勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    韓国は、他国との比較を好む習性がある。科挙(かきょ)の国だけに、すべてを試験=点数に結びつけたがるのだ。科挙とは、儒教文化圏の中国と朝鮮の官僚登用試験である。合格するまでは、浪人生活を何年しても構わないという、激烈な競争が行なわれてきた。その代わり合格すれば、一生、「左団扇」の生活が保障された、夢のライフプランである。韓国では今でも公務員試験で、就職浪人は当り前という科挙の伝統を引き継いでいる。何も変わらない社会なのだ。

     

    こういう「競争社会」ゆえに、韓国のGDPランキングが上がっても下がっても大騒ぎするのは致し方ない。ランクが上がれば大威張りする。下がれば、肩を落として落胆する。2019年のOECD(経済協力開発機構)で、韓国の名目GDPランキングが、カナダとロシアに抜かれて10位になったと落胆している。ランキング落ちの中に、将来の韓国経済退潮を予告する大きな意味が含まれているのだ。

     

    『中央日報』(5月27日付)は、「韓国、GDP順位下落し10位日本は?」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「OECDが27日に明らかにしたところによると、2019年の韓国の名目GDPは1兆6421億8000万ドルで、OECD加盟国と主要新興国など38カ国のうち10位を記録した。2018年の8位から2段階の下落だ。韓国の名目GDPの順位が落ちたのは金融危機当時の2008年に12位から14位に下落してから11年ぶりだ」

     

    先ず、基本的なことをおさらいしておきたい。名目GDPは、市場価格で評価された付加価値である。市場価格が上がれば、名目GDPも増える。市場価格が下がれば、名目GDPが減る計算だ。韓国は、2019年の名目GDPランキングが下がった。これは、韓国の市場価格が下がったことを意味する。つまり、経済が不調であったことだ。GDPデフレーターがマイナスである。

     

    物価が下がる経済は、需要不足が原因である。韓国は、需要不足経済であると理解をしなければならない。問題は今後、この需要不足経済が慢性化するだろうと見られることである。この点が、もっとも深刻である。

     

    その理由は、韓国経済が人口動態において、「人口オーナス期」に入っていることだ。人口に占める生産年齢人口(15~64歳)の比率が下がっていること。潜在成長力が下降状態にあるのだ。これをはね返すには、制度的イノベーション推進が不可欠である。だが、これを阻止する大きな勢力が存在している。

     

    韓国の労組と市民団体が阻害要因である。巨大な既得権益集団と化している。イノベーションをストップさせる役回りを演じているのだ。韓国の政治的保守層(経済界)は、制度的イノベーションを実行しようとしても、前記の二大既得権益集団が政治的進歩派(文政権)と組んで阻止役に回っている。韓国経済の将来が、絶望的である理由はここにある。

     

    韓国メディアは、名目GDPランキングが2ランク下がったと嘆いている。一方、この回復策について、なんら提示していないのだ。「果報は寝て待て」というように、努力もせず都合のいいことは起こらない。韓国有権者は、経済問題に無関心である。南北問題や中国関係の改善という政治要因に多大の関心を向けている。霞を食って生きている集団のような振る舞いである。

     

    (2)「名目GDP1位は21兆4277億ドルで米国となった。2位は中国で14兆3429億ドルだった。継いで日本が5兆818億ドル、ドイツが3兆8462億ドル、英国が2兆8271億ドル、フランスが2兆7080億ドル、イタリアが2兆12億ドルの順だった」。

     

    数字が羅列されているだけだ。記者が、書くことがなくて「穴埋め」に書いている感じである。ここで記憶すべきなのは、OECD内のランクでなく、世界ランクを見ることである。世界全体の2018年名目GDPランキングで、韓国は10位であった。11位はカナダ、12位がロシアである。韓国との差は、カナダが80億1000万ドル、ロシアとは631億9900万ドルに過ぎなかった。韓国はいわば、僅差で世界10位であり、いつ、カナダとロシアに抜かれても不思議はない位置である。

     

    韓国の市場価格が下がれば、簡単にカナダとロシアに抜かれるという関係にあった。過去の世界ランクで韓国の最高位は、2004年と05年の10位である。2018年も前記のように10位であった。それが、昨年は12位へ後退している。このことから言えるのは、世界10位が韓国の最高位であって、今後はズルズルと下がるに違いない、という点である。

