勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。


    中国政府は、表向きは「ニーハオ」と言って愛嬌振りまきながら、裏にまわれば公然とスパイ活動を行なう。まさに、「ジキルとハイド」の国家のようである。次々と明らかにされる中国のスパイ活動は、止まるところを知らない。

     

    『大紀元』(11月6日付)は、「中国通信大手ファーウェイ、当局にアクセス・コードを提供―豪メディア」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「オーストラリア政府関係者が入手した機密調査報告書はあらためて、中国通信大手の華為技術(ファーウェイ)と中国当局が緊密的な関係にあることを指摘した。同報告書によると、中国情報機関は海外で浸透工作を展開するため、ファーウェイの社員に海外のインターネットのアクセス・コードを提供するよう要求していた。豪メディア「ウィークエンド・オーストラリアン」電子版が3日報じた」

     

    オーストラリアは、中国の政治的浸透の対象にされていたことが判明以来、中国に対して極度に神経を払っている。その点では米国並みだ。華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)は、中国政府の別働隊とさえ見なされている。これは、もはや国際的な常識になっている。日本の警戒心は薄いようだ。

     

    (2)「オーストラリア通信電子局のマイク・バーガス局長は1029日、キャンベラで開催されたサイバーセキュリティの関連イベントで、ファーウェイとZTEが「危険性の高い企業」であると指摘した。また、5G技術の整備は国民生活に関わる重要な通信インフラであるため、豪国内のサイバーセキュリティを考慮して5G構築から2社を除外することを支持する考えを示した」

     

    日本では、次世代通信網5Gをめぐって、ファーウェイとZTEの扱いについて結論を発表していないが、一部報道では排除するとしている。米国や豪州が排除しているのに、わざわざ日本が危険な選択をする必要はない。国家の安全保障確保が第一である。



    広い世の中には、夢のような米中宥和論も登場する。きょうは、それを取り上げた。米国は、中国を一方的に責めるだけでなく、自らも反省せよというもの。一服の清涼剤として聞いてみたが、多分、米国が手を緩めている間に中国が手を回して自らの立場を強化するだろう。そういう意味で、「冷戦回避論」には、中国に塩を送る側面が極めて強く、西側が不利な立場に追い込まれる危険な策である。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(10月31日付)は、「新冷戦回避の5指針」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「今はこれから長く続く米中対立のほんの始まりのようだ。米国は中国を根本的に変えたいと願っている。中国は米国によって国の発展を止められるのではないかと恐れている。米シカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授や米ハーバード大学のグレアム・アリソン教授など国際政治の現実主義者は、無政府状態の世界ではそうした覇権争いは不可避で、多くの場合、戦争になると考える。米国はペンス氏が宣言したような対決を避けなければならない。理由の一つは、トランプ米大統領が称賛する独裁体制を体現している点を除き、中国はイデオロギー上の敵ではないことだ。もう一つは中国系米国人学者ミンシン・ペイ氏が論じるように、たとえ戦争が避けられても、対立が多大な犠牲を伴いそうなことだ」

     

    米国は、ペンス副大統領が宣言したような対決を避けなければならないという。理由は二つ。

       中国はイデオロギー上の敵ではないこと。

       対立が多大な犠牲を伴うこと。

     

    この二点は、余りにもユートピア論である。第二次世界大戦前のヒトラーの動きを甘く見て見過ごしていたと同じ誤りを冒せと言っているようなもの。南シナ海での中国の行動を見れば、彼らが何を狙っているかは明白である。事なかれ主議が前面に出ている議論だ。中国とイデオロギー論争をしている段階でなく、事態はもっと先へ進んでいるのだ。

     

    米中対立の拡大を防ぐため、5つの指針とは何か。

     

    (2)「第一は、我々には中国をこちらの望むようにつくり変える権利も力もないことを認識しなければならない。中国は中国国民のものであり、ほかの誰のものでもない」

     

    中国にWTO(世界貿易機関)に則った貿易ルールの実行を迫っただけで、政治形態の変更は内政干渉に当たり、やるべきことでない。先ず、この点を誤解している。

     

    (3)「第二は、中国の政治形態が永遠に西側世界と同じにはならないと気づく必要がある。残念ながら、今はむしろ我々が中国のようになる公算が大きいようにも思える」

     

    中国は、真の革命=過去との断絶が起るまで変わらない。ただ、共産党政権が崩壊すれば事態は変わる。現状では予測不可能だけである。習近平氏が人権弾圧に力を入れているのは、真の革命を恐れている証拠である。「中国の政治形態が永遠に西側世界と同じにはならない」と言い切るのは、社会科学を学んだ者が口にすべきことでない。革命は、現実に世界で起っているからだ。

     

    (4)「第三は、他国に影響する具体的な行動だけを、原則に基づき一貫性をもって注視しなければならない。中国の発展を止めようとするのは明らかに誤りだ。中国を貿易の規則に従わせたいなら、我々自身も従わねばならない。人権問題を取り上げるなら、我々も完全には守れていないことを自覚しなければならない。中国は我々の言行不一致に気づいている」

     

