勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国経済は、まさに四面楚歌である。デレバレッジ(債務削減)に着手し始めた局面で、米中貿易戦争への突入だ。習近平氏は、「終身国家主席」の切符を手に入れただけに、弱腰の対応はできない。堂々と、トランプ米国大統領と対決しなければ威厳に傷がつく。かくて、無謀な戦いに手を染めてしまった。

     

    悪いことには、名うての国粋主義者を側近に入れている。彼の助言に従い「いざ、戦わん」というポーズまでは良かったが、相手は米国である。世界一の市場を抱える国と、正面衝突したらどうなるか。負けるのは決まっている。中国には、それが分らないのだ。

     

    『ブルームバーグ』(9月10日付)は、「中国の貿易に陰り、トランプ大統領は全輸入品に関税の用意」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「トランプ米大統領は7日、追加関税を課す中国からの輸入品の対象を一段と広げ、全ての輸入品に「すぐさま」課税する用意があると述べた。エコノミストの間では通商摩擦が経済に即座に及ぼす影響は限定的との見方が優勢だが、中国人民銀行(中央銀行)前総裁の周小川氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、『経済への信頼に対する影響はより大きいだろう』と指摘した」

     

    中国人民銀行前総裁の周小川氏は、「経済への信頼」という微妙な言葉を使っている。具体的には、人民元相場の下落を意味していると見るべきだ。為替相場は、まさに「経済への信頼」そのものである。

     

    8月の対米貿易黒字は過去最大に膨らんだ。一方、ドルベースの輸出の伸びが、全体として鈍化したことは、深刻に受け止めるべきである。米国による大規模な追加関税措置が迫っているからだ。中国の輸出業者は今後ひどい打撃を受け、2019年の中国のGDP伸び率は落ち込む公算が大きいとの見方が出ている。この見解と、先の前・人民銀行総裁の発言を重ね合わせると、中国経済の受ける打撃のほどが予想できる。

     

    中国の輸出部門は、とりわけ大きな打撃を受ける。純輸出(輸出-輸入)は、昨年のGDP成長率に寄与したが、今年以降は大きく足を引っ張るのだ。無駄なインフラ投資をいくら増やしても「焼け石に水」になりかねない。習近平氏は、正念場を迎える。

     

    こうなると、国内経済を支えるには、例のインフラ投資に依存するほかない。腹一杯食べた後で、さらに「インフラ投資」という名の食事を取らなければならない。そういう局面が現在の中国経済である。

     

    『ロイター』(8月24日付)は、「中国財政相、理不尽な米貿易措置には断固対抗」と題する記事を掲載した。

     

    (2)「中国の劉昆財政相は、米国がさらに貿易関税を課せば中国は米政府に対抗し続けるとした一方、中国系、外資系にかかわらず中国国内の企業への悪影響を避けるため、報復措置は可能な限り的を絞るとの見方を示した。劉氏は、現時点において中国経済に対する米中『貿易摩擦』の影響は小さいが、雇用の減少などが懸念されると述べた」

     

    8月下旬の段階では、米中貿易戦争のもたらす中国経済への影響は小さいとしていた。現実には、影響が出ていた。PMI(製造業購買担当者景気指数)では、輸出の受注が落込んでいたのだ。また、雇用減少が懸念されるのは、製造業に変化が起こっていた結果である。財政相は、意図的に貿易戦争の影響を軽微に見せる姿勢を見せている。そんなはずはない。負け戦を隠蔽しているのだ。

     

    (3)「劉氏は、貿易摩擦の影響を受けた失業者や労働者を支援するために財政支出を拡大すると述べた。また、地方政府がインフラ投資を支援するために発行する債券額が第3・四半期末までに1兆元(1454億8000万ドル)を超えるとの見通しを示した。劉氏は『中国は貿易戦争への参加を望んでいないが、米国が講じている理不尽な措置に対し、断固として対応していく』と指摘。『米国がこれらの措置を持続するなら、われわれは自国の利益を守るために相応の対応策をとるだろう』と述べた」

     

    中国政府は、自らは手を汚さないで地方政府にインフラ投資をさせている。カムフラージュしているが、地方政府の債務は最終的に中国政府の責任に帰着する。逃げ隠れしていても無駄なのだ。こうした地方政府を隠れ蓑にしていることが、隠れ債務の膨張を招いている。中国経済が把握していない公的債務がどれだけあるか分らない。これでは、清朝政府となんら変わらない放漫財政を招き、最後は自滅という結果しか残らないであろう。中国はそれだけ、危険な道に踏み込んでいる。

