勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    韓国歴代政権は、任期末の支持率低下へのテコ入れとして「反日」へ力を入れてきた。文在寅氏も同じ手法を使い始めた。「反日」は、それほど魅力があるテーマなのだろう。

     

    世論調査会社の韓国ギャラップが4月16日に発表した文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率は30%で、同社の調査で過去最低だった前週からさらに2ポイント下落した。3月第1週(40%)以降、じりじり下がっている。一方、不支持率は4ポイント上がり62%と、過去最高だった。

     

    支持率30%、不支持率62%である。これは、韓国世論調査の定石の「35%対55%」によれば、文政権支持層も離間して不支持に回っていることを示している。「岩盤支持層40%」のレッドラインを切って、戦線の後退が続いているのだ。目下、「敗走中」である。

     


    ここへ降って湧いたように、福島原発のトリチウム放出問題が飛び出て来た。韓国政府の専門家による作業班は、昨年10月に「無害で問題ない」と結論を出していた。ところが、韓国二大市長選の敗北で文政権の不人気が決定的になった。ここで、「反日」にすがって人気回復に打って出ようという戦術を展開し始めたのだ。トリチウム放出という科学問題が、反日という政治問題化へ鞍替えされ始めたところに、文氏の悩みの深さが表われている。

     

    『聯合ニュース』(4月16日付)は、「海洋放出巡り関係次官会議 『あらゆる措置検討』=韓国政府」と題する記事を掲載した。


    日本政府が東京電力福島第1原発の処理済み汚染水を海洋放出する方針を決めたことを巡り、韓国政府は16日、関係官庁の次官らが参加する会議を開いて対応策を議論した。

     


    (1)「会議は国務調整室の具潤哲(ク・ユンチョル)室長(次官級)が主宰し、外交部や海洋水産部、原子力安全委員会など9機関の次官らが出席した。会議では海洋放出決定に対する米国や中国、ロシアなどの反応を確認・共有。国民の懸念が強まっていることを受け、水産物の放射能検査や原産地取り締まりの強化策を議論した。また、文在寅大統領が検討を指示した国際海洋法裁判所への提訴と国際原子力機関(IAEA)国際調査団への参加問題について協議した。具氏は「国民の生命と安全を守るため、可能な限りのあらゆる措置を検討する」と強調した」

     

    韓国外交部や海洋水産部、原子力安全委員会など9機関の次官らが出席して、対応策を検討したという。この中には、下記の昨年10月に発表した福島原発トリチウム問題の関係部署が含まれている。自ら発表した見解を否定するような矛楯した立場に置かれているのだ。

     


    昨年10月、韓国海洋水産部をはじめ政府部署合同タスクフォース(TF、作業部会)は、「福島原発汚染水関連現況」という題名の対策報告書を作成した。当時の状況を「日本が福島原子力発電所内に保管中の汚染水処分方案の決定を完了し、発表時期の決定だけが残っている」と評価した報告書で、韓国政府は日本が放出する汚染水が国民と環境に及ぼす影響を分析したのである。

     

    (2)「報告書によると、原子力安全委員会は専門家懇談会を7回開き、「汚染水を浄化する日本の多核種除去設備(ALPS)の性能に問題がない」との判断を下した。また、国際標準と認められる原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の手法を使い、日本海岸近隣地域の放射線影響を評価した結果、放射線数値が「妥当だ」とも評価した」

     

    (3)「韓国沿岸海域を対象にした放射能濃度調査では、2019年基準0.892~1.88ミリベクレル毎キログラムが検出されたが、これは福島事故以前の平均値(2006~2010年0.864~4.04ミリベクレル毎キログラム)と類似していると分析した。三重水素(トリチウム)露出の可能性に対しては、「生体で濃縮・蓄積されにくく、水産物摂取などによる有意味な被ばくの可能性は非常に低い」とし、汚染水の韓国海域拡散の可能性に対しては「海洋放出から数年後、国内海域に到達しても海流により移動して拡散・希釈されて有意味な影響はないだろう」とした」

     

    下線を引いた部分は、韓国国内で現在見られる反対論を事前に否定する内容である。トリチウムは、体内で濃縮・蓄積されにくく、水産物摂取で問題を起こさないとまで言いきっている。また、数年後に韓国海域へ福島原発トリチウムが到達しても、約1000キロの長距離の海流で拡散・希釈されていると指摘している。