    中国が、他国技術を窃取する。公然と産業スパイを送り込むことが許されるはずがない。この筆者は、中国が現実に行なっているWTO違反の事実に目を瞑って、「喧嘩両成敗」という高踏的議論をしている積もりなのだろう。この点が、著しく説得性を奪っている。だから、空想論と言うほかない。

     

    (5)「第四は、中国はライバルであると同時に重要なパートナーでもあると認めなければならない。世界経済の安定維持や気候変動問題では、中国との協力が欠かせない」

     

    ルール違犯者に対して、それほど寛容になれるだろうか。国際貿易の紛争を減らすには、ルールに従った行動が前提である。ルールを守ってこそ、良きパートナーになれるのだ。

     

    (6)「第五は、同盟国との信頼がいかに重要かを理解する必要がある」

     

    この項目は必要だ。同盟国(日本やEU)は、米国と協調してWTO改正に向けて協調している。中国の無法ビジネスを取り締まるには不可欠である。この記事に、コメントを付けてみたものの、『フィナンシャル・タイムズ』の記事にしては、余りにも現実からかけ離れたことを言っている。空想論であるのが残念だ。



    中国政府が、中国の「新4大発明」と賞賛した「シェア自転車」が、あえなく倒産に追い込まれた。ちなみに、4大発明とは次のような顔ぶれである。

     

    高速鉄道は「中国の速度」を示し、都市間の距離を縮めた。

    発達したECサイトを通じて、世界各地の消費者の手に高品質の商品が届けられる。

    ③QRコードをスキャンする決済方法が流行し、財布を持たず外出することが日常茶飯事になっている。

    シェア自転車は「最後の1キロ」の解決策を提供し、交通渋滞を効果的に緩和させている。

     

    シェ自転車がここまで絶賛されながら、大手企業が倒産の憂き目に遭ったのは、乗り捨てられた自転車の整理ができなかったことだ。自転車の回収まで計算に入れれば、膨大なコストがかかるはず。その肝心なところが抜けていた。お笑い種である。

     

    『大紀元』(11月6日付)は、「日本撤退のシェア自転車大手ofo 経営再建を準備―中国メディア」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国紙『界面新聞』(1031日)は、ofoは経営再編に向けての準備に着手していると報じた。同紙は情報筋の話を引用し、ofoの負債総額は約65億元(約1063億円)にのぼると伝えた。そのうち、利用者に返還する保証金は365000万元(約597億円)。また、中国メディア『財経』は4日、2日に中国のIT企業が集まる北京・中関村にある本社ビルから荷物を続々と搬出する同社社員の様子を伝えた。新本社となるのは徒歩15分の距離にあるという」

     

    中国社会の新しもの好きで、一時的に人気が高まったが、例によって野放図な経営をしたのであろう。資金繰りがつかなかったことが破綻の原因だ。中国の金融情勢の厳しさを反映しており、貿易戦争という局面で「シェア自転車」の存在など、歯牙にもかけられなくなったに違いない。

     

    (2)「中国国内インターネット上で、ofo社員と名乗るネットユーザーが1031日、大規模なリストラが行われていると投稿した。社員数は昨年末の3400人から現在の1000人未満にまで減った。今年に入ってから、過熱化した中国シェア自転車市場は急速に冷え込み始めた。ofoに関しても、従業員の賃金カット、リストラ、資金難、主要幹部の離職、巨額の負債などが伝えられた。1022日、ofoの運営会社の法人代表は、ofo創業者の戴威氏から同社幹部の陳正江氏に変更された」

     

    経営再建は可能だろうか。いったん離散した人気は簡単には戻るまい。ビジネス・モデルに問題があるからだ。乗り捨てられた自転車をどのように回収するのか。ここが、解決出来なければ再建は不可能と見る。



    中国経済は追い込まれてきた。1~9月の経常収支は128億ドルの赤字であることが判明した。国家外為管理局(SAFE)が、5日に発表した速報値による。このまま、米中貿易戦争が激化すれば、今年の経常収支赤字は決定的となり、人民元相場急落の危機を迎えるであろう。このタイミングを見て、王岐山国家副主席の発言が出てきた。

     

    『ロイター』(11月6日付)は、「貿易問題解決へ米国と協議の用意ー王岐山国家副主席」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国の王岐山国家副主席は6日、世界の二大経済大国が対立すれば損失になるとし、中国は貿易問題の解決に向けて米国と協議を行う用意があると表明した。王副主席は当地で行われたフォーラムで「中国側は共通の関心事について米国と協議を行い、貿易問題で双方に受け入れ可能な解決策に向けて取り組む用意がある」と述べた」

     

    王氏が国家副主席に就任した理由の一つは、対米交渉の切り札役が期待されていたもの。これまで沈黙してきたのは、米中交渉が軌道に乗る可能性が低かったからだ。それが、沈黙を破り発言したのは、中国国内が相当の切迫感を持ち「米国案」への歩み寄り姿勢を見せたのかも知れない。米国は、経済的にも絶対的優位にあるので妥協する必要性がないからだ。



