中国の習近平国家主席は、3月20~21日の日程でロシアへ国賓として招待された。習氏は、「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」と題する12項目をロシアへ説明した。この提案は、ロシアのウクライナ占領や併合には目をつぶり、戦争の早期終結を求めるというロシア寄りの内容である。米国は、ロシアのウクライナ撤退項目がないので、強い警戒観を見せている。ロシアの侵略を認めて休戦するのは、ロシアの利益擁護が明白であるからだ。
米国は、中国提案を認めないという立場から、ウクライナへのさらなる武器支援策を発表した。3億5000万ドル規模の追加軍事支援計画だ。ハイマースなどの追加である。
『中央日報』(3月21日付)は、「米『中国、ロシアに休戦要求してはならない』 ハイマース用ロケットなど追加支援」と題する記事を掲載した。
習近平中国国家主席が20日から3日間の日程でロシアを訪問する中、米国がウクライナ戦争と関連して中国を強く圧迫し始めた。「中国がロシアに撤退ではなく休戦を要求してはならない」というのが米国の立場だ。その上で、米国はこの日ウクライナに対する3億5000万ドル規模の追加武器支援計画を発表し、バイデン米大統領が新型コロナウイルスの「武漢起源説」関連情報を公開する法案に署名するなど、密着する中ロに牽制球を投げた。
(1)「米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は、この日の定例会見で「われわれは習主席がロシアのプーチン大統領にウクライナの主権と領土を尊重すべき必要性に対して直接圧迫することを勧める。ここには国連憲章に基づきロシア軍をウクライナ領土から撤収することが含まれる」と明らかにした。続けて「ロシア軍の(撤収ではなく)ウクライナ領土に残しておく休戦要求を懸念している」と強調した」
習氏は、中国による仲介休戦交渉が極めて困難であることを認めている。実現しないことを承知しながら、休戦提案する目的は何か。習氏が、世界のリーダーであることを「お披露目」したいのであろう。特に、中国国内向けのアピールである。
(2)「こうした中国の休戦主張に対し、米国はロシア軍が現在の占領地に残る場合、「自分たちに有利なタイミングで戦争を再開できる」として反対している。カービー調整官は「戦争を凍結するために中国の助けを受けようとするロシアのどんな戦術的措置にもだまされてはならない」とも話した。その上で中国の武器支援の可能性に対し「われわれはまだ中国がそのような方向に動いたり何らかの決定を下したという兆候は見ることができていない」としながらも、「中国がそれ(武器支援)をテーブルから片付けたとは信じない」と既存の主張を繰り返した」
ロシアは、休戦交渉の提案よりも中国からの軍事支援を得ることを望んでいる。その軍事支援は、米国の目が光っているので安易にできないジレンマに立たされている。
(3)「こうした中、米国防総省はこの日ウクライナに対する3億5000万ドル規模の追加軍事支援計画を明らかにした。ここには多連装ロケットである高速機動砲兵ロケットシステムのハイマース用精密誘導ロケットと155ミリ砲弾、敵のレーダーなどを無力化させる高速大放射線ミサイル(HARM)、携帯用対戦車ロケットであるAT4などが含まれた。米国務省はこれに先立ち、欧州連合(EU)がウクライナに今後1年間に155ミリ砲弾100万発を追加支援することを決めたことに対し別に声明まで出して歓迎した。ブリンケン長官は声明で「主権と領土を防衛するウクライナに支援を提供するためともにする50カ国以上の国に拍手を送る」として米国を中心とした西側陣営の団結を強調した」
米国は、中ロ首脳会談に合わせる形で、ウクライナへ3億5000万ドル規模の追加軍事支援計画を明らかにした。EUもウクライナへ今後1年間に155ミリ砲弾100万発を追加支援する。これらは、中国の休戦提案を一蹴する形で、ウクライナへの軍事支援を続行する。こうした支援強化によって、ロシアにウクライナからの撤退を迫る目的だ。
(4)「バイデン大統領はこの日、新型コロナウイルスの起源と関連した情報公開を盛り込んだ「新型コロナウイルス起源法」に署名して中国を圧迫した。先月末に米エネルギー省は連邦捜査局(FBI)などに続き中国科学院傘下の武漢ウイルス研究所が新型コロナウイルスの発源地である可能性が大きいという立場を出した。その後この法案に弾みが付き、10日に米上院を満場一致で通過した。ただ習主席のロシア訪問に合わせてバイデン大統領がこの法案に署名したことをめぐっては「新型コロナウイルスを強調することで国際社会での中国の地位を弱めて中ロ蜜月を牽制するための措置」という見方が出ている」
米国は、中国を追込む二正面作戦を取っている。武漢ウイルス研究所が、新型コロナウイルスの発源地であることを強く打出す法案にバイデン大統領が署名したもの。ウクライナ侵攻のロシアと、新型コロナ発源地の中国を浮き出させて、中ロ蜜月をけん制しようとしている。