     

    その理由は、2つある。

    1)生産年齢人口比が、2014年の73.41%がピークである。2018年は72.61%と微減だが、最近の合計特殊出生率「0.9」は、世界最低記録であることから見て、これから急カーブで下落する。

    2)労組と市民団体が、一段と既得権益集団となって制度的イノベーションの阻害要因になることだ。経済成長を罪悪視する風潮をつくりだし、経済成長よりも南北統合を優先する運動を始めるだろう。文政権を支える与党「共に民主党」の隠れた党是でもある。韓国経済が、こういう状態である以上、発展する希望は皆無なのだ。

     

    テイカカズラ
       

    米中が対立を深める中、さらに紛糾すると見られる判決が、カナダ上位裁判所で下った。中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の副会長兼最高財務責任者(CFO)の孟晩舟被告に対する裁判で、米国側に有利な判決が出たからだ。今回の判決で、孟被告の米国への身柄引き渡しの可能性が高まったと予想されている。中国は、これまでカナダ側へ数々の嫌がらせをして、孟被告の釈放を実現させるべく圧力を加えてきた。カナダ裁判所は、これに屈せず、法律に従い米国への引き渡し判決を下した。

     

    米国の要請で、カナダ当局が2018年12月に逮捕し、保釈中の孟晩舟被告の米国への身柄引き渡し可否の本格的な審理が、今年1月20日に始まった。裁判は、秋まで続く日程が組まれていた。判事は、これより早く判断を下し孟被告釈放の可能性も取り沙汰されていた。こういう事前の予測は、完全に外れた。

     

    『東亜日報』(5月29日付)は、「ファーウェイCFO、米への身柄引き渡し有力、米中対立の新たな雷管に浮上」と題する記事を掲載した。

     

    カナダ・ブリティッシュコロンビア州の上位裁判所のヘザー・ホルムズ判事は27日、「米国の犯罪人引き渡し要請が、カナダの法律の要件を満たした」と明らかにした。米国で起訴された孟被告の容疑が、カナダでも犯罪と認定されたということだ。

     

    ファーウェイの創業者、任正非氏の娘である孟被告は、米国の要請で2018年12月、カナダのバンクーバー空港で逮捕された。米国は、孟被告が対イラン制裁を破ってイランと装備を取り引きする際、金融会社をだました容疑で起訴し、カナダに犯罪人引き渡しを請求した。任氏と最初の妻の孟軍氏の間に生まれた孟被告は、有力な後継者とされている。

     


    (1)「被疑者を犯罪人引き渡し条約によって請求国に引き渡すには、容疑が被請求国でも犯罪と認められなければならないという「双罰性」の要件が、孟被告の裁判の核心争点だった。弁護人側は、「カナダにイラン制裁関連法がない。容疑はカナダで犯罪にならない」と主張した。しかしカナダ検察は、「詐欺容疑はカナダの現行法にも抵触する」と対抗し、裁判所がこれを認めた

     

    孟被告は米国の対イラン制裁を逃れるため、ファーウェイとイランの子会社との関係について2007年ごろから金融機関に対し虚偽の説明を行ったとして、銀行詐欺などの罪で米国が起訴した。米国は、カナダとの間で結ぶ犯罪人引き渡し条約に基づき引き渡しを求め、中国は釈放を求めてきた。

    弁護人側は、「カナダにイラン制裁関連法がない。容疑はカナダで犯罪にならない」と主張した。しかしカナダ検察は、「詐欺容疑はカナダの現行法にも抵触する」と対抗し、裁判所がこれを認めたものだ。

     

    (2)「米商務省は5月15日、米国の技術を活用する海外企業がファーウェイに半導体を供給できないようにするなどファーウェイに対する制裁を強化し、中国はこれに反発している。このような時に出た今回の判決に、駐カナダ中国大使館の報道官は電子メールの声明を通じて、「強い不満と断固たる反対を表明する」と明らかにした。そして、「米国の引き渡し要請はファーウェイなど中国の先端技術の企業を倒すための試み」とし、「カナダが米国と共謀してこれを代行している」と主張した」

