勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国は、今や「オレ様意識」である。向かうとこと敵なしと錯覚している。中国が、インドネシア政府に対し、南シナ海南端の海域での石油・天然ガス掘削中止を要求する異例の書簡を送っていたことが、分かった。『ロイター』(12月1日付)が以下のように報じた。

     

    インドネシアのムハンマド・ファルハン議員によると、書簡は中国の外交官がインドネシア外務省に送付。インドネシアが掘削を行っている海域は中国の領海であり、掘削を中止すべきだと主張しているという。同議員は「掘削は中止しないと断固たる返答をした。わが国の主権だ」と述べた。関係筋によると、中国側は繰り返し掘削の中止を要求している。

     

    問題となっているのは、南シナ海南端の海域。インドネシアは「海洋法に関する国際連合条約」の下でインドネシアの排他的経済水域(EEZ)に該当するとして、2017年に「北ナトゥナ海」と命名した。中国はこの命名に反発。同海域は中国が領有権を主張する「九段線」の水域内にあると訴えている。オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は2016年、「九段線」に法的な根拠がないと認定した。

     


    中国は、このように法的に領有権のないインドネシアのEEZまで干渉する異常な行動を取っている。国際法を無視して「やりたい放題」の振る舞いである。天誅が加えられても当然という仕儀だが、その適役が現れた。

     

    『ロイター』(11月30日付)は、「中国、自信過剰で誤算の恐れー英MI6長官」と題する記事を掲載した。

     

    英国の対外情報機関、秘密情報部(MI6)のムーア長官は11月30日、長官として初の演説を行い、中国政府は自信過剰のあまり、国際情勢を見誤る恐れがあると指摘した。

     

    (1)「中国政府は、西側諸国のもろさに関する自らのプロパガンダを信じ、米国政府の決意を過小評価している」とし、「中国が自信過剰のあまり誤算をするリスクがあるのは、紛れもない事実だ」と述べた。ムーア氏は「中国の台頭によって影響を受けた世界に適応することが、MI6にとって最大の優先事項だ」と断言。中国が攻撃性を強めている分野の筆頭に台湾問題を挙げ、「必要とあれば武力による解決」を欲しているのは、「世界の安定と平和に対する深刻な挑戦だ」とした。中国は、香港市民から権利を奪い、新疆ウイグル自治区で人権を侵害し、「世界中で公的な言説と政治的意思決定をゆがめようと」しているとも指摘した」

     


    中国が、自信過剰のあまり誤算をするリスクのあることは、多くの西側諸国から指摘されている。「米国衰退:中国繁栄」という間違いである。中国経済は、不動産バブルの鎮火で形勢逆転の様相を呈している。不動産開発需要は、GDPの約25%を占めており、これに代わる産業は存在しないのだ。地方政府は、土地売却収入を財源に繰り入れてきただけに、不動産バブルの鎮火は大きな痛手になっている。中国経済は、これから急坂を下る局面である。

     

    中国が、自信過剰から目覚めないと「第二のソ連」になるリスクを抱えている。習氏は、こういう事態を認識せずに「押せ押せムード」で領土拡大志向を続ければ、痛い目に会うのは時間の問題であろう。

     

    米国は、科学技術でも「覇権国」である。それに同盟国を糾合して中国包囲網を築ける包容性を持っている。あらゆる面で、中国がとうてい及ばない相手が米国である。太平洋戦争開戦前の日本も、米国の国力の大きさを認識していた。中国は、そういう客観的な認識もなしに米国を挑発することは余りにも危険である。

     

    『ブルームバーグ』(12月1日付)は、「米英豪の安全保障枠組み中国への「決定的取り組み」ーキャンベル氏」と題する記事を掲載した。

     

    米国家安全保障会議(NSC)でインド太平洋調整官を務めるカート・キャンベル氏は1日、米英豪3カ国の安全保障協力の枠組みである「AUKUS(オーカス)」について、中国の行動に対する「決定的な取り組み」に相当すると説明した。

