勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。


    台湾企業が、中国から撤退するには絶好の機会がやってきた。中国の台湾企業が米国へ輸出すれば高い関税をかけられる。「メードイン台湾」ならば、その懸念は消える。もう一つ、台湾企業が中国のIT技術向上に貢献することは、「天に向かって唾する」も同然。回り回って、台湾の安全保障を脅かすことになる。そこで、究極の選択として、台湾企業が中国を撤退することが最も理に適っているはずだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月9日付)は、「台湾高官、補助金で中国から企業の回帰後押しも」

     

    台北で日本経済新聞のインタビューに応じた台湾の『国家発展委員会』の陳美伶・主任委員(閣僚)は、過熱する米中貿易戦争について『中国への制裁関税(の規模や対象)がさらに拡大すれば打撃はもっと大きくなる」という見通しを示した。

     

    (1)「台湾の多くのIT(情報技術)企業は中国を生産拠点として、米国に製品を輸出している。すでに『40社を大きく超える企業が中国から台湾への(生産拠点の)回帰を目指している』と指摘。こうした企業の動きを後押しするため、台湾当局が補助金支給などを検討していると明らかにした」

     

    中国企業は、台湾のIT企業に照準を合わせて、高給での技術者引き抜きに積極的である。これを防ぐには台湾企業が、中国から撤退して中台の関係を薄めることも重要な戦術として浮かび上がる。台湾技術者に精神的な壁を高くさせることだ。同時に、米中貿易戦争で中国からのIT製品輸出には、高関税率がかけられる。この際、台湾企業に長期的な経営戦略として「脱中国」へ舵を切らせる必要があろう。それには、台湾のTPP加盟も重要な前提になろう。

     

    中国進出の台湾企業40社超が、台湾回帰に前向きであるという。ビジネスの枠組みが大きく変わろうとしている以上、台湾政府が補助金を出すことは有力なテコになる。

     

    (2)「また、『中国に(台湾から)人材や技術を供給する専門の台湾企業がある』と述べ、台湾から中国への技術流出に強い警戒を示した。流出防止に『現行法では十分に対応できてなく、(知財侵害などで)刑事罰を強化する必要がある』とも強調した。ハイテク部門で米国に追いつこうとしている中国は、カギを握る半導体産業を育成するため、台湾企業からの技術移転に力を入れている」

     

    将来、台湾を武力で解放する方針の中国へ、台湾企業が技術的にも貢献する必要はない。敵に塩を送るような行為は愚策なのだ。安全保障の面から見れば、アジア諸国が中国と「ウイン・ウイン」の関係になることはあり得ない。中国は、領土拡大が国是になっている国であるからだ。もっとも、中国と不可侵条約でも結べば別だろうが、中国は絶対に結ばないだろう。中国の将来の行動を縛るからだ。中国の存在は、このくらいシビアに見ておくべきである。口先だけの「友好」は危険である。油断させられるからだ。



    韓国文政権は、困惑の極にある。文大統領は昨年8月、「徴用工の請求権は消えていない」と発言。韓国大法院の判決に流れをつくった張本人である。さぞや、本意にそった判決が出て満足であろう。それだけに、日本がこれだけ反発することへの対策がゼロであった。

     

    安倍首相は、文大統領と会談する際、必ず徴用工裁判を取り上げ、日本は絶対に請求権要求に応じない旨を申入れてきたという。こういう日本側の強い姿勢から、請求権容認の判決が出た場合、日本がいかなる対応を取るか予想していたはずだ。それが、実際は準備ゼロである。恐るべき程、文政権の「危機管理能力」が低いことを証明した。

     

    『中央日報』(11月9日付)は、「強制徴用判決、『国際世論戦を始めた』日本、韓国は10日以上も『対策準備中』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日本政府が強制徴用をめぐる韓国最高裁の判決に対し、本格的な国際世論戦を始めた。『韓国は国際法違反国家』として世界の在外公館を中心に全面戦争に乗り出したのだ。9日の産経新聞によると、日本政府は韓国最高裁の強制徴用判決が不当だという点を各国の在外公館を通じて発信するよう指示したと報じた」

     

    韓国は、日本から「国際法違反国家」というレッテルを貼られることを最も恐れている。国際法では、海外公館近くで相手国を不快にさせる物を置くことを禁じている。「慰安婦少女像」は、「第1号違反」を冒した。今回の徴用工判決は、「第2号違反」に当る。日本がこの実態を広く世界に訴えることは当然だ。

     

