勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。


    トランプ氏が米中貿易戦争について楽観的発言をしている。ただ、米中間選挙直前という「タイミング」を狙った発言にも受け取れる。共和党が劣勢を伝えらえる中だけに、額面通りには受け取れない側面もある。

     

    『ブルームバーグ』(11月3日付)は、「トランプ大統領、米国は中国と貿易に関して合意に達するだろう」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「トランプ米大統領は2日、米国と中国が貿易摩擦を解消するための合意に達すると考えており、そうなれば両国に有益だろうと述べた。大統領はホワイトハウスで、今月末からアルゼンチンで開催される20カ国・地域(G20)首脳会議に際して、中国の習近平国家主席と夕食を共にすることも明らかにした。同大統領はウェストバージニア州での集会に向かうため大統領専用ヘリ「マリーン・ワン」に搭乗する前に、「われわれは中国と取引をすることになるだろう。そして私はそれが全ての人にとって非常に公正な合意になると思う」と発言。米中両国が「何かを行うことに非常に近づいており」、そして「多くの進展があった」と語った」

     

    このトランプ発言から見れば、中国側が相当に米国側へ接近してきたことになろう。習近平氏が、自らの政治的立場を弱くするリスクを抱えても妥協するかどうか。ただ、現実の中国経済は、日に日に悪化している。アリババの7~9月期の売上高は増加しているが、市場の予想を下回っている。注目点は、「11月11日」(独身の日)の恒例の大バーゲンセールの売上高の伸び方次第である。個人消費の退潮が決定的な印象を与えれば、習氏は「白旗」を掲げざるを得まい。

     

    (2)「事情に詳しい関係者4人によると、トランプ大統領は重要閣僚に対し、エスカレートする貿易摩擦に終止符を打つために想定される合意条件の草案作成開始をスタッフに指示するよう求めた。同関係者のうち2人によると、ライトハイザー通商代表部(USTR)代表はG20の際に貿易に関する合意を追求することに難色を示しており、他の閣僚に懸念を表明した。同代表のオフィスにコメントを求めたが、今のところ回答は得られていない」

     

    ライトハイザー通商代表部(USTR)代表は、ここでの妥協に反対のようである。中国経済が苦境に立っている好機を利用して、中国へ抜本的な改革を迫るべきだ。これまでの

    持論を展開していると見られる。



    中国広東省は、「世界の工場」といわれるほど輸出製造業のメッカである。だが、米中貿易戦争の影響で、8割強が被害を被っているという。米国企業などから構成する華南米国商会はこのほど、米中貿易戦争が与える事業への影響について調査した。会員企業を対象に9月下旬から10月中旬に実施したもの。219社が回答した。内訳は、米国企業が45%、中国企業が34%、欧州や日本など米中以外が21%を占めた。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月2日付)は、「米中貿易戦争、「世界の工場」中国南部に打撃」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「調査では、米国が実施した今夏以降の大規模な追加関税について「深刻な影響がある」もしくは「悪い影響がある」と回答した企業は、全体の60%に上った。中国の中でも広東省など南部には多くの工場が集積し、米国への製品輸出も盛んなだけに、貿易戦争が直撃した形だ。さらに米国からの関税の具体的な影響を尋ねたところ「利益の減少」と答えた企業が86%と最も多く、8割強の企業が経営に危機感を示した」

     

    広東省は、「世界の工場」と称せられている。ただ、元祖は英国である。産業革命の発祥地であることから、英国は「世界の工場」として強靱さを備えていた。だが、広東は世界企業の下請けが多く存在している。厳密に言えば、「世界の下請け工場」なのだ。今回の貿易戦争が始って、下請けゆえに利益率が低く、米国の関税引き上げの余波を最も強く受ける弱点を抱える点が明らかになった。

     

    (2)「今後の対応については、「中国の生産ラインを東南アジアへ移す検討をしている」(35%)という回答が目立った。一方、「中国市場の開拓を続ける」との回答も46%あった。華南米国商会は「多くの企業は中国を重要な市場と捉え、さらなる市場開拓が追加関税に対抗する措置の一つと考えている」と分析した。ただ、具体的な今後の経営戦略を尋ねると「中国での投資を延期するか、中止する」(66%)という回答がやはり多い。さらに米中貿易戦争の影響を受ける期間を聞いたところ「約1年」(21%)、「約2年」(14%)、「約3年」(16%)とし、問題の長期化を想定する企業は少なくない」

     

