勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    テイカカズラ
       

    韓国の金融市場は、急速な政策金利引上げによる余波で、企業の資金調達難と家計の過剰負債によって破綻が起こるとの予測が出て来た。韓国における内外の金融・経済専門家は、10人に6人が1年以内に金融システム危機が迫る可能性を診断した。専門家らが挙げた主要リスク要因は、企業と家計での金融破綻である。

     

    韓国銀行は11月24日、政策金利を0.25%引上げ年3.25%とした。金融不安が増大している中での利上げである。韓国経済は、最も厳しい局面を迎えている。都市銀行の変動型住宅担保貸付金利は年5.70~7.83%で上限が8%台に迫っている。

    『中央日報』(11月28日付)は、「専門家の10人に6人が『1年以内に韓国の金融システムに危機の可能性』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国銀行が、27日に発表したシステムリスクサーベイの結果によると、金融システム危機を招く衝撃が1年以内の短期に発生する可能性に対する質問に専門家の58.3%が「高い」と答えた。その内訳は、「非常に高い」が12.5%、「高い」が45.8%だった。内外の金融機関役員と主要経済専門家72人を調査した結果だ」

     

    韓国の金融専門家72人のアンケート調査では、58.2%が1年以内の金融危機発生を予測した。これは、異常なことである。利上げ速度の速いことと過剰債務の存在が理由である。

     

    (2)「2021年下半期の調査時は、短期衝撃発生の可能性が「高い」と答えた割合は12.5%にすぎなかったが、2022年上半期に26.9%、2022年下半期には58.3%となった。6カ月で「危機」を警告する回答者の割合が31.4ポイント増えた」

     

    韓国銀行では常時、この種のアンケート調査を行なっている。今年に入ってから、危機感が急激に高まっている。

     

    (3)「金融システム危機を招く最も高いリスク要因としては、「企業の資金調達環境悪化にともなう不良リスク増加」(27.8%)を挙げた。「家計の高い負債水準と償還負担増加」(16.7%)と「金融機関の貸付不健全化と偶発債務現実化」(13.9%)、「国内市場金利の急激な上昇」(12.5%)などが続いた。特に「企業の資金調達環境悪化にともなう不良リスク増加」「金融機関の貸付不健全化と偶発債務現実化の懸念」「不動産市場沈滞」は今回の調査で新たに浮上したリスク要因だ」

     

    政策金利「0.5%時代」が、2020年5月から21年7月までの14ヶ月間続いた。この間に、企業や家計の借入れ行動が大胆になった。現在の政策金利は、3.25%である。実に6倍強の利上げになる。これでは、返済がきつくなるのは当然としても、借りた物は返済するという当たり前の認識が、当初からしっかりしていれば、安易な借入れに走らなかったであろう。

    (4)「専門家らは今後金融脆弱性が現れる可能性が大きい部門として、貯蓄銀行と証券会社、キャピタル会社など主に非銀行業を挙げた。貯蓄銀行の場合、高い脆弱借主比率にともなう資産不健全化と不動産プロジェクトファイナンス(PF)貸付不健全化を懸念する。証券会社は高い不動産PFの割合による偶発債務の現実化など流動性リスクに弱いと評価された」

     

    危ない金融機関として、貯蓄銀行、証券会社、キャピタル会社など主に非銀行業が挙げられている。普通銀行は万一の場合、中央銀行との密接な関係によって資金調達が可能である。だが、非銀行業にはそういう便宜性は与えられていないので、要注意である。

     

    (5)「実際にコマーシャルペーパー(CP)を中心に短期資金市場不安が続いている。CP金利は45日にわたり最高値を続け年5.50%まで沸き上がった。1月3日に1.55%だったCP金利は約11カ月間で3.95%上がった。短期資金市場不安が続くのはレゴランド問題後に投資心理が萎縮した中でCP市場の主要参加者である証券会社の流動性が不足しているためだ。CPの主需要先である証券会社信託とラップアカウントから資金が大規模に離脱した影響だ」

     

    短気資金市場の異変は、遊園地のレゴランドが地方自治体の債務保証取消でデフォルトになったことに始まる。これが、大きな金融市場混乱を引き起こしている。

    (6)「韓国銀行のアンケート調査で専門家らは流動性悪化防止に向け金融当局の積極的な流動性供給が必要だと考えた。金融機関の資産健全性管理とともに潜在リスクを先制的に把握するための当局のストレステスト強化を注文した。また、家計負債と景気低迷などを考慮した金利引き上げの速度調節にも言及した」