    ここでは、産経新聞記事を引用している。韓国メディアは産経新聞を目の敵にしている。「日本の代表的は右翼新聞」などと報じてきた。反対に、朝日新聞は神格化されている。こういう極端な韓国メディアが、産経新聞について悪意ある形容詞を控えている。よほど、韓国に対する「国際法違反」の形容詞が痛手なのだろう。

     

    (2)「すでに米国、英国、フランスなど一部の大使館は韓国最高裁の判決が出た直後、河野太外相の名義で発表した談話を英文版に翻訳し、ホームページと大使のSNSに掲載している。さらに領事館を含む在外公館などに対し、現地メディアを積極的に活用すべきという指示も出した。産経新聞は外務省幹部の言葉を引用し、「韓国最高裁の判断は明確な国際法違反に当たる」という内容で大使が現地メディアに寄稿するのが対外発信の中心になると伝えた。別の外務省幹部は「日韓間の問題をひとごとだと考えている諸外国にも正しく理解してもらうには、今のタイミングで発信していくべきだ」と述べた。日本政府が今回の韓国最高裁の判決を控え、他国への対応まで準備するなど緻密に戦略を立ててきたことが分かる」

     

    日本は、慰安婦騒動で韓国の日本を貶める戦術を学んでいる。それだけに今回は、先手を打って韓国の不法性を世界に訴える国際広報戦を準備してきた。韓国大法院の判決が出た直後、日本は米国、英国、フランスなど一部の大使館が、河野太郎外相の名義の談話を翻訳して掲載した。

     

    (3)「一方、韓国政府は最高裁の判決から10日ほど経っても政府の基本的立場さえも示せない状況だ。韓国政府は判決当日の10月30日、李洛淵(イ・ナギョン)首相の名義で『司法府の判断を尊重し、関連事項を綿密に検討する。関係部処、民間専門家と共に政府の対応を用意していく』という声明を発表した後、事実上、沈黙を維持している」

    韓国は、日本に甘えている。声高にいつも日本を批判するが、朝鮮戦争で多大の人命と物的の大損害を受けた、中国と北朝鮮には「従者」のように振る舞っている。この差は何か。日本は何でも韓国の要求を受入いれる甘さがあるのだろう。韓国でも保守派の人々は、一連の反日騒動を苦々しく見ているのだ。日本は、韓国を一括りで「反日国家」と見るのでなく、頑迷な「革新派」と峻別すべきだろう。



    中国では、「不動産信仰」が根強く、住宅が投機対象になっている。最近の調査では、5000万戸が、値上がり期待で空き家になっているという。だが、住宅の実需は尻つぼみになってきた。この先、値下がり期待が強まれば一気に売りに出されるはず。その時期が迫っている。

     

    『ブルームバーグ』(11月9日付)は、「中国の住宅の5軒に1軒は空き家、全体で5000万戸余り」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「住宅は居住するためのものであるべきだと主張する習近平中国国家主席のスローガンは、聞き流されているようだ。中国全体で数千万戸に上るアパートや家が空き家となっている。調査を行った四川省成都市の西南財経大学の甘犁教授によると、中国の都市部の住宅のうち空き家は約22%であることが近く公表される研究結果に示されており、5000万戸余りに上るという」

     

    主要国空き家率は下記の通りである。

    日本 13.5%

    台湾 14.2%

    米国 12.7%

    中国 22.4%

     

    中国の空き家率が、際だって高い。中国では、内装をしないままで住宅を売買する。だから、空き家でも新築並みの値段で売却可能だ。固定資産税がない国である。住宅投機を奨励しているようなものだ。多くが、共産党幹部が持ち主。固定資産税がかからないので、長期保有が可能である。

     

    (2)「政策当局者にとって悪夢のシナリオは、不動産市場が傾き始めた場合に空き家所有者が物件売却を急ぐ展開で、価格下落の悪循環を招きかねないという。2017年の調査に基づく最新データでは、政府の不動産投機抑制策も十分に奏功していないことが示唆されている。甘教授は、『空き家率がこれほど高い国はほかにない』と述べ、『不動産市場で亀裂が表面化した場合、売りに出される住宅が洪水のように中国に打撃を与えるだろう』と述べた」

     

    住宅価格は最近、変調が起っている。本格的な値下がりに転じれば、空き家の5000万戸が売り手として不動産市場へ登場する。市況は一気に崩落して修羅場と化す。その時期は近い。中国の金融状況が切迫しているからだ。外貨流出と人民元投機が重なって騒然となるだろう。住宅価格が無傷であるはずがない。



