勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    目先の利益のために自分の首を締める。それが、中国社会の一般的なパターンとされている。そう言えば、習近平氏も同じようなことをやっている。他国の技術窃取をやりながら、苦情が来れば腕力で対抗する。

     

    医薬品原料業界では、ニセ原料を堂々と輸出して相手国から抗議が来る。それでも、性懲りもなく続けている。日本では漢方薬の原料は、日本で生産している。これだと騙される心配がないからだ。訪日中国人旅行者は、日本のドラッグストアで漢方薬を「爆買い」している。理由は、「ニセ物がないから」。

     

    割安の医薬品として人気のジェネリックが、中国で生産されており問題を起こしているという。これは、日本の消費者も他人事ない。身近な問題である。薬局で、「中国製か」聞いて見るのも身のためかも知れない。

     

    『大紀元』(8月13日付)は、「中国産原薬の安全性、世界の医薬品サプライチェーンにも影響」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「医薬品原料の最大輸出国としての中国の製医薬品の安全性に関する懸念は強まっている。英『フィナンシャルタイムズ』(FT6日の報道によると、米国食品医薬品局(FDA)が中国製薬業者に発出した警告書(Warning Letter)は2014年の5通から、2017年の22通と大幅に増加した。警告書の発出は輸入禁止の前段階と見なされている」

     

    中国の製薬業者は、不正を働くことに罪の意識がないようだ。経済倫理もなければ、真の信仰の存在しない国家のなれの果て、という感じだ。この国家が、世界の覇権を握りたいと考えること自体、世界を冒涜していると思う。

     

    (2)「米『ブルームバーグ』によると、中国が世界に輸出した医薬品・健康補助食品は昨年、前年比3%増の60億ドル(約5兆7200億円)に達した。アメリカのジェネリック(後発医薬品)輸入の8割を中国、インドの製薬会社が占めている。だが、中国原薬製造企業(API )は薬用原薬、添加剤管理の監督管理の難しさ、不確定な素因が多く、製品検査データが『記録』として扱われないなどのGMP(適正製造基準)違反問題で、国内外の患者や医師、それに当局からの信頼を得るという点で課題を抱えている」

     

    人間の生命に関わる医薬品が、これほど倫理観のない国民が製造していること自体、大きな問題であろう。いくら警告を発しても改まらない。信仰心のなさが、こうした事態を招いている。

     

    (3)「欧州医薬品庁(EMA)、米国食品医薬品局(FDA)による中国原薬製造企業(API)への警告書発行の件数が増えている。2018年の統計によると、FDAが11通、EMAが6通の警告書を中国API業者に発出した。警告書は、主に中国API業者のデータインテグリティ(データの信頼性)の問題に関わっている。検知した重大な違反が発見される前に、不正の製薬製品は大量に輸出されたと指摘している。EMAのデータによると、毎年、欧州連合(EU)諸国の中国API業者に対して、20回から40回にかけて査察認定を行う。約10%が不合格と認定されている」

     

    このブログで、中国の不正ワクチンが輸出されている事実を取り上げた。これは特別のケースでなく、日常茶飯事に起こっている問題だ。こういう民族は、どうやれば悔い改めるようになるのか。一度、各国が輸入禁止措置をして、目を覚まさせるしかない。米中貿易戦争と原因は全く同じだ。


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    中国経済の発展を考えれば、習氏のような国粋主議者よりも経済改革派が必要である。現在の中国においても、毛沢東より鄧小平が必要だ。習近平氏の信じて止まない「中国モデル」は、中国を破滅させる危険なプロパガンダである。米国内には、米中が貿易戦争をしないで済む方法として、中国国内にいる経済改革派と提携せよという提案が出てきた。

     

    この提案は興味深い。現在の中国は、習近平氏を永久国家主席に就任させたいという政治勢力が多数を占めている。経済改革は少数派であろう。ここで、米国と妥協せよという勢力が現れたら、中国国内は騒然とするに違いない。中国経済がさらに悪化しなくては、話合い路線は無理と思われる。後学のために、「話合い提案」を聞いて見よう。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月14日付)は、「米中貿易戦争、双方が勝つ道」と題する寄稿を掲載した。筆者のウェイジャン・シャン氏は、香港のプライベートエクイティ投資会社PAGの会長兼最高経営責任者(CEO)である。

     

     

    (1)「米国と中国の貿易戦争はエスカレートしており、どちらの側にも後退の兆しは見えない。米国は中国からの輸入品500億ドル相当に25%の関税を課し、さらに2000億ドルを対象にする可能性がある。中国側では米国からの輸入品を罰する余地がなくなりつつある(米国の中国からの輸入額は、その逆の4倍だ)。そのため、米中貿易戦争がサービスなどの部門や米企業の多大な中国本土投資に飛び火しかねない。サービス部門では中国側の支出が米国側の4倍に上る」

