勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    現代自は、系列の起亜自を含めれば81%の国内シェアを持つ断トツ企業である。だが、それは上辺だけだ。営業利益率は両社で2%台という、見るも哀れな姿に落込んでいる。高賃金で利益を食われ、研究開発費に資金を投下できない「その日暮らし」経営である。まかり間違えば、「ゾンビ企業」になりかねない事態になっている。

     

    そのSOS企業が、ソウルで超高層ビルを建設するというのだ。もともと、この土地を購入する時から「高価な買い物」とされて話題を提供してきた。そこへ、ついにビルを建設する。だが、研究開発費支出もままならぬなかで、新ビル建設とは「?」である。

     

    『朝鮮日報』(2月14日付)は、「危機の現代自動車、ビル建設に4兆ウォンを使っている場合か」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「ソウル市は現代自動車グループの新社屋となるグローバルビジネスセンター(GBC)や永東大路複合開発など「蚕室国際交流複合地区開発」に今年7月にも着工するという。このプロジェクトは現代自がGBCの建設許可を得る見返りに支払う公共寄与金17000億ウォン(約1700億円)がシードファンドとなる。現代自がくわ入れを行わなければ、スタートを切ることができない。朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長は、このプロジェクトによって期待される雇用創出を業績として残したい構えだが、それを可能にするには、現代自が今後23年に3兆-4兆ウォンを支出しなければならない」

     

    現代自が、この敷地を高値で購入したこと自体が経営的には間違いである。トヨタも日産も本社ビルは、都心の一等地にあるわけでない。かつて、日産本社が銀座にあることで無駄な経費がかかると批判されたものだ。今は、発祥の地である横浜へ移転している。トヨタは、ご存じの愛知県下にある。製造業が、派手な一等地に本社を持つ必要がない。

     

    現代自は、ソウル市長の圧力に負けて新本社ビルを建設するのだろう。だが、経営立て直しには心機一転して、売却するぐらいの気構えでなければ再建は覚束ない。労組にもそのくらいの決意のほどを見せるべきである。

     


    (2)「韓国の自動車産業が直面する状況を見ると、現代自が超高層ビルを建てるのにそれほど多額の資金を使うべきなのかという懸念が生まれる。社内の一部にも「今はビルを建てるのにカネを使っている場合ではない」との声があるという。現代自は昨年、営業利益が47%、純利益が64%それぞれ減少した。生産能力を年181万台に増やした中国工場の稼働率は44%にまで低下した。四川工場の昨年の生産台数はわずか12000台だった。事実上工場は稼働停止状態だ。今年に入って回復の兆しが見える米国市場では関税爆弾が山積みだ」

     

    現代自の経営は危機的状況だ。昨年の現代自・起亜の統合営業利益は2.4%。2011年の営業利益率(9.5%)と比較すると4分の1程度まで落込んでいる。トヨタ自動車の営業利益率(7.9%、昨年7~9月期基準)と比較しても収益性が非常に低い。現代車が3000万ウォンのソナタを1台売った場合72万ウォン(約7万2000円)の利益を得るとすれば、トヨタは同じ車を売っても平均的に237万ウォン(約23万7000円)の利益を得ている。

    現代自は、韓国では断トツの存在だが、国際的に見れば「ゾンビ候補」にまで成り下がっている。この際、彼我の競争力の差を考えれば、「田舎大名」で満足している場合でない。

     

    (3)「現代自の人件費は世界でも最も高い部類に入る。研究開発費はトヨタ、フォルクスワーゲン、GM、フォードなどライバル企業の3分の1から4分の1にすぎない。電気自動車市場は既に中国が先頭を走っている。本業に全力を傾けても危機を克服できる保証はないのに、政治的な要求まで重なり、企業に負担をかけている」

     

    現代自のR&Dは、同業の3分の1から4分の1にすぎない。これで、国際的な競争に勝てるはずがない。新ビルが、現代自の「墓標」にならぬよう、ここは思い切って建設を取り止め、土地を売却してR&Dに振り向けるべきだ。


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    日韓関係は、最悪事態に突入している。韓国国会議長の問題発言をめぐって、日本政府は5回も「取消しと謝罪」を要求している。国会議長は拒否しており、韓国政府もわれ関せずである。韓国外務省には、文政権によって「日本通」がすべて追放されてしまい、水面下での交渉も不可能だ。北朝鮮と話をしているようなものである。

