勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    米中通商協議は、中国側による突然の踏み込んだ提案に沿って話が進んでいる。米国特別捜査官報告で、トランプ氏に関わる疑惑の証拠が出なかったことが理由であろう。これまで、時間稼ぎをしてきたが、中国経済の足下がふらついており、遅らせることがマイナスと判断したに違いない。中国側は、これまで米中首脳会談開催について6月説を流すなど、米国を揺さぶってきた。

     

    『ロイター』(3月28日付け)は、「米中通商協議は全分野で前進、技術移転で踏み込んだ提案―米当局者」と題する記事を掲載した。

     

    米当局者は27日、米中通商協議は議題となっている全ての分野で前進しており、強制的な技術移転に関する問題で中国側がこれまでにない提案を行ったと明らかにした。ただ、課題も残されているとした。

     

    (1)「当局者の1人は、中国がこれまでより踏み込んだ提案を行ったとし、『中国側は強制的な技術移転に関し、範囲や詳細の両面でこれまでにない話をしている』と語った。ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表とムニューシン米財務長官は協議再開のため、28日に北京入りする。さらには来週にもワシントンで協議が予定されている。ロイターはこの記事に向け4人の米当局者から話を聞いた」

     

    中国側は強制的な技術移転に関し、範囲や詳細の両面でこれまでにない話をしているという。この問題は、中国にとって譲るに譲れない一線であったが、これにこだわっていると、中国経済自体に「自壊作用」が起ることを危惧し始めたのかも知れない。この点については後で取り上げる。

     

    (2)「ロイターは前月、米中通商協議について、強制技術移転とサイバー攻撃を通じた技術窃盗、知的財産権、サービス、為替、農業、非関税障壁の6分野で覚書が準備されていると報じていた。前出の当局者は『1カ月前の文書と現在のものを比較すると、全ての分野で進展があった。まだ目指すところには達していない』と述べた。当局者らは、通商協議の今後のスケジュールは明らかにしなかった」

     

    1カ月前の文書と現在のものを比較すると、全ての分野で進展があった。まだ目指すところには達していないという。妥結に向かっていることは間違いない。中国は、譲歩案を小出しにしながら米国の反応を伺っているに違いない。

     

    (3)「別の当局者は、『5月、6月まで続く可能性もあるが、誰にも分からない。4月に(合意が)あるかもしれないし、われわれにも分からない』と述べた。知的財産と最終的な合意の履行の問題が課題として残っているという。トランプ大統領は前週、米中通商協議での合意事項を中国が確実に履行するよう、中国製品に対する関税を「かなりの期間」維持する可能性があると明らかにしている」

     

    知的財産権問題と最終的な合意履行問題が課題として残っているという。この二つが、最大の問題点であることを窺わせている。中国は、できるだけ「知財権泥棒」をつづけ、米国に尻尾を捕まれてもペナルティは「軽微」にさせたいのだ。まだ、悪事を働く意思があると見える。

     

    (4)「2人目の当局者は、『一部の関税は維持する見通し』だと述べた。『これに関しては一定の譲歩を行うことになるが、全ての関税を撤回することはない』とした。1人目の当局者は『これは解決すべき課題であることは明白で、最終合意の重要な要素になるだろう』と語った」

     

    米国は、トランプ氏が繰り返し明言しているように「特別関税」の全撤廃意思がない。今後とも、中国に圧力を掛ける足がかりにするのだろう。それだけ、中国を信用していない証拠だ。

     

    中国は時間稼ぎしている間に、自国経済が悪化している。中国国家統計局(NBS)が27日発表した1~2月の中国工業部門企業利益は前年同期比14.0%減だった。ロイターのデータでさかのぼれる2011年10月以降で最大の落ち込みである。

     

     間もなく、昨年の経常収支も発表される。大幅減が予想されているが、市場で蒸し返されて、人民元が売り込まれる場面も予想される。これまで、中国が自慢してきた3兆ドルの外貨準備高も、一皮剥けば1兆ドル余の債務を含んでいる。すべてが「まやかし」の中国経済が、その実態を暴かれる日は近い。

     

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    米大統領トランプ氏は、毀誉褒貶の激しい人である。反対派からは蛇蝎のごとく嫌われている。言葉使いが粗野であり、過去を含めた振る舞いも褒められるようなことは一つもない。前任大統領のオバマ氏と比べれば、月とスッポンの違いだ。

     

