勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    1106 (1)
       

    中国外務省の報道官は1月3日、各国が新型コロナウイルス対策として中国からの入国者に対する規制を強化したのは「政治的」な動きだと非難し、対抗措置を取る方針を示した。中国の遅れた「ゼロコロナ撤廃」が、感染者を蔓延させているにも関わらず、「海外旅行自由」という無責任な決定が、各国での入国規制の広がりを見せている原因だ。中国は、これに焦りを募らせているのであろう。

     

    韓国は、1月2日から中国からの入国者全員に対する新型コロナウイルス検査(PCR検査)が義務付けられた。仁川国際空港に到着した1052人(乗務員含む)のうち90日以内の短期滞在の外国人309人が空港で検査を受けた。結果は、61人(19.1%)の感染が確認された。この人たちは、臨時施設で7日間隔離されることになる。これに対して、中国では、韓国へ反発の声を高めている。

     

    韓国紙『WOWKOREA』(1月3日付)は、「『買わない』『行かない』… 中国人たちの『NO韓国』運動」と題する記事を掲載した。

     

    韓国政府が「中国からの入国者」に対し、強力な “新型コロナウイルス感染症防疫政策”を施行したことで、中国人たちの不満が高まっている。

    (1)「3日、中国最大のポータルサイト“百度”や中国版ツイッター”微博(ウェイボー)”などには、韓国の防疫政策に対する中国人の不満のコメントが次々とあがっている。中国のオンラインメディア“火星方”はこの日、論評を通じて「すでに新型コロナの変異は全世界のどこにでも発生する可能性があるというのが、研究を通じて明らかになった事実だ」とし「それにもかかわらず多くの国が中国の入国を規制するのは、米国・英国など西側諸国たちの政治論理によるものだ」と主張した」

     

    急激な感染者増加ケースでは往々、変種が生まれやすいとされている。それだけに「中国産」変種が生まれて、世界中へ拡大することは是が非でも食止めなければならないのだ。中国には、こういう防疫上の対策など全く眼中にない振る舞いをしている。WHO(世界保健機関)も、中国に対して逐一、情報提供を呼びかけているほどだ。

     

    (2)「韓国による “中国人入国に関する措置”について、中国のあるネットユーザーは「韓国が中国をさえぎろうとするなど、身の程知らずだ」とし「父の国に対する礼儀がなってない」と批判した。一方「“韓国不買運動”の兆しが見え始めている」という報道も出ている。ある中国人の論評家は自身のブログを通じて「最近の韓国による防疫政策について、中国内では『韓国に行くのを止めよう、韓国のものも買うのを止めよう』という人々が増えている」として、それらに関連したSNSの内容を抜粋しSNSにあげている」

     

    中国では、「傲慢」な投稿が出回っている。韓国は、日本へ「不買運動」を仕掛けた経験を持つが、今度は中国から仕掛けられるという皮肉な目に遭いそうだ。経験すれば分かるが、「不買運動」の対象になることは愉快なことでない。

     

    (3)「韓国政府は2日から、中国発の航空便や船便で入国するすべての人を対象に「PCR検査」を義務化した。中国から入国する短期滞留の外国人は入国直後PCR検査を受け、検査結果が確認されるまで別途のスペースで待機しなければならない。また、中国内の韓国公館を通じた短期ビザの発給も1月31日まで制限される」

     

    文政権当時は感染初期、中国へ遠慮して中国人の入国規制を行なわず、感染者が急増した苦い経験がある。今回は、他国の規制に会わせて「同時進行」という早手回しである。

     

    中国外務省の報道官は3日、「政治的な目的で防疫措置をもてあそぶことに断固反対する」と強調した。「中国だけを対象に入国規制を実施するのは科学的ではない」と述べつつ、中国も「対等の原則に基づき、相応の措置を取る」と述べたのだ。中国は新型コロナが爆発的に流行しているが、1月8日に海外旅行対策を抜本的に緩和する。こうして、国外に旅行や出張に行く人が増えるので、各国が水際対策の強化を打ち出している。中国に、自国の感染拡大は他国の迷惑になる、という配慮がないのだ。

     

     

    a0960_008729_m
       


    中国は、ゼロコロナからウイズコロナという準備期間を飛び越え、「フルコロナ」状態へ移行したので大きな混乱をもたらしている。3年間のゼロコロナは一体、何であったのか。時間の無駄であった。この間に失ったGDPは、どれだけの規模になるのか。改めて権威主義国家の非合理性を際立たせている。

