勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    テイカカズラ
       

    日本の寺に祀られていた朝鮮仏像が、韓国窃盗団によって盗まれ韓国へ持込まれた事件は、10年越しの裁判になっている。韓国の一審では、600年前に倭寇によって日本へ持ち去られたものだから、韓国の寺に返すべきという判決であった。これは、韓国人の盗難行為を合法化するという、「異例の判決」である。二審判決は、これを覆して日本の寺へ返還すべきとの常識的判決になった。ようやく、韓国司法に常識が戻って来たが、最高裁までもつれるであろう。

     

    『朝鮮日報』(2月3日付)は、「日本から盗んだ盗品を返さなかった10年、被害を受けたのは韓国だ」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「日本の寺から2012年に盗まれ、韓国に持ち込まれた仏像の所有権が日本の寺にあるという二審判決が出た。600年余り前にその仏像を所有していた韓国の寺に所有権があるとした一審判決を覆したのだ。いかなる理由で仏像が日本の寺に渡ったのかははっきりしないが、盗んだ品物は盗まれた所有者にひとまず返すべきだ。もし略奪されたのなら、その事実を証明した後、国際法が定める略奪文化財の回収手続きによって所有権が認められなければならない。ところが、まずは返さなければならないという判決が出るのに10年かかった。最高裁判決が確定するまで今後どれほどかかるか不明だ」

     

    韓国の一審では、「愛国裁判」というポピュリズムで、日本からの盗品を合法化するという、国際的にも認められない判決を出した。「反日ムード」に乗ったものである。感情を抜きにして、純粋に犯罪行為を取り上げるべきであった。大法院(最高裁)による、徴用工判決もこの「反日ムード」を利用したものである。

     

    (2)「日本の寺から仏像を盗んだのは前科56犯、平均年齢62歳の韓国人専門窃盗団4人だった。暴行など前科18犯の暴力団出身者が盗んだ仏像を処分する盗品ブローカーを務めた。彼らは文化財だけでなく機械、たばこなどカネになる物は何でも盗んだ。彼らが対馬遠征に出たのは、文化財の価値に比べ、現地の管理が緩いという情報を得たためだとされる。不法犯罪の利益を狙っただけで、文化財の回収とは関係なかったことになる。そんな盗品を韓国の裁判所は「略奪されたかもしれない」として10年以上も韓国に引き留めたままだ」

     

    韓国の窃盗団が、対馬の寺は警備が手薄であることを利用して、仏像を盗み出して転売した事件だ。600年前に朝鮮にあった仏像だから韓国へ返せとは、余りにも現代の国際法を無視した判決である。こういう非常識判決が出るほど、韓国の反日ムードが強かった証拠であろう。裁判官も時流に流されているのだ。

     

    (3)「韓国の寺が主張する通り、仏像は600年余り前に倭寇によって略奪された可能性もある。二審も「略奪があった状況と蓋然性がある」とした。しかし、推定にすぎず、立証されていない。文化財庁も6年前、「蓋然性はあるが確証はない」と述べた。略奪が事実だとしても500~600年余り前に起きたことを理由に現所有者の所有権を奪うことが法的に可能なのかも疑問だ。二審は「盗難に遭うまで日本の寺が(宗教法人設立から)60年間仏像を占有し、取得時効20年が成立しており、所有権が認められる」と指摘した。韓国の地で作られた仏像を返すことは残念で、仏教界の反発も理解できるが、世界中が見守る中で窃盗行為を正当化することはできない」

     

    下線のような判決が、なぜ一審では出なかったのか。裁判過程では当然、出てくる法手続き論であろう。その基本が無視されていたのだ。

     

    (4)「実際この問題は、法律でなく常識で誰でも判断できる案件だ。ところが、韓国の寺が「仏像が日本に行った経緯が明らかになるまで返すな」という仮処分を申し立て、判事がそれを受け入れる事態となった。さらに17年、一審は600年余り前に略奪があったという状況と蓋然性だけに基づき、日本の寺の所有権を否定した

     

    下線部は、一審の判決理由である。これは、感情論の判決であろう。法理論を完全に無視している。

     

