勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国は、米国という巨人を相手に無用な喧嘩を売ったものだ。米国は、西部開拓時代の「ヤンキー魂」が健在であることを忘れていた。中国4000年の歴史の方が上だと錯覚していた。その報いを嫌というほど味わされている。

     

    米議会を通過した「国防権限法」では、安全保障上の懸念を理由つまりスパイの疑いで、米政府機関が中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)と華為技術(ファーウェイ)の技術を利用することを禁じる項目が盛り込まれた。これにより、ファーウェイは米国に事務所を構えていても仕事がない、という屈辱に直面している。米国撤退論が取り沙汰沙汰されている。

     

    『大紀元』(8月8日付)は、「ファーウェイ 米市場から撤退を計画か、1200人雇用も業務はない」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「海外メディアによると、国家安全保障上などの理由で、トランプ米政権に活動を規制された中国通信大手、華為技術(ファーウェイ)は米市場からの事業撤退を計画している。これに対して、ファーウェイ側は米国国内で『業務がないため、撤退などと言えない』と示し、実質上の撤退を認めた」

     

    米国の中国への警戒は厳しい。前述の「国防権限法」は、中国を標的にしており、「準戦時体制」とも言える最大の警戒相手国に成り下がった。習近平氏の「大法螺」(米国覇権挑戦論)が招いた結果だ。ファーウェイは、事実上、中国政府の指揮下に組み込まれた諜報機関である。

     

    (2)「韓国メディア「etnews」(6日付)によると、ファーウェイに近い関係者が、同社は34か月前から米市場から撤退を計画していたと話した。『ファーウェイの米市場でのモバイル事業が事実上、すでに中断されている上、米国内にある事務所から退去する計画だ』 米フォーブス誌は今年4月の報道で、ファーウェイの幹部は『米市場は同社のグローバル戦略の一部ではなくなった』と発言したため、今年末までファーウェイが米市場から撤退すると予測した。同報道によると、ファーウェイは、テキサス州プレイノ市に米国事業の本部を構えるほか、シリコンバレーやニュージャージー州の各地で13カ所の事務所を設けている。従業員が1200人いるという」

     

    全米各地に13カ所の事務所を構え、1200人の従業員を雇用するが解雇となろう。米国の労働市場が、逼迫化しているので失業への懸念は少ない。

     

    (3)「米政府に続き、欧米各国が中国当局に近い関係にあるファーウェイに対して警戒を強めた。オーストラリア政府は6月、国家安全保障が脅かされる恐れがあるとして、次世代通信『5G』の導入にあたり、ファーウェイの参入を禁止した。また、ロイター通信によると、イギリス政府は7月下旬、ファーウェイ製品に期限を過ぎたソフトウェアを使用されており、『技術的欠陥』で英国の情報通信ネットワークに安全リスクをもたらしているとの見解を示した」

     

    米国を先頭に、同盟国はファーウェイ製品の締め出しに動いている。スパイ活動の懸念からだ。中国のスパイ活動は高等戦術も使う。ハニー・トラップから始まり技は多彩である。いつどこで、罠が仕掛けられていないか。中国製品を使う場合、余計な神経を使わざるを得ない。そんなリスキーな製品を閉め出せば、安保上、一つ懸念が消えるのだ。中国は、西側諸国から「嫌われの国」へ転落した。

     

     


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    韓国は、企業の設備投資がこの6月で4ヶ月連続の減少である。企業が設備投資を控える理由は、先々の見通しが立たないのが理由だ。政府の仕事は、将来展望が開けるような政策を行なうこと。文政権は、その逆を行なっている。

     

    韓国政府は、大企業虐めに躍起となっている。親の仇を討つような悪意さえ忍ばせている。「積弊一掃」というスローガンには、保守党と大企業を葬れ、という暗黙の合意がある。だが、経済状況が悪化してくるとともに、大企業の設備投資が気になりだした。そこで、サムスンの設備投資計画を聞きたいが、これまでの行きがかり上、それもままならない状態だ。韓国メディアの一部では、「サムスンに物乞いするな」と見当違いな意見を報道している。なんともおかしな光景である。