    このトランプ氏が、反対派でも業績として認めるのは、対中国強硬策であるという。オバマ氏もサジを投げていた中国の行動に「タガ」をはめつつあるのだ。これは、トランプ氏のような荒馬でなければできない芸当である。北朝鮮の金正恩氏に対しても、怒って交渉の席を蹴るという演出をやって見せ、「米国を舐めるなよ」と言外に示す。「千両役者」の資格は十分と言えよう。

     

    『ロイター』(3月25日付け)は、「中国に改革迫るトランプ氏に一定の理、内外で支持拡大」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米大統領が「米国第一主義」推進のために真綿で首を絞めるように関税を駆使する行為は、企業経営者から同盟諸国、米議会の与野党双方の議員まで多方面の怒りを買ってきた。しかし、トランプ氏の政策にほとんど反対している人たちから幅広く支持されている取り組みが一つ存在する。中国に対して、市場原理をゆがめる貿易や補助金に関する各種慣行の修正を強く迫っていることだ。

     

    (1)「米中貿易協議が続く中で、さまざまな政治家や企業経営者、外交官らは、米国やその他の外国企業とその社員に痛手を与えてきた諸問題を解決するために、トランプ氏と通商担当チームにあくまで中国に意味のある構造改革を要求するよう促している。米国と中国を含む39カ国で自動車の座席や電子部品を生産するリア幹部のスティーブン・ガードン氏は、トランプ氏の『貿易戦争』は、企業や外国政府が不公正とみなす政策の改革を中国に強制してくれるとの期待を解き放ったと話す。『これらの問題がすべて提起された今、解決に乗り出すことについて米国内で政治的支持がより広がっており、後戻りはできなくなっている』という」

     

    関税引上げは、自由貿易の敵である。だが、中国のような自由貿易ルール破り国を反省させるには、劇薬を使うことも許される。トランプ氏は、このギリギリの線で中国に改革を求めており、自由主義国家から支持の声が届いているはずだ。

     


    (2)「トランプ氏が当初今月1日に設定していた新たな対中関税導入期限を延期した際に、同氏が中国からの巨額な米製品購入提案によろめき、構造問題を放置したまま協議に合意してしまうのではないかとの懸念が生じた。ところがそれ以降、多数のロビイストや企業幹部、外交官、米与野党議員らが入れ代わり立ち代わり、トランプ氏に構造改革要求を堅持するよう働き掛けている。自由貿易推進派の急先鋒でトランプ氏の関税政策を批判してきた共和党のケビン・ブレイディ下院議員も最近こうした説得に加わり、『われわれは中国がより多くの米製品を買うのを望んでいるとはいえ、もっと大事なのは中国に知的財産権や補助金、過剰設備など世界経済を歪めてきた分野で高い国際基準を守る責任を果たさせることだ』と強調した」

     

    先週には長年の対中貿易強硬派として知られる民主党のチャック・シューマー上院議員が、構造問題で引きさがり、米国産大豆などを中国に買ってもらうことで安易に妥協しないようくぎを刺した。このように、共和・民主の超党派でトランプ氏の支援に回っている。トランプ氏には、なんとも心強い応援団の登場だ。 海を越えたEUでもトランプ氏に声援を送る。

     


    (3)「欧州連合(EU)は、トランプ政権が今後、輸入自動車に関税を導入する事態を警戒しつつも、中国の技術移転強要や市場アクセス制限などに不満を抱いているという面では米国と変わらない。あるEU高官は北京でロイターに『われわれには域内企業から連日苦情が寄せられている』と語り、中国政府は再三にわたって外国企業の事業環境を改善すると約束しながら、ほとんど進展がないと指摘した。欧州委員会のマルムストローム委員(通商)は、中国が国際的な貿易ルールを自分たちに都合良く気ままに利用していると非難しており、まるで米通商代表部(USTR)の声明を聞くかのようだ

     

    先進国が一丸となって、中国の違法ビジネスを告発し、改革させる動きを見せている。これは、トランプ氏には心強く、中国には大逆風に映るはずだ。トランプ氏が、大統領2期目を視野に入れ始めたとすれば、中国は居ずまいを正さなければならなくなろう。習氏には、トランプ氏が最大の強敵になってきた。

     

    私は、トランプ氏の対中交渉を一貫して支持してきた。毎日、中国の実態を追いかけていると、その違法の数々が濁流となって、世界全体に押し出されていることに気付かされる。その危機感がきわめて強いゆえ、私もトランプ氏に拍手を送る一人である。

     

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    世界の自動車市場の中国と米国で、かつて輝いていた現代自にその面影はもはやない。中米の両市場で大きく後退しているからだ。

