勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    米国ペンス副大統領による先の演説は、中国に対する米国の基本戦略を発表したものであった。中国による、東シナ海と南シナ海における挑発的行為を強くけん制した。

     

    ここへ、新たな不確定要因が加わってきた。フィリピンのドゥテルテ大統領の健康不安説である。ガンの疑いで精密検査を受けた、と自ら語ったことだ。ガンと判明すれば、即時の辞任も示唆している。次期大統領選挙では、中国問題が最大の争点になろう。南シナ海の領有問題で、フィリピンが勝訴しているので、その実行を求める国民の意思が表面化するはずだ。

     

    フィリピンは、米国と軍事同盟を結んでいる。ドゥテルテ氏は、これを軽く見る動きを続けてきたが、次期大統領は正常化させるとみられる。こうなると、中国は一挙に「侵略者」の立場に逆転するであろう。こういう難しい情勢に立たされようとしている。

     

    『レコードチャイナ』(10月6日付)は、「米国の対中圧力が新たな局面に?『全方面で強化』と海外メディア、中国は猛反発し対立鮮明」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ロイター通信はこのほど、2人の米政府高官の話として『長年の対中強硬派として知られるボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が中心となって、貿易摩擦の枠を超え、サイバー活動や台湾、南シナ海の領有権問題なども含めて、中国に対して強い姿勢を取るようトランプ大統領を説得した』と報道。『今後数週間で米国側からのさらなる強硬発言や、新たな政策措置が出てくるだろう、と政府関係者は語った』と伝えた」

     

    フィリピンの政治状況しだいで、南シナ海領有問題が急浮上する可能性があろう。日本が戦前、旧満州を占領して、米国から不法性を鋭く批判された。その事態の再現である。中国は、南シナ海で不法占拠して軍事基地化するなど、米国の批判を最も受けやすい立場だ。

     

    (2)「こうした見方を先取りするかのように、米軍は中国を意識した軍事行動を矢継ぎ早に展開。923日と25日の2日にわたり、中国が軍事拠点化を進める南シナ海や東シナ海で、核兵器搭載可能な戦略爆撃機B52を飛行させた。東シナ海では航空自衛隊とも共同訓練を行った。中国側は『地域の緊張が高まった責任は米国の強引な外交政策にある』と抗議したが、マティス米国防長官はこれを一蹴。『もしこれが、中国が(南シナ海を)軍事拠点化する前なら、爆撃機が飛んだところで(米軍基地があるインド洋の)ディエゴ・ガルシア島にでも向かったのだろう、というだけで済んでいたはずだ』と言ってのけた」

    中国は南シナ海問題で、「地域の緊張が高まった責任は米国の強引な外交政策にある」と抗議できる法的な立場にはない。自らが不法占拠しているからだ。マティス米国防長官はこれを一蹴したのは当然である。

     

    (3)「ロイター通信は、『926日の国連安保理会合で、トランプ大統領が中国を116日の米中間選挙で共和党が不利になるよう介入し、通商問題における米国の強硬姿勢に一矢報いようとしていると非難したことも圧力が新たな段階を迎えたことを示している』と指摘。中国の『影響操作』と呼ばれる問題について、『トランプ大統領はより多くの説明を米情報機関から受けるようになっている』と言及している」

    中国メディアが、米国で米批判の新聞広告を4ページも掲載させたのは行き過ぎだ。中間選挙への介入と受け取られても仕方ない。中国はこれまで、やりたい放題であった。米国が、これから一つ一つ手を打ってゆくと見れば、米中の緊張化ではなく、米中の正常化とも見える。


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    これまでの経済学は、「消費者利益」を最大化させることが、経済政策の目的と考えてきた。この視点から言えば、中国流の他国の技術窃取を行なっても、生産コストさへ安くなれば、消費者が利益を受けるという極めて単純な理屈で、中国の行為は受入れられてきた。その影で、真面目に技術開発に励み、高品質な製品を生産してきた米国の中小企業が、中国の技術窃取企業に市場から追放されてきた。これが許されるのか。米国で、トランプ氏を支持した人たちの言い分は、ここにあるようだ。

     