     

    米中の貿易部門だけを比較すれば、中国の対米輸出は、米国の対中輸出の4倍もあると指摘している。米中が互いに関税引き上げ合戦をすれば、米国が有利で中国が不利である。だが、サービス収支で見ると、米中は逆転するので米国は不利な立場に立たされる。こうなると、「窮鼠猫を噛む」の喩え通りに、中国がサービス部門で米国へ逆襲する可能性が出てくる。ここまで泥沼化すると、米国には奥の手がある。中国企業を米銀との取引禁止にすることだ。これは米国の最終兵器である。「経済の核爆弾」に匹敵するから、中国企業は「即死」するだろう。ZTE(中興通訊)が干し上がったような事態だ。

     

    中国は、ここまで覚悟して米国と対抗するメリットはあるだろうか。中国に非がある以上、米国と妥協することが最善の道である。日本が米国との経済摩擦で妥協を迫られた事情とはワケが違う。中国には技術窃取という「罪」があるのだ。

     

    (2)「中国の指導部はこの紛争への対処で意見が分かれている。市場志向の改革派は、自らの政策により中国と貿易相手国との関係が恒久的に改善すると考えている。だが強硬派は共産党思想の根源を重んじている上、自らの既得権を守りたいため、経済自由化に抵抗している。彼らはドナルド・トランプ米大統領による貿易攻撃で、中国には大きな政府と強い国有企業が必要なことを示す証拠が増えたとみている。中国の改革派を支持することは西側の利益にかなう。しかし、これまでのところ貿易紛争は守旧派の手中にある。中国政府は戦う姿勢を示してきた。米国の圧力に屈したとみられることは政治的に許されないためだ」

     

    国家副主席の王岐山氏は、経済改革派である。王氏が副主席に主任した目的は、米国との関係調整にあるとされている。その王氏が表面に立たないのは、現在の中国が習氏を先頭に守旧派が支配している結果と見られている。習氏が、「中国モデル」とやらの脆弱性に気づくまでは、今の米中のにらみ合いで行くのか。この間に、中国経済はさらにバブルの傷を深くして致命傷になるのだろう。

     

    習氏は、生粋の「左翼=国粋主義者」である。マルクス・レーニン主義を信じ、秦の始皇帝の外交政策である「合従連衡」と「孫子の兵法」を金科玉条としている政治家とお見受けする。彼の政治師匠が、このタイプの人物であるからだ。そうであれば、第二の「毛沢東」と同様に妥協せず、とことん争うかも知れない。習氏が、中国経済を「中国モデル」と自画自賛している狭量さから判断すれば、楽観は禁物であろう。

     

    習氏が、国家主席に就任後の初訪米で、WSJの書面インタビューで、次のように答えている。「見えざる手(市場経済)よりも、見える手(計画経済)を重視する」と。彼は、最初から経済改革の意思がなかったと見るべきだ。

     


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    習近平氏は国家主席に就任後、4年間の政府活動報告で「市場経済重視」の姿勢を見せてきた。それが、今年の活動報告ではなぜか消えている。政府関係者は、書き忘れたと弁解したと言う。年一回の政府活動報告で、そのような事態は考えられない。明らかに意図的な行為である。

     

    中国政府は、市場機能について書き忘れたとすれば、これに対する認識が急速に低下してきたことを裏付けている。中国の現状が、市場機構によって解決できる段階を超えており、権力で強制的に整理しなければならない段階を意味するのだ。「モラトリアム」状況に立ち至っている証拠かも知れない。

     

    習近平氏は、他国に対して「中国モデル」なるものを喧伝している。これは計画経済と強権的政治システムを一体化したもののようだが、明らかに世界の普遍的な価値観への挑戦である。習氏は、そのことを認識しているはずだ。それ故、中国が軍事力を強化して防衛面でも保護を加えるという意味合いであろう。これが、中国モデルの神髄とすれば、世界の政治状況は極めて複雑な局面に立ち至る。中国モデルは、中国政治支配圏の確立を目指しているからだ。「一帯一路」は、この一環である。

     

    中国が、こうした夢を持っているとしても、現在の「中国モデル」は、国際競争力を持ちうるか。そういう検証をしなければならない。対GDP比での経常収支黒字は最近、急速な衰えを見せているからだ。最近のデータを示したい。

     

    暦年    対GDP比の経常収支黒字(括弧内は日本のデータ)