     

    『ブルームバーグ』(1月3日付)は、「中国経済、低迷状態で2022年終えるーコロナ感染再拡大が重石」と題する記事を掲載した。

     

    「中国では2022年12月に企業と消費者の支出が大幅に減少した。新型コロナウイルスの感染が全国で再拡大する中で、23年の最初の数カ月は混乱が続く公算が大きい。

     

    (1)「国家統計局が12月31日発表した12月の製造業購買担当者指数(PMI)は製造業活動のさらなる悪化を示した。建設業とサービス業を対象とする非製造業PMIは20年2月以来の低水準となった。一方、チャイナ・ベージュブック・インターナショナル(CBBI)が12日発表した民間調査では、中国経済が昨年10~12月(第4四半期)に前年同期比で縮小したことが示唆された」

     

    チャイナ・ベージュブックとは、中国版「米地区連銀経済報告(ベージュブック)」と言える。米連銀と同じ調査手法で、中国企業について行なう実態調査である。これによると、昨年10~12月は前年比マイナス成長になっている。

     

    (2)「中国政府が12月に「ゼロコロナ」政策の解除を突如決定した後、主要都市では感染が急拡大。感染を恐れる人々が外出を控えるようになっている。3日発表の12月の財新製造業PMIも49と、11月の49.4から低下した。エコノミストらの予測では22年の中国経済は3%の伸びにとどまったとみられている」

     

    22年の中国経済の成長率は、手堅く見れば3%前後と言えそうだ。書き入れ時の第4四半期が、前年比でマイナスになっているとすれば、その負の影響力は23年経済に持込まれると見るべきだ。

     

    (3)「CBBIの調査はわずか2%(22年)の伸びを示唆した。CBBIのチーフエコノミスト、デレク・シザーズ氏は、「コロナ感染の大きな広がりが続く中、投資は10四半期ぶりの低水準にあり、新規受注が引き続き落ち込む状況にあって、1~3月(第1四半期)に大きな回復を見込むことはますます非現実的になっている」と指摘した」

     

    大きな影響を受けたのは、不動産開発企業の建設投資がマイナスになっていることだ。これは、GDPの25%を占めているだけに、影響は長く尾を引くであろう。

     

    (4)「エコノミストらは23年後半には回復に弾みがつく可能性があると指摘している。ブルームバーグが集計したエコノミスト予想の中央値では、1~3月の緩慢なスタートの後、通年では4.8%成長に持ち直すとみられている」

     

    「フルコロナ」は、一過性で終わらない点が問題である。これまでの3年間のゼロコロナで、国民は政府への信頼を失っている。コロナが仮に終息しても、国民は「クイックレスポンス」で消費拡大へ進むとは思えない。少し様子を見ながら、徐々に動き出すであろう。こう見ると、少なくの23年上半期の経済は停滞基調を脱しないと見るべきだろう。

    IMF(国際通貨基金)のゲオルギエバ総裁は1月1日、2023年が昨年よりも「さらに大変な1年」になるかもしれないと話した。ゲオルギエバ氏は、世界経済のビッグスリーである米国、中国、欧州連合(EU)の景気が鈍化し、世界の3分の1の地域を景気低迷が襲う恐れがあると分析。特に、中国の不振ぶりを指摘している。中国は、22年に3%台の成長率で40年ぶりの振るわない経済成績を記録したと見られる。それだけに、中国発による世界的不況の可能性を懸念しているのだ。

     

    ゲオルギエバ氏は、「習近平中国国家主席が、厳格な封鎖政策を撤回してから3~6カ月間、中国は新型コロナウイルス拡散で厳しいだろう。このようになれば、中国周辺地域と世界経済成長に否定的な影響を及ぼすほかない」としている。以上は、米『CBS』番組に出演して語ったものだ。

     

