勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。


    文大統領は、高まる失業率によってネットから厳しい批判が出ている。「Jノミクス」(文氏の経済政策)を設計したとされる人物からも批判されるなど、総スカンだ。

     

    経済政策の失敗の裏には、韓国特有の「身内に奉仕する」という氏族制の名残がある。この点については、きょう発行した私の「メルマガ5号」で詳細に取り上げた。ネットからいくら批判されようとわれ関せず、である。労働組合は、文政権の支持基盤である。擁護する姿勢に変わりはないのだ。

     

    『レコードチャイナ』(11月15日付)は、「韓国経済の根幹が揺らいでいる、Jノミクス設計者からも苦言、ネットからは政権批判相次ぐ」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「『中央日報』(11月11日付)によると、文在寅(ムン・ジェイン)政権の経済政策「Jノミクス」の枠を築いた国民経済諮問会議の金広斗(キム・グァンドゥ)副議長が「韓国経済の根幹が揺らいでいる」との見解を示した。記事によると、金副議長は同日に自身のフェイスブックを更新。統計庁が発表した「19月製造業平均工場稼働率」をシェアし、韓国経済は危機か否かと政界で論議していることについて「のんきな言葉遊びだ」と苦言を呈したという」

     

    無謀な最低賃金の大幅引き上げを行い、韓国経済は坂を転げ落ちるような状況になっている。すでに10月から景気は不況局面入りした。それにも関わらず、景気をさらに冷やす最賃引上を来年も行なう予定だ。経済実勢に無関心で、ただ抽象的な議論だけを好む「書生」大統領に韓国国民は振り回されている。

     

    (2)「この記事に、韓国のネットユーザーからは、次のようなコメントが寄せられた。

        海外では現政権の経済政策は0点と評価されている

        脱原発、不動産政策などの立案に相次ぎ失敗した人物を青瓦台(大統領府)政策室長にしたが、変化など期待できない。愚かな大統領に、駄目な参謀

        2000年、2009年当時は若者たちが一生懸命仕事を探し、きつい仕事もいとわず製造業に飛び込んでいった。でも今は違う

        本当に深刻な状況のようで心配だ。中国や再浮上する日本に押されているというのに、政府は雲をつかむような話ばかりしている

        大統領は経済に興味がないんだよ。金正恩(キム・ジョンウン、朝鮮労働党委員長)のことばかり考えている

        建国以来最も富強な国になったというのに、こんな愚かな大統領を選び、亡国の道を踏み出しているだなんて」

     

    韓国の大学生は、日本で就職口を探す時代になった。子どもの頃から「反日教育」を受けてきた学生が、韓国政府から「日本で就職口を探せ」と指示される皮肉な状況に変わっている。自国の学生に満足な就職口も提供できない。そういう韓国政府が、北朝鮮支援には夢中である。不思議な構図である。



    この季節は、日の入りが早く「釣瓶落とし」と称される。中国経済は、GDPの4割を占める個人消費が不調で、まさに「釣瓶落とし」だ。中国政府は、「個人消費」統計を発表せず、政府消費と個人消費を合算して「最終消費」という紛らわしい言葉を使っている。これが、何と6割だと胸を張る。実際の個人消費は4割でゲタを履かせているのだが、気の毒なほど見栄っ張りの国である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月14日付)は、「中国で消費落ち込み、10月の実質伸び過去最低」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国で個人消費の落ち込みが鮮明になってきた。同国の国家統計局が14日発表した10月の小売売上高(社会消費品小売総額)は、物価の変動を除いた実質の伸びが前年同月比5.6%と過去最低の水準に落ち込んだ。自動車の販売が振るわなかった。米国との貿易戦争で景気の先行きに不透明感が強まるなか、消費者の節約志向が広がっている」

     

    10月の小売売上高(社会消費品小売総額)は、実質の伸びが前年同月比5.6%と過去最低の水準になった。株価の低下は、中国当局がいくら「情報隠蔽」を図っても容易に知れ渡る。国民が不安心理に駆られるのもやむを得ない。株価下落に加えて、住宅価格の顕著な下落があれば、中国経済は一瞬のうちに機能停止に陥るであろう。その「死の淵」まで来ているのだ。その認識が、どこまで広がっているだろうか。中国人民銀行が最も恐れている事態が接近している。

     

