勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    あじさいのたまご
       


    半導体関連企業は、相次いで昨年10~12月決算を発表した。その際の発言から、今年後半から、もっとはっきり言えば第4四半期ころからメモリー半導体市況の回復が見込めるという。株式市場では、これを受けてやや明るさを見せている。

     

    『ロイター』(2月13日付)は、「調整局面の半導体、年後半回復へ 株式市場は先回り」と題する記事を掲載した。

     

    メモリーを中心に調整局面にある半導体市況について、昨年10~12月期決算を発表した製造装置メーカーなど日本の関連企業からは、年後半の回復を予想する声が相次いだ。米国が主導する対中輸出規制の影響も、中身が分からないながら現時点では軽微とみる向きが多く、株式市場では需要の底打ちを先取りしようとする動きもみられる。

     

    (1)「製造装置大手の東京エレクトロンの河合利樹社長は、9日の決算説明会で「調整のど真ん中にいる」と、足元の半導体市況をこう表現した。顧客である半導体メーカーの多くは業績が振るわず、メモリー大手の韓国サムスン電子は22年10~12月期の半導体事業の利益が2011年の会計基準変更以来の低水準に落ち込んだ。23年1~3月期も前年水準を下回る見込みだ。同業の米マイクロン・テクノロジー、CPU(中央演算処理装置)大手の米インテルとも今四半期は赤字を予想。先端半導体を受託生産する台湾のTSMCは今四半期の売上高が最大5%減少するとの見通しを示し、23年の設備投資計画を減額した」

     

    メモリー半導体市況は現在、在庫調整の真っ最中である。これまで、減産経験のないサムスンも、減産するのでないかとの見方も出るほど市況が急落している。右を向いても左をむいても暗い話ばかりだが、次の回復局面への準備に繋がっている。

     

    (2)「世界半導体市場統計(WSTS)によると、前年比26.2%増と過去最高の成長率となった21年に対し、22年は同4.4%増と鈍化、23年はマイナス4.1%を見込む。月次の世界半導体出荷動向は22年7月に32カ月ぶりに前年同月を下回り、以降マイナス成長が継続している。特に落ち込んでいるのがDRAMやNAND型フラッシュなどのメモリーと、コンピューター向けのマイクロプロセッサー。新型コロナウイルス禍での巣ごもり需要の後退で、パソコンやスマートフォンの需要が減少し、世界的に在庫が過剰な状態にある」

     

    23年の世界半導体は、22年の成長率を帳消しにして、マイナス4.1%成長になるという。これは、業界にとっては大変な事態だ。早期の在庫調整に動かざるを得ない局面である。

     

    (3)「東京エレクトロンの河合社長は、「年後半、特に第4四半期辺りにメモリーが回復してくると期待している」と語った。さらに24年以降は高速CPU(中央演算装置)の登場に伴い高性能なメモリーへの投資が増えるとし、来年の製造装置市場は過去最高だった22年以上に拡大すると期待を示した。23年6月通期の受注高予想を下方修正した製造装置メーカーのレーザーテックは、顧客の過剰在庫に伴い調整が行われたが、今回修正分は24年6月期に期ずれするとの見方を示した。世界各国で工場の新設や既存工場の増設が計画されているため、需要は今年前半から戻ってくるとした」

     

    東京エレクトロンの河合社長は、今年の第4四半期辺りにメモリー半導体市況が回復すると見ている。24年の製造装置市場は、過去最高であった22年を上回って、25年も拡大すると楽観的見通しを述べている。

     

    (4)「ほかにも、スマートフォン向けの画像半導体の売り上げが振るわないソニーグループの十時裕樹最高財務責任者(CFO)は、「23年度後半から緩やかに回復していく」と話し、自動車向け半導体のルネサスの柴田英利社長は、「パソコンやモバイルなど消費者向けを中心にそこそこ大きな調整局面が続いている」ものの、第2・四半期ごろには底打ちするとの見方が支配的だとした」

     

    メモリー半導体市況は、4~6月期に底打ちしてそれ以降の回復という見方もある。

     