    (5)「現在、高麗時代の仏画の多くは外国にある。相当数は米国の所蔵だ。そのうちのいくつかは略奪されたかもしれない。しかし、窃盗犯が米国からそんな仏画を盗んできても「韓国の物だ」という判決を下す判事がいるだろうか。相手が日本なら、どんな強引な判決を下しても「愛国」判事として扱われるのだろうか。法理ではなくポピュリズムによる判決と言わざるを得ない。韓国の裁判所では、そんな判決が12件にとどまらない。その間、韓日の文化交流は中断され、世界の文化界で韓国は盗品すら返さない国と評された。傷を負って被害を受けたのは韓国だ」

     

    下線部が、韓国司法の実態であろう。世論に迎合した判決が多いのだ。このことは、政治権力に影響されるという根本的な弱点にも繋がっている。


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    インドは、ロシアのウクライナ侵攻に対して「反対」意思を示さずに来た。ロシアから大量の武器を購入している結果だ。ロシア製武器で、中印国境で中国軍と対峙しなければならなかったのである。そのロシアが、経済制裁で武器生産が止っている。この間隙を縫って、米国がインドと先端兵器開発協定を結び、インドとの関係を強化して中国へ対応することになった。

     

    韓国紙『東亜日報』(2月2日付)は、「米『インドと先端兵器共同開発』 クアッドの『中国牽制戦線』強化へ」と題する記事を掲載した。

     

    バイデン米政権は1月31日、インドとジェットエンジンなどの先端兵器の共同開発と半導体生産施設の支援などを盛り込んだ「米印重要・新興技術イニシアチブ」(iCET)を発表した。中国牽制に向けてインドとの安全保障協力強化はもとより、半導体のグローバル・サプライチェーンで中国に代わる核心パートナーとしてインドを重視する構想を本格化したのだ。

    (1)「サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)とインドのドバル国家安全保障担当補佐官は同日、ホワイトハウスで会議を開き、iCETを公開した。ホワイトハウスは報道資料で、「米国とインドは国防技術共同開発及び生産に向けた技術協力の加速化のために国防産業協力ロードマップを開発する」とし、「米国はゼネラル・エレクトリック(GE)が申請したインドとのジェットエンジン共同生産を迅速に検討する」と明らかにした。また、長距離砲とストライカー装甲車のインド生産案を推進することを決めた。インドと中国はヒマラヤ地方で国境紛争を抱えている」

     

    スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、2016〜20年のインドの武器輸入に占めるロシアの割合は5割に達した。ロシアからみても武器輸出総額の2割強がインド向けだ。インドとロシアは、武器の取引で関係を深めてきたのだ。米国は、この中へ割って入り「米印」関係強化に乗り出した。

     

    (2)「バイデン政権は今回の合意で、インドのロシア兵器の依存度を下げると共に、中国を牽制する新たな兵器の生産地を確保することになった。また、日本、オーストラリアに続きインドとも兵器の共同生産に乗り出し、中国を牽制する安全保障の協力枠組み「クアッド」加盟国の全ての国と安全保障協力強化にスピードを出すことになった。サリバン氏は同日、「2016年の米インド原子力協力合意後、両国関係の新たなマイルストーン」とし、「中国との地政学的競争は、米インド関係の核心軸」と述べた」

     

    インドが、ロシアのウクライナ侵攻に正面切って「反対」できないのは、インドが独立して以来ずっとロシア(ソ連時代を含め)がインドの武器供給で支援してきたつながりがある。こういう関係から、インドは「中立」の立場を通してきた。だが、武器供給で米国が協力する体制ができたので、インドのロシアへの姿勢は「是々非々」を貫けることになろう。また、中国に対しては米国の後ろ盾を得て、より強硬姿勢を取るであろう。

     

    (3)「米国は、インドと半導体、次世代移動通信、月探査などの宇宙協力も強化する方針だ。ホワイトハウスは、米半導体産業協会(SIA)とインド電子・半導体協会(IESA)がタスクフォースを構成し、「インドの半導体設計、製造および生態系開発を支援する計画」と明らかにした。日本と先端半導体を共同開発することにした米国が、インドとも協力を強化し、韓国と台湾に集中した先端半導体サプライチェーンを多様化する考えだ」

