勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。


    権力とは恐ろしいものである。妄想に基づく最低賃金大幅引き上げによって、80万人の国民が安定した生活基盤を奪われたからだ。今後も革新政権を継続させるには、労組と市民団体の支持を得なければならない。それには、これら支持団体の希望を叶えることだ。最低賃金の大幅引き上げの裏に、こういう思惑がある。権力維持のためには国民を犠牲にする。北朝鮮の金ファミリーと似た部分がある。

     

    朝鮮日報』(11月19日付)は、「最低賃金引き上げの逆説、韓国の中長期就業者80万人減」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「行き過ぎた最低賃金引き上げの影響で、低所得、低学力、低熟練という『3低』の労働者や自営業者が直撃を受けている。年初来10月末までの統計庁の雇用統計を分析した結果、最低賃金を16.4%引き上げた今年、短期就業者が過去最高となる一方、中長期の就業者は通貨危機当時以降の減少を示した」

     

    最低賃金引き上げの目的は、社会の底辺で苦吟する「低所得・低学力・低熟練」という「3低」の人々の賃金引き上げを意図するものだ。韓国は、これと逆のマイナス効果を生む最低賃金引き上げをやっている。ノーベル経済学賞受賞のミルトン・フリードマンは、最低賃金制度は雇用を破壊するとして反対した。労働需給に合わせた賃金決定が最善の策と指摘したのだ。文政権の生産性を無視した最低賃金引き上げを見ると、フリードマンの慧眼に敬服するほかない。

     

    (2)「韓国統計庁によると、今年に入り、労働時間が週1~17時間の短期就業者は前年同期比(10カ月平均値)で17万3000人増えた。統計を取り始めた1980年以降で最高だ。アルバイトが大半を占める短期雇用は給与が低い。一方、週36時間以上の中長期就業者は80万1000人減少した。通貨危機当時の1998年(165万人減)以降で最も激しい減少だった。昨年中、長期就業者が42万1000人増えたのと対照的だ」

     

    文政権は、安定した雇用構造を破壊した。労働時間が週1~17時間の短期就業者は、前年同期比(10カ月平均値)で17万3000人増えた。これは、政府が公的資金を使ったアルバイト募集の結果である。一方、週36時間以上の中長期就業者は80万1000人も減少した。公的資金の救済がなかったからだ。この文政権が、あと3年続く。韓国経済は崩壊する。



    中国経済の末端にある民間企業は、景気減速で塗炭の苦しみに遭っている。「信用収縮」というこれまでなかった事態で、企業も従業員も深刻な状態に追い込まれている。

     

    『大紀元』(11月19日付)は、「中国、景気鈍化で民間企業が苦境、賃金未払い・リストラ頻発」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米『ラジオ・フリー・アジア:RFA』(15日付)によると、広東省東莞市の家具生産会社『名将家具』が経営難のため、従業員への給料未払いが続いている。これに抗議して、14日同社の従業員数人が会社ビルの屋上に集まり、賃金が支払われなければ集団飛び降り自殺すると経営陣に迫った。東莞市民の鄭さんはRFAに対して、米中貿易摩擦、人件費の高騰、高い税金負担、原油価格の上昇などが原因で、地元の景気が悪化し、多くの民間企業が倒産したと話した。『現在、倒産を免れた企業も厳しい経営環境に直面している。来年には廃業に追い込まれる企業も多数ある。特に輸出関連の企業は非常に苦しい』という」

     

    家具メーカーの従業員数人が、会社の屋上から飛び降り自殺すると抗議するほど、賃金未払いが深刻になっている。家具は米国の関税引き上げ対象であるから、すでに業績へ影響が出ているのであろう。来年になれば、さらに多くの企業が廃業に追い込まれる見込みだという。

     

    (2)「中国メディア『中国経済網』は15日、農業農村部の8日の発表を引用し、約740万人の出稼ぎ労働者が『起業のため地元に帰った』と報じた。報道は、「ますます多くの農民工、大学・専門学校の卒業生、技術者、企業経営者などが、起業して豊かになるため、広大な農村で活躍を見せるだろう」と強調。ネットユーザーは当局の論調を疑問視している。30万人以上のフォロワーを持つ経済ブロガー『顔値財経程凌虚』は、『740万人との数値は、この前メディアが報道した『今年上半期に504万社(中国企業の総社数は約3100万社)の企業が倒産した』ことと合致していると帰郷が農民工の大規模な失業であると主張した』

     

    中国農業農村部(日本の農業水産省)によると、約740万人の出稼ぎ労働者が「起業のため地元に帰った」という。農民工による「起業」などあるはずがない。ウソ情報である。今年上半期に504万社(中国企業の総社数は約3100万社)の企業倒産による失業者の数に合致するという。