     

    弁護側の主張には、かなりの無理があった。米国の違法性が、カナダでも違法として問えるかどうかが争点のはずである。中国は、そういう法理論を外し、「米国の引き渡し要請はファーウェイなど中国の先端技術の企業を倒すための試み」という感情論で対抗したところが、そもそもピンボケである。そんな争いを仕掛けても、水掛け論で負けになるのだ。

     


    (3)「カナダと中国の関係も悪化が予想される。中国は孟被告の逮捕後、自国内のカナダ人2人を拘束した。肉類やキャノーラ油などカナダ産の農産物に対する輸入も停止した」

     

    ここら当りの中国の嫌がらせは、子どもじみている。法律論で対抗できない弱味を、嫌がらせという感情論で押し潰そうとした。これが、カナダの裁判所で見破られた理由であろう。

     

    カナダは、中国と妥協するために次世代通信網「5G」で、ファーウェイ製を購入するなどと報じられたこともある。こういう「取引」で孟被告の米国引き渡しをするという憶測である。「5G」は、米国政府の強い購入拒否要請が行なわれている。

     

    ファーウェイが4月、カナダに数百万枚のマスクを寄付した。ファーウェイは、カナダの5G市場参入を狙っていることから、今回の医療品の寄付は、中国共産党の下心があるとの見方もされている。カナダのトルドー首相は、寄付を受け入れる一方で、5G配備を含む政策決定には影響しないと強調した。また、医療品は基準に適しているかどうかを検査すると発言した。今後も、いろいろと情報が錯綜するであろう。

     

     

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    米国トランプ大統領は、中国による香港への国家安全法適用が、「一国二制度」に違反するとして、香港に与えた特恵(関税など)すべてを廃止すると発表した。ほかに、中国からの人民軍関係留学生の受入れ停止、WHO(世界保健機関)が中国に支配されていることから脱退するとも宣言した。

     

    中国の受ける損害は大きなものがある。香港を「出島」に使って、貿易・金融の面で多大の利益を受けてきただけに、それらすべての利益を失う形となる。香港へ進出している米企業にも大きな影響が及ぶ。

     

    『中央日報』(5月30日付)は、「トランプ大統領が強力な対中国制裁へ、香港優遇措置を撤廃」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米大統領が29日(現地時間)、関税およびノービザ入国を含めた香港に対する優遇措置を撤廃すると宣言した。中国が全国人民代表大会(全人代)で香港国家安全法を制定したことを受け、中国に対する強力な制裁を発表した。安全法制定に関与した中国・香港の高官を制裁するほか、米国の科学技術保護のために中国軍に関連する留学生の入国を遮断し、中国が完全に掌握した世界保健機関(WHO)との関係を終えて脱退するとも宣言した。

    トランプ大統領はこの日、ホワイトハウスの記者会見で「香港はもう1997年の返還以降に我々が提供してきた優遇措置を保証する十分な自治ができない」とし「中国は『一国二制度』の約束を一国体制に変えた」と主張した。続いて「私は行政府に対し、香港に対する優遇措置を撤廃する手続きを始めるよう指示した」と述べた。

    (1)「トランプ大統領は、「私の発表は、犯罪人引き渡し条約から軍・民両用技術に対する輸出規制まで例外なく香港と結んだすべての協定に影響を及ぼすはず」とし「国務省は中国公安機関の強化された監視・処罰危険のため香港への旅行警報も改めることになるだろう」と伝えた。香港との犯罪人引き渡しを中断し、敏感な技術への接近も中国と同じく防ぐということだ。香港を国際商業・金融中心地に成長させた優遇措置の核心である対中国関税免除と香港人の米入国ビザ免除もなくすことにした。トランプ大統領は「香港を他の中国とは別に関税および旅行地域として優遇してきた点も撤廃する」と話した。中国輸出品の約50%の品目に25%、残りの20%にも7.5%の関税を賦課してきたが、これを香港にも同じく適用するということだ。この場合、香港に進出した1300余りの米国企業と米国市民約8万5000人にも被害が及ぶ」