    (2)「中国のエコノミストが高額消費を占うとして注目するマカオのカジノ収入も失速。前年同月からの伸び率は8月に17%だったが、910月はそれぞれ2%台。反腐敗運動で不振だった2016年夏以来の低水準だ。10月の小売売上高の伸びは名目では前年同月比8.6%となり、9月より0.6ポイント減速した。統計の信頼度が高い、一定規模以上の小売業の売上高の伸びも同3.7%と過去最低。物価上昇を考えると実質の伸びはゼロ近辺とみられる」

     

    マカオのカジノ収入も失速。前年同月からの伸び率は8月に17%だったが、910月はそれぞれ2%と指摘している。カジノ収入が9月以降は激減している。これは、いよいよ「来るべきもの来た」という印象を深める緊急事態が起こり始めた前兆かもしれない。

     

    私は、日本のバブル経済崩壊に関わる一部始終(発生から崩壊、その後の後遺症まで)を見つめてきた一人として、中国経済を検証してきた。その感想をいえば、日中は瓜二つの過程で「破滅」へ向かっていると言うことである。中国経済は別、ということはあり得ない。金融現象の「引潮」(信用収縮)に見るマネーサプライ(M2)の急速鈍化は、日本経済と同じ道を歩んでおり、中国経済が苦闘の真っ最中にあることを物語っている。

     

    中国が、米中貿易戦争で最後まで戦うという無謀な選択をすれば、今後どういう結果が待っているか。その一端は、きょうの記事に現れている。その意味で、極めて象徴的な記事である。



    中国も随分と落ちぶれたものだ。習近平氏は、経済ニュースまで検閲対象に加えたという。悪いニュースは報道させない。国民の目と耳をふさぐ戦法に出てきた。経済の実態が極めて悪化しているのだろう。戦時中の日本が経験したように、「報道規制」は実態経済の悪化を示す証拠である。

     

    今さら悔いても始らないが、習氏は民族主義者の煽動に乗ってしまい、この始末である。米国と戦って勝てると見た習氏の力量の限界を示している。貿易戦争に入る前、中国の改革派は署名入りで反対論を打ち上げている。中国は、貿易紛争で米国と互角に対抗する力はない、というものだった。結果は、その通りになっている。習氏の権威は、これでかなりの「ディスカウント」になろう。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(11月14日付)は、「中国、景気減速で経済ニュースも検閲対象に」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国の経済成長が減速し、米国との貿易戦争が消費者心理や株式市場に打撃を及ぼすなか、中国政府は国内メディアの統制をさらに強めている。共産党は数十年来、力強い経済発展を自らの正統性のよりどころにしてきただけに、景況感が下向きになってきたこの時期、経済ニュースは政治ニュースと同様に検閲の対象になっている。『こんなに厳しい検閲はこれまでなかった』と、20年のキャリアを持つ経済記者は打ち明ける。『今年後半に大きな方針転換があった』。中国の有力メディアの記者・編集者十数人が匿名を条件にフィナンシャル・タイムズ紙に語ったところでは、中国の中央宣伝部の当局者が数カ月前、中国経済を中傷するような報道をしないよう指示したという」

     

    日本の戦時中の情報検閲の経験を聞くと、それは厳しいものだったという。私の勤めた『週刊東洋経済』では、毎号のゲラ刷りで検閲を受けるのだが、遠回しに書いても検閲官は敏感に対応したという。「負け戦」とは、こういうものだ。中国が、ここまで経済ニュースに敏感なのは、「敗戦」による責任回避を始めているのであろう。習近平氏も、ミソをつけたものだ。

     

    (2)「メディア関係者によると、消費者の支出減や地方政府による債務返済の苦闘ぶり、破産した民間企業の人員解雇、国有企業の非効率経営といった話題の報道は日を追って認められなくなっている。報道機関は『貿易戦争』という語句の使用を禁じられ、貿易摩擦が中国経済減速につながるといった解説も避けるよう命じられている、と複数の記者が証言した。世界の企業や投資家が製品の販売先、株式・債券市場への投資先として中国との関わりを深めるなかで、独自の経済報道に対する弾圧も強まっている」

     

    もともと、官製メディアはただの宣伝機関であるから記事に信憑性がない。となると、外国メディアの情報が唯一の信頼性ある情報と言うことになる。この状態が、この先「何十年」も続くのか。中国経済に「朗報」が期待できない以上、情報の解禁は困難であろう。購読を止めた方が良いのかも知れない。

     