     

    経済は、政府と企業が協力し合うことが必要だ。法人税引き下げは、企業活動の活性化を促進する目的である。その結果、雇用が増え法人税収が増えれば「万々歳」のはずだ。こういう経済の迂回コースが理解できず、「企業に頭をさげるな」と形式論で騒いでいる。韓国の形式論には驚くほかない。

     

    『中央日報』(8月7日付)は、「サムスン投資物乞い論争の火消しに乗り出した青瓦台」と題する記事を掲載した。

     

    「韓国の金東ヨン(キム・ドンヨン)経済副首相と李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長の面会が、政府による『大企業物乞い』論争へと広がっている。大統領府(青瓦台)が、この火消しに乗り出している。金宜謙(キム・ウィギョム)報道官は6日、一部メディアによる「政府は財閥に投資・雇用を物乞いしているような姿を見せるのは望ましくない」という懸念の報道を否定しもの。だが、金報道官は『金副首相がサムスンを現場訪問した時、(サムスンの)投資計画発表時期ややり方について青瓦台と意見調整があった』と説明した。青瓦台が、金副首相のサムスン半導体工場訪問に合わせて、サムスンが投資計画を発表しようとしていた予定に待ったをかけたことは認めた」


    この記事を韓国の形式論争を浮き彫りにしている。

       政府は、大企業に設備投資や雇用を要請するような物乞いをするな、という一部メディアの批判報道。

       サムスンは、政府側と面会の際、設備投資計画を発表しようとした。政府がそれを止めたので、政府の物乞いには当らないとする政府側の主張。

     

    政府の企業訪問自体が、設備投資の状況を聞き取る目的のはず。これを一部メディア(革新系)が問題視しているのは神経過敏である。政府は、企業と対立すべしという間違えた主張に基づく妄念である。韓国経済はそのような悠長なことを言っていられる状況にはない。文政権を支持する一部メディアは、この現実が分らないほど経済音痴に陥っているのだろう。

     

     

     

     


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    中国伝統の「メンツ論」から現在、米国から受けている屈辱は必ず晴らす。こういう精神論が飛び出している。経済は、合理性を比較するものであり、精神論で勝ち負けが決まるものではない。中国で、こういう精神論が飛び出している裏には、自らの弱味を握られたくないというせっぱ詰まった状況にあるのだろう。

     

    『ロイター』(8月6日付)は、「中国がトランプ貿易戦争に勝利する理由」と題するコラムを掲載した。筆者は、米紙ニューヨーク・タイムズや米CBSテレビの元特派員、David A. Andelman氏だ。

     

    (1)「筆者は先月、アリババの最高戦略責任者で、中国のビジネス・金融界最高の知性の1人とされる曽鳴氏と2度突っ込んだ話をする機会を得た。曽氏が明確に指摘したのは、中国にはもはや、米国を本当に必要としている分野はほとんどないということだった。米国製品は必要ないし、米国のアイデアはさらに必要ない。挫折をしても、中国は自分の力で立ち直れることを証明している」

     

    アリババの最高戦略責任者である曽鳴氏とのインタビューをまとめた記事である。中国は、もはや米国を本当に必要としている分野はない、とまで言いきっている。ならば、なぜ米国の技術を窃取するという、人間として最低最悪な行為を繰り返すのか。曽鳴氏は気づいていないが、米国は市場の深みとそのメカニズムの精緻さにおいて、中国が逆立ちしても敵わないのだ。その謙虚さのなさが、「米国覇権挑戦論」という妄想を生んでいる理由であろう。米国企業の「稼ぐ力」は、前記の市場の深みとメカニズムをバックにしている。

     

    (2)「中国人、特にその指導部は、極めて強い発達した自意識を持っている。外部の圧力に耐える指導部の能力は、毛沢東や共産党革命より前に起源がある。紀元前1000年ごろの中国古代の周王朝では、王の正統性は十分な徳があるかで判断され、天命を受けて支配するとされた。そのような宿命観や自尊心を持つ人々が、ドナルド・トランプのような世俗的な指導者を巨大な障壁とみなす可能性は低い」

