勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    あじさいのたまご
       

    文大統領は、4月の総選挙を前に人気を高める可能性があれば、なんでもやる姿勢だ。北朝鮮への個人旅行案もその類いである。以前に、金剛山観光で韓国人女性が射殺される事件が起こっている。これが引き金になって、韓国人の北朝鮮旅行を中止した。

     

    こういう問題含みの場所へ、個人の観光旅行を認めるとなれば、身の安全をいかに保証するか、北朝鮮と話合わなければならない。現状では、そういう南北協議さえ実現していないのだ。肝心の北朝鮮が、韓国国民を受入れるか、という基本問題が未解決である。文氏は、アドバルーンを打ち上げて、反応を見ただけかも知れない。

     

    「東亜日報」(1月23日付)は、「中国旅行社、『北で個別観光許可の動きはなし』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「新年の辞」と新年記者会見を通じて北朝鮮への個別観光を推進する構想を明らかにしたが、北朝鮮が関連措置を取ったことは確認されていない。北朝鮮が韓国人にビザを発行する場合に北朝鮮観光の拠点となる中国の主要旅行社を東亜(トンア)日報が接触したところ、「北朝鮮が韓国人の旅行を許可することに政策を変えたという情報を確認していない」と答えた。中国の旅行社は、「韓国が推進中の北朝鮮への個別観光と関連して準備していることはあるか」という本紙の質問に、多くが「北朝鮮の立場が変わったとはまだ聞いていない」という反応を示した」

     

    北朝鮮が、韓国人旅行を受入れなければ、文大統領がいくら頑張っても実現不可能だ。文氏はこの問題で、事前に北朝鮮へ打診したわけでなく、「アドリブ」で言ったに過ぎない。

     


    (2)「中国・瀋陽にあるA旅行社は、「北朝鮮の政策が変わるなら、私たちが韓国人観光客を北朝鮮に送ることもできるだろう」としながらも、「まだ(観光政策に関連して)北朝鮮内部の変化はない。今は韓国の旅券所持者を北朝鮮に送ることはできない」と話した。北京にあるB旅行社も、「(韓国)政府の政策をよく知っている」としつつも、「まだ議論が進行中であるだけではないのか。結果がどのように出るか見守るだけ」と話した。また別の中国のC旅行社は、「現在のところ(韓国人の個別観光と関連して)何の計画もない。全ては仮定の状況」と話した。個別観光が実施される場合、仲介役を担うとみられるこれらの旅行社も、まだ北朝鮮のムード変化を全く感じていないのだ」

     

    中国の旅行会社の感触を聞いてみると、従来と全く変らないという。となれば、文大統領は実現困難であることを知りつつ、景気づけのために言ったという印象が強い。事情を知らない国民は、「大統領発言」に期待を持っただけで終わる話だ。文字通り、「選挙対策」である。こういう、実現しそうにないことを言って良いものか。文氏への信頼を落とすのだ。

     

    (3)「これらの旅行社は、韓国人観光客の安全問題については、「北朝鮮は安全な国」という原則的な立場だけを示した。A旅行社は、「インドに行くならインドの風習どおり豚肉を食べないのではないのか。北朝鮮でも北朝鮮の規則に従いさえすれば大丈夫だ」と説明し、C旅行社は「北朝鮮の文化と法を尊重するなら安全だ。極度に安全だ」とまで述べた。韓国人だからといって他国人と差別化される追加的な安全措置を取る必要性がないという考えを示したのだ。統一部は、北朝鮮の沈黙と個別観光に対する安全問題の憂慮にもかかわらず、政策を推進していく考えを再確認した。李相旻(イ・サンミン)統一部報道官は22日、定例会見で、「民間交流拡大次元の案の1つとして個別観光を考えている」とし、「(個別観光と関連した)安全問題もそのような次元で検討していく予定だ」と話した」

     

    中国の旅行会社は、韓国人だからと言って特別の安全措置をとることはない。韓国統一部は、具体的な「安全策」をすでに考えている様子でもない。文大統領が、こういう状態で自国民の北朝鮮旅行を勧めるのは、きわめて無責任である。所詮、選挙のために「一票」欲しいというレベルの話であろう。


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    中小企業が、音を上げている。文政権による早急な最低賃金の大幅引上げと、週労働時間52時間限度が壁になっているからだ。いずれも、賃金コストを大幅に引き上げた。中小企業には、耐えられる限界を超えており、金利もまともに払えず「ゾンビ化」している。経営は、過去2回遭遇した通貨危機や金融危機よりも圧迫された状態である。一方、大企業労組は最賃大幅引上げと労働時間短縮でメリットを存分に享受し恵まれた立場だ。