     

    (2)「キャンベル氏はシドニーを本拠とする国際政策シンクタンク、ローウィー研究所主催のイベントで講演し、中国による近隣諸国・地域への挑発的行動や、同国がオーストラリアに仕掛けている「経済戦争」の結果、ほんの7~8年前であれば疎遠になるだろうと予想された同盟関係が緊密になったと指摘した」

     

    中国の無謀な行動が、海外で次々と中国への反旗を翻す要因になっている。実に下手な外交であり敵をつくって歩いているのだ。中国国内では通用する「威嚇」「脅迫」が、海外では反感を持たれて逆襲要因になっている。豪州への経済的制裁が、「AUKUS」という軍事同盟を生み出した理由である。

     


    (3)「AUKUSについては、「中国の特定の行動や政策を巡り観察されるものへの明確な懸念であると同時に、われわれが自分たちの将来に関して役割を担い、立ち上がる決意」の表れだとし、「私はこの成果を非常に誇りに思い、関係する全ての国々にとって決定的な取り組みだと考える」と語った。豪州による原子力潜水艦配備も支援するAUKUSは、中国がインド太平洋で軍事プレゼンスを拡大する現状にあって、サイバーや人工知能(AI)を含む分野で、地域の主要同盟国間の防衛措置協力の強化に当たる。キャンベル氏はまた、米国が「中国との競争の初期段階」にあり、米国と同盟国が「戦略的環境」にどうアプローチするかにおいて、安定的かつ断固たる姿勢であることが重要だと述べた

     

    下線部は、米国の中国に対する断固たる決意を示している。中国は、覇権国米国の決意を甘く見てはいけない。自重すべきである。米国には、多数の同盟国が控えている。中国の「単騎出陣」と事情が異なるのだ。

     

     

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    韓国は、新型コロナウイルスの一日の新規感染者数が5000人を超え、過去最多を記録した。海外メディアも一斉に報じている。「K防疫モデル」と自画自賛したが、早すぎた「ウィズコロナ」(規制緩和)によって、高齢者を中心に感染者が激増している。すでに、重症患者ベッドの稼働率は80%をはるかに上まわり、新規感染者は入院待ちの状態になっている。危機的な状態に陥っている。

     

    苦肉の策として、数ある感染者から優先的に重症者ベッド入れる基準を作っている。地震などの災害時には、患者選別が行なわれるが、韓国は「ウィズコロナ」を継続している一方で、患者の選別を行なうのは極めて矛楯した行為である。こうした医療崩壊時には、「ウィズコロナ」の中止こそ優先されるべきだ。政府は、大統領選挙を意識して経済優先を行なっている。この状態では、重症患者激増は不可避である。

     

    『中央日報』(12月1日付)は、「新型コロナ患者で埋まる重症患者室、だれを先に入院させるべきか」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルス感染者が大きく増加し全国の重症患者室がほとんど埋まった。先月29日午後5時基準でソウルの重症患者病床の91%が埋まった。すでに飽和状態だ。日増しにこうした状況が悪化するのは明らかだ。韓国政府が近く大型病院に「重症患者室を追加で確保せよ」と命令するものとみられる。

     

    (1)「強制命令を下しても病床を増やすには限界がある。重症患者室は専門医や専門看護士、装備などが必要で、1日で大きく増やすことはできない。確保するとしても非コロナ重症患者用の重症患者室を減らす方法しかない。一種のゼロサムゲームだ。非コロナ患者の死亡率が上がるほかない。限定された重症患者病床を効率的に使うことが緊急な課題に浮上した。大韓重患者医学会は最近、「災害状況で重症患者の診療は最大限多くの患者の命を助けられるよう運営されなければならない。保健当局・専門学会・市民社会が合意する重症患者の入退院指針を至急用意しなければならない」と促した」

     

    韓国医学界は、「ウィズコロナ」の中断を訴えるべきである。そうした行動をしないで、政府の無謀な「ウィズコロナ」に追随している。いまこそ、医療倫理の立場に戻る時期である。