    貿易戦争を乗切る対応策では将来、東南アジア諸国への移転が35%ある。ただ、当面の対策では、設備投資の延期が66%でトップだ。様子見である。これは、国内景気にとって悪材料だ。貿易戦争の期間は「約1年」は21%であるが、本音は、希望的観測で「そうあって欲しい」というものだろう。このように比較的短期に終わると見るならば、東南アジア諸国への移転が35%も占めるわけはない。企業は、このように現実を厳しく認識しながら、短期間で終わってほしいという願望がよく現れている調査結果だ。いずれにしても、米中貿易戦争が、中国経済を大きく揺さぶっていることに間違いない。



    米大統領トランプ氏が、得意の「ディール作戦」に打って出てきた。中国経済が米中貿易戦争で大きく傾きかけている事実を把握して、中国へ「誘い水」を撒いた感じだ。米中首脳は、11月30日からのG20サミットで会談する。その席で、中国に具体案を出すように求めた。

     

    『ブルームバーグ』(11月2日付)は、「トランプ大統領が中国との貿易合意の草案作成を要請」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「トランプ米大統領はアルゼンチンで今月行われる20カ国・地域(G20)首脳会議で貿易について中国の習近平国家主席と合意に達したい考えで、想定される条件の草稿の作成を開始するよう重要閣僚に求めた。事情に詳しい関係者4人が明らかにした。中国との合意をにらんだ動きは、大統領が習主席と1日に電話で話したことから始まったと関係者らが述べた。内部協議だとして匿名を条件に語った。トランプ大統領は電話会談後に、「時間をかけた非常に良い」対話だったとし、貿易を巡る協議は「うまく進展している」とツイートしていた」

     

    (2)「トランプ大統領は重要閣僚らに、エスカレートする貿易摩擦の休戦を示唆するような合意の文書を策定するようスタッフに指示することを求めたという。草案作成には複数の省庁が関わっていると関係者らは付け加えた。トランプ大統領と習主席の間の電話会談が明らかにされたのは6カ月ぶりだった。双方とも、北朝鮮や貿易について建設的な話し合いを持ったとしている。中国が抵抗していた米側の要求をトランプ氏が緩めているのかどうかは不明」

     

    日米欧は、WTO(世界貿易機関)の規則改定に動き出している。11月中に共同提案する改革案によると、WTOに報告せずに自国産業の優遇策を続けた国を対象に新たな罰則を設ける。長期間改善がなければ「活動停止国」と認定。発言権を剥奪するなど活動資格を大幅に制限するという。中国を念頭に置いた措置であることは明らかだ。

     

    中国は、こういう日米欧の動きを知っているはず。我を張っていると、包囲網をかけられる恐れが出てきた。となれば、ここらで妥協する可能性もゼロではない。米国は、こういうWTO改革の動きと連動させながら、米中首脳会談を行なう意図であろう。

     

    (3)「1人の関係者によると、合意の妨げとなり得るのは知的財産を中国が盗んでいると米政権が主張している問題だという。政権はこれについて強い姿勢を取ろうとしている。クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は、トランプ氏と習氏がG20会議に合わせて計画されている会談で、両国間の問題を巡る行き詰まりを打開できる可能性があると述べながらも、知的財産侵害やサイバーセキュリティー、関税などの問題で合意できない場合、トランプ氏は中国に対して「思い切った」行動に出るとも話した」

     

    トランプ側近とされる、クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は、米中首脳会談に当って次の点は絶対に譲歩しないと指摘している。「知的財産侵害やサイバーセキュリティー、関税などの問題で合意できない場合、中国に対して『思い切った』行動に出る」と。この場合、中国からの全輸入品に高い関税をかけことが念頭にある。そうなると、世界経済にとっても深刻な打撃になるし、当の中国経済がひっくり返るリスクを帯びている。大きなヤマ場を迎えた。



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    2010年5月から毎日、中国や韓国をテーマにブログ(「勝又壽良の経済時評」)を書き続けています。これが、私の知的財産です。メルマガに移行しさらに磨きをかけ、ズバリと問題の核心に迫ります。週1回の配信が基本ですが、随時、「号外」を出します。30年間の経済ジャーナリストの経験。16年間の大学教員としての成果を織り交ぜ、特色あるメルマガを配信します。近く、このメルマガに私の使える時間のすべてを集約させます。ぜひ、ご予約をお願い申し上げます。

     

