勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    韓国大統領は、世にも不思議な「秘書官」を置く。最低賃金の大幅引き上げで経営が苦境に立たされている自営業者対策だ。内外から不評と批判を浴びている最低賃金の大幅引上げは、廃止することが最大の対策である。だが、メンツの絡む文政権は、大幅引上げを縮小することなく実行する。その代わりに、専任自営業秘書官を置くもの。

     

    文大統領は、国民に対して「言い訳」の材料にこの自営業秘書官を置くのだろうが、一体、どのような仕事をさせるのだろうか。自営業の経営圧迫要因を軽減せずに、自営業救済は不可能である。

     

    韓国は形式社会である。形式さえ整っていればそれで通るという社会だ。この弊害はあらゆる所に現れている。慰安婦問題でも、日本の首相が膝を屈して謝罪しない限り許さないと息巻いている。実質的には、日韓基本条約で全て解決済みの話だが、「慰安婦」という文言がなかったから「無効」と言い張っている。こういう形式重視国家は、いつまで保つのか。他国ながら気になるのだ。

     

    『朝鮮日報』(8月6日付)は、「大統領秘書官人事発表、新設の自営業秘書官ら6人」と題する記事を掲載した。

     

    自営業秘書官に、韓国中小商人自営業者総連合会のイン・テヨン会長を抜てき。自営業秘書官の新設については、『中小商工業者の競争力向上など対自営業政策を総括・調整する機能を強化する』と説明していた」

     

    自営業秘書官は、韓国中小商人自営業者総連合会のイン・テヨン会長が選任されるという。民間人だが、連合会の会長一人が自営業秘書官になっても効果のほどは知れたもの。むしろ、この秘書官がスケープゴートにされて、責任の全てを丸投げされるに決まっている。この辺りは見事なほど、責任回避政権である。自営業問題の本質は、大幅な最賃の引上げ幅の圧縮しかない。それをやらずにどうやって自営業を振興させるのか。方法などあるはずがない。これで、文政権の支持率はさらに下落するであろう。


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    中国は、聞きしに勝る人権弾圧を行なっている。新疆ウイグル族を同化するために、300万人以上に再教育という名目で拘束しているという。口では立派なことを言って煙に巻いているが、「漢族」絶対優位の下で、少数民族の再編成を行なうのだろう。だが、「民族独立」という世界的な流れに逆らっいる、この世紀の暴挙を止める方法はないだろうか。民族の恨みを軽視してはいけない。中国の経済力が衰えたときに、必ず反撃される。それが有史以来の流れだ。

     

    『大紀元』(8月7日日付)は、「新疆、大量拘束で『空っぽ』になる村、300万人以上に『再教育』か」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国共産党政府は、新疆ウイグル自治区で民族同化政策をますます強めている。海外にある人権監視組織は3日、同地域では300万人が施設に強制収容されたり、短期の思想転向のための講習を受けているとの調査結果を報告した。共産党当局は2017年春ごろから、『強烈な宗教的見解』と『政治的に正しくない思想』を抱いているとして、新疆地区の大勢のウイグル族住民を『再教育施設』に拘禁している。海外の複数の人権団体やウイグル関連組織は、当局支配のもとでウイグル人が監視を受けたり、行動を規制されていると報告している。2団体は、新疆区の南部地域だけでも66万人が収容施設に拘束されており、130万人は強制的に思想の変更を求められる講習会に参加したと推計している」

     

    ここで取り上げられている2団体とは、人権擁護団体・中国人権保護(CHRD)と提携NGOイコール・ライツ・イニシアチブである。この調査は、2団体が2017年7月から2018年6月まで、新疆自治区カシュガル在住の数十人の住民にインタビューした。

     

    共産主義という政治体制は、どうしてこれほど野蛮なことをやらなければ政権を維持できないのか。北朝鮮も同じである。もともと、国民から支持されていない統治体制を強制するゆえに起こる暴力現象だ。こういう共産主義に親近感を持つ人間の精神構造は、極めて冷淡・自己本位・権威主義・暴力主義がない混ざった特異のものであろう。同じ人間の顔をして、ここまで残酷なことができるのはナチスと同じだ。GDP世界2位の中国で、このような非人間的なことが行なわれていることに戦慄を覚える。

     