     

    これを見かねた米議会が超党派で動き出した。

     

    米上下院の共和・民主両党議員たちが12日(現地時間)、「米韓同盟と米日同盟は重要であり、米韓日の三角協力も必須だ」という内容の超党派の決議案を発議した。米上下院がこうした内容の決議案を同時に発議するのは異例とされる。

     

    『朝鮮日報』(2月14日付)は、「米国の韓日仲裁努力に消極的な韓国与党、日本の対米ロビーを疑う声も」と題する記事を掲載した。

     

    米議会が12日発議したのは『共通の利害を追求するための米韓・米日同盟と米韓日共助の重要性に対する議会の認識』という決議案だ。下院ではエリオット・エンゲル下院外交委員会委員長=民主党=とマイケル・マコール下院外交委員会共和党幹事が、上院ではコーリー・ガードナー上院外交委員会東アジア太平洋小委員会委員長=共和党=とロバート・メネンデス上院外交委員会民主党幹事らが発議した。

     

    (1)「決議案には、「米韓日3カ国の政府と国民は自由と民主主義、自由市場に対する共通の利害と個人的な友情を共有している」「米韓日は世界の挑戦に立ち向かう必須のパートナー」と書かれている。特に、「米韓・米日同盟は北朝鮮の脅威への対応を含めたアジア地域安定の基盤」「米韓日3カ国は北朝鮮の大量破壊兵器の脅威やミサイル拡散、違法行為に共同で対抗する」としている」

     

    (2)「米議会のこのような動きは、今月27日と28日に行われる2回目の米朝首脳会談を控えている状況で韓日の対立が続けば、北朝鮮非核化に必要不可欠な韓米日三角協力にヒビが入りかねないという懸念が反映されたものと見られている。ナンシー・ペロシ米下院議長も文喜相国会議長に会い、「最近の韓日関係悪化を憂慮している。問題が早急に解決するよう望んでいる」と語った。

     

    韓国政府は、外交の主眼をすべて北朝鮮に向けている。対日関係悪化が、韓国の安保体制にマイナスになるという認識はゼロである。すべて、敵か味方で割り切る韓国流の価値観に立てば、「北朝鮮は味方、日本は敵」という位置づけであろう。米議会の決議案は、その矛盾を示唆しているが、韓国「86世代」はその意味を理解できないのであろう。朝鮮戦争を仕掛けたのは北朝鮮である。日本は、米軍の後方支援基地になった。その日本に、悪態をついて「敵視」している。不思議な感覚の国である。

     

    (3)「与党側は米国の韓日確執仲裁努力に乗り気でない雰囲気だ。文喜相国会議長はペロシ下院議長と会談後の特派員懇談会で、(「天皇(原文は日王)は慰安婦問題について謝罪すべきだ」という自身の発言に安倍晋三首相ら日本政府が撤回を要求しているが、)「謝る事案ではない」と一蹴した。その上で同国会議長は「私が言ったことは日ごろからの持論」とも言った。与党・共に民主党の洪永杓(ホン・ヨンピョ)院内代表も13日、国会で「(文喜相国会議長の発言は)妥当な要求だ」と話した。共に民主党のある関係者は、米議会決議案について「日本が米国に『韓国をちょっと懲らしめてほしい』とロビー活動をしたのではないか」と陰謀論を提起した」

     

    米議会が、上下両院で同時に同じ議題の決議案を発議したのは異例である。韓国が、日本に対する「攻撃」を仕掛けた背景は、すべて文政権の反日政策にある。日本のなすべき点は、国会議長発言に対して「取消しと謝罪」を求め続けることである。絶対に途中でうやむやにしてはならない。これによって、韓国政府の反日の動きを食い止めるべきである。今後、韓国政府が日本へ「頼み事」を持ち込んでも、「取消しと謝罪」を盾に拒否することだ。

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    ファーウェイ(華為技術)任CEOは、「我が社は法律を守って正々堂々とビジネスをしている」と記者会見で胸を張った。実は、その裏で贈賄工作をして製品の売り込みをしていたことが判明した。

     

