勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    韓国社会は、なんら近代化していないというのが本欄の率直な感想である。文大統領の権力は、考古学界まで影響を与えていることに驚くのだ。韓国の国立中央博物館で今月2日に開幕した特別展「伽耶本性-剣と絃(げん)」を巡り、学界が騒然となっているというのだ。その理由は、考古学界で未承認の解釈が、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の国政課題として掲げた『伽耶(かや)史復元』にコード(政治的理念や傾向)を合わせた展示になっているかだという。

     

    韓国では、大統領が絶対的な権力者である。その大統領が、「右」と言えば異議があってもすべて「右」と言わざるを得ない社会である。考古学展示までが、文大統領の意向に沿っているとは、「呆れた」と通り越して「おバカさん」と言わざるを得ないほどの体たらく社会と言ってよかろう。

     

    昨年10月末の韓国大法院の徴用工賠償判決は、直前の8月に文大統領が徴用工賠償について演説し、日本の賠償責任を追及していた。大法院は、この大統領演説を無視できず、これに沿った判決を下したというのが私の持論である。今回の考古学展の結果と合せてみれば、韓国の官界はすべて、大統領の意向次第で動く「公的ロボット」である。

     

    『朝鮮日報』(12月6日付)は、「文在寅政権のコードに合わせて未検証の地域・遺物も伽耶」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国の国立中央博物館で今月2日に開幕した特別展「伽耶本性-剣と絃(げん)」を巡り、学界が騒然となっている。導入部からまず問題だ。薄暗い進入路を通り抜けて真っ先に対面する遺物は、今年3月に慶尚北道高霊郡の池山洞古墳群で出土した土鈴だ。当時、調査団が「伽耶建国神話の場面を刻んだ鈴」だと大々的に公開したが、学界では「絵を『駕洛国記』の内容に強引に合わせて解釈」と批判された。大多数の伽耶史の専門家は「文献研究者に一度も諮問せず性急に発表したことで起きたハプニング」と指摘した。そんな鈴を、古代の歌謡「亀旨歌」と一緒に堂々と展示した」

     

    伽耶(かや、加耶とも)、加羅(から)、または加羅諸国(からしょこく)は、3世紀から6世紀中頃にかけて朝鮮半島の中南部において、洛東江流域を中心として散在していた小国家群を指すという。現在の釜山一帯という感じである。文大統領がここまで伽耶に拘るのは、文氏の選挙区であるからだろう。文氏も派手に「地元への利益誘導」をやっているのだ。

     

    (2)「導入部からまず問題だ。薄暗い進入路を通り抜けて真っ先に対面する遺物は、今年3月に慶尚北道高霊郡の池山洞古墳群で出土した土鈴だ。当時、調査団が「伽耶建国神話の場面を刻んだ鈴」だと大々的に公開したが、学界では「絵を『駕洛国記』の内容に強引に合わせて解釈」と批判された。大多数の伽耶史の専門家は「文献研究者に一度も諮問せず性急に発表したことで起きたハプニング」と指摘した。そんな鈴を、古代の歌謡「亀旨歌」と一緒に堂々と展示した」

     

    韓国の国立中央博物館は、下線を引いた部分のように専門家の意見を聞くこともなく、勝手に強引な解釈を下しているという。博物館として学問的な検証も経ない展示物は、致命的な欠陥であろう。それを、文大統領に気に入って貰うための展示にしたとすれば、自殺行為であろう。「これが韓国」と言ってしまえばそれまでだが、何とも後味の悪い話だ。

     

    「展示のABCも備えていない」という指摘もあるという。副題が「剣と絃」なのに、肝心の絃についての内容がないのだ。金薫(キム・フン)の小説『絃の歌』の文章を展示場の壁のあちこちに張り付けているレベルという。いかにも、やっつけ「展示物」のいんしょうだ。

     

