勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    あじさいのたまご
       

    中国の経済政策は、7人の中央政治局常務委員を含む10人程度しか関与していないと言われる。幅広く意見を集めて議論するのではない。少人数で決めているのは、統制経済がもたらすものとはいえ、情報収集に限界を生み大きな判断ミスをもたらしている。

     

    今回のパンデミックによる経済活動の後退は、突然の感染症拡大によるものである。通常の「恐慌」であれば、金利を引下げるなど金融緩和で踏み切って対応する。日米欧などは、この定石に従った。

     

    中国は、これに倣わずに従来の金利水準4.35%(2015年10月以来)を維持した。不動産バブル再燃を恐れたのだ。これは、主要国では突出した「高金利」部類である。また、パンデミックのもたらした「ロックダウン」を長期かつ広範囲に行って、感染者ゼロを目指した。これが現在、中国経済の足腰を徹底的に脆弱化させている。「感染者ゼロ」という政治宣伝を第一にして、党の威信を守ろうとし、結果として大失敗したのである。

     


    中国の李克強首相は、昨年初夏に感染者が激減したことから、中国の風物詩でもある露店の出店を認めた。これによりロックダウンによる庶民の窮迫した暮らしの一助と願った。だが、習氏の一派が、「都市の景観を乱す」として撤去させるチグハグさを見せていた。こうしたパンデミック下の国民の暮らし無視が、現在の中国経済に重大な影響を与えている。

     

    下記の寄稿は直接、中国経済を論じたものでないが、私は中国経済の今後を考える上で大きな示唆が得られると考えて取り上げた。コメントで、その問題点に触れた。

     


    『ハンギョレ新聞』(9月20日付)は、「
    パンデミック経済危機はこれまでの危機とは違う」と題する寄稿を掲載した。筆者は、パク・ポギョン慶煕大学国際大学院教授である。

     

    (1)「既存の経済危機はすべて企業や金融機関、あるいは政府財政の不良化といった経済内部の問題が原因だった。しかし、今回の危機は感染症という経済以外の要因によって発生した未曾有の事態であったため、参考にするに足る過去の事例がなかった。1世紀前、第1次世界大戦の終盤に発生したスペイン風邪の事例はあるものの、戦争の経済的衝撃が大きすぎたため、パンデミックの影響はほとんど注目を浴びなかった」

     

    パンデミックは、戦争と同じで生命の危機に直結する。それだけに、通常の経済恐慌とは質がことなるゆえ、国民全てに関わる恐怖感を取り除く必要があった。

     


    (2)「パンデミックが招いた経済危機は、これまでの危機とどのように異なるのか、今や整理してみる時間となった。まず、パンデミックによる経済危機は、他の経済危機に比べてはるかに鋭いV字型を描いた。最初は極端な封鎖措置により経済がほぼ停止状態に陥り、生産と雇用が急激に落ち込んだ。しかし封鎖は政治的にも経済的にも長くは続かなかった。医療システムが再整備されて移動制限が緩和されると、経済は予想より早い回復を見せた。コロナは変異を繰り返しながら予想より長く続いたものの、経済は予想より早く回復したのだ」

     

    中国は、感染予防で徹底的なパンデミックを行った。市民の暮しを無視した「感染者ゼロ」が、共産党威信確立と認識したのだ。「豚コロナ」の感染予防と同じ感覚である。経済も重視する「ウイズ・コロナ」という欧米の認識が、中国には生まれる政治基盤を持たなかった。共産党の威信確立を最優先したのだ。

     

    (3)「雇用は生産や輸出に比べて回復がはるかに遅かった。経済的衝撃が部門によって非常に不均衡であることも特徴だ。あらゆる危機は不平等を深化させる傾向があるが、パンデミック危機はその程度がよりひどい。物理的接触による感染という感染症の特徴のため、対面業種と非対面業種の違いもはっきりしている。一方の危機が他方には機会となっている。したがって、パンデミック危機に対する政策処方は、他の経済危機に比べて選別的である必要がある

     