    (5)「米国が主導して強化に動く半導体技術の対中輸出規制が不透明要因だが、日本勢への影響は今のところ見られない。露光装置を手掛けるニコン、キヤノンとも現時点で業績に影響はないとしている。東京エレクトロンは昨年秋に影響を織り込んで23年3月通期の業績予想を下方修正したが、9日の決算発表では予想より影響が小さかったとして一転上方修正した。製造装置メーカーのSCREENホールディングスの広江敏朗社長は、不透明な状況を踏まえて23年の前工程製造装置市場は「前年比15%~20%程度の減少と幅を持たせてみている」とする一方、中国市場の規制対象以外の投資意欲は「依然として活発で、この辺りは継続している」と語った」

     

    米国主導の半導体技術の対中輸出規制は、日本企業には影響なさそうと言う。それほど、高度の製造設備を輸出していないということか。

     

     

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    韓国家計は、債務残高が対GDP比で104%を超えている。これは、OECD加盟国中でワースト・ワンだ。韓国人が、借金に対して警戒感が鈍いのは、その裏に、「一攫千金的」願望があるので、いずれは債務を返せるということに繋がっているのであろう。

     

    こういう「推測」に当てはまる世論調査結果が出た。「もし過去に戻れるならば、投資で大儲け」という回答が半分近い49%にも達した。韓国社会の一断面を伝えている。

     

    『朝鮮日報』(2月12日付)は、「韓国人9600人に聞いてみた『もし過去に戻れるなら?』 半数は投資で人生大逆転だった」と題する記事を掲載した。

     

    「もし過去に戻れるなら、一番したいことは何ですか?」。韓国の成人男女に、過去に戻れるとしたら一番したいことを問いかけたところ、「株式・ビットコインなどの投資で人生を大逆転させたい」と答えた人がほぼ半数に達した。

     

    (1)「SKコミュニケーションズの時事世論調査サービス「ネイトQ」が成人男女9613人を対象に「もしあなたが過去に戻れるとしたら、一番したいことは何ですか」というアンケート調査を行った結果、回答者の半数近い4747人(49%)が「株式やビットコイン、ロトくじなどへの投資で人生を大逆転させたい」と答えたことが7日、分かった」

     

    回答者の49%が、「一発屋」に夢を賭けていることがわかった。こういう意識が、過剰債務への警戒感を緩めているのであろう。

     

    (2)「特に20~30代世代で人生大逆転に対する欲求が顕著だった。「過去に戻れるとしたら、人生で一発大逆転を狙うだろう」と回答した割合は、20代で54%、30代で56%と、その他の年齢層よりも高かった。SKコミュニケーションズではこの回答について、「20-30代は現在の経済的地位や条件に対する相対的喪失感と現実的不満がほかの世代よりも強い」と分析している」

     

    「一発大逆転」願望は、20代で54%、30代で56%と過半を超えている。結婚や住宅と物入りの話が多いだけに、金銭への願望が大きくなるのだろう。韓国が、年功序列賃金制を止めて、成果給的なものに切り変えれば、こういう「一発大逆転」への願望も消えるかも知れない。

     

    (3)「アンケートでは回答者たちの胸に響く回答も多く目についた。全回答者のうち2097人(21%)は「今は会えないけれども、とても会いたい人々と幸せな時間を過ごす」と回答した。中でも「過去に戻れるなら、亡くなった父親と家族旅行をして動画に残す」「父と母に会って、大好きだと言いたい」「配偶者を突然亡くしたので、まだ実感がない」など、今は会えない親や兄弟姉妹、配偶者に対する思いをコメントにつづっている」

     

    一方では、ウエットな回答も多い。21%が、精神的な充足感を求めているのだ。亡くなった家族への追憶という「しんみりした」ものも多かった。砂漠(金銭亡者)の中での「オアシス」という感じだ。

     

    (4)「1975人(20%)は「現実の壁にぶつかって、いまだに叶っていない夢を必ずかなえたい」と回答し、必ず成し遂げたいと思っていることに挑む決意を明らかにした。回答者のうち380人(3%)は「過去に戻れるとしたら、私をいじめた人に復讐(ふくしゅう)したい」と答えた。このほかにも、「結婚しない」「配偶者に違う人を選ぶ」「若気の至りでひどい別れ方をした初恋の人にまた会いたい」「健康ほど大切なものはない。健康な体に戻りたい」など、現在の生活で悔やんでいることを挙げた人々もいた」

     

