロナ克服と経済活性化を推進する政府の政策にも逆行する。企業の支配構造を透明にするのはよいが、急進的にすれば企業は厳しい状況に直面する。国政課題という理由で強行することではない。企業の現実を十分に確認して失敗を犯さないことを望む」

     

    前記の多重代表訴訟制と監査委員分離選任が、現実を無視して行われるとどうなるか。韓国企業は、守勢に回らざるを得なくなる。立法主旨は、企業の恣意的行為を抑える目的であろう。ただ、理想論が先走ってしまうと、最低賃金の大幅引き引上げ時と同様、大きな反動をもたらす危険性が高い。韓国経済は要注意だ。

    テイカカズラ
       

    中国は韓国を米から引き離し作戦

    文氏が菅首相へ送ったラブレター

    ハンギョレ紙社説で3回プッシュ

    韓国は菅首相に脱帽して妥協案へ

     

    中国外交担当トップ、楊潔篪(ヤン・ジエチー)共産党政治局員が、8月22日に韓国を訪問した。ソウルでなく釜山で韓国の徐薫(ソ・フン)国家安保室長と会談したのである。通常の外交儀礼であれば、ソウルを訪問して文大統領を表敬訪問するものだ。そういう儀礼抜きで、単刀直入の会談目的は何であったのか。表向きは、習近平国家主席の早期訪韓で合意したというが、それで話しが済んだ訳ではあるまい。

     

    中国は韓国を米から引き離し作戦

    米中対立の長期化見通しが強まる中で、楊氏は、訪韓前にシンガポールも訪問している。中国側へ引き寄せが目的であり、韓国でも同様の「工作」が行われたと見るべきだ。その際、中国は露骨な言葉で韓国を米国から引き離す下工作をしていると思われる。最近の中国は、「戦狼外交」と言われるごとく相手を威圧する「言葉の暴力」を用いている。韓国にも「戦狼」ぶりを発揮して恫喝したに違いない。

     

    私が、そのように判断するのには一つの根拠がある。

     

    それまで、中国びいきを鮮明にしていた文正仁(ムン・ジョンイン)大統領統一外交安保担当特別補佐官が、私人(延世大学名誉特任教授)の肩書きで『ハンギョレ新聞』(9月7日付)に寄稿した論文(「中国が新冷戦を避ける道」)が登場したのである。その内容は、中国が「覇道」(武力を用いた覇権)でなく、「王道」(道徳を用いた覇権)を突き進むことによって、米中の新冷戦が避けられるというのだ。明らかな「反中国」論文である。

     


    文正仁氏の役割は、文大統領に南北統一・外交・安保の諸問題を幅広く献策する立場だ。その特別補佐官が、これまで米国よりも中国を慕ってきたパターンを捨てて、「中国批判」に転じたのだ。この豹変の裏には、8月22日に訪韓した
    楊潔篪氏の言動があったと見るほかない。中国が、韓国を脅したのであろう。そうでなければ、文正仁氏が見せた従来の主張と180度異なる寄稿をするとは思えない。中国・楊氏の発言が、韓国大統領府に大きな衝撃を与えたと読めるのである。

     

    楊氏の訪韓によって、韓国は初めて外交的に孤立していることを実感したに違いない。米韓関係は隙間風が吹いている。日韓関係は凍結状態である。こうした中で、せめて日本との関係を緩和させなければ、韓国は外交的に漂流する危険性を察知したのであろう。韓国の危機感は、菅首相就任祝いに寄せられた文大統領の文書に現れている。

     

    文氏が菅首相へ送ったラブレター

    韓国大統領府報道官の説明によれば、文大統領の書簡内容(9月16日)は次のようなものだ。

     

    「『文大統領は、基本的価値と戦略的利益を共有するだけでなく、地理的・文化的に最も近い友人である日本政府といつでも向かい合って対話し、コミュニケーションをとる準備ができており、日本側の前向きな対応を期待している』と説明した。日本に強い親密感と友好の意を示し、対話を通じて両国間の懸案を解決するという考えを強調したのだ」

     

    上記の書簡要約が、これまでにない「友好的」内容であることは間違いない。日本の首相就任祝賀文書であることから当然としても、これまでの反日糾弾の文書から想像もできない「親近感」を強調している。「基本的価値と戦略的利益を共有するだけでなく、地理的・文化的に最も近い友人である日本政府」とまで言っているのだ。

     


    この文書を読んだ多くの日本人が、正直に言って「エッ」と叫ばざるを得ないであろう。現実に昨年までは、「積弊一掃」によって親日を犯罪行為とまで貶めたのである。それが今、一転して「地理的・文化的に最も近い友人」とまで持ち上げてきた。韓国大統領府では、こういう「ラブレター」まがいの文書を日本へ送ることに違和感はなかったのだろうか。抵抗感がなかったとすれば、相当の「演出」か「事態の深刻さ」のいずれかと見るほかない。

     

    韓国の演出とすれば、おだてることで意気に感じた日本が、妥協策をつくって動き出すという期待があったかもしれない。だが、菅首相はリアリストである。お世辞に乗って動き出す政治家ではないのだ。これだけ冷却化した日韓関係が、お世辞たらたらの外交文書で氷解に向かうはずがない。韓国外交部もそうした認識であろう。「演出」による文書ではなかった見る方が妥当だ。(つづく)

     

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