     


    (2)「入院対象者が同時に発生する時に、だれを先に入院させるのか、優先順位が最も高い人は

    ★発病前のように活動が可能だったり活動は制限されるが軽い労働ができる場合

    ★正常健康患者や軽い全身疾患(肥満など)患者

    ★1個の臓器不全

    ★予測生存率80%以上――にすべて該当する人。挙動能力、問題が生じた臓器の数、予測生存率などを考え優先順位が決まる」

     

    これら4条件に該当する患者は、優先的に入院させる。やはり、予測生存率80%以上が決め手になるのか。人間の生命の価値を値踏みしている感じだ。

     

    (3)「ソウル峨山病院呼吸器内科のコ・ユンソク諮問臨床教授は、「平時には病院に来た順にしなければならないが、現在のような危機状況では最大限多くの人を生かし、治療後の期待寿命を増やし、治療後に復帰させられる人から優先的に治療しなければならない。基礎疾患が少なく健康な人が優先。延命医療中断基準をもう少し拡大して適用し、これに従う医療関係者を処罰してはならない」と話す。重症患者医学会はこうしたプロトコルを政府に建議したが受け入れられないことから、1日に記者会見を行い改めて指針制定を促す予定だ」。

    「基礎疾患が少なく健康な人が優先」とは、なんとも哀しい生命救助の線引きである。となれば、高齢者は最初に「死亡宣告」される運命である。

     


    (4)「大韓重症患者医学会のパク・ソンフン広報理事(翰林大学聖心病院呼吸器内科教授)は、「新型コロナウイルス感染者のうち回復の可能性が低く心肺蘇生術拒否要請書(DNR)などを所持した患者の重症患者室優先順位を後回しにすべき。生存率が高い患者を先に治療するよう優先順位を決めてほしいと政府に提案する」と話した。優先順位1~4位のうち4位だけでも順位を遅らせようという意だ」

     

    優先順位4位は、▽脳・心臓・肺などの末期臓器不全▽重症外傷・重症やけど(予測死亡率90%以上)▽大量脳出血や重症認知症など深刻な脳機能障害▽期待余命6カ月未満の末期がん▽過去3カ月間に心筋梗塞・脳梗塞などを患ったり、重症外傷や頭蓋腔内出血などで生存が難しい患者▽予測生存率20%以下――の6種類のうちひとつでも該当する場合をいう。

     

    これに該当する患者は、入院優先度から外すという。むごい話だ。「ウィズコロナ」を継続しながら、助かる可能性の低い患者は切り捨てるという。人命尊重の欠片もない話である。これが、進歩派を名乗る政権のやることか。

     

    (5)「先進国はこうした基準を適用している。昨年国際ジャーナル「バイオエシックス」に発表された論文によると、米国の新型コロナウイルス患者優先順位勧告基準は最も多くの人に利益が行くようにし、医療体系を維持することだ。英国やイタリアも同様だ。スイスはできるだけ多くの命を助けることだ。だがこの基準を決めるとしても適用するのに困難が少なくないという指摘が出る。延世大学医療法倫理学科のイ・イルハク教授は「『私が先に登録したにのなぜあの人が先なのか』『まだ完全に治っていないのになぜ退院させるのか』という抗議に耐えられるかわからない。療養病院で悪化した高齢の感染者を重症患者室に送ることができなくなることもあり、こうした問題は少なくない」と指摘した。イ教授は「在宅療養中に悪化した患者の転院、療養病院患者の転院など腹を割って話さなければならない」と付け加えた」

     

    事態がここまで悪化しながら、新規感染者を止める方法を議論しない。何とも矛楯した話である。災害時の患者発生とは、状況が全く異なるのだ。今の、コロナ感染者急増は人災である。自然災害時の患者発生と同列に扱うべきでない。