    20%の人々は、未だ叶えていない夢を実現したいという前向きの回答をしている。こういう答えには、「頑張れ」と一声掛けたくなる。

     

    (5)「SKコミュニケーションズのアン・ジソン・メディアサービスチーム長は、「『金のスプーン、土のスプーン』などのいわゆる「スプーン階級論」(日本で言う親ガチャ)という流行語が登場するほど、あらゆる世代を中心に広がっている経済・地位の格差に対して、喪失感や不満が反映された結果ではないかと思う」「経済格差が深刻になっている中、物質的な豊かさ以上に大切な生きることの価値を認識・経験できる社会的環境づくりに、いっそう関心を向けることが必要な時期ではないかと思う」と語った」

     

    下線部は、重要な指摘である。ユン大統領は、2月7日に32の省庁公務員約150人と会い、労働改革に対する政策方向について話し合った。その中で大統領は、「既得権と妥協すれば改革ができない」と語った。韓国にはびこる格差拡大に対しては、既得権益の打破が不可欠という厳しい姿勢だ。今回の世論調査は、ユン政権にとって大きな課題を示している。

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    習近平氏は、断片的に「3つの罠」を上げてきた。「トゥキディデスの罠」、「中所得国の罠」、「タキトゥスの罠」の三つである。指摘されて見れば、そうだったなと思い起こすが、過去3年間のゼロコロナ時代の施策は、全て前記「三つの罠」と無縁の行動であった。言行不一致は否めないのだ。

     

    習氏は、国家主席在任10年間で、不動産バブルを焚きつけ、出生率の急減によって、ついに人口減社会へ突入してしまった。まさに、自らが仕掛け罠に嵌り込んだ印象である。

     

    『毎日新聞』(2月12日付)は、「習近平氏が懸念する『三つの罠』と23年の中国経済」と題する寄稿を掲載した。筆者は、早稲田大学教授の青山瑠妙氏である。

     

    習氏は、これまで「トゥキディデスの罠」、「中所得国の罠」、「タキトゥスの罠」という「三つの罠」についてしきりに注意喚起を行っていた。習氏が懸念する「トゥキディデスの罠」、「中所得国の罠」、「タキトゥスの罠」は、米中対立を基調とする国際環境、中国経済の構造転換、多様な世論環境と高まる国民の不満と言い換えることもできるかもしれない。

     

    (1)「第一は「トゥキディデスの罠」である。台頭する大国はますます自信をつけ、既存の支配国は優位性を失う恐怖におびえる。こうしたなか、それぞれの同盟国は台頭する大国と既存の支配国を戦争に駆り立てることから、米中両国が戦争に陥る可能性が高いという罠だ」

     

    米中対立が、戦争を引き起すリスクである。史実によれば、新興国が覇権国家へ開戦している。中国が戦争を仕掛けなければ、戦争は起こらないのだ。

     

    (2)「第二は、「中所得国の罠」である。1人当たりの国内総生産(GDP)が3000ドルから1万2000ドルに達する途上国が陥りやすい罠だ。こうした国々は多くの社会問題に直面するが、発展政策の転換がうまくできないことなどから長期的な経済低迷に陥る。中国の「中所得国の罠」に関する議論は日本でもしばしば展開されている」

     

    中国が、中所得国の罠に陥る危険性は極めて高い。人口減が、その引き金になる。中国が、ロシアのウクライナ侵攻を支持していることも、米国から半導体技術の対中輸出禁止を誘発している。

     

    (3)「第三は、「タキトゥスの罠」である。ここ10年、中国で社会問題が生じるたびにこの「タキトゥスの罠」が持ち出される。政治権力が信用を失ったときに、いかなる政府の発言であっても、いかなる政策を実施しても、社会からの厳しい批判にさらされるという罠だ」

     

    「タキトゥスの罠」は、日常茶飯事になっている。強引な3年間のゼロコロナと突然の「フルコロナ」は、国民はもちろんのこと世界中から不信を買っている。

     

    (4)「22年の中国の経済成長率は3%にとどまり、四十数年来で初めて世界のGDP成長率を下回った。こうした状況に中国政府は危機意識を示している。22年末に開かれた中央経済工作会議で出された政府のメッセージは明確であり、23年の最も重要な課題は経済回復であるという。しかし中国の経済回復はこの「三つの罠」とも絡み、容易に実現できるものではない」