    1号は11月1日(毎週木曜日発行)を配信中です。目次は、次のようです。

    投資主導経済の落とし穴

    バブル崩壊後の金融危機

    米中貿易戦争重圧の中味

    今後、本格化する輸出不振

    消費は早くも生活防衛型

    茅台酒株価が急落の意味

    中国経済の成長は、2010年がピークでした。これは、総人口に占める生産年齢人口(15~64歳)がピークを迎えたからです。中国は1979年から「一人っ子」政策を行い、一夫婦に1人の子どもしか出産を認めなかった。これは、15歳以下の人口を減らして、出産・育児で家庭にとどまる女性の数を減らしたので、多くの主婦が外で働ける機会を得ました。これが、中国経済を歴史にないスピードで高成長を実現させた理由です。

     

    総人口に占める生産年齢人口比率のピークも2010年でした。これ以前は、生産年齢人口比率が上昇、つまり働き手が増え続けるという状況で、経済成長率を押上げたのです。だが、2011年以降は。生産年齢人口比率が低下に向かっています。働き手が減って、扶養人口は増加に転じました。これでは経済成長率が下がります。現在は、その下落過程にあるのです。

     

    実は、生産年齢人口比率が上昇に向かって行く過程で、住宅需要も急増することが分っています。これが、住宅バブルを生む背景になっています。日本の場合もそうでした。この点から言えば、中国の住宅バルは2010年前後をピークにして終わるべきもの。実際は2012年以降、バブルを積極的に利用する政策へ転換したのです。(以下、メルマガで

     

     



    文大統領は11月1日、来年度の予算案を説明する施政方針演説で、「所得主導成長」を初めとするこれまでの経済運営基調を維持していく方針を明確にした。文大統領は、「共に豊かに暮らそう」という表現を11回も繰り返したという。その通りである。人間は豊かな生活を送れる権利を持っている。問題は、政策がそれをいかに正しく実現するかだ。

     

    文大統領は、登山が趣味である。高山に登るには、登山道を歩くことである。文氏は、最短距離を理由に、登山道を外れた崖道をよじ登っていることに気付かないのだ。まさに「経済トンチンカン」である。こういうリーダーに率いられた韓国国民は、「共に豊かに暮らそう」という目標の達成は不可能。遭難は確実である。

     

    景気動向指数の「一致指数」は、4月から連続6ヶ月下降し続けている。韓国の景気判断では、この局面をもって「不況期入り」と公式判断している。これに従えば、韓国経済は10月から不況期に突入した。

     

    文氏は、弁護士出身である。今回の韓国大法院(最高裁判所)が、日本徴用工裁判に見せた「時空を超えた判決」は、浮き世離れした現実無視の最たるケースである。実は、文氏にもこういう思潮傾向が見られる。現実から逃避した空想に生きている。国民が豊かになるには、先ず生産性を上げ、その上で分配率を引上げることが「正規の登山法」なのだ。

     

    『朝鮮日報』(11月2日付)は、「不況の最中に分配訴えた文大統領施政方針演説」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「文在寅(ムン・ジェイン)大統領は国会で来年度予算案を説明する施政方針演説を行い、「所得主導成長」をはじめとするこれまでの経済運営基調を維持していく方針を明確にした。文大統領を「共に豊かに暮らす包容国家」を国家目標とし、そのために「所得主導成長、革新成長、公正競争を中心とした政策基調が続けられなければならない」と述べた。文大統領は35分間の演説の相当部分を分配、二極化、不平等などいわゆる公正経済問題に割いた」

     

    「所得主導成長」には、甘い響きがある。高い所得を生むには、「分配が先か」「生産性を上げるが先か」という根本問題がある。文氏は、反企業主義者である。「生産性」を上げると、企業が悪巧みをして私服を肥やすに違いない。それを防ぐには、先に最低賃金を大幅に引き上げて労働者の権利を確保する。こういう発想法に従っているのであろう。この方法を採用して大失敗したのがフランスである。仏政府は、OECDから忠告を受け、すぐに最賃引上幅を圧縮した。生産性上昇に見合ったペースに戻し、「景気の乱調」は収まった。韓国は、すでにOECDとIMFから警告を受けている。だが、「崖道登山」を強行しているのだ。墜落死は確実であろう。

     

    (2)「文大統領は「共に豊かに暮らそう」という表現を11回繰り返した。共に豊かに暮らすことは全ての国々の目標だ。ところが、共に豊かに暮らす道を見つけた国は豊かになり、おかしな道を歩んだ国は豊かにはならない。現在の文大統領は韓国をどちらの道に導いているだろうか。豊かになる道に向かっていると自信を持って言えるか。文大統領の就任以降、所得分配はさらに悪化している」

     

    韓国国民は、こういう夢想を好む大統領を選んだのだ。反対ならば、もう一度「ロウソクデモ」をやって意思を示すほかない。


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