     


    文政権は現在、この科学的な分析を真っ向から否定して、「反日」への道具に仕立てる魂胆である。韓国社会における「白を黒にする」エネルギーの凄さに驚くばかりだ。文氏は、7月の東京五輪で南北会談を目指してきたが、現状では不可能になっている。北朝鮮が選手団を送らないからだ。そこで文氏は、もはや「親日的ポーズ」を取る必要がなくなったと踏んでいる。元の「反日チャンピン」へ戻る決意であろう。

     

    ただ、福島原発でトリチウムを日本標準の40分の1にまで希釈し、海洋放出するのは2年後である。それまで放出を実行しないから、「反日」を煽っても効果はないだろう。文氏の支持率テコ入れに、役立たないのだ。

     

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    ポールオブビューティー
       

    中国経済は、一皮剥けば惨憺たる事態に追込まれている。国有企業の不良債権が山ほどあるからだ。この不良債権を買い取ってきた「バッドバンク」トップの中国華融資産管理会社が大揺れである。同社の元会長の頼小民は、中国でも極めて悪質な汚職事件で死刑執行となった。その後、11週間過ぎても金融市場に大きな影を落としている。

     

    華融資産は、2020年通期決算を3月末の期限までに公表できなかったほど混乱している。これを危惧されて、社債が大きく売られている。一部の銘柄は、額面1ドル当たり0.52ドルまで下げているという。デフォルト(債務不履行)懸念が、意識されていることを覗わせている。

     

    中国財政部が過半数株を保有する華融資産は、政府が1990年代後半に設立した資産管理会社4社の中で最大の規模を誇っている。国内の銀行は当時、多額の不良債権を抱えていた。華融資産をはじめとする資産管理会社は、大手国有銀行から不良債権を買い取り、入札や国外銀行への売却などを通じて処理した。華融資産は積極的に事業を拡大し、証券トレーディングや貸し出しなどの金融サービスに参入したものの、やがて経営が苦境に見舞われた。中国経済を象徴する事態を迎えたのである。

     


    米経済通信社『ブルームバーグ』(4月16日付)は、「中国、『バッドバンク』失敗容認なら市場に衝撃-最悪の解決策か」と題する記事を掲載した。

     

    習近平国家主席が推し進める反腐敗運動で摘発された頼元会長は、収賄罪で死刑判決が言い渡されたのは今年1月である。香港やロンドン、ニューヨークなどに広がる疑問は、華融資産が本土外で借り入れた232億ドル(約2兆5300億円)について中国政府が後ろ盾になるのか、あるいは債券市場で海外投資家が損失を被るのかだ。

     

    (1)「中国最大級の不良債権受け皿機関「バッドバンク」である華融資産のような国有企業は大き過ぎてつぶせないとグローバル投資家はずっと想定してきた。だが、これはなお現在も同社に当てはまるのか。または他の企業のようにデフォルト(債務不履行)が許されるのだろうか。その回答がもたらす影響は大きい。オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)のクレジット戦略責任者オーウェン・ガリモア氏は、「中央政府が所有する華融資産のような企業のデフォルトは前例がない」と指摘。もしそうなれば中国とアジアのクレジット市場にとって「重大な分岐点」になると話す」

     

    国有企業で、不良債権買い取り機関で最大規模の華融資産が、不祥事も重なって経営危機に立たされている。元会長の収賄事件が発端とされるが、中国金融構造をめぐる脆弱性が招いた問題と見るべきだろう。

     


    (2)「華融資産のドル建て債は最近、額面1ドルに対し約52セントという安値を付けた。中国国有企業ではこれまであり得なかった急落だ。同社が、国内外の社債保有者に負う債務は420億ドル相当。ブルームバーグの集計データによると、そのうちの約171億ドルは2022年末までに返済期限を迎える。15年の香港上場前、華融資産は
    ウォーバーグ・ピンカスやゴールドマン・サックス・グループなど投資家グループに24億ドル相当の株式を売却。ブルームバーグのデータは、ブラックロックとバンガード・グループも多くを取得したことを示している。だが上場以来、華融資産の株価は67%下げた」

     

    国有金融機関が、社債も株価も急落状態である。これは、中国政府が社債のデフォルトを防ぐべく保証しないことが大きく響いている。政府は、これが悪例になることを恐れているに違いない。ということは、他にもこういう例の存在を示唆している。