     

    米国は、インドのIT化に協力する。インドの工業化には、ITを基盤にしながら幅広い製造業を育成しなければならない。

     

    (4)「また、半導体・科学法により、海外の主要半導体企業の米国内の生産工場の投資が本格化し、人材難の懸念が大きくなる中、インドで半導体専門家を養成する構想ともみられる。米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、「米国がグローバル・サプライチェーンで、中国の代わりとしてインドを重視している」と分析した」

    インドは、「クアッド」(日米豪印)の一員であるが、「お客さん」というイメージが強かった。インドは、日本のとの強い関係でクアッドに加わっただけという消極的な姿勢であったのである。だが、今回の米印協定でその距離はぐっと縮まった。文字通り、クアッドの一角になった。これによって、米印関係が強化されよう。対中国では、足並みを揃えるであろう。


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    米国の中国への先端半導体関連の輸出規制は厳しくなっている。半導体製品から製造設備まで一貫しており、米国人技術者は帰国か国籍剥奪かという物々しさである。先端半導体が兵器に転用される危険性を排除する目的だ。新興の国有半導体企業では、100人以上もいた米国人技術者が、一斉に帰国する事態になっている。

     

    『毎日新聞』(2月2日付)は、「技術者100人が姿を消した、米国の半導体規制で中国に起きた異変」と題する記事を掲載した。

     

    中国湖北省の省都、武漢市。ここに本社を置く国有半導体大手「長江存儲科技(YMTC)」の工場で昨年10月、異変が起きた。半導体製造装置の据え付けや保守・点検などのために同社の工場に常駐していた外国メーカーの技術者が、一斉に姿を消したのだ。技術者は、アプライドマテリアルズやラムリサーチ、KLAなど米国メーカーの米国人技術者で、100人以上いたというがみな同社を離れたという。

     

    (1)「市内にあるアプライドマテリアルズなど3社のオフィスも訪ねたが、こちらも欧米系社員の姿はなく、中国人の女性事務員が一人で電話番している事務所もあった。「YMTCは半導体製造装置のメンテナンスができず、生産が1割以上落ち込んでいるようだ」。YMTCと取引のある大手企業の関係者は、そう明かす。米国人技術者が消え、装置の保守に必要な部品が手に入らなくなっているという。現地の別の業界関係者によると、YMTCは出入り業者に対して「中古品でも良いので部品を回してくれないか」と異例の打診をしているという。この関係者は、「YMTCは米製造装置大手の中国人技術者をスカウトしているが、それでも生産への打撃は避けられないようだ」と打ち明ける」

     

    部品の購入もできない事態である。これでは早晩、操業停止に追込まれる。すでに操業は1割以上も落込んでいるのだ。さらに落込むのは必至である。

     

    (2)「YMTCは2016年に設立された新興企業で、豊富な資金力をバックに急成長した。スマートフォンなどのデータ保存に使われる「NAND型フラッシュメモリー」に強みを持つ中国の有望半導体企業の一つだ。同社のNAND型フラッシュメモリーは、昨秋まで米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」への採用計画が進んでいた。だが、それも見送られたという。YMTCで起きている異変は、バイデン政権が打ち出した半導体の新たな対中規制が原因だ。新規制は、人工知能(AI)やスーパーコンピューターなどに使われる先端半導体やその製造装置などの対中輸出を全面的に禁止するほか、米国籍を持つ技術者が中国で先端半導体に関与することを禁止した。さらに、安全保障や外交上の脅威となる企業・団体のリスト「エンティティーリスト」も拡大し、YMTCなど36の企業・団体を追加した」

     

    中国の半導体技術は、今回の米国の規制によって一時的には頓挫するが、時間を掛ければこの障害を乗り越えられるという楽観論が聞かれる。そうだろうか。中国は、精密工業が不得手な民族である。内燃機関(エンジン)も、とうとう満足したものを完成できなかった。高速鉄道も技術の壁は、日本の新幹線技術の採用で克服できたのだ。原発も、旧ソ連が撤退の際に残した破り捨てた設計図を貼り合わせ利用した結果である。半導体だけ、自力で開発可能とは信じられない話である。

