勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    韓国の文政権は、平等社会をつくるという理屈で、2年連続で最低賃金の大幅引上げを行なった。その結果、生産性上昇とのバランスを欠いて韓国経済は失速状態へ直面している。

     

    この最低賃金の大幅引上げは、大企業労組の賃金引き上げの口実に使われた。本来は、零細企業で働く勤労者の生活向上を図るべき目的が、逆に解雇の理由となる事態を招いている。

     

    ここに驚くべきデータが発表された、韓国の大企業と中小企業の賃金格差は、何と日本の3倍もあるというのだ。韓国では大企業労組が高賃金を得る一方、そのしわ寄せが中小企業の賃上げ原資たるべき利益を大企業が吸い上げているのだ。こうなると、大企業の労使は、共謀して中小企業の労使を食い物にしている構図である。

     

    文大統領は、道徳主義者である。自分が絶対に正しく、間違っているのは相手であるという論法だ。この理屈は、日韓関係でも存分に使われている。日韓関係を破綻の淵に追い込んでいるが、国内でも中小企業の労使を低収益・低賃金で追い込んでいる。

     


    『朝鮮日報』(4月21日付け)は、「韓国の大企業・中小企業間の賃金格差は日本の3倍」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の大企業と中小企業の平均賃金の格差が、最高で日本の3倍に達することが分かった。韓国中小企業研究院が22日に発表した「韓国と日本の大企業・中小企業間の賃金格差の比較分析」と題するリポートで明らかになった。

     

    「これによると、韓国では従業員14人規模の零細企業の月平均賃金は、大企業よりも360万2000ウォン(約36万円)低かった。日本では同じ企業規模で比較すると、賃金格差が118万5000ウォン(約11万8000円)だった。これは、韓国では従業員10人以下の零細企業の平均賃金が日本より低いからだ」

     

        従業員14人規模の企業

    韓国の月平均賃金         日本の月平均賃金

    約17万5000円        約22万7000円  

    韓国は、日本より約5万2000円低い

     

        従業員59人規模の企業

    韓国は日本に比べ約8000円低い

     

        従業員500人以上の規模

    韓国の月平均賃金         日本の月平均賃金

    約53万5000円        約34万5000円

    韓国は日本に比べ約19万円高い

     

        従業員100~499人規模

    韓国が日本より平均約7万1000円高い

     

        従業員10~99人規模

    韓国が日本より平均約1万7000円高い

     

    日韓の賃金比較が今、初めて明らかになった。多くの読者が愕然とされたのでなかろうか。大企業の賃金は、日本の方が高いと思い込んでいたであろう。実は、逆である。これは韓国企業の生産性が高い結果でなく、労組の賃上げ闘争力の違いである。韓国は「労働貴族」と言われている。となると、日本はさしずめ「労働平民」であろうか。

     

    問題は、韓国大企業が内部蓄積できず、不況抵抗力がきわめて弱いことだ。迫り来る経済危機に耐える力は極端に落ちている。端的にいえば、売上高営業利益率の低下である。現代自動車は2%台へ落込んでいる。トヨタ自動車は7%台。現代自は労組に高い賃金を払っているのでこの始末である。

     

    この韓国が、経済危機に陥ったとして日本へ支援を求めてくれば、日本はどうするのか。お断りする以外にない。自主的に賃金体系を見直せない韓国に、援助の手を差しのべるわけにいくまい。


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    1~3月期のGDPは、前年比6.4%増と体裁を整えた。それは、表面的なことだ。実態は、前期比で1.4%増、年率換算は5.7%成長にとどまった。さらに、過去平均で毎期1.7%ポイントの水増しをしている。これを差し引けば、実態経済は4%成長に過ぎない。街に失業者が溢れるのは当然であろう。

     

    『大紀元』(4月22日付け)は、「中国、13月期就職市場景気指数、5年ぶりの低水準に」と題する記事を掲載した。

     

    中国人民大学がこのほど発表した「中国就職市場景気報告」によると、13月期の就職市場景気指数(CIER指数)が5年ぶりの低水準となった。中国経済の先行きが依然として不透明であることが浮き彫りになった。

     

    (1)「北京にある人民大学の中国就職研究センター(CIER)は17日、ウェブサイトで同研究報告書を発表した。報告書によると、13月期の中国の求職申請者数は前期比31.05%増。一方で、企業側の求人数は同7.62%減少した。CIER指数は1.68ポイントまで下がり、2014年以来の低水準となった。昨年10~12月期のCIER指数は2.38ポイントだった」

     