     

     


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    中国は借金=債務が支えている経済である。限界資本係数が、他国の2倍以上という非効率経済の裏には、ともかく債務によって経済を成長させる。そういう危ない思考が支配している。どのような経済成長過程を経て行くか。プロセスの質を問わずに、GDPの成長率だけを求める。まさに、異常な国家である。技術窃取をしても構わない。孫子の兵法に基づく、勝てば官軍という始末に負えない思考が、中国指導部を支配しているのだ。公的債務の増加は、企業債務の増加と同様に、中国経済の命取りになってきた。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月10日付)は、「中国、地方の隠れ債務500兆円の憂鬱」と題する記事を掲載した。

     

    (5)「8月10日、安徽省の省都である合肥市は突然、『開発区の隠れ債務は3.3億元(約53億円)にのぼる」と発表した。このニュースは、瞬時に中国全土を駆け巡った。中国で地方の隠れ債務が公表されるのは極めてまれなためだ。開発区の負債には、回収不能になった土地の売却代金が含まれている可能性がある。より深刻なのは合肥市が同時に明らかにした『市全体の隠れ債務は475億元(約7700億円)だった』との一文だ。中央政府が認める、いわゆる『公式債務』が656億元なのに対し、さらにその7割を超す規模の債務が潜んでいた」

     

    安徽省の合肥市が、隠れ債務475億元の存在を発表した。これは、公表されている債務656億元の7割を超すもの。とても「隠れ債務」と呼べるほど、規模の小さいものでなかった。ここで注意していただきたいことは、中国官僚制では、後任者が先任者の欠陥を暴くことは御法度である。自らも、後任者から告発されるリスクを背負うからだ。だが、隠れ債務が余りに大きく、自らの責任にされないように予防戦を張った結果と見られる。となれば、今後は「隠れ債務」続々と公表されると見られる。

     

    (6)「隠れ債務とは何か。地方政府は傘下に数多くの子会社を持ち、『融資平台』と呼ばれる投融資会社が抱える負債が一つ。さらに中国はここ数年、企業にインフラ整備を委託する『官民パートナーシップ(PPP)』と呼ばれる手法を多用してきた。目先の資金拠出を抑えながら景気下支えに必要な公共投資を積み増すためだが、最終的には地方政府が資金面の責任を持たなければならない。この他にも「棚改」という、老朽住宅の住み替え推進に伴う財政負担も膨らんでいる。すべて隠れ債務の対象だ」

     

    地方政府は、隠れ債務を行なってまでインフラ投資にのめり込んできた。中央政府からの厳しい要求と、自らの立身出世の欲が絡んだものだ。日本の地方自治体にはあり得ない世界である。こうしたカラクリが、GDPを押上げてきた。蓋を開けて見たら、隠れ債務の山である。冗句にもならない、お粗末な中国の経済政策だ。これで米国と「五分の貿易戦争をする」ことは不可能に違いない。

     

    (7)「中国は表面上、『政府は隠れ債務の元利払いに責任を持たない』と繰り返す。だが、社債発行など資本市場の現場では『暗黙の保証』があるとみる投資家が多く、地方政府もそれをにおわせることで円滑に資金を調達してきた。しゃくし定規に融資平台やPPPを突き放してしまうと信用収縮を起こしかねない。1月には雲南省系の融資平台が債務不履行に陥り、省政府の支援を受けた例もある」

     

    中国政府が、手品を使っても地方政府の債務行為を帳消しにはできない。最終的には、中央政府の債務となって記録されるからだ。現状では、地方政府や国有企業に債務を押しつけている。その余力が、国防費の膨張となっている。だが、地方政府の隠れ債務も国有企業の債務も、いずれは中央政府債務に合算される。その時点で、国防費に回す財政的なゆとりは消えるだろう。

     

    (8)「隠れ債務が20兆元にせよ30兆元にせよ、公式債務(7月末で17.2兆元)を大きく上回る。17年末で13.5兆元弱にのぼる中央政府の債務と合計すると、広義では60兆元前後(約1000兆円)に達する計算だ。GDPとの比較では7割を超えている。信用不安がすぐに中国を襲うとは考えにくいが、財政拡張の限界は着実に近づきつつある。米国との貿易摩擦に落としどころがみえないなか、習近平指導部は再び景気のアクセルを踏み込もうとしている。その副作用や後遺症を論じる声があまり聞こえてこないことも中国経済が抱える病巣の一つだ」

     