    正統派経済学は、この米国における中小企業者の悩みに正面から応える努力をしなかった。トランプ氏の荒っぽい政策に、実は一理あるという声が出てきたことは「政治経済学」として考えさせられる点が含まれている。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月3日付)は、「トランプ大統領の対中貿易政策は正しい」と題する寄稿を掲載した。

     

    筆者のマーク・ラウチハイム氏は、ボブリック・ウォッシュルーム・エクイップメント社の社長。同社は112年の歴史を持つトイレ関連機器メーカーである。

     

    (5)「われわれの会社は、巨大かつ拡大を続ける中国市場から事実上閉め出されている。それは、われわれの会社の輸出向け製品に中国が25%の関税を課しているからだ。これに対し、中国が米国に輸出している競合製品への関税率は2.50%だ。私は自由貿易を信奉しているが、公正な貿易もまた重要だ」

     

    トイレ関連機器製品に例をとれば、中国は25%関税。米国は2.5~0%関税である。これでは、米国企業が圧倒的に不利である。この関税差を米中の消費者は、全く知らされていないのだ。この現実は、不公正貿易の典型例である。「消費者利益」を言う前に「生産者利益」・「労働者利益」が議論されるべきだった。トランプ氏の議論の焦点はここにある。米国の企業とそこで働く労働者に、まともな利益と賃金を与えろ。煎じ詰めれば、そういう理屈だ。トランプ氏自らの主張を論理的に説明すれば、第三者も「あーそうか」というはずなのだ。

     

    (6)「トランプ大統領の関税は、中国で大規模な事業を展開する多国籍の製造企業や、中国から製品を輸入している企業に打撃を与えるかもしれない。だが、わが社のような多くの中小製造企業は、大半の製品を国内で製造しており、関税の影響は最小限だ。中国との公平な競争の場を作る上で、今は最適と言える。経済が迅速に成長しているので、報復関税による短期的な痛みを吸収できるからだ」

     

    今回のトランプ関税で、損害を受ける企業はどこか。中国で大規模な事業を展開する多国籍の製造企業。それに、中国から製品を輸入している流通関連企業であろう。だが、多くの中小製造企業は、大半の製品を米国内で製造している。それ故、関税の影響は最小限である。この際、低い関税率で中国製品に脅かされている、多くの米国中小製造業者に、中国との公正な競争条件を復活させることが必要だ。それが、米国労働者に雇用と職場を提供するからだ。

     

    (7)「米国は、大幅な貿易不均衡があるため、交渉で強い立場にある。米国は毎年、約1300億ドル(約148000億円)相当の物品を中国に輸出する。一方の中国は、米国に5060億ドル相当もの物品を輸出する。これは、中国産品で米国の関税の打撃を受ける可能性があるものの比率が、その逆より高いことを意味する。もう一つの強みは、米国が中国に輸出するものの大部分が農産品のようなコモディティー(一次産品)であることだ。コモディティーの市場は世界中に存在する。一方、中国が米国に輸出するものの大半は製造業分野の製品で、他のどこかに売るのがより困難だ。中国は交渉しないと息巻いているものの、貿易戦争で失うものは米国より多い」

     

    米中貿易戦争において、米国は2点で有利である。第1は、米中の相手国への輸出規模が、中国の輸出額が米国の3.9倍もあること。第2は、米国の輸出品は一次産品が多く、中国は米国市場に特化した製品である。米国は、中国の市場を失っても他国へ振り向けられる。中国は、米国が輸入しなければ代替市場がないこと。こう見ると、米国が2点において圧倒的に有利である。中国に対して、強い態度で交渉すべきである。

     

     

    米中貿易戦争が、長期的に米国製造業に公正な利益復活させる。短期的な不利益を被っても、中国に不公正な貿易慣行を是正させるまたとない機会だ。それが、米国へ利益をもたらす道である。

     


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    フィリピンのドゥテルテ大統領は7月に、新憲法の下で2期目再選は目指さないことを明らかにしていた(『ロイター』7月6日付)。理由については、全く触れずにいたので、新憲法制定を機に引退かと思われた。

     

