勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    米国が、中国へ2000億ドル相当の製品に10%の追加関税を発表した。中国は、いかなる報復措置を取るのか、関心が集まっている。これまで、中国が他国へ行なってきた報復措置には、一定のパターンがある。不買運動、旅行禁止、輸入時の通関業務のサボタージュなど。米国に対して、こういう月並みな嫌がらせをやったところで、効果があるのか疑問視されている。

     

    そこで、次のような案が考えられるという。

     

    中国は輸入額が相対的に少ないため、再び関税賦課で米国に対抗することはできないが、その代わり、新税導入や米企業への規制強化のほか、当局認可の引き延ばし、市民に米製品不買運動を促すなどの措置を活用し得る。また、米クアルコムによるオランダのNXPセミコンダクターズ買収計画はまだ当局の最終承認を待っている状態だ」(『ブルームバーグ』7月12日付)

     

    ここでは、「新税導入や米企業への規制強化」によって、米企業を虐めるという考えが浮上している。これは、極めてリスキーである。米企業を中国から追い出すことになりかねない。中国政府は、地方政府に対して米国企業が中国を脱出するか否かを探らせている。なんと言っても米国企業は、世界のナンバーワン。中国への誘致では三拝九拝した過去がある。それを忘れて、掌を返したような冷たい対応すれば、中国を捨てて他国へ立地する恐れも出てくるのだ。

     

    次の指摘に注目すべきである。

     

    「寧波供応鏈創新学院のシャオシュアン・リュウ教授は、関税による長期的な影響として、すでに一部の産業で始まっている新興国から米国など先進国への生産回帰の流れが加速する可能性があると指摘する。中国に生産拠点を設けている企業はすでに人件費の高騰に直面しており、関税はコストをさらに押し上げるという。リュウ氏は『関税によって変化が生じるのは確実だ』としている」(『ウォール・ストリート・ジャーナル』7月12日付「米国の対中追加関税、電子部品が標的に、水産物なども」)

     

    4次産業革命の波に乗って、製造業の技術革新は日進月歩である。中国で大量生産して、世界中へ輸出するという形態の見直しが始まっている。中国は人件費と地価上昇による賃貸料金の上昇で、生産拠点としてのうま味が消えかけている。米国企業虐めは、「脱中国」の動きを加速しかねないのだ。こうなると、中国の米国への報復措置は限られる。

     

    「これまでのところ、中国当局は米企業を狙い打ちにしたり、10億人余りの国内消費者のナショナリスト的な感情をあおって米製品をボイコットしたりすることは避けている。過去に貿易問題で対立した韓国などに対しては、そうした戦術を持ち出した。欧米諸国は長年、中国国内で展開する外国企業のために公平な事業環境を整えるよう中国政府に迫ってきた。UBSグループの中国担当主任エコノミスト、ワン・タオ氏は『全面的な貿易戦争は自国にとって経済的打撃がより大きくなることを中国政府は理解しているため、その回避に力を尽くすだろう』との見方を示した」(『ウォール・ストリート・ジャーナル』7月12日付「米追加関税、対応に苦慮する中国、報復手段を模索」)

     

    この記事では、中国が感情任せの嫌がらせをしないで、慎重に対応するだろうとしている。中国は、弱い相手には徹底的に笠に着た、上から目線の行動を取る。だが、強い相手には慎重な対応をする「使い分け」をする国家だ。これ以上、トランプ氏を怒らせない方法を探る可能性もある。


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    英国の『フィナンシャル・タイムズ(FT)』は1888年の創刊である。世界に誇る英経済紙だ。2015年に日本経済新聞社が買収した。このFTが、トランプ米国大統領を「危険な無学者」と切り捨てるコラムを掲載した。タイトルは、「トランプ氏 貿易戦争招く」(7月11日付)である。

     

    確かにトランプ氏は、乱暴者というイメージが強い。こういう人物が育った家庭環境はどういうものだったのか。聞いてみたい気がする。それほど強烈な性格の持ち主である。

     

    さて、ここからからが本論である。

     

    トランプ氏が仕掛けた米中貿易戦争は、決して褒められるスタイルではない。ただ、中国のような名うての「ルール破り」に対応するには、トランプ氏のような「スパイス」の効いた人物でないと対応できないのも事実だ。中国は、WTO(世界貿易機関)のルールである自由貿易原則を守っていると宣伝するが、中国ほど破っている国はない。未だに、日米欧は中国をWTOの「非市場経済国」に指定しているほど、市場経済ルールを守らない国である。

     

    具体的には、あらゆる分野で企業に補助金を出すことだ。これが、企業保護に当る。研究開発費補助、生産コスト補助など形はいろいろあるが、国内企業を保護している。具体策は、次のパラグラフで取り上げる。この結果、中国に進出している外資系企業は、差別されるのが日常茶飯事となっている。

     