     

    この危機に立つ現代自が、先の株主総会で鄭会長の長男・鄭義宣(チョン・ウィソン)54歳が代表理事(代表取締役)に選任された。難題はいくつかある。ニーズに合った商品作り・デザインの一新・労組との交渉などだ。売上高営業利益率は3%を切っており、カー・メーカーとしては崖っ縁にたつ。現代自の切り札として、父親をさしおいて経営の舵を握れるのか。韓国経済の命運にも関わる経営再建である。

     

    『中央日報』(3月26日付け)は、「経営の全面に出た鄭義宣首席副会長、現代車が解決すべき4つの課題とは」と題する記事を掲載した。

     

    今月22日に開かれた今回の現代自動車株主総会の最大イシューは鄭義宣現代自動車グループ首席副会長の代表理事選任だった。昨年9月に首席副会長に就任して以来、現代車・モービス代表理事を兼職することになり、起亜車・現代製鉄など核心系列会社の社内理事にも登載された。鄭夢九(チョン・モング)会長がまだ退いていない状態で経営の全面に出るのは、3世経営者としては異例のことだ。財界では現代車グループの経営成果の責任を負い、未来価値を証明するのは全て鄭義宣氏の役割になったと評価する。

     

    (1)「鄭義宣氏は、父親(鄭夢九会長)の業績を守って自身の経営能力を立証しなければならない。現代車グループは今後5年間、研究・開発分野に45兆ウォン(約4兆3700億円)を投資して営業利益率7%、自己資本利益率(ROE)9%という目標を提示した。過剰生産で困難を強いられていた中国工場を構造調整(注:売却)し、新本社になる大規模資本が投入されるグローバルビジネスセンター(GBC)建設は、外部投資を受けて進めることにした。明確な未来の目標を提示して株主を説得した点はひとまず肯定的評価が出ている」

     

    今後5年間の経営目標を掲げた。

        研究・開発分野に45兆ウォン(約4兆3700億円)を投資

        営業利益率7%

        自己資本利益率(ROE)9%

     

    これらの目標を出さなければ、株主総会で選任されないというハードルがある以上、「大風呂敷」を広げて見せた面は否定できない。現代自動車の17年の研究開発費は、売り上げの2.6%にとどまった。この数字は競合他社であるフォルクスワーゲンの6.7%、トヨタの3.8%、そしてBYDの3.6%と比べて大きく見劣りする。

     

    カー・メーカーにとって、R&Dをどれだけ支出できるかが生命線になっている。現在の現代自の低収益率の下では、ない袖は振れぬ状況である。ここで、労組との話し合いが不可欠であるが、成功の見込みはない。労組は「働かない・高賃金・長期勤務」という反企業主義を前面に出している。悪いことに、時の政権は文在寅である。組合べったり主義で大企業が「哀訴」しても振り向きもしない冷淡な態度だ。次期政権が保守派になれば、再建の可能性もあろうが、ともかく経営が政治がらみになっているのが不幸である。


    (2)「グローバルコンサルティング会社ナビガントリサーチは3月19日、今年『自動運転車リーダーボード』を発表した。自動運転車技術を開発する完成車メーカーと情報通信技術(ICT)企業を戦略と実行部門に分けて評価している。現代車グループは2年連続で15位にとどまった。日本のトヨタが昨年12位から今年9位に順位を引き上げたが、現代車グループは足踏み状態だ。現代車グループの課題は未来競争力だ。内燃機関から電気モーターへ、人が運転する車から自動運転車へ、個人所有からシェアへと自動車業界のパラダイムが変化していてグローバル完成車メーカー間の熾烈な激戦が予想される

    父親の現代自会長・
    鄭夢九氏は82歳である。ここ2年ほど公の場所に顔を見せていないと言われる。韓国がいくら儒教社会とはいえ、高齢で経営の指揮権を発動できないトップを「有り難がっている」慣習は時代遅れと言う前に、経営の私物化として批判されるべきであろう。自動運転車技術を開発する完成車メーカーと情報通信技術(ICT)企業を戦略と実行部門に分けて評価する『自動運転車リーダーボード』によれば、現代自は15位という。未来戦略でも大きく水を開けられている。

     

    改めて韓国社会を儒教との関わりで見ると、何とも古色蒼然とした組織であることに気付く。大統領は皇帝気取りで独断独行。企業は長幼の序で「父親第一」である。ここには、経済論理の通用する余地がほとんどなさそうである。後は、衰退のみというのが偽らざる感想である。

