勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    韓国輸出の4分の1は中国向けである。これが、韓国外交を「二股」にさせた大きな理由だ。だが、肝心の対中ビジネスの全盛期は終わった。中国が、自給体制を整えており韓国品の輸入に依存しなくなってきたこと。また、米中対立の激化とともに、経済安保の重要性が主張されるにおよんで、半導体輸出に規制が掛かりそうな状況になってきたことである。

     

    米国は昨年10月、中国に対する先端半導体装備の輸出を禁止。また、人工知能(AI)とスーパーコンピューターに使用される半導体輸出を制限する輸出規制措置を発表した。これに加えて最近、日本とオランダが半導体製造設備の対中輸出規制に合意したことで、韓国半導体輸出へ波及することが確実になった。

     

    『日本経済新聞』(1月29日付)は、「韓中貿易、黄金期には戻れず」と題する記事を掲載した。筆者は、韓国KBフィナンシャル・グループストラテジスト ピーター・キム氏である。

     

    尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏は2022年、米国との同盟関係の強化を掲げ、韓国大統領に当選した。投資家は尹氏の姿勢が中国を怒らせ、韓国経済に打撃を与えるのではないかと懸念していた。しかし、尹大統領は中国に対して予想外にソフトなアプローチをとっている。22年8月、ペロシ米下院議長が台湾などアジアを歴訪した際、尹氏が中国の反発を買いそうなペロシ氏との会談を拒否したことからも明らかである。

     

    (1)「22年末に中国が「ゼロコロナ」政策を転換すると、経済再開の恩恵が韓国にも及ぶことを期待する人は多かった。しかし中国は今年1月、韓国人に対する短期ビザの発給を停止。韓国が中国に対して同様の措置をとったことに報復するためだった。両国の新たな対立がどこまでエスカレートするかはわからない。韓国が、在韓米軍による地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の設置に同意した2016年のように、韓国企業や製品に対する中国の不買運動に発展する可能性も懸念されている」

     

    韓国大統領は昨年8月、ペロシ米下院議長との面会を見送った。中国を刺激しないという外交的な配慮であったが、その後も韓国への圧力を弱める兆しはみられない。中国の経済成長は鈍化し、韓国の対中貿易収支は22年57月に国交樹立以来の赤字である。韓国では、尊大にみえる中国への反発や警戒感も強まっている。米調査機関ピュー・リサーチ・センターの調査では、中国を「好ましくない」とする韓国人が80%にも達した。世論に極めて敏感な韓国政権は、親中路線を取りづらくなっている。中国は、過去の歴史経緯から韓国を「下に見る」傾向がある。韓国は、これに対して敏感に反応して「反中色」強めているところだ。

     

    (2)「THAAD以前の10年間、韓国は中国との活発な貿易から果実を得ていた。しかし中国はミサイル配備を安全保障上の脅威とみなし、韓国への貿易制裁に踏み切った。特に不買運動の標的とされたロッテグループは、中国本土の事業からほぼ撤退した。同時にサムスンの携帯電話の売り上げなども激減した。皮肉なのは、こうした影響が文在寅前大統領の5年間の任期中にも及んだことだ。文氏は北朝鮮との平和を望むなど中国の思惑と一致していたが、韓国にほとんど経済的な利益をもたらさなかった」

     

    文前大統領は「親中朝路線」を歩んだが、韓国にとって経済制裁を解除されることもなかった。韓国からの「ラブコール」が成果を上げなかっので、韓国も目を覚まさざるを得ない状況だ。中韓関係は、こうして次第に冷却化への方向へ向かっている。

     

    (3)「さらにTHAAD以降、化粧品や自動車の輸出が後退した背景には、中国の自給自足体制の推進があったことも明らかになっている。いまや韓国の半導体産業は米国による対中輸出規制をめぐるジレンマにも直面している。韓国が対中ビジネスから恩恵だけを得られた時代の終わりを認識すべきである」

     

    中国の半導体産業は、米国からの規制措置によって大きな制約を受けている。中国はこれまで、韓国へ米国主導の「チップ4」(米国・日本・台湾・韓国)へ参加しないように圧力を掛けてきたが、無駄なことになりそうだ。韓国は、安全保障で米国の傘に入りながら、米国と対立する中国へ便宜を図ることなど、常識的にもあり得ないことに気づいてきたのであろう。これまで、韓国「二股外交」が成立したのは、米中関係が対立していなかったという特殊状況があった結果であろう。そういう良き時代は去ったのだ。