    公式・非公式を問わず、中央政府の抱える債務総額は、約1000兆円を超えている。対GDP比で7割を超える。中国は、無理な経済成長にこだわり、メンツを維持してきたが、随分と高価な「メンツ代」になった。「大言壮語」するために払ったコストである。中国社会が、こういう無意味な「メンツ」から脱却できる可能性はあるのか。率直に言えば、ないというのが現実だ。中国のメンツが、国を滅ぼすにちがいない。

     

     


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    韓国の就職難は、ますます深刻化している。8月の失業給付の給付額が、前年比30.8%増という異常な状態。過去最高である。これでは、「就職天国」日本に憧れるのは当然だ。

     

    韓国政府は就職難の理由として、①天候、②中国人観光客の減少、③前政権の責任だと主張しても事足りず、④人口構造のせいにまでしている。少子化で就労人口が減少すれば、雇用も減少するという屁理屈である。生産年齢人口の減少は、潜在的経済成長率を引下げるが、日本のアベノミクスは積極政策で成長率を引上げている。韓国も同じことを行なえば、就職難は解決する。自らの無策を棚に上げた無責任政府である

     

    『聯合ニュース』(9月10日付)は、「日本留学フェアが大盛況、背景に就職難か」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日本への留学希望者らを対象にした『日本留学フェア』が9日、ソウルの総合展示場・COEXで開催された。フェアは23回目で、文部科学省が所管する日本学生支援機構の主催。毎年9月にソウルと釜山で開かれている。今回は日本の大学や専門学校、日本語学校、高校など計約100機関が参加し、最新の留学情報を提供。日本語の通訳スタッフを配置し、個別相談も行った」

     

    日本の文部科学省が所管する日本学生支援機構の主催である。大学以外に高校までフェアに参加した。日本の若者不足をカバーするという狙いであろう。高校から日本へ留学して日本語に習熟すれば、日本での就職が有利になることを織りこんでいると見られる。

     

    (2)「会場に設けられたブースには長い列ができるなど大盛況となった。主催側によると、前年の約4000人を上回る約4500人が来場した。主催側関係者は来場客が増加した背景について、『やはり韓国での就職難があると思っている』と話した。韓国教育部がまとめた昨年の日本への留学生数(大学以上)は前年比で1.1%増加した1万5457人だった。留学先で4番目に多い。会場を訪れた男性(23)は、『日本の文化への関心が高く、今通っている韓国の大学をやめて日本の料理専門学校に留学したい』と話した」

     

    韓国では、大学4年から日本へ留学させる制度を政府が検討するほど就職が深刻化している。日本留学が魅力あることは確かだろう。就職が保証されているも同然であるからだ。韓国の大学を中退して、日本の料理専門学校へ進みたいという若者まで現れた。日本料理が、フラン料理などと並んで世界料理としての魅力を高めている反映だろうか。


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    米中貿易戦争が中国に与える影響は、これから本格化する気配だ。8月の中国の貿易統計は、今後の中国経済の「運命」を示唆する。8月の対米貿易黒字は過去最大に膨らんだ一方、ドルベースの輸出の伸びは全体として鈍化したのだ。

     

    中国は、表面的には米国と「対等」を強調しており、一歩も下がらないポーズである。だが、米国という世界最大の市場を相手にして「互角に戦う」ことなどあり得ないこと。早く、自らの非を認め、WTO原則に従った経済運営が中国を救うことに気づくべきだろう。

     

    『ブルームバーグ』(9月10日付)は、「中国の貿易に陰り、トランプ大統領は全輸入品に関税の用意」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「トランプ米大統領は7日、追加関税を課す中国からの輸入品の対象を一段と広げ、全ての輸入品に「すぐさま」課税する用意があると述べた。エコノミストの間では通商摩擦が経済に即座に及ぼす影響は限定的との見方が優勢だが、中国人民銀行(中央銀行)前総裁の周小川氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、『経済への信頼に対する影響はより大きいだろう』と指摘した」

     

    中国人民銀行前総裁の周小川氏は、「経済への信頼」という微妙な言葉を使っている。具体的には、人民元相場の下落を意味していると見るべきだ。為替相場は、まさに「経済への信頼」そのものである。

     

