勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    テイカカズラ
       

    中国は現在、コロナ政策の失敗で大混乱の極にある。政策の失敗は明らかであり、これが防疫政策に止まらず経済政策全般に及ぶという見方が浮上している。その結果、「中国の失敗を望むな」という主張まで出てきた。世界のGDP2位の中国経済の破綻は、世界経済を混乱に巻き込み、西側諸国もその巻き添えを食い、輸出が減るという構図からだ。

     

    ただ、安全保障という面から言えば、それと違った視点が浮かび上がる。中国の経済的後退は、軍事力拡張へ歯止めを掛けるからだ。そこで、中国の台頭をいかに管理するかという問題意識の登場になる。これは、かつての「中国民主化期待論」と同一線上に戻ることに気づくであろう。コミュニズムを信奉する国家の「台頭管理」は、すでに一度行なって失敗したことである。デモクラシーとコミュニズムの親和性は、不可能というのがこれまでの結論になっている。中国経済は、これからどうなるか、だ。

     

    『日本経済新聞』(1月11日付)は、「中国、深刻な景気減速」と題する記事を掲載した。元モルガン・スタンレー・アジア会長のスティーブン・ローチ氏へのインタビューである。ローチ氏は現在、米エール大学シニアフェローである。

     

    習近平中国共産党総書記(国家主席)の強権的な指導体制の確立が、従来の楽観から転じるきっかけだったという。中国はすでに深刻な景気減速に見舞われているとしたうえで「中長期的にも高成長には戻らない」との見方を示した。

     

    (1)「中国の国内総生産(GDP)は縮小していないものの、ほぼ不況入りに相当する状態といえる。今年の成長率は3%未満になるとみる。12年以降は8%前後で推移してきたことを鑑みれば驚くべき数字だ。中国は08年の金融危機時に世界経済の柱となり、その後も世界生産高の35%以上を占めていた。今は中国を頼りにできなくなったため、世界経済は危機的な状況に陥っている。中国経済の中長期的な成長も望めない。一人っ子政策は中国の人口動態にゆがみをもたらした。生産年齢人口の減少は想定以上に早く進んでいる。習近平指導部が打ち出す『共同富裕(ともに豊かになる)』政策は生産性を悪化させる」

     

    習氏が、国家主席に就任した2012年以降の経済成長は不動産投資やインフラ投資に支えられたもので、生産性の伸び率は急速に鈍化している。「国進民退」という国有企業優先の共産党政権固有の政策に回帰した結果だ。これは、鄧小平の「社会主義的市場経済」を放棄に繋がっている。

     

    (2)「過去25年間に中国を分析してきた米国のエコノミストのなかで、最も中国経済を楽観視していたのは私だった。習氏が最高指導者としての地位を確立してからは楽観視できなくなった。彼は17年の第19回党大会で、経済や政治システム、中国社会を支配するという見解を打ち出した。中国経済は市場原理に基づく自由化の力よりも、イデオロギー的な決定で動くようになってしまった」

     

    習氏が、共産主義本道を求めて政策を大きく転換させたことで、中国経済の生産性が鈍化している。経済成長よりもイデオロギー追求へと舵を切ったことは明らかだ。ただ、3年間のゼロコロナ政策で、経済政策的には完全は空洞が生まれている。これに気づき、ゼロコロナを一挙に廃止して「フルコロナ」に戻った。これは、新たな大混乱を引き起しているのだ。

     

    (3)「貿易戦争として始まった米中の対立は、技術を巡る戦争に姿を変え、新たな冷戦に突入している。両国が相手に対する誤ったナラティブ(物語)をあおりたてた結果、現在の状況に陥ってしまった。米国は貿易赤字を中国のせいにしているが、実際には米国の貯蓄率の低さに原因がある。中国は自国の台頭が戦略的に封じ込められ、経済の構造改革が妨げられていると米国を非難しているが、実際には中国側により多くの問題がある。この紛争に明確な勝者は存在しない。米中双方が打撃を受けている。私は著書の中で共通の問題を解決する方法として、米中の(経済などの)専門家を集めた事務局の設立を提案した。両国が自らの脆弱さと向き合わない限り、解決は見込めない」

     

    トランプ米大統領(当時)が始めた米中貿易戦争は、バイデン政権になって米中デカップリングへと拡大し、安全保障問題が前面に出て来た。中国は建国以来、内部的には秘かに「米国打倒」を共通認識にし、国力がつくまで目立たない動きをすることを目指していたのである。米国が、この動きを2015年ごろに初めて知って驚愕。トランプ氏が、米中貿易戦争を始めた遠因はここにある。

