勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    米国はイラン産原油を対象とする制裁を11月4日に発動する。中国は、イラン産原油の最大の輸入国だ。この中国が、米中貿易戦争の最中にあって、米国の要求するイラン産原油の輸入を続けるかどうか注目されていた。

     

    中国外交部の報道官はこれまで、米国の要求するイラン産原油の輸入禁止が不当であるとしてきた。その結果、中国は独自の道を歩み輸入継続を示唆してきた。だが、これとは裏腹に、米国の制裁である金融的な措置を恐れてイラン原油輸入の停止要求を飲むことになった。米国が世界覇権国であり、世界の金融ネットワークを支配している強味には抗えない現実を露呈している。中国の通信機メーカーZTE(中興通訊)が、米国から制裁を受けてあっさり「白旗」を上げたのは、つい3ヶ月前のことだ。

     

    『ロイター』(10月24日付)は、「中国のシノペックとCNPC、イラン産原油の11月積荷指示見送り」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国の石油精製大手の中国石油化工(シノペック)と中国石油天然ガス集団(CNPC)は、米国の対イラン追加制裁に違反することを懸念して、11月分のイラン産原油の積荷指示を出していない。事情に詳しい関係者2人が明らかにした。関係筋によると、中国の買い手は制裁の適用免除が受けられるか不透明なため、11月の積荷予約を見送っているという。『(適用免除の有無を巡る)リスクは原油輸入の減少よりもはるかに大きい』と関係筋は話した」

     

    イラン原油を輸入するリスクは、「原油輸入の減少よりもはるかに大きい」と指摘している点にあらわれている。中国は、世界の金融ネットワークを握る米国へ対抗できるわけがない。米中貿易戦争でも、この現実を早く受入れ、不公正貿易慣行を是正することが求められている。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月26日付け)は、「中国がイラン産原油の輸入縮小米国の制裁発動控え」と題する記事を掲載した。

     

    (2)「中国は、イラン産原油に対する米国の制裁発動を控え、イランからの原油輸入を削減した。これまでは米国の制裁に対抗する姿勢を示しており、方針を転換したことになる。関係筋が明らかにした。トランプ米政権は対イラン包囲網を形成して、同国を経済的に孤立させることを狙っており、イランの最大顧客である中国が輸入縮小に動いたことで、政権にとっては大きな追い風となりそうだ。関係筋によると、中国石油精製大手の中国石油天然ガス集団(CNPC)と中国石油化工(シノペック)の親会社である中国石油化工集団公司は、11月分のイラン産原油輸入の手配を行っていない。中国はこれまで、日量およそ60万バレルの原油をイランから輸入していた」

     

    中国は、イラン原油輸入の首位である。日量およそ60万バレルの原油を輸入してきた。それだけに、米国の圧力に屈するのは、輸入継続の場合に受ける相当のデメリットがあるからだ。

     

    (3)「背景には、外交面で危機的な状況に陥っている主要産油国のサウジアラビアが、今月に入り増産する意向を示していたことがある。CNPC傘下の昆侖銀行は 、米国の制裁順守期限である114日までに、イラン顧客に対し取引を停止すると伝達したもよう。昆侖銀行は、イラン産原油の輸入に関する支払いを手掛けてきた中国の主要銀行だ」

     

    中国石油精製大手の中国石油天然ガス集団(CNPC)は、傘下に昆侖銀行を抱えている。ここが、米国から制裁を受ければ今後、米銀と金融取引が不可能になる。銀行にとっては最大の恐怖である。中国の最大の弱点は、金融部門が脆弱であることだ。この中国が、世界覇権に挑戦するのは無謀の一言に尽きる。


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    外国人投資家が、一斉に「セル・コリア」で韓国市場から手を引いている。今月に入って4兆ウォン(約4000億円)以上の株を売った。これを受け、KOSPI(韓国総合株価指数)は2100を、KOSDAQは700を割った。きょう26日も、前場で2045(10時20分)と下げ続けている。

     

    こうなると、過去二度も経験した金融危機への前兆か、と身構えざるを得ない。

    連日急落している韓国株式市場が支柱まで失っている。年金基金は早めに手を引き、政府は対応策がないからだ。KOSPIは、昨日まで3日連続で年内最安値を更新した。この流れは、きょう(26日)へと引き継がれている。

     