    (2)「インタビュー調査を受けたある匿名の住民は、青年から壮年まで大量の人々が拘束されたことで、多くの村や町は人がいなくなり『空っぽになった』と話した。この住民は、『街は一部の老人と(共産党に)忠誠心のある人間だけになった』と述べた。また2団体のインタビュー調査によると、各村で平均13%の住民が収容施設に拘束されている。村の平均人口は1500~3000人。さらに、少なくとも30%が、半日あるいは終日の再教育講習を受けたことがある。新疆の再教育施設について、共産党中央政府はこの施設について公的に発表しておらず、収容者の数、場所、収容施設の数など、一切の情報は公表されていない。2団体は、中国政府による『三邪(反テロ、反過激思想、反分離主義)』政策が最も厳しく実行されている地域が新疆地区だとみている」

     

    村の人口の平均は1500~3000人。そのうち平均13%は、収容施設で拘束されている。少なくとも30%は、半日から1日の再教育を受けたという。10年程前、ウイグルを旅行した知人の話では、中国軍はトラックに武装した兵士を乗せて、町中をパトロールしていた。その異常な光景に息をのむ思いだったという。兵士に威嚇させながら統治する。これが共産主義の素顔だろう。

     

    韓国は、日韓併合時代を今でも避難している。だが、中国の少数民族弾圧に比べれば、「天国」であったはずだ。日韓は同胞という意識であり、中国のように収容所で拘束したことはない。現代中国の行なっている少数民族弾圧は、許されない行為である。

     

    米ペンス副大統領は7月、中国政府がテロ対策を名目に、数十万人から数百万人ものウイグル人を不当に収容していると強い懸念を表明した。また米連邦議会では、宗教と信仰の自由を侵害する重大問題として、新疆地区の再教育施設が取り上げられており、この弾圧政策に関わる中国政府高官の米国の銀行口座の凍結が検討されているという。中国のこの悪行を糾弾しなければならない。

     


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    河北省における、中国共産党恒例の北戴河(ほくたいが)会議が、今年も8月4日から始まった。現役の指導部メンバーのほかに、過去の最高指導者や古参の党幹部が集まって非公式会議を開くもの。この会議で、今年は異変が起こっている。

     

    会議は、序列5位の政治局常務委が司会役を務める慣例となっている。今年の役は、王滬寧(ワン・フーリン)政治局常務委員であるが、姿を見せなかった。王氏は、イデオロギーとプロパガンダ(宣伝)の担当である。「習思想」なるものを発案し、習氏の神格化を促進してきた人物として知られている。そのキーマンが、重要会議に姿を見せないほか、ここ1ヶ月の動静が報じられていないのだ。

     

    王氏の失脚説が流れている背景には、米中貿易戦争によって、中国経済が大きな影響を受けていることが考えられる。王氏が、イデオロギーとプロパガンダの両面で、習近平氏に「米国覇権挑戦論」を吹き込んだのでないか。まだ、経済的に米国と対抗できる基盤も整っていない段階で、「背伸びした宣言」をして米国から懲罰とでも言うべき「米通商法301条」を突き付けられ、全面的な貿易戦争へ誘い込まれた。中国内部では、こういう危機感が強い。こうなると、「米国覇権挑戦論」を言い出した王氏が責任をとるべきだ。このように、王氏を取り巻く政治状況は極めて厳しいものがある。

     

    『大紀元』(8月7日付)は、「中国共産党序列5位の王滬寧氏、1カ月姿を見せず。プロパガンダの失敗と関係か」と題する記事を掲載した。

     

    滬寧氏が、1ヶ月も姿を見せないことからいろいろの憶測を呼んでいる。習近平のブレーンとして「国粋主議」的な言動が見られるからだ。マルクス・レーニン主義の強調、偉大なる中国の強調、米国衰退は歴史の法則など、習氏がここ半年、内部で発言したことは、従来にない「過激」なものだった。この発言の裏には、王氏という「振り付け師」がいたのだ。米中貿易戦争という厳しい局面で、王氏が愛国主義で煽っていたことが明らかになっている。

     

    王氏は、戦前の日本で喩えれば、民間人で唯一、A級戦犯に問われた大川周明(1886~1957年)に似た存在であろう。大川は、近代日本の西洋化に反対し、精神面では日本主義、内政面では社会主義もしくは統制経済、外交面ではアジア主義を唱道した。5・15事件(1936年)では、禁固5年の刑を受けるなど日本の侵略戦争を促進した人物である。