     

    (4)「中国の証券当局は、米上場企業会計監視委員会(PCAOB)による中国本土と香港の会計監査法人の検査を受け入れた。米国に上場する中国企業の透明性を高めるもので、米国の投資家が長年求めてきた。中国に資金を振り向けたいと考えている投資家は増えるはずだ。しかし、中国政府は成長力の高いインターネット企業に対して規制を強めている。知的財産の保護、産業政策や補助金を巡っても多くの問題を抱えている。中国経済の成長率が8%前後の高軌道に戻ることはありえない。中長期的な成長リスクを懸念すべきだ」

     

    米機関投資家は、今回のコロナ政策の混乱に大きな衝撃を受けている。中国の政策は事前の予測が不可能という根本的な弱点を露呈したからだ。投資には、「予測不可能」が最大の禁句である。未来を予測できれば、それによってリスク回避の手立ても可能になり、初めて投資対象になりうる。中国では、この最も重要な前提が消えたのだ。

     

     

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    ロシアのウクライナ侵攻によって、中国による台湾侵攻の可能性が高まっている。現実に台湾侵攻が起こった際、米軍は守り抜けるのか。有力な米シンクタンクのCSIS(戦略国際問題研究所)は、24回もの机上演習を行なったが、いずれも米軍の勝利となった。ただ、米軍も大きな損害を被るという結果になったという。

     

    米通信社『ブルームバーグ』(1月10日付)は、「中国が台湾侵攻でも『早期に失敗』 米軍が反撃でーシンクタンク分析」と題する記事を掲載した。

     

    米ワシントンを拠点とするシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)は9日、中国が台湾に軍事侵攻した場合、その企ては「早期に失敗」する一方、台湾と米海軍にも多大な代償を強いることになるとの机上演習の結論を公表した。

     

    (1)「CSISは「最も可能性の高い」シナリオとして、「中国による大規模な砲撃」にもかかわらず、台湾の地上部隊は敵の上陸拠点に展開する一方、米軍の潜水艦や爆撃機、戦闘機は日本の自衛隊に頻繁に補強されて、中国軍の水陸両用艦隊を迅速に無力化し、侵攻する中国軍は補給の増強や上陸に苦戦すると結論付けた。机上演習は計24回に及び、米軍の退役将軍・海軍士官、元国防総省当局者らが参加した」

     

    中国軍は、台湾海峡(最短で140キロ)を渡らなければならない大きなハンディキャップを抱えている。これが、最大の天然の要塞だ。米軍が直接、中国軍と戦う場合、自衛隊は燃料などを頻繁に米軍へ補給する補助態勢を取る。米軍は、こうした自衛隊支援下で隙間のない攻撃によって、中国軍を撃破する体制を組むのであろう。

     

    机上演習24回の結果、米軍が勝利を収めるというのは「完勝」と言えよう。ただ、米軍自体も大きな犠牲を払うとしている。それゆえ、戦争抑止こそが最大の勝利になる。

     

    (2)「CSISはその中で、日本の基地や米軍の水上艦を中国が攻撃したとしても「結論を変えることはできない」としつつも、「台湾が反撃し、降伏しないというのが大きな前提だ」と説明。「米軍の参戦前に台湾が降伏すれば、後の祭りだ」とし、「この防衛には多大な代償が伴う」と指摘した。さらにリポートでは、米国と日本が「何十もの艦船や何百もの航空機、何千もの兵士を失う」とともに、「そうした損失を被れば米国の世界的立場はにわたり打撃を受けるだろう」としている」

     

    肝心要の台湾が降伏してしまえば、米軍の戦いは水泡に帰す。台湾は現在、徴兵期間を1年に延長しており、「自由と民主主義を守る」姿勢を固めている。問題は、親中派の国民党が政権を取った場合、どうなるかだ。台湾市民は、「第二の香港」化を忌避しているので、「台湾人」としての誇りを守るために戦う士気を高めている。自主的に国防訓練へ参加しているほどだ。

     

    (3)「CSISが主な分析結果として挙げたのは、米国として「日本との外交・軍事上の結び付きを深化」させる必要があるとの点だ。具体的には、オーストラリアと韓国も中国との広範囲の競争では重要な存在であり、台湾防衛でも一定の役割を果たすかもしれないが、「日本が要だ。在日米軍基地を使わなければ、米軍の戦闘・攻撃機が効果的に戦闘に参加するのは不可能だ」と論じた」