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    野党第一党、立憲民主党の新代表に泉健太氏が当選した。代表選の投票状況を見ると、興味深い結果が浮かび出てきた。これまでの党内主流のリベラル派が後退して、保守派が指導権を握ったことである。具体的には、安全保障政策の確立である。旧日本社会党時代から堅持してきた「消極的防衛論」が、「積極的防衛論」を議論できる基盤ができたということだろう。

     

    米国を見ても分かるが、二大政党において政権交代が頻繁行なわれる背景は、安全保障政策において「水と油」の関係でないことである。有権者は、その点で安心していられる。こういう側面を無視して、「政権の受け皿になれる野党」と言っても無意味である。泉氏が、立民代表に選ばれたことは、自民党も褌の締め直しを求められる。

     


    『日本経済新聞』(12月1日付)は、「
    泉氏『野党共闘修正探る』立民代表選、保守票を集約 共産との合意『現在はない』」と題する記事を掲載した。

     

    立憲民主党の代表選は中道から保守系の議員が支持する泉健太氏が勝利した。決選投票でリベラル系のグループを基盤とする逢坂誠二氏との一騎打ちを制した。来夏の参院選に向けて党内をまとめながら共産党との共闘路線の修正を探る。

     

    (1)「泉氏は1回目の投票で国会議員と公認候補予定者の計286ポイントのうち96ポイントを得た。他の3候補は50~70ポイント台だった。党員・協力党員およそ10万人の票でも3割強を取り首位だった。地方議員票のみ143ポイントのうち48ポイントを取った逢坂氏と僅差の次点だった。決選投票で泉氏が得た国会議員のポイントは1回目での小川淳也氏の分を上乗せした数字に近い。両氏は民放番組で共産党との共闘で失ったものがあるかと聞かれて「ある」と回答した共通点がある。中道から保守の票を集約したもようだ。逢坂氏のポイントは同じリベラル系の西村智奈美氏が1回目で得たポイントを足した水準だった。保守系とリベラル系がそれぞれ泉氏と逢坂氏に分かれて投票した可能性が高い。決選投票のポイントは6割を泉氏、4割を逢坂氏がとった」

     


    立民が、決戦投票で保守系とリベラル系の二つに分かれ、勢力分野が明らかになった。泉氏の当選は、保守系の支持を得た結果である。保守系と言っても、「共産党と連携しない」という程度の話である。共産党の安保政策は、日本の支配的な見解から大きく離れており、この政党との連携は、「選挙対策」という目先利益を狙ったものに映る。

     

    (2)「立民は旧社会党系から保守系まで幅広い立場の議員が集まる「寄り合い所帯」で、原発や安保など政策面の食い違いもある。挙党体制を打ち出したのは、まとまりを欠きやすい状況への警戒ともいえる。参院選に向けて党内調整が必要なのは共産党を含む野党共闘のあり方だ。先の衆院選は候補者を一本化して小選挙区で議席を増やした一方、比例代表でそれ以上の議席を減らした。泉氏は記者会見で共闘路線について「単に継続ということではなく、まず(衆院選の)総括をしなければならない。その中で今後のことは考えたい」と慎重な言い回しで修正をにじませた」。

     

    政策の基本綱領が違う政党が、「当選者を増やす」目的で連携するのは、「野合」という非難を浴びても弁解できないであろう。今回、維新が議席を増やしたのは安保政策で自民党と大差なく、自民批判の「受け皿」になれた結果である。「おこぼれ頂戴」でなく、有権者が安心して一票を託せる立民に脱皮する努力が必要だ。それには、目先の「選挙対策」という小賢しいことを止めるべきだろう。小沢一郎的な発想は時代遅れになった。

     


    (3)「政権交代した場合に「限定的な閣外からの協力」を共産党から得ると9月に合意したことに関しては「衆院選に向けて交わしたものと理解している。現時点で何かが存在しているのではない」と指摘。現在は効力がないとの認識を表明した」

     

    立民と共産党との選挙合意は、文字通り、選挙目的である。その目的が、逆効果になった以上、白紙は当然のことだ。

     

