勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    文在寅政権の登場は、韓国の歴史でターニングポイントであったと記憶される事態が、またひとつ登場した。年金財政の破綻が、合計特殊出生率の急低下によって現実問題になる気配である。

     

    文政権の登場は、経済的な不安の種をばらまいた。最低賃金の大幅引上げが、庶民の働き口を倒産させているからだ。自営業の倒産は昨年、100万件を超えた。国民生活の基盤を破壊している。進歩派という看板のいかがわしさが証明されている。

     

    急激な出生率低下に直撃されるのが、年金財政の破綻だ。最近発表された将来人口特別推計によって、「このままでは社会保険料(国民年金・健康保険料)と税金が急上昇し、若者が韓国に背を向け脱出する」と指摘される事態を迎えている。

     


    『朝鮮日報』(4月6日付け)は、「重い年金負担、韓国に背を向ける若者たち」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の洪準基(ホン・ジュンギ)社会政策部記者である。

     

    (1)「韓国は、少数の高級人材が海外の企業や研究所に流れる『頭脳流出』のレベルにとどまらず、職場でごく普通の若者までもが大挙して海外に流出しかねないとの見方がでてきた。『若者の大脱出』に対する警告は、昨年8月の国民年金制度見直し案に対する公聴会でも聞かれた。国民年金基金が当初予測よりも3年早い2057年に枯渇し、国民年金保険料率が20~30%まで上昇するとの見通しが示されると、若者から不安、不満、懸念の声が相次いだ」

     

    若者の不満の声は、次のようなものである。

    「自分が老後に国民年金を受け取れるかどうかもはっきりしないのに、保険料を支払わなければならないのか」

    「今使うカネもないのだから、国民年金を脱退させてほしい」

    まだ少数意見ではあるが、現在の10~20代が40~50代になるころには、社会保険料、税金の重い負担のせいでそうした声が巨大なうねりとなるという暗い予測が出ている。

     

    文政権の不手際は、あらゆる所に噴出している。政権の目的が、進歩派政権を継続させることにあるので、国民に負担になる不人気な政策をすべて先送りするという、異常な振る舞いを見せている。若者は、将来の年金が貰えない事態が予見されれば、「国を脱出」するほかないのだ。

     

    (2)「韓国政府は昨年、年金支給は据え置き、保険料だけを引き上げる方策を国民年金制度見直し案から除外した。一部が不満を述べたことで、支持率低下を恐れたとみられる。民主平和党の千正培(チョン・ジョンベ)国会議員は今年1月、状況を見かねて、国民年金制度見直し案の作成時には財政安定化策を盛り込むことを義務付ける国民年金法改正案を発議した。年金改革を後回しにして、爆弾を次の世代に押し付ければ、将来の世代が持ちこたえられなくなり、国民年金に対する国民の不信がますます増幅しかねないからだ。今からでも政府は『子や孫の世代と最低限の苦痛分担をしよう』と国民を説得すべきだ」

     

    年金制度改革では、支給額と保険料はワンセットである。文政権は、この原則を破っている。もはや人気取りが許されないほど、人口構造が急速な高齢化を迎える。

     

    (3)「韓国は少子高齢化で2056年には人口の年齢中央値が60歳を超える。簡単に言えば、国民の半数が還暦以上という国になるのだ。また、2065年には生産年齢人口100人が子どもと高齢者の合計117.8人を扶養することになる。この数値が100人を超えるのはOECD(経済協力開発機構)加盟国では韓国が唯一だ。人間で言えば、体重よりも重い荷物を背負っていることになる」

     

    日本が世界一の「超高齢者大国」とされるが、今世紀後半には韓国がそのトップにたつ。人口構造で、日本より約20年遅れてきた韓国が、文政権のデタラメな最低賃金の大幅引上げがきっかけで、日本以上の「超超高齢者大国」になる。この一点だけをとっても、文政権の罪は深いのだ。


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    文在寅大統領の支持率が41%まで下がってきた。大統領選の得票率と同レベルに落ちたことから、浮動層がすべて離脱した計算である。この先、支持率はどう動くのか。「支持率41%」は統計上、誤差の範囲外というから、文陣営にとっては深刻な支持者離れになってきた。

     

    文氏が、支持率を上げる「一発逆転」の妙手は、南北交流事業の推進しかない。だが、米朝首脳会談の決裂で当然、南北交流は頓挫している。文氏にとっては起死回生策がないのだ。ここで諦める文氏ではない。なお米国へ南北問題を持ちかけて、拒絶状態の追い込まれているという。