     

    (3)「会長時代の頼元死刑囚は、華融資産をシャドーバンキング(影の銀行)の強力な貸し手に変えた。銀行規制当局の幹部だったこともあり、取締役会やリスク管理委員会からほとんど監視を受けずに融資を実行したという。習主席肝いりの広域経済圏構想「一帯一路」に関係すると見せかけた事業にも資金が向かったとある国有銀行の幹部は話す」

     

    中国の信用逼迫状況で起こった問題でもあろう。元会長への賄賂は、融資を受けたい企業が持込んだものだ。本来は、貸出金利引上げで調整すべきものが、賄賂に化けたと見られる。

     

    (4)「一つ確かなことは、華融資産は氷山の一角にすぎないことだ。国有企業は4兆1000億ドル相当の債務を抱える。格付け会社フィッチ・レーティングスによると、国有企業は20年に人民元建て債795億元(約1兆3300億円)でデフォルト。これは過去最大規模で、本土の不履行に占める国有企業の割合は前年のわずか8.5%から57%に急上昇した。今年1ー3月(第1四半期)には72%に達した」

     

    国有企業は現在、4兆1000億ドル相当の債務を抱えるという。中国の外貨準備高は、2021年2月末で3兆2050億ドルである。これを上回る債務を抱えている。今回の外債のデフォルトが現実化すれは、今後の外債発行に大きな支障を来たす。中国経済には重大な事態をもたらすはずだ。

     


    (5)「北京福盛徳信息咨詢(FOST)の馮建林チーフアナリストは、「金融システムを巡る問題を解決するという任務を引き受けた国有金融会社の失敗を容認するのは、リスク対応で最悪のやり方だ。当局はリスク波及の甚大な影響を考慮する必要がある」と述べた」

     

    中国が、金融システムをめぐる重大な問題を抱えていることは、今や明らかになった。習氏が、「終身皇帝」を狙いたいという夢のような話をしている状況にないはずだ。

     

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    テイカカズラ
       

    福島原発トリチウムの海洋放出問題で、韓国は国を挙げての騒ぎである。「一握りの砂も汚染させない」という、非科学的なことを言って煽る団体まで現れている。こういう中で、原子力専門家は、韓国が感情論で騒げば日本に負けると指摘している。感情論で騒ぐよりも、放出後に日本との共同調査に加わって、事態の推移を見る方が得策と諭している。

     

    『中央日報』(4月16日付)は、「韓国教授、汚染水の危険だけを強調すれば負け試合に『放出後は共同監視を』」と題する記事を掲載した。

     

    韓国科学技術院(KAIST)原子力および量子工学科のチョン・ヨンフン教授(46)は14日、「福島原発から出た放射能汚染水の危険性だけを強調するよりも、日本に共同監視を提案しなければならない」とフェイスブックで指摘した。さらに、「(韓国)政府も汚染水の影響は大きくないと結論を出していることから、危険性だけを強調すれば日本に対して負け試合になる」と主張した。日本政府が13日、福島原発の汚染水を海に放出する方針を発表して以降、韓国や中国など隣接国が反発する中で、冷静な対応を助言した。



    (1)「チョン教授は、「汚染水(汚染処理水)が実際に危険ではないため、放出以降、常時監視と情報公開、検証が最善の方案」としながら「本当に日本が公開した情報が事実と符合するかどうかをしっかりと確認すればよい」と主張した。チョン教授は「共同監視を提案すれば日本も拒否しにくく、仮に拒否すれば日本は国際社会で窮地に追い込まれる」とした」

     

    日本政府は、過去100回も各国の外交団にトリチウム放出問題で説明会をしてきた。IAEA(国際原子力機関)とも4回、打ち合わせをしている。その結果、海洋放出が無害という結論を得たものである。科学者であれば誰でも、データを見れば無害という結論になるのだろう。


    (2)「チョン教授は、15日に受けた中央日報の電話取材に対しても「濃度と被ばく量に対する定量的な危険性の論証もなく日本政府を信じることはできないと言う人もいるが、(この主張は)それほど役に立たない」とし、「何が国益を守る道なのか、冷静に考えなければならない」と付け加えた」

     

    韓国人の「感情8割・理性2割」という国民性には、科学的問題は理解できないのだろう。未だに風水(中国伝来の占いの一種)を信じている国民だ。科学的常識は通じないのかも知れない。