    CIER指数の計算方法が説明されていない。ただ、この指数によれば、1~3月期は1.68まで下落したという。中国政府が、今後3年間で延べ1000万人の若者を「下放」させる計画が発表されている。都市部の青年を農村部で働かせる制度である。文化大革命時には強制的であったが、今回はボランティアだという。都会にいても就職口がないので農村で「援農作業」に励むもの。中国の就職状況はここまで悪化している。

     


    (2)「全国都市別でみると、北京市の雇用環境が最も厳しく、CIER指数は0.24ポイントにとどまった。CIER指数のワースト2~10位は瀋陽市、ハルビン市、大連市、長春市、天津市、フフホト市、長沙市、包頭市、深圳市の順となった」

     

    雇用環境のワースト10は、以下のようになる。

        北京市

        瀋陽市

        ハルビン市

        大連市

        長春市

        天津市

        フフホト市

        長沙市

        包頭市

        深圳市

     

    上記10都市に、北京、天津、深圳という一線都市が入っていること。特に、北京と天津は中央政府の直轄市である。また、ITハイテク都市として名高い深圳がワースト10に上がっていることに注目していただきたい。もう一つの特色は、かつての重工業地帯の「東北三省」の都市が名を連ねている。

     

    要するに、中国全土で就職難が起っていることだ。重工業からハイテク。一線都市の北京と天津という具合に、不況が深刻な事態に陥っている。

     

    (3)「13月期の中国民間企業の求人数も前期比で13.05%減少した。求職申請者数は同52.94%増で、CIER指数は0.8ポイントとなった。前期の1.41ポイントから大幅に落ち込んだ。同期の国有企業のCIER指数は、求職申請者数が大幅に増えたことで、0.43ポイントに低迷した。『1つのポストに対して、求職者2人が競い合っている』状況だ」

     

    1~3月期の民間企業のCIER指数は0.8ポイント。前期の1.41ポイントからみると急速な悪化だ。1~3月期の国有企業CIER指数は、0.43で民間企業のほぼ半分の水準である。就職地獄である。


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    サムスンは、半導体市況の急落で業績悪化を招いている。ここで起死回生の一打になるはずだった新製品「折り畳みスマホ」の発売を急遽、延期することになった。米国の一部マスコミ関係者に配布した「テスト版」に相次ぎ不具合が発生した結果だ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月23日付け)は、「サムスン、折り畳みスマホ発売延期検討か 韓国報道」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国サムスン電子は、画面が折り畳める新型のスマートフォン(スマホ)について、米国で26日に予定する発売の延期を検討していることが22日、分かった。韓国紙『韓国経済新聞』が23日付朝刊の早版で報じた。サムスンは新製品をタブレット機能と兼用できるスマホと位置づけ、スマホ事業復調の起爆剤にする狙いがあるが、発売が延期となれば打撃は計り知れない」

     


    この記事が出る前に、上海での説明会を中止することが発表されていた。

     

    『レコードチャイナ』(4月22日付け)は、「サムスンが中国での折り畳みスマホ発表会を突如延期」と題する記事を掲載した。

     

    中国メディア『観察者網』(4月21日付け)によると、サムスンが中国での折り畳みスマホ発表会を突然延期した。

    (2)「記事によると、サムスン広報担当者は「サムスンは折り畳みスマートフォン『Galaxy Fold』の中国での発表会を中止する」と発表。原因は会場の問題だといい、いつ発表会を開くかは改めて発表するという。サムスンは、24日に上海で折り畳みスマホの発表会を行い26日に正式発売する予定だった。「Galaxy Fold」はすでにニューヨークで発表しているが、中国で改めて新製品を発表するのがサムスンのこれまでの手法だという」

    (3)「これに先立ち、サムスンが少量の「Galaxy Fold」レビュー機をメディアに配布していたが、複数のレビュアーが、12日後にディスプレイが破損する、画面が黒くなる、点滅するなどの不具合を報告した。レビュアーのマーク・グルマン氏は、「たった2日で壊れて使えなくなった」とSNS上で紹介。サムスン側は、グルマン氏がディスプレイの保護シートを取り除いたためだと説明しているが、グルマン氏は、保護シートは簡単に取れてしまったと述べているという。また、保護シートを取り除かなくても、ディスプレイに同様の問題が発生したレビュアーもいるという」

    サムスンは、上海での発表会を突然、中止したことから、冒頭の記事のように発売延期は十分あり得ることだ。すでに、テスト版で不具合が出ているのに、その解決策も見いだせないままに発売となれば、企業責任が厳しく問われるところだった。