    (4)「自公政権との対峙の仕方は変える意欲をみせる。代表選で「政策立案型政党を目指す」と訴えた。「批判ばかりの野党」というイメージの脱却を意識し、公開の場で官僚らを問いただす「野党合同ヒアリング」をいったんやめるとも提唱した。各党は泉氏が党内をまとめて方向性を示せるかを見極める。国民民主党の玉木雄一郎代表は「共産党との関係がべったりであれば連携は難しい。(新執行部の)判断を見定めたい」と話す。共産党の志位和夫委員長は立民との合意について「わが党は誠実に順守したいし、立民にもそういう立場で対応してもらいたい」と共闘継続を呼びかけた。自民党の茂木敏充幹事長は「共産党との関係を明確にしてほしい」と泉氏に求めた」

     

    立民は、政治ショーを止めて地道な政策立案で自民党と競争することだ。例えば賃上げについて、労働分配率のルール化の提唱をすべきである。付加価値の65%を賃上げファンドにする、といった具体的な提案をすれば、国民の見る目が変わるはずだ。ただ、ストライキで賃上げを勝ち取るという「腕力」に訴える前に、「頭脳」を働かせるべきである。

     

     

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    中国の習近平氏は、最も多感な青少年時代の7年間、毛沢東による「下放運動」によって地方の辺鄙な村へ強制的に追いやられた。横穴が住居という古代人並みの生活を送った辛い経験者である。その習氏が、こともあろうに毛沢東と同じ独裁者の道を歩んでいる。

     

    子どもの頃、親に虐待された人は、自分が親になって子どもを虐待するケースがあるという。これについて、心理学的な解釈が下されている。すわち、「刷り込み現象」というもの。

     

    ある生物有機体に、特定の時期に、特定の刺激によって生じた反応が、反復的な学習・経験・報酬がなくても、その後一貫して生じるようになることがある、というのだ。子どもの虐待は、こういう「刷り込み現象」でないか、と説明されている。習近平氏が、自分の辛い経験を忘れて、今や他人に対して同じ辛いことをさせていても矛楯を感じない。習氏にとっては悲劇だが、中国国民にはさらなる不幸な事態である。



    『ニューズウィーク 日本語版』(11月30日付)は、「
    毛沢東の外交は味方よりも多くの敵を生み出す『唯我独尊』だった」と題する記事を掲載した。筆者は、元外交官の河東哲夫(かわとう・あきお)氏である。

     

    毛沢東の起こした革命はフランス革命やロシア革命、そして現代の「アラブの春」などとも共通し、結局のところ大衆をアジって味方に付けると武力も使って権力を奪取。その後に大衆は置いてきぼり、という基本パターンをなぞっただけだ。中国の場合、置いてきぼりどころか毛沢東の「大躍進」政策の失敗で、何千万人もの大衆が餓死する憂き目を見た。

     

    (1)「毛沢東は少年少女たちを洗脳し、「紅衛兵」という暴力装置に仕立て上げた。彼になびかない者たちは軒並みつるし上げられリンチを受けた。家族同士、反革命分子だと密告し合うこともあったため、中国社会は仁義のないものとなった。そんな文革末期の1976年、筆者は北京を訪れた。くすんだ色の人民服を着た無数の人たちが、薄汚れた自転車に乗って雲霞(うんか)のように広い通りを走っていく」

     


    文化大革命(1966~76年)の10年間は、毛沢東が権力を奪回するための党内革命であった。これが可能であったのは、毛沢東が1945年に「歴史決議」を行なって「永世支配者」の地位を得たからだ。習氏が、これを模して自ら共産党100年の中で3回目の「歴史決議」を行い、「永世支配者」になる資格を得た。

     

    (2)「皆が一様に貧乏なら人はけっこう幸せなものだが、社会主義の国でいけないのは経済を仕切るお偉方たちが特権を貪ることだ。1971年に反毛沢東クーデターに失敗して飛行機で亡命を図った林彪元帥は、モンゴルで墜落死するが、現場に林彪夫人のものと思われる赤いハイヒールが転がっていた。毛沢東の4番目の夫人、江青もその傲慢さとプチ贅沢ぶりで大衆に嫌われていた」