     

    (3)「チョン教授は、「普段、海水の三重水素(トリチウム)濃度は1リットルあたり0.1ベクレル(Bq、1秒あたり放出される放射能の量)であり、淡水は1リットルあたり1ベクレル、自然で生成される三重水素が雨に混ざるが、その濃度が1リットルあたり1ベクレル」と説明した。続いて、「放出地点の汚染処理水の三重水素濃度は基準値である1リットルあたり6万ベクレル以内であり、毎日2リットルずつ一年中服用すれば0.8ミリシーベルト(人体に影響を及ぼす放射線の量)程度被ばくする」とした。一般人の年間被ばく線量基準値である1ミリシーベルトを下回る水準という趣旨だ。放出によって福島近隣で受ける被ばく量が年間1マイクロシーベルト水準で、韓国は1ナノシーベルトにも及ばないことが予想される」

    日本は、6万ベクレルを40分の1にまで希釈して海洋放出する計画である。下線のように、6万ベクレルの水を毎日飲用しても、体外へ尿で排出されるので体内に残留しない。ましてや、実際は40分の1まで薄められるのだ。

     

    (4)「あわせてチョン教授は、「放出地点から数十キロメートル離れた地点の三重水素濃度は1リットルあたり1ベクレル水準」としながら「この程度なら淡水と区分できない三重水素濃度なので危険性議論は意味ない」とした。福島海域と韓国とは1000キロメートル程度離れている」

     

    放出地点の福島から韓国海域まで1000キロも離れている。その間に、一段と希釈される。こういう科学的常識論が通じない韓国社会の硬直性に呆れるのだ。

     

    (5)「チョン教授は、「地上から6メートル程度高いところは地上より年間1マイクロミリシーベルト程度さらに被ばくを受け、バナナ1個の摂取で0.1マイクロシーベルト程度の被ばくを受ける」とし「年間食品から受ける被ばく量が約300マイクロシーベルト」と話した。チョン教授は「三重水素が有機三重水素に変わって人体に蓄積されて特に危険だという主張等は根拠がない」とし「すでに英国の健康保護局とカナダの原子力規制委員会が相当以前に結論を出した事案」と話した」

     

    人間は、自然界の放射性によって常時囲まれて生きている存在である。下線のような科学的な検証をなぜ信じられないのか。

     

    文政権支持メディア『ハンギョレ新聞』は、IAEAが無害を証明している裏には、日本とIAEAがグルになっているとまで書き連ねている。これが、進歩性を売にしている韓国の「朝日新聞」の実態である。

     


    (6)「一方、韓国政府は昨年、福島原発汚染水放出に関連して「科学的に問題がない」という趣旨の結論を出していたことが確認された。野党「国民の力」の安炳吉(アン・ビョンギル)議員によると、海洋水産部をはじめ政府部署合同タスクフォース(TF、作業部会)は昨年10月、「福島原発汚染水関連現況」という題名の対策報告書を作成した。この報告書で、韓国政府は日本が放出する汚染水が韓国の国民と環境に及ぼす影響が大きくないという趣旨で分析していた」

     

    昨年10月、韓国政府の作業チームは、無害論を発表している。だが、文政権は「一部の見方に過ぎない」と科学的分析を否定しているのだ。文政権の頭も、民衆の「風水信仰」と変わらないのである。


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    韓国外交部は、福島原発のトリチウムを海洋放出する問題について、7年前から模擬裁判を行ない準備していたことが判明した。大学法学部レベルの模擬裁判であるものの、日本の動向をじっと狙っていたことは疑いない。陰湿な雰囲気を感じさせるのだ。

     

    『中央日報』(4月15日付)は、「韓国外交部が『放射能汚染水』国際裁判に対応する論理」と題する記事を掲載した。

     

    韓国外交部は、「第6回国際法模擬裁判競演大会」(2014年)において、放射能汚染水が海に流出した状況で、国際法的にいかなる対応が可能かを論争させ準備してきた。外交部は、4月14日の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の「国際海洋法裁判所に暫定措置とともに提訴する案を検討すべき」という指示を受け、放射能汚染水問題に関する国際司法手続きを検討中だ。



    韓国内では、国際司法裁判所へ訴えた場合、日韓の外交的な溝が一層深まることのリスクを指摘する声があるので紹介したい。

     

