勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    米中通商協議は、大詰めを迎えている。中国が、3月5日から始る全人代(全国人民代表大会、国会)を前に、米国が追加関税を科す事態となれば、習近平氏は最悪局面になるはずだった。それが、どうやら回避できる見通しである。

     

    一方の米国には、新たな悩みが出てきた。トランプ氏が「ディール」でさらなる成果を狙い、ファーウェイ問題で妥協するのでないかと危惧され始めた。かつて、トランプ氏は、ファーウェイ問題を取引きに使うニュアンスで話していたからだ。仮に、そういう事態になったら、米国の政治から独立している司法が、行政に利用される最悪ケースになる。

     

    中国に、司法の独立はない。習氏が、そう明言している。米国に司法の危機を招かぬよう、トランプ氏を監視すべきだ。もし、そうなると民主党が総攻撃を開始して、トランプ氏は一挙に不利な立場へ追い込まれよう。次期大統領選も危うくなる。習氏の誘惑に乗らないことを祈るだけだ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月25日付)は、「米中協議とファーウェイ問題は分けよ」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「米国と中国は新たな貿易協定に向けて前進しているように見える。それは、関税が米中経済に与えている打撃からの回復に欠かせない動きだ。だが一方で、ドナルド・トランプ米大統領が通商交渉の一環として、米国法をないがしろにするリスクが浮上している。そのリスクが鮮明になったのは22日、記者団がトランプ氏に対し、米国が貿易協定の一環として中国の華為技術(ファーウェイ)に対する起訴を取り下げる可能性について質問した時のことだ。トランプ氏は『今後2週間ほどの間にその全てを議論する。そして米国の連邦検事や司法長官らと話す』としたうえで、『だが決定はこれからだ。今現在は議論してない』と述べた」

     

    習氏は、ファーウェイ副会長の孟氏を釈放させることに全力を挙げている。孟氏が米国の司法当局の監視下に入ると、中国の最大秘密が漏れる危険性が高い。それだけに、相当な手を使ってくるにちがいない。くれぐれも、用心すべきだ。交渉の議題にあげないことだ。

     

    (2)「ちょっと待って欲しい。連邦検事は貿易交渉の担当者ではない。米国の法律を執行する検察官であり、先月にはファーウェイの孟晩舟・最高財務責任者(CFO)を対イラン制裁違反で起訴している。従業員が米通信会社Tモバイルから技術を盗み出したとの罪でファーウェイも起訴した。米国が貿易協定の一環としてこうした起訴を取り下げるかもしれないとの示唆は、起訴が政治的だとする批判の説得力を高める。ファーウェイと孟氏は不正を否定している。起訴の狙いが単に貿易について中国に圧力をかけることなら、米司法省はそれを取り下げたうえで謝罪すべきだ。だが孟氏とファーウェイが米国法を犯した証拠が明白で、かつトランプ氏が中国への大豆輸出を増やすためにそれを見過ごすのだとすれば、米国の制裁と司法に対する信頼感は損なわれるだろう」

     

    孟氏起訴の狙いが、単に貿易について中国に圧力をかけることなら、米司法省はそれを取り下げたうえで謝罪すべきである。社説では、こう強調している。司法権の独立は、民主主義の根幹である。トランプ氏が、その根幹をないがしろにすることがあれば、民主党は絶好の機会と攻め込んでくるだろう。トランプ氏はこれまで、いくつかの点で法律違反の議論を呼んでいる。ファーウェイと取引に転じるようなことがあれば、トランプ氏の次期大統領はあり得ないだろう。そのような、法を無視する人間を大統領に据える訳にはいかない。

     

    (3)「また、米国の要請で孟氏を拘束したカナダに対してもひどい仕打ちとなる。中国はお返しとして、カナダ人2人を明らかに政治的理由で拘束したのだ。米国が起訴は政治的なものであり、大統領の気まぐれで取り下げになるとの結論に至るのなら、なぜカナダをはじめとする同盟国がそうした外交リスクに耐えなければならないのか。

     

    米国は、孟副会長逮捕に当たりカナダ政府に大変な負担を掛け、逮捕できたという事情がある。それを無視して、通商協議の取引材料に使ったということになれば今後、米国へ協力する国はなくなる。米国は、世界の孤児同然の扱いを受けるだろう。

     

    (4)「ファーウェイを巡るトランプ氏の発言は、世界の政治は不動産売買に似た取引で成り立っているとの同氏の見解を反映しているようだ。トランプ氏は、自身と習氏が条件で合意できればそれで済むと思っているように見える。習氏にとっては、それは真実だ。中国の独裁体制では自身の言葉が法律なのだから。だが、法を上回る人物などいない米国ではそうはいかない」