     

     

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    米空軍で輸送や給油を担当するマイク・ミニハン司令官が内部メモで、2025年に台湾有事が起こると予測、準備を急ぐよう指示したことが1月27日に分かった。こうした、台湾侵攻を巡る情報が飛び交う中で、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)は冷静に対応。台湾での先端半導体設備投資を積極化させているのだ。この冷静な対応姿勢の裏には、どのような経営哲学があるのか。 

    英誌『エコノミスト』(1月21日付)は、「TSMCの周到な長期戦略」と題する記事を掲載した。 

    半導体受託製造(ファウンドリー)世界最大手で、時価総額4300億ドル(約55兆円)を誇る台湾積体電路製造(TSMC)は、世界で最も危険な地政学的火種を抱える国や地域をまたにかけて事業を展開している。そうした大変な状況にもかかわらず、冷静さを失うことがない同社には好感さえ覚える。

     

    (1)「TSMCが誇る比類なき先端半導体の製造能力は、米国と中国双方の垂涎の的だ。同社による半導体の供給量は、米国向けが中国向けを大きく上回るが、米中のいずれかが経済的圧力か軍事力によってその独立性を完全に奪えば、世界に与えるその影響は甚大なものになるだろう。同社の工場の多くは台湾西岸にあるため、中国が台湾海峡を経て侵略してくる危険に常にさらされている。だが同社がうろたえることはない。「もし戦争が勃発したら半導体のことを心配していればいいなどという事態ではなくなる」と91歳のTSMC創業者、張忠謀(モリス・チャン)氏は2022年、ある音声番組ポッドキャストでこう述べた。彼の後継者で同社董事長の劉徳音(マーク・リュウ)氏は、誰にとっても平和が一番だと強調する」 

    中国は、TSMCから半導体供給を受けなければ、自動車などの産業がストップするほどの高い依存度である。中国が、そのTSMCのある台湾へ軍事侵攻するか、という「信念」を持っているのだ。 

    (2)「TSMCは、米国からのラブコールに応じて米陣営(注:米国での工場建設)に加わったかにみえる。バイデン米大統領は昨年12月、同社が米国アリゾナ州フェニックスに建設中の巨大な半導体製造工場の前に立ち、同社が総額400億ドルを投資すると発表したことに歓迎の意を表した。ただ、同社をよくみると地政学的にやっかいな事態にどう対処すべきか教訓を与えてくれる。TSMCは一部の見方とは異なり、米中新冷戦によって台湾との決別を強いられているわけではない。同社の台湾の工場は、今も世界で使われる最先端半導体の75%以上を生産している」 

    TSMCが、米国へ工場進出したのは外交的な意味もある。米国民へ台湾の存在を深く認識させて、中国の台湾侵攻の際は防衛に立ち上がるような期待感を持っているであろう。

     

    (3)「同社は、ビジネスの利益を最優先するために極めて高度な外交も展開しているのだ。米国以外でもソニーグループのために日本で初の半導体工場を建設する。こうした動きは生産拠点を顧客企業近くに移す戦略のようにみえるが、台湾に住む人からはTSMCが台湾を見捨てるのではないかとの疑念を招く。米調査会社ニュー・ストリート・リサーチのアナリスト、ピエール・フェラグ氏は、「まったくの見当違いだ」と反論する。TSMCはアリゾナとほぼ同時期に台湾でも新工場の建設を進めており、しかもそれらの生産能力はアリゾナで建設中の2つの新工場の4倍に達するうえ、より先端の半導体を生産することになるからだ」 

    TSMCが、日本へ工場を建設するだけでなく、筑波へ研究所も開設した。オールジャパン(政府・産業界・学界)の参加を得た半導体研究所である。TSMCは、さらに日本でも二番目の工場建設計画を示唆しているほど。これも、日本に対して台湾防衛での協力を求めるという意味合いがあろう。TSMCが、米国へ工場進出している背景と同様なものがあっても不自然ではないのだ。

     