    (3)「展示のキーワードである「共存、和合、力、繁栄」についても、強引だという評が出ている。博物館は「幾つもの伽耶が一緒になって生き(共存)、数百年間共存を守ることができた理由が、鉄(剣)を扱う技術を持っていたから」と説明する。しかしB教授は「伽耶は平和裏に共存したのではなく、個別の幾つもの独立体が互いに優劣を争い、角逐しつつ離合集散を繰り返していった」として「それを共存や和合とみるのは時代錯誤」と指摘。さらに「伽耶圏が広がるなら無条件にいいだろうと思って乗り出しているが、冷静に言えば、日帝が語った任那圏域に後戻りしつつある」として「考古学研究者は、それを自覚すらできていない」と懸念した」

     

    展示のキーワードが、「共存、和合、力、繁栄」とは、文政権の政治標語に似ている感じを否めない。伽耶の歴史は、権力争いの離合集散を繰り返していたという。共存、和合の概念からかけ離れていたのだ。3世紀から6世紀中頃にかけて朝鮮半島の歴史が、穏やかのものではなく「争闘」の連続であったはずだ。日本の歴史でも同じことが繰り返されていた。結局、

    韓国国立中央博物館で開幕した特別展、「伽耶本性-剣と絃(げん)」は、文政権を賛美する手段になっていると疑われている。

    この展示は来年、日本にも来る。釜山市立博物館(4月1日~5月31日)を経て、国立歴史民俗博物館(7月6日~9月6日)、九州国立博物館(10月12日~12月6日)を巡回する。研究者らは「1991年の伽耶展後に蓄積された研究の力量を示すべきなのに、神話レベルの展示を持っていったら、笑いものになるだろう」と語っているという。日本の考古学や歴史好きの人たちには、あまり明るい話ではなさそう。





     

     

     

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    中国は、厚かまし振る舞いが多い。GDPで世界2位であるにもかかわらず、世界銀行からの低利融資を利用するずる賢い面がある。世界銀行は文字通り、発展途上国で安定した低利の資金調達ができない国を対象にした融資だ。ところが、中国はAIIB(アジア・インフラ投資銀行)を創設して、中国経済圏の拡大を図っている。また、「一帯一路」プロジェクトで、これまで数千億ドルの融資をしている国である。

     

    その中国が、低利安定資金を求める多くの極貧国向けの融資を横取りすることは許されない。臆面もなく、今年もまた世界銀行に融資を申し込み、世銀で最大出資国の米国が、反対を表明した。当然である。中国へ融資する分を、極貧の諸国へ融資して生活基盤の向上に寄与させるべきであろう。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月6日付))は、「米、中国への世銀融資に反対、年10億ドル超」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ムニューシン米財務長官は5日の米下院金融サービス委員会の公聴会で、中国に年間10億ドル(約1100億円)以上を融資する世界銀行の金融支援に米国として「反対した」と述べた。世銀による対中融資を支持しない姿勢を鮮明にしたものだ。トランプ米政権は対中追加関税の第4弾を15日に発動するとしており、中国への圧力を一段と強めている」

     

    世銀の前総裁が、辞任に追い込まれたのは中国との癒着が目立ったからだ。中国は世銀から有利な融資を受けて、その資金を「一帯一路」などで高利運用して、結果的に「サヤ」を稼ぐというあくどい商法を行って来た。

     

    日本は、中国へODA(政府開発援助)の低利融資をしてきた。一方、中国は1990年ごろからアフリカへ融資・援助する資金に回していたのだ。これに怒った日本は、2005年を境にODAを打ち切った。その際の中国が何と言って抵抗したか。「日本がODAを打ち切れば、日中友好に影が指す」と脅かしてきたのだ。

     

    中国は、こういう国である。一銭でも儲かることならば、恥も外聞もない国だ。今回、世銀から年間10億ドル超の融資を受けるという中国スキームは、AIIBからの融資か、「一帯一路」資金を回せば済むことなのだ。

     

    (2)「ムニューシン氏が反対を表明したのは、2020年から5年間にわたり中国に融資する世銀の「国別支援フレームワーク」だ。同氏は公聴会で、中国による世銀への資金提供が受取額(注:返済額)を上回ったことに言及した。米中貿易戦争が続くなか、トランプ政権内や米議会では、中国を途上国として扱うべきではないとの見方が広がっている。与党・共和党のチャック・グラスリー上院議員は「なぜ米国の血税が中国への低利融資を支援するのか米国民は疑問に思うだろう」と発言した」