     

    米国は、日本の協力が不可欠としている。日米の緊密化が、「自由で開かれたインド太平洋」防衛の要である。在日米軍は、具体的にどのような台湾防衛戦術を練っているのかを見ておきたい。

     

    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(1月9日付)は、「在日米海兵隊トップ、対中国で日本と『舞台作り』」と題する記事を掲載した。

     

    在日米海兵隊のトップで、第3海兵遠征軍司令官のジェームズ・ビアマン中将は、台湾などを巡って中国と武力衝突が起きる可能性に対し、アジアの同盟国と準備するため、自衛隊との指揮系統の統合や合同演習の拡大を速やかに進めていると明らかにした。ビアマン氏は『フィナンシャル・タイムズ』(FT)のインタビューに応じ、戦時に防衛すべき領土での軍事的な対応が「ここ1年間だけで飛躍的に増えた」と述べた。

     

    (4)「ビアマン氏によると、米国とアジアの同盟国は中国の台湾侵攻シナリオなどを視野に入れ、西側諸国がウクライナによるロシアへの抵抗を可能にした土台づくりをまねようとしている。「ウクライナであれだけの成功を得られたのはなぜだろうか。主因の一つは、2014年から15年にかけてのロシアによる軍事侵攻後、われわれが将来の紛争に向けて真剣に準備したことにある。ウクライナ軍に訓練を施し、補給品を事前に配備し、後方支援や作戦支援を実施する拠点を特定した」と、ビアマン氏は語った。「われわれはこれを『舞台作り』と呼び、日本やフィリピンなどでも舞台作りをやっている」と強調」

     

    ロシアのウクライナ侵攻前に、西側諸国は協力体制をつくっていたので、侵攻後に迅速な対応ができた。この経験を生かして、中国の台湾侵攻に備えフィリピンと日本で準備の「舞台づくり」を進めている。フィリピンは、米国へ強い協力姿勢をとり、フィリピンの米軍基地の利用を無条件に認める方針だ。フィリピンは、米軍の武器や補給品などを事前に配置しておく拠点を、現行の5カ所からさらに5カ所増やす計画である。

     

     

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    中国は最近、一帯一路が「債務のワナ」と不評を買っていることから、大々的に宣伝することを控えている。だが、諦めた訳ではない。規模を縮小しても、これと目を付けた軍事戦略上の価値を見捨てることはなく温存する姿勢である。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月10日付)は、「中国の一帯一路構想、縮小しても撤退せず」と題する記事を掲載した。

     

    中国が国外で進める巨大インフラ整備構想「一帯一路」は2010年代半ばから本格化したが、最近はやや絞り気味になっている。だが、すべてを帳消しにするのは早計だ。しかし少なくとも外国直接投資でみた場合、ラテンアメリカではいまだ拡大を続けている。また、パキスタンのような問題のある地域でさえも、これまでの投資額を考えれば、中国政府が大規模プロジェクトを放棄することはないだろう。

     

    (1)「パキスタンでは、中国が一帯一路の港湾整備計画を推進する港町グワダルで一連の政治的な頭痛の種が発生した。ここ数カ月は、パキスタン在住の中国人が襲撃される事態が続いている。パキスタンは中国同様にインドと対立してきた歴史があるため、中国にとっては政治的に取り組みやすい国のはずだった。だが、いまでは逆に一帯一路の広範な問題の象徴だ」

     

    パキスタンでは、反中国民族グループによるテロ事件が頻発している。中国が、パキスタンを乗っ取ろうとしていると反発しているためだ。

     

    (2)「多くの低所得国は一帯一路の巨額プロジェクトに実行するだけの価値があるか疑問を持つようになっており、プロジェクトの結果抱える債務や地元で頻発する反対を警戒している。世界的な金利高や新興国通貨の下落、コロナ禍による経済損失で、一帯一路に対する懐疑論は高まっている」

     

    中国の勧めに乗って始めた一帯一路プロジェクトで、発展途上国は大きな債務を抱えている。スリランカは、不要な空港や港湾を建設させられ、財政破綻に陥っている。パキスタンは、インドとの対立で中国を頼るという弱みがある。これまでの一帯一路は、深い傷を抱えている。

     