     

    王氏は、明治維新を評価し日本が世界的強国に発展したのは軍事力にある。こういう極めて偏った考え方の持ち主だ。中国が、世界の強国になるには、軍事力拡充が先決である、と習近平氏に吹き込んできた。習氏は、この王氏の虜になっており、「世界覇権論」などを臆面もなく言い出したのだ。習氏は、思索の底が意外に浅いことを暴露している。王氏にここまで振り回されて、中国は米中貿易戦争へ突っ込んでいる。専制政治の恐ろしさがここにある。

     

    (1)「中国最高指導部の一人である王滬寧氏がここ1カ月、公の場に現れていないことに対して国内外から注目が集まった。一部のメディアによると、最高指導部は王氏を自宅軟禁し、政策の失敗について反省を命じているという。王氏は76日、中国共産党の中央全面深化改革委員会会議に出席した後、動向を報じられていない。王氏が、習主席が7月下旬の中東・アフリカ各国の歴訪にも同行せず、異例だと言える」

     

    王氏は、習氏の海外歴訪では必ず同行してきた。それが、7月下旬の中東・アフリカ各国の歴訪に姿を見せていない。一部のメディアでは、自宅軟禁されているとの説まで流れている。

     

    (2)「海外メディアや専門家は、王氏に関する憶測は党の宣伝に関するいくつかの事件と関係していると推測する。まず、米中貿易戦が始まる前後、中国共産党のプロパガンダ宣伝は、映画『すごいぞ、わが国(厲害了我的国)』を製作し上映した。映画は共産党の指導を礼賛しながら、中国に対して貿易措置を辞さないトランプ米政権を痛烈に批判した。その後に行われた米中通商交渉において、中国側の担当高官は気まずい状況にあったに違いない。

    トランプ大統領が中国に対して貿易措置を次から次へと打ち出し、中国側はようやく米国を罵倒しても全く効果がないことに気づいた。当局がその後、映画の上映を取りやめ、商務部や外交部、政府系メディアによる貿易戦や米政府への攻撃が一段落した」

     

    中国は、米中貿易戦争突入前に「徹底抗戦」など勇ましい声が飛び交っていた。映画「すごいぞ、わが国」という宣伝映画を公開。国民に強制的に見させてきた。だが、米国政府からZTE(中興通訊)への「取引停止命令」後は、公開を中止してお蔵入りにした。米国からの半導体輸入がストップすれば、ZTEは営業不可能の事態になり、「すごいぞ、わが国」とは真逆のことが起こったからだ。王氏が主導してつくった宣伝映画は、大恥をかくことになった。このように王氏の「世界覇権論」は、風当たりが強くなっている。氏の身辺に何らかの変化があったとしても驚く事態ではない。

     


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    ドイツといえば、中国と経済面で親密な関係を築いている。ドイツ自動車企業は、中国で圧倒的な売れ行きを示している。日中関係が悪化しているとき、中国がドイツに接近して技術窃取を狙ったもの。ようやく、これに気づいたドイツ政府は、大慌てで外資規制強化に乗り出そうとしている。日本を出し抜いたと思っていたドイツは、中国の魔手にかかっていたのだ。

     

    『ロイター』(8月7日付)は、「独政府、外資規制の強化検討 出資比率基準15%に引き下げー独紙」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ドイツ政府は、欧州連合(EU)域外からのドイツ企業への投資について、出資比率が15%を超える場合、政府が介入できるよう規制強化を検討している。7日付の独『ディ・ヴェルト』紙が伝えた。ドイツ政府は昨年、中国企業が相次いで国内有力企業を買収したことを受け、非居住者の出資比率が25%に達した場合に政府が介入できるよう、外資投資規制を強化した」

     

    それにしても、ドイツ政府は中国に対して無警戒過ぎた。ヨーロッパはアジアの事情に疎いとしても、日中がなぜ疎遠になったか。その事情を調べれば、どちらに非があるかは分るはず。そう言っては失礼だが、ドイツ大使館の調査能力不足を露呈している。

     