    トランプ氏は、香港に与えた特恵のすべてを廃止すると発表した。これまで、香港は中国本土と異なる政治体制として扱ってきた。今後は、それを同一して扱うとするもの。「香港を国際商業・金融中心地に成長させた優遇措置の核心である対中国関税免除と香港人の米入国ビザ免除もなくす」。これは、香港が国際金融センターの位置を失うことを意味する。国際的に大きな衝撃になる。

     

    (2)「トランプ大統領は、「香港の自治侵害に直接・間接的に関与した中国・香港高官を制裁するのに必要な措置も取る」と警告した。香港国家安全法の制定を主導した韓正副首相や中国公安部幹部、香港のキャリー・ラム行政長官などに対する資産凍結、入国禁止など標的制裁も予告したのだ」

     

    香港国家安全法の適用に関与した人物には、制裁措置を取る。資産凍結や米国への入国禁止措置が発動される。


    (3)「トランプ大統領は「中国政府は長い間、我々の多くの産業機密を盗み出す違法なスパイ行為をしてきた」とし「我々の核心の大学・研究所を保護するために潜在的セキュリティー脅威があると判断される一定の中国人の入国を中断する布告文も発令した」と話した。具体的に中国の軍・民融合戦略を実行する機関と関連する大学院以上の中国国籍者のF(留学生)およびJ(訪問学者)ビザを利用した米国入国を遮断するということだ。また、人工知能(AI)など民間先端技術を活用して人民解放軍を現代化する「軍・民融合」推進大学・研究機関所属や、これら機関で研究した後に米国に入国した中国人留学生と研究員の約3000人も追放される可能性がある」

    中国人民解放軍関係の留学生や研究員の約3000人が、追放される可能性も指摘されている。

     

    (4)「トランプ大統領は「世界最高の米国の金融システムと投資家を保護するため、米金融市場に上場した中国企業の慣行に関する研究を指示した」とし、粉飾決算などのリスクがある中国企業の潜在的追放の可能性も予告した」

     

    米国証券市場に上場されている中国企業で、決算内容に疑義の多い企業について、米国側に調査権限がないので、追放する可能性が出て来た。すでに別の立法措置が進んでいる。

    (5)「トランプ大統領は、「中国の武漢ウイルス危険性の隠蔽は全世界拡大とパンデミックを招き、10万人の米国人の命を奪った」と述べ、WHO脱退も宣言した。続いて「中国がWHOを完全に掌握している」とし「WHOは必要な改革をするのに失敗したため、我々はWHOとの関係を断ち、資金を世界のほかの緊急な公衆保健需要を満たすのに使う」とも述べた」

     

    米国が、WHOから脱退すると宣言した。WHOが、中国に支配されており、WHO本来の機能発揮が阻害されている、との判断を下した。

     

     

     

     

     

     

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    中国共産党は、プロパガンダの一環として、世界中に孔子学院を開設している。その実態は、文化施設の範囲を超えている。スパイ活動や中国留学生の監視など、およそ文化事業にそぐわない活動を行なっている。米国では、FBI(連邦捜査局)が常時、監視体制下において、違法行為に目を光らせている。

     

    米国のシカゴ大学と言えば、リベラルな思想で有名である。ノーベル経済学賞受賞者も多く輩出している。この大学にも、孔子学院が開設されていた。だが、自由と民主主義のメッカに、共産党のプロパガンダを行なう孔子学院は似つかわしくないと、すでに閉鎖されている。こういう動きが、全米で始まった。

     

    孔子学院は、中国政府教育部(文部科学省)の下部組織・国家漢語国際推進指導小組弁公室(漢弁)が管轄している。近年、米国では学生父母や教職員の反対を受けて、いくつかの孔子学院が閉鎖された。またベルギー政府は、孔子学院代表がスパイ行為を働いたとして、欧州22カ国への8年間の入国禁止措置を取った。

     

    『大紀元』(5月29日付)は、「孔子学院の永久閉鎖を求める公開書簡、米両党学生指導者が署名」と題する記事を掲載した。

     

    米民主党と共和党に所属する学生団体のリーダーらはこのほど、国内のすべての孔子学院の閉鎖と、米国の大学における中国共産党の影響力の制止を政府に求める共同公開書簡に署名した。

     