    映画で見るスパイには、必ず女性が登場する。男をスパイの手先にするには、これが、古典的手法のようだ。このほど、米司法省が相次いで逮捕した中国スパイの3大手口では、女性のほかに、パソコン供与と学費支給で学生をスパイに一本釣りした様子が分るという。

     

    『大紀元』(11月5日付)は、「米ジャーナリスト、中国のスパイ・スカウトの手法を分析」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「正式な接触の前、「スポッター(spotter)」と呼ばれる中国の調査員が、ターゲットについて調査・評価を行う。そして、その結果を情報機関の幹部に提出する。幹部らは、正式なスカウトに値するかを再評価する。スポッターの多くは、シンクタンク、大学、企業幹部であり、スカウトに直接関与していない」

     

    (2)「ターゲットになった米技術者をスパイ活動に駆り立てるため、さまざまな手段で動機づけをする。金品の供与、イデオロギーの宣伝、脅迫、またはスパイ生活のスリル感を味わせるなどなど。中国当局は、中国人をスカウトする場合、脅迫や愛国心の利用などの手段を多用している。欧米人に対しては、金品の提供が多い」

     

    (3)「中国の工作員はターゲットとなった欧米人に、直ちに祖国への反逆を求めることはない。まず気づかれないように良好な関係づくりに腐心する。米中央情報局(CIA)ブレナン前長官は、「(スパイになった米国人が)気づいた時点ですでに時遅し」とその手口は巧妙だと述べた」

     

    (3―1)「2001年中国に留学し、その後中国上海に移り住んだバージニア州出身の大学生、グレン・シュライバー(Glenn Shriver)氏は04年、諸外国の貿易白書の作成スタッフを募集する新聞広告を見て、応募した。広告を掲載した中国人が、シュライバー氏に120ドル(約13537円)の論文作成費を支給し、同時に2人の男性を紹介した。学生と2人の男性は親しくなるにつれ、男性らは学生に対して、米への帰国、米の国務省またはCIAでの就職を薦めた。中国の情報機関は、大学生に採用試験の参加費として、3万ドル(約338万円)を与えた。大学生は2回採用試験を受けたが、2回とも失敗した。2007年、CIAの秘密プロジェクトの採用試験にも応募した。中国情報機関はその際、学生に4万ドル(約451万円)を渡した。大学生はその後、逮捕された。米諜報当局は大学生をモデルにした啓発ビデオを作成した。海外に留学している米国人学生に対して、中国人工作員からの誘惑に警戒を高めるよう呼び掛けた」

     

    (4)「ターゲットとなる人に対して、中国情報部員は時にストレートにスパイ行為の強要を切り出す。20172月、CIA元幹部のケビン・マロリー(Kevin Mallory)氏がソーシャルメディアのリンクトインで、中国の上海社会科学院の職員と自称する人物からリクエストを受け取った。FBIは、中国国家安全省は、中国社会科学院と連携して活動していると指摘した。社会科学院の職員と名乗る中国の工作員は多く存在するという。マロリー氏はその後、電話を通じてこの上海社会科学院の職員と連絡を取り、174月に中国で2回面会した。そこで、マロリー氏は特別な電話機を受け取り、安全なメッセージ機能を使って中国の「顧客」に連絡する方法を教えられた。マロリー氏は中国の対米政策白書の作成に2回協力した」

     

    FBIは、中国国家安全省が中国社会科学院と連携して活動していると指摘した。社会科学院の職員と名乗る中国の工作員は多く存在するという。中国社会科学院といえば、哲学及び社会科学研究の最高学術機構であり、総合的な研究センターだ。研究所31、研究センター45、研究者4200人を擁し、中国政府のシンクタンクとして大きな影響力をもつ。また世界80ヵ国のシンクタンク、高等研究機関200余りと日常的に交流する。政府直属事業である。

     

    この中国社会科学院が、中国のスパイ活動の一端を担っているとは驚きである。学術研究に名を借りてスパイに誘い込むとは、恐るべき国家である。ここまでスパイする意図は何か。相手国を出し抜き、陥れる謀略を秘めているのだろう。この地球上に、このような国家が存在すること自体、恐怖である。後進国が、先進国へのし上がろうという謀略である。労せずして甘い汁を吸う策略だ。「中国製造2025」は、まさに謀略のシンボルであろう。

     

    中国が、ここまで謀略に長けているのは、中華帝国の戦略そのものを受け継いでいる証拠だ。こうした手練手管を駆使し、中国の版図を拡大してきたに違いない。

     

    (5)「スパイとその指令役(handler)の連絡方法は以前の直接会うことから、現在暗号化された通信機器の利用に変わった。FBIは今年1月、中国情報機関の指示を受けて米国内でスパイ行為を繰り返していたとして、CIA元職員の李振成(英語名、Jerry Chun Shing Lee)氏を逮捕・起訴した。起訴状によると、20104月李氏は中国の工作員2人に会った。工作員は李氏に金品の供与を約束し、その見返りとしてCIAに関する情報の提供を求め、密かに連絡するために、李氏に複数の電子メールアドレスを提供した」

     

     


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