    デフォルトが発生する前に、政府は金融機関を救済しないと連鎖倒産を引き起こす。そのギリギリのタイミングの見極めが難しい。自主努力をしない企業を救済する訳にいかないからだ。これから、真剣勝負が始まる。

     

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    習氏は、国家主席3期目を目指すために「ゼロコロナ対策」を強行し、習氏の業績にしてきた。だが皮肉にも、3期目が始まった直後に、ゼロコロナ政策への反発が広がっている。30年余り前の天安門事件以来の大規模な抗議活動に発展しているのだ。

     

    感染者が増え続ければ、政府はゼロコロナ対策を強化せざるを得まい。一方、抗議行動はそれに応じて過激化する。今後の抗議行動は、習氏の対応次第だが、予断を許さない状況だ。

     

    『フィナンシャル・タイムズ 電子版』(11月28日付)は、「ゼロコロナ政策への怒り 中国を揺るがす抗議活動」と題する記事を掲載した。

     

    中国で新型コロナウイルスの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策への抗議が広がっている。上海では警察の阻止にもかかわらず、27日夜に抗議活動がエスカレートした。中国共産党の支配に数十年ぶりに公然と異を訴える動きが国内全域に拡大する様相も呈している。上海の抗議活動は11月26日夜、「ウルムチ中路」付近で始まった。この通りの名前の由来になった新疆ウイグル自治区ウルムチ市では24日、火災で10人が死亡した。この火災がSNS(交流サイト)上で市民の怒りを巻き起こし、国内全域で夜を徹した追悼集会が開かれた。市民はこの悲劇の原因はゼロコロナ規制にあると非難しているが、当局は否定している。

     

    (1)「上海市の集会は27日早朝にいったん解散したが、午後には市民が再び集結した。参加者は夜にかけて増え続け、警察と衝突したり、政府に反対するスローガンを叫んだりした。同様の衝突は25日に新疆でも起き、週末の26~27日には学生らが国内各地で集会を開いた。27日には北京の名門大学、清華大学でも集会が開かれた。中国全域への拡大と党の支配への直接的な抗議という点では、習近平(シー・ジンピン)国家主席を象徴するゼロコロナ政策への今回の抗議活動は1989年の天安門事件以来となる」

     

    今回のように、中国全域への拡大と党支配への直接的な抗議という点では、1989年の天安門事件以来となる。学生が、抗議活動の中心になっている点に天安門事件との類似性が見られる。今回は、早くから学生が静かな抗議行動を見せていた。「四つん這い」とか「模造の犬」を散歩させるなど、異常行動が見られたのだ。

     

    (2)「26日の上海の集会参加者は共産党と習氏の「退陣」を公然と訴えた。英ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)中国研究所のスティーブ・ツァン教授は、「抗議活動は先週末、特に習氏に退陣を求める訴えが登場したことで新たな段階に達した。それまでは(ゼロコロナの)実施に反対する集会だった」と指摘した。さらに「(習氏は)ゼロコロナと自身へのさらなる抗議を押さえつけるため、何らかの形の抑圧に乗り出すだろう」との見方も示した。「ここでゼロコロナを撤回すればメンツが潰れ、弱みをみせることになる」と言う」

     

    習政権の動きが注目点である。抗議行動をいかにして抑え込むかである。ゼロコロナの撤回は、弱みを見せつけることになる。それだけに対応は難しいであろう。

     

    (3)「匿名を条件に取材に応じたある参加者は「市民の間にはこの3年間、こうした怒りがたまっている」と憤った。ネットでの光景を見て26日の上海の集会に駆けつけたというある学生は、「とても危険な行為なのは分かっているが、私の義務だ」と強調した。別の参加者はこの集会はウルムチの火事の犠牲者を追悼するために始まったが「収拾がつかなくなった」と語った。一部の参加者は自由がないと不満を訴え、集団検査と隔離、ロックダウンで感染封じ込めを図る中国のゼロコロナ政策は科学的ではないと訴えた」

     

    市民は、ゼロコロナで3年間のロックダウンを強いられてきた。その不満が鬱積しているのだ。余りにも、強引なゼロコロナ対策であった。それだけに不満は充満している。非科学的な防疫対策だけに、学生から見ればとうてい受入れられない筈だ。