    こういう前歴を持つ中国に対して、公正な貿易慣行を守らせるにはどうするのか。自由貿易原則は、互いにルールを守ることが前提である。中国は、このルールを犯して政府から補助金を支給されて生産費自体を引下げている。この結果、サムスンは中国でスマホ市場を失った。生産費を補助して国内販売価格を下げるから「反ダンピング法」に抵触しない。警察に賄賂を渡しているから捕まらないような話である。

     

    以上のような事実を知らないで、FTは、次のように一刀両断だ。

     

    中国に対し301条を根拠に関税を課すのは、さらに理解しがたい。その狙いは、中国の対米貿易黒字の削減、あるいは中国のハイテク産業育成策『中国製造2025』の阻止、あるいは強制的な技術移転の阻止のようにもとれる。だが、中国に貿易赤字削減を求めるのはばかげているし、次の産業育成策阻止は交渉できる類いのものではない。最後の強制的技術移転阻止は道理にかなった要求だが、達成は難しい」

    自由公正な貿易慣行を踏みにじる中国が、自由貿易を原則とする世界市場で、「一人勝ち」するのは当然である。サッカーW杯でも、最終的には「反則」の数が少ないティームが勝利を得るように、競争(市場経済)は公正であることが前提である。この視点で言えば、中国の流儀は世界経済の障害になる。その障害を取り除くべく、やむなく関税を科すのは「次善の策」として認められるものだろう。中国の「狡」が公認されるならば、各国が見倣うに違いない。

     

    トランプ氏のやり方はスマートではないが、このくらいのパンチで対応しなければ、世界経済の障害物を取り除けないのだ。中国は、南シナ海で勝手に相手国の島嶼を奪い取る手法で、世界貿易もルール破りをしている。困った存在である。


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    米中貿易戦争は、新たな段階を迎えている。トランプ米政権が10日、中国からの輸入品2000億ドル(約22兆4000億円)相当を対象とする関税リストを発表した。実施は8月末と見られるが、中国経済にとってはさらに「圧迫材料」が増えている。

     

    こうした劣勢を反映して、中国人民元相場には「売り圧力」が高まっている。1ドル=6.66元(12日19時)であるが、オフショア市場では全く違った様相を呈している。オフショア市場とは、国内市場とは異なり、非居住者が規制を受けない自由市場である。このオフショア市場は国内市場の先導役を果たすので要注意だ。11日、6.7192元となり2015年8月以来の安値を記録した。このことから、国内市場への波及が予想されている。

     

    『ブルームバーグ』(7月12日付)は、「人民元がデッドクロスを形成、2015年切り下げ以来初ーチャート」と題する記事を掲載した。やや専門的だが要約すれば、チャート上で人民元相場は大きく値下がりする兆候を見せているので、注意を呼びかけているもの。

     

    「中国のオフショア人民元相場は11日に2016年1月以来の下落率を記録するとともに、テクニカル的には売りのシグナルとして知られる『デッドクロス』を形成した。人民元・ドルの移動平均線を見ると、50日線が200日線を上から下に抜けていることが確認できる。3年前のショッキングな人民元切り下げ以来の現象だ。JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバルストラテジスト、デービッド・レボビッツ氏によると、中国はもう少し元安を容認することはできるが、過度な元の下落は逆効果であり、その場合はある時点で介入することになる、としている」

     

    人民元相場の下落は、中国経済の弱さを裏付けるものだ。中国政府は、人民元安を誘導して輸出テコ入れ策に利用したいところ。この思惑が外れて15年のように歯止めのきかない事態を避けたいというのも本音だ。オフショア市場の動きは、国内市場へ波及していくので推移を見守りたい。

     

    7月12日の上海総合指数の終値は、2837ポイントで、前日比59ポイントの上昇である。当局の相場テコ入れに違いない。12日の『ブルームバーグ・ニュース』では、20年間も運用してきた中国株から撤退したファンド・マネジャーのインタビューが報じられている。それによると、マクロ経済指標に多くの問題を抱える中国株を売却して、タイやベトナムの株式が妙味あると強調。理由は、マクロ経済指標に懸念がないとしている。中国株が売られタイ・ベトナムが買われるとは、アジア経済の主役が交代する印象を与える。時代は変化している。


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    2016年12月から17年3月まで、韓国は朴槿惠大統領(当時)の弾劾をめぐり、左右両派が激しい対立をした。互いに、相手陣営に向けて「暴力革命を起こす」などと威嚇しあう姿は、醜いものだった。抗議の自殺者も出るなど騒然とした情勢は、日本まで緊迫感を伝えた。感情的にいきり立った韓国国民は、日本人の想像もできない行動をするのだ。

     

    韓国軍は、こういう騒乱一歩手前の状況を見て、国家転覆という事態にならぬように、「文書」だけは書いて「心の準備」をしていた。今その文書の存在が公になって、「戒厳令を準備していたのでないか」と問題視されている。文大統領が、捜査命令を出したから騒ぎが大きくなっている。

     