     

    トランプ氏は、「ディール」へ入る前に、使っていい手段と使ってはならない手段があることを認識すべ きである。トランプ氏の次期大統領選が、「ディール」にかかっていることを忘れないことだ。


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    日韓対立に終わりはあるだろうか。文政権になってから、法的に解決した過去の問題が、次々と掘り返されて「未解決」と言い募っている。日本は、「韓国疲れ」を起こしている。もういい加減にしてくれ、というのが日本人の8割が持っている感想だ。

     

    韓国は、日本へ敵対する一方、中国に親近感を持っている。日中が過去、朝鮮半島で起こした問題でも、韓国は違った対応である。中国には泣き寝入りだが、その恨みを日本に向けて「倍返し」である。不思議な対応だ。中国へは一目置いている。その代わり、儒教の朱子学を笠に着て、日本へは「教師」のように振る舞い、自らを恥じ入ることがない。

     

    韓国人のこのような行動を説明する記事が現れた。

     

    『中央日報』(2月25日付)は、「韓国、日本より中国が協力国というのは古代史的観点」と題する記事を掲載した。

     

    駐韓外信記者クラブ会長を務めたマイケル・ブリーン氏は、特に日韓併合時代に関して「韓国人は現実にも偏見にももっと正直になるべきであり、もっと許すべきだと考える」と、韓国人の歴史認識に厳しい診断を下した。

     

    ブリーン氏は1982年以降2年ほどを除いて韓国に暮らす、韓国を「故国に選択した人物だ。これまで金泳三(キム・ヨンサム)大統領、金大中(キム・デジュン)大統領のほか、北朝鮮の金日成(キム・イルソン)主席にも取材している。そういう長い取材経験を通して、現代韓国人の対日観に苦言を呈している。

     

    (1)「ブリーン氏は記者に対し、「(歴史認識は)理解できるが、客観的なものではない」とし、また「選別的」という趣旨で述べた。ブリーン氏は「韓国と日本が東アジアで自由市場経済民主主義の2国という事実を受け入れることにも失敗している」とし、「日本より中国が(韓国と)協力国だと見るのは古代史的な観点だ」と話した」

     

    韓国の対日観は常時、日本へ謝罪を求める「資格」「権利」があるという錯覚に満ちている。過去の問題は法的に決着した。それで区切りを付けるということはない。エンドレスであるから、日本は「韓国疲れ」を起こす。個人間でもそうだろう。しょっちゅう昔の愚痴を持出されたら、誰でも去って行くはずだ。

     

    「大同小異」という言葉がある。韓国は、「小異」(こういう言葉を使うとまた噛みついてくるが)を捨てて、「大同」(民主主義・市場主義)を大切にする。この一点を共通の価値観にして守る認識が希薄だ。これが、少しでもあれば事態は変るだろう。

     

    日本へ「謝罪しろ」という言葉の連発は、韓国が自らを上位者として意識し、日本にそれを確認させる作業なのだろう。儒教社会の悪しき慣例である「上下関係」の認識過程である。日本は、こういう無駄なことに付合う習慣がない。韓国は、中国に対しては畏れ多くて言えないから、日本へその鬱憤を向けているに違いない。日本を軽く見ている証拠だ。こういう「我が儘な振る舞い」には、どう対応すべきか。妥協は、さらなる「謝罪要求」につながる。

     

    (2)「日帝強占期(日韓併合時代)を経験した金大中(キム・デジュン)世代と、現在の世代を比較した。「記者として取材してみると金大中世代は、本人も含めて(日帝強占期に)そこまで否定的でなかった。その後の世代がそうなっている。教育のためだと考える。日帝強占期については後回しにできなければいけない」。ブリーン氏は1998年に金大中大統領が小渕恵三首相と「韓日パートナーシップ共同宣言」を通じて韓日間の全面的交流・協力の道を開いたことを高く評価した」

     

    日韓併合時代を生きた韓国人は、日本への一定の配慮があった。朴正熙・元大統領は、お忍びで来日し、日本の政治家とゴルフを楽しんだという。その朴氏は、日韓併合で日本人教師から進学を勧められ上級学校へ進んだ。李朝時代であれば、農家の子どもが進学することなどあり得ないと言っていたというのだ。

     

    文在寅大統領の「師匠筋」にあたる金大中氏も、陰に陽に日本の支援を受けていた。韓国で軍事政権に追われる身の金氏は、日本を舞台に韓国の民主化運動を行なっていた。このように過去の日韓関係は、現在よりもずっと親密であった。トゲトゲしいものではなかったのだ。