    パンデミック危機対応は、ロックダウンという一律封鎖でなく、「一方の危機が他方には機会となる」現実を見据えるべきであった。「人流軽減」目的で飲食店が打撃を受ければ、配達サービスで切り抜けることも可能になる。まさに、「危機が機会」になりうるのだ。中国は、一律ロックダウンで、このチャンスを奪うことになった。

     


    (4)「注目すべき重要な違いは、景気回復に向けた政府の対応の積極性だ。コロナで深刻な景気低迷の兆しが現れたことを受け、米国をはじめとする大半の先進国は大規模な景気刺激策を迅速かつ積極的に実施した。中央銀行は量的緩和を通じて、ある意味で必要以上に豊富な流動性を長期にわたって供給している。政府の財政拡大も前例のないほど果敢だった」

     

    主要国の政策金利水準を見ておきたい。今年7月現在である。

     

    日本(-0.10%)、米国(0.25%)、EU(0%)、英国(0.10%)、カナダ(0.25%)、豪州(0.10%)である。これに対して中国は、4.35%である。政策金利は、潜在成長率と関係するが、パンデミックという緊急事態下では、各国とも同じ状況のはずだ。中国の4.35%では、市民の暮しは成り立たないであろう。

     

    中国は、経済対策として相変わらずのインフラ投資で、高速鉄道建設を行っていた。もはや、人口密度の低い人間の住まないような地域での鉄道工事である。都会では、ロックダウンを行というチグハグさだ。「コロナ外交」と称して、マスクとワクチンの輸出に力を入れたが、低品質で不評を買うだけだった。

     


    (5)「かつてとは異なり、パンデミック危機に過剰なほどの刺激策を打ち出せたのは、当時より政策に余力があったからではない。そのような政策の政治的受容性が高かったからだ。普通の危機の際には危機誘発の主体を戒めるべきだという要求が強く、果敢な景気刺激策は議会の承認を得にくい。しかし、ウイルスは刺激策で利益を上げる対象ではなかったため、大規模な景気刺激策に皆が合意できたのだ」

     

    パンデミックという人命に関わる緊急事態の発生で、先進国は一斉に大規模な景気刺激策を行った。中国は、インフラ投資という方向違いのことに資金を使っていたのだ。

     

    (6)「過度の果敢な需要拡大は、ウイルスが誘発した一部の供給障害と結びついて今やインフレを招いている。かつての経済危機の後には、デフレが心配だったが、今はそれが逆になっている。このようにパンデミック危機は多くの面で普通の経済危機とは異なる。そのため対応も変えなければならない」

     

    先進国は、パンデミックで大規模な需要創出策に出たが、パンデミックによる供給制約も起こり、インフレ問題を招いている。中国は、国民生活に結びつく需要創出を見送ったので、パンデミック・デフレに襲われている。パンデミック後に、主要国はインフレとデフレに分かれている。中国の冒した政策ミスが、潜在成長力を大きく棄捐することは疑いない。

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    韓国の対中感情は最近、急速に悪化している。韓国の誇る文化や食品の「元祖」は、中国と言い張る議論が増えているからだ。また、中国「戦狼外交」の一環で、駐韓中国大使が韓国大統領予備選での野党候補者発言を批判するという無神経ぶりも影響している。

     

    韓国では、中国へ過剰な神経を払っているのが文政権と言えるだろう。中国の「正体」を知らずに米つきバッタのように頭をペコペコ下げる。端から見ていても、いま少し矜恃を以て対応すべきと感じるほどだ。韓国市民が怒りの声を上げ始めたのは自然であろう。

     

    『大紀元』(9月19日付)は、「『韓国は孔子学院の正体に気づくべき』市民団体 世界初の孔子学院前で閉鎖を要求」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国の市民団体は15日午後、ソウルにある孔子学院の前で集会を開き、語学教育機関を冠した同院の実態は中国共産党の宣伝工作機関だと訴え、閉鎖を呼びかけた。韓国市民団体「孔子学院実体を知らせる運動本部(CUCI)」は集会で「孔子学院は儒教を教えていない」、「孔子学院は私たちの教育理念を真っ向から否定する、中国共産党の宣伝諜報工作機関」だと主張した。2020年までに世界162か国、545か所に設置されている孔子学院だが、共産党の宣伝機関との指摘を受けて以降、北米を中心に閉鎖が相次いでいる。韓国ソウルの孔子学院は2004年、世界で最初に設置された」