     

    米国の外交実務者レベルでは、文氏が「ストーカー」扱いされているという。断っても、断っても付いてくるストーカーには、「ノー」と一言だけ発して拒否するのが最大の防御策という。米国では、この手を使って韓国の提案する南北交流事業を拒否しているというのだ。

     

    『朝鮮日報』(4月7日付け)は、「ストーカー扱いされる文大統領の平和プロセス」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の金昌均(キム・チャンギュン)論説主幹である。

     

    (1)「韓米間のかみ合わない関係は、(米朝)会談後さらに増幅されている雰囲気だ。文大統領は会談の翌日、『金剛山観光と開城工団を再開する問題について米国と協議する』と言ったものの、米国務省の高位関係者は『関連する制裁を緩和する用意はあるのか』という質問に対し、ためらうことなく『ノー』と即答している。米国務省の関係者も『現時点では検討対象ではない』『韓米間で緊密に協議していく』などのように交渉の余地を残したとすれば、韓国政府の執拗な要求が寄せられるようになる、と考えたはずだ。そこで、短く拒否する形で『可能性は全くない。百回、千回、聞かれても答えは変わらないため、同じ言葉を繰り返さないでほしい』といった意向を伝達したわけだ」

     

    文氏が、ここまで南北交流事業にこだわっているのは、北朝鮮の金正恩氏と口約束しているのだろう。文氏の両親は、もともと北朝鮮出身である。朝鮮戦争の際、韓国へ避難してきた身だ。それだけに、両親から北朝鮮の話を聞かされ親近感があるに違いない。その「郷土意識」が、執拗な南北交流事業への夢となっているのであろう。

     

    ただ、米国は北に核放棄させるには経済制裁の継続しかないと決断している。文氏は、この外交路線に逆らっても南北交流事業にこだわり、呆れかえられているのだ。

     

    (2)「文大統領の金剛山観光、開城工団の再開提案について、米国専門家は『音痴としか言いようのない発言』と厳しい口調で言及している。音痴とは、他の人の奏でる音階を聞き分ける能力が足りないため、和音になっていない人のことをいう。ハノイ会談が決裂して以降、ワシントンでは『金正恩委員長の弱点は制裁』であることが確認された。北朝鮮に核兵器を諦めさせるためには、制裁の手を強めなければならないというコンセンサスが成立したわけだが、文大統領の理解が鈍いため、ショック療法を使用したのだ」

     

    文氏は、「常人」と異なっている。今さら70年以上も過去の問題を引っ張り出し、「反日」を言い募っている。現在、日韓で抱えている問題への関心が薄く、ひたすら過去にこだわるのは「偏屈者」としか言いようがないのだ。この屈折した心理状態が、南北交流事業へ向かわせているのであろう。

     


    (3)「文大統領が、『朝鮮半島の平和に向けたプロセス』の進み具合を速めたい思いは理解できる。所得主導型の成長、脱原発、4大河川(漢江、洛東江、錦江、栄山江)のせきの撤去といったその他の政策が全て出遅れている中、対北政策という成果一つで来年の総選挙を闘っていかなければならないため、気が気でないのだろう。しかし、このままではいけないといった焦りから、相手が到底受け入れることのできない提案をしきりに突き付けることは、逆効果なだけだ。大韓民国の大統領の要請が相手国の実務者に『ストーカーまがいの行為』として認識されているとすれば、国の威信や国益、そして5100万人に上る国民のプライドにも傷が付くという点を、ぜひとも忘れないでいただきたい」

     

    文氏の見せる、対北外交のストーカーまがいの行動の裏には、切羽詰まった政策的な行き詰まり解決の「切り札」という位置づけかもしれない。だが、米国は受け入れる意思がない以上、文氏の「迷惑行為」である。こういう大統領を選んだのは韓国国民だ。次の大統領には、口先の人でなくまともな人を選ぶべきである。


    ムシトリナデシコ
       


    北朝鮮は、ベトナム・ハノイの米朝会談決裂後に、強硬策に戻るのか関心が集まっている。だが、米朝会談の最後にトランプ氏は、「準備が足りない」という一言を残してきたという。再会談の含みを持たせているだけに、北朝鮮が冷静になれば会談の席に戻る可能性がある。

     