     

    (3)「ブリーン氏は代案として、韓国人がアイデンティティーを抗日または反日の枠で探すところから抜け出すべきだと助言した。ブリーン氏は「アイデンティティーを探すためにあまりにも過去志向である。いくつかの意味で現代の韓国人のアイデンティティーは(民主主義が本格化した)1987年に始まった」と語った。

     

    韓国人のアイデンティティーは、1987年(韓国民主化宣言)に始ることを提案している。「反日・親中」が、古代史の名残である以上、いつまでもこの殻に閉じこもって、日本の現代に目を塞いでいることは日韓双方にとって不幸である。ことあるごとに、秀吉の朝鮮出兵を持出す韓国人の心情は図りがたい。この秀吉の後が、日韓併合である。日本へ謝罪を求める「ネタ」に事欠かないのだ。

     

    これが、韓国人の変らぬ「対日観」である。朝鮮は、自らの力で世界史の扉を開けられなかった。その民族としての悲哀が、日本への羨望となり、謝罪を求める嫉妬に変っていくのであろう。この韓国人の心情を癒やす役割が、日本に課されるとは余りにも不合理である。心の傷は、自分で乗り越えるべきなのだ。

     

     


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    韓国経済は、労働組合による強烈な労働攻勢で、労働生産性が低下し、賃金コストが急増するという危機的な状況に立ち至っている。この認識は、広く韓国で定着しているが、データで確認できたのは今回が初めてである。

     

    韓国の労組が、なぜ「労働貴族」と揶揄されるほど強硬なのか。労働者は、かつて弱い立場で企業に利益を搾取された。現在は、労組の団結によって企業搾取を許さない。これが、「正義」の実現と考えている。こうして韓国労組は、企業の支払い能力と無関係に、自らの要求を押し通すことが「正義」そのものである。労組は、賃上げを正義の実現と捉えている以上、この正義論の誤りを諭す方法が、韓国に存在しないのだ。企業が倒産するまで高賃金要求が続くはずだ。重ねて言えば、韓国労組は賃上げ=正義の実現と捉えている。

     

    日韓関係も同じだ。日韓基本条約(1965年)当時は、韓国の経済力が弱くて日本の主張通りに仕切られた。現在の韓国は、日本との経済力格差が縮小したので昔、要求できなかったことは、これから要求可能になる。これが、「正義」の実現であると見ている。だから、日本は韓国の要求を飲め、という言い分である。こうして、韓国独特の「正義論」が絡むので、日韓の妥協はあり得ない。つまり、韓国は正義であると言い張る。日本は、それが「国際法違反」と見ている。平行線である。

     

    ここから本論に入る。

     

    労組の賃金所得は上位所得階層20%に入る「富裕層」である。労働者が、高い賃金を得ることは悪いことでない。問題は、生産性との関連である。高い生産性を上げて高い賃金を得ることが理想である。韓国は、そうなっていないのだ。少ない労働で高い賃金という、はなはだ身勝手な要求を出している。

     

    『韓国経済新聞』(2月25日付)は、「労働生産性急落、金融危機後に韓国の製造業競争力急落」と題する記事を掲載した。韓国経済研究院が24日、「製造業生産性と単位労働費用国際比較」と題する報告書を発表した。41ヶ国を分析したもの。

     

    この報告書によると、韓国の労働事情は2008年の金融危機を前後として大きく変った。金融危機以前は企業に協力的であった。だが、金融危機による企業倒産で、労働者にしわ寄せされたという認識を持つようになった。労組は、金融危機の被害者である。ここから、「少ない労働で高い賃金獲得」へ戦略を変えたと見られる。

     

    低い労働生産性と高い賃金獲得が組み合わさると、賃金コストの上昇が起るのだ。その結果、企業利益率が低下し、国際競争力が低下する。韓国労働組合の行動が、2009年前後に大転換した。それ以降、韓国経済の危機が深まっている。韓国独特の正義論から言えば、韓国労組の「暴走」は食い止められないのだ。進歩派政権の登場と、韓国労組の「アベック闘争」によって、韓国経済は大混乱に陥らざるを得ないメカニズムができあがった。詳細は、以下のデータに示した。

     

    韓国の1人当たり労働生産性

    2002~2009年に年7.0%増加した。中国、ポーランド、スロバキア、ルーマニアに次いで5番目に高い水準だ。

    2010~2017年は年2.8%増加にとどまり順位が28位に大きく落ち込んだ。日本の4.1%、ドイツの4.0%、フランスの2.9%など主要先進国より増加率が低かった。

     

    韓国の1人当たり単位労働費用(賃金コスト=賃金÷労働生産性)