     

    習氏は、「三つの罠」を例示したものの、自らは一つもそれに備えた防御措置を講じなかったのだ。言行不一致、これに優るものはない。

     

    (5)「昨年末の中央経済工作会議では、経済回復の基盤はまだ盤石ではなく、需要縮小、供給ショック、弱まる期待は「三つの重圧」となっているとの認識が示された。こうした問題に対処するために、政府は財政と金融政策を通じて、経済成長、雇用と物価の安定という「三つの安定」を重要な政策に据えた」

     

    中国は、標語造りで抜群の才能を発揮する。宣伝能力は高い。結果が付いてこないのだ。これが、最大の欠陥である。

     

    (6)「経済回復のための政府の政策が市場からの信頼を得られなければ、投資と消費も二の足を踏む。「タキトゥスの罠」のキーワードとなる政府への信頼は、内需拡大や消費者コンフィデンス形成のカギでもある。市場の信頼は「トゥキディデスの罠」の緩和にもつながる。アメリカは昨年10月に半導体の先端技術、製造装置の輸出管理規制を強化し、今年1月に日本やオランダも参加することがメディアで伝えられた。他方の中国は「政経分離」のロジックで欧米諸国に訴えかけている。市場原理で行動する海外の企業と投資家の経済意欲を促すためには、中国政府による市場経済路線の明示が必要とされているのではなかろうか」

     

    中国は、厖大な軍事予算を投じていることで、「三つの罠」に自ら飛び込んでいる。米国打倒が、中国の隠れた国是である。この程度のことは、世界中に知れ渡っている。軍事国家を目指している以上、三つの罠を避けることは不可能であろう。

     

    (7)「中国が「中所得国の罠」を回避するためには、構造改革が必要不可欠であるとかねて言われている。しかし不動産市場の低迷に加え、23年の地方財政はいま厳しい状況にある。結局のところ、習氏が重視する「三つの罠」を回避し経済を回復させるには、中国政府とその経済政策に対する中国国内の消費者、企業、そして世界の信頼が不可欠であり、市場から信頼を得ることがなによりも重要だ」

     

    一度、失った信頼を取り戻すのは困難である。「三つの罠」は、今後も中国について回ると見るほかない。習氏の過去10年の足跡が、「三つの罠」と無縁でないからだ。

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    強力な日米一体化の意味

    日本貢献を認めない左派

    政治対立で空転する国会

    過激労組に穏健派が登場

     

    韓国は、独立して77年が経った。この間、続いていることは日本による植民地統治への非難である。反日運動の原点だ。韓国は善、日本が悪という図式で捉えているのが、進歩派を自称する左派である。「進歩」の持つ本来の意味は「未来志向」の筈だが、韓国進歩派は、「過去志向」である。決して未来に向かわず、過去をほじくり出しては、日本へ謝罪と賠償を求めることの繰返しである。

     

    世界情勢は、こうした韓国の「コップの中の嵐」を許しておくほど悠長ではなくなった。米中対立が、新たな時点を迎えているからだ。ロシアによるウクライナ侵攻は、中国の台湾侵攻を現実問題として浮上させてきたのである。

     

    強力な日米一体化の意味

    米国の戦略国際問題研究所(CSIS)が最近発表した、中国の台湾侵攻シミュレーションによれば、最終的に米軍は中国海軍を全滅させて勝利を収めるという結果になった。この米軍勝利のシミュレーションにおいって、決定的な役割を果たすのが、米軍在日基地の存在である。つまり、台湾侵攻を巡る米中激突では、日本が米軍の在日基地利用を許すかどうかが帰趨を決めるのである。

     

    CSISシミュレーションは、日米一体化によって台湾民主主義を守ることの重要性をアピールしている。これに引き替え、韓国の役割はゼロとなっている。こうなると、韓国の反日運動は完全に世界の時流から取り残された、「孤島」での騒ぎ程度の意味しか持たなくなろう。

     

    韓国は、台湾有事で日米連携の輪から外れた存在になっている。左派の人々は、この現実をどのように受け止めるべきか。自問自答している様子も見られないのだ。ロシアのウクライナ侵攻をきっかけにして、5年後にドイツや日本は防衛費を対GDP2%(現在は1%)へ引上げる決定をした。韓国左派は、日本の防衛費増大を非難しており、自衛隊が韓国へ上陸する前提条件ができた、という受取り方をしているほどだ。