    4月6日、金正恩氏は日本海側に面した都市、元山の観光施設建設現場を視察した。その際、今年10月竣工予定を来年3月に延ばすと発言している。食糧不足という緊急事態が加わり、資金繰りが苦しく繰り延べせざるをえないのだ。ミサイル基地も発射準備をしていないようで、せっかく掴んだ米朝首脳会談のチャンスを捨てる行動には出られない。それだけ、経済実態の窮迫化が起っているのだろう。

     

    もう一つ、金正恩氏を脅かす存在が明らかになってきた、暗殺された異母兄の長男が米国に保護されている公算が強まったことだ。この長男を守る集団が、「自由朝鮮」を名乗り、正恩政権打倒を唱え始めた。スペインの北朝鮮大使館へ侵入、パソコンなど機密情報を盗み出した事件の当事者であると発表している。FBI(米連邦捜査局)と連携しているとも発言するなど、北朝鮮を取り巻く政治状況が変ってきたことだ。

     

    こうなると、金正恩氏は米国と決別できない新たな状況が出てきたことになる。経済危機と異母兄の長男の存在という二つの要因が微妙に絡みあい、正恩氏に圧力を加える可能性が取り沙汰され始めている。

     



    『中央日報』(4月6日付け)は、「『最悪の危機』が迫るという平壌は今」と題する記事を掲載した。

     

    4月の平壌(ピョンヤン)の雰囲気が尋常でない。「朝鮮民主主義人民共和国」を創業した首領・金日成(キム・イルソン)主席(1994年死去)の誕生日、4・15行事で雰囲気が盛り上がるべき北朝鮮の内部で緊張感が漂っているというのが、対北朝鮮情報関係者の伝言だ。何よりも2月末のハノイ米朝首脳会談決裂の余震が続いている。金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(35)の核・ミサイル挑発が招いた対北朝鮮制裁は北朝鮮経済を強く締めつけている。食料不足で春窮期を心配する声が海外の北朝鮮大使館にまで広まっている。さらに金正恩体制の崩壊を標ぼうする組織「自由朝鮮」までが登場した。

     

    (1)「危機状況に向かう食料不足問題は北朝鮮内部の文書でも確認される。最近、インドネシア駐在のアン・グァンイル北朝鮮大使(ASEAN大使兼任)が東南アジア地域の北朝鮮公館などに伝えた文書によると、昨年の北朝鮮の食糧収穫は495万1000トンだった。これは2017年に比べて50万3000トン少ない。アン大使はその原因に高温と干ばつ・洪水、対北朝鮮制裁を挙げた。また『急いで他国から食料輸入措置を取るなどの努力をしているが、今年の不足量は148万6000トンにのぼる』と伝えた。アン大使は、『現食糧状況の危険性を正確に理解し、時期性保障のために最善を尽くすべき』と呼びかけ、『4月中に実現しなければいけない』と強調した」

    4月中に食糧不足を解決できなければ、田植えなどの農作業が始められないということだろう。事態は深刻だ。ミサイル発射で威嚇する経済的余裕がなくなった。

     


    (2)「ハノイ米朝首脳会談の5日前の2月22日に発生した在スペイン北朝鮮大使館襲撃事件の背後として知られる団体「自由朝鮮」が反金正恩の旗幟を掲げて本格的な活動を予告したのだ。北朝鮮の立場で気にかかるのは、同団体に米捜査・情報当局が関与している情況が表れている点だ。特に2017年2月にマレーシアのクアラルンプール空港で北朝鮮当局に毒劇物(VX)で殺害された金正男(キム・ジョンナム)氏の息子、金漢率(キム・ハンソル)氏(24)の身辺を保護してきた『千里馬民防衛』が改名した組織という点で注目される。自由朝鮮側は金正恩政権に対して政治犯収容所の解体、脱北者の送還中断、改革・開放などの要求事項を出し、『大変なことを準備している』と明らかにした状態だ」

     

    邪魔な存在だった異母兄・金正男氏を除去するのに成功したが、金漢率氏が反体制団体のアイコンとなっているのは金正恩氏にとって厄介な状況だ。金正日総書記の初孫である金正男氏の息子の金漢率氏がいるかぎり、金正恩委員長も安心することができない。朝鮮では、血統の重要性が重んじられる社会である。金漢率氏の裏に、米国が控えているとなれば、二重の衝撃に違いない。
     