     

    中国が、2020年から5年間で、総額50億ドル超の融資を受けるのは、この間の返済額を上回るものだという。これは、融資の累増を意味するもので、中国がドルの資金繰りに利用している疑いが濃い。中国は2020年以降、国際収支の経常収支が赤字スレスレとなる見通しである。そうなると、年間10億ドルでも貴重な「資金源」である。世銀融資でまんまとカバーする「セコイ」考えに至ったのだろう。「窮すれば鈍する」の典型例だ。              

     

    (3)「米国が対中融資を拒むことで、ムニューシン氏とトランプ米政権で財務次官を務めた世銀のマルパス総裁との路線対立が鮮明になる可能性もある。マルパス氏は4月の総裁就任後、中国をけん制する姿勢を和らげたとみられている」

     

    下線を引いた部分は、考えすぎであろう。米政権の意向で世銀総裁を任命するのだから、マルパス総裁が、米国の意向を無視すれば、前総裁と同じ辞任という道しか残っていない。それにしても、財務次官当時のマルパス氏は、中国への強硬論者であった。それが、半年余で中国寄りになったとすれば、中国の強い「供応」が成功したのだろうか。それ以外に「変心」の理由は考えられない。

     

     

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    韓国の王毅外相が訪韓して、「言いたい放題」で悪評を招いた。韓国は、米国の同盟国であるにもかかわらず、THAAD(超高高度ミサイル網)の撤去を要求するなど、米国批判のボルテージを上げた。一方、韓国の有力者との会食では定刻に30分以上も遅刻。謝罪もせずに演説するマナーの悪さを見せつけた。ロシアのプーチン大統領は、会見の時間に遅れることで有名だが、王外相は韓国を甘く見て「小型プーチン」を演じたのだろう。王外相は、自らの「小物」ぶりを演じた格好だ。

     

    『朝鮮日報』(12月6日付)は、「中国がTHAAD問題で一方的発表、韓国政府は当惑」と題する記事を掲載した。

     

    5年ぶりに訪韓した中国の王毅・外交担当国務委員兼外相が、慶尚北道星州郡に臨時配備された在韓米軍の終末高高度防衛ミサイル(THAAD)に関連して、韓国政府に対し「適切に処理してほしい」と要求したことが5日、確認された。このため、THAADの臨時配備を問題視し、限韓令(韓流禁止令)などさまざまな報復措置を取ってきた中国が、今度はTHAADの「完全撤退」圧力をかけてきたのではないかとの見方が出ている。

     

    (1)「韓国外交部と青瓦台は、王毅外相がTHAADに関して圧力をかけてきたことを黙っていたが、中国外務省が同日午後、その事実を公表して騒動になると、後になってこれを認めた。そうしたことから、韓国政府は「中国のTHAAD圧力」を隠ぺいして韓中経済協力などの広報に有利なことばかりを浮き彫りにしたと指摘されている

     

    韓国は、米韓同盟にあることを忘れて、これまで中国へ秋波を送ってきた。その中国から「請求書」を突付けられているのだ。中国という国には、「吸血鬼」である。韓国が安易に安全保障の「3不」を約束してしまい、その手形を落とすように要求されている。韓国が出任せを言った報いであろう。

     

    中国にとっては、THAADの実害はゼロである。それを知りながら、韓国を揺さぶって米韓同盟にひび割れを起こさせる目的である。韓国は、まんまとこの穴に飛び込んだのだ。日米には強腰の韓国だが、中国の前に出ると「蛇から睨まれたカエル」になっている。おかしいやら、馬鹿馬鹿しいやら、形容詞を探すのに苦労するほどだ。

     

    (2)「中国外務省の華春瑩報道官は同日の記者会見で、「両国は共通認識に基づいて『THAAD』など中韓関係の健全な発展に影響を与える問題を引き続き適切に処理し、互いの核心的利益と正当な関心事を尊重することにした」と述べた。王毅外相訪韓の成果を説明しつつ、「THAAD」問題を指摘したものだ」