     

    旧ソ連へ亡命をはかった林彪は、モンゴルで墜落死した。その現場には、林彪夫人のものと思われる赤いヒールが落ちていたという。国民は、貧乏暮らしをしていた時、最高権力者夫人は、贅沢が可能であった。この流れは、いまも続いている。現在は、元党幹部クラスの子弟が住宅20~30軒を持っているのだ。赤いヒールどころの話でない。桁違いの贅沢が許されている。

     


    (2)「毛沢東時代は外交も唯我独尊で、アメリカだけでなく同じ共産主義のソ連や日本共産党とも対立し、1969年にはソ連と国境で戦争を起こした。途上国を仲間だと称しつつ、東南アジアなどでは反政府のマルクス主義勢力を支援して影響力を拡大しようとした。その結果、インドネシアでは1965年に数十万人もの中国系住民が虐殺された。毛沢東の外交は、味方よりも敵を増やしたのだ」

     

    毛沢東外交は、敢えて敵をつくるものであった。妥協を知らずに「突撃」したからだ。新疆ウイグルや、チベットは毛沢東の占領政策の結果である。異民族を征服したのだ。これが、毛沢東外交の基本である。

     

    (3)「ほかならぬ習近平は文革時代に16歳から7年間も農村に下放され毛沢東思想を徹底的にたたき込まれたため、そのあたりの機微が分からない。これだけ中国が強くなった今は、アヘン戦争で失った国際的な威信を取り戻すとともに、浮ついた西側文化を国内から一掃する好機だと思っている。それは中国自身にとっても非常に危険なことだ。なぜなら中国経済の足腰は実は脆弱で、外国の資本や技術が引き揚げれば経済は逆回転を始める」

     

    習氏は、毛沢東二世を任じている。具体的な成果としては、領土拡大を基本とし南シナ海進出を確固たるものとする。さらに、台湾・尖閣諸島の攻略を目指している。これによって毛沢東の行なった新疆ウイグルやチベット占領に匹敵する業績にしたいと狙っているのだ。こういう200年も昔の領土拡張意識に最大の価値を置いている当たりに、習氏の時代錯誤を感じる。国民の幸せを第一にする政治ができないのは、毛沢東による「刷り込み現象」の結果であろう。

     

    (4)「加えて、習政権は民営ビジネスへの規制を強めて、その活力を奪ってもいる。国王の強い力の下で政府主導の工業化を実現しようとした18世紀のフランスは、民間活力主導のイギリスに敗れたし、20世紀のソ連の計画経済は国民の消費欲を満足させられずに滅びた。そのことを習近平はどう思っているのだろう? 筆者が外交官だった頃、「毛沢東に洗脳されてマルクス主義のバーチャルな世界が、リアルだと思う文革世代が中国を動かすようになる時が心配だ」と、ある中国の識者も言っていたが、今その時がやって来た。これが世界、そして日本にとって吉と出るか凶と出るか──。中国にとっては、多分凶なのだろう」

     

    韓国では、「86世代」が1980年代の「親中朝・反日米」路線を踏襲している。これと同じで、中国の「下放世代」は毛沢東のバーチャル世界をリアルと思い込んでいる。韓国も中国も硬直的外交である。韓国外交はすでに破綻しかかっている。中国も厳しい「孤独外交」を強いられるはずだ。 

     

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    日本もついに、「オミクロン株感染者」が出た。11月30日、ナミビアから成田空港に到着30代男性が、新たな変異株「オミクロン株」に感染していたことが分かった。国内で確認されたのは初めてである。水際作戦で、食止められるかどうかである。

     