     

    古来、中国では王の正統性について、十分な徳があるか否かが判断の分かれ道であった。その徳を失えばその座を去る。「易姓革命」とは、「革命」という文字が使われているが、王朝の交代に過ぎない。西欧流の「革命」は、過去との断絶を意味する。中国に「易姓革命」があっても、真の過去との断絶を意味する「革命政権」が登場できない理由は、「市民」という個が存在しない結果だ。中国共産党政権は、易姓革命によって生まれた。市民革命とは異質無縁である。

                                                                                                                

    トランプ氏は、毀誉褒貶が激しいものの選挙で生まれた大統領である。習近平氏は9000万人の党員が強制的に1票投じらされた結果の政権である。この違いを明確に理解すべきだろう。

     

    (3)「中国では、メンツを失うことが最大の失敗と考えられている。最善の、最も長続きする貿易協定は、少なくともウィン・ウィンでなければならないが、トランプ氏はいまや自らのアメリカ・ファーストの主張に深くはまり込み、中国指導部がメンツを失わない形で調整できる余地はあまり残されていない。トランプ氏は、長い消耗戦に備えなければならない。もし誰もあきらめるよう彼を説得できない場合は、すべての米国人が、トランプ氏の通商『十字軍』の代償を払うことになるだろう」

     

    中国のメンツが正しく機能するならば、米国の技術窃取やWTOが禁じている補助金乱発政策を即時に止めること。これが、メンツを保つ意味のはずだ。自分はコソコソ悪事を働きながら、それを咎められると「メンツ」を失う。中国の「メンツ」とは、それほど身勝手なものなのか。ウィン・ウィンの関係とは、世界的な貿易慣行に従ったビジネスを行なうことだ。ルール違反は御法度である。


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    韓国大統領は、世にも不思議な「秘書官」を置く。最低賃金の大幅引き上げで経営が苦境に立たされている自営業者対策だ。内外から不評と批判を浴びている最低賃金の大幅引上げは、廃止することが最大の対策である。だが、メンツの絡む文政権は、大幅引上げを縮小することなく実行する。その代わりに、専任自営業秘書官を置くもの。

     

    文大統領は、国民に対して「言い訳」の材料にこの自営業秘書官を置くのだろうが、一体、どのような仕事をさせるのだろうか。自営業の経営圧迫要因を軽減せずに、自営業救済は不可能である。

     

    韓国は形式社会である。形式さえ整っていればそれで通るという社会だ。この弊害はあらゆる所に現れている。慰安婦問題でも、日本の首相が膝を屈して謝罪しない限り許さないと息巻いている。実質的には、日韓基本条約で全て解決済みの話だが、「慰安婦」という文言がなかったから「無効」と言い張っている。こういう形式重視国家は、いつまで保つのか。他国ながら気になるのだ。

     

    『朝鮮日報』(8月6日付)は、「大統領秘書官人事発表、新設の自営業秘書官ら6人」と題する記事を掲載した。

     

    自営業秘書官に、韓国中小商人自営業者総連合会のイン・テヨン会長を抜てき。自営業秘書官の新設については、『中小商工業者の競争力向上など対自営業政策を総括・調整する機能を強化する』と説明していた」

     

    自営業秘書官は、韓国中小商人自営業者総連合会のイン・テヨン会長が選任されるという。民間人だが、連合会の会長一人が自営業秘書官になっても効果のほどは知れたもの。むしろ、この秘書官がスケープゴートにされて、責任の全てを丸投げされるに決まっている。この辺りは見事なほど、責任回避政権である。自営業問題の本質は、大幅な最賃の引上げ幅の圧縮しかない。それをやらずにどうやって自営業を振興させるのか。方法などあるはずがない。これで、文政権の支持率はさらに下落するであろう。