    ロイターは、「ゲオルギエバ総裁の発言は1月16~20日のダボス世界経済フォーラム(WEF)で、IMFが23年の世界経済成長率見通しを下方修正して発表することを示唆したもの」と予想している。IMFは、22年10月に23年の世界経済成長見通しをそれまでの2.9%から2.7%に引き下げた。WEFにおいて、2%未満へとさらに引下げる可能性がある。ゲオルギエバ氏は、昨年12月にもこうした主旨の発言を繰返している。


    a0960_005041_m
       


    ロシアの占領下にあるウクライナ東部で1月1日、ウクライナ軍によるとみられる攻撃が行われ、弾薬保管庫の隣に駐屯していたロシア軍に63人の死者が出た。ドネツク州マキイウカで、ロシア軍の徴集兵が集まる専門学校が1日未明に攻撃を受けたものだ。

     

    この攻撃について親ロシア派の軍事ブロガーは、部隊に対する防御が甘く、大量の弾薬の保管庫の隣に宿所を与えられていたようだと主張し、ロシア軍を声高に批判している。ウクライナ軍の高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」のロケットが、専門学校に着弾したとき、弾薬保管庫が爆発したとされる。

     

    ロシア軍は、これまでも弾薬管理が杜撰と指摘されてきた。ウクライナ軍は、ロシア軍が弾薬を野積みしている状態を発見しており、その管理の甘さを指摘するほどだった。前線での将校不在が招いた事態と言えよう。ロシア軍では、すでに多くの将校が犠牲になっているのだ。

     

    『ロイター』(1月3日付)は、「ウクライナ東部攻撃でロシア兵63人死亡、軍上層部に批判」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア国防省は2日、併合を宣言したウクライナ東部ドネツク州のマケエフカで12月31日にウクライナ軍の攻撃を受け兵士63人が死亡したと発表した。米国がウクライナに供与した高機動ロケット砲システム「ハイマース」4発が着弾したとしている。ウクライナは、死者は数百人としたが、親ロシア当局者は誇張だと指摘した。

     

    (1)「軍事に詳しいブロガーは、兵舎と同じ建物に弾薬を保管した結果、破壊の度合いが大きくなったと批判。元ロシア外務次官のグリゴリー・カラシン上院議員は、ウクライナや北大西洋条約機構(NATO)の支援者への報復とともに、「厳密な内部分析」を要求した。元上院議長のセルゲイ・ミロノフ議員は「無防備な建物に軍人を集めた」当局者と「適切な警備を提供しなかった全ての上級当局者」の刑事責任を主張した」

     

    ロシア側の発表で63人の死亡としている。ウクライナは、400人と発表している。いずれにしても、痛ましい数の犠牲者である。

     

    (2)「ロシア軍のブロガーは、指揮官がウクライナのロケットの射程内であることを知っていたにもかかわらず、兵舎と同じ建物に弾薬を保管した結果、破壊の度合いが大きくなったと述べた。ウクライナ東部の親ロシア派部隊の元司令官で、現在はロシア民族主義軍事ブロガーとして最も有名なイゴール・ガーキン氏は、数百人が死亡または負傷したと述べた。弾薬はその場所に保管され、軍備は偽装されていなかったという

     

    下線は、弾薬が野積みにされていたことを裏づけている。前線での弾薬保管が、極めて杜撰であるのだ。

     

    (3)「ロシア国内の怒りは、議員にも及んだ。ロシア上院議員で元外務副大臣のグリゴリー・カラシン氏は、ウクライナとNATOの支持者に対する報復を要求するだけでなく、「厳密な内部分析」も求めた。ロシア上院の元議長であるセルゲイ・ミロノフ議員は、「無防備な建物に軍人の集中を許した」当局者と「適切なレベルの警備を提供しなかったすべての上級当局者」の刑事責任を要求している。ロシア国内の怒りは、議員にも及んだ。マキイウカのロシア兵舎での爆発の余波を伝える未確認の映像は、巨大な建物が煙る瓦礫と化している様子をネット上に公開している」

     

    ウクライナは、ロシアに侵略されたのだから、正当な反撃権を持つ。ロシア側の「ウクライナとNATOの支持者に対する報復を要求する」とは、侵略戦争の実態をぼかした発言である。

     

    (4)「ロシアは、12月31日に数十発のミサイルを発射した後、1月1日と2日に80機以上のイラン製ドローン「シャヘド」を発射した。ウクライナ大統領ゼレンスキー氏は、ロシアがウクライナを「疲れさせる」ために、こうした攻撃を長期的に行う計画であると述べた。また、「テロリストがその目的を達成できないように、他のすべてのテロリストが失敗したように、行動し、すべてを行う」必要があると述べた」