     

    『朝鮮日報』(1月25日付)は、「借金で持ちこたえる韓国中小企業『むしろ通貨危機当時がよかった』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国の中小企業は630万社(2017年末)だ。そこで1599万人が働いている。企業数の99.9%、雇用の82.9%を背負う韓国経済の屋台骨だ。通貨危機や世界的な金融危機など大きな衝撃にも耐えてきた韓国の中小企業は内需景気の悪化、輸出不振、最 低賃金の急上昇、労働時間の短縮という例のない四重苦に直面した。ある中小企業の経営者は「酸素マスクで延命し、毎日毎日を持ちこたえ、死期を待つ存在だ」と嘆いた」。

     

    文政権の最大の欠陥は、大企業労組の要求を鵜呑みにしていることだ。労組にとって良いことは、韓国経済にプラスと信じ切っている素朴さである。労組の影で泣かされている中小企業がいることを忘れている。企業数の99.9%、雇用の82.9%を占める中小企業を苦境に追い込む。そういう政策は落第なのだ。

     


    (2)「中小製造業は昨年、マイナス成長の危機に直面した。通貨危機のピークだった1998年(マイナス2.01%)以降の21年間で初めてだ。韓国銀行によると、中小製造業の売上高は2017年に7.66%増加したが、18年は伸びが2.77%に縮小した。19年は13月がマイナス7.3%、マイナス0.5%を記録した。下半期に状況が改善したとしてもマイナス成長の危機だ。売上高も減少し、収益性の悪化を増収でカバーすることも限界に達した」

     

    中小製造業の売上高は、17~18年はプラスを維持したが、19年に入ってマイナス基調へ転落した。韓国には現在、通貨危機も金融危機も起こっていない。それにもかかわらず、この事態に落込んだ原因は、最賃大幅引上げによる内需不振である。文政権は、この政策が間違っていたことを絶対に認めず逃げ回っている。

     

    (3)「中小製造業の経営者らはしきりに「通貨危機当時よりも厳しい」と言い、いくつかの理由を挙げた。当時は内需が急速に冷え込んだが、ウォン相場の急落で輸出競争力が高まった。輸出でなんとか耐え忍ぶことができた格好だ。しかし、現在は内需だけでなく、輸出も厳しい状況だ。19年の輸出は10.3%減で、01年(12.7%減)、09年(13.9%減)以降で初めて2桁台の減少となった。借金で延命する企業も増えている。韓国銀行によると、営業利益で融資の利払いを賄えない中小企業(インタレスト・カバレッジ・レシオが1未満)は18年時点で47.2%となり、14年に比べ9ポイントも増えた。中小製造業の2社に1社が潜在的「ゾンビ企業」ということになる

     

    韓国の労組組織率は、10%強である。残りは未組織労働者だ。この10%強が、腕力に物言わせて「厚遇」を得ている。その煽りで、未組織労働者が泣かされている。文政権は、このことに全く気付いていない。独り善がりなのだ。

     


    (4)「最低賃金の引き上げと労働時間の制限は火に油を注いだ。フレームメーカーの経営者Dさんは「通貨危機当時は政府が企業支援に取り組んだが、現在は政府が製造業の事業をさらにやりにくくしている」と指摘した。金型メーカーの社長は「製品価格が韓国の半額の中国企業と競争できたのは、韓国が昼夜分かたずに工場を稼働し、納期を2030日早めることができたからだ。労働時間の週52時間上限制で『納期』という唯一の武器まで奪われた」と話した。

     

    (5)「このメーカーは苦肉の策として、52時間上限制の適用を回避するため、従業員を58人から49人に削減した。豆腐業者を経営するEさんは「最近2年間で最低賃金は30%上昇したが、納品単価は1015%低下した。妻と息子、娘だけの家族企業になってしまい、『社長』と呼ばれるのもきまりが悪い」と語った。

     

    最低賃金の引上げや、労働時間の短縮は正しい目標である。問題は、実施するタイミングである。それを全く考慮せずに一律に実施する。この書生っぽさが、失敗の原因である。政治が成熟していないのだ。何をやり出すか分からない政府である。

     

     

     