     

    中国は、THAAD問題をテコに韓国を徹底的に揺さぶる方針だ。暴力団並の執拗さで迫っている。まさに、韓国は「蛇に睨まれたカエル」の立場だ。

     

    (3)「これに先立って行われた韓国外交部記者の会見で、同部の金仁チョル(キム・ インチョル)報道官はTHAADについて言及しなかった。韓国外交部は前日に行われた康京和(カン・ギョンファ)同部長官と王毅外相の会談結果を説明した長文の報道資料からTHAADの話を外していた。韓国外交部当局者は同日の記者懇談会でも、「王毅外相は(THAADなど)敏感な事案について話したのか」という質問に対して、「相互の関心事についてさまざまな意見を交換した。これ以上、具体的に話すべき事案はない」とだけ答えていた。青瓦台も同日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の王毅外相接見結果に関する記者会見で、THAADに言及はしないまま、同大統領が習近平・中国国家主席の来年上半期訪韓を期待しているといった話だけした」

     

    韓国が、THAAD問題から逃げ腰になっていることが分かる。堂々と、反論すべきだがしないでいる。これが、中国を増長させている。「反日」に見せるあの勢いは、どこへ行ってしまったのか。そう聞きたくなるほどだ。

     

    (4)「王毅外相は同日、文在寅大統領を表敬訪問した際、「現在の国際情勢は単独主義と強権政治の脅威を受けている」と語った。トランプ米政権の自国優先主義と対中圧力構想である「インド太平洋戦略」を念頭に置いた発言だと見られている。王毅外相はまた、「中韓両国は隣人同士だ。適切な時期に対話・協力を強化して多国間主義・自由貿易を守り、基本的な国際ルールを順守しなければならない」と述べた。これは、米国の関税政策を遠回しに批判したものと見られている。王毅外相は前日の康京和外交部長官との会談でも、「覇権主義」に公に言及するなど、意を決したかのように米国を批判した」

     

    中国外相が、韓国へ来て米国批判をする。この受取り方は2通りあろう。一つは、米国から大きなダメージを受けていることへの不満。もう一つは、韓国を米韓同盟から引き離す目的だ。いずれにしても、韓国を甘く見ている証拠である。

     

    中国は、米国から相当に大きいボディブローを受けている。貿易戦争、香港人権法、新疆ウイグル族弾圧禁止法制化だ。中国にとっては急所ばかりである。愚痴を言いたくなるほど追い込まれているのだ。

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    外国人投資家が、韓国株を21営業日連続で売り越しである。異常なことが起っている。韓国の異変を嗅ぎつけているのであろう。本欄ですら毎日、韓国に未来はないと言い続けているのだから、鋭敏な海外投資家が手仕舞って撤退するのはやむを得まい。米朝の対立も一因であろうが、他はすべて文大統領の不手際が生み出したことだ。

     

    『朝鮮日報』(12月6日付)は、「韓国だけを売る外国人投資家 21営業日で5兆ウォン」と題する記事を掲載した。

     

    外国人投資家の韓国離れが尋常ではない。5日のソウル株式市場では外国人による売り越しが688億ウォン(約63億円)に達した。117日に始まった連続売り越し日数は歴代5位の21営業日に達した。この期間に外国人による売り越しは累計で5兆ウォンを超えた。同じ期間に外国人が台湾株式市場で約7兆ウォンを買い越したのとは対照的だ。6日も外国人の売り越しが続けば、2015122日から1615日に記録した22営業日連続の売り越し(歴代4位)に並ぶ。歴代最長記録は世界的な金融危機が起きる直前の200869日から723日までの33営業日連続だ。

     

    (1)「専門家は外国人の売りが続く理由として、まず外部要因を挙げる。ハイ投資証券のアナリスト、パク・サンヒョン氏は「11月にMSCI指数のリバランシングによる影響が大きい上、米中貿易交渉の不確実性、香港問題に関連する不安感の拡散なども無視できない不確定要素として作用した」と分析した。さらに米国と北朝鮮が最近互いに「武力使用もあり得る」と緊張を高めていることも韓国株式市場に悪影響を与えた。NH投資証券のアナリスト、ノ・ドンギル氏は「米国と北朝鮮の首脳が鋭く対立しており、今月中旬になると地政学的リスクがさらに高まる可能性がある」と指摘した」