     

     


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    中国が、GDPで日本を抜いたのは2010年。この直後の中国は、日本に対して優越感に浸っていたものだ。日本に侵略されたが、ついにその無念を晴らしたという調子であった。在日中国人エコノミストの某氏は、中国がGDPで日本を上回ったのだから、中国を尊敬しろと言い放つ騒ぎである。

     

    現在の中国には、そんな空騒ぎをした痕跡はきれいさっぱりと消えている。多くの訪日観光客が、「生の日本」を見て驚愕している。「同じアジア人でありながら、どうして日本人はルールを守る国民なのか」というものだ。

     

    これは、日本と欧州に共通な封建時代を経験している結果であろう。最近もこのブログで触れたが、世界史では日本と欧州だけが、封建時代を経験していることだ。封建時代とは、各領主の下で一定の自由が与えられた社会であり、自主的ルールが存在した。中国には、封建時代がなく、秦の始皇帝以来、ずっと専制時代のままに中国共産党政権が成立した。専制時代は、王が全土を支配したから、脱法行為が盛んで自主的ルールなど存在する余地がなかった。

     

    現在の中国人訪日観光客が、日本人のマナーの良さに舌を巻くのは、封建時代を経験せず、専制時代から一足飛びに、現代へ移行したことを表していると思う。

     

    『サーチナ』(4月22日付)は、「日本人の民度に征服され 尊敬するように、一体なぜ?」と題する記事を掲載した。

     

    中国メディア『今日頭条』はこのほど、日本人の民度が「ドイツ人よりも高い」と紹介する記事を掲載した。

    (1)「記事はまず、「民度は学歴でもお金でもなく『一挙手一投足』から分かるものだ」と持論を展開。言い換えるとちょっとした日常に見られるということのようだ。それまで「メディアの宣伝のせい」で、日本に対して非常に悪い印象を持っていたという記事の筆者だが、クルーズ船での日本旅行で、ほんの半日日本に立ち寄っただけで、日本人の民度に「征服」され、尊敬しないわけにはいかなくなったという。そして、改めて日本旅行を計画して気付いた日本人の民度について紹介している」

     

    (2)「筆者が特に感動したというのは、日本が「人に優しい社会」であることだ。例えば、子どもや車いす利用者に優しく、エレベーターには届きやすい高さにボタンが設置され、公共のトイレには専用のトイレやおむつ替えシートがあり、空港には子どもの遊び場がある。また、喫煙者にも優しいとも指摘している。指定場所でしか喫煙できないものの、外の寒空の下で吸わなくても良いように、屋外には専用の喫煙室が設置されていると紹介。場所によっては加湿器や自販機まであるほど親切で、プライバシー保護のために目線の部分をすりガラスにするなど、利用者の立場になって設計されていると伝えた」

    読んでいただいた通りの記事で、コメントを付ける必要もない。だが、中国人女性が日本旅行で知り合った日本人と結婚して、一ヶ月で中国へ帰りたくなったという記事も紹介したい。

     


    『サーチナ』(4月19日付け)は、「日本人と結婚した中国人女性、1カ月も経たないうちに中国に帰りたくなった理由」と題する記事を掲載した。

     

    記事は、日本への旅行で偶然知り合った日本人男性と縁があって結婚に至ったという一人の中国人女性について語っている。彼女が日本で始めた結生活は、当初想像したものと全く異なり、順風満帆とはいかなかったとしている。

     

    (3)「日本で生活して初めて「旅行で訪れた際に感じた日本の清潔で心地良い環境は、全て地元住民の払う自己犠牲のうえに成り立っている」ことを知ったという。この中国人が一番苦労したのも「ごみの分別」であり、曜日ごとに決められた種類のごみを指定された時間に出すというのは決して簡単なことではないと主張した。中国にも指定のごみ捨て場はあるが、いつ、どの種類のごみを捨ても良く、分別に対しても厳しい決まりはない場合が多い。ゆえに、中国人が日本のごみの分別や回収の細かなルールを突きつけられると辟易してしまうというのも理解できるだろう」

     

    中国では、日常生活でルールを守る習慣が余りないことだ。日本では、子どもの頃からそういう訓練を受けている。中国と日本の違いは、まさにここにある。封建時代を経験した日本と経験しないままに現代を迎えた中国の差である。民度の高さ云々は、歴史の発展がもたらした一断面と言える。


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    米中通商協定は、署名を待つばかりの段階を迎えたようである。USTR(米通商代表部)のライトハイザー代表は、すでに日米協議に席を移した。このことが、間接的に米中貿易戦争の終結を伝えている。