    2002~2009年に年0.8%だった単位労働費用増加率順位は37位

    2010~2017年に年2.2%に高まった。単位労働費用増加率順位は3位

     

    2010~2017は、韓国の賃金コスト上昇速度が上がっている。現状から見て、今後さらに上がるだろう。韓国に進歩派政権が続く限り、韓国経済破綻の可能性は一段と高まるであろう。こういう状況で、いつまで「反日」を叫ぶだろうか。

     


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    米時事週刊誌「USニューズ&ワールド・レポート」が、「2019年世界最高の国ランキング」を発表した。いわゆる、国家ブランド力ランキングである。日本は、スイスに次いで世界2位になった。韓国から喧嘩を売られ、日本は切歯扼腕(せっしやくわん)しているであろうが、外国はその日本を正当に評価している。日本に喧嘩を売る韓国は22位である。

     

    同誌は23日(現地時間)、米ペンシルベニア大ウォートンスクールと共同で主要80カ国の影響力、企業環境、社会安全網、生活の質、自然環境など75項目を総合的に評価し、最高の国ランキングを発表した。日本は、前年5位であったが一挙に2位へ浮上。日本の国会では毎日、自虐的な質疑が行なわれている。野党の発言を聞いていると、日本という国は「とんでもない国」という印象だが、世界はそう見ていないことにホットさせられる 。

    NewSphere』(2月24日付)は、「米誌、最高の国ランキングで日本が2位浮上、日本人特有の自虐性も浮き彫りに」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「今年のUSニューズ&ワールド・レポート誌の国家ランキング『ベスト・カントリー・ランキング』で、日本が過去最高の2位に浮上した。さまざまな基準をもとに算出する同ランキングが重視している『企業家精神の高さ』でトップに立ち、世界で最も「前向きな国」であることや、経済が上向きなこと、国民に健康的な環境を提供していること、文化的影響力の高さなどで高評価を得た。一方、海外からの評価が高いにもかかわらず、日本人は世界で最も自国を低く評価しているという分析結果も出た。この日本人のいわゆる自虐的な感覚は、観光や海外投資に長期的な悪影響を及ぼすと同誌は懸念している」

     

    2019年版の総合1位は前年と同じスイス。2位日本は、前年5位から順位を大きく上げた。3位は前年2位のカナダ、4位ドイツ、5位イギリスとなった。アメリカは8位、中国は16位、韓国は22位だった。

     

    韓国は日本から大きく引き離されているが、昨年も同じ22位である。過去の序列はつぎの通りである。2016年は19位、2017年は23位、2018年に22位となった。国際評価では、日韓にこれだけの差があるのだから、少しは日本に対する言動で控え目になって貰いたい。

     

    日本の項目別ランキングは以下の通り。
    ・企業家精神=1位
    ・冒険的要素=39位
    ・市民の権利=17位
    ・文化的影響力=6位
    ・文化・自然遺産=10位
    ・原動力=5位
    ・ビジネスの開放度=22位
    ・パワー=7位
    ・生活水準=13位

     

    (2)「日本の5位から2位へのランクアップは異例。USニューズ&ワールド・レポートは『2019年のベスト・カントリー・ランキングの勝者を1つだけ決めるのなら、多くの人は日本だと言うだろう』とまとめている。同ランキングは、『その国を他国の人がどう見ているか』ということを数値化したものであり、2位へのステップアップは、日本が対外的に高いブランド力を作り上げた結果だと言える」

     

    このランキングは、「その国を他国の人がどう見ているか」ということを数値化したものであり、客観化されたものだ。日本が5位から2位へ浮上したのは、日本をそれだけ高く評価した結果だ。韓国が、日本を「小馬鹿」にして暴言を吐いていることに、強い違和感を覚える。

     

    (3)「一方で、USニューズ&ワールド・レポートは、日本人自身は自国を低く評価しており、『国内的なブランド力は非常に弱い』としている。『我々のデータでは、日本国民は、その他の世界の人々よりもずっとネガティブに、悲観的に自国を捉えている。さまざまな面で、日本国民は自国を世界が思っているよりも生産性が低く、不安定で、文化的に重要ではないと見ている』と同誌は書く。反対に、日本以外のほとんどの国は、他国民よりも自分たちをポジティブに見ているという」

     

    当の日本人は、国会の野党質問に影響されているのか、自分の国を「ダメな国」と見ていることは残念である。日本人が、日本を褒めると「保守」とか「右翼」とか散々な評価が下される。中国のように「大言壮語」するのは困るが、客観的に日本を評価することは必要である。外国人旅行客が増えることは、日本評価のバロメーターである。