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    韓国の朴槿恵前大統領への贈賄罪などに問われた、サムスン電子副会長の李在鎔被告(51)の差し戻し審が昨年10月、ソウル高裁で始まった。大法院(最高裁)は8月、李被告を懲役2年6月(執行猶予4年)とした二審判決を破棄したからだ。差し戻し審では、量刑が重くなるとの見方が一般的である。だが、文在寅大統領は就任以来4回も李被告と面会している。また、サムスンを称える演説もしている。これは、高裁に向けて「執行猶予をつけろ」というメッセージとみるべきだ。

     

    大法院は一昨年10月、徴用工賠償問題で日本企業へ支払い判決を出した。文大統領は、この2ヶ月前に徴用工問題が人権問題であり、時効はないと演説したのである。大法院に対して、「日本企業への賠償判決を出せ」というメッセージであったのだ。韓国では、大統領が絶対的権力者である。皇帝である。その意に背いた判決は出しにくいのだ。

     

    こういう韓国特有の権力関係から言えば現在、進行中の差し戻し審はきわめて興味深いのである。私には、執行猶予をつける準備が進んでいるように思えるのだ。

     


    『日本経済新聞 電子版』(1月24日付)は、「サムスントップ悩ます『異色』判事、仰天発言の真意」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の朴槿恵(パク・クネ)前大統領への贈賄の罪に問われたサムスン電子トップの李在鎔)被告の差し戻し審で、ソウル高裁の判事が李被告に投げかけた発言が波紋を広げている。

    (1)「ソウル高裁で開かれた差し戻し審の初公判で、鄭晙永(チョン・ジュンヨン)部長判事は「サムスンに総帥も恐れる監視制度があったなら、こんな犯罪は考えもしなかったはずだ。米大企業の順法監視制度を参考にしてほしい」と李被告にこんな注文をつけ、さらにこう続けた。「審理が進む間も総帥としてやるべき仕事をしてほしい。1993年、51歳だった李健熙(イ・ゴンヒ=李被告の父)総帥はフランクフルトで新経営を宣言して危機を克服した。2019年、同じ51歳になった李在鎔総帥の宣言は何か」。鄭判事が引き合いに出したのは「フランクフルト宣言」と呼ばれる、李会長が93年に幹部をフランクフルトに集めてぶった演説だ」

     

    李健熙氏が、かつてドイツ・フランクフルトに役員を集めて、製造業として当然の「品質第一宣言」を行い、社風を一変させた有名な話だ。裁判長は、李副会長に向かって社風一変の策を聞いたのである。

     

    (2)「鄭判事の発言は、李被告に経営者として会社を変える覚悟があるのかを問うた格好だ。鄭判事は126日の第3回公判ではこう尋ねた。「被告人は(大統領からの)拒絶できない要求に応えたと主張する。ならば今後、権力者から同じ要求を受けたら同じように応えるのか。どうしたら防止できるのか。次の期日までに意見を出してほしい」。判事の問いかけに、李被告はさぞかし戸惑ったはずだ。だが、判事の求めに応えないわけにはいかない。サムスン側は回答を用意した」

     

    裁判長は李被告に対して、時の大統領から要求を受けても、それを敢然と断る「防衛策」を聞いている。この辺りに、すでに「執行猶予づき判決」を予想させるものがある。

     


    (3)「20年の仕事始めの12日、李被告は社内向けのスピーチで社員に語りかけた。「誤った慣行と思考は果敢に廃し、新しい未来を切り開こう」。サムスンは「順法監視委員会」を設置することも決めた。弁護士や検事出身者、大学教授ら7人で構成し、系列会社も含むグループの法令違反を調査する。委員長に就任した金知衡(キム・ジヒョン)元大法院(最高裁)判事は9日に記者会見し、「サムスン側の介入を完全に排除し、倫理経営の番人役を果たす」と語った」

     

    サムスンは、「順法監視委員会」を設置することも決めたのである。第三者の独立委員会にサムスングループ全体の法令違反を調査させる権限を持たせるという。自浄作用を果たす委員会だ。

     

    (4)「1月17日の4回目公判。サムスン側の弁護士は同委の概要と設置の狙いを説明した。鄭判事は「サムスンによる国民との約束だが、守られるか疑問を抱く人もいるだろう。厳しく徹底的に点検する必要がある」と述べ、独立した第三者の専門家を専門審理委員に指名し、点検するしくみを提案した。黒いスーツに濃いグレーのネクタイ姿の李被告は発言せず、緊張の面持ちでじっと耳を傾けていた。公判でのやりとりは、起きた事実に照らして量刑を判断する一般的な裁判とはずいぶん違ってみえる」

