勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。


    韓国の人気男性アイドルグループ防弾少年団(BTS)が、テレビ朝日の「ミュージックステーション」への出演が急きょ中止となった。その理由が、メンバーの着用していた「原爆Tシャツ」が、反日的でないかと取り沙汰されているという。本来なら、歌には国境はないのだから出演させるべきであろう。ただ、10月30日に韓国大法院による「徴用工判決」で日本人の感情は微妙になっている。そういう時期だけに、テレビ朝日は後難を恐れて出演を中止させたと見られる。

     

    この問題は、日本よりも韓国で沸騰している。

     

    『朝鮮日報』(11月12日付)は、「偏狭な日本のテレビ局、防弾少年団の出演が相次ぎ白紙に」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国の人気男性アイドルグループ防弾少年団(BTS)が、メンバーの着用していた「原爆Tシャツ」が波紋を呼んでテレビ朝日の「ミュージックステーション」への出演が急きょ中止となったのに続き、来月放送されるNHKの「紅白歌合戦」、フジテレビ「FNS歌謡祭」、テレビ朝日「ミュージックステーション・スーパーライブ」などへの出演も相次いで白紙となった。テレビ朝日の「ミュージックステーション」側は8日、昨年のワールドツアーでBTSのメンバー、ジミンが着用していたTシャツに関連し「総合的に判断した結果、出演を見送ることにした」と説明した。ジミンのTシャツには、原爆投下の写真と共に、「愛国心」「解放」「コリア」などの文字が英語でプリントされていた」

     

    あえて、コメントを付ける必要もない。ただ、Tシャツが真の問題とは思えない点を記しておきたい。原爆投下の写真と共に、「愛国心」「解放」「コリア」などの文字があるTシャツよりも、徴用工判決で日本人の間に納得できない雰囲気があるのだ。こういうタイミングで起った問題であろう。韓国風に言えば、「国民感情が受け付けない」と答えるしかない。

     

    上記のタイトルが、韓国読者を刺激して多くの読者批判が『朝鮮日報』へ寄せられている。それを読むと、日本側の判断に賛成しているから興味深い。

     

    イ・ギリョン(ioi ****)さん

    (2)「今となっては日本がやることも理解できる。BTS(防弾少年団)のTシャツのプリントされている物のせいで、日本のテレビ局が偏狭なことをしているだって? それじゃあ、韓国のKBSMBCSBSはこの大韓民国の愛国勢力が赤化を懸念して問題人(文在寅〈ムン・ジェイン〉大統領と同じ発音)に対して「正気になれ」と覚せいを促すために立ち上がることについて、なぜ放送しないのだろうか? 典型的な「自分がやったら恋のロマンス、他人がやったら不倫」(同じことをしても自分に対しては甘く、他人に対しては厳しく批判すること)が左翼大統領だけではなく、似たもの同士である司法・韓国軍・メディア…どれ1つ取っても同じことをしていない所がないのに、日本がやれば偏狭だって? 日本は自国の利益のためにそうしたとしても、お前らは一体何なんだ? オレはお前たちの方がムカつく。賛成30反対7

    イ・ウィウン(woon ****)さん

    (3)「BTSの所属事務所はばかげた理念に付和雷同して外交的に礼を欠いてはならない。北傀(北朝鮮)と中国共産党が韓米日協力の妨害を工作・助長していることを天下はすべて知っているではないか? まかり間違ってこれに洗脳され、健全な方向性を見失って盲目的な愛国心うんぬんする愚かさを犯さないでほしい。今、韓国の正しい外交座標は親米反中・韓米日協力強化志向ではないのか? 賛成23反対13

    シン・ヒョンスン(shs ****)さん

    (4)「偏狭な日本~?? 韓国も侮れないね~! (2005年に『殴り殺される覚悟で書いた親日宣言』という本を書いた)歌手チョ・ヨンナムは日本に友好的なことを言ったという理由で、(お笑いタレントの)チョ・へリョンは日本国歌が歌われた現場にいたという理由で、あるアイドル歌手は旭日旗を連想させるTシャツを着ていたという理由で…しばらく番組に出演できなかったじゃん!!! 賛成21反対8

     