     

    民間企業の倒産社数は、中国全土の16%に上がっている。これだけで、社会不安が起っても不思議はない。この高い倒産比率が、信用収縮によることは間違いない。「貸し渋り」が深刻化している証拠だ。中国人民銀行は、民間向け貸出の増加目標を掲げている。だが、信用不安が起っている中で「焼け石に水」であろう。これぞまさに、「信用恐慌」の第一歩が始ったと見るべきだ。金融機関への波及を食い止めなければ、大変な事態になる。こういう事態を理解するには、金融状況を知ることが先決であろう。私の「メルマガ6号」(11月18日発行)を見ていただきたい。

     



    中国の米国債保有残高は、4ヶ月連続で減少して9月末で1兆1500億ドルへ減った。中国が、米中貿易戦争の当初、対抗手段の一環で米国債を売却するのでないか。そういう予測もあった。もはや、そのような「嫌がらせ」をする気力はなくなっている。ひたすら、人民元相場急落への防戦を急ぐという受け身姿勢である。

     

    『ブルームバーグ』(11月19日付)は、「中国の米国債保有残高、9月は過去1年余りで最低水準」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国の9月末時点の米国債保有残高は4カ月連続で減少し、過去1年余りで最も低い水準となった。貿易戦争に伴う圧力が強まる中で、中国当局が人民元安定に向けた対応を行っている状況が背景にある。米財務省の16日の発表によると、中国の米国債保有は1兆1500億ドル(約130兆円)。8月は1兆1700億ドルだった。外国勢で米国債保有残高が中国に次いで大きい日本は、ほぼ変わらずの1兆300億ドル。中国は人民元相場を安定させ、一段の下落を回避する政策の一環として、外貨準備の減少を容認している可能性がある」

     

    中国の外貨準備高は、10月末時点で3兆530億ドル、前月比で339億2700万ドルも減った。3カ月連続の減少で、8月は82億3000万ドル減で、9月は226億9000万ドル減であった。このように、外貨準備高自体が減少しており、米国債の売却は外貨準備高減少に現れている。

     

    日本の9月末米国債保有残高は、1兆300億ドルである。中国がこのままのペースで米国債を売却し続ければ、来年の1月辺りには米国債保有残高で、日中が逆転するかも知れない。ただ、逆転が起ったからと言って、格別の意味もない。中国の外貨事情が逼迫化している有力な証になるだけだろう。中国もついに、「虎の子の米国債売らざるを得なくなったか」、そういうイメージぐらいであろう。

     

    中国が、「一帯一路」で世界中に中国マネーをばらまく時代は終わった。経常収支の黒字維持が極めて困難になってきたからだ。1~9月の経常収支は128億ドルの赤字である。10~12月期にどれだけの経常収支黒字を計上できるか。最悪の場合、今年の経常収支は赤字もあり得る。これが、事実になったら大変なショックを与えるだろう。むろん、来年も赤字である。

     

    その時の、準備をしておくべきだ。私は、一貫して中国経済の脆弱性を指摘してきた。経常収支問題は、それを端的に示すことになろう。

     



    文政権の支持率が揺らいでいる。文大統領の訪朝の際、支持率は回復したが再び50%台前半へ落ちてきた。それでも、海外の大統領や首相に比べれば高い支持率である。

     

    問題は、若者の支持率低下である。革新大統領を名乗っていながら、若者がソッポを向く構図はなんとも寒々とした光景である。理由は、高い失業率にある。就職もままならない政権を支持する気にはなれないであろう。「南北統一問題より経済問題」。これが、若者の切実な願いになっている。

     

    『朝鮮日報』(11月19日付)は、「20代を中心に急落する文大統領支持率に与党幹部が危機感」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国与党・共に民主党のパク・チュミン最高委員は18日「先日行われたギャラップの世論調査で、今年の初め20代で82.9%にまで達した文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率が、11月の第2週には54.5%へと28ポイント以上も下落した」「この点は非常につらいし、またつらいと思うべきだ」と述べた。パク議員はこの日国会で開催された全国大学生委員会の発足式に出席し「別の年代での支持率下落も非常につらいが、将来を担う20代が失望しているなら、その点はもっと深刻に考えるべきだ」とした上で上記のように述べた」

     

    韓国の若者が、大学生の就職先として日本企業を斡旋するような文政権を支持するだろうか。政府の役割は、国民の経済問題を解決することが第一任務のはずだ。それを果たせない政権が、若者から高い支持を得たいというのはお門違いだろう。

     