     

    (3)「新規制は、中国に先端半導体を「買わせない」「作らせない」のが狙いだ。米国がこれまで実施してきた華為技術(ファーウェイ)などに対する規制よりも格段に厳しく、1994年の対共産圏輸出調整委員会(COCOM=ココム)の解散以来、最も厳しいと言われる。米シンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)のマシュー・レイノルズ研究員は、「(新規制は)中国の半導体製造能力の向上を単に阻止するのではなく、積極的に低下させようとしている」として、米国の対中政策が新たな段階に入ったと指摘する

     

    下線部は重要である。米国は、中国の半導体製造能力の低下を目指しているという。長いこと、米国の支援を受けて発展した中国が、土壇場で米国へ弓を引く形で挑戦してきた。米国は裏切られた思いで、伝統的な「ヤンキー精神」を発揮しているのであろう。

     

    (4)「米国がここまで厳しい規制を打ち出した背景には何があるのか。一つは、先端半導体が最新兵器の開発に使われ、米国の軍事的な優位が揺らぐことへの危機感がある。極超音速兵器は、米中露が開発にしのぎを削っている分野だ。米国は出遅れており、米紙『ワシントン・ポスト』などは、中国の極超音速兵器の開発に米国の技術が使われると報道。ハイテク分野では民生と軍事用のどちらにも応用できる「デュアルユース」(軍民両用)の技術が多いが、中国では軍民の垣根もあいまいなため、幅広く網を掛けるよう求める声が米政府や議会で高まっていた」

     

    極超音速兵器では、中国が一歩先を行っている。これには、中国が米国技術を使っているという事実から、中国へ先端技術を利用させない意思を固めた。具体的には、先端半導体の輸出禁止令となって現れたのだ。

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    ウクライナは、間もなくロシアの侵攻開始から1年になる2月24日を迎える。この間に受けたウクライナ側の経済的な損害は、人的・物的合わせれば厖大なものだ。早く、この戦争を止めなければならないが、ウクライナはその手段を持たないというジレンマを抱えている。

     

    最大の防御策は、ウクライナが強力な兵器を備えることだ。すでに、ドイツの主力戦車300両以上の供与のメドがついたが、制空権を守るためには戦闘機が不可欠。米国製のF16がその候補になっている。米国は今のところ、ロシアを刺激したくないという理由で供与を渋っている。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月2日付)は、「ウクライナが勝つために何が必要か」と題する社説を掲載した。

     

    ジョー・バイデン大統領は、米国がウクライナにF16戦闘機を供与する予定はないと話している。だが、この戦争を開戦から1年間、注意深く見てきた人なら誰でも、この発言の意味が分かる。後でもう一度要請してほしいということだ。バイデン氏のチームは、ウクライナに対する兵器供与の要請を受けるたびに躊躇し、後に態度を変えてこれに応じてきた。今回もまた、大統領が方針を変更し、戦場でウクライナ軍を直ちに助け、そして戦争が終わった後も同国の役に立つような一層の軍事支援を提供することを期待しよう。

     

    (1)「北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は今週、韓国を訪問した際にロシアのウラジーミル・プーチン大統領が「和平に向けた準備をしている兆候は見られない。われわれが目にしているのは、それとは正反対のことだ」と語った。ストルテンベルグ氏は、ロシアは恐らく、さらに20万人の兵士を動員し、「積極的に新たな兵器を入手し、弾薬の追加供給を受けている」と分析。プーチン大統領は「ウクライナを支配する」という自身の核心的な目標を諦めていないと述べた。「これが事実である限り、われわれは長期的(な戦闘)に備える必要がある」と指摘」

     

    ロシアは、さらに20万人の追加徴兵する可能性がある以上、長期戦へ持込む意思と見られる。こうなると、これに対応した兵器をウクライナへ供与する必要性が高まる。米国戦闘機F16がそれだ。米バイデン大統領は、先に「断る」との回答をしているが、二度三度の要請には応じる。これが、パターン化している以上、最終的にはF16が供与されるとみられる。

     

