勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    a0008_000765_m




    盤石の政治基盤を擁するはずの習近平氏が、6月以降の急激な金融引締めによって、政治的に傷を負っているのでないかと指摘され始めている。

     

    習氏は、序列5位の政治局常務委の王滬寧(ワン・フーリン)氏から強い影響を受けたのでないか。今、そう取り沙汰されている。王氏は、イデオロギーとプロパガンダ(宣伝)の担当だ。「習思想」なるものを発案し、習氏の神格化を促進していた人物として知られる。そのキーマンが、ここ1ヶ月の動静が報じられていない。王氏の失脚説が流れている背景には、米中貿易戦争によって、中国経済が大きな影響を受けていることが上げられる。王氏が、習氏に「米国覇権挑戦論」を吹き込んだのでないか。そういう話にまで発展するのだ

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月15日付)は、「中国債務問題、習氏の政治的な傷になるか? 」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「8月14日発表された7月の同国経済指標が映し出したのは、中国の景気鈍化が深まっている状況だ。特に投資の伸び率は2000年以降で最低にとどまった。経済の窮状が健在化する兆しとして、中国の政治支配層の間に不満が見え隠れするようになった。経済成長と債務をいかに管理すべきかを巡り、財政省と中国人民銀行(中央銀行)のいさかいも明るみに出た」

     

    7月の景気指標は、固定資産投資の鈍化と小売り売上高の停滞を告げるものである。特に投資の伸び率は、2000年以降で最低にとどまった。この原因はどこにあるか。習氏の「米国なにするものぞ」という空元気がもたらした、強い金融引締めによる負の影響と見るのが順当だ。この裏に、米国衰退説を主張している王氏がいる。習氏と王氏は、肝胆相照らす「国粋主義者」である。

     

    (2)「こうした意見の対立は通例、秘密裏に処理されるものだ。国務院(内閣に相当)はこれまで経済政策をほぼ習氏に委ねていたが、いつになく積極的に力強い成長を呼びかけている。そして中国の短期借入金利は、ここに来て2016年中盤の水準まで低下した。これは金融緩和にシフトする明確な兆候だ」

     

    国務院が、積極的に成長政策を呼びかけているという。この裏には李克強首相がようやく、経済政策の権限を取り戻した結果かも知れない。もともと、経済政策は首相の専管事項とされていた。習氏が、それを横取りして経済運営の実権をかすめた。それが、元の状態に戻ったのか。これが事実とすれば、「大変革」である。

     

    (3)「中国が借り入れを減らし、より効率的に投資すべきであるのは誰もが認めるところだ。だとしても、銀行からの融資が難しい小規模な民間企業への影響を考えると、債券市場とシャドーバンキング(影の銀行)を同時に締め付けるのは常に危険と隣り合わせだ。今年、損失が表面化するのを注視していた地方官僚は、恐らくおじけづくあまり、率直に声を上げられなかったのだろう。その結果、民間企業への貸し渋りが急増。前例のない数の社債デフォルト(債務不履行)が発生している」

     

    非金融部門貸出は、4月の増加額を絞った上に、5月以降に急減させた。これが、中国経済に混乱をもたらしている。次のパラグラフにあるように4月以降で1.5兆元も減っている。

     

    (4)「非金融部門貸出残高(社債、シャドーバンキングを含む)は4月以降だけで1.5兆元(約24兆円)余り減少し、過去10年間で最も急激な落ち込みとなった。政策担当者は今や、金融・財政政策を緩和することで、この2年間の債務圧縮の動きを巻き戻すよりほかに道がないだろう」

     

    (5)「習氏が、米国の貿易問題への決意を見誤ったこと――そして同時に国内の債務への締め付けが厳しすぎること――が政治的に傷つけたと思われる。まだ明確でないのはその傷がどのくらい深いかだ。いずれにせよ、政治的な駆け引きの季節が始まりそうな気配だ。習氏の敵対勢力が再び自己主張し始めたからだ。それが間近に迫る景気悪化に対処する政策担当者の能力を奪う可能性がある。緩和の兆しが明確になり始めたのを背景に、一部のアナリストは中国株に強気になっている。だが目先の政治の不透明さを考えると、予想以上の波乱に見舞われてもおかしくない」

     