     

    カナダに始まった孔子学院閉鎖要求は、米国にも広がっている。当初は、純粋な中国文化の普及センターと見られて、各国は設置を受入れてきた。内実は、スパイ活動の一端を担っていると指摘されている。「スパイの国」中国が、孔子学院を利用しないはずはなく、米国では厳しい取締り対象になっている。

     


    自由主義経済学の伝統を継ぐ米シカゴ大学は、ノーベル経済学賞受賞者を輩出している経緯もあって、孔子学院を自主的に閉鎖したほど。設置した大学の見識が問われている事態になっている。

     

    (2)「国会が2018年に発刊した米中経済安保委員会の報告書は、海外の教育機関に置かれる孔子学院を「世論操作のために様々な手段を利用」する、党組織として分類した。更なる報告では、中国政府は統一戦線工作を通じて中国に不利な政策を立てる海外の政治家、公職者、シンクタンクなどの影響力を弱める試みを行なっていると指摘した。米国務省は昨年8月から、中国共産党による世界規模のプロパガンダ(政治宣伝)工作に使われている」と断定し、孔子学院を中国大使館と同様の「外国公館」に指定した。孔子学院を設立しようとする機関は人的構成と予算などの報告するよう義務づけている」

     

    米国では、孔子学院を政治機関として認定し、外国公館並みの「要警戒」対象になっている。留学生の監視機関の役割を担い、スパイ活動に従事していると報じられている。日本にも二桁の孔子学院が私立大学に併設されている。国公立大学にゼロなのは、文科省が設置にブレーキを掛けている証拠であろう。

     


    (3)「孔子学院は国内の人権問題など「ありのままの」中国を見せないとの指摘もある。CUCIは「チベット・ウイグルに対する人権侵害、香港・民主化運動の弾圧、天安門事件、キリスト教、仏教、イスラム教、法輪功などに対する過酷な迫害については言及を認めていない」と指摘した。CUCI地域代表のカン・ソクジョン牧師は、大紀元のインタビューに対して、「孔子学院は純粋な中国語教育機関ではない。中国共産党の宣伝を巧妙に注ぎ込み、歴史を歪曲する場所」だと述べた。 そして、「保護者たちもこの問題に注意を向け問題提起する必要がある」とし、韓国社会は学院の影響力に、これまで以上に強い危機感を抱くべきだと語った

     

    韓国の各市・道教育庁が8月末に発表した2022年度中等教員(中・高校教師)選抜予定公告によると、全国の中国語担当の選抜人員は「0人」だった。2020年度の43人、2021年度の33人に比べると様変りの変化である。中国への反感が強まっているのであろう。

     


    (4)「CUCIのハン・ミンホ代表は同日、在韓中国大使館前で「中国共産党の韓国大統領選挙への介入に対する厳粛な警告」と題した声明を発表した。声明では、「中国共産党は韓国の政治に深く関与し、影響力を行使してきた。党は、3000人のネット世論工作員『五毛』、約100万人の在韓中国人、約6万人の留学生を動員して操作してきた」と指摘。「青瓦台(韓国大統領府)の請願ウェブサイトが中国側に乗っ取られた」ことや、「韓国人は文在寅大統領が王毅氏と会談した際、大統領を部下のように対応したのを非常に悲しく、恥ずかしめられたと感じた」と批判した」

     

    中国共産党は、韓国国内に3000人のネット世論工作員「五毛」、約100万人の在韓中国人、約6万人の留学生を動員して韓国世論を操作してきたと指摘されている。これだけの人海戦術を行っても、2022年度中等教員(中・高校教師)の中国語教師採用はゼロというのだ。韓国人は、中国の意図を察知しているのかも知れない。

     