    (2)「F16はウクライナの制空能力を大幅に向上させるとみられる。西側諸国は最新鋭戦闘機F35の調達を行っており、世界には利用可能なF16が数多く存在する。また、F16をウクライナに供与すれば、同国の防衛への西側諸国の明確な関与の証しとなり、それは、今回の戦争が終了したあとも長期間にわたりウクライナを防衛する強力な抑止力が構築されるという意味を持つ」

     

    F16は、米国にとっては旧型機に属する。最新鋭機F35が、主力になっているからだ。この退役機のF16が、ウクライナ侵攻の長期化を防ぐ手段になれば、二度目の大役を果たすことになろう。

     

    (3)「ヘンリー・キッシンジャー氏が最近指摘したように、ロシアのウクライナ侵攻は、ウクライナがロシアと西側諸国の間で中立の立場を維持できるのかという問いに終止符を打った。ウクライナが勝者となった場合、同国はNATOに加盟するか否かにかかわらず、西側の一員になるだろう」

     

    ロシアのウクライナ侵攻によって、ウクライナは「自動的」にNATO側へ付く結果になった。ロシアの大きな誤算である。逆の結果になるからだ。

     

    (4)「プーチン氏は、ウクライナの戦意と西側諸国の支援が続かなくなるまで攻勢を続けられるとの考えから、長期戦に向けた態勢を整えつつある。この事実は、より早急にウクライナに追加の支援を届け、ウクライナ軍が年内に自国領土の大半あるいは全土からロシアを追い出せるようにすることの重要性を高める。バイデン政権は、何両かの戦車を供与するようドイツを説得するのに、何週間も費やしてしまった。しかも、米政府の説明によれば、米国の戦車「Mエイブラムス」がウクライナに届くのは「何週間かではなく、何カ月か」先になる」

     

    ロシアの大攻勢が、数週間以内に行なわれると予測されている。こうした緊迫化した中で、ウクライナも早期に対抗手段を取らなければならない。F16の供与は、ウクライナの士気を高めるだろう。

     

    (5)「米国のウクライナ支援は、新たな国造り(ネーションビルディング)の取り組みや行き当たりばったりの介入ではない。米国人が戦って死者を出しているわけでもない。ウクライナ支援は、自らの自由のために命をかけて戦っている他国の人々を助けるという、伝統的なレーガン・ドクトリンを踏襲している。米政府は、長距離ミサイルを今すぐに、戦闘機をできる限り早急に提供する形で、ウクライナ支援を一層強化かつ迅速化できる」

     

    西側諸国は、ロシアが期待している「ウクライナ支援疲れ」を防ぐ意味でも、制空権を守る戦闘機の供与が必要になっている。これが結局、西側諸国の負担を軽減させる道になるだろう。

     

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    国際通貨基金(IMF)は1月31日、韓国の今年の経済成長率予測を2%から1.7%へと0.3%ポイント引き下げた。昨年7月予測値は前回よりもマイナス0.8%ポイント、10月も同じくマイナス0.1%ポイントに続き、すでに3度目の連続の下方修正だ。韓国の「一人負け」という印象を強めている。

     

    IMFは、同時に発表した日本の23年成長率予測が、1.8%と前回予測より0.2ポイント引上げた。この結果、日韓の成長率は25年ぶりに韓国が日本を下回るとして、韓国メディアは悲壮感を表している。韓国に対する今回の下方修正は、IMFが世界経済成長率の予測値を2.9%と、3ヵ月前より0.2%ポイント引き上げた中で行われた点で深刻に受け止めている。

     

    『朝鮮日報』(2月2日付)は、「数十年ぶりに韓日の経済成長率が逆転、国全体を変えろという警告だ」と題する社説を掲載した。

     

    国際通貨基金(IMF)は今年、韓国経済が1.7%の成長にとどまると予測した。昨年10月の予測値は2.0%だったが、3カ月間で下方修正された。一方、IMFは世界経済の成長率予測を3ヵ月前より0.2ポイント上方修正し2.9%とした。米国(1.0%→1.4%)、中国(4.4%→5.2%)、ユーロ圏(0.5%→0.7%)、日本(1.6%→1.8%)も予測値が上方修正された。主要国のうち、韓国の経済低迷に対する懸念がさらに深刻化した格好だ。