     

    下線部分は、「出来レース」である。裁判所が、「介入」する必要があるだろうかと疑問を持たせるほどだ。裁判所がここまで踏込んでくれば、「贈賄再犯」の恐れはかなり軽減されるはず。つまり、李被告に「執行猶予」をつける条件はすべて整ってきたと言えよう。後は、どういう判決になるのかを待つだけだ。

     

    李被告には、なぜ「執行猶予」が必要なのか。サムスンは、韓国経済を支える「一本柱」である。このサムスンのトップを収監したならば、韓国経済は漂流せざるをえないほど弱体化している。「反企業主義」の文大統領といえども、この程度のことは分かっているはずだ。韓国社会全体が「執行猶予づき判決」を納得するには、「贈賄再犯」を防止するシステムをつくることが先決と見ているのだろう。


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    武漢市で起こった新型肺炎は、感染者が日ごとに増えている。すでに二次感染、三次感染の段階に移行した。武漢市へ旅行したことがなくても発症しているのは、二次感染、三次感染を物語っている。まさに、爆発的な感染域の拡大である。

     

    たまたま、春節(旧正月)の時期と重なるという不運も手伝い、ピークは2月になるとの見方さえ出始めた。WHO(世界保健機関)は「緊急事態」宣言に慎重であるが、中国以外の国々への感染がさらに広がれば、いつまでも「事態静観」では済まされまい。

     

    『大紀元』(1月24日付)は、「新型肺炎、2月にピークか、2次―3次感染が起きているとの報道」と題する記事を掲載した。

     

    中国湖北省武漢市を中心に発生した新型肺炎に2次感染と3次感染の事例が報告されたことが明らかになった。中国の専門家は2月が感染のピーク期になる恐れがあると指摘した。中国当局の発表によると、12324時までに、青海とチベットを除く29の省と市で、新型コロナウイルスによる肺炎の感染者830人が確認され、死亡者25人にのぼった。

     


    (1)「米CNN23日付によれば、新型肺炎の情報収集に当たっている世界保健機関(WHO)のデイビット・ハイマン博士は、「2次感染と3次感染が起きている」と話した。中国疾病管理予防センターの元副主任の楊功煥氏は23日、中国メディア『界面新聞』に対して、「2次感染の症例が報告された。症例が増えている。20202月が感染拡大のピーク期となると推測」と述べた。楊氏によると、上海市と広州市では2次感染の症例が報告された。感染者は武漢市への訪問歴がない

     

    武漢市への訪問暦がない人が、上海と広州で発症しており、あきらかに2次感染である。これは、爆発的な患者発生の前兆であろう。菌が変異していることを伺わせている。まだ、特効薬がない段階だけに、「自然鎮火」を待つしかないのだ。今後も、感染患者が増え続け、2月ピーク説が出ている。

     

    武漢市の防疫体制は不完全とされている。SARSの病原菌を突き止めた香港大学教授・管軼主任は、「今回の状況に恐怖を感じた」という。これまで「鳥インフルエンザ、SARS、A型インフルエンザウイルスのH5N1亜型、豚コレラ」を経験した同氏は、今回の武漢肺炎について、「強い無力感に襲われた」「今回の感染規模は控えめの試算でもSARSの10倍以上だ」「現在、感染源は全面的に広まっている」などと述べている(『大紀元』1月24日付)。この超専門家の意見に耳を傾けるべきだろう。

     

    (2)「中国疾病管理予防センターの元副主任・楊功煥氏は取材中、中国当局が新型肺炎の情報を隠ぺいしていると批判した。「政府系メディアは、真実を話さない人が『千古の罪人』だと宣伝しているが、実際に、今回多くの医療従事者が感染したという事実も長い間隠され、最近やっと報道された」。楊氏は2003年重症急性呼吸器症候群(SARS)の大流行の際、国の防疫対策に携わった。「当時SARSの感染が爆発的に広がったのも、最初情報隠ぺいがあったからだ」。一方、中国衛生当局、国家衛生健康委員会は23日、「新型コロナウイルスによる肺炎の感染診療方案(試行第3版)」を各地政府に公布した。これによると、一部の重症、また危篤状態の患者が「熱は高くない」、あるいは「明らかな発熱がみられない」という

     