    (3)「M&A(合併・買収)情報サービスのマージャーマーケットと米エンタープライズ研究所のデータを分析したフランスの投資銀行ナティクシスによれば、一帯一路地域の国々に対する中国の融資と直接投資が近年急減したことは、驚くことではない。急減は部分的には、中国を含むほとんどの国がコロナ下でそうしたように、中国の金融部門が世界から撤退したことを反映している。中国の対外外国直接投資は年平均で2020~21年に、2015~19年平均と比較して72%落ち込んだ。中国が一帯一路諸国に投じた外国直接投資の下落は62%と、やや減少幅が少ない。

     

    一帯一路は、不評を買っているだけに融資も縮小している。発展途上国が、警戒感を強めているほか、中国の資金減(経常収支黒字の問題)も大きな理由だ。

     

    (4)「投資の落ち込みは地域により異なる。ナティクシスによると、米国の裏庭とも呼ばれるラテンアメリカでは、中国の直接投資は年平均で2020~21年の期間にその直前の5年間と比べて4倍に増えている。その多くは、ラテンアメリカ諸国の国有資産である電力会社などをMAで取得したものだ。ラテンアメリカの一部の政府は、コロナで打撃を受けた財政に余裕を持たせるため、直接の資産売却を決定した可能性がある。ナティクシスは、一帯一路諸国の中でもラテンアメリカの経済が最もコロナの影響を受けたとしている」

     

    中国は、一帯一路のルートとかけ離れた南米で、国有資産である電力会社などをMAで取得している。これは、米国の裏庭へくさびを打ち込んで、軍事的に脅かそうという狙いが込められている。こういう振る舞いが、米国の警戒心を生むのであろう。

     

    (5)「ラテンアメリカの豊富な農作物と鉱物資源は、明確に中国政府の関心の的だ。中国政府は民主主義の先進諸国との関係が悪化する中、以前にも増して食料供給網の安全保障に固執しているように見える」

     

    中国は、台湾侵攻で経済制裁を受ければ食糧危機を招く。そこで、南米へも手を伸していると見られる。これも、戦略的な意図に基づくものだ。

     

    (6)「ワシントンのシンクタンク、ウィルソンセンターの南アジア研究所でディレクターを務めるマイケル・クゲルマン氏は、パキスタンでもその他の場所でも、中国は一帯一路を諦めようとはしていないと考えている。クゲルマン氏はこうしたインフラと、他地域との連結度を高めるプロジェクトが中国の経済的利益にとって必要不可欠なものであり続け、またこの一部を軍事資産に変換する長期計画が中国政府にあるとすれば、戦略的利益にとっても重要なものであり続けると述べた」

     

    中国の一帯一路は、軍事的戦略から今後も進めると見られる。その意味で、パキスタンのように襲撃事件を招いても、一度手にした要衝の地は離さないであろう。

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    中国は、億単位で増えているコロナ感染者を治療するために米ファイザー社製の口径治療薬「パクスロビド」が不可欠になっている。だが、価格が高すぎるとして「保険適用」を断念する事態になっている。ファイザー社によれば、真相は全く異なっており、中国が超低価格を要求していたことがわかった。『ロイター』(1月10日付)が報じた。

     

    ファイザー社の説明では、中国が「エルサルバドルへ販売しているよりも低い価格」を要求したという。ちなみに、エルサルバドルの一人当たりの名目GDPは、4408ドル(2021年)に過ぎない。中国は、1万2562ドル(2021年)とエルサルバドルのざっと3倍である。その中国が、自国より3分の1以下のエルサルバドルよりも低い価格を要求したのだ。中国の言分は、大量に購入するのだから「まけろ」というところであったのだろう。この商売感覚がファイザー社から断られた理由だ。

     

    韓国紙『東亜日報』(1月10日付)は、「新型コロナ治療薬品薄の中国、『ファイザーは高過ぎる』と医薬保険の適用を放棄」と題する記事を掲載した。

     

    中国が、米国製薬会社ファイザーの新型コロナの経口治療薬「パクスロビド」を、国家保険適用医薬品に含ませようとしたが取り消した。ファイザーが過度に高い価格を提示したという理由からだ。高危険群患者の入院率を下げられる効果が立証されたパクスロビドは、これまで自国産ワクチンの優秀性を盲目的に主張し、欧米のワクチンを敬遠してきた中国が公式承認した数少ない欧米の治療薬だ。

     