    『大紀元』(2月13日付)は、「ファーウェイ、贈賄など世界21カ国で捜査―米VOA」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)はアフリカやアジアなど世界21カ国で、贈賄や政治的腐敗の疑いで捜査を受けた。米『ボイス・オブ・アメリカ』(VOA)が11日に伝えた。報道によると、アフリカのアルジェリア政府は2012年、ファーウェイの幹部が贈賄罪で有罪判決を受けた後、同国政府の通信関連入札から同社を排除した。ザンビアでも、数百万ドル規模の農村部移動通信基地局のプロジェクトで贈賄の容疑で現在同国政府からの調査を受けている。南太平洋に位置する島国、ソロモン諸島では2017年、ファーウェイがオーストラリアまで繋ぐ海底光ファイバー・ケーブル敷設契約の取得のため、同国与党に約525万ドル(約5億8051万円)の選挙資金を提供した」

     

    世界21ヶ国で贈賄工作をしてきたとは驚きである。製品に自信があれば、こういう汚い手を使わずにきただろうが、いかにも中国ビジネスという感じだ。政党への贈賄では、後のパラグラフにも出てくるように日本円で「億単位」である。札ビラを切って受注をかき集めてきたのだ。

     

    (2)「ファーウェイ側は、贈賄などの容疑について否定しているが、米シンクタンク『ヘリテージ財団』のアフリカ問題専門家であるジョシュア・メサーベイ氏は、ファーウェイはアフリカで腐敗行為などを繰り返してきたとVOAに対して主張した。米ジョージ・メイソン大学アントニン・スカリア・ロースクールの国家安全研究所研究員、アンディー・カイザー氏は2018年6月米議会の公聴会で、『過去12年間、ファーウェイとZTE(中国通信機器大手の中興通訊)は腐敗行為で21カ国の政府に捜査、または有罪判決を受けた』と述べた」

     

    21ヶ国とは、次のような国である。

     

    アルジェリア、ガーナ、フィリピン、マレーシア、モンゴル、ノルウェイ、ソロモン諸島パプアニューギニアなど、アフリカ、欧州、アジア、オセアニア各国だ。

    ファーウェイは、中国国内でさえ反腐敗取り締まりの対象であるという。2017年、中国当局はファーウェイの国内消費者向け事業の幹部を収賄罪の容疑で逮捕した。見境がない贈賄企業である。

     

    (3)『VOA』は、ファーウェイはプロジェクトの契約や他のビジネス的優位性を取得するために、アフリカやアジアの途上国の政府や政党に対して直接に贈賄や不正献金を行ったとした。アルジェリアでは、ファーウェイとZTEの幹部が、国家通信事業者の元幹部1人と実業家1人にそれぞれ1000万ドル(約11億563万円)を贈賄した。2012年、同国の裁判所は収賄の罪で2人に対してそれぞれ懲役18年を言い渡した。また、ファーウェイとZTEの幹部に対して贈賄罪で懲役10年を言い渡した。同時に、アルジェリア政府は、ファーウェイとZTEを、2年内の公的入札への参加を禁止した」

     

    米国政府は、ファーウェイがこういう反倫理的企業である以上、危険視したに違いない。ファーウェイは、身から出たサビである。中国政府の指示を受けて、スパイ活動の片棒を担ぐことぐらい、容易に想像できるのだ。ファーウェイの歩くところすべて贈賄とは、中国政府のやっていることと余りにも酷似しているから驚くほかない。


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    中国政府高官といえば、記者会見でも平然と「白を黒」と言いくるめる話術を持っている。このパターンとは全く異なる「誠実発言」が注目されている。次の発言である。

     

    中国商務省高官は12日、「中国の消費の伸びが今年さらに鈍化する公算が『非常に大きい』との認識を示した」(『ロイター』2月12日付)

     

    この記事を見た瞬間、「エッ」という驚きの声を上げるほどであった。中国経済がついに迎えた断末魔でもあるのだ。中国の二大高額商品は、住宅と自動車である。GDPに占める比率は、住宅25%、自動車10%である。この二つが、ついに変調を来たしている。

     