     

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    文在寅大統領は、完全な皇帝である。「自分の政策は正しいから変えない」と言い張っているが、昨年のノーベル経済学賞受賞学者ポール・ローマー教授は厳しく批判した。「文皇帝」は顔色なしである。

     

    文氏が、あの物腰から想像もできない「強硬姿勢」に転じている背景には、来年の国会議員選挙で「親文派」を大量に当選させたい思惑が働いているという。「非文派」を排除するのだ。かつて、朴槿惠大統領(当時)が、「親朴派」を国会議員選挙で大量に立候補させ、落選した苦い経験を繰り返すだろうと話題に上がっている。

     

    このように文氏は、自らの権力維持に動いているが、現在の最低賃金の大幅引上げは自らの首を締める結果を招きそうだ。冒頭に挙げたローマー教授は、文政策を次のように批判した。

     



    『中央日報』(3月28日付け)は、「ノーベル経済学賞受賞者、雇用のふりをする雇用ではならない、韓国の公共アルバイトに直撃弾」と題する記事を掲載した。

     

    昨年ノーベル経済学賞受賞者であるニューヨーク大学のポール・ローマー教授は27日、「最低賃金引き上げが労働需要を減少させ労働者の雇用を奪っていきかねない」と警告した。大韓商工会議所がこの日ソウル商議会館で開いた「革新成長、韓国経済が進むべき道」という主題のセミナーで、だ。彼は「最低賃金引き上げ政策により雇用市場で失業者数が増えたとすれば、(この政策で)当面の問題を解決するのは難しいだろう」と診断した。ローマー教授は技術革新が成長を導くという「内生的成長理論」で昨年ノーベル経済学賞を受賞した。

    (1)「ローマー教授は韓国政府が推進中の『所得主導成長政策』の妥当性を計る尺度として「雇用」を挙げた。彼は「所得主導成長は政府が補助金支給などを通じて推進する景気振興政策の一種。すでにさまざまな国で試みた政策だ」と説明した。続けて「政策施行結果はうまくいったり失敗したりもした。この政策で失業者数が減ったなら構わないが、むしろ増えたなら問題」と話した」

     

    最低賃金の大幅引上げを行なって、雇用が増えたのならば問題ない。失業者が増えた結果から見れば、文大統領の最賃政策は明らかに失敗している。毎度、私が上げる例だが、フランスも同じことを行い大失敗した。そこでフランスはすぐに手直したが、韓国は「知らぬ顔の半兵衛」を決め込んでいる。これほど、非民主的大統領は存在しない。自らの権力維持ならば、大衆を犠牲にしても構わない。習近平氏とどこが違うだろうか。

    (2)「彼は雇用を創出するためには政府政策より民間の役割に
    注目すべきと強調した。ローマー教授は航空産業を例に挙げ、『政府は少数の担当者を雇用して航空産業の安全規制などを作って守るよう誘導する役割をするもので、航空産業雇用の大部分は民間航空会社が創出する』と説明した」

     

    政府の仕事は、航空産業に喩えれば、「航空管制官」のようなものだ。航空機の発着の安全を図れば、後は民間航空会社がパイロットを雇い航空事業を行ない雇用が増える。文政権は、このすべてを国家がやろうという話である。大学時代、まともに経済の授業を受けず、火焔瓶闘争に精を出していたのであろう。経済の骨格を理解していない大統領である。




    (3)「良質の雇用創出に向けた先決課題としては、労働市場の柔軟性向上を最初に挙げた。ローマー教授は『正規職雇用を増やすためには労働市場の柔軟性を育てることがひとつの対策で解答になり得る。柔軟性が増えれば新たな雇用が生まれ、若い世代は仕事を探す機会を得ることになる』と説明した。続けて『別の職場に移ること自体が容易にならなければならず、雇用主の立場で制約があってはならない」』と主張した」

     

    労働市場の流動化・柔軟性は不可欠である。働き方改革で、幾通りかの勤務方法があるはずだ。終身雇用・年功序列賃金では、硬直化した労働市場に転落する。かつての日本もそうだった。これが、どれだけ企業も個人も共倒れになっていたか。「失われた20年」には、硬直化した労働慣行も影響した。韓国は今も、同じ失敗を繰り返している。公務員願望があれだけ強い裏には、終身雇用・年功序列賃金が 牢固として抜きがたくなっていることの証拠だ。この悪弊を定着化させているのが文在寅である。あえて、敬称を付けたくない気持ちになる。