    1)国内の裁判と違い国際法裁判は一度判決が出れば2審、3審がないため「最初のボタン」をうまく掛けなければいけない。

    2)裁判で勝訴できない場合も負担であり、国家間関係でも考慮すべき部分が多い。

    3)日本が独島(ドクト、日本名・竹島)問題を国際裁判に持っていこうとするのを韓国は反対してきたが、原発汚染水を裁判に持っていけば今後、別の紛争も司法的手続きに進む圧力が生じかねない。

    4)別のイシューで司法的な対応をする準備ができていなければ、韓国政府の立場が苦しくなるだろう。

     

    韓国が、今回の福島原発トリチウムを国際司法へ訴えれば、他の日韓紛争問題も国際司法へ委ねなければならなくなる。韓国が、自国に都合のいい案件だけを国際司法へ訴えるという身勝手さは許されないからだ。また、こういう形で日韓が法的に争えば、両国関係が大きく軋むことになる、としている。

     

    国際司法では、提訴する側(韓国)が全て証拠を集め提示しなければならないという制約がある。

     


    『中央日報』(4月15日付)は、「文大統領が指示した『汚染水放出』提訴、法律的には可能だが勝訴楽観は難しく」と題する記事を掲載した。

     

    法的手続き上は可能な選択肢だが、被害の立証責任は韓国にあり、結果を楽観するのは難しいという指摘だ。

     

    (1)「問題は、国際司法裁判所に対して、暫定措置であろうと本案訴訟であろうと、そのような可能性を立証する責任は問題を提起した韓国にある点だ。「一方的な決定」「十分な協議がなかった」という主張さえも、資料で立証してこそはじめて法廷で認めてもらえる。日本が具体的に海洋法条約のどの規定に反したのか、裁判所を説得する科学的根拠が必要だということだ」

    韓国は現在、福島県ほか8県の海産物輸入禁止措置を取っている。日本が、WTO(世界貿易機関)へ訴えたものの、韓国は立証データを提出せず、「風評被害」という曖昧なことで逃げ切った。韓国が、国際司法裁判所へ提訴の場合、WTOのような「逃げ切り」は不可能である。韓国が今度は、全データを提出する義務を負う。

     

    (2)「延世(ヨンセ)大学法学専門大学院のイ・ギボム教授は、「私たちは日本が間違っていると当たり前のように考えるが、これを国際海洋法裁判所が納得できる言語に構築し直すことがカギ」と指摘する。また、「日本の協力義務や事前通報義務など手続き的な義務違反はそれなりに簡単に証明することはできるが、放出を防ぐための実体的な根拠を提示するためには多くの時間と努力が要求される」と説明した」

     

    韓国は感情論で訴えているが、理詰めの証拠を提出しなければならない。WTOの際も、被害を実証できるデータを提出できなかった。つまり、韓国には福島原発問題の具体的被害がないのだ。

    (3)「韓国政府は、危険性を立証するにはデータが必要である。だが、汚染水に関連した主な資料のほとんどを日本が持っている。外交部によると、日本側は具体的な処分方式や総量など、核心情報に対する回答すらまだ提供していない。結局、「日本政府の今回の決定は周辺国家の安全と海洋環境に危険を招く」(13日の政府コメント)という主張を立証するには、資料に関連して日本の協力を求めるか別の法的手続きを進めなければならないということだ」

     

    日本は、IAEA(国際原子力機関)に全てのデータを提供して、誤りなきを期している。韓国はデータがないと言っていながら、提訴すると発言していることは、被害がないことを物語っている。日本を威嚇していることと同じなのだ。「反日活動」の一環として、日本に一太刀浴びせたいという感情論に過ぎない。極めて悪質な動きである。


    テイカカズラ
       

    習近平氏を取り巻く中国民族派は、「米国衰退・中国繁栄」を吹聴して歩いている。だが、現実は逆である。米国バイデン政権が進める米中デカップリンに怯えているのだ。米国企業が、中国へ背を向けたなら「一大事」とばかりに低姿勢である。

     

    『大紀元』(4月15日付)は、「デカップリング回避の狙いか、李首相らが相次ぎ米企業トップと会談『協力強化を』と異例の呼びかけ」と題する記事を掲載した。

     

    新疆問題をめぐって外資企業への不買運動を煽った中国当局は、欧米企業との関係を改善しようとしている。当局は各国との経済的なデカップリング(分離)を回避する狙いがあるとみられる。