     

    ドイツは、NATO(北大西洋条約機構)の一員としての防衛費増大である。日本は、日米同盟の中での決断である。つまり、ドイツも日本も同盟国の一員としての防衛費引上である。韓国左派は、こういう国際情勢の変化を全く無視して、「反日」の立場だけで非難しているのだ。韓国が、防衛費を引上げたからと言って、日本が神経を尖らすことはない。米韓同盟という枠組があるからだ。日本も全く同様である。韓国は、こういう仕組みの存在を無視しているから驚く。余りにも、片手落ちな議論と言うべきだろう。

     

    前記のCSISの米中戦争シミュレーションでは、既述の通り韓国が中国の報復や北朝鮮の徴発を恐れて米国を支援しないだろうと見なしている。その結果、米軍は韓国国内の米戦闘機の半数を他の地域へ移して使用するのが最善としている。このように、米国は対中戦略上で韓国の役割に何ら期待していないことが明らかになった。

     

    米国は、台湾有事における韓国の役割を「ゼロ」と見ているのに対し、日本へは格別の期待をしている。明治以降の日米関係史において、日米がここまで一体化した例はない。韓国が、反日で米国へ介入を求めても、もはや取り合って貰えない時代であることを認識すべきだ。韓国が、外交で日本を動かす時代は終わったのである。

     

    日本貢献を認めない左派

    韓国左派は、韓国経済がGDP世界10位のランクまでに成長した原点に、日本が1965年に無償・有償・借款で11億ドル以上の資金供与を行なった事実を無視している。この資金が、朝鮮戦争で灰燼に帰した韓国を立ち直らせたのである。

     

    韓国を代表する企業が、設立されたのは1968年頃である。現代自動車(1967年)、ポスコ(1968年)、サムスン電子(1969年)が、同時期に誕生している。1968年の1人当たりの国民総所得は178ドル36セント。韓国は当時、フィリピンやベトナム、カンボジアより貧しいかほぼ同じ水準で、アフリカからも援助を受ける国であったのだ。

     

    こういう韓国企業が、頼りにしてきたのは日本企業である。日本企業の技術支援を受けて一本立ちできたのだ。この事情を忘れて、韓国外交官がアジアでの会合で、ひとしきり日本批判をした。これを聞いていたインドネシア外交官は、「インドネシアも日本の隣国になりたかった」とつぶやいたという。

     

    韓国には、日本に統治された弊害のみを強調するが、これによって近代化へのレールが敷かれた事実を棚上げしている。日本は、儒教に代わって近代化教育を普及させ、京城帝国大学まで創設したのだ。世界において、植民地で高等教育機関を設立したのは日本だけである。台湾にも台湾帝国大学を設立した。韓国も台湾も工業化に成功できたのは、それを支える人材が育っていた結果だ。経済発展において、資本と人材は車の両輪である。韓国にそれらを提供したのは日本である。(つづく)

     

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    テイカカズラ
       

    米国が、中国へ先端半導体(14ナノ以下)の技術輸出を禁止し、日本とオランダもこれに同調したので、中国は自力で先端半導体を製造することが不可能になった。これを受けて、中国は汎用品半導体生産に特化する動きを見せている。このため、日本製の中古半導体製造設備に関心が集まっているのだ。これは、いずれ韓国からの対中半導体輸出減少を意味する。韓国には、新たなショックが起ころう。

     

    中国では現在、日本製中古半導体製造装置に対する問い合わせが急増しているという。香港紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』(SCMP)が2月9日(現地時間)、「日本が中国に対する半導体製造装置・技術関連規制を強化すると伝えられたことから、生産拡大やアップグレードするため外国製機器が必要な中国の工場は不安に駆られている」と朝鮮日報(2月12日付)が伝えた、

     

    『朝鮮日報』(2月12日付)は、「中国の半導体自力更生 韓国にとって対岸の火事ではない」と題する記事を掲載した。

     