    (1)「非営利団体「アテネ研究所」が5月13日に発表した公開書簡は、中国共産党が「米国の大学に孔子学院を設置し、米国や世界の大学での言論をあからさまに強要・統制しようする、学問の自由に対する脅威」とした。協会は書簡を通じて、米政府に対して、国内すべての孔子学院の即時かつ恒久的な閉鎖を求めている。この書簡は、超党派の学生団体リーダーたちも支持した。共和党の青年団体「大学共和党全国委員会」は公開書簡を支持する声明をSNSに発表した。「私たちは米国の大学に強いメッセージを送る。中国共産党と提携し、中国政府によって資金提供されている孔子学院との関係を断ち切るべきだ。大学の学問の自由が危険にさらされている」としている」

     

    孔子学院が、中国語と中国文化の普及という純然たる教育活動に専念しているならば、閉鎖要求は、「学問の自由」を侵害する行為として許されない。だが、共産主義の宣伝活動を行い、中国批判の文化的行事を圧迫中止させるという横暴な振る舞いは論外である。米国の学生が超党派で閉鎖要求を出したのは、自然の流れである。

     


    (2)「公開書簡の発起人のひとりは、アテネ研究所会長は、米国のカトリック大学の2年生ローリー・オコナー氏だ。 オコナー氏はボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に対して、全米で超党派の学生団体を含む多くの支持を得たことは、米国の若い世代の、中国共産党による影響の懸念を反映しているのではないかと述べた。全米学者協会によると、米国ではまだ約80の孔子学院が運営されている。中国政府の公式説明では、孔子学院は中国語と中国文化を普及させるために設立された。一時には国務院が「中国の社会主義を拡散する」目的があると説明していた。漢弁の総主任はかつて、共産党中央統一戦線工作部部長の劉延東氏が務めた」

     

    孔子学院は、中国国務院(内閣)から「中国の社会主義を拡散する」目的があると説明されていた。孔子学院が、共産主義を拡散させる政治目的で開設されていることは事実なのだ。共産主義シンパを増やし、スパイ要員に仕立てようという狙いだ。

     

    (3)「米大学民主党のバージニア州委員長エリカ・ケリー氏は公開書簡に署名した。ケリー氏が通うジョージ・メイソン大学にある孔子学院は、中国問題専門の教員の学術活動を妨害し、チベットや新疆ウイグル問題のイベントも中止に追い込んだ。ケリー氏は、孔子学院は米大学の学術・言論の自由を侵害しているだけでなく、一部の中国人学生に不安を与えたと指摘した。 書簡は、中国共産党の全体主義体制と中国人民とを区別しなければならないとした。公開書簡は、すべての孔子学院の恒久的な閉鎖のほか、中国大使館によるプロパガンダや抗議活動の招集の禁止、中国政府からの資金提供の禁止などを提案した

     

    中国共産党が、ここまでプロパガンダを行なう理由は何か。世界での孤立を恐れているのだろう。共産主義政治は、民主主義政治と比べて独裁制であり、普遍的価値観から逸脱している。いわば、非人間的存在である。国民を監視しなければ存続できない政治。それが、共産主義政治の現実である。自由を謳歌している民主主義政治下の学生に、共産主義を受入れる余地はない。だから、執拗なまでのプロパガンダが必要なのだ。

     

     

     

     

     

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    中国による香港への国家安全法適用決定は、大きな波紋を呼んでいる。自民党外交部会は、香港国家安全法適用を非難決議した。同時に、習近平国家主席の国賓訪日の再検討を政府に申入れている。

     

    欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は5月29日、中国が反体制活動を禁じる「香港国家安全法」導入を決定したことに、EUは「深く懸念している」と述べ、EU外相理事会が対中戦略の厳格化で合意したことも明らかにした。米英両国は、中国が香港の統制強化に向けた「香港国家安全法」導入を計画していることで、29日の国連安全保障理事会に非公式に提起する方針。中国の香港国家安全法適用は、国際問題化している。

     