     

    (1)「もしIMFの予測が現実となれば、韓国と日本の成長率が通貨危機以来25年ぶりに逆転する。過去65年間で韓国の成長率が日本より低かったのは、1980年のオイルショックと1998年の通貨危機だけだった。「失われた20年」の長い低成長を経験している日本よりも低い成長率を記録するというのは並大抵の危機ではない」

     

    韓国は、次の3要因が経済を圧迫している。

    1)半導体市況の急落

    2)中国と韓国が、これまでの相互補完関係から競争関係に変わってきた

    3)住宅価格急落と金利上昇で消費者マインドの低下

    上記要因のうち、2)と3)は構造的に負の圧力を増す危険性が高まっている。となると、今後の韓国経済は、構造要因を取り除くほかない。

     

    (2)「新年を迎え、各種指標は韓国経済が「パーフェクトストーム」(全体的危機)に直面したと言っても過言ではないほど深刻だ。半導体が輸出全体の19%を占める国では、半導体市況が悪化すると、経済全体が揺らぐ。1月の輸出は前年同月比で16.6%減少したが、半導体輸出が44.5%急減した影響が大きかった。1月の輸出減少の半分以上が半導体輸出減少による影響だった。最大の輸出先である中国への半導体輸出も46.6%減少した。輸出急減で1月の貿易収支は過去最悪の127億ドルの赤字を記録し、昨年3月以降11カ月連続赤字となった」

     

    最大の輸出先である中国への半導体輸出が、46.6%も減少している。中国は、スマホ需要が落込んでいることを反映している。中国は、輸出の新規受注が落込んでいる。これが、韓国輸出を減らしている背景の一つになっている。

     

    (3)「半導体企業の業績は急激に悪化した。サムスン電子の昨年第4四半期(10~12月)の営業利益が前年同期を69%下回り、特に半導体部門の営業利益は97%減の2700億ウォン(約284億円)にとどまった。台湾積体電路製造(TSMC)の第4四半期の営業利益(約13兆ウォン)に比べれば、50分の1にすぎない。ファウンドリー(受託生産)分野の収益で赤字を免れただけで、主力のメモリー分野は事実上赤字と推定される。半導体の不振が経済全般に広がる兆しも見える。昨年12月の産業生産指数は前月より1.6%低下し、32カ月ぶりに大幅な低下となった。設備投資は7.1%減少した」

     

    TSMCとサムスン半導体は、昨年10~12月期の営業利益を比較すると50分の1という大差になっている。TSMCの非メモリー半導体が、サムスンのメモリー半導体に比べて圧倒的優位を見せた象徴的ケースである。

     

    (4)「韓国政府は下半期になれば景気が好転し、貿易収支の赤字も改善されるとしている。そうかもしれない。しかし、現在のような低迷が一時的な状況にとどまらず、構造的不況として定着するリスクも少なくない。韓国経済をリードしてきた半導体産業にこれ以上圧倒的優位を期待するのは難しい。米国をはじめ各国が巨額な資金をばらまき、自国の半導体産業を支援している。ファウンドリー分野では台湾TSMCとのシェア格差も広がっている。さらには世界最悪の少子高齢化で憂うつな未来が待っている。これから30~40年後から60年間はマイナス成長になるという予測もある」

     

    韓国は、これまで勝ちパターンであったカードが、一枚一枚とひっくり返され始めていることに気づくべきだ。半導体も日本の技術盗用であった。それが、グローバル経済下でたまたま上手く行ったという側面もある。非メモリー半導体で出遅れているのは、技術基盤がそれだけ軟弱である証拠だ。

     

    (5)「現在の危機は、経済だけでなく政治、社会など国全体を丸ごと変えろという再三の警告として受け止めなければならない。労働、規制、教育、公共、年金改革は必須であり、二極化する政治も終わらせなければならない。時間は多く残されていない。警告信号は点滅し、いつの日か信号自体が消える」

     

    このパラグラフは、極めて重要な指摘である。下線部は、韓国経済の脆弱性を示す「一覧表」である。本欄が、繰り返し取り上げてきた点だ。

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