     

    (4)「11月で退任するファウチ米大統領首席医療顧問は、日常生活を再開する道筋を一切示さずに厳しいロックダウンを課す中国のゼロコロナ政策を「過酷」と評した。ファウチ氏は「中国政府は目的や終わりを明確にしないまま長期に及ぶロックダウンに突入したが、公衆衛生上はあまり意味がない」と批判した。さらに、中国は高齢者へのワクチン接種が不十分で、外国産ワクチンの受け入れを拒むという過ちを犯しているとも指摘した。「公衆衛生の観点からすると、これは理にかなったものとは言えない」とした」

     

    習氏が、ゼロコロナを自己の業績にして自慢すればするほど、市民や学生の怒りを買う筈だ。習氏は、高齢者へのワクチン接種の不十分さや、外国産ワクチンの受け入れ拒否という大きなミスを犯している。それだけに、こういう傲慢さは糾弾されるべきであろう。

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    ロシア軍が、第2次動員令として50~70万人を招集するとの報道が、ロシア内外で行なわれている。ロシアメディア『プラウダ』は、「プーチン大統領は年末までに連邦議会での演説を通じて、兵士と将校を補充するための国家動員令を発表するだろう」と報道したのがきっかけであった。

     

    ウクライナ内務相顧問を務めるアントン・ヘラシチェンコ氏は22日、自身のツイッターに「ロシアは来年1月に2度目の動員令を発令する準備をしている。50万~70万人を動員する計画だとした。

    これら報道に対して、クレムリンの報道官は25日(現地時間)、「『プーチン大統領が国家動員令を発表する』というメディア報道は事実ではない」と伝えた。このように、第2次動員令が話題に上がっているが、ロシア軍はウクライナ侵攻で多大の消耗を強いられているだけに、クレムリン報道官の「否定」を額面通りに受取れないのも事実だ。

     

    韓国紙『ハンギョレ新聞』(11月25日付)は、「また強制動員令? 徴集におびえるロシア」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ戦争で守勢に追い込まれたロシア軍が、9月の30万人に続き再び動員令を発表すると懸念される中、ロシアの野党はウラジーミル・プーチン大統領に対し「予備役の部分的な動員令」の終了を公式に確認する大統領令を発するよう要求した。

     

    (1)「ロシアの自由主義系政党「ヤブロコ」のウェブサイトなどによると、北欧に隣接しモスクワ北方に位置するカレリア共和国の議会に所属する2人の議員が22日、プーチン大統領に書簡を送り、このように要求した。同党所属のエミリア・スラブノワ、インナ・ボルチェフスカヤの両議員は、先月28日にセルゲイ・ショイグ国防長官が「部分的な動員令は完了した」と放送で発表したものには法的効力がないとし、動員終了を大統領令で確認することを求めた。ヤブロコは市場経済を支持する自由主義系の政党。プーチン政権に批判的で、今回の戦争に懐疑的な立場を表明してきた」

     

    プーチン氏は、動員終了を大統領令で確認することを求められている。そうでなければ、第2次動員令もありうるからだ。前回の動員令では30万人に止めたが、実際の動員計画では100万人を予定していたとも報じられていた。この説が正しいとすれば、第2次「50~70万人」動員令を出したとしても、当初計画の100万人の枠に収まる。

     

    (2)「スラブノワ議員はこの日、自身のテレグラムに「ロシア国防省は動員令が終了したと述べたが、徴集が再び起こらないという法的保障はない」と書き込み、プーチン大統領が9月21日の大統領令によって予備役徴集を命じたように、これが公式に終了したということも同じ方式で発表することを要求した。彼らは、法的効力のない動員令の終了はロシア人の不安と恐怖をかきたてると強調した。ロシア国民は、冬を前に再び動員令が発表されるのではないかと不安にさいなまれている。米国の戦争研究所によると、ロシアの極右系ブロガーたちは、今年12月または来年1月に新たな動員令が下されるだろうという主張をオンラインなどで流している

     

    ロシアの軍事ブロガーは、オンラインで新たな動員令が今年12月~来年1月に下されると流している。雰囲気づくりをやっているわけだ。

     