     

    ロシアが、戦闘行為を中止することが無益な犠牲者を止める唯一の策である。21世紀の現在、侵略戦争ほど無意味な行為はないのだ。

    a1320_000159_m
       

    中国不動産バブル破綻の象徴的な存在である中国恒大は、37兆円の債務を抱えて立ち往生の状態へ追込まれている。中国本土では政府系の債権者によって、差し押さえた資産売却が加速しているが、海外債権者への対応は全く進まない状況だ。

     

    これに業を煮やした海外債権者が、香港で中国恒大の清算訴訟を起す動きが始まっている。清算が決定すれば、中国の金融に大きな衝撃を免れず、23年の中国経済が直面する「大型爆弾」になりかねない事態を迎える。

     

    『東亜日報』(1月3日付)は、「中国恒大が357兆ウォンの債務調整計画示せず破綻の恐れ」と題する記事を掲載した。

     

    中国の不動産開発大手の中国恒大は、22年末が期限切れだった357兆ウォン規模の債務構造調整計画を示すことができなかった。このため、破産手続きに入る恐れがあるという懸念が高まっている。景気回復を国政運営の中心に置いた中国当局にとって、大型の悪材料になりかねないという見通しが出ている。

     

    (1)「2日、米ブルームバーグ通信などによると、恒大は昨年末までに香港証券取引所に提出することになっていた1兆9700億元(約357兆ウォン)規模の債務構造調整案を提出しなかった。ブルームバーグは、恒大は香港で清算訴訟に直面する可能性があると伝えた。これに先立って、恒大は22年7月も、債務構造調整計画発表の約束を守らなかった」

     

    中国恒大は、海外債権者に22年12月第1週にも返済計画を示す方針だと伝えていた。それが年末へとずれ込んだが、それでも返済計画を出せなかったのだ。これでは、債権者が恒大に誠意なしと見て「清算訴訟」に持込むのもやむを得まい。

     

    (2)「恒大は2021年12月、ドル建て債券を返済できず、公式デフォルト(債務不履行)を宣言した状況だ。その後、中国当局が介入して構造調整を誘導しているが、負債があまりにも膨大で進展は容易ではないという。中国当局は2021年、不動産市場の過熱にともなう投機防止を目的に、不動産開発業者に対する強力な取り締まりに乗り出し、その結果、恒大のデフォルトがもたらされた。他の不動産企業まで流動性危機に陥った」

     

    これまでに非公式な形で示された再編計画によると、中国恒大傘下で香港上場の自動車、不動産管理両部門の株式と交換する案が含まれる可能性を示唆していた。中国本土にある恒大の資産は、大部分が海外投資家への返済の対象外とされていた。これに対して、債権者側は中国恒大の許家印会長の個人資産から少なくとも20億ドル(約2640億円)を会社資産に組入れるように求めたと伝えられている。こうした双方の話し合いがまとまらず、恒大は正式な再編計画として提案できなかったのであろう。

     

    (3)「中国は昨年、「ゼロコロナ」政策で経済成長が減速するや、「不動産締め付け」を止め不動産景気の回復に積極的に乗り出している。中国国内総生産(GDP)の約25%を占める不動産産業が萎縮すれば、景気回復を進めるのは容易ではないからだ。ブルームバーグは、「恒大が破産すれば、不動産市場はもとより、約58兆ドル規模の中国全体の金融市場にも大きな打撃になるだろう」と予測した。その場合、世界2位の経済大国である中国発金融危機に見舞われ、世界経済にも悪影響を及ぼしかねないという懸念が大きい」

     

    中国当局は、21年7月頃は恒大の債務処理について楽観的であった。恒大を分割して処理する案を立てていたのだ。だが、1年以上の歳月が経っても海外債権者に対して解決案を出せないのは、恒大の資産内容が劣化し過ぎていることであろう。だが、このまま「清算訴訟」に持込まれれば、敗訴の可能性が高まるはず。その場合、恒大は文字通りの「破産」となって、中国金融へは大きなマイナス点になる。重大事態となろう。

    a0001_000088_m
       


    韓国の尹(ユン)大統領は、文前政権とは異なる意味で「積弊清算」を呼びかけている。韓国の成長と発展を妨げる誤った制度、積弊を清算し、制度の改善に向けた改革を稼働させなければならないと強調している。この一つに労働慣行を取り上げている。