     

    このパラグラフでは、外部要因として米中貿易戦争の行方が分らないことと、米朝の対立が次第に激しくなろうとしている点を上げている。ただ、外国人投資家の売越しが、11月7日に始まった点を考えなければならない。この頃は、前記の二点がそれほど鮮明になっていなかったことだ。本質は、次に指摘する韓国経済の抱える脆弱性が嫌気されてきたと見るべきだろう。

     

    (2)「韓国経済に対する否定的な見方も一因だ。韓国の信用格付け会社、ナイス信用評価が4日発表した「2020産業見通し・産業リスク評価結果」によると、評価対象40業種のうち、来年の業況が今年よりも改善するとみられる業種は皆無だった。主力輸出品目である半導体の業況改善が遅れるとの分析も聞かれた。スタンダード・アンド・プアーズ(SP)アジア太平洋企業格付け担当理事のパク・ジュンホン氏は「半導体の業況は来年半ば以降、小幅な回復はあり得るが、本格的な回復とは言えない」と予想した。ノ・ドンギル氏も「韓国株式市場から外国人が離脱するのは米中貿易交渉の雑音だけでなく、半導体の業況改善が遅れるという見方が重なったからだ」と分析した。外国人の売り越しが始まった117日以降、外国人はサムスン電子、SKハイニックスの株式25000億ウォン相当を売り払った」

     

    韓国経済は輸出依存度が4割強もあること。その主役が半導体であること。このことから言えば、韓国経済は半導体市況に左右されるきわめて脆弱な体質である。来年の韓国産業40業種で、回復予想業種がゼロとは情けない。これでは、株価が失速して当然であろう。

     

    (3)「専門家は外国人が韓国株式市場に戻ってくるためには特別なきっかけが必要だとの点で一致している。今月15日に予定される米国の中国製品に対する追加関税適用が契機になるという期待混じりの見通しが聞かれる。関税適用までに米中貿易交渉が妥結するか、少なくとも米国が関税適用を猶予するなど和解の手を差し伸べれば、外国人が戻ってくるとの見方だ。元大(ユアンタ)証券のアナリスト、チョ・ビョンヒョン氏は「外国人の売りが落ち着くかどうかは、結局は貿易紛争の緩和と世界貿易の回復可能性に帰結する」と指摘した」

     

    米中貿易戦争の行方がどうなるか。これが上手く言えば、外国人投資家が戻りも期待できるかも知れない。しかし、国内経済が総崩れであり、不安心理が充満しているという悪条件に変わりない。限定的な戻り相場でなかろうか。韓国の政治不安(大統領府の地方選介入疑惑など)も、投資家心理を悪化させる要因だ。文政権の無能力がはっきりしてきたことも株価の不安を煽っている。

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    現在の米中貿易戦争が、第三次世界大戦に点火する危機を孕むという説が登場した。私は、中国にその経済力がないと見る。仮に、中国が開戦の火ぶたを切れば、民主主義国の経済包囲を免れない。

     

    これから取り上げる説の起点は、次に指摘するように、いささか現実離れしている。トランプ大統領が、中国へ戦争を仕掛けるという妄想を抱いているのだ。

     

    「行動が予測できないトランプ米大統領は、第1次大戦前のドイツを率いていた皇帝ウィルヘルム2世を彷彿とさせる。よりまともな指導者がいなければ、西側、ひいては世界が深刻なトラブルに陥るのは必至だ」(『フィナンシャル・タイムズ』(11月27日付))というのだ。ドイツ帝国皇帝のウィルヘルム2世と、民主主義国・米国のトランプ大統領を同じ「戦争狂」に見立てるのは、飛躍である。米国民主主義が、戦争抑制システムとして動いている現実を見落としている暴論だ。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(11月27日付)は、「現在は第1次大戦前に並ぶ難局」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙のチーフ・エコノミクス・コメンテーターであるマーティン・ウルフ氏である。