    だが、最新ニュースでは「がん検診を告白」ということで衝撃が広がっている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(10月5日付)は、「フィリピン大統領、がん検査受診を告白」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「フィリピンのドゥテルテ大統領は4日夜の演説でがんの検査を受けたと明かした。『検査結果を待っているが、もしがんであれば、がんだと明らかにする』と述べた。3日の閣議などを欠席し、健康不安が浮上していた。ドゥテルテ氏は3週間前に消化器と結腸の内視鏡検査を受けたと説明。『もし、がん(の進行状況)がステージ3なら、治療はしない。苦痛を長引かせたくない』と語った。ロケ大統領報道官は、ドゥテルテ氏が3日の閣議を欠席した際に『休暇を取っているだけだ』と話していた。ドゥテルテ氏は73歳で、過去にも何度か、健康不安がささやかれた経緯がある」

     

    状況証拠から言えば、ガンの恐れが強そうだ。

       3週間前に消化器と結腸の内視鏡検査を受けた。

       10月3日の閣議を欠席するということは、「再検査」で緊急を要した。

       がん(の進行状況)がステージ3とまで、具体的に病状の進行状態を医師から告げられた。

       過去にも何度か、健康不安がささやかれた。

     

    大統領の病状は、フィリピン政治と直結する。フィリピンは、南シナ海の領有をめぐって中国と常設仲裁裁判所で争ってきたが、全面勝訴の判決を得た。その直後に大統領に就任したドゥテルテ氏は、一転して中国と和解の道を選んだ。その際、中国はフィリピンへ240億ドル(約2兆7000億円)の投資を約束した。あれから2年。当時計画された案件のほとんどが実現していないことが今年9月に判明。ドゥテルテ大統領が、これといった成果なしにフィリピンの主権を弱体化させた、という懸念が比国民の間で高まっていた。その矢先に起こった大統領の健康不安である。国民が、どのような対応を迫るのか。早期の辞任要求となれば、混乱は免れない。

     

    大統領選が行なわれる事態となれば、最大の関心事は中国問題である。

     

    『ブルームバーグ』(9月16日付)は、「中国寄りドゥテルテ大統領への懸念、フィリピン国民の間で高まる」と題する記事を掲載していた。

     

    (2)「ドゥテルテ大統領は2016年10月に北京を訪問した際、27の協定に署名。中国は90億ドルのソフトローン(低利融資)に加え、鉄道や港湾、採鉱プロジェクトなどに対する150億ドルの直接投資を約束した。期限は定められなかった。フィリピンのペルニア国家経済開発庁長官によれば、以降、中国との間で実現した借款協定は、首都マニラ北部における7300万ドル相当の灌漑(かんがい)プロジェクト1件のみだ。マニラではこのほかに、中国が資金援助する2件の橋梁(きょうりょう)建設が7月に始まった。日本など他国から援助を受ける場合と比べ、中国からの融資手続きは「より時間がかかるようだ」とペルニア長官は話す」

     

    ドゥテルテ氏は2016年10月に北京を訪問し、27の協定(実施時期未定)に署名した。その後、中国の実施したプロジェクトは1件のみ。中国が、「一帯一路」に賭ける熱意とは異なり冷淡な振る舞いを見せている。フィリピンが、米国の同盟国であるからだ。

     

    (3)「調査会社ソーシャル・ウェザー・ステーションズが6月に実施した調査によると、フィリピン人の中国に対する信頼度は、ドゥテルテ氏が大統領に選ばれる前の16年4月以降で最低水準まで急落した。調査に回答した10人中9人近くが、フィリピンは中国に対して南シナ海における自国の権利を強く主張すべきだと述べた。比シンクタンク、ADRストラトベース・インスティテュートのリチャード・ヘイドリアン氏は『投資協定を歓迎する高揚感の波が去ると、私たちは中国による計画が大幅に誇張されたものだったことに気が付いた。日本や欧米諸国は今後も、フィリピンにおける外国投資の主要な担い手であり続けるだろう』と述べた」

     

    フィリピン人の中国に対する信頼度は急落している。10人中9人近くが、フィリピンは中国に対して南シナ海における自国の権利を強く主張すべきだとしている。これは当然、「ドゥテルテ批判」となっているだろう。仮に、ドゥテルテ大統領の早期退陣となれば、「反中国」大統領が出現するであろう。中国にとっては、また頭の痛い問題が起こるはずだ。


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    日韓で揉めていた旭日旗掲揚問題で、最も頭を悩ませていたのは韓国銀行(中央銀行)であろう。日韓政府が気まずい関係になれば、韓国にとって喫緊の課題である「日韓通貨スワップ協定」の申し入れが不可能になるからだ。