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    けさ、発行(有料)しました。よろしくお願いします。

    底の浅い経済の悲劇

    3視点で半導体分析

    需要の早期回復困難

    萎縮した中国企業家

     

    韓国経済は、半導体と自動車が支える産業構造です。しかし、自動車は高賃金による生産コスト増が災いして、利益率が生存ラインを下回る状態にまで落ちこんでいます。現代自動車と起亜自動車は、利益率悪化に伴うR&D(研究開発費)不足によって、魅力ある「車づくり」に失敗。中国に進出の工場の一つを、それぞれ売却を余儀なくされます。部品納入業者は、「受注減」という形ではね返っています。

     

    底の浅い経済の悲劇

    これに加えて、半導体市況が急落しています。サムスンは3月26日、今年1~3月期の業績発表を10日後に控え、「業績悪化」を予告する緊急事態になりました。当日に突然の発表では、株主に大きな衝撃を与え株価の急落を恐れたのです。サムスンは、詳しい数字を発表しませんが、韓国の証券会社によれば、下記程度の営業利益減益予想になっています。

     

                  サムスン営業利益推移

           昨年1~3月期     今年1~3月期予想(証券会社予想)

    合 計    15.6兆ウォン     6.2兆ウォン

    半導体    11.6兆ウォン     3.7兆ウォン

    ディスプレー  0.4兆ウォン    -0.7兆ウォン

    (出所:朝鮮日報3月27日付け)

     

    このデータを見ますと、1~3月期の営業利益は前年比で60%減に落込む。うち半導体は68%減にもなります。半導体市況の落込みが大きな要因と言えます。問題は、この半導体市況がいつ回復するかです。業界予想では、今年下半期になれば底入れすると期待しています。それほど楽観していて良いのでしょうか。

     

    確かに、次世代通信網「5G」の登場が目前です。4Gに比べて100倍の通信速度が実現するもので、私たちの生活空間が一変すると言われています。こうした、革新的な技術が登場する前に、必ず「踊り場」があるものです。技術発展の軌跡を見ると、「右肩上がりの曲線」ではありません。私が昔調べた技術発展史によれば、技術は「階段状」に発展します。階段を一段上る前に踊り場があります。「5G」の場合もそれは不可避でしょう。

     

    この技術発展史によれば、半導体需要はすぐに回復して元通りの上昇カーブに戻ることは難しいでしょう。私は、こういう見解をブログを書いていますが、この見方を「応援」してくれる記事が登場しました。米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月27日付け)です。

     

    「世界各地の景気が鈍化し、米国や中国といった消費をけん引していた国の見通しが曇っている。消費者が先行き不透明感から引き続き携帯電話の買い替えを見合わせれば、半導体需要の低迷が続く可能性もある。サムスン株は1月につけた安値に比べて20%高い水準にある。マイクロンの株価は直近の底値から40%上昇した。市場は年後半の市況回復を確信しているようだ。だが、サムスンが発したあらゆるシグナルを踏まえると、投資家にとって今年の利益を確定するチャンスは今しかなさそうだ」(「サムスン電子の警告、半導体市場回復への過信は禁物」所収)

     


    3視点で半導体分析

    このWSJの記事は、有益なヒントを与えてくれます。

     

    (1)米国や中国といった消費をけん引していた国の見通しが曇っている

    (2)消費者が先行き不透明感から引き続き携帯電話の買い替えを見合わせる

    (3)半導体需要の低迷が続く可能性もある

     

    以上の3項目についてそれぞれ、私のコメントを付けていきます。

    1)米国や中国といった消費をけん引していた国の見通しが曇っている:中国は、OECD(経済協力開発機構)に加盟していません。情報の漏れるのを嫌っているのでしょう。どこまでも秘密主義です。そのOECDは、「今年と来年の韓国の輸出は大幅に減少し、特にアジア市場の鈍化が目立つ」と警告しました。すでに、その兆候が顕著になっています。中国・欧州など成長が減速している地域への輸出が減るからです。この2月で、4カ月連続で輸出額が減少しています。

    輸出は、3月1~20日の通関実績でも引き続き不振です。1カ月前に比べて4.9%の減少でした。輸出が減少した地域は主に中国(-12.6%)、欧州連合(-6.1%)、日本(-13.8%)などです。品目別には半導体(-25.0%)、石油製品(-11.8%)、無線通信機器(-4.1%)など。韓国の主力商品の輸出がそろって不振です。この状況で、半導体の早期の輸出回復を期待できそうもありません。

    (つづく)

     

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