    (5)「声明ではまた、最近の国際情勢により、韓国人が中国共産党の本質に気づいていると指摘。最近の世論調査では8割以上は中国が韓国の安全保障に脅威を与えているとの結果が出ていることを紹介した。ほかにも、例えば、親中共宣伝が含まれると疑われた国営放送局SBSのテレビシリーズ「朝鮮駆魔師」の放送打ち切り、江原道のチャイナタウン建設の中止などは、世論の変化を反映していると主張した」

     

    このパラグラフの指摘するように、韓国人が中国へ反感を強めているとすれば、孔子学院を一段と監視する必要があろう。

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    中国不動産開発企業の大手、恒大集団の経営不振は、中国経済を揺るがす騒ぎになってきた。負債合計33兆円は、中国名目GDPの2%にも達するほど。規模の大きさが伝わる。本欄も、継続してこの問題をとり上げているが、負債の中身が判明したので続報とする。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月19日付)は、「中国・恒大 資金繰り難一段と 負債合計33兆円」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国恒大集団の資金繰りが一段と厳しくなっている。9月下旬以降、過去に発行した社債の利払い日が集中するためだ。年内の利払い額は社債だけで700億円を超える。取引先への未払い分などを含めた恒大の負債総額は1兆9665億元(約33兆4000億円)と中国の名目国内総生産(GDP)の約2%に相当する。その処理に失敗すれば中国経済や金融システムに大きな打撃を与えかねない」

     


    負債の内訳は、次の通りである。

    買掛金   9629億元

    借入金   5717億元

    契約債務  2157億元

    その他   2162億元

    合 計 1兆9665億元

    (2021年6月末)

     

    これを見ると、金融機関からの借入金と債券が5717億元で、債務合計の29%に過ぎないことだ。仕入れ業者への買掛金や住宅販売契約者から受取った契約債務(前受金)などが、1兆1786億元と全債務の59.9%も占めている。実に6割もの債務が、一般の納入業者や住宅販売契約者という立場の弱い人たちであることが分かった。金融機関の貸出は、貸倒引当金などで手当できても、6割の一般債権者には逃げ場がない。事態の深刻さはここにある。

     

    (2)「リフィニティブによると、まず23日に米ドル債と人民元債の利払い日が到来する。利払い額は米ドル債が8353万ドル(約92億円)、人民元債が2億3200万元(約39億円)だ。デフォルト(債務不履行)まで30日の猶予がある債券もあるという。その後も利払いを控えており、年内の社債の利払い額は、米ドル債が計6億3110万ドル(約694億円)、人民元債が計3億5380万元(約60億円)となっている。元本は22年1月30日に米ドル債3億ドルの満期が到来する

     

    米ドル債の元本の満期到来は、来年1月30日で3億ドルが控えている。これが、償還不能になると、国際的な問題としてクローズアップされ、中国経済斜陽化のイメージを濃くする。中国政府としては、「民間企業の経営問題」として放置も出来まい。北京冬季五輪開催の寸前であるのだ。

     


    (3)「銀行融資に関しては開示情報が限られるが、米ブルームバーグは「中国住宅都市農村建設省が主要債権銀行に『20日が期限の利払いを行わない』と伝えた」と報じている。恒大はすでに一部の建設会社や資材会社への代金支払いが滞っている。広東省深圳の同社本社では、恒大が資金調達手段として社員や個人投資家に販売した資産運用商品「理財商品」の返済を巡って、抗議活動が起きた」

     

    すでに、買掛金の支払いが滞り始めている。金融機関への利払いが遅れている以上、当然であろう。

     

    (4)「恒大が破綻すると、下請け各社がすでに請け負った工事の代金などを回収できず、破綻が連鎖する恐れがある。例えば、江蘇省の建設会社、江蘇南通三建集団は「恒大依存度が高い」として14日、中国の格付け会社から格下げされている。17日の香港株式市場では、「恒大向けの与信が大きい」として中国の民営銀行、中国民生銀行の株価が約5%下落した。インターネットで出回る資料に、民生銀行の貸付金が金融機関のなかで最大となっているためだ。恒大が3割超の株式を握り、恒大に一定の貸し出しがあるとみられる盛京銀行への影響も不安材料だ。かりに銀行の経営不安が強まれば、銀行間市場にも動揺が広がりかねない」

