韓国の金融市場は、急速な政策金利引上げによる余波で、企業の資金調達難と家計の過剰負債によって破綻が起こるとの予測が出て来た。韓国における内外の金融・経済専門家は、10人に6人が1年以内に金融システム危機が迫る可能性を診断した。専門家らが挙げた主要リスク要因は、企業と家計での金融破綻である。
韓国銀行は11月24日、政策金利を0.25%引上げ年3.25%とした。金融不安が増大している中での利上げである。韓国経済は、最も厳しい局面を迎えている。都市銀行の変動型住宅担保貸付金利は年5.70~7.83%で上限が8%台に迫っている。
『中央日報』(11月28日付)は、「専門家の10人に6人が『1年以内に韓国の金融システムに危機の可能性』」と題する記事を掲載した。
(1)「韓国銀行が、27日に発表したシステムリスクサーベイの結果によると、金融システム危機を招く衝撃が1年以内の短期に発生する可能性に対する質問に専門家の58.3%が「高い」と答えた。その内訳は、「非常に高い」が12.5%、「高い」が45.8%だった。内外の金融機関役員と主要経済専門家72人を調査した結果だ」
韓国の金融専門家72人のアンケート調査では、58.2%が1年以内の金融危機発生を予測した。これは、異常なことである。利上げ速度の速いことと過剰債務の存在が理由である。
(2)「2021年下半期の調査時は、短期衝撃発生の可能性が「高い」と答えた割合は12.5%にすぎなかったが、2022年上半期に26.9%、2022年下半期には58.3%となった。6カ月で「危機」を警告する回答者の割合が31.4ポイント増えた」
韓国銀行では常時、この種のアンケート調査を行なっている。今年に入ってから、危機感が急激に高まっている。
(3)「金融システム危機を招く最も高いリスク要因としては、「企業の資金調達環境悪化にともなう不良リスク増加」(27.8%)を挙げた。「家計の高い負債水準と償還負担増加」(16.7%)と「金融機関の貸付不健全化と偶発債務現実化」(13.9%)、「国内市場金利の急激な上昇」(12.5%)などが続いた。特に「企業の資金調達環境悪化にともなう不良リスク増加」「金融機関の貸付不健全化と偶発債務現実化の懸念」「不動産市場沈滞」は今回の調査で新たに浮上したリスク要因だ」
政策金利「0.5%時代」が、2020年5月から21年7月までの14ヶ月間続いた。この間に、企業や家計の借入れ行動が大胆になった。現在の政策金利は、3.25%である。実に6倍強の利上げになる。これでは、返済がきつくなるのは当然としても、借りた物は返済するという当たり前の認識が、当初からしっかりしていれば、安易な借入れに走らなかったであろう。
(4)「専門家らは今後金融脆弱性が現れる可能性が大きい部門として、貯蓄銀行と証券会社、キャピタル会社など主に非銀行業を挙げた。貯蓄銀行の場合、高い脆弱借主比率にともなう資産不健全化と不動産プロジェクトファイナンス(PF)貸付不健全化を懸念する。証券会社は高い不動産PFの割合による偶発債務の現実化など流動性リスクに弱いと評価された」
危ない金融機関として、貯蓄銀行、証券会社、キャピタル会社など主に非銀行業が挙げられている。普通銀行は万一の場合、中央銀行との密接な関係によって資金調達が可能である。だが、非銀行業にはそういう便宜性は与えられていないので、要注意である。
(5)「実際にコマーシャルペーパー(CP)を中心に短期資金市場不安が続いている。CP金利は45日にわたり最高値を続け年5.50%まで沸き上がった。1月3日に1.55%だったCP金利は約11カ月間で3.95%上がった。短期資金市場不安が続くのはレゴランド問題後に投資心理が萎縮した中でCP市場の主要参加者である証券会社の流動性が不足しているためだ。CPの主需要先である証券会社信託とラップアカウントから資金が大規模に離脱した影響だ」
短気資金市場の異変は、遊園地のレゴランドが地方自治体の債務保証取消でデフォルトになったことに始まる。これが、大きな金融市場混乱を引き起こしている。
(6)「韓国銀行のアンケート調査で専門家らは流動性悪化防止に向け金融当局の積極的な流動性供給が必要だと考えた。金融機関の資産健全性管理とともに潜在リスクを先制的に把握するための当局のストレステスト強化を注文した。また、家計負債と景気低迷などを考慮した金利引き上げの速度調節にも言及した」
デフォルトが発生する前に、政府は金融機関を救済しないと連鎖倒産を引き起こす。そのギリギリのタイミングの見極めが難しい。自主努力をしない企業を救済する訳にいかないからだ。これから、真剣勝負が始まる。