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    中国の習近平氏は、自らの政治生命がかかっている事態に直面している。金融リスクの発生をいかに回避するか。それには、現在の米中貿易協議を是非とも成功させなければならない局面に追い込まれている。その意味で、米国のトランプ氏は有利に「ディール」を行える立場だ。

     

    『ロイター』(2月23日付)は、「中国主席、金融リスク防止と安定成長の追求訴える」と題する記事を掲載した。

     

    中国の習近平国家主席は、中国経済の安定的発展を追求する一方で金融システムリスクの回避に留意するよう共産党幹部らに訴えた。新華社通信が23日に報じた。

     

    (1)「中国経済の成長率はほぼ30年ぶりの低水準まで鈍化しており、政府は金融緩和措置や減税などの刺激策を打ち出している。新華社によると、習主席は22日に開かれた共産党幹部らの勉強会で、『安定成長に基づきリスク防止に注力する一方で、財政政策と金融政策のカウンターシクリカル(反循環的)な調整を強化し、経済が妥当な範囲で推移するのを確実にする必要がある』と述べた。また、金融リスク、とりわけシステミックリスクを防止・解消することは基本的な課題だと強調した。

     

    習近平氏が、金融リスクの発生を極度に警戒していることは、中国経済が不動産バブル破綻という重大局面にあることを認めたことである。とりわけ、「システミックリスク」を防止・解消することは基本的な課題だと強調した点が重要である。システミックリスクとは、金融の連鎖倒産である。いわゆる金融恐慌の発生だ。中国経済もここまで追い込まれている点に最大の注意をすべきであろう。

     

    (2)「李克強首相は20日、過去の景気悪化時に採用した『洪水のような』景気刺激策に頼らない方針をあらためて示している。 ただ、このところ弱い経済指標が相次いでいるため、景気が一段と鈍化するリスクを低減するために政府が支援策の実施を加速あるいは強化する必要があるかどうかが市場の関心事となっている。習主席は、中国の金融部門は実体経済に資金を供給すべきだとした上で、安定成長とリスク防止のバランスを取る必要があるとの見方を示した」

     

    システミックリスクを防止するには、倒産リスクの高い銀行の資本を増強する以外に道はない。現在、中国人民銀行引き受けで危ない銀行に永久債を発行させている。社債市場で、永久債のリスクが高いとして購入を見送っているので、人民銀行が引き受けているもの。日本の平成バブル崩壊後に「日銀特融」が行なわれた。その中国版と見ればよい。

     

    中国では、スマホの普及ですべての決済が行なわれている。これが、銀行預金からMMF(マネー・マネジメント・ファンド)へ資金を移動させた。要するに、銀行預金の伸びが急速に鈍化するという予想もしなかった状況になっている。これが、銀行の信用創造能力を著しく低下させ、中国経済全体の不況抵抗力を引下げている。スマホが、皮肉にも中国経済の寿命を縮めているのだ。

     

    李克強首相は20日、過去の景気悪化時に採用した「洪水のような」景気刺激策に頼らない方針をあらためて示した。銀行の貸付け能力(信用創造能力)低下が起こっている現在、金融緩和を行なっても、必要な所へ資金が流れる保証がないことを意味している。

     

    ここで援軍となるのが、米中貿易戦争が「平和協定」になることだ。先の米大統領と中国副首相の会談の際、中国側が習近平氏の親書を記者団の前で発表した。親書は、こっそりと手渡すのが常識である。それが、記者団の前で公表しているのは、中国国内向けの演出であろう。

     

    『ロイター』(2月24日付)は、「トランプ米大統領、対中関税引き上げを延期、協議進展受け」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「トランプ米大統領は24日、週末の米中通商協議で「大きな進展」があったとし、3月1日に予定されていた中国製品に対する関税の引き上げを延期すると表明した。また、協議がさらに進展すれば中国の習近平国家主席と直接会談して最終合意を締結する考えも示した。大統領はツイッターで、知的財産権の保護や技術移転、農業、サービス、通貨など両国の意見対立があった分野で協議が進展したと明らかにした」

     

    (4)「進展を受けて、『3月1日に予定されていた米関税引き上げを延期する。双方がさらに進展するという前提で、最終合意の締結に向けた習主席との首脳会談をマールアラーゴで開催するため準備を進める見通しだ」と表明した。

     

    米中間の合意事項は、トランプ氏の意向で「覚書」でなく、「協定」に格上げされた。米国が中国に食い逃げされない予防線である。中国は、ここまで譲歩して金融危機発生圧力を減らし、習近平氏の政治生命を助ける挙に出てきたと読める。


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