    (1)「これをめぐり、「結局、お金のために国民の健康を放棄するのではないか」「この3年間、当局が使った遺伝子増幅(PCR)検査費用のほうがより大きいだろう」という不満の声が高まっている。中国各地では、一日の新規感染者と死者が急増している。9日、米ブルームバーグと台湾の自由時報などによると、中国は「パクスロビド」を国家保険適用医薬品リストに含めるために、ファイザーと5日から4日間交渉を行ったが失敗した。その代わり、自国産抗ウイルス治療薬「阿玆夫」と「淸肺排毒」などを保険適用対象に含ませた。このリストに含まれれば、通常、薬の価格が50%以上安くなり消費者のアクセス性が高くなる」

     

    中国は、ファイザー社に対して価格を値切りすぎて失敗したのだ。ファイザー社が、エルサルバドルへ販売した価格より安い価格を要求して断られたもの。中国経済は、それほど窮迫しているのかと疑われるほどだ。

     

    (2)「中国の一部の地方政府は、3月31日まで一時的にパクスロビドに保険を適用している。しかし、輸入量が少なすぎて購入が難しく、闇で取引される価格が20倍以上高騰している。新型コロナの発生後、ずっと欧米の医薬品を拒否していた中国は、昨年3月になってパクスロビドを輸入した。昨年12月に当局がゼロコロナ政策を廃止後、新規感染者が急増し、パクスロビドをめぐる需要も急増し、品切れの大乱が起きている」

     

    パクスロビドは、コロナの特効薬である。闇価格が、定価の20倍以上になっている理由であろう。となれば、中国政府が「商売気」を出さずに「正当な価格」で契約を結べば、人命を救えるし混乱を防げるのだ。

     

    (3)「現在、中国内でのパクスロビドの価格は、1箱(30粒)当たり2300元(約42万4000ウォン)。しかし、インターネットや闇市などでは、5万人民元(約923万ウォン)を払わなければ買えない。効果と安全性が検証されていないインド産パクスロビドのジェネリック(複製薬)さえ手に入らず、気をもんでいる人が少なくない。インフルエンザ薬が新型コロナの治療薬に化けるなど、偽薬も無分別に流通している。中国の医療システムの不平等と後進性を、パクスロビドが示しているという指摘が出ている」

    中国政府は感情的にならず、合理的な価格で折り合いをつけるべきであった。

     

    (4)「AFP通信などは、人口9940万人の河南省保健当局が同日の記者会見で、6日基準の累積感染率は89%だと明らかにしたと伝えた。北京と上海の感染比率も、それぞれ80%と70%を超えた可能性がすでに提起されている状態だ。香港『サウスチャイナモーニングポスト』(SCMP)もまた、最近中国全体人口の60%である約8億人がすでに感染したという試算を報じた」

     

    すでに、中国人の6割である8億人が感染したという。それだけに、パクスロビドの必要性は格別である。

     

    (5)「これに伴い、20億人が移動すると予想される22日「春節(中国の旧正月)前後の防疫対処が、中国の新型コロナの状況悪化を分けるものと見られる。すでに住民の不満が尋常ではないだけに、当局は春節前にはファイザーといかなる形であれ交渉を終えるだろうという観測も出ている。中国は、パクスロビドの直接購入のほかにも、パクスロビドのジェネリック(複製薬)を製造できる権利を得るための別途交渉もファイザーと進めている」

    ファイザー社の説明では、すでに中国での製造ライセンスを供与しており、今年前半には製造開始にこぎつけられる。『ロイター』(1月10日付)が報じた。

     

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    ウクライナ軍とロシア軍の戦いは現在、膠着状態にあり大規模戦が姿を消している。これは、ロシア軍がウクライナ軍の「ハイマース」を警戒して、兵站線を最前線より80キロ後方へずらしているため、攻撃態勢にないと見られている。ウクライナ軍は、80キロを超える長距離砲供与を西側諸国と協議中であり、いずれ結果が出て追撃が始まる模様だ。

     

    韓国紙『ハンギョレ新聞』が今月2日(現地時間)、ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問とインタビューした。ポドリャク氏は、ゼレンスキー大統領の最側近として、昨年2月末の戦争開始以来国際メディアが最も多く引用する人物である。

     

    『ハンギョレ新聞』(1月10日付)は、「ウクライナの大統領最側近『戦争は遅くとも夏頃には終わる』」と題する記事を掲載した。

     