    (3)「対外生存戦略と内部経済が乱れた内憂外患に反体制勢力までが急浮上し、金正恩体制はまさに三角波を迎える状況になった。金委員長は『新年の辞』で米国が約束を守らず対北朝鮮制裁と圧力に進めば『新しい道を模索するしかない』と述べた」

     

    正恩氏は、新しい道へ進めず、今までの道に戻らざるを得まい。最大の経済危機に面していると言えよう。


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    中国は、世界の至る所で警戒される「嫌われ者国家」になっている。将来の米中競争時代になって勝敗を分けるのは、日本が米中どちらに味方するかで決まる。中国は、そう信じ始めた節が見られる。

     

    もちろん、日本は日米同盟によって米国の味方として、自由と民主主義の価値観を守る一翼を担う。このくらいのことは分りそうだが、今の中国はそういうことも分らないほど孤立感に悩まされ始めている。身から出たサビとは言え、理性の足りない振る舞いが、現在の苦境を招いたのだ。

     

    『レコードチャイナ』(4月5日付け)は、「『令和』は日本経済の新しい時代を開くことができるか」と題する記事を掲載した。

     

    中国メディア『新華網』(4月3日付け)は、「平成に別れ、令和は日本経済の新しい時代を開くことができるか」とする記事を掲載した。


    (1)「記事はまず、平成の約30年間の日本経済について『苦難に満ち、懸命にもがいた30年間だった』とし、『平成に別れを告げ、令和を迎えるに当たり、日本の経済界は将来への期待に満ちあふれている』とした。そして、『平成元年の日本人は夢のようなバブルに魅了され、世界各地で心ゆくまで観光を楽しみ、高級ブランド店を駆け巡っていた。日本の産業界もうぬぼれ、世界から学ぶものはもはや何もないと思っていた。ところが思いもよらないことに、平成元年の夢はわずか1年にすぎなかった』とし、『失われた20年』と呼ばれる経済の停滞が続いたこと、『低欲望社会』に突入したことなどを紹介した」

    ここでの指摘は、すべてその通りである。明治期の軍事的勃興期の後遺症は、大正期と昭和20年までかかって精算した。昭和21年以後の経済勃興期の後遺症は、平成期をかけて精算した。その意味では、令和こそ、辛酸をなめた日本がようやく社会的に安定した時期を迎えられる段階になったことを意味する

     

    実は、平成期に経験した日本の経済的苦難が、これからの中国に襲いかかるという覚悟はあるだろうか。文面から受ける印象では、中国は日本を他人事のように見ているがそうではない。現在の中国が、まさに「産業界もうぬぼれ、世界から学ぶものはもはや何もないと思っている」のだ。米国覇権へ挑戦するなどと「身の程知らず」のことを言い出しているのはその証拠である。

     

    すでに、中国のバブル経済は破綻している。政治権力で、住宅価格の暴落を防いでいるだけだ。事実上は、破綻も同然の事態に突入している。

     

    中国経済を救うには、国防費膨張という無駄を止めることである。その費用は、過剰債務の処理に向けるべきだが、それを怠っている。日本の防衛費は、GDPの1%である。中国は裏防衛費を含めればGDPの4%に達している。こういう軍拡を続けながら、不良債権の処理をできるはずがない。中国は、世界覇権を握って何を始めるのか。世界中をマルクス・レーニン主義に染め上げるのか。すでに破綻した「教義」で世界を統治できると考えているところが、中国の限界である。

     


    (2)「そして、『初春令月、気淑風和』に由来する新元号の『令和』について、『美しい将来に対する日本人の期待が寄せられている』とし、『日本経済は依然としてデフレや高齢化、巨額の財政赤字などの深刻な問題に直面しているが、日本の産業の多くは長期的な調整を経て躍動を試そうとしている』『日本はIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ロボット、自動運転、環境事業、医療介護などの分野で強大な競争力を示している』『日本の経済界は、新元号の始まりに合わせて日本経済の新しい時代を開くことを渇望している』『令和時代には、構造的問題の対策を探し当て、産業構造の調整を完了し、最低賃金と平均賃金が上がり、社会がより平等になることが広く期待されている。より速い経済の成長を追求するのではなく、よりバランスのとれた社会を追求すること。これが日本の国民と政策立案者の令和時代における普遍的なビジョンだと言える』などと論じた」

     