    (4)「米国への大規模投資は、急な戦略転換をしたというより長期的な保険という意味合いが強い。米国に生産拠点を持つことで、人材と各種サプライヤーを確保するという難しい課題に着手することが可能になる。これで「中国が台湾爆撃という信じがたい行動に出た場合」に備えた拠点拡大への準備になる。ただ、当面は研究開発の大部分と生産能力の少なくとも8割は台湾にとどまることになりそうだ」 

    TSMCが、米国で大規模投資をするのは長期的なリスク分散を図る意味もある。仮に、中国が台湾侵攻すれば、半導体生産機能も止る事態になる。TSMCの世界供給責任を果たすためにも、米国進出は不可欠である。人材確保という面もあるのだ。

     

    (5)「ある意味、TSMCはバイデン政権にうまく取り入っている。アリゾナ工場は米国の半導体安全保障問題を解決できないかもしれない。少なくとも、バイデン氏が重視する製造業の良質な雇用(組合はつくらないなど)をある程度提供することにはなるからだ。つまり同社は自社の将来にとり長期的に保険となる体制を築きつつあるのだ。同社は最先端の半導体は一層複雑になり、生産コストは上昇していくし、世界経済のデジタル化が進むほどその利用は増えていくとみている。そうなればTSMCはいずれ、人口が減少している台湾では対応しきれなくなるかもしれない。その場合、米国を筆頭に世界の優秀な頭脳を集めることが死活問題となる」 

    TSMCは、長期的な視点から米国への進出を行なっている。一つは自社のために、もう一つは、米国による台湾防衛への協力要請である。

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    ウクライナの次なる戦闘にとって、戦車こそが最適の兵器となるだろうと予測されている。ウクライナ軍は、ドイツの主力戦車「レオパルト2」の供与を受けられることになった。ウクライナのオメルチェンコ駐仏大使は、ウクライナに供与される戦車が計321両になると明かした。最短距離で4月以降には最前線に配備される見通しである。これを受けて、ロシア軍も戦車で対抗するものと見られる。 

    ロシア製戦車はこれまでの戦闘で、「ビックリ箱」と揶揄されるように、砲撃に弱いことが知られている。砲塔と弾薬が近くに配置されているから、すぐに誘発をおこして爆発するのだ。西側諸国の戦車は、砲身と弾薬が別々に配置されているので、「ビックリ箱」という事態を免れている。ロシア軍は、こうした弱点を抱える戦車隊がどのように戦うのか、ヤマ場を迎える。 

    米『CNN』(1月28日付)は、「ウクライナ情勢、今後の戦闘で戦車が決め手となる理由」と題する寄稿を掲載した。筆者のデービッド・A・アンデルマン氏は、CNNへの寄稿者で、優れたジャーナリストを表彰する「デッドライン・クラブ・アワード」を2度受賞している。 

    ウクライナで戦争に突入した1年前、一般的な通念では戦車はもはや時代遅れということになっていた。ドローン(無人機)や自動追尾機能のあるミサイルには太刀打ちできないというのがその理由だ。この考えは明らかに間違っている。かなり明確になりつつあることだが、ウクライナのような戦場において、装甲車両による優越性は形勢を逆転させ得る。それも劇的に。 

    (1)「ロシアの戦車は、(昨年ウクライナで)冬から春にかけて雪解けのために起きる土壌のぬかるみにはまった。中には砲塔まで泥に沈んだ戦車もあった。そうした戦車は戦うこともできず、ウクライナ軍に狙い撃ちにされた。侵攻の過程でロシア軍が失った戦車の数は1400両を超える。あれから1年近くが経過した現在、ロシア軍は教訓を得たと思われる。「彼らにとって、冬の後半や春の初めに攻撃を開始するのは得策ではないだろう」「春の終わりまで待つはずだ。その時期なら土壌の水気は格段に抜けている」と、アンドリー・ザゴロドニュク元ウクライナ国防相は指摘する」 

    ロシアは、昨年の開戦直後の失敗に懲りている。本格的攻撃開始は、雪解けが終わって大地が乾くまで仕掛けないと見られる。 

    (2)「西側は現状を好機ととらえ、自国の最新鋭の主力戦車を実際の戦争という状況下でテストしたい考えだ。対するロシア側は、長い間そうしたシナリオへの準備を全く整えていなかった。ソ連の戦車操縦手には大型のハンマーが支給される。頻発するギアの不具合が起きた際には、それでトランスミッションを叩いて対処するのだという。また戦車内には冷暖房がないため、搭乗員は冬の寒さに凍え、夏は暑さに息が詰まる状態を余儀なくされる。とりわけ砲塔を閉じる時にはそうだった」 