     

    中国人民銀行総裁がこの五月、日中通貨スワップ協定を依頼のため日本銀行総裁を訪ね、頭を下げたのだ。GDP世界2位の中国は、人民元投機の潜在的なリスクを背負っている。このリスクを防ぐには、日本の「円」が持つ信用に頼らざるを得ない。これが、日中通貨スワップ協定依頼の真相である。

     

    中国ですら、これだけ気を配っている重要な問題である。韓国のウォン投機が起これば、「円」の信用に頼る局面が必ず起こる。韓国にとっては、日韓通貨スワップ協定が必要なのだ。韓国はメンツが絡んで、自らは言い出せずにいるのは明白。日本からの一声を待っていたはずである。

     

    その重要な時期に、韓国与党は「旭日旗禁止法案」を出して騒ぎ立てる。しかも、「旭日旗は戦犯旗で帝国主義のシンボル」とまで言い募り、日本批判のボルテージを上げた。これでは、日韓通貨スワップ協定など、日本が受入れるはずがない。口の悪い麻生財政相から、「頼む先を間違えていないか」と、きつーい皮肉を浴びせかけられるのは必至であろう。

     

    韓国は、なぜここまでエキサイトしたのか。

     

    『中央日報』(10月4日付)は、「韓国与党議員、日本は旭日旗掲揚の方針を変えなければ外交的に孤立」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「共に民主党のイ・ソクヒョン議員は4日、済州道(チェジュド)観艦式に日本が旭日旗を掲揚することを韓国が法で防ぐ場合、外交的な困難を生むだろうという指摘に『われわれが(外交的に)孤立するのではない。日本が旭日旗掲揚の方針を変えなければ外交的に孤立する』と主張した。領海や飛行機、運動競技の応援などに旭日旗の掲揚と使用を禁止した、いわゆる『旭日旗禁止3種セット』法案を発議したイ議員はこの日午前、CBSラジオ『キム・ヒョンジョンのニュースショー』とのインタビューで、『われわれが(旭日旗禁止法案を)立法すれば、中国、フィリピンなど様々な国が呼応できる雰囲気』としてこのように明らかにした」

    このイ・ソクヒョン議員は、大変な勘違いをしているようだ。旭日旗は、日本の国内法で制定されたもの。国際社会でも承認されている。日本がなぜ、こういう国際的に承認されている旭日旗を掲揚して、外交的に孤立するのか。イ議員は、中国やフィリピンも倣うだろうと期待感を表明している。中国は、外交的に対日接近中である。フィリピンは、日本に防衛面での協力を期待している国である。いずれも、韓国の尻馬には乗りそうにないのだ。韓国は、空騒ぎして後から重いツケが届くに違いない。


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    いささか、物騒なタイトルを付けたが他意はない。米中貿易戦争の目的が、中国の不公正な貿易慣行を是正することにある以上、この目的が実現しない限り、関税引上げ策を途中で緩めたりすれば米国に禍根を残すからである。

     

    中国は、米国の出方を見て対応策を立てる国である。原理原則に則って、物事を考え処理するという思考方式は存在しない。極めて便宜的に処理する慣行が成り立っている国だ。この裏に、中国に経済倫理が存在しないという驚くべき事実を知るべきだ。中国社会には来世を信ずる信仰心が存在しない。信仰によって、根本的に自らの行動を律することがない民族である。

     

    日本では、子どものころから他人がいなくても、襖や障子が見ているから悪事をしてはならない。多くの家庭で、親たちはそう言って子どもの躾をしてきたはずだ。落とした財布が交番に届けられる日本の道徳規準から見て、中国のそれはゼロ同然である。信仰心のなさが、中国のような殺伐とした社会を生んだ理由であろう。

     

    こういう中国の歴史から判断すれば、中国の行なっているWTO(世界貿易機関)違反行為では、最初から違法性という認識が希薄であろう。今回の貿易戦争において「教師役」でもある米国は、中国政府にWTO原則とは何か。それを徹底的に教え込む機会である。中途半端な形での妥協は、中国をして「この程度か」と誤解させる危険性がある。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月4日付)は、「米国にとって負けが許されない貿易戦争」と題する寄稿を掲載した。

