半導体関連企業は、相次いで昨年10~12月決算を発表した。その際の発言から、今年後半から、もっとはっきり言えば第4四半期ころからメモリー半導体市況の回復が見込めるという。株式市場では、これを受けてやや明るさを見せている。
『ロイター』(2月13日付)は、「調整局面の半導体、年後半回復へ 株式市場は先回り」と題する記事を掲載した。
メモリーを中心に調整局面にある半導体市況について、昨年10~12月期決算を発表した製造装置メーカーなど日本の関連企業からは、年後半の回復を予想する声が相次いだ。米国が主導する対中輸出規制の影響も、中身が分からないながら現時点では軽微とみる向きが多く、株式市場では需要の底打ちを先取りしようとする動きもみられる。
(1)「製造装置大手の東京エレクトロンの河合利樹社長は、9日の決算説明会で「調整のど真ん中にいる」と、足元の半導体市況をこう表現した。顧客である半導体メーカーの多くは業績が振るわず、メモリー大手の韓国サムスン電子は22年10~12月期の半導体事業の利益が2011年の会計基準変更以来の低水準に落ち込んだ。23年1~3月期も前年水準を下回る見込みだ。同業の米マイクロン・テクノロジー、CPU(中央演算処理装置)大手の米インテルとも今四半期は赤字を予想。先端半導体を受託生産する台湾のTSMCは今四半期の売上高が最大5%減少するとの見通しを示し、23年の設備投資計画を減額した」
メモリー半導体市況は現在、在庫調整の真っ最中である。これまで、減産経験のないサムスンも、減産するのでないかとの見方も出るほど市況が急落している。右を向いても左をむいても暗い話ばかりだが、次の回復局面への準備に繋がっている。
(2)「世界半導体市場統計(WSTS)によると、前年比26.2%増と過去最高の成長率となった21年に対し、22年は同4.4%増と鈍化、23年はマイナス4.1%を見込む。月次の世界半導体出荷動向は22年7月に32カ月ぶりに前年同月を下回り、以降マイナス成長が継続している。特に落ち込んでいるのがDRAMやNAND型フラッシュなどのメモリーと、コンピューター向けのマイクロプロセッサー。新型コロナウイルス禍での巣ごもり需要の後退で、パソコンやスマートフォンの需要が減少し、世界的に在庫が過剰な状態にある」
23年の世界半導体は、22年の成長率を帳消しにして、マイナス4.1%成長になるという。これは、業界にとっては大変な事態だ。早期の在庫調整に動かざるを得ない局面である。
(3)「東京エレクトロンの河合社長は、「年後半、特に第4四半期辺りにメモリーが回復してくると期待している」と語った。さらに24年以降は高速CPU(中央演算装置)の登場に伴い高性能なメモリーへの投資が増えるとし、来年の製造装置市場は過去最高だった22年以上に拡大すると期待を示した。23年6月通期の受注高予想を下方修正した製造装置メーカーのレーザーテックは、顧客の過剰在庫に伴い調整が行われたが、今回修正分は24年6月期に期ずれするとの見方を示した。世界各国で工場の新設や既存工場の増設が計画されているため、需要は今年前半から戻ってくるとした」
東京エレクトロンの河合社長は、今年の第4四半期辺りにメモリー半導体市況が回復すると見ている。24年の製造装置市場は、過去最高であった22年を上回って、25年も拡大すると楽観的見通しを述べている。
(4)「ほかにも、スマートフォン向けの画像半導体の売り上げが振るわないソニーグループの十時裕樹最高財務責任者(CFO)は、「23年度後半から緩やかに回復していく」と話し、自動車向け半導体のルネサスの柴田英利社長は、「パソコンやモバイルなど消費者向けを中心にそこそこ大きな調整局面が続いている」ものの、第2・四半期ごろには底打ちするとの見方が支配的だとした」
メモリー半導体市況は、4~6月期に底打ちしてそれ以降の回復という見方もある。
(5)「米国が主導して強化に動く半導体技術の対中輸出規制が不透明要因だが、日本勢への影響は今のところ見られない。露光装置を手掛けるニコン、キヤノンとも現時点で業績に影響はないとしている。東京エレクトロンは昨年秋に影響を織り込んで23年3月通期の業績予想を下方修正したが、9日の決算発表では予想より影響が小さかったとして一転上方修正した。製造装置メーカーのSCREENホールディングスの広江敏朗社長は、不透明な状況を踏まえて23年の前工程製造装置市場は「前年比15%~20%程度の減少と幅を持たせてみている」とする一方、中国市場の規制対象以外の投資意欲は「依然として活発で、この辺りは継続している」と語った」
米国主導の半導体技術の対中輸出規制は、日本企業には影響なさそうと言う。それほど、高度の製造設備を輸出していないということか。