    (2)「中国税関総署が8日発表した8月の貿易統計は、米中のにらみ合いの原因とその結果を如実に示した。対米貿易黒字は過去最大に膨らんだ一方、ドルベースの輸出の伸びは全体として鈍化した。IHSマークイットのアジア太平洋担当チーフエコノミスト、ラジブ・ビスワス氏(シンガポール在勤)は、『米国による大規模な追加関税措置が迫っており、中国の輸出業者は今後ひどい打撃を受け、2019年の中国のGDP伸び率は落ち込む公算が大きい』と指摘。『米国が中国への関税措置を強化し続けたら、当局が影響緩和策を講じても、輸出セクターにはこの先、長期にわたる厳しい道のりが待ち構えている』と述べた」

     

    8月の対米貿易黒字は過去最大に膨らんだ。一方、ドルベースの輸出の伸びが、全体として鈍化したことは、深刻に受け止めるべきである。米国による大規模な追加関税措置が迫っているからだ。中国の輸出業者は今後ひどい打撃を受け、2019年の中国のGDP伸び率は落ち込む公算が大きいとの見方が出ている。この見解と、先の前・人民銀行総裁の発言を重ね合わせると、中国経済の受ける打撃のほどが予想できる。

     

    中国の輸出部門は、とりわけ大きな打撃を受ける。純輸出(輸出-輸入)は、昨年のGDP成長率に寄与したが、今年以降は大きく足を引っ張るのだ。無駄なインフラ投資をいくら増やしても「焼け石に水」になりかねない。習近平氏は、正念場を迎える。


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    互いにシンゾー・ドナルドと呼び合う日米首脳が、貿易摩擦で真剣勝負に臨む。国益を背負った貿易交渉である。攻めるのはトランプ氏。守るのが安倍氏である。

     

    昨年の米国の貿易赤字は約8000億ドル。国別の赤字額は次のようになっている。

    1位 中国  3752億ドル

    2位 EU  1514億ドル

    3位 メキシコ 711億ドル

    4位 日本   688億ドル

    5位 韓国

    6位 カナダ

     

    上記6ヶ国を見ると、日本との交渉だけが残っていることが分る。米国が、日本を最後に回した理由は不明だが、中国や北朝鮮の問題で日本の協力を取り付ける必要があったのだろう。これもメドがついたので、「本丸」日本との真剣勝負という段階だ。

     

    日本政府の意向を探ったと見られる報道に注目したい。

     

    『日本経済新聞』(9月9日付)は、「米圧力 動揺隠す日本、トランプ氏、対日赤字で強硬発言」と題する記事を掲載した、

     

    (1)「これまでの日米関係は双方の事務方で積み上げるボトムアップ方式で築き上げてきた。大統領と事務方の考えに開きはなかった。トランプ氏が大統領になり、この慣例は崩れた。側近や政府高官の相次ぐ更迭や離反など政権内のゴタゴタが収まる気配はない。トランプ氏の真意は結局、トランプ氏にしか分からない。この点が明確になった。「米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表でもトランプ氏の判断を仰がなければ何も決められないことがよく分かった」。日米貿易交渉を担当する幹部は8月上旬の貿易協議を通じて確信した。日米貿易協議でもシンゾー・ドナルド関係に比重がかかるゆえんだ」

     

    安倍首相が、トランプ大統領とウマが合うのは、首相の「聞き上手」にもあるという。決して最初から反論しない。「そうですね」と言って、先ずトランプ氏の主張を受け入れる。その後で、「こういう考え方はどうでしょう」と誘導するというのだ。実は、マティス米攻防長官がこのスタイルのようだ。このソフト路線だと、あからさまな対決にはならないから円滑に対話が進む。トランプ氏は、癇癪持ち。こういうタイプはおだてて行く方がプラスである。

     

    安倍首相は、生来の「ひとたらし」と言われる。初対面の人を必ず味方につけるというのだ。党内で敵を作らない性格が、自民党総裁選で3期も立候補するチャンスを生んだのであろう。

     

    (2)「トランプ氏の真意が分かったとして日本側がそれに応えられるかの問題もある。液化天然ガス(LNG)や防衛装備品などの購入拡大……。首相が20日投開票の総裁選で3選したとしても、来年には統一地方選や参院選が控える。国内政治への打撃を避けながら日本側が出せる政策には限界がある。『今回できれば、ゴルフをやってもらいたい』。9月下旬に予定する米国でのトランプ氏と首相の会談に関連して政府内にはこんな期待がある。首脳ゴルフによるトランプ氏の軟化――。日米貿易協議を巡る政府の政策の行き詰まりが浮かび上がる」

     

    政府部内では、次回の日米首脳会談で「ゴルフ会談」を期待しているという。ゴルフの合間に、日本に有利な解決を引き出す狙いだ。ゴルフが、国益に貢献することになるのかも知れない。新しい外交術である。

     


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