    『韓国経済新聞』(10月26日付)は、「韓国株式市場、経済の基礎体力低下で小さな衝撃にも動揺」と題する記事を掲載した。


    (1)「韓国取引所によると、年金基金は今月1日から25日までKOSPI市場とKOSDAQ市場で1673億ウォン(約167億円)の売り越しとなった。この期間、外国人(4兆2733億ウォンの売り越し)と似た動きを見せたのだ。特に株価が本格的に下落し始めた先週からは売りのペースが加速した。KOSPI市場で15日から25日までの9営業日のうち年金基金が買い越しとなったのは19日だけだ」

     

    韓国の年金基金が、外国人投資家と同様に売り越しに転じている。過去にないパターンである。これには、やむを得ない理由がある。国民の年金原資を減らせば、国民の老後生活に影響を与える。ここは、情において忍びないが、「逃げろ」という投資判断である。

     

    (2)「年金基金は2008年の世界金融危機や2011年の欧州財政危機など株式市場の危機状況で株式市場を支えた。年金基金は当時、外国人と個人の売りの受け皿となって恐怖を緩和し、株式市場の基盤を固める安全弁の役割をした。2008年には9兆7763億ウォン、2011年には13兆4958億ウォンの買い越しとなった。しかし今回は崩れていく株式市場を守るどころか、誰よりも先に「救命ボート」に乗る格好だ」

     

    2008年と2011年の株価急落の際は、年金基金が「救命ボート」の役割を果たした。今回の急落場面では、「逃げる」ことが国民の老後生活を守るという判断だ。この矛楯の原因はどこにあるのか。文政権の経済政策が無策どころか、経済成長の足を引っ張っている結果だろう。プロの投資集団の年金運用家であれば、先行きの経済回復の望みが持てない以上、次善の策で「逃げる」ことが、最大の防御策と見ているのだろう。

     

    (3)「年金基金が売りに出ている一次的な理由は、国内株式市場よりも年金基金の足下についた火が大きな問題という点にある。国民年金を含む主要年金基金は現在、低調な収益率のため叩かれている。今年7月現在の国民年金の全体運用収益率は1%台にすぎない。特に国内株式運用収益率はマイナス6.11%に落ちた。収益率を防御するためには下落する国内株式市場からの脱出が急がれる状況だ」

    韓国経済の不調は、国内株式市場での運用パフォーマンスに影響する。今年7月現在の国民年金の全体運用収益率は1%台にすぎない。特に国内株式運用収益率はマイナス6.11%に落ちているという。これでは、「逃げる」が勝ちである。

     

    (4)「傾向的な理由もある。年金基金は変動性が高くて「狭い市場」の韓国株式市場の代わりに、不動産などの代替投資と海外投資の比率を拡大している。基金積立金が643兆ウォンにのぼる国内最大年金基金である国民年金は5月の「中期資産配分案」で、今年7月基準で19.1%の国内株式投資比率を来年から2023年まで15%前後に減らすと明らかにした」

    韓国年金基金は、韓国株式市場では運用規模が大きすぎて、「池の中の鯨」になっている。こうなったら、鯨は池を出て大海で泳ぐほかない。韓国株式市場は、自国の年金基金運用の場になれなくなっている。その原因は、経済への規制が厳しい政府の責任にある。文氏は、資本主義経済の本質に則った政策を行なうべきだ。


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    現代自の7~9月の決算が発表になった。売上高営業利益率は、何と1.18%。税金を払ったら後は、ほとんど利益が残らないという危機に直面している。現代自は、サムスン電子と並んで韓国経済の「二枚看板」とされているが、それも昔の話となった。

     

    サムスン電子と現代自動車の売上高は、韓国GDP(2017年)に対して約20%に匹敵する。誤解を避けるために若干の説明をすると。GDPは付加価値。売上高と概念が異なるので、両者を比較することはナンセンスだが、話の喩えでこういう話法がよく用いられるので用いたまでだ。

     

    日本の場合、上位10社の売上高合計はGDP比24.6%、米国は11.8%にとどまるという。つまり、韓国ではサムスンと現代自動車の2社の規模が、日本ではほぼ上位10社に匹敵していることを表わしている。韓国では、現代自がいかに大きなウエイトを占めているか。その現代自が経営不振に陥ることが、韓国経済に与える負の影響力の大きさが理解できる。