    このパラグラフでは、慎重な言葉のなかに中国の政治情勢が不透明になっていることを示唆している。習氏の敵対勢力が、再び自己主張し始めたからだ。この勢力が、経済重視派であることは事実。中国経済の落ち込みが激しくなれば、政治闘争が始まる可能性を示唆している。中国は、一枚岩でなかった。

     


    a1150_001142_m



    米朝交渉は、押したり押されたりしているが、次第に双方の決着点が見えてきたようだ。相変わらず、北の米批判は続いているが、トランプ大統領には敬意を表した発言である。北はまた「トランプ砲」が炸裂して、「米朝会談止めた」と言われたら一大事。腫れ物にさわるような気遣いが見られる。

     

    『朝鮮日報』(8月15日付)は、「核リスト提出の見返りに終戦宣言、米朝が歩み寄りか」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米国のポンペオ国務長官が今月末に北朝鮮を訪問するのを前に、米朝は北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の解体と国外搬出・廃棄、さらに核兵器リストの提出問題について協議を行っていることが14日までにわかった。北朝鮮はそれらに対する見返りとして体制保証のための終戦宣言を米国に要求しているという。米朝は先週、板門店で実務者協議を行い、これらの問題でかなりの歩み寄りがあったようだ。複数の外交筋が伝えた」

     

    米朝間で、親書の交換が続いている。交渉が進展している証拠かも知れない。米国はこれまで、核リストの提出がなければ終戦宣言はしない。北朝鮮は、終戦宣言が先であり、体制保証なければ、核リストは出さないと譲らなかった。「ニワトリが先か卵が先か」の話に似ている。米朝が妥協して、「同時交換」となるのだろうか。

     

    (2)「米朝関係に詳しいある外交筋は14日、『米国で11月に行われる中間選挙を前に、米国内の世論を味方につけたいトランプ大統領と、北朝鮮の政権樹立70周年記念日(99日)を控えた金正恩朝鮮労働党委員長の間で利害が一致し、最近になって交渉が大きく動いている』と明らかにした。トランプ大統領は先日、金正恩氏に親書を送り、その中でポンペオ氏の訪朝を提案すると同時に『非核化に向け北朝鮮は速度を上げねばならない』と求めたようだ。双方の水面下での交渉が進展すれば、ポンペオ氏が今月下旬にでも訪朝し、最終合意に乗り出す可能性もあるという」

     

    米国の11月の中間選挙と、北の9月に迎える政権樹立70周年記念日というタイミングに合わせて、米朝が合意に達しそうだという。ポンペオ米国務長官が、8月下旬にでも訪朝して最後の詰めを行なうという。

     

    (3)「現在、膠着状態にある米朝による非核化に向けた交渉が再び動き出したことで、中国の習近平・国家主席も99節直前の9月はじめに訪朝する方向で中朝間の調整も行われているようだ。習主席は4月の南北首脳会談を前にした326日、そして6月の米朝首脳会談をわずか1カ月後に控えた57日、金正恩氏と電撃的に首脳会談を行った。南北首脳会談と米朝首脳会談の直前になると、習主席は必ず金正恩氏と直接会い、いわば存在感を誇示してきたと言えるだろう。上記の外交筋は、『米朝間で非核化交渉が急激に進展すれば、習主席が訪朝する可能性も高まるだろう』との見方を示した」

     

    習氏の訪朝計画がまとまれば、米朝合意のシグナルになるという。

     

    (4)「韓国と北朝鮮は17日ごろに実務者協議を行い、平壌での首脳会談の日程を910日以降とすることで一致する見通しだ。8月下旬のポンペオ氏訪朝を皮切りに、習主席の訪朝、文大統領の平壌訪問と続くことで、韓半島(朝鮮半島)非核化に向けた動きが大きな転換点を迎えるのは間違いなさそうだ」

     

    8月下旬のポンペオ氏訪朝を皮切りに、習主席の訪朝、文大統領の平壌訪問と続く。これら一連の外交日程が固まれば、「米朝合意」の最終決定と言えそうだ。朝鮮半島で第二次世界大戦後の未処理問題が解決に向けて進展すれば、日本の拉致問題も解決への展望が開ける。拉致家族の喜ぶ顔が目に浮かぶ。

    a1200_000017_m


    韓国ではときおり、目を剥くような大英才が現れる。凡人には真似もできない話だが、この青年は、「IQ187」という神がかり的な存在だ。

     

    IQについて調べたところ、次のようなことが分かった。分布はほぼ正規分布になり85~115の間に約68%の人が収まり、70~130の間に約95%の人が収まる」という。となると、IQ187は、ほとんど「神の領域」かも知れない。