    (3)「ある有力誌の編集者は、経済報道への規制がこれまで政治報道にだけ向けられていたのと同じ程度に厳しくなっていると話し、『いまや経済が政治問題化している』と言い放った。関係筋によると、報道規制当局は編集者に対し、経済問題を題材にしたりネット上で拡散したりしないよう電話で指示している。『今年は電話がかかってくる回数がかなり多くなった』と、1日に何度も電話を受けるという編集者が明かした。関係者によると、中国の大半のメディアはここ数年、広告収入の減少で採算ぎりぎりの経営状態にあり、(当局から)一時閉鎖でも(命令を受ければ)財務的に大打撃になり得るという」

     

    大半のメディアの広告収入が減ったと指摘している。この事実こそ、中国経済の末端は、不景気風に見舞われている証拠だ。中国経済の「落城」は近い。習近平氏は、全権を一手に握って、もはや逃げ場がなくなった。どうする積もりだろうか。



    今朝、「メルマガ5号」を発行しました。下記のような内容です。ご購読をお願い申し上げます。

     

    目次

    文在寅氏は政治家向きでない

    大統領府に元学生運動家終結

    労働貴族を生んだ「主体思想」

    最賃大幅引き上げはどうなる

    反企業主義が韓国の落日招く

    北朝鮮支援で国内景気を犠牲

     

    韓国第19代大統領の文在寅(ムン・ジェイン)氏は、1953年1月24日生まれの65歳です。両親が、朝鮮戦争の際に北朝鮮から韓国へ逃れてきました。先祖は北朝鮮の地に眠っています。こういう経歴が、文氏の政治行動に大きく影響を与えていると思います。南北統一が、最大の政治目標になっていることは疑いないでしょう。

     

    文氏は、社会派弁護士として活躍しました。絶えず、社会の底辺で陽の当らない人たちの立場で、弱者を支援する弁護活動をしてきました。このことが示すように、「義憤」という感情が文氏を支配してきたように感じるのです。これが、大統領になって「最低賃金の大幅引き上げ」という政策として登場した背景でしょう。

     

    文在寅氏は政治家向きでない

    以上の二点が、文大統領の政治行動のバックボーンになっていると見て間違いないでしょう。人間誰しも、身近な経験から社会全体の動きを眺めています。この狭い限られた経験から、自らを大きく解き放つには、一段の努力が必要です。残念ながら、文大統領にはそれが感じられないのです。(つづく)

     



    11月11日は、「通販狂騒曲」の日でもあった。熱気に押されて欲しくもない商品を買って返品するなど、大変は社会的なロスも出ている。アリババによると、「11月11日」1日だけの宅配件数は、10億件を超えたというから驚きである。日本の年間の宅配件数の4分1にも当るという。このうち、どれだけが返品されたのか。今年も発表はない。ただ、18年の独身の日の取扱高は、前年比26%増となったとはいえ、17年の39%に比べると伸び率は鈍化している。「消費堅調」とは言えなかった。

     

    『レコードチャイナ』(11月14日付)は、「世界最大の爆買いセールは今年も返品ラッシュ、酔ってクジャクを買った人まで」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「『観察者網』(11月14日付)は、中国では1111日は「独身の日でネット通販最大手・アリババでは今年のセールでの取引総額が過去最高を記録した。その一方で、一時の気の迷いで要りもしない商品をネットでうっかり購入してしまう人も多く、返品ラッシュもすさまじいという。多くは衣類や靴などの小物だが、驚きの商品を買ってしまって後悔する人もいる」

     

    「シャンプーが35%引き、サンダルは2割引きで購入できた」と大喜びの人がいる一方で、酔って購入ボタンを押してしまい悔やんでいる人も。一時の熱気は恐ろしいものだ。

     

    (2)「ある人は、深夜に酒に酔ったままネットショッピングのカートを確かめもせず注文してしまった。翌朝、ペット向けのミニブタと生後8カ月のメスのクジャクが発送待ちだという内容のメールが届いていることに気付いた。メールボックスをよく調べてみると、別のショッピングサイトでもさらになぜか食材として『オオサンショウウオ』まで購入していたことが分かったという。ミニブタとクジャクは運よく注文をキャンセルできたが、オオサンショウウオはキャンセルも返品できず、『料理の仕方をネットで調べているところ』だとSNSで明かしている」

     

    秀逸な「ミス発注」は、ペット向けのミニブタと生後8カ月のメスのクジャクだ。マンション暮らしなら、どうやって飼育するつもりだっただろうか。笑うに笑えない話だ。こんな類いの話はゴマンとあるに違いない。アリババが、公開したならば中国中を駆け巡る「小話」が創作されるだろう。独身の日の副産物である。


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