    下線部分のように、重症患者でも発熱が見られないという特色がある。それ故、医師が見誤るケースも出ており、これが感染域を広げる結果になっているのかも知れない。「新型」と言われるゆえんだ。ベテラン医師でないとすぐには見抜けないかも知れない。

     

    中国は、これから経済的にどの程度の被害を受けるのか。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月24日付け)は、「新型肺炎、中国経済の打撃はSARS以上か」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「帰省や海外渡航のために数億人が移動する春節を前に、中国は恐ろしい呼吸器感染症と再び戦っている。良いニュースは、湖北省武漢市で発見された新型コロナウイルスが今のところ重症急性呼吸器症候群(SARS)のウイルスほど悪性ではないようにみえること。SARSウイルスは武漢のウイルスと似ており、動物から人に感染する。2003年に広東省で流行し、最終的に700人以上が死亡した」

     


    (4)「悪いニュースは、高速鉄道をはじめとする中国の交通インフラが03年のSARS流行時よりもはるかに充実しているため、ウイルスが急拡大していると考えられることだ。中国経済も、2000年代の初めに比べてサービスや消費支出への依存度がかなり高くなっている。03年の流行のピーク時には、小売売上高の伸びが前年比で半分ほどに落ち込んだ。そのため、中国経済はSARSに見舞われた時よりも無防備だ。当局がいかに迅速に感染拡大を制御できるかが鍵になるだろう」

     

    武漢肺炎は、SARSよりも致死率で悪性でないという。ただ、感染地域の拡大と感染者増加は、経済活動(個人消費)に大きな影響を与える。特に、武漢肺炎は春節時期と重なっているので、個人消費への影響は不可避だ。実は、SARS(2002~03年)の時は、名目民間最終消費支出の対名目GDP比にはっきりと影響が出ていた。この実態を見れば、「影響軽微」とは言えまい。

     

    名目民間最終消費支出対名目GDP比率

    2000年 46.86%

      01年 45.75%

      02年 45.25%

      03年 43.16%

      04年 41.14%

      05年 40.16%

      06年 38.33%

       (資料:国連)

     

    02~03年を境目に、個人消費である名目最終消費支出は、45%ラインを下回り、2018年の38.68%に至るまで回復できずにいる。これは、GDP下支えでインフラ投資や不動産開発投資に依存した面もあるが、SARSの爪痕を感じる。

     

    今回の武漢肺炎は、春節に重なっている。これは、個人消費が最も盛り上がる時期に水をかけるに等しく、GDPへの影響は「甚大」と見なければならない。米中貿易戦争は、「第1段合意」で、「半休戦」にこぎ着けた。だが、武漢肺炎がそれに、水をかけることは確実である。習近平氏は、次々と思わぬ事態に遭遇しており、持って生まれた「運」を使い果たしたようである。

     

     

     

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    文大統領の任期は、2022年5月である。仏のマクロン大統領と4日違いだ。任期は、双方5年である。どちらが業績を上げて退任するか。興味深いものがある。マクロン氏は、強大な労組と対決して経済再生を図っている。文大統領は、巨大労組の顔色を伺い最低賃金の大幅引上げによって、経済破壊に進んでいる。

     

    この対照的な二人の大統領を比較すると、政治家としての度量の違いが浮かび上がる。文氏は、国家の利益を忘れて、ひたする自らの支持基盤の労組へ忠実に振る舞っている。マクロン氏は、フランス経済再興のために、反対勢力を説得しながら進んでいるのだ。どちらの国民が幸せか。言うまでもあるまい。

     次に、両国の実質GDP成長率を比較したい。

     

            フランス   韓国

    2014年   1.0%   3.2%

      15年   1.1%   2.8%

      16年   1.1%   3.0%

      17年   2.3%   3.2%

      18年   1.7%   2.7%

      19年          2.0%


    フランスは2017年、マクロン大統領になってから実質GDP成長率は、それ以前の1%強から抜け出た感じで2.3%や1.7%になっている。経済改革が功を奏し始めているのだ。韓国とは対照的である。上り坂のフランスと下り坂の韓国である。

     

    『中央日報』(1月24日付)は、「メシアはいない」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のイ・ジョンミン論説委員である。

     

    相次ぐデモに苦しんでいるフランスのマクロン大統領の評価が韓国で急上昇している。保守政権10年の「積弊」と積弊清算を呪文のように唱えながら執権し、「新積弊」を生み出した進歩政権に失望した韓国の人々に清凉剤となっている。