    世界一の自動車市場となった中国は、経済減速の影響を免れず、今年の販売台数は減少する見通しが濃くなってきた。この問題は、これまでしばしば取り上げられてきたので、驚くほどのニュースバリューはない。ただ、中国当局者の発言として話題になっている。

     

    『サーチナ』(11月9日付)は、「中国の新車販売台数は約30年ぶりマイマス成長!? 貿易摩擦で米国車が深刻な不振」と題する記事を掲載した。

     

    上海で開催中の「中国国際輸入博覧会」で国家発展改革委員会の産業協調司・機械装備所の呉衛所長が7日、「18年の販売数は3000万台を下回る見込みで前年実績を割り込む可能性がある」と発言したことを中国メディアが取り上げて話題になっている。

    (1)「中国の新車販売台数は、2017年実績で2887万8900台(前年比3%増)と世界最大。2009年に米国を抜いて世界トップになってから9年連続で世界一を継続している。米国の新車販売台数が1700万台あまりなので、世界一の地位が簡単に揺らぐものではないが、1990年代に乗用車が一般に普及し始めてから成長をし続けてきた中国の自動車販売にブレーキがかかることは、中国経済の変調を感じさせる」

     

    一昨年から、販売台数は変調を来していた。前年比マイナスになって急遽、減税を行い下支えしてきた経緯がある。普及率が20%を超えて、市場の飽和化現象が始っていたものだ。当然、起るべきことが起った感じである。中国経済全体と同様に、成熟化現象の一環と見られる。

     

    (2)「2009年以降も2ケタ成長を続け、2013年には2120万台と2000万台を突破し、2018年には3000万台の大台を超えるという見通しだった。しかし、2018年9月の新車販売台数は前年同月比11.6%減の239.4万台で3カ月連続の前年同期比割れになった。1-9月累計の販売台数は2049万台。また、1-9月累計での乗用車の国別シェアは、中国国産が41.96%で前年並み、次いで、独系が21.70%で前年同期比6.1%ポイント増、日系が18.48%で同4.43%ポイント増とシェアを伸ばしている。これに対し、米国系は10.69%で前年同期比11.79%ポイントもシェアを落として不振だ」

    日系が伸びている。トヨタの躍進が押上げている。理由は、中国の自動車関税率引き下げによって高級車の販売価格を引下げたこと。プラグインハイブリッド車(PHV)が伸びているなど、いくつかの好調要因が指摘できる。米国車は、米中貿易戦争の影響を受けている。米車だけ関税率引き上げで狙い撃ちされている点も打撃に。



    習近平氏は、11月末開催予定の米中首脳会談に当たり、双方の譲り合い精神を強調した。この習発言は率直に言って「ピンボケ」という印象だ。争点は、技術窃取とWTO違反の是正である。譲り合いとは何か。中国の技術窃取を認める。WTO違反を大目に見る。あり得ない話である。中国が、違法行為をすべて是正することを約束、実行することが解決への道である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月8日付)は、「習主席、米中は譲り合いを、キッシンジャー氏に」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は8日、北京でキッシンジャー米元国務長官と会談した。米中間の緊張について「双方の譲り合いの精神によって友好的な話し合いで解決したい」と述べた。米国内での反中感情の高まりにも言及したうえで、「中国の正当な権益は尊重すべきだ」とけん制した。国営新華社通信が伝えた。習氏は「国際社会は中米関係が正しい方向へ発展することを期待している」として米国に共存を呼びかけた。月末にアルゼンチンで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせた首脳会談での意見交換にも意欲を示した。キッシンジャー氏は「米中は相互理解をさらに深め、よく意思疎通して対立点を適切に管理すべきだ」と述べた」

     

    キッシンジャー氏をわざわざ中国へ招き会談する。米国へのアッピールである。トランプ流に言えば、ディールをする腹積もりであろうか。だが、トランプ氏は下手な妥協をすれば、下院で多数派を占めた民主党の批判を浴びるはずだ。民主党も反中国を鮮明にしている以上、トランプ氏は初志貫徹の必要があろう。

     

    中国は、時間が経てば経つほど不利になる。資金の純流出が起っているからだ。「中国製造2025」にこだわっていると、外貨準備高を取り崩す事態に陥る、中国は3兆ドル余の外貨準備高を抱えていても、実際に使用可能な資金は5000億ドル強と指摘されている。

     

    この点は、私の「メルマガ4号」(11月11日発行予定)で取り上げる。

     

    現実に、中国は資金的に余裕がなくなってきた。資金ショートは時間の問題だ。それを覚られないようにしているだけである。こういう事情を完全に知っている米国が、甘い妥協をするはずがない。


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