     


    (1)「中国国家発展改革委員会は4月13日、テスラやクアルコム、スターバックス、アマゾンなど、中国に進出する米企業47社の幹部と、米企業で組織されている中国米国商会の関係者60人超を招き、会談を行った。会議で、国家発展改革委員会の寧吉喆・副主任は、中国は「揺るぎなく対外開放を引き続き拡大していく」と強調し、「米企業を含む世界各国の企業が中国の対外開放、二国間・多国間の経済活動・貿易の拡大に参与することを望む」と話した。ブルームバーグは、中国当局者が米企業の上級幹部に直接呼びかけるのは「異例だ」との見方を示した」

     

    中国政府は、米国企業による投資を呼びかけている。米国企業が、生産機能を引き揚げれば、生産技術も習得できないので低姿勢を貫いている。ただ、在中米国企業は一様に中国政府の圧力を感じており、撤退意欲は根強い。

     


    (2)「李克強首相は4月13日、米経済界リーダーとのオンライン会議に出席した。会議には米中貿易全国委員会(USCBC)と米大手企業20社の会長や最高経営責任者(CEO)が参加した。米国のヘンリー・ポールソン元財務長官がこの会議の進行役を務めた。李首相は、米企業のトップに対して、中国経済とデカップリングしないよう呼びかけた。首相は、「協力・提携のなかでトラブルが起きたなら、これは協力して解決しなければならない」「デカップリングは双方にメリットがなく、国際社会に損害を与えるだけだ」と話した。首相は「対外開放という扉はどんどん大きく開くしかない」と約束した」

     

    李首相は、米企業のトップに対して、中国経済とデカップリングしないよう呼びかけたという。これまで黙っていても米国企業は、中国へ進出してきた。だが、李首相が自らデカップリンを止めさせようとしているほど状況は変わった。ただ、米国バイデン政権がデカップリンの意思を強めているので、この引留め効果はどこまで効くか疑問である。

     


    (3)「米投資週刊誌『バロンズ』の報道によると、4月13日、中国の叢培武・駐カナダ大使はモントリオールで、西側諸国で中国とのデカップリングを求める声が強まっていることを「懸念している」と述べた。大使は、カナダ政界に対して「協力を強める必要がある」と訴えかけ、「われわれは引き続き、対外開放を展開していく」とした。オランダ金融大手、INGグループのアナリストであるアイリス・パン氏は、ブルームバーグに対し、中国当局は米ビジネス界のトップとの会議を通して、中国は依然として米企業にとって大きな市場であるとのメッセージを米政府にアピールしたとの認識を示した」

     

    西側諸国では、中国とのデカップリングを求める声を強めている。これは、中国の強引な海洋進出が原因をつくっている。また、中国の「戦狼外交」が他国を罵ることで、中国への恐怖感を強めている。自業自得の面が大きいのだ。

     


    (4)「大紀元コメンテーター、袁斌氏は、「中国当局は米中間のデカップリングをどうしても回避したい」と述べた。「デカップリングで米企業は損失を被るが、世界各国でのサプライチェーンや生産拠点を調整し、新たな市場を開拓すれば、短期間に回復できる。しかし、中国が米市場や米企業のハイテク技術を失い、米ドルを中心とする国際決算システムから排除されることは、中国経済にとって致命的となる」と指摘する」

     

    中国は、口先では強気を装っているが、世界の覇権国・米国の総合力から比べれば「まだまだ」である。米ドル決済機構から外されれば、途端に路頭に迷う身である。習近平氏は、帝王として振る舞うには、米国と衝突も辞さない強硬策が必要でも、それが中国経済を衰退させるという矛楯を抱えている。

     

    (5)「米共和党のトム・コットン上院議員は2月18日、米中関係報告書を同氏の公式ウェブサイトで公開した。議員は、報告書のなかで「米経済は中国と密接に関係しているため、中国共産党が米国の政府や産業界に対して影響力を持つようになった。今こそ、私たちは中国との関係を断ち切る時である」とし、「経済的な長期戦で中国共産党を打ち負かす」必要があると指摘した」

     

    これまでのグローバル経済が、米国の安全保障を危機に追込んだという事実からすれば、デカップリングという荒療治で、安保体制を立て直さなければならない。世界経済は、グローバル経済から、デカップリングという180度も変わる転換を余儀なくされている。

     

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