     

    (1)「現在は、(過去の世界的戦争の要因になった)3つ(の要因)がすべて入り交じっている時代だ。冷戦時と同じく超大国同士の政治制度とイデオロギーが対立していて、30年代と同じく金融危機後の民主政治と市場経済に対する信頼感が低下しており、ポピュリズム、ナショナリズム、権威主義が台頭している。1次大戦勃発前に台頭した米国と同様、中国の経済力が大幅に増したことも重要な特徴だ。米国は第1次大戦以来初めて、自国より経済力が勝る可能性がある大国と向き合っている」

     

    下線を引いた部分で分るように、中国の経済力をきわめて過大に評価している。私は、英国経済紙『フィナンシャル・タイムズ』(FT)の記事には、一つの強い傾向があることに気付いてきた。それは、米国を批判する一方で、中国を実力以上に高く評価する傾向があることだ。その点で、米国経済紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)の情報量と見識の高さを買っている。同じ英国の経済誌『エコノミスト』は、厳しい中国批判で一貫しており、FTとは見識を異にしている。

     

    この記事の筆者は、世界銀行のエコノミストなどを経て87年にFT入社し、ジャーナリストに転じたという。ならば当然、現在の中国経済が不動産バブルにまみれた最悪事態にあることを承知のはずだ。日本経済で分るように、バブル経済崩壊に伴う後遺症がどういうものか理解しているに違いない。そういう視点で、現在の中国を観察すれば、空前絶後の負債を抱えている経済である。この中国が、「米国は第1次大戦以来、自国より経済力が勝る可能性がある大国」に発展する可能性は「ない」と見るのが、合理的な判断であろう。

     

    中国の人口動態から見ても、絶望的である。合計特殊出生率は日本の「1.4台」よりも低位で、正式の発表を取り止め、「偽データ」を世銀に提出するという厳しい状況に追い込まれている。世界銀行は、中国国務院と共同で、長期経済成長率予測を発表した。それを見ると、惨憺たる結果が発表され、米国の潜在成長率を下回るのは時間の問題である。このような中国が、科学技術も窃取せざるを得ないほど立遅れいる。世界覇権に挑戦しても勝てる公算はない。

     

    (2)「(米ハーバード大学のグレアム・)アリソン教授は、相互不信が第1次大戦の勃発への道のりをあおった様子をうまく描写している。米国と中国が今、正面衝突を避けることは、それ以上に重要だ。冷戦の最大の成果は、直接的な戦争が回避できたことだ。だが、それをもたらした核抑止力だけでは今は不十分かもしれない」

     

    中国が、米国に戦争を仕掛けることは、第一次世界大戦の口火を切ったドイツ皇帝ウィルヘルム2世と同じ振る舞いとなろう。習近平氏を取り巻く民族主義グループは、きわめて危険な存在である。米中貿易戦争で妥協を阻み拡大させたのは、この民族主義グループである。米国は民主主義国である。中国の専制主義国と違い、簡単に開戦には踏み切れない政治システムだ。それが、民主主義の利点である。

     

    (3)「最も重要な結論は恐らく、新たな破滅的戦争を避けるだけでは不十分だということだ。どれほど避けられないようにみえたとしても、現在の我々には、昔のように大国同士が張り合うゲームに興じる余裕はない。そんなことをするには互いの利害が密接に絡み合いすぎている。世界が直面する経済、安全保障、環境面の課題に対処していくには、西側と中国とその他諸国の関係について、全員が得をする「ポジティブサム」のビジョンを共有して、人類は過去よりはるかにうまくやらなければならない」

     

    この論調の裏に、私は中国の存在を嗅ぎ散る。中国は、米国に負けない経済力を持つが、戦争を自制していると臭わせている。それよりも、世界が利益になる課題に取り組もうという論法である。この主張は、誰も反対できないし賛成する。中国は、時間稼ぎするつもりだろう。毛沢東が、蔣介石に二度も「国共合作」を持ちかけて、弱点をカバーした戦略と同じ手法が隠されている。手の込んだ中国の仕掛ける謀略戦の一端を担いでいる記事だ。

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