    このパラグラフの主張にも全面的に賛成である。中国もこういう状態になれるように、軍拡を止めることだ。中国には古来、「大同主義」という理想論がある。儒教の最高の精神は、自分のために生きるのでなく、社会全体の貧しい恵まれない人々を幸せにすることにあるのだ。この最高倫理から見れば、現在の中国政府のやっていることは著しく逸脱している。自我(覇権論)を捨てて、世界のために生きる。そういう思想にはなれないのだろうか。「大同主義」は、中国のお飾り理論で終わるに違いない。


    テイカカズラ
       

    米中通商協議の米国代表は、USTR(米通商代表部)代表のライトハイザー氏である。弁護士出身だけに、水も漏らさぬ緻密な戦略で中国を攻め立てている。ライトハイザー代表の動向が、「米中協議進展の鍵を握る」とさえ言われているほど。今度こそ、中国が米国相手に「食い逃げ」できないように、がんじがらめにされている。

     

    『ブルームバーグ』(4月6日付け)は、「対米通商合意案、中国の履行期限2025年、輸入拡大公約に拘束力」と題する記事を掲載した。

     

    米中両政府の通商協議が大詰めを迎えている。今後数日間で重要問題の合意に達し、トランプ大統領と中国の習近平国家主席の調印式につなげたい考えだ。米国と中国がまとめつつある通商合意案は、『中国による米国産1次産品の輸入拡大』や『米企業による中国での100%出資会社設立の容認』など、中国の公約の履行期限を2025年に設定していることが分かった。関係者が明らかにした。

     


    (1)「通商合意案で中国は、25年までに大豆やエネルギーを含む米国の1次産品の輸入を拡大するほか、中国に進出した米企業に100%出資会社設立を認めると公約する。この公約は拘束力があり、もし履行しなければ米国は報復措置を講じる。また、中国の他の公約の期限は29年で、拘束力を持たないため履行しなくても米国の報復措置を招かないという。JPモルガン・アセット・マネジメントでアジア太平洋担当チーフ市場ストラテジストを務める許長泰氏(香港在勤)は、『双方とも合意を望んでいるが、同時に自国民にとって確実に正しい取引にしたいと思っている』と指摘した」

     

    米中で拘束力のある公約は、次の2つという。もし履行しなければ米国は報復措置を講じる。

      25年までに大豆やエネルギーを含む米国の1次産品の輸入を拡大する

      中国に進出した米企業に100%出資会社設立を認める

     

    (2)「ただ、トランプ大統領の経済顧問トップであるクドロー国家経済会議(NEC)委員長は3日、米中の閣僚級通商協議について『順調に前進しているが、まだ合意には達していない』と述べており、なお予断を許さない。20年の米大統領選に向けた選挙キャンペーンが始まる中、交渉に残された時間は限られている。再選をにらむトランプ氏が対中交渉で『政治的成果』を打ち出すことよりも、合意が中長期的な両国の経済関係をどの程度作り替えるものになるかについて、疑問が生じている。一部で進展はあるものの、中国による技術の強制移転といった見解の隔たりが大きい問題の解決に時間がかかっている

     

    中国による技術の強制移転問題では、見解の隔たりが大きく解決に時間がかかっている。

     


    (3)「大統領選を控え、貿易不均衡の是正への取り組みの一環としてホワイトハウスがとりわけ重視しているのが、20年4~6月期にかけての米産品の輸入拡大だ。関係者によると、そうした理由から米国は中国に対し、1次産品の購入拡大の大部分を合意案の最初の2年に前倒しで実施するよう迫っているという」

     

    米国は、1次産品の輸入拡大について最初の2年間に前倒しで実施するように迫っている。

     

    (4)「最後に残る問題の一つは、米中両国が過去9カ月に相手国の産品に課してきた3600億ドル(約40兆1330億円)相当の追加関税の行方だ。トランプ大統領は、中国側が公約を果たすには『かなりの期間』を要するとして、少なくとも一部関税の継続を示唆している。米中当局者は、両国首脳がいつ調印式を行えるかも議論している。関係者によると、当初、中国の通商交渉チームからは選択肢の一つとして、習国家主席によるワシントンへの公式訪問が提案されたが、その後中国側が米国での会談に難色を示し、中立的な第三国での開催を希望しているという」

     

    米国がかけている中国への関税は、一部を継続する方針である。米国への約束を実行させる担保にするため。両国の調印式は、中国が第三国を希望している。国民の手前を取り繕う必要があるからだ。米国は、自国を主張している。最後まで残っている問題は、強制的な技術移転の阻止である。これは、今回の米中通商協議の目玉であるだけに、米国は安易な対応はできまい。


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