    ドイツは、国内の世界的なロボット企業の中国買収を認めた。これは、大失策である。ロボットが果たす今後の役割を考えれば、絶対に認めるべきでなかった。今になって、悔やんでも遅い。それでも昨年、非居住者の出資比率が25%に達した場合、ドイツ政府は介入できるよう、外資投資規制を強化した。

     

    (2)「独『ディ・ヴェルト』紙が引用した規制草案は、EU域外の投資家がドイツ企業の議決権を少なくとも15%取得した場合に経済省が介入すべきだ、としている。同紙によると、アルトマイヤー経済相は、防衛関連企業や重要なインフラ、ITセキュリティーなど市民の安全に関わる技術への投資については、将来をしっかりと見極める必要があると指摘。これまで出資比率が25%に達した時のみ政府は審査することができたが、この基準を引き下げることで、配慮が必要な経済部門におけるより多くの買収を審査することができる、と説明した」

     

    この25%出資比率をさらに引き下げて、15%にするという案が検討されているという。米国が、対中貿易戦争を仕掛けている背景は、中国の技術窃取拒否である。ドイツが、この主旨に共鳴して、同一行動を取り始めたと解釈できよう。


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    中国で、不正ワクチン接種問題が発覚して以来、不安が広がっている。この事件は、7月24日のブログで取り上げた。要旨は、吉林省当局がワクチン検査で不合格にもかかわらず、回収命令を出さなかったことに端を発する。調査結果を公表しなかったので、幼児へ接種されて事件になった。当局が、ワクチンメーカー側に立った行政をした結果だ。

     

    『ブルームバーグ』(8月7日付)は、「国産医薬品不信再び、ワクチン不祥事でパニックや抗議 」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国でのワクチンメーカーをめぐる不祥事で、粗悪ワクチンの接種を受けた子供の親の間でパニックや抗議活動が広がっている。少なくとも製薬会社2社が粗悪ワクチンを子供向けに販売していたことが発覚し、国内製薬業界の安全性をめぐり疑念が再び強まっている。深圳上場の製薬会社、長春長生生物科技と国有ワクチンメーカーの武漢生物製品研究所が粗悪ワクチンを数十万の単位で製造していたことが政府の調査で判明した。長春長生生物科技は製造・検査データの捏造にも手を染めていた」

     

    中国政府は、あらゆる方面で補助金をつけて育成強化を図っている。このワクチン事件も、その一環において起こったものと見るべきだ。国有企業がかかわっていることで、それがわかるであろう。

     

    (2)「ツイッターに掲載された動画によれば、北京にある国家衛生健康委員会の建物周辺で7月30日にデモが行われ、参加者はワクチン販売の規制強化を要求した。ワクチン不祥事を受け、ソーシャルメディアで中国消費者の不信感が拡大している。外国メーカー製造のワクチンを求めて香港に渡航する親も現れ、中国の1220億ドル(約13兆5800億円)規模の製薬業界には新たな痛手となっており、調査が続く中で多くの製薬会社の株価が大きく下げている」

     

    中国の食品と医薬品は、「ニセ物」が多発することで有名である。この面で、「日本製」は絶対的な信頼を受けている。訪日中国人観光客が、「漢方薬」を爆買いする珍事が起こっている理由だ。日本へ来てワクチン接種を受けたいという人まで現れ、その案内記事が現れているという。香港へ行くのが近くてベストだ。

     

    (3)「2016年には期限切れワクチンが国内で販売されていたことが大きな問題となった。また、10年前には化学物質のメラミンが混入した国産粉ミルクが販売され、少なくとも乳児6人が死亡、数十万人に健康被害が及んだ。この事件を連想するファンドマネジャーもいる。旭方投資管理の王晨パートナー(上海在勤)は『ワクチン不祥事が一段と深刻化し、粉ミルク事件よりも大きく波及する可能性がある』と指摘。『人々の健康に関わる問題である限り、小さな事件で収まることはあり得ない』と語った」

     

    10年前、メラミン混入の粉ミルク事件が、中国で大きな事件となった。その余波で、日本製や豪州製の粉ミルクが爆発的な売れ行きを示した。豪州では、国内の品不足を起こすほどになり、国際問題に発展したほど。今回のワクチン事件をきっかかけにして、政治と企業との癒着が問われれば、政府は窮地に立つにちがいない。


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