     

    この韓国青年が、8歳で大学へ入学して宇宙物理学を学んだが、8年間の博士課程在学中に博士号を取得できず、規定により退学するというニュースである。日本でも国立千葉大学が、高校2年生で入学させる「飛び級」制度を採用している。ここに飛び級入学した青年が、その後の人生で今は、長距離トラック運転手という記事があった。「人生山あり谷あり」を実感する。

     

    『中央日報』(8月13日付)は、「科学英才を1人も生み出せない韓国教育システム」と国を批判的に報じている。

     

    8歳で大学に入学したIQ187の『天才少年』ソン・ユグンさん(21)が結局、博士課程を終えられず学校を離れることになった。科学技術連合大学院大学校(UST)によると、ソンさんは6月、卒業のための博士学位論文最終審査で不合格になったことが分かった。ソンさんは2009年、修士・博士統合課程でUST韓国天文研究院キャンパスに入学したが、卒業年限の8年以内に博士学位を取得できず、結局、2018年前期学位が終わる今月末で卒業でなく『修了』となった。ソンさんは12月に現役兵として軍に入隊する予定という。今後、博士学位を取得する場合、軍服務を終えた後に別の大学の学位課程に入学しなければならない」

     

    「ソンさんは6歳でアインシュタインの相対性理論を理解し、大学レベルの微分・積分問題を解いて話題になった。その後、検定試験で中学・高校課程を終え、8歳で仁荷大自然科学系列に入学した。しかし幼い年齢で入った大学での生活に適応できず中退し、独学で電子計算学学士学位を取得した。その後、2009年にUST天文宇宙科学専攻修士・博士統合課程に進学した。2015年には英国の天体物理学ジャーナルに発表したブラックホール関連の論文に盗用疑惑が浮上し、翌年11月に論文が公式撤回される危機を迎えた。当時ソンさんは『特に残念とは思わない。1カ月後に新しい論文を発表するので卒業自体にいかなる問題もない』と語った。ソンさんはその後、指導教授なくUST博士課程の学生として日本・台湾の天体物理学者らのサポートを受け、台湾の関連研究所で研究を続けた。ソンさんの家族側は『ユグンは依然として日本から共同研究の要請が入ってくるほど外国では可能性が認められている』とし、『博士の学位に執着せず、天体物理学者として研究を続けていく予定』と伝えた」

    この記事を読んでの感想は、二つある。

     

    一つは、対人関係がスムースにいかなかったことだ。誰か、サポート役がついていれば良かったと思う。かなり神経過敏症的な点はなかったか。

     

    二つは、発表した論文に盗用疑惑を持たれた点だ。これも、話相手になれる指導者が側にいれば防げた点であろう。学術研究では、引用文献がしっかりしていれば、「よく研究してフォローしている」という評価につながるもの。その点で、やや背伸びした点はなかったか。韓国の大学が、博士号を出さなかったのは「盗用疑惑」が災いした点もあるように思う。博士号を出した後で、「盗用」であったとなれば、大学の権威が揺らぐからだ。その意味でも、最初の「盗用疑惑」が響いているように思える。

     

    どうかめげずに、苦難を乗り越えて大成して貰いたい。


    a0070_000057_m


    フィリピンのドゥテルテ大統領は、就任後に南シナ海における中国の横暴を事実上認めるきっかけをつくった人物である。常設仲裁裁判所から、中国の違法性を100%認められながら、腰砕けの姿勢をとったからだ。

     

    そのドゥテルテ大統領が、思い切った中国批判の発言をして注目されている。

     

    『ロイター』(8月15日付)は、「南シナ海での行動、中国は再考を、フィリピン大統領」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ドゥテルテ大統領は14日遅くに行った講演で『いつの日か引火点となりかねないため、中国は考え直さなくてはならない』と指摘。同大統領が中国を非難するのは異例。『島を造ることはできない。人工島の上の空域を自分のものだと言うことは間違いだ。なぜならそれらの海域をわれわれは公海とみなすからだ。そして無害通航権は保証されている』と述べた」

     

    最近、中国軍は米軍飛行機が南シナ海を飛行した際、「中国領空を飛行するな」という警告メッセージを出していた。ドゥテルテ大統領は多分、こういう中国の越権行為を非難したと思われる。それにしても、「遅すぎた発言」という誹りは免れまい。