    (3)「ウクライナも、ロシアが新たな動員令を下すだろうとの見通しを示している。内務相の顧問を務めるアントン・ヘラシチェンコ氏は22日、自身のツイッターに「ロシアは来年1月に2度目の動員令を発令する準備をしている。50万~70万人を動員する計画だ。以前に動員された30万人はすでに戦死あるいは負傷したか、戦闘意志を喪失している」と述べ「ロシア人は当局に対して静かに不満を持ちはじめた」と付け加えた。英国「スカイ・ニュース」は、この主張が事実なら、これはロシアが戦争の長期化に備えており、戦況がプーチン大統領の考えていたやり方で解決されていないことを示唆すると分析した」

     

    ウクライナ内務省顧問は、第2次動員令として50万~70万人説をツイッターで書き込んでいる。情報戦で、ロシアの極秘情報を握ったのであろう。問題は、ロシアで第2次動員令が出た場合、ロシア国内の反発は大きなものになろう。

     

    米『CNN』(11月28日付)は、「ロシア兵の母親たち、オンライン署名運動 ウクライナからの撤退求め」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア軍兵士の母親たちが市民団体「フェミニスト反戦レジスタンス」と協力し、ウクライナからの撤退を求めるオンライン署名運動を展開している。署名はロシアの「母の日」にあたる27日から始まった。署名は初日の夕方までに1500件を超え、さらに増え続けた。

     

    (4)「嘆願書は、過去9カ月にわたる「特別軍事作戦」が破壊と悲嘆、流血と涙をもたらしていると懸念を表明し、「われわれロシアの母たちは国籍や宗教、社会的地位にかかわらず、平和と調和の中で暮らしたい、子どもたちの将来を恐れることなく平和な空の下で育てたいという願いで一致団結している」と述べている。母親らはこの中で、「死ぬため」に動員される兵士の家族は、防弾ベストなどの装備を自費でそろえなければならず、稼ぎ手を失った家庭で母親たちの負担は増すばかりだと訴えた」

     

    悲痛な母親達の停戦への願いが、プーチン氏に届くか疑問である。だが、第2次動員令が出れば、確実に世論は変わるであろう。

     

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    中国は、発展途上国で「一帯一路」プロジェクトを推進している。だが、現地で働く労働者は現地雇用でなく、中国から引き連れていくことから大きな反感を買っている。中国が、工事に伴う利益はすべて吸収しており、現地への利益還元はないのだ。こうして、中国人労働者が襲われる事件が多発しているのだ。 

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月28日付)は、「襲われる中国人労働者、『一帯一路』のリスク」と題する記事を掲載した。 

    アジアやアフリカで中国人労働者を狙った攻撃が増えている。4月の事件は投資を通じて影響力の拡大を狙う中国にとって問題が深刻化していることをうかがわせた。中国は発展途上国への最大の資金供与国で、資金は主に習近平国家主席が主導するインフラ構想「一帯一路」のプログラムを通じて提供されている。西側の大国と一線を画すため、中国は投資先で「善意のパートナー」として自らを印象づけようとしている。しかし世界進出が進むにつれ、中国は汚職や現地の反発、政情不安、暴力など、力の誇示がもたらした結果への対応を迫られるようになった。

     

    (1)「発展途上国にとって中国による投資は主要インフラを迅速に整備するおそらく絶好のチャンスだ。だが西側諸国は中国の融資について、その条件が一方的で、途上国は多額の債務を抱えることになり、期待していた経済的利益も得られるとは限らないと批判している。中国としても、債務不履行(デフォルト)や現地の政情不安など重大なリスクも抱えている。米シンクタンク、スティムソン・センターの中国プログラムのディレクター、ユン・スン氏は中国が投資する途上国について、「内政が脆弱な、不安定な国であるという事実を中国は受け入れなければならない」と指摘する」 

    中国の「一帯一路」プロジェクトを受入れる国は、内政が脆弱で不安定な国ばかりである。中国は、ここで「荒稼ぎ」をしているから、人命に伴うリスクもつきまとうのだ。それでも、この危険なプロジェクトを遂行してきたが、今や多額の「焦げ付け債権」を抱えている。

     