     

    『中央日報』(10月25日付)は、「現代車、7~9月期の営業利益が前年比76%急減、衝撃」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「現代自動車は今年7-9月期の実績を集計した結果、売上24兆4337億ウォン(約2兆4015億円)、営業利益2889億ウォン、当期純益3060億ウォンを記録したと25日、発表した。昨年同期に対して売上は1%小幅上昇したが、営業利益と当期純利益はそれぞれ76%、67.4%も減少した。2010年国際会計基準(IFRS)が導入されて以来、最低となる営業利益だ」

     

    売上高営業利益率は、1.18%に急落した。自動車メーカーの売上高営業利益率は、最低5%以上とされている。それが、1%台まで落込めば「ゾンビ企業」並みである。これでは、研究開発費も捻出できないという最悪状態に追い込まれた。

     

    (2)「米国で販売しているソナタなどのエアバッグ欠陥でリコール費用が発生し、新興国の通貨安まで重なって収益性が悪化したとみられる。現代車関係者は『7-9月期は米国など主要市場の需要鈍化、貿易葛藤の懸念など厳しい環境が続いた時期だった』とし、『このような中で対ドルのウォン相場が下落し、ブラジル・ロシアなど主要新興国の通貨価値が前年同期比10~20%ほど大幅に下落するなど、外部的要因によって収益性が下落した』と説明した」

    米国と中国の両市場で苦戦している。『韓国経済新聞』(10月18日付)は。次のようにその苦衷を伝えている。

     

    (3)「米国市場では昨年過剰生産と販売不振で在庫が一時4カ月分も貯まり後遺症が続いた。今年に入ってからも販売強要で新車と中古車価格がともに下落する悪循環が繰り返された。やむを得ず在庫を一掃するために過度なインセンティブを与え収益性が悪化したという説明だ」

    (4)「中国市場の状況も容易でない。昨年中国のTHAAD報復以降に続いた販売不振から抜け出せずにいる。現代自動車は今年に入り先月までに中国で56万1152台を売った。前年同期の48万9340台より14.7%増えたが、THAAD報復以前の2016年と比較すると3分の2水準にすぎない。在庫が貯まり中国工場で生産した車両の一部を東南アジアなどに輸出する苦肉の策まで検討している」

    米中の主要市場で苦境に立っているのは、品質自体で競争力を失いつつある証拠と見るべきだろう。競争力回復には、労組の協力が不可欠だが、戦闘的な労組ゆえ協調は望むべくもない。これからどこへ向かうのか。そのカギは、労組が握っている。


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    いつの時代でも、国を問わず若者は先を読むのに敏感である。中国の今年の就職状況では、それが見られるのだ。折から始った米中貿易戦争が、中国の若者の就職意識を微妙に変えていることが分る。起業や留学よりも国内で就職する。そういう選択が増えている。

     

    中国のGDP成長率は、4~6月が前年比6.7%であった。それが、7~9月期には同6.5%増に落込んでいる。米中貿易戦争の深刻化により、来年のGDP成長率は6.1~6.4%へと減速予想である。こういう経済情勢では、学生が早く就職しようという意識になるのは当然であろう。

     

    『人民網』(7月4日付)は、「大学生の企業熱留学熱が低下、何を映し出す?」と題する記事を掲載した。

     

    就職情報サイトの智聯招聘がこのほど発表した「2018年大学生就職力報告」によると、智聯は「2018年大学卒業生の就職力の市場調査研究」で大学を卒業した9168人を対象にアンケート調査を行い、モバイルインターネット時代の95後(1995年から1999年生まれ)の大学生の就職における新たな動向を明らかにしたという。新華網が伝えた。

     

    (1)「同報告によれば、今年の大学生の就職状況には多くの新しい動向がみられる。例年と比較して特に目立つのは、最初に就職を選ぶ割合が上昇を続けたこと、その一方で起業熱や留学熱が下がり続けたことだ。たとえば調査研究の結果によると、18年大学生卒業後の進路への意向では引き続き就職が中心で79.89%を占め、前年より6.39ポイント上昇した。就職を遅らせる選択をした人は6.99%、国内で大学院に進学するとした人は4.98%、起業を選択した人は4.78%、海外へ留学するとした人は2.63%だった」

     