     

    恒大への与信の大きい金融機関では、その影響を懸念して株価が下落し始めている。いよいよ関連先に「津波」が押し寄せ始めている。危険な兆候である。

     


    (5)「恒大問題が中国経済に及ぼす悪影響はこれにとどまらない。恒大は前受け金に近い「契約債務」を2157億元抱える。販売したものの引き渡しを終えていない住宅などを指す。中国でも日本と同様、未完成のうちに販売する「青田売り」が一般的だ。売り主が破綻すると、代金を支払ったにもかかわらず契約者が住宅を受け取れないリスクがある。土地使用権の売却収入が税収と並ぶ主要な財源となっている地方政府にも打撃だ。恒大などの不動産各社が高値で土地を購入しなくなると、地方財政に痛みを与える

     

    下線のように、土地を売却する地方政府にも財源不足が起る。

     

    (6)「華創証券によると、過去に中国国内で債務不履行(デフォルト)を起こした196社のうち処理方法として最も多いのは企業破産法に基づく「破産重整」の74社で約38%を占めた。「これは債権者の同意の下で債務をカットし、営業を継続しながら再建を目指す法的整理の枠組みだ。華創によると、複合企業の海航集団や半導体の紫光集団もこの枠組みにあてはまる。経済への打撃を抑える手段として今後も出てくる可能性がある。債権者の同意が得られず、資産売却によって会社を清算する「破産清算」も14社(7%)にのぼった」

     

    日本でいう「会社更生法」に当る、「破産重整」は38%で、生き残りを図る。だが、文字通りの倒産で整理に当る「破産清算」は7%もある。恒大は、どちらのケースになるのか。住宅販売している契約者が存在する以上、「破産清算」という荒療治はできまい。司法は、どういう判断を下すかである。

     

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    文政権の不動産対策は25回も行われ、ことごとく失敗。無様な姿を曝け出している。市民は暴騰する住宅を早く取得すべく争って銀行へ駆け込んでいる。こうして、家計債務はうなぎ上りになった。韓国のGDPに対する家計債務の割合は、今年第1四半期基準で105%、国際決済銀行(BIS)の調査対象43カ国(昨年第4四半期基準)のうち6番目に高い状態である。

     

    韓銀(中央銀行)によれば、対GDP比で家計債務の割合が1%上昇すれば、金融危機の発生確率は1~3%も高まると推計している。昨年第1四半期基準では、GDPに対する家計債務割合が97.9%。1年間で7.1ポイントもの上昇である。金融危機の発生確率は、最大で21%も高まった計算である。こういう背景で、個人債務の急激な引締めが始まっている。日本からみると、不思議な光景に映る。

     


    『朝鮮日報』(9月19日付)は、「韓国家計債務総量規制で『融資酷寒期』 銀行が月7000億ウォン削減」と題する記事を掲載した。

     

    1800兆ウォン(約110兆円)を超えた家計債務の伸びを抑えようとする金融当局の圧力が強まり、年末には融資が凍りつく「酷寒期」を迎える見通しだ。金融当局は昨年のコロナ危機で中断してきた家計債務総量規制を今年再開し、銀行別に融資伸び率を前年比で6%以内に抑えるよう求めた。

     

    (1)「5大主要銀行(KB国民、新韓、ウリィ、ハナ、NH農協)の融資状況を調べた結果、「6%ルール」を満たすためには、年末までに融資可能な金額が11兆5000ウォン(約1兆580億円)しかないことが分かった。9月から年末まで毎月2兆9000億ウォン(約2700億円)しか融資できないことになる。8月までに融資の伸びが月平均3兆6000億ウォン程度だったことからみて、7000億ウォンほどが足りなくなる。5行が所属する5大金融持ち株会社の融資額は韓国全体の半分を占める」

     

    韓国では、家計への総量規制「6%ルール」で貸出枠を決めている。これは、株式投資や不動産購入を抑制する目的だ。現実の不動産価格はなお上昇している。個人が、指をくわえて値上りを見ている構図は、何とも気の毒に映る。全ては、文政権の不動産対策の失敗が原因である。