     

    筆者のジェフ・ムーン氏は、中国の貿易コンサルタントで、米通商代表部(USTR)の中国担当アシスタントを務めたことがある。

     

    (1)「ドナルド・トランプ米大統領は、中国との貿易戦争で、賭け金を極めて高くしており、もはや負けは許されない状況にある。仮にトランプ氏が、中国の重商主義的貿易手法の大幅かつ検証可能な改革を保証する合意を何も達成できずに交渉を終えれば、中国における米企業の事業を、今後長年にわたって危険にさらすことになるだろう」

     

    トランプ氏は、振り上げた拳で必ず中国の行動を糺さないと、悔いを残すことになろう。中国は、「この程度で良いのか」と増長して、何らの改善効果も上がらずに終わるからだ。以後、米国が度重なる是正要求を出しても無視される。この際、徹底的に「中国を再教育」する必要があるのだ。

     

    (2)「単に現状維持に若干手を加えた程度の合意になれば、政治面、経済面での長期的な破滅を招くだろう。中国側は、トランプ後の米国の大統領が、貿易問題でトランプ氏に匹敵するようなレトリックと政治的関与を示す可能性は小さいことを知っている。中国政府は、トランプ氏の脅しが一部でも実現しない場合には、それを米国の貿易面での要求に屈する必要が全くないことの証しと解釈するだろう。中国が、米国による最大限の経済的圧力に耐えうることを示したと言えるからだ。中国の指導者らは、中国市場をこじ開けようとする米国の最大限の努力に、抗いきったと結論付けるだろう。そして彼らは、その差別的な貿易慣行と産業政策を永遠に継続する自由を得たと考えるだろう」

     

    中国政府は、トランプ氏の脅しが一部でも実現しない場合、それを米国の貿易面での要求に屈する必要が全くないことの証しと解釈する。中国は古来、「上に政策あれば、下に対策あり」と言われるごとく、抜け穴探しが最も得意である。必ず、裏をかくことに最も長けた民族だ。貿易問題では、最後まで「四角四面」にやり切ることが成功の必須条件である。

     

    (3)「歴史はわれわれに教訓を与える。ビル・クリントン元大統領は、天安門事件後、中国の人権問題で進展がない限り、同国に貿易面での最恵国待遇を与えないと脅した。多くの論争を経て、クリントン氏は自分が強く出過ぎたことを実感した。クリントン氏は1994年に折れ、人権をめぐる米国の対中圧力の限界点を明示してしまった。これを受け、この問題は二国間関係の片隅にまで追いやられ、現在は、トランプ政権が人権問題を提起したとしても、付け足し程度になっている」

     

    ビル・クリントン元大統領も、対中政策では中途半端な妥協をして失敗した。天安門事件後、中国の人権問題で妥協をしたことが、その後も解決を見ずに放置されていることに現れている。問題解決には、最初の取り組みが大事である。

     

    (4)「米国の産業界はこの前例を十分に認識していないように見える上に、将来のリスクを過小評価している。産業団体および貿易団体はトランプ氏の関税政策に強く反対しており、大統領に関税撤回の圧力をかけることで、短期的な痛みを回避することを望んでいる。だが、貿易戦争が長期的にもたらし得る利害は今や、大きくなっている。トランプ氏がこの紛争を後戻りできないところにまでエスカレートさせたからだ。トランプ氏が中国に売ったけんかを、何の成果もないまま、あるいはわずかな成果で終わらせれば、同氏はあるシグナルを送ることになる。つまり、中国は長年にわたる要求をいつまでも無視できる、中国市場で米企業が公平な競争の場に立てるよう求めるいかなる脅しも同様だ、というシグナルだ。トランプ氏は勝たなくてはならない。さもなくば――」

     

    米国財界は、米中貿易戦争が長引けば、米国の消費者も関税引上げ分を負担させられる。こういう理由で、早期解決を求めている。だが、トランプ氏は中国に売ったけんかを、何の成果もないまま、あるいはわずかな成果で終わらせれば、同氏はあるシグナルを送ることになる。つまり、中国は長年にわたる米国の要求をいつまでも無視できる、と解釈することだ。米国は、中国に対してWTO原則を教える最高で最後の機会を得たのだ。

     


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