    「オミクロン株」の感染源とされる南アでは、どういう状況なのか。遠隔地だけに日本へ情報は入りくいが、米国の情報収集力によって得られた「オミクロン株」の実態によれば、大騒ぎするほどのことではなさそうである。むろん、詳細な「オミクロン株」の遺伝子分析が終わっていない段階で、軽率な結論は慎まなければならない。だが、状況証拠を見ればそういうイメージが湧いてくる。

     


    南アの保健相は11月26日、オミクロン株に対するワクチンの感染予防効果が低下したとしても、重症化や死亡を防ぐ効果はあるとみていると述べた。科学者や医師によると、南アでは現在、入院患者4人につき3人程度がワクチンを接種しておらず、その他は1回しか接種していないという。これでは、急激な感染拡大に見舞われたのも自然という感じを受ける。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月30日付)は、「南アのオミクロン株感染者、入院急増も重症化は増えず」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」が確認された南アフリカで、感染の中心地となっているハウテン州の入院患者がここ2週間で急増している。ただ、重症化した患者は比較的少ないという。南ア国立感染症研究所(NICD)が明らかにした。

     


    (1)「ハウテン州は首都プレトリアや経済の中心地であるヨハネスブルグを含む。NICDによると、感染拡大が始まったプレトリア周辺では2歳未満の子どもの入院急増も目立つ。ただ、予防的な入院のケースも多いもようだという。NICDの公衆衛生専門家、ワシラ・ジャサット氏は、ここ2週間の全体の入院患者のうち、コロナ感染症と診断された人の割合はこれまでに南アを襲った感染の波の場合と同程度だと述べた」

     

    南アの公衆衛生専門家によれば、「オミクロン株」でコロナ感染症と診断された人の割合は

    これまでのコロナ感染者の割合と変わらないという。予防的意味での入院が増えているので、これが理由で感染者急増と見なされている背景かも知れない。

     

    (2)「世界保健機関(WHO)は先週、南アなどで見つかったオミクロンを「懸念される変異株(VOC)」に指定。NICDのデータは、オミクロンの人体への影響や他のコロナ変異株との違いについての初期の手掛かりを与える形となった。ただ、医師や専門家は、報告された患者数がまだ少ないことや、感染が初期段階であることなどから、他の変異株と比較したオミクロンの深刻さなどについて明確な結論を導き出すことは難しいとしている」

     

    「オミクロン株」は、まだ感染初期のために深刻さなどについて明確な結論を出せないという。現状では、予防的意味で入院した者が増えていることから、外部に誇大報道されている面もあろう。

     

    (3)「NICDのデータによると、ハウテン州では11月27日までの2週間で、1日当たりのコロナ感染による入院者数が平均49人に急増。その前の2週間では、1日当たり平均は18人だった。1日当たりの死者数に変化は見られない。南アでは11月11日に初めてオミクロン感染が確認された。コロナ感染者はそれ以降急増し、1日当たり300人程度だったのが28日には3220人に膨らんだ」

     

    NICDのデータでは、感染者が急増していることになっている。実際は、予防的な意味での入院者がいるというから、「正味」の感染者数把握は困難である。

     

    (4)「ハウテン州を中心としたオミクロン流行は、プレトリア周辺の大学生の年齢層で初めて確認された。一般的に若年層は、高齢者層と比べてコロナ感染で重症化する可能性がはるかに低いため、南アでのデータからオミクロン感染に関する結論を出すことは困難だという。多くの国と同様に、南アでは若年層のコロナワクチン接種率が高齢者層に比べて極めて低い。南アの人口6000万人のうち、ワクチン接種を完了した割合は24%強にとどまる。NICDのジャサット氏によると、ハウテン州で入院したコロナ患者の約4分の1がワクチンを接種していた

     

    下線部の記事については、補足が必要である。コロナ患者の4分の3はワクチン未接種者、残り4分の1は、接種が1回だけで2回済ませていないという。この事実は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月30日付)の別の記事で指摘している。となれば、ワクチン接種を2回済ませ、かつ3回目を受ける先進国では「オミクロン」に感染する確率が下がるであろう。

     

     

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