    ロシア側は、西側諸国の戦車と戦う想定がなく、旧式の戦車を稼働させている。戦車内は劣悪な「戦闘空間」である。戦車内には冷暖房設備がないのだ。 

    (3)「ウクライナでのロシア軍戦車が、(ソ連時代同様に)脆弱であることに変わりはなかった。中でも「ビックリ箱」に例えられる設計上の欠陥は深刻だ。ロシア軍の戦車のほとんどは、大砲の弾薬を操縦手や砲手のすぐ隣に搭載している。その数最大40発。戦車は前部こそ頑丈な装甲で覆われているが、側面や砲塔はそれほどでもない」 

    ロシア戦車は、「ビックリ箱」と称せられるように、敵の攻撃で簡単に爆発する構造になっている。砲塔が爆発で飛び出すほどである。むろん、塔乗員は犠牲になる。 

    (4)「米国製の「ジャベリン」や、英国とスウェーデンが合同開発した「NLAW」といった対戦車ミサイルが、ロシア戦車のエンジンを直撃すると、最も装甲の薄い部分に影響が及ぶ。このため、搭載する弾薬全てが爆発し搭乗員は焼け死ぬことになる。これに対し、米国のM1エイブラムスやドイツのレオパルト2など西側の戦車は、搭乗員を弾薬から厳重に隔離。双方の間には爆発にも耐えられる壁が設置されている」 

    ドイツのレオパルト2など西側の戦車は、搭乗員が弾薬から厳重に隔離されているので「ビックリ箱」にはならない。 

    (5)「ロシア軍の保有する新型戦車「T14アルマータ」は、あらゆる点でM1エイブラムスとレオパルト2に匹敵するが、わずかな数しか製造していないという問題がある。昨年のメーデーに赤の広場で行われたパレードには、3両しか登場しなかった。最近の情報報告によると、同戦車の開発と配備は、コストの上昇など複雑な問題が絡んで停止しているとみられる」 

    ロシアにも欧米並みの新鋭戦車はあるが、たったの3両しか登場していない。コスト高が鬼門になっている。 
    (6)「ウクライナでの戦争が戦車戦に変わるとしても、またそれがエイブラムス、レオパルト対最新のロシア戦車の戦いだとしても、実際には全く勝負にならない可能性がある。西側の戦車の到着が間に合えばなおさらだ。ウクライナの当局者は、最新の戦車300両があれば自軍の装備を補完しつつ、ロシアに対しても数の上で全く同等の立場に持ち込めるとみている。ザゴロドニュク氏が国防省の推計を引用して筆者に説明した」 

    ウクライナ軍は、西側の最新戦車300両があれば、ロシア軍と対等の戦いができるという。すでに321両の供与が決まったから、この面での不安は消えた。

    (7)「車長や砲手、操縦手、技術兵、整備士を訓練するには最低でも3カ月を要する。それだけ複雑な戦車を相手にするのであり、時間が極めて重要になる。今後4カ月もしないうちに春の雪解けは終わり、地面は乾き始める。間違いを犯す、もしくは躊躇するような余裕はほぼないと言っていい 

    下線のように、ウクライナにとっては今後の4ヶ月が極めて重要な時間になる。それは、ロシアにとっても同じことだ。

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    今年は、4年ぶりの規制なしの春節である。これからの個人消費動向を占う意味でも重要な試金石であった。コロナ前の春節(2019年)に比べて、旅行客数は1割減、観光収入が3割減に止まった。コロナ感染者の犠牲者が、増えている中での春節である。慎重になったのであろう。この状況を見ると、今年の個人消費は「一陽来復」とは行かないようだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(1月28日付)は、「中国、春節休暇の国内旅行3億人 コロナ前の9割水準と題する記事を掲載した。

     

    中国文化観光省は27日、春節(旧正月)に伴う大型連休(21〜27日)の国内旅行者数が前年比23%増の延べ3億800万人だったと発表した。新型コロナウイルス流行前の2019年の9割近い水準となった。観光収入は前年比30%増の3758億4300万元(約7兆2000億円)だった。