    中国では、これまで需要がなく操業を中断していた国営半導体メーカーに突然受注が舞い込み、生産を再開する例が相次いでいる。今年初めまでは廃墟状態だったが、再び稼働を開始した福建省厦門(アモイ)市、泉州市の半導体工場もそうして復活した。中国のIT企業さえ存在を無視していた国営半導体メーカーに大規模な発注を行う救世主が現れたのだ。

     

    (1)「救世主はほかでもない通信機器大手の華為(ファーウェイ)だ。米国の制裁で海外から半導体を調達することも、独自設計した半導体を海外のファウンドリー(受託生産業者)に任せて生産することも難しくなったファーウェイが、自国の半導体メーカーを通じた半導体生産を本格化しているのだ。日本経済新聞は北京、武漢、青島から深センに至るまで仕事がなかった各地の半導体メーカーを復活させるのに華為が投入した資金を558億ドル(約7兆6500億円)と試算した。華為としては、米国の技術や設備を使わない独自のサプライチェーンをつくる以外に活路がなかった」

     

    ファーウェイは、国内の汎用品半導体生産を復活させるために、558億ドルもの発注をしているという。これも、韓国からの半導体輸出を減らす要因である。

     

    (2)「華為が、生き残りのための半導体ゲリラ戦を繰り広げている間も、米国の中国半導体業界に対する攻撃は止めなかった。バイデン政権は22年10月、14ナノメートル以下(NAND型フラッシュメモリーは128段以上)の先端半導体の製造技術と設備、人材の対中輸出を全面禁止した。中国に進出した米半導体企業は一夜にして中国を離れ、中国企業が雇用した米国の半導体技術者も全員が撤収した。中国半導体メーカー全てが華為と同じ境遇になったのだ」

     

    米国は、中国へ14ナノメートル(ナノは、10億分の1メートル)以下の先端半導体技術輸出を禁止。日蘭が、これに同調することになった。これでは、中国半導体企業もお手上げである。

     

    (3)「こうした状況で、今は自ら作って消費しなければならない状況となったのだ。最も象徴的な変化が中国最大の半導体企業、中芯国際集成電路製造(SMIC)が米国の技術、装備を使わない生産ラインを作ったことだ。「Non A」と呼ばれるこのラインでは、直ちに回路線幅40ナノメートルのロースペックの半導体を作ることができ、2年後には28ナノメートルまで微細化を進めることが目標だ。それもオランダのASML、日本のキヤノンなど米国以外の装備メーカーが引き続き設備を提供しなければ生産が不可能な状況だ」

     

    中国は、高度の半導体製造設備をつくれない国である。それだけに、今回の日米蘭による協調行動は、致命的な影響を与える。

     

    (4)「当面、全世界は台湾積体電路製造(TSMC)、サムスン、インテルなどが作る先端半導体を使う国々と古い国産半導体を使う中国に分かれるだろう。iPhoneとテスラを購入できる中国の富裕層とは異なり、それほどの購買力がない普通の中国人は10~20年遅れの国産品を使わなければならない。数億人に上る彼らのおかげで、中国の半導体メーカーも持ちこたえることができ、技術力を蓄積するだろう」

     

    中国は、先端半導体を製造できないので、汎用品半導体生産に特化していかざるを得なくなった。その面では、製造技術を磨くチャンスになって、韓国からの輸入代替の役割を果たすであろう。韓国には痛手だ。

     

    (5)「日本と欧州の合計の1.5倍を超える人口を持つ中国でも、グローバルサプライチェーンとは接点がない独自の半導体サプライチェーンを構築することは不可能だ。しかも、先端半導体なしには米国を追い抜くという目標の達成どころか産業全般の後退が避けられない。中国が結局は自分たちの資源と市場をテコに米国と妥協し、グローバルサプライチェーンを再び揺るがすとみられているのもそのため。そのころの中国半導体市場は中国企業がシェアを拡大した後である可能性が高い。中国の半導体危機は韓国にとって決して対岸の火事ではない」

     

    下線部は、重大な誤認をしている。米国が、中国へ先端半導体輸出の全面的な禁止策に出たのは、中国の米国への軍事的挑戦を封じるためである。中国共産党が滅びない限り、この挑戦リスクは続くのだ。それゆえ、米国は中国へ絶対に妥協できない事情にある。米国が、先端半導体技術を中国へ輸出することはあり得ないことである。

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