    (2)「同党のイ・ヘチャン代表は「政治がうまくいかないと国は発展しない」とした上で、フィリピンを引き合いに出し「過去4050年にわたりフィリピンではまともな政治指導者が出なかった。中でもマルコスという独裁者の影響で最も豊かだった国が最も貧しい国に転落してしまった」などと発言した」

     

    この議員は何を言いたいか。それは、過去の保守党政権に経済問題の責任を押しつけようという魂胆である。ここが、韓国人の最も悪い点である。絶対に自らの責任を認めない。だから「自己反省」がなく進歩がないのだ。フィリピンのマルコス政権の例を出している。ここから、暗に韓国の軍事政権に責任をなすりつけているのだ。皮肉にも韓国の高度成長は、この時代に花開いたもの。過去は過去。問われているのは現在である。時の政権担当者が、最大の責任を負うものである。こういう認識のなさが、韓国の悲劇である。



    米中貿易戦争が本格化する10月を待たず、7~9月期の上海と深圳に上場する企業利益は、急速鈍化に見舞われたことが判明した。ロイターが上記2市場に上場する1950社の第3・四半期決算を集計したところ、全体の純利益の伸びはわずか3.9%で、過去2年間の四半期ベースの20~55%から急激に悪化した。失速と言って良い。

     

    理由は、信用収縮と貿易戦争である。信用収縮とは、銀行が貸倒れを恐れて「貸し渋り」と「貸し剥がし」を行なうこと。日本もバブル崩壊後に経験した道であり、中国でそれが始ったものだ。

     

    この金融逼迫については、私の「メルマガ6号」(昨日発行)で詳細に取り上げた。典型的なバブル崩壊後の金融危機に突入したと判断される。ぜひ、こちらを読んでいただきたい。

     

    『ロイター』(11月14日付)は、「中国企業に逆風 融資抑制と通商紛争で利益の伸び急鈍化」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ロイターが上海と深センの両市場に上場する1950社の第3・四半期決算を集計したところ、全体の純利益の伸びはわずか3.9%で、過去2年間の四半期ベースの20―55%から急激に鈍化した。恒康医療集団の取締役会メンバーのリ・ダン氏は、『資本市場は逼迫しており、借り入れコストが極めて高い』と指摘。M&Aの資金調達を巡る激しい競争に景気の減速が重なり、第3・四半期決算が赤字になったと説明した」

     

    「資本市場は逼迫しており、借り入れコストが極めて高い」と指摘している。これは、信用不安が極度に膨らんできた結果である。信用リスクが高まっているので、金利がそれを反映しているもの。これに加えて住宅価格が下落に転じたら、中国経済は「万歳」(お手上げ)だ。信用危機がここまで来たという証拠である。

     

    (2)「中国企業の抱える債務総額は第3・四半期に12兆元(1兆7000億ドル)と前年同期比1.6%減り、入手可能な約1400社のデータの比較では9年ぶりに減少。前期比でも11.5%減と、9年ぶりの減少を記録した。深セン市中金嶺南有色金属の幹部は、資金調達が難しい状況の下、製品の値下がりが業績悪化につながったと指摘。『市場環境は実に悪い。起債時には大きな圧力にさらされ、調達はほぼ失敗だった』と話した」

     

    債務が減ったのは、「貸し剥がし」によるものだ。銀行が強引に貸出した資金の回収を始めたことを反映している。日本が辿って来た道を、中国も歩き始めたに過ぎない。この先にあるのは、悲観という二文字だけであろう。平成バブル崩壊の後遺症が、これから中国で再現される。そう見ておくべきだろう。

     

    (3)「中国企業の売上高の伸び率は13.4%で、前年同期の21.6%からは鈍ったが、年初並みの力強い水準を維持している。しかし中国企業の経営幹部へのインタビューからは、利益については逆風となる材料が目白押しだと読み取れる。需要は弱く、調達コストが上昇しているのに加えて、金融投資のリターンは低迷、在庫が積み上がり、競争激化で製品価格には下押し圧力がかかっている」

     

    売上高はまだ二桁を維持しているが、「押し込み販売」に過ぎない。「金融投資のリターンは低迷、在庫が積み上がり、競争激化で製品価格には下押し圧力がかかっている」という記事が、雄弁に舞台裏を覗かせている。「現実の売上」(代金回収)が落ちているので、「押し込み販売」(在庫増)しているので、「売り掛金」となって現金回収が滞っているはずだ。日本がかつて遭遇した現実が、中国で起っている。そう見るほかない。

     

    中国企業は7~9月期において、すでに混乱状態に入っている。10月以降、米国の関税第3弾の影響が本格化する中で、混乱はさらに拡大する。企業利益は、マイナスへ落込むはずだ。中国企業は、すでに貿易戦争を継続できる体力を失っている

    このページのトップヘ