     

    激しいやり取りがあった米中通商協議が終わった後、米中双方は従来通りの投資スタンスに戻るだろうか。米企業から、「10年間は不可能」という意見が出ているほど。なかなか元の姿には戻らないという予測である。それどころか、貿易戦争中に始まったサプライチェーン再編成で、中国から生産拠点の移転が始まっている。

     

    米中貿易戦争の裏には、米中の覇権問題が絡んでいる。中国が、米国の覇権を奪取すると宣言した以上、これからも米国はことあるごとに中国へ厳しく対応するだろう。こうなると、米中間の貿易トラブルは今後とも起こりうる。そのたびに、米国側から関税引上げのペナルティを持出されるだろう。米国企業は、こうしたリスクを回避すべく対中国投資を見合わせ、他地域での生産を始めると見られる。

     

    中国経済は現在、不動産バブルに伴う過剰債務を抱えている。この苦しい段階で、サプライチェーン再編成が起れば、「世界の工場」というこれまでの地位する失いかねない事態だ。米国の大手IT企業は、脱中国の動きを見せている。中国が、米中貿易戦争で払う代償は余りにも大きいことがしだいに判明するだろう。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月22日付け)は、「米中企業の凍えた投資 通商合意でも遠い春」と題する記事を掲載した。

     

    米中貿易摩擦の解決を目指した交渉は現在、合意案の作成段階に入っている。合意が成立すれば、中国に進出している米企業の待遇が改善され、農産物やその他の米国産品に対する中国の買い付けが増えるはずだ。しかし、混乱する米中双方の企業は、かつて活況を呈していた両国間の投資活動の性急な再開には慎重になっている。

     

    (1)「対中投資を専門に扱う法律事務所、ハリス・ブリッケンのマネジングパートナーであるダン・ハリス氏は、『米中間の合意がどんな内容になるにせよ、両国の誰もが“ただの冗談だったんだよ”と言うようには決してならない』と指摘。『関税、逮捕、脅し、リスクの高まりなどが企業に与えた影響は消え去ることはない』と語った」

     

    米中は最後に握手して協定書に署名するが、相互不信の念は早急に拭えない。

     

    (2)「ピーク時の2016年には600億ドル(約6700億円)だった米中間の投資額は、昨年はわずか190億ドルに落ち込んだ。こうした減少をもたらした要因は貿易紛争だけではない。中国政府は資本流出に歯止めをかけている。一方で米当局は中国企業に対し、国家安全保障上の懸念を抱いてきた。対米外国投資委員会(CFIUS)は、中国側を戦略的に優位にする可能性がある米企業への投資を阻止したり、解消させたりしてきた。その対象にはソーシャルメディア企業も含まれている」

     

    米国は、安全保障上の理由から中国資本への警戒観がきわめ強い。対米外国投資委員会(CFIUS)によって、一々チェックする手はずとなっている、

     


    (3)「貿易戦争の停戦が視野に入ってきたとはいえ、ビジネス界には依然として不透明感がある。在上海米商工会議所が2月末に行った調査では、会員企業の65%が米中の緊張関係が企業の長期戦略に影響を及ぼしていると回答。4分の1近くは中国への追加的な投資を遅らせていると述べていた」

     

    在上海米商工会議所の調査では、米中関係がこれからも緊張すると見ている。中国への追加的投資に25%の企業が慎重である。

     

    (4)「カリフォルニア州ポモナに本拠を置くシンプラスは、四川省の成都から素材を調達しており、中国にオフィスを構えているほか、現地で複数の豚革なめし工場と提携している。シンプラスの顧客の一部は、関税を回避するため、使う素材を中国産の豚革からパキスタン産のラム革に切り替えた。同社も競争力の維持と将来の関税回避のため、ベトナムのサプライチェーンへの投資を検討し始めた。米アパレル・履物協会(AAFA)のリック・ヘルフェンバイン会長は、シンプラスのような企業が直面する事態が貿易摩擦を象徴していると指摘。貿易摩擦が、『サプライチェーンを変えさせた。少なくとも10年間は元に戻らないだろう』と語った」

     

    今回の米中貿易戦争で、中国が一方的に被害を被った。ユーザーが、仕入れ先を中国から他地域へ変えてしまったことだ。一度、移ってしまった取引先は簡単に戻らない。ビジネスとは、そういうものなのだ。世界の工場と豪語してきた中国が、はたと気付いたら、顧客が離れてしまっていた。習近平氏の強気が招いた大失策である。


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