     

    韓国の大企業労組は、過激な闘争をすることから「貴族労組」と別称されているほどだ。過激な闘争で高賃金を獲得しているが、中小企業・零細企業の低い賃上げにしわ寄せされている。大企業が、下請け企業からの納品価格を買い叩いている結果だ。

     

    こういう悪弊の上に、年功序列・終身雇用によって大企業労組は守られていることで、労働市場の流動化が阻止される欠陥も生んでいる。韓国の中途退職者が、最終的に自営業によって糊口を凌がざるを得ない社会的不公平を招いているのだ。本欄では、韓国労働慣行の矛楯を一貫して指摘してきた。尹大統領が、この改革に取り組むのは当然であろう。

     

    『東亜日報』(1月2日付)は、「尹大統領、『貴族・過激労組と妥協する企業』への政府支援で不利益を示唆」と題する記事を掲載した。


    尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が1日、「職務中心、成果給制への転換を推進する企業と、貴族労組、過激労働と妥協して年功序列システムにこだわる企業とでは、政府の支援が差別化されなければならない」と明らかにした。

     

    (1)「尹大統領は、新年の辞で「一番先に労働改革を通じて韓国経済の成長を牽引しなければならない」としてこのように述べた。尹大統領は、「既得権の維持とレントシーキングに明け暮れる国には未来がない」とし、「大韓民国の未来と未来世代の運命がかかった労働・教育・年金の『3大改革』をこれ以上先送りすることはできない」と明らかにした。政権2年目の今年を「3大改革元年」と明言した尹大統領が改革のエンジンとして「既得権との戦争」を切り出したのだ」

     

    尹大統領は、労働・教育・年金の三大改革を上げている。労働は、年功賃金制の廃止。教育は、地方振興に結びついた教育としている。多分、職業(工業・商業・農業)教育の充実が目的であろう。年金は年金財政の改革である。

     

    労働改革は、明日にでも実行しなければならない緊急性を持っている。生産性に見合った賃金体系を実現できれば、結果として生産性向上にもなる。一石二鳥である。ストライキだけ行ない、生産性向上に協力しない「貴族労組」は、まさに左派政権が生んだ積弊である。

     

    (2)「大統領室の関係者は、「労働改革において民主労総(全国民主労働組合総連盟)は既得権だ」と話した。尹大統領が新年の辞では明言しなかったが、事実上民主労総を貴族労組、過激労組と決めつけ、労組と妥協する企業に対しては政府支援で不利益を与える考えを明確にしたものと受け止められる。尹大統領は、「労働市場を柔軟に変える中で、労使間、労労間関係の公正性を確立する」とし、「労働市場の二重構造を改善する。労働改革の出発点は『労使の法治主義』だ」と話した」

    民主労総は、日本で言えば「総評」のように政治闘争へウエイトを置いている。民主労総の年間予算は、1000億ウォン(約104億円)と推定されるが、その会計で透明性が欠けると指摘されているのだ。これについて、左派系メディアが一切、沈黙しているのは不自然極まりない。不当な話であれば、これまでのように断固、反対論を打ち上げるべきだが回避しているのだ。

    労働組合は、労働者の働く権利を守るべく不可欠の機関である。だが、この建前を悪用して、既得権益拡大というこれまでの政治運動傾斜は、自戒が必要である。政治権力が介入しないで改革することが、極めて重要である。

     

    労組は、労働慣行の見直し作業に協力する度量が必要だ。終身雇用制は、ブルーカラーにおいて労働力確保の必要性によって生まれたものだ。ホワイトカラーとは、無縁の賃金体系である。大統領が主張するように、年齢と離れて「成果給」が必要である。成果給主体となれば、30~40代は生産性が急上昇する時期でもあり、賃金もこれに会わせて引上げるべきだ。

     

    これは同時に、転職の可能性を生むはずである。英米の新聞社(記者)では、入社した企業に一生在籍する例は少ないという。2~3社へ転籍しながら給与が上がるシステムになっている。そして再び、最初の会社へ舞戻るケースも多いのだ。韓国も、こういうシステムへ変われとは言わないが、労働の流動化は不可欠である。これを妨害する労組は、批判されても仕方ないであろう。

    このページのトップヘ