    以上は、『朝鮮日報』(11月12日付)へ寄せられた韓国人読者のコメントである。日本人の言いたいことのすべてが、ここにあるように思う。



    中国は、「中国製造2025」で半導体開発を最大の眼目にしている。米国は、これを阻止しすべく貿易戦争を仕掛けて技術窃取防止に全力を挙げている。ところで、見落としがちなのは、半導体そのものの開発も大事だが、半導体製造装置も不可欠。中国にはこの二つが存在しないのだ。こうなると、「中国製造2025」はただのお題目に終わる。

     

    中国のインターネット・家電大手が相次いで半導体事業に参入する。百度(バイドゥ)は人工知能(AI)向けの開発を進め、珠海格力電器はエアコン向けを内製化する。米国とのハイテク摩擦により、中国企業では先端機器に不可欠な半導体確保への不安が高まっている。習近平(シー・ジンピン)国家主席が技術の海外依存を減らす「自力更生」の方針を掲げており、中国企業は自前で開発する動きを加速する。以上は、日本経済新聞11月7日が伝えたもの。

     

    習近平氏は、「自力更生」という毛沢東の使った言葉を引っ張り出して、新技術開発に発破をかけている。だが、米中貿易戦争が始ったから、「自力更生」と言っても軌道に乗るにはそれなりの時間がかかる。

     

    米国は、さらに、二の矢三の矢を放ってきた。米国が中国メーカーに対する半導体製造装置の輸出を禁止すると発表したのだ。半導体製造設備は米国がほぼ独占している。米国製の設備なしでは、中国は半導体生産ラインを構築できないという弱味を抱えた。

     

    中国は、新幹線技術を自力ではついに開発できず、日本とドイツの技術に依存した。これと同じで、中国がどんなに頑張っても、半導体製造装置を開発不可能ということもあり得るのだ。もっとも、「スパイの中国」である。手段を選ばず盗み出す試みをするにしても、世界中の目が光っている中では難しい。米企業から提訴されるはずだ。中国は、また米国の壁の厚さを実感するに違いない。



    中国政府は、不動産バブルの崩壊を食い止めるべく、いろいろと小細工を続けてきた。「毒を食わば皿まで」という思いか、地方政府に高値で土地売却させて、住宅価格の値下がりを防いできた。それもついに限界を超えたのだ。可処分所得の伸びを上回る住宅ローン残高の増加が、不動産バブルに「引導」を渡した。

     

    みずほ総研が、独自の分析で中国経済が減速から停滞局面入りしたと発表した。

     

    『日本経済新聞』(11月11日付)は、「中国に『停滞』サイン 、みずほ総研分析」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「みずほ総研は輸出、生産、投資、企業収益、小売り、求人倍率の指標を合成して分析。長期的な成長ペースに比べた景気の弱さに、前月からの変化も加味すると、中国景気は8月から停滞局面に入ったとの見方になるという。停滞入りは2013年から15年にかけて、リーマン・ショック後の財政出動を受けて生産能力や在庫を過剰に抱えて以来となる。直近では中国政府の景気対策で投資に持ち直しの動きがみられるものの、小売りや企業収益の悪化が下押しに働いている。同総研の大和香織氏は『貿易戦争の影響で輸出の下振れも強まれば、停滞が長引く可能性がある」と話す』

     

    2010年以降の実質経済成長率を上げておく。

     

    2010年 10.61%

      11年  9.50%

      12年  7.90%

      13年  7.80%

      14年  7.30%

      15年  6.90%

      16年  6.72%

      17年  6.86%

     

    前回の景気停滞局面は、13年1Q~15年1Qまでの2年間である。GDPの成長率でも14年と15年にその痕跡が見られる。だが、16~17年では、相当の下支えをした跡を窺わせている。GDP成長率がもっと低下すべきところ、横ばいに止まっている。習氏の権力基盤を固めるべく、無理な成長策を取って証拠であろう。

     

    19~20年を景気停滞局面とすれば、GDP成長率は、2年間で1%ポイントは下落する。20年のGDP成長率は、正常範囲で5.5%。貿易戦争が長期化すれば5%割れは確実だ


    韓国労組の欲望には限度がなさそうだ。さらなる待遇改善を求めて、大規模な集会を開いた。南北会談も行い、融和ムードを促進させている。最低賃金引き上げも、失業者を大量に出させるほどの大幅(16.4%)なものを勝ち取った。それでも満足できないとは、貪欲である。