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    中国は、聞きしに勝る人権弾圧を行なっている。新疆ウイグル族を同化するために、300万人以上に再教育という名目で拘束しているという。口では立派なことを言って煙に巻いているが、「漢族」絶対優位の下で、少数民族の再編成を行なうのだろう。だが、「民族独立」という世界的な流れに逆らっいる、この世紀の暴挙を止める方法はないだろうか。民族の恨みを軽視してはいけない。中国の経済力が衰えたときに、必ず反撃される。それが有史以来の流れだ。

     

    『大紀元』(8月7日日付)は、「新疆、大量拘束で『空っぽ』になる村、300万人以上に『再教育』か」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国共産党政府は、新疆ウイグル自治区で民族同化政策をますます強めている。海外にある人権監視組織は3日、同地域では300万人が施設に強制収容されたり、短期の思想転向のための講習を受けているとの調査結果を報告した。共産党当局は2017年春ごろから、『強烈な宗教的見解』と『政治的に正しくない思想』を抱いているとして、新疆地区の大勢のウイグル族住民を『再教育施設』に拘禁している。海外の複数の人権団体やウイグル関連組織は、当局支配のもとでウイグル人が監視を受けたり、行動を規制されていると報告している。2団体は、新疆区の南部地域だけでも66万人が収容施設に拘束されており、130万人は強制的に思想の変更を求められる講習会に参加したと推計している」

     

    ここで取り上げられている2団体とは、人権擁護団体・中国人権保護(CHRD)と提携NGOイコール・ライツ・イニシアチブである。この調査は、2団体が2017年7月から2018年6月まで、新疆自治区カシュガル在住の数十人の住民にインタビューした。

     

    共産主義という政治体制は、どうしてこれほど野蛮なことをやらなければ政権を維持できないのか。北朝鮮も同じである。もともと、国民から支持されていない統治体制を強制するゆえに起こる暴力現象だ。こういう共産主義に親近感を持つ人間の精神構造は、極めて冷淡・自己本位・権威主義・暴力主義がない混ざった特異のものであろう。同じ人間の顔をして、ここまで残酷なことができるのはナチスと同じだ。GDP世界2位の中国で、このような非人間的なことが行なわれていることに戦慄を覚える。

     

    (2)「インタビュー調査を受けたある匿名の住民は、青年から壮年まで大量の人々が拘束されたことで、多くの村や町は人がいなくなり『空っぽになった』と話した。この住民は、『街は一部の老人と(共産党に)忠誠心のある人間だけになった』と述べた。また2団体のインタビュー調査によると、各村で平均13%の住民が収容施設に拘束されている。村の平均人口は1500~3000人。さらに、少なくとも30%が、半日あるいは終日の再教育講習を受けたことがある。新疆の再教育施設について、共産党中央政府はこの施設について公的に発表しておらず、収容者の数、場所、収容施設の数など、一切の情報は公表されていない。2団体は、中国政府による『三邪(反テロ、反過激思想、反分離主義)』政策が最も厳しく実行されている地域が新疆地区だとみている」

     

    村の人口の平均は1500~3000人。そのうち平均13%は、収容施設で拘束されている。少なくとも30%は、半日から1日の再教育を受けたという。10年程前、ウイグルを旅行した知人の話では、中国軍はトラックに武装した兵士を乗せて、町中をパトロールしていた。その異常な光景に息をのむ思いだったという。兵士に威嚇させながら統治する。これが共産主義の素顔だろう。

     

    韓国は、日韓併合時代を今でも避難している。だが、中国の少数民族弾圧に比べれば、「天国」であったはずだ。日韓は同胞という意識であり、中国のように収容所で拘束したことはない。現代中国の行なっている少数民族弾圧は、許されない行為である。

     

    米ペンス副大統領は7月、中国政府がテロ対策を名目に、数十万人から数百万人ものウイグル人を不当に収容していると強い懸念を表明した。また米連邦議会では、宗教と信仰の自由を侵害する重大問題として、新疆地区の再教育施設が取り上げられており、この弾圧政策に関わる中国政府高官の米国の銀行口座の凍結が検討されているという。中国のこの悪行を糾弾しなければならない。

     


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