    (2)「中国が投資する複数の途上国で、中国の企業と労働者が攻撃対象になっている。中国人は大半の現地住民より裕福だとみなされており、中国の投資による経済的利益や雇用機会を取り過ぎていると受け止められているケースもある。ナイジェリアでは6月、同国北西部の鉱山が襲撃され、中国人労働者4人が武装集団に誘拐された。在ラゴス中国領事館によると、10月には中国から資金提供を受けた企業が正体不明の「暴漢ら」に襲われ、中国人の社員1人が殺害された。領事館は中国企業に対し、警備会社を雇い、職場の防犯を強化するよう求めた。業界団体の中国対外承包工程商会(CHINCA)によると、中国の請負企業の労働者として働く中国人は昨年末の時点で、中国を除くアジアで約44万人、アフリカでは9万3500人に上った」 

    中国が、なぜ現地の労働者を雇わないのか。技術的に未熟で工事能力がないとすれば、それを育てる度量が必要だ。中国にはそれがない。ただ、儲けることばかりが先行している。反感を受けて当然だろう。

     

    (3)「米シンクタンクのオクサス協会の集計では、中央アジアでは2018年から2021年半ばまでの間に中国を巡る市民の暴動が約160件発生した。中国政府は途上国で働く中国人労働者への脅威が高まっていることは認識しているが、内政不干渉を公言しているため自国の軍隊を派遣したがらない。その代わりに顔認識などの技術を提供したり、さらに多くの中国の警備会社と契約したりしているという」 

    中央アジアでは、2018~21年半ばまでの間に、中国を巡る市民の暴動が約160件発生した。中国がいかに反感を買っているかだ。中央アジアは、「一帯一路」の入り口でもあり、中国がここで悪いイメージを与えたのでは外交的にも失敗であろう。 

    (4)「中国が発展途上国投資のモデルケースに選んだのがパキスタン――最も親密な友好国の一つで、軍事的に深いつながりがあり、インドを共通のライバルとしている――だ。中国はこれまでにパキスタンの道路や発電所、港に約250億ドル(約3兆4900億円)を投じている。中国外務省によると、習氏は「戦略的、長期的観点からパキスタンとの関係をとらえており、中国の近隣外交においてパキスタンは常に優先度が高い」と述べる一方で、パキスタン国内の中国人の安全について懸念を表明した」 

    パキスタンは、中国の「上得意」である。「一帯一路」プロジェクトでは、工事見積もりで水増しされていることが発覚するほど。二重計算されていることが暴露されている。それでも、パキスタンは経済的に中国へ頼るほかない。 

    (5)「パキスタン政府関係者によると、パキスタン側は中国人保護のために装甲車両を輸入する用意があり、中国のプロジェクトの警備を強化すると伝えた。パキスタン政府関係者の話では、4月のテロ事件のあと、中国政府はパキスタン国内に中国の警備会社を派遣しようとしたが、パキスタン側が断ったという。パキスタンは現在、兵士3万人を中国人保護に投入している」 

    パキスタンでは、反政府運動が広がっている。中国が、パキスタンの利益を搾取しているとして、「反中国」を鮮明にしている。パキスタンが、中国との関係を正常化しなければ反政府運動は収まるまい。

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    今、ウクライナ戦争で最も停戦を望んでいるのは、ロシア大統領のプーチン氏だろうという説が流れている。劣勢に立たされるロシア軍が、一息ついて休養するには停戦を利用するしか道がないというのだ。ウクライナ軍は、こういうロシア軍の苦衷を百も知っている。停戦には、絶対応じまいと言われ理由だ。

     

    ウクライナへ派遣された動員兵の扱いは残酷そのものと伝えられている。前線への出動を拒否すると、地下室へ監禁され、食事も一日1回という動物的な扱いを受けているのだ。前線に送られれば、単なる「弾除け」手段に扱われている。これ以上、残酷な例はあるまい。

     

    米『CNN』(11月26日付)は、「前線の怒り、国内の不安 問題に直面するロシアの動員」と題する記事を掲載した。

     

    第2次世界大戦後初となるロシアの動員は既に完了したようだが、ウクライナの戦場に大量の兵士が派遣されたことで、前線やロシア国内では反発や抗議が噴出している。

     

    (1)「ロシア政府は最近動員された兵士のうち少なくとも5万人がウクライナ入りしたと成果を主張するが、聞こえてくるのは多岐にわたる不満の声だ。不満の内容としては、中級将校の指導力不足、大量の死傷者を出す戦術、訓練の欠如、約束された報酬の未払いが挙げられる。兵士やその家族、ロシアの軍事ブロガーが報告するように、兵たん面の課題も存在する。軍服は十分に行き渡っておらず、食事は粗末で、医薬品も不足している状況だ。また規律の問題もある。」