     

    (1)「新型コロナを封じ込める「ゼロコロナ」政策が昨年12月に事実上終了し、4年ぶりに移動制限のない春節となった。休暇を家族らと過ごす帰省客が増え、国内の観光地もにぎわった。国家移民管理局によると、21〜26日に中国本土から香港や海外に出た人は延べ119万2000人で前年比2倍だった。旅行予約サイトの携程集団(トリップドットコムグループ)によると、海外ではタイやシンガポール、マレーシアなど東南アジアが人気を集めた。中国交通運輸省は春節休暇を挟む40日間の旅客数が、前年の2倍の延べ20億9500万人になると予測している。人の移動や集まりが増え、新型コロナ感染が地方都市や農村に広がる可能性も懸念されている」

     

    国内旅行者数が延べ3億800万人、香港や海外に出た人は延べ119万2000人という結果になった。国内旅行客数は、コロナ前に比べて1割減。4年ぶりの制限のない春節であったが、「爆発」という状況ではなかった。

     

    『日本経済新聞 電子版』(1月28日付)は、「中国、春節の観光収入3割増 コロナ前には届かず」と題する記事を掲載した。

     

    中国文化観光省によると、27日終了した春節(旧正月)に伴う大型連休の観光収入は、前年比30%増の3758億4300万元(約7兆2000億円)だった。コロナ拡大前の2019年に比べると3割減の水準にとどまった。

     

    (2)「上海市の観光地「豫園」は25日、今年の干支のウサギのランタンがライトアップされ、家族連れなどでにぎわった。菓子店の店員は「今年は客が多く売れ行きがいい」と話した。中堅旅行会社の同程旅行によると、今回の春節休暇でホテル予約数の伸びが大きかったのは陝西省西安市、浙江省杭州市、黒竜江省ハルビン市などだった」

     

    陝西省西安市、浙江省杭州市、黒竜江省ハルビン市が賑わったという。いずれも、有名な観光地である。それにしても「極寒の地」ハルピンは、零下50度と報じられていたほど。非日常体験の好奇心から人気を集めたのか。

     

    (3)「観光地はにぎわいが戻りつつある。西安にある「兵馬俑(へいばよう)」の博物館では、チケットが事前に売りきれる日もあった。昨年は、たびたび一時的に営業を停止した上海ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・北京(USB)などのテーマパークも多くの人でにぎわったようだ。両施設のアプリによると、連休中は待ち時間が23時間になるアトラクションもあった」

     

    テーマパークは、手近な娯楽である。待ち時間が2~3時間とは、これまでお預けにされてきた場所だけに、人気復活である。

     

    (4)「身近な娯楽である映画も好調だった。国家電影局によると、興行収入は67億元超と22年の60億元を上回った。中国を代表する映画監督の張芸謀(チャン・イーモウ)氏の作品である「満江紅」やSF映画「流転の地球」の続編が人気だった。中国メディアによると21年に続いて過去2番目の水準だった」

     

    映画館が賑わったのは、作品で人気が集まった面もあるが、最大の理由が「少額」での娯楽である。いかにも、現在の中国経済を反映している感じだ。

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    中国防疫当局は、コロナの感染ピークは過ぎたとして、早期の収束予測を始めている。だが、これを裏づける詳細なデータは未発表だ。WHO(世界保健機関)も、詳細なデータの発表を求めているほどである。 

    英医療調査会社エアフィニティーは、中国の統計に病院以外での死者数を含まれず、コロナ関連死の定義が狭すぎると指摘している。要するに、第三者機関は中国の主張するピーク説を検証できるデータが不足しているのだ。中国の政治的発表と見られる。 

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月28日付)は、「中国『脱ゼロコロナ』 専門家はデータ疑問視」と題する記事を掲載した。 

    中国は今週、新型コロナウイルス流行のピークが過ぎたことを示そうと、大量のデータを公表した。だが公衆衛生の専門家は、中国政府の情報に状況を正確に判断できるだけの透明性があるかと疑問を呈している。

     