     


    (2)「農協銀行が総量規制を満たすためには、融資を毎月5000億ウォン削減しなければならない。7月の融資伸び率が7.1%となり、政府が定めた6%を超え、8月には7.6%へとさらに上昇した。これまで毎月融資を平均で7200億ウォン増やしてきたハナ銀行は家計向け融資の伸びが前年末比4.6%で、限度まで余裕が残されていない。年末までの期間はこれまでの半分の月4000億ウォン前後だけ融資が可能な状況だ

     

    これまで、毎月の融資は「6%ルール」を超えているので、12月には「6%以下」に絞って辻褄合わせをしなければならない。年末の資金需給逼迫が目に見えている。こういう「悪政」の原因になった進歩派政権を、なお支持する韓国国民はどういう頭脳構造か、と訝るのである。日本であれば、簡単に政権から転げ落ちるはずだ。

     


    (3)「高承範(コ・スンボム)金融委員長は、「あらゆる手段と方法を動員し、家計債務の伸びを規制する」との強硬な立場を取っており、融資縮小圧力は徐々に強まる見通しだ。年末の不動産取引減少など融資需要がやや減ったとしても、一律的な総量規制による融資激減で実需要者の被害が懸念される。延世大経済学科の成太胤(ソン・テユン)教授は「総量ばかり厳格に管理すれば、本当に融資が必要な人が資金を借りられないケースが出てくる。所得と信用度が適合する実需要者が融資を受けられる道を確保しておくべきだ」と指摘した」

     

    融資の総量規制は、本当に資金が必要なところへ流れないという問題を発生させる。韓国は、まさに不動産バブル抑制の犠牲を払っているところだ。低利で、いくらでも金を借りられる。こういう日本の現状から見れば、韓国は異次元になる。経済政策の巧拙の差が現れたものだ。

     

    (4)「インターネット上の不動産関連掲示板などには、融資引き締め懸念で住宅担保ローンをあきらめなければならないかどうか尋ねる書き込みが毎日数百件も見られる。賃貸借3法など政府の政策失敗による不動産急騰を一律的に総量規制で抑え込もうとしているとの不満も少なくない。金融業界関係者は、「超低金利の長期化と不動産価格上場に対する期待感、賃貸保証金相場の上昇などにより、融資の伸びが容易には抑えられない状況だ。融資を引き締める政策ではなく、不動産価格安定策がまず必要ではないか」と話した」

     

    下線部が正解である。文政権の非現実的な政策がもたらして「金融狂乱」である。

     

    (5)「一部銀行は今月に入り、融資がさらに増えているため、年末が近づくにつれ、融資の引き締めが強まる可能性がある。例えば、KB国民銀行の前年末比の融資伸び率は7月時点で2.6%の過剰になった。8月末には同3.6%となり、9月14日には同4%に達した。この勢いならば9月末には4.6%を超える見通しだ。「6%ルール」に従えば、先月末時点で年末まで3兆8000億ウォンの融資余力のはずが、1カ月で1兆9000億ウォンへと半減した格好だ」

     

    これまでの融資実績が、「6%ルール」を上回っているので、12月にはこれまでのルールを超えた過剰融資分を引締めてルールを厳守するほかない。年末に向けて、不動産相場が一斉に暴落しない限り、融資ルールを守れなくなるのは必至。こういう融資枠を設けさせたのも、文政権で実務経験のない高官が「作文」したのだろう。

    テイカカズラ
       


    破綻したバブル経済構造

    2~3年続く低飛行成長

    TPP加盟論で煙幕張る

    実現できない数々の条件

     

    中国が、TPP(環太平洋経済連携協定)加盟を正式に申込んだ。取り次ぎ国は、ニュージーランドである。習近平氏は昨年11月、TPP加盟意思を示して以来、半信半疑で受け取られていたが、ついに正式な申込みとなった。

     

    TPPは、高度の貿易自由化(99.9%)などを条件にしている。中国が核とする国有企業には厳しい制限を掛けており、現在の中国の経済体制では加盟が困難である。それにも関わらず、中国はなぜ今の時点で正式な参加申入れをしてきたのか。かえって、それが訝られているほどだ。この申込みには、別の狙いが隠されているだろうという憶測である。