    国際的に孤立したロシアよりも、「米国・英国・欧州連合(EU)・日本などの強力なパートナー」がいるウクライナの方が「より多くの資源」を活用することができ、現在有利な状況にあるとし、「現在の戦況と戦争に関する数値・データを考慮すると、戦争は2023年上半期または夏頃に終わる可能性がある」と予測した。

     

    (1)「ロシアが約2~3回大規模な攻撃をすると予想している。それ以上攻撃を敢行する可能性は低い。ロシアはイラン製ドローンを使用してはいるが、序盤とは異なり、それほど効果的ではない。ウクライナ軍の防空網はドローン攻撃に適応し、どのように対応するか知っている。ロシア軍は民間施設ばかりを攻撃している。彼らの主張とは違って、軍事目標に当てることができない。弾道ミサイルが不足しているからだ。特定の目標に当てるためには70個以上のロケットが必要であり、(このように大規模に発射してはじめて)効果が出る。ロシア軍は現在の水準の攻撃を続けたり、目標を正確に打撃したりできるロケットの供給を十分受けていない」

     

    ロシア軍にはロケット備蓄が減っている。後2~3回の大規模攻撃余力しかないと見ているようだ。これを撃ち終えれば、どうなるか。ウクライナ戦争の局面が大きく変わる可能性が出てくる。

     

    (2)「現在、我々にとっては『戦線安定化』が重要だ。さらなる反撃のためにより多くの砲弾・ロケットを蓄積し、兵站基地、物流供給網を実際の最前線にもっと近づけなければならない。ロシアが兵器貯蔵所と供給線を80キロ以上後方に移したため、(長距離ミサイルの確保は)非常に重要だ。現在、我々は長距離ミサイルの確保について協力国と協議している」

     

    ウクライナ軍は、「戦線安定化」の時期としている。今冬は予想外の暖冬である。キーウでは1月早々、桜が開花するほどである。これでは大地が凍らず反撃が難しい。

     

    (3)「我々はロシアが広めた『神話』とは違うロシアを見ている。ロシア軍の戦術訓練、戦略的力量は非常に弱い。また、ロシアの士気は大きく低下した。それとは反対にウクライナ社会では『我々の領土をすべて解放しなければならない』という合意がなされた状態だ。すべての数字とデータを見て、現在『つまはじき国家』になっているロシア軍の能力を考えてみよう。彼らとは異なり、ウクライナには米国・英国・欧州連合(EU)・日本など多くの強力なパートナーがいる。戦争が(あと)6~8カ月ほど長期化するとみると、ウクライナが利用可能な資源の方がはるかに多い」

     

    ロシア一国に対して、西側諸国が団結して武器供与を続けている。そのロシアは、経済制裁によって武器生産が不可能な状態へ追い込まれている。客観的に見て、ロシアが極めて不利な状況にあることは間違いないであろう。

     

    (4)「この戦争は民間人に対する戦争であり、大量虐殺だ。ロシアが我々の地で犯したすべての犯罪により、この戦争を終わらせる形は完全に変わった。もしウクライナ領土全体を解放しなかったら、我々は常にこの紛争の次の段階に直面することになるだろう。避難した市民たちが帰ってくることは不可能になる。投資を誘致できない。誰も破壊された土地に投資しないだろう。ロシアがこの戦争で敗北しなければ、彼らが犯した戦争犯罪、数千人の市民を殺害し、数千の民間インフラを破壊したことに対する処罰を受けず、賠償金も支払わないだろう

     

    朝鮮戦争のような「休戦」状態で、ウクライナ戦争を終わらせれば、ウクライナが受けた損害は何ら保障もされずに終り、さらなる火種を残す。下線部のような問題を引き起こさないためにも、決着(勝敗)をつけねばならないとしている。

     

    (5)「この戦争を終わらせるには、3つの条件がある。1)クリミア半島を含むウクライナ領土からロシア軍が完全に撤退し、2)ウクライナ領土に対するミサイルおよびドローン攻撃を中止し、3)特別調査委員会の稼動に向けての戦犯引き渡し問題について協議を始めることだ。前の2つの条件が、交渉というものを始めさせる『前提条件』だ」

     

    ウクライナ側は、戦争終結条件として3つ上げている。先ず、ウクライナ領土からのロシア軍の完全撤退の実現である。これが戦争終結交渉の前提としている。これは、ロシア国内でプーチン氏への非難を高める要因になる。ロシアはどう反応するのか。戦争よりも難しい事態になろう。

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