     

    (2)「ある女性は、夫から「新しい人が絶えず連行されてきて、ザイトセボにある『文化の家』の広大な地下室に収容されている。食事は1日1回で、一つの乾燥糧食を5~6人で分け合っている状況だ。彼らは収容者を常に威嚇している」と聞かされたという。拘束されている兵士1人の妻の話として、「夫は他の80人と一緒に地下室に座っている。携帯電話を没収するため裸にされたが、幸運なことに、1人が携帯電話を隠し通した」とも報じた」

     

    (3)「米シンクタンク戦争研究所のカテリーナ・ステパネンコ氏は、「(ルハンスク州の)スバトベクレミンナ前線に投入された準備不足の動員兵に関し、多くの不満の声を確認した。この前線は現在ロシア軍で最も戦闘が激しい陣地のひとつだ」と述べた。兵士たちが故郷に苦境を伝えると、そうした不満の声は妻や母親によりSNSや地方当局への直訴を通じて増幅される。ステパネンコ氏は「家族から寄せられる不満で最も多いのは、愛する人の居場所や給料の遅延、物資不足に関する国防省の情報が十分でないというものだ」と指摘する」

     

    (4)「11月14日にSNSに投稿された動画では、ボロネジ州在住の女性グループが、夫や息子は指揮官を伴わず前線に投入されていて、水も必要な服も武器もないと訴えた。女性の1人は息子から、自分の大隊で生き残った兵士はごくわずかだと聞かされたといい、「彼らは遺体の下から文字通り這(は)って抜け出した」と語った。女性らはボロネジ州の知事に対し、動員された身内は「訓練を受けておらず、射撃場に1回連れて行かれただけ。戦闘経験はまったくない」と訴えている」

     

    (5)「ユーチューブに投稿された動画では、ロシアのスベルドロフスク州在住とされる女性十数人が、ルハンスク州スバトベ付近に身を隠しているとの情報がある第55旅団の新兵への支援を訴えた。新兵らは軍事法廷にかけると脅されているが、そもそも前線に投入されるべきではなかったというのが家族の主張だ。女性の1人は息子から電話で「全く指示がない状態で放置されていて、弾薬もない。空腹と寒さでみな体調を崩している」と伝えられたという。41歳の夫が動員されたという別の女性は「彼らは専門的な訓練を全く受けずに戦地に赴いた」と語る。「給料は支払われていない。軍のどこかの部隊に配属されているわけではなく、どこを探せばいいのか、誰に聞けばいいのか分からない」と言う」

     

    (6)「欧米の当局者の間では、ロシアは未経験者が大半を占める新兵の統合に苦慮しているとの指摘が出ている。英国防省は先ごろ、「おそらくロシアは現在の動員や秋の定期徴兵で入隊した新兵の軍事訓練に苦慮している。新規動員兵は最低限の訓練しか受けていないか、全く訓練を受けていない可能性が高い。経験豊富な将校や訓練教官は既にウクライナでの戦闘に動員されており、一部は戦死したとみられる」との分析を発表した

     

    ロシア軍は、経験豊富な将校など前線へ動員されており、新兵教育の余裕を失っている。もはや、負け戦は明白である。

     

    (7)「ウクライナの当局者は、ロシアの動員で戦闘員の数が増えた結果、ウクライナ軍が多方面作戦を余儀なくされていることは認めている。ただ、ロシアの新兵は何の準備もないまま戦闘に投入されているという。ルハンスク州のウクライナ軍政当局トップ、セルヒ・ハイダイ氏は先日、スバトベ付近では新兵が繰り返す波のように突進してきたと明らかにした。「彼らが死亡すると、次の一群が前進する。新たな攻撃のたびにロシア人は死者を踏みつけて進んでいる状況だ」と言う」

     

    動員兵は、ウクライナ軍の銃弾の盾になっているに過ぎない。ロシア軍は、休戦への時間稼ぎの目的で、ただ戦闘しているに過ぎない印象を受ける。犠牲になる動員兵が余りにも哀れだ。これなら、前線への出動を拒否するほかない。ロシア軍は、敗北するという印象がますます強くなる。

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