     


    破綻したバブル経済構造

    中国経済の現況は、ズバリ言えば「混乱の極」にある。中国GDPの約25%を占める不動産開発が、行き詰まっている。これまで10年以上も続いてきた不動産バブルが、ついに「自然崩壊」を迎える段階へ遭遇したことだ。

     

    過去、景気のテコ入れ策はインフラ投資と不動産開発が定番であった。インフラ投資は、全土にくまなく張り巡らす高速鉄道網の拡張策。もう一つは、土地国有制をテコにして地価を釣上げ、住宅価格を押し上げる不動産開発であった。この不動産開発による土地売却益は、地方政府の重要な財源になった。ここに、政府主導による地価上昇→住宅価格上昇という方程式が出来上がったのである。

     

    スパイラル的に上昇する住宅価格の上昇は、家計負債を急増させることになった。これが、個人消費を抑制するという逆効果を生むにいたった。それだけでない。2020年の国勢調査で明らかになったように、出生率低下による「人口減社会」が目前に来たことである。2023年ころから、中国は人口減が現実化するはずだ。これは、中国共産党にとって青天の霹靂であった。

     


    急遽、「不動産バブル潰し」が現実の政策課題として登場したのである。胡錦濤政権時代は、不動産バブルが発生するとすぐに金融を引き締めて正常化させた。習近平政権では、そのような配慮がなく、不動産バブルを利用して経済成長率を意図的に引き上げる政策を行った。そのツケが、現在の習近平政権を襲っているのである。パンデミックも重なって、中国経済は青息吐息状態に追込まれている。

     

    習政権は、自らが負うべき経済政策の失敗の責めをテック産業とその経営者へ押し付けている。「共同富裕論」は、その典型である。テック産業規制理由は、高額な学習塾による教育費高騰、インターネット・ゲームによる多額の費消、フィンテック金融による消費者搾取など、罪業の数々を並べ立てられて、政府の抑圧対象になった。

     

    2~3年続く低飛行成長

    最近の中国経済は、惨憺たる状況に陥っている。

     

    8月の小売売上高は、前年同月比2.5%増。8.5%増だった7月から大きく鈍化した。1~8月の建設投資は前年同期比3.2%減へ落込んだ。8月の住宅販売額は、前年同月比19.7%減である。7月も同7.2%減と不調であった。2月には、同143.5%増を記録したが、現金を必要とした企業の投げ売りと想像される。

     


    住宅販売は、明らかに基調が変わっている。同様に、自動車販売も8月まで4ヶ月連続で前年比マイナスである。耐久消費財販売は、総崩れなのだ。

     

    このように、個人消費の不調が明らかである。理由は、すでに指摘したように不動産バブルによる家計債務の増加と、パンデミックのもたらした影響である。「中国経済は向こう数四半期、幅広い下向きトレンドにとどまるだろう」との分析が出はじめている。すでに、米国エコノミストは「今後数四半期、米国GDPが中国を上回る」と予測している。米中のエコノミストが、期せずして一致した見方になった。それだけに、中国経済に不気味さを漂わせているのだ。

     

    私はすでに、こうした状況について「メルマガ286号 中国は深刻な『経済危機』、20年代にGDP2%へ低下『もがく習近平』」(8月23日発行)において明らかにした。その根拠のひとつとして、クレジットインパルス指標を通り上げた。

     


    クレジットインパルスは、新規貸出の増加率と経済成長率を対比し、拡大か縮小かを見るものである。これによると、2020年10月にピークアウトした。その後一貫して低下し、この4月以降はマイナス圏で推移しているクレジットインパルスは、上昇と下降においてそれぞれ2~3年のサイクルを示す。このことから判断すれば、23年秋ぐらいまでは下降するだろう。製造業PMI(購買担当者景気指数)の好転に繋がるのは、その後(約12ヶ月の遅れ)となる。つまり、中国経済が明るくなるのは、24年秋ごろと見られる。

    (つづく)

     

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