     

    『中央日報』(11月11日付)は、「文在寅政権、失望と絶望だけ、労働団体が都心で大規模集会」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「民主労総は10日、ソウル・太平路(テピョンロ)で開かれた「全国労働者大会」で、「現在の政局は親財閥・親企業に後退する労働政策、失われた労働公約、清算されていない積弊に整理できる」としてこのように話した。続けて、「文在寅(ムン・ジェイン)政権に対する期待と要求が失望と絶望に変わっている。経済と民生問題を最低賃金引き上げのせいにした。最低賃金算入範囲拡大を含めた最低賃金法改正などは改悪だ」と主張した」

    韓国の労組の組織率は、約10%である。残り90%は未組織労働者である。この「10%組」が猛威を振るっている。「労働貴族」と揶揄されているわけだ。

     

    不満の種を整理すると次のようになる。

        親財閥・親企業に後退する労働政策

        失われた労働公約

        清算されていない積弊

     

    もっと働かなくても良いように労働政策を改善せよ。保守党虐めをもっとやれ(積弊強化)ということである。まさに「身内の論理」を振りかざしている。心からの批判でなく、政府からもっと好条件を引きだそうという狙いだろう。

     

    (2)「民主労総は21日に全面ストを予告した状態だ。民主労総は労働法改正国民年金改革非正規職撤廃――などを掲げている。民主労総のキム・ミョンファン委員長はこの日、『政府と国会は資本家の要求である弾力労働制拡大を押しつけようとしている。11月の全面ストは公共部門の正規職化を子会社の雇用で解決しようとする文在寅政権に対する強力な闘争のたいまつ』と話した。キム委員長は『文在寅政権中盤に差し掛かったいま、財閥が再び自分たちの世が開かれるよう声を高めていきつつある。財閥体制の清算と司法介入勢力の処罰だけが真のろうそくの社会』と主張した」

    民主労総は、次のような要求を掲げて21日からストへ突入するという。

        労働法改正

        国民年金改革

        非正規職撤廃

     

    国民年金は、保険料を引き上げずに年金を増額するという、とんでもない要求である。非正規職撤廃とは、全員が正規職ということだろう。高齢社会を迎えて多様な働き方が要請されている時代に驚く時代錯誤である。こんなわがままな要求を出しても、文政権が受入れるという見通しがあるのか。これでは、韓国経済は潰れても仕方ない。

     



    米中首脳は、11月末のG20サミットで会談予定である。米国の中国批判は、トーンダウンするどころか、さらに「出力」アップの勢いだ。米国は、中国経済が完全に沈滞局面に入っていることを把握して、「溺れた犬を叩くべし」という戦略に見える。中国は、ここまで見くびられる存在になってきた。

     

    『レコードチャイナ』(11月11日付)は、「米高官、『ペンス副大統領はアジア訪問で中国を強く批判する』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米華字メディア『多維新聞』(11月10付)は、ペンス米副大統領が、パプアニューギニアで17日から開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での演説で、中国を強く批判する見通しだと報じた。米『ボイス・オブ・アメリカ』が10日、米政府高官の話として伝えたもので、ペンス副大統領は演説で、地域の在り方を包括的に捉えた米国のビジョンを提示するという。演説には、中国への強い批判のほか、中国が進める現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」に対抗するためのインド太平洋諸国への600億ドル(約6兆8000億円)の経済援助の方針も含まれる見通しだという」

     

    ペンス米副大統領が、強い中国批判をする裏には、中国の「米国外し」という挑発がある。南シナ海での資源探査では、第三国(米国を指す)の開発業者を入れない。また、ASEANと中国との海軍合同演習では、他国海軍(米国を指す)を参加させないなど、根回しをしているからだ。こういう小細工が露見しており、米国の怒りは倍加している。

     

    米国が08年のリーマンショック後、アジアから手を引きかけた際、中国はこれを利用し、南シナ海で横暴を始めた。米国が、中国に深い疑念を持つのは致し方ない。ペンス副大統領は、中国に勝手な振る舞いをさせない。APECで、そういう決意を表明するのであろう。


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