    2010年 3.92%(3.88%)

      11年 1.81%(2.11%)

      12年 2.515(0.96%)

      13年 1.54%(0.89%)

      14年 2.24%(0.76%)

      15年 2.71%(3.05%)

      16年 1.80%(3.80%)

      17年 1.37%(4.01%)

      18年 1.18%(3.76%):IMF予測

     

    この中国データでは、ここ3年間の対GDPの経常収支黒字比率が悪化している。今後の予測でもさらなる悪化が確実に見込まれている。改善見込みはゼロなのだ。その理由について、このブログで繰り返し指摘してきた。所得収支とサービス収支の改善が全く見込めないことだ。ここで、日本の値が2012~14年まで1を割り込んでいることについて説明しておきたい。これは、円相場の急騰で貿易収支が大幅に悪化した結果だ。その後は、完全に経常収支構造が変わり、為替相場と無縁に近い経常黒字構造ができあがっている。中国のような懸念事項はなくなっている。

     

    中国が、対GDP比で経常収支黒字低下に直面している背景は何か。習近平氏が、自慢して止まない「中国モデル」は、ポンコツ状況にある何よりの証明である。経常収支黒字比率の低下は、設備投資効率の低下(限界資本係数の上昇)という形で把握可能である。限界資本係数の意味は、経済成長1単位を生み出すのに必要な資本投入単位という意味だ。設備投資効率の高い経済では、少ない資本投入で高い経済成長が実現する。

     

    中国の場合、2009年~11年の限界資本係数は5.0である。極めて高いのだ。それが、2015年には6.8にも跳ね上がっている。つまり、投資効率が悪化している。これが、対GDPの経常収支黒字比率を悪化させている背景にあるはずだ。習氏が、こういう非効率経済を「中国モデル」と呼んで自慢しているとすれば、完全な「裸の王様」に祭り上げられている。

     

    祭り上げた張本人は、党内序列5位の中央政治局常務委の王滬寧(ワン・フーリン)氏であることは間違いない。習氏と王氏は、ともに経済を系統立てて学んだことがないはずだ。国粋主義の二人は、詳細な内容をチェックせずに「中国モデル」を自画自賛して舞い上がったのであろう。

     

    中国は、経済活動を政府がコントロール「社会主義市場経済」を標榜してきた。これは、国家資本主義と呼ばれているシステムである。これまで、中国の経済改革派は、この「国家資本主義」形態を市場経済に近い形に移行させるという「体制移行」を目標に掲げてきた。

     

    実は、習氏の「中国モデル」はこの体制移行を拒否する考え方である。習氏が国家主席に就任1期目は、「体制移行」を臭わせてきた。「市場機能の重視」はそれを意味していた。ところが、今年の政府活動報告でそれが消えたことは、「体制移行」を否定し国家資本主義どころか、社会主義への復帰を宣言したと受け取るべき事態になった。これを演出したのが、前出の王氏である。

     

     


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    8月14日に発表された経済データは、いずれも米中貿易戦争の影響が強く出た形になった。政府は、「徹底抗戦」と粋がって見たものの、国民の方が事態の深刻さを肌身で知っている。中国にとって米国は、最大の輸出相手国である。その米国へ「対等な関税報復」とか息巻いていること自体、合理的な経済計算を忘れた振る舞いに見える。

     

    中国経済のエンジンは、固定資産投資と個人消費である。この二大需要項目が、ともに不振である。固定資産投資の主軸は本来、設備投資であろう。対米輸出環境が悪化すれば、設備投資を控えるのは当然である。個人消費は、住宅ローンの増加が所得の伸び率を大幅に上回り、可処分所得を圧迫している。ローン返済が優先して、個人消費に回せるゆとりがなくなったのだ。

     

    以上の概観を頭に入れて、具体的なデータを見ていただきたい。

     

    『ロイター』(8月14日付)は、中国、固定資産投資が過去最低の伸び、一連の指標で景気減速鮮明に」と題する記事を掲載した。

     

       1─7月の固定資産投資は5.5%増で、ロイター・アイコンで記録が確認できる1996年初め以降で最低の伸び率となった。

     

       1─7月のインフラ投資の伸び率はで5.7%と、1─6月の7.3%から鈍化した。

     

       1─7月の民間の固定資産投資は8.8%増と、1―6月の8.4%増から加速した。 中国では民間の投資が全体の約6割を占めている。これは、後で取り上げるように不動産投資の増加が影響したと見られる。

     

    ここまでの項目を見ると、固定資産投資全体の動きが不調であることが分る。インフラ投資も落込んでいる。デレバレッジ(債務削減)に取り組んでいたことを窺わせている。

     