    中国は、香港国家安全法適用決定で世界の三極である、日本、EU、米国から非難される事態に直面した。コロナのパンデミックで世界中へ被害をばらまく一方、さらに香港の自由弾圧の懸念により、厳しい局面に立たされた。中国民族主義が、国際法拒否という破天荒な行動に出た結果、今後の中国外交には茨の道が待っている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月29日付)は、「習氏の国賓来日『再検討を』自民部会、香港巡り非難決議」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「自民党の外交部会と外交調査会は29日、「香港国家安全法」の制定方針を採択した中国を非難する決議文をまとめた。新型コロナウイルスの感染拡大で延期した習近平国家主席の国賓来日も再検討するよう政府に求めた。中山泰秀外交部会長らはその後、首相官邸で菅義偉官房長官と会談し、決議文を手渡した。菅氏は「真摯に受け止めたい」と語った。

     

    自民党の外交部会と外交調査会が、合同で「香港国家安全法」を採択した中国を非難した。同時に、習近平氏の国賓来日も再検討するように政府へ求めている。管官房長官は、「真摯に受け止めたい」と回答した。日本が、国賓来日時期を先延ばしにする案もあろう。もともと、自民党の一部には、習氏の国賓に反対する意見があった。

     


    (2)「決議文は香港への統制を強める中国に「自由と民主主義を尊重する観点から重大で深刻な憂慮」を表明した。「民主的な議会などの価値を減殺しないよう強く求める」とも明記した。新型コロナの感染拡大のさなかの動きに「由々しき事態であり決して看過できない」と訴えた。習氏の国賓来日は「再検討も含め、政府において慎重に検討することを要請する」と盛り込んだ

     

    下線部分には、国内で共鳴する向きもあろう。中国発症のコロナ禍で、経済も生活もメチャクチャになっている現状から言えば、こういう時期に習氏がどんな顔をして訪日するのか。世界的にも注目される動きだ。今秋に予定されているEU・中国首脳会談は延期の方向で検討されている。日本でも、習氏の国賓訪日に延期論が強まろう。

     

    『ロイター』(5月30日付)は、「EU、中国の香港法制『深く懸念』対中戦略厳格化で合意」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は29日、テレビ会議形式で実施された外相理事会後の記者会見で、香港国家安全法の導入は香港の高度の自治を認める「一国二制度」が阻害される「深刻なリスク」と指摘。「EUと中国の関係は相互の尊重と信頼に基づいているが、今回の決定はこれに疑問を呈するものだった」とし、「香港の自治は大幅に弱体化された」と述べた」

     

    なにやら、天安門事件(1989年)の虐殺に抗議する雰囲気に似てきた感じだ。「EUと中国の関係は相互の尊重と信頼に基づいているが、今回の決定はこれに疑問を呈するもの」は、外交的に最大級の非難であろう。EUにとって、「自治」とは市民社会と同義語である。市民社会弾圧は、EUとして絶対に見逃せない暴挙だ。

     

    中国は、「内政干渉」というお決まりの言葉で反論しているが、価値観の根本的な相違を浮き上がらせている。天安門事件での民衆虐殺と相通じる香港国家安全法の適用は、中国がいかに危険な国家であるかを示している。

     


    (4)「EU各国外相は、中国が香港の自由を制限しようとしていることに「深刻な懸念」を示し、対中政策の厳格化で合意したと表明。「中国とオープンで率直な対話を行う必要があり、EUにはその用意がある」としながらも、市場アクセスなどを巡り「交渉は進展していない」と述べた。各国政府はその後、ボレル上級代表の発言内容を反映した声明を発表。全人代の決定は「中国が国際的なコミットメントを順守するのか、一段と大きな疑問を呈するものだった」とした。英、米、オーストラリア、カナダの4カ国は28日、全人代の決定を非難する共同声明を発表している」

     

    EU各国政府は、「中国が国際的なコミットメントを順守するのか、一段と大きな疑問を呈するものだった」と非難している。当然のことだが、こういうEU各国政府の声明が出た手前、日本は習氏の国賓訪日を先送りすることが賢明であろう。

     

    (5)「EUの執行機関である欧州委員会は来月、公開入札への中国のアクセスを制限する方法などに関するガイドラインを策定する見通し。また、9月14日にドイツのライプチヒで開催される予定のEU・中国首脳会議について、独外交筋は延期される可能性があると示唆。独政府報道官はこの件に関するコメントを控えている

     

    9月に予定のEU・中国首脳会談は延期される可能性があるという。当然だ。日本も参考にしなければなるまい。


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