     

    中国は、中比紛争で勝訴したフィリピンが、すっかり「中国寄り」になったことで勝利感に酔っていた。米海軍抜きで、中国海軍を中心とる軍事演習を南シナ海で実施する案まで作っていたほど。

     

    (2)「中国が東南アジア諸国連合(ASEAN)に対し、南シナ海で米軍抜きの共同軍事演習の実施を提案したことが分かった。中国とASEANはシンガポールで開いた8月2日の外相会議で、南シナ海の紛争回避に向けた行動規範の『たたき台』をまとめた。中身は各国の意見を列挙しただけの内容だが、複数の外交筋によると、中国が提出した部分にASEAN10カ国との共同演習を南シナ海で定期的に実施し、原則として域外国は参加させないとの提案が書き込まれた」(『日本経済新聞』8月4日付)

     

    中国は、南シナ海の「盗人」にも関わらず、主人役に収まるという異常な行動に出ていた。これに「義人」をもって任じるドゥテルテ大統領が、反撃を加えた形だ。これには、理由がある。

     

    フィリピンは、中国から総額240億ドル(2兆5000億円)に上る経済支援を受ける約束になっていた。しかし、2年経っても投資プロジェクトはほとんど実行されていない状況である。ドゥテルテ大統領が腹に据えかね、中国批判に転じたと見られる理由だ。

     


    a0001_017860_m


    8月2日、米企業で初めて株式の時価総額が1兆ドルを上回ったアップルに、「難癖」つけようと狙う相手が現れた。米中貿易戦争で手詰まり感の強い中国である。正当な理由もなく、相手を罵倒するやり方は中国の得意技。共産主義につきまとう忌まわしい、「集団リンチ」というあの手法である。

     

    7月末ごろから中国官製メディアは、アップルに対する批判を相次いで行なっている。同社製品の不買運動を示唆するような記事も掲載された。アップルが貿易戦争の報復カードにされる可能性が取り沙汰されている、という報道が出てきた。

     

    『SankeiBiz』(8月15日付)は、「中国で強まるアップル批判、貿易摩擦の報復か、不買運動も示唆」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国共産党機関紙『人民日報』英語版サイトは8月7日、トランプ米政権の制裁措置が中国企業に打撃を与えた場合、『(アップルが)中国市場で成し遂げた人目を引く成功が、愛国主義者の感情を刺激するかもしれない』などと警告する記事を掲載した。アップル製品の不買運動などをにおわせた形だ。また、国営中央テレビ(CCTV)は7月末に、アップルのアプリ配信サービスが違法コンテンツを放置していると報道。国営新華社通信も同時期に、アップルの迷惑メールへの対応に問題があると批判する記事を報じるなど、アップルへの非難が続いている」

     

    中国の官製メディアは、ジャーナリズムの範疇には入らない。ただの宣伝機関であるが、その威力は桁外れに大きい。9000万人の共産党員の「必読紙」であるからだ。この官製メディアが、こぞって「アップル不買」を煽る記事を流したならどうなるか。

     

    米大統領のトランプ氏が、まず反撃の狼煙を上げるだろう。その後、「トランプ砲」が具体的な対抗策を出すかどうか。「口撃」だけでは、トランプ氏の本領発揮と言えないからだ。私の想像だが、中国企業への金融制裁をちらつかせるのでなかろうか。これが現実化したら、中国企業のビジネスは存続不可能になる。米国の持つ金融ネットワークは、基軸通貨国ゆえに世界経済を支配している。中国は、これを忘れると大変な事態を迎える。

     

    (2)「日本や韓国との関係が悪化した際にも、中国では相手国の企業を標的に不買運動などが行われた。米国との貿易摩擦でも、従来の関税引き上げだけでは反撃に限界があり、アップルなど米企業への圧迫を交渉材料にするとの見方が市場関係者の間で指摘されている。実際に不買運動が行われれば、アップルのダメージは小さくない。同社が7月末に発表した2018年4~6月期決算では、中国本土と香港、台湾での売上高は前年同期比19%増の約95億ドル(約1兆円)で、全地域の2割弱を占めている」

     

    中国が、アップル製品の不買運動を始めれば、米国民の「反中国熱」が一気に高まる気配も感じる。「集団リンチ」に等しい不買運動は、米国民の正義を重んじる国民性と相反するからだ。中国は、よく考えて見ることだ。

     

     

     


    このページのトップヘ