     

    (1)「マクロン大統領は2017年、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と4日の差で就任した。マクロン大統領は経済・産業・デジタル相を辞任し、「アン・マルシュ」を結成して大統領選挙で当選した。左派でも右派でもない中道を標ぼうして旋風を起こした。「過去の数十年間、左派・右派政治家は公共支出を増やし、未来の世代に負担を押しつけた。現実に立ち向かう勇気がなく、子どもたちに耐えがたい負債を押しつける卑怯な行為をした」。フランスを低成長・高失業の泥沼に陥れた政界の無能を攻撃し、「フランス病」の治療を訴えた39歳の青年の覇気に有権者は喝采を送った」

     

    下線部分は、文政権にそのまま当てはまる。経済の失政をすべて、財政支出で隠しているからだ。韓国は、健全財政路線を歩んできた。文政権になって、すべて財政支出でカバーする「ポピュリズム」政治に落込んで恥じず、だ。国家財政を食い物にしている政権である。

     


    (2)「マクロン大統領の真価は、「雄弁」でなく「実践」で表れた。執権するとすぐに富裕税廃止、法人税引き下げ、福祉予算削減を一瀉千里に進めると、2018年には油類税引き上げまで断行した。パリ郊外に暮らして自動車で出退勤する中産層・庶民が油類税引き上げに反発した。自動車事故に対応するため車内に義務的に備えている蛍光色の黄色いベストを着た運転者のデモは、マクロン退陣運動にまで広がった。支持率は20%台に落ちた。しかし失業が減り、景気が反騰したことで、危機から免れた。「解雇しやすい環境」を作ったところ、企業の雇用が回復したのだ

     

    下線部分は、抵抗を受けやすい政策である。既得権益をはぎ取るからだ。既得権益を維持すると、財政硬直化を招く。「働かざる者は食うべからず」という原則を打ち立てる。それが、経済を活性化させる道だ。韓国は、労組に新たな既得権益を与えてご機嫌伺いをしている。最低賃金の大幅引上げがそれだ。労働市場の流動化とは、「解雇しやすい」環境づくりだ。企業はこれをテコに、新部門へ挑戦する余裕が生まれる。こうして、一斉に新部門へ取り組めば、結果として雇用増に結びつく。労組的な発想では、雇用増が実現不可能なのだ。

     

    (3)「今度は年金改革に注力している。「より多くの労働をしてより少なく受ける」年金改革は歴代政権がすべて失敗した深刻な問題だ。抵抗は全国民的だ。フランス鉄道労働組合は過去最長ストライキ記録を連日更新している。マクロン大統領は退職後の大統領特別年金(月2500万ウォン)を放棄する背水の陣を敷いて労働組合を説得している。国家大討論会を開き、労働組合と向き合った。自身を「企業寄り」と攻撃する労働者の前で、はっきりと犠牲を要求した。「仕事をせずにより多くのお金を稼ぐことはできない。税金を減らして政府の支出を増やすことはできない」。「企業を守らず労働者を保護できると考えるのは間違っている」と指摘する

    韓国労組は、「仕事をしないが、雇用を保障して、年功賃金を払え」という虫の良い要求をする。これは、高度経済成長期に実現できたが、低成長経済では不可能である。経済環境の変化を理解しない韓国労組に、どうやって現実の厳しさを教えるか。心情的に最も近い立場の文政権が、説得する以外にない。文政権は、労組を説得するどころか煽っている。韓国与党には、「ステーツマン」が一人もいないのだ。

     


    (4)「マクロン改革の成敗を予測するのは容易でない。しかし票が減ることを覚悟しながら国民に犠牲を要求する指導者の堂々とした態度とリーダーシップがマクロン大統領を輝かせる。選挙ではなく国家の明日を考える政治家らしい品格だ。キッシンジャー元米国務長官の警句を思い出す。「この時代の根源的危機の兆候は、国民に犠牲を要求する指導者が登場しなくなったところにある」。意味深長な言葉だ」

    文氏は、保守派を毛嫌いしている。これでは、大統領の資格がない。進歩派がいれば、必ず保守派が存在するもの。健全な世論は、そういう中でバランスを取りながら形成されるのだ。文氏の希求する「進歩派で永久政権」は、進歩派独裁体制を意味する。もっとも危険な道を「党利党略」目的で突き進んでいる。マクロン大統領の念頭には、フランス国民とともに歩む理想図がある。文大統領には