    大学卒業後、先ず就職する人の比率が約80%となり、6.4ポイントの増加である。これは、景況悪化を反映したものであろう。起業も景況が明るくなければ成功はおぼつかない。留学も経費がかかるから敬遠して、先ず就職という選択に走らせているのだろう。

     

    (2)「これと同時に、大学生の就職の新動向には次のような目立った特徴があった。一例を挙げると、大学生の就職に対する考え方が変わりつつあり、「自己実現」が「お金を稼ぐこと」よりも重要だとする人が増え、ここから大学生が仕事の経験を積むことをより重視していることがわかる。また従来型製造業の求人ニーズが大幅に増加し、民間企業が引き続き大量の雇用を生み出す絶対的主力であることなどから、大学生の就職の方向性やチャンネルが多様化していることがわかる」

     

    大学生の就職に対する考え方が変わりつつあり、「自己実現」が「お金を稼ぐこと」よりも重要だとする人が増えているのは重要な変化である。これは、中国社会が「マズローの欲求5段階説」の後追いをしていることを示唆している。人間は所得水準が上がると、経済的な欲求よりも「自己実現」を目指すようになる。中国の若者が、この過程に、入ってきたことは、中国共産党にとって脅威であろう。人権無視・専制政治体制への疑念がいずれは高まるからだ。

     

    (3)「大学生の起業熱や留学熱が低下を続けていることから、現在の大学生の就職が理性的になり、周りと比べて影響されたり、流行を追い求めたりしなくなったことがわかる。たとえばこれまでは多くの大学生が起業を選択していたが、実際に卒業して実社会に足を踏み入れると、あらゆる方面で実践経験が不足していて、やみくもに起業しては、大きな困難やリスクにぶつかっていた。こうしたわけで、多くの大学生がひとまず就職するという選択をするようになった」

     

    景況感の悪化が、若者の卒業後の選択を慎重にさせている。先ず職に就いて生活の糧を得る。起業や留学というリスクを伴うことよりも、就職という堅実な選択をしているのだろう。これまで、中国の大学生の起業熱は極めて高いと喧伝されてきた。沈静化している裏に、中国経済の構造変化が起っていることを表わしている。


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    米中貿易戦争は、確実に中国製造業に影響を及ぼしている。日本の供給する工作機械や産業ロボット需要が、低下していることに現れている。工作機械はすでに需要が落込んだ。産業ロボットも7~9月から輸出が約2割も落込んでいる。自動車向けはほぼ変わらないが、電子部品組立は貿易戦争の影響を受けている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(10月26日付)は、「産業ロボ出荷5%減、9四半期ぶり、貿易摩擦の影響で中国向け2割減 」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日本ロボット工業会(東京・港)が25日発表した201879月の産業用ロボット出荷額(会員ベース)は、総出荷額が前年同期比5.0%減の1861億円となった。減少は1646月期以来、9四半期ぶり。総出荷額のうち国内向けの出荷額は0.7%減の480億円とほぼ横ばいだった。一方、輸出額は6.5%減の1381億円。輸出額の減少は8四半期ぶりとなる」

     

    7~9月期の産業用ロボット出荷額は、前年比5.0%の減少となった。輸出額が6.5%と減少したことが大きく響いた。輸出減の要因は、半分近くを占める中国向けが不振であった結果である。

     

    (2)「輸出減の大きな要因は、半分近くを占める中国向けの不振で、18.5%減の555億円だった。産業用ロボットの用途は大きく自動車向けと電子機器向けに分かれる。中国向けは自動車の溶接工程に使われるロボットは横ばいだったものの、電子部品の組み立て用に使われるロボットが大きく落ち込んだ。背景には米中間の貿易摩擦がある。日本ロボット工業会によると、中国の自動車部品メーカーなどの間で貿易摩擦の影響で、投資の決定が先送りになった例があったという。「中国企業も中国で投資していいのか、海外に投資すべきか決めかねている」(同工業会)」

     

    中国向け輸出は、18.5%減に見舞われた。中でも、電子部品の組み立て用に使われるロボットが大きく落ち込んだ。背景には米中貿易摩擦がある。この問題は、解決までに長期間を要するという見方も多い。中国企業ですら、「脱中国」を謀る動きを見せている。米国は、長期にわたる関税率引上げで、製造業の「脱中国」を促進させようという狙いだ。


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