       1―7月の不動産投資は前年同期比10.2%増となった。1─6月は9.7%増加していた。

     

       1─7月の新築着工は14.4%増加。1─6月は11.8%増だった。

     

       1─7月の中国不動産デベロッパーの資金調達額は9兆3000億元(1兆3500億ドル)となり、前年同期から6.4%増加した。1─6月は4.6%増加していた。

     

       1─7月の土地購入(床面積ベース)は前年比11.3%増となった。伸び率は1─6月の7.2%を上回った。

     

    この住宅関連項目を見ると、違った動きである。なんと再び住宅バブルを目論むように活発である。インフラ投資が資金面から動けないので民間資金で住宅景気を煽る戦略が手に取るように分る。「住宅と心中」するような構えだ。気の毒にも、中国経済のテコになるのは、これしかない状態だ。敗戦前、日本の大本営は「本土決戦」という悲痛な作戦を練っていた。中国が、まさにこれと同じだ。中国には、住宅投資しか頼れる需要項目がなくなった。これで、米国と「徹底抗戦」だという。73年前の日本の姿を思い出し、同情するほかない。

     

       7月の小売売上高は8.8%増。日用品から電化製品などの高額商品に至るまで、購入を手控える動きが強まった。

     

    小売売上高は9%増すら割り込んだ。長いこと、10%台を維持していた。これを割り込むと、あっという間に8%台である。住宅ローン増加による消費切り詰めの結果である。今後の中国経済は、住宅投資「一本足打法」になり、それが個人消費を切り詰める。この悪循環の中で、中国経済は命運が尽きるのだろう。


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    中国政府の推進する「一帯一路」プロジェクトは、各国が「債務トリップ」で財政悪化を招き経済が深刻化している。この中国式収奪は、世界貿易面でも顕著である。中国国内は保護主義を貫き、外資系企業を差別しているからだ。

     

    その手段が補助金である。国内企業に生産面で補助金を与え生産コストの引下げを図る。この犠牲者が、サムスンのスマホとEV用電池である。国内企業に研究補助金もふんだんに与えており、まさに国家資本主義である。この手法は、WTO(世界貿易機関)のルールに外れた邪道である。こうした「中国モデル」の問題点が、WTO会議で議論され米中代表が激論を交わした。

     

    『SankeiBiz』(8月14日付)は、「経済発展の『中国モデル』、WTOで米中代表が激論」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米国は、『貿易破壊的な中国の経済モデル』と題する文書をWTOに提出した。会議ではデニス・シアWTO大使がそれについて説明し、『中国は2001年のWTO加盟以来、全面的な市場化に向けた政策などに取り組んでこなかった。実際には国家の役割が不断に増強されてきた』と批判した。同大使は、『中国は自由貿易や世界貿易システムの忠実な擁護者と繰り返し表現しているが、実際は保護主義や重商主義が世界で最も強力だ』と指摘。通商・投資面で国家が主導する中国の手法に伴う害悪は『もはや我慢できない』と訴え、WTOルールの順守を主張するだけでは不十分との認識を示した」

     

    ここで展開されている主張が、米国による「対中貿易戦争」の本質に関わる点である。こういう違法を繰り返す中国に根本的な反省を求めるというのだ。

     

    (2)「これに対し中国の張向晨(しん)WTO大使は、『世界には決まった市場経済の基準があるわけではない。WTOにはそのような基準を決める権利もない』と反論した。また、中国の産業政策は『ガイダンス』との位置付けで、国有企業はそれぞれ損益に責任を負う自立した市場主体と説明。一部産業における生産能力過剰の要因は国家でなく、金融危機後の世界需要縮小に伴うものとの認識を示した」

     

    中国の反論は苦し紛れである。すなわち、「世界には決まった市場経済の基準があるわけではない。WTOにはそのような基準を決める権利もない」と反発している。だが、WTO原則は、政府の介入を少なくし自由な市場機能を生かす貿易ルールである。中国は、これを承認したから、WTOに加入したはず。今さら、なんという詭弁を弄しているか、というのが実感だ。他国代表も同じ思いで聞いていただろう。

     

    中国の産業育成政策は、「ガイダンス」と言い訳している。ならば、なぜ巨額の補助金を支出するのか。実は、1980年代後半からの日米経済摩擦でも、米国が日本の産業政策の矛盾を突いてきた。道理は米国側にあるので、日本は飲まざるを得なかった。中国は、かつての日本と同じ立場に立たされている。勝ち目はない。あくまでも我を張るのならば、WTOを脱退することだ。その勇気はあるのか。なければ、改めるほかない。


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