    『大紀元』(2月13日付)は、「中国当局、経済失速認める世論に合わせるためとの指摘も」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国当局と中国政府系メディアがこのほど、今年の中国経済が一段と失速すると公言した。その真意について憶測が広がっている。中国商務部(商務省)の王斌・市場運行司副司長は12日に開かれた2018年商務工作関連会議で、『中国消費市場における圧力が強まっている。今年の個人消費は一段と減速する可能性がある』と述べた。消費動向を示す小売売上高は2018年に9%増となった。伸び率として15年ぶりの低水準となった」

     

    中国当局は、もはや実勢悪を隠せなくなって情報をオープンにしているのであろう。

     

    (2)「中国メディアの報道では、王斌副司長は、昨年小売売上高の不振は自動車販売と住宅市場の低迷に関係すると示した。中国紙『証券日報』(12日付)によると、2019年2月12日まで、上海と深圳株式市場に上場する自動車メーカーのうちの16社が2018年度業績報告を公表した。なかに、「マクロ経済成長の減速、米中貿易戦、消費者心理の冷え込みの影響を受けて」、うちの12社が収益の減少や赤字拡大などを示した。自動車メーカー、吉利汽車や東風汽車などは今年の販売目標を、昨年の水準から引き下げて設定した」

     

    国内自動車メーカーも軒並み業績不振である。16社中、12社が減益や赤字拡大などに陥った。理由に、「マクロ経済成長の減速、米中貿易戦、消費者心理の冷え込みの影響を受けて」などを上げているという。この、状況では自動車取得税(10%)の減税(幅は未定)があっても回復は難しいであろう。

     

    (3)「また、『中国証券報』は、中国投資銀行、中国国際金融(CICC)の統計を引用し、旧正月の大型連休中、上海や南京など17の大中都市の新築住宅販売面積は前年同期と比べて56%減少したと伝えた。中小都市の住宅市場も不調だという。CICCの統計によれば、今年11日から22日まで、60の中小都市の新築住宅販売面積は前年同期比8%減となった。前月比では30%減。不動産開発企業の販売実績も低迷しているという。住宅市場調査会社の克而瑞が提供する月別統計では、中国トップ10社の不動産開発企業の1月の売上高は15%減少したという」

     

    旧正月の大型連休中、上海や南京など17の大中都市の新築住宅販売面積は、前年同期と比べて56%減少した。高値の住宅を購入しても、ローン支払いで難儀するので慎重になっているのだろう。新年に入って、ムードががらりと変ってきた。中国トップ10社の不動産開発企業の1月の売上高は15%減少したという。ついに来るべきものが来た感じだ。不動産バブル崩壊への第一歩。金融市場は、これより早くつまずいている。これが、住宅市場へ波及したもの。

     

    (3)「国営新華社通信傘下の『経済参考報』は11日、トップ一面に評論記事を掲載した。『今年中国経済が引き続き下振れ圧力に直面する。このため、13月期のGDP伸び率は6%まで下落するだろう』と1990年以来の最低水準になると示唆した。同評論記事は、すでに22の省・市政府が今年のGDP成長率目標を引き下げたことにも言及した。うち半数の地方政府は、GDP成長率目標を6%に下方修正したという。また記事は、今年1月の製造業購買担当者指数(PMI)が昨年12月に続き、景気拡大と悪化の分かれ目である50を下回ったことは、中国経済を支える製造業の不振局面が続いているのを浮き彫りにした、と主張した」

     

    1~3月期のGDP成長率は前年比6.0%まで下落するとの予測が国営メディアに登場した。これは、改革派が経済政策の実権を握った証かも知れない。民族派が後退したとすれば、習近平氏の勢力関係にも影響があると見る。実態はどうか。

     

    (4)「中国当局が景気悪化を公に認めた理由について、カナダ在住の中国人評論家の文昭氏は、米『ラジオ・フリー・アジア』に対して『中国世論に合わせるためだ。多くの中国国民は身をもって経済の悪化を感じている。この状況下で当局が経済指標を水増したら、国民の実感とのギャップが広がり、国民の不満が高まるだろう』と述べた」

     

    中国国民の怒りを買わないように、水増し情報を流すことを止めざるを得ないほど、実勢悪がはっきりしてきたのだろう。


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    けさ、下記の目次で発行(有料)しました。よろしくお願い申し上げます。

     

    一人っ子政策が危機の原因

    10年遅れ日本の後を追う

    人口減が海外戦略を狂わす

    出生率低下による3大問題

     