    (1)「中国疾病予防管理センター(CDC)は、コロナによる病院での死者数について、1月上旬は1日約4300人前後だったが、27日までの1週間の春節(旧正月)休暇の半ば時点では、その2割近くに減少したとしている。CDCは同じ報告書で、コロナ感染者数と重症者数の激減も示した。このデータは、昨年12月に厳格なコロナ政策を3年ぶりに解除してからの最も難しい期間を乗り切り、コロナとの共存への移行が円滑で秩序立っているとする中国の主張を裏付けるものだ」 

    病院での死者数は、1月上旬がピークであったという。27日時点ではその2割近くまで減少したという。これをもって、中国はコロナ感染ピーク説を主張している。 

    (2)「疫学者の間では、中国の感染ピークが過ぎた可能性が高いことに同意しつつも、政策転換の影響を十分に判断するには政府の数字は不完全過ぎるとの声もある。世界保健機関(WHO)も、その点を問題に挙げている。今月に入り公表された直近の報告書によれば、入院と外来受診は年初ごろに天井を打った。また、今週は1月5日に記録した高水準に比べて入院者数が85%、重症者数が72%、それぞれ減少した。コロナの流行状況を測る指標である発熱外来の受診件数は、ピークをつけた12月23日の287万件からの減少が続いた。この報告書にはピーク値とトラフ値はあるが、1日ごとの内訳はない」 

    感染症を巡る判断では、日々の克明なデータが必要である。日本でも毎日、感染者数、重症者数、死者数が報告されている。中国では、それが伏せられているのだ。都合のいいデータだけを発表する。その意図は何かが問われている。

     

    (3)「WHOは26日公表した最新のリポートで、中国のコロナ死者数など関連の数字を付属資料に掲載した上で、中国政府の総論を裏付けるデータがないため同国の状況を独自に検証していないと説明した。WHOのマーガレット・ハリス報道官は先週、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)に、前週比での有意義な分析をするには「週次データが必要だ」と語った。WHOはこの点を26日付の報告書でも強調。地域別データの欠如にも言及した」 

    中国はWHOからも注文がつくほど、詳細なデータを公表せずにいる。 

    (4)「中国が開示した情報の正確性にはコロナ流行当初から疑問が投げかけられており、外部の専門家からの懐疑論は後を絶たない。それでも、中国が感染ピークを越えたという主張に同意する世界的専門家もいる。英イーストアングリア大学のポール・ハンター医学教授は、報告されたコロナの再生産数と、12月20日までの感染者数が2億5000万人とする中国政府の推計を踏まえると、中国は既に感染ピークを過ぎた見込みが十分にあるとし、「中国のピークは高いが期間は短かったようだ」と話した」 

    不正確なデータでも、中国の感染ピークは過ぎたようである。

     

    (5)「英医療調査会社エアフィニティーの分析担当ディレクター、マット・リンリー氏は、中国の統計には病院以外での死者数は含まれておらず、コロナ関連死の定義が狭すぎると指摘。「(中国が)発表するデータは大抵、現状把握に役立たない。このところの公式数値の多くは矛盾している」と述べた。エアフィニティーは先ごろ、地方のコロナ感染ペースが予想を上回った結果、死者数と感染者数がわずか数日前にピークに達したとする、より大規模で長期にわたる流行を予測した一部の著名な感染症専門家はこの予測に疑問を呈している。だが、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の張作風・疫学教授は、中国のコロナ流行が政府の主張するピークよりはるかに長く続いたとの見方を支持。今月の春節前後の帰省ラッシュは新たな感染の波につながるリスクだと話した 

    英医療調査会社エアフィニティーによれば、ピークは1月20日過ぎで、今後のより大規模な長期にわたる流行を予測している。この予測には反対論もあるが、春節の帰省ラッシュが新たな感染を引き起すリスクは指摘されている。 

    (6)「中国CDC所属で著名な疫学者の曽光氏は、1月初めの北京での会議で、コロナ流行の最も重大な影響は2カ月余り続く可能性があると、より保守的な見解を打ち出した。曽氏はWSJに、感染者数と重症者数が減少しても、高齢の患者は回復に2カ月余りかかる見込みで、多くの患者が再感染し、死亡さえする可能性が高いと話した。「さらに慎重な見積もりが必要だ」と語った」 

    中国の著名な疫学者の曽光氏は、3月頃まで続くコロナ感染症の悪影響を指摘している。ここは、慎重に見ておくべきであろう。

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