    文政権トップでは、1980年の光州事件(軍の戒厳令拡大に反対する市民が、軍と衝突した事件)で火焔瓶を投げつけた、元学生運動家の多数が大統領府に秘書官として加わっている。こういう事情があって、文大統領が軍による一片の文書を重視しているもの。

     

    『朝鮮日報』(7月11日付)は、「弾劾による国家転覆の危機に韓国軍はどう対応すべきか」とだいする社説を掲載した。

     

    朴槿恵(パク・クネ)大統領=当時=の弾劾判決目前の昨年3月、国軍機務司令部が「戦時戒厳と合捜業務方案」という題の文書を作成していたことについて、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は10日、独立捜査団を結成して捜査するよう、訪問先のインドで特別指示した」

     

    「軍事独裁を経験した韓国人の記憶の中で、『戒厳』は否定的な印象しかない。しかし、この文書は弾劾判決直前の状況で、文字通り究極の最悪の状況への対処方法を検討したものだ。弾劾判決目前の昨年3月、賛成派も反対派もそれぞれ数十万人がソウル市内中心部で対峙(たいじ)し、憲法裁判所まで行進して、自身が望む結果を出せと圧力を加えるようなデモをした。31日の集会では警察が600台を超えるバスでバリケードを築き、双方の衝突を防がなければならないほどだった。弾劾判決の結果がどちらになっても、国が混乱するのではないかと多くの人々が懸念した」

     

    当時の緊迫した状況は、韓国メディアが悲痛な思いで報じていた。万一の事態に備える軍の「文書」ぐらいあっても不思議はあるまい。もし、左右両派が激突して、死者が出る騒ぎとなれば一層、事態は悪化するのだ。それを防ぐには、騒乱に備える研究をしておくことは許されるのでなかろうか。文大統領は「好機到来」とばかり、この問題を拡大させて政治的に利用する魂胆であろう。

     


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    韓国文政権は、念願の南北対話の扉を開き米朝会談への仲介役も果たした。だが、これだけで国民生活が豊かになる保証はない。韓国国民は、文政権の外交手腕に拍手を送ったが、この熱気はいつまで保つわけでない。日々の暮らしをどうしてくれるのか。そういう切実な悩みは、一つも解決していないのだ。高い失業率と世界最悪の出生率。革新政権の看板が泣いている。

     

    文在寅(ムン・ジェイン)政権で、経済民主化公約を総括している公正取引委員会の金尚祖(キム・サンジョ)委員長が、朝鮮日報のインタビューに応じた。その口からは、「切迫」「いら立たしい」「危機」といった言葉が何度も飛び出したという。市民団体の幹部の身で政権に入ったが、「経済規制改革が必要」と言うまでになっている。在野の市民団体は、「反大企業主議」を強烈に打ち出しているが、いざ、政権の人間になって見れば、そんな「太平楽」を言っていられないことを認識したようだ。国民の台所を預かることは、きれい事だけ言っていれば済むものではない。それを、肌身で知ったようである。

     

    『朝鮮日報』(7月11日付)は、「韓国公取委委員長、成果ない文政権の経済政策にいら立ち」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「金委員長とのインタビューは6日、ソウル市内の公正取引調停院で行われた。文在寅政権の経済政策で中心的役割をするブレーンに、この1年間の経済運用に関する評価と、今後の計画について説明を聞こうと企画されたインタビューである。金委員長は『国民が耐えて待ってくれる時間はあまり残っていない。こうした状況を文大統領もよく分かっており、規制改革点検会議を中止するほど切迫感を抱いている』と言った。また、『今年下半期から経済環境がいっそう厳しくなる可能性が高い。政府が成果を出す時間的余裕は短くて6カ月、長くても1年しか残っていない』と述べた」

     

    この記事を読むと、文政権が経済面で一つも成果が出ていないことに焦りの色を見せている。国民は、黙って待ってくれるものでなく、今年の下半期から経済環境が悪化予想であることを自覚している。だが、その具体案が見えてこないのだ。

     

    (2)「金委員長は、『文大統領が2年目に入り、規制革新のための政治的決断に頭を痛めている。支持層の批判を受けざるを得ない非常に難しいことだが、規制改革がなければ政府は成功できないということをよく分かっている』と言った。規制革新を推進する過程で、文大統領の支持層である進歩系陣営の反発が避けられないため、これを受け止めて正面突破する方針だという説明が続けられた。この1年間の文在寅政権による経済政策の成果については、『所得主導成長・革新成長・公正経済という3つの軸が別々に動いていた面があり、政府も反省している。今は動きがそろってきたと感じている』と説明した」

     

    文政権は、この5月から2期目に入った。支持層は「反企業」で凝り固まっている。規制緩和には絶対反対と主張しているのだ。この身内の反対論をどのように説得するのか。先ず、ここから取りかからなければならない。ともかく、カネを稼いだ経験の無い支持者の「空論」である。これを克服するだけで、勢力を使い果たす恐れも強い。どうなるか、だ。

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