     

    現在の中国は、建国以来の潜在的な危機を抱えています。出生率の急低下という問題です。過剰人口に悩まされた中国は、1979年~2015年までの36年間、「一人っ子」政策を実施して人口増加にブレーキをかけました。それが、結果として行き過ぎてしまい出生率の急低下を招いています。

     

    人口問題は、一般にはなかなか理解されがたいものです。日本もその轍を踏んでおり、出生率の引上げに躍起となっています。幼児教育から高校・大学の授業料無料化まで、膨大な財政負担によって、日本の発展を支えようという大構想です。

     

    中国の場合、日本よりもはるかにその対策が遅れています。聞き慣れた言葉になりましたが、合計特殊出生率(一人の女性が生涯に生む子どもの数)は、日本が1.4人台です。中国は2015年に1.05人という数字が算出できる関連データを発表以来、その発表を中止しました。それは、合計特殊出生率が1人を割る事態になって、あえて中国の「弱点」を公表するまでもない、という懸念によるものと見られます。

     

    人口は、安定的な社会保障や年金制度の維持という観点から、横ばい維持が理想です。それには2.08人という合計特殊出生率が必要です。日本では、2025年までに1.8人の目標を立て、人口1億人維持を目指しています。中国は現在、合計特殊出生率が1人を割っていると見られます。これは、中国の将来に最大の潜在的な危険要因を抱えたと言えます。

     

    合計特殊出生率は、一国経済の潜在成長率に大きな影響を与えます。人間は、生産の主体であり、消費の主体です。労働力不足はロボットなどが代替できます。ロボットは、消費をしませんので、経済の均衡ある成長に寄与しないのです。経済発展と社会保障充実には、人口の安定的な増加率が欠かせない理由です。

     

    一人っ子政策が危機の原因

    人口が純減状態になれば、年金制度が維持できません。中国のように社会主義を標榜している国家では、年金によって老後生活を保障せざるを得ません。中国は折りに触れ、社会主義の体制的優位性を強調してきた手前、これを裏切ることは共産党の権威を自ら貶める結果となります。その公約は、人口高齢化で働き手が減れば維持できないのです。「一人っ子」政策が、皮肉にも中国共産党の将来を揺さぶる要因になってきました。

     

    中国は、2050年頃を目途にして米国の覇権に挑戦すると宣言しました。米中貿易戦争の裏には、この覇権をめぐる米国の拒否姿勢が色濃く投影されています。中国が、その2050頃に人口動態面で、どのような落込みになっているか。それが、カギを握るでしょう。この問題は後で取り上げますが、現在の国民の平均年齢は、米中ともに37.4歳です。合計特殊出生率は、米国が1.82人(2016年)。中国も公式では1.62人(2016年)としていますが、信憑性に乏しく信頼できません。現実は、1人を割っていると推測されているのです。

     

    米中の平均年齢が現在、同一レベルにあります。かつ、中国の合計特殊出生率が、米国を下回っている点を勘案すると、次のことが予測できます。

     

    1.   中国は、米国よりも早く人口高齢化を迎える

    2.   中国の潜在的成長率は、米国を下回る事態を迎える

    3.   米国は移民社会であるので、移民を受けいれて出生率を引上げる余地がある

     

    このように中国は、米国と比較して不利な状態に置かれています。米国の覇権を狙える人口基盤が存在しないことになるのです。この点は、きわめて重要ですので記憶に止めていただきたいと思います。

     

    中国の普通出生率は2018年、1000人あたり11人を下回りました。1949年の中華人民共和国建国以来、最低の水準となって衝撃を与えました。2018年の出生数は17年比200万人少ない1523万人でした。2年連続の減少で1980年以降では最も少ない出生数になりました。

     

    中国政府系シンクタンクの中国社会科学院は、中国の人口は2029年に14億4000万人でピークに達し、50年までに13億6000万人に減るとの予測を発表しました。これは、生産年齢人口が2億人程度減少する可能性を意味しているのです。中国政府は、2050年頃に米国覇権へ挑戦するという国家目標を打ち挙げました。その時点で、生産年齢人口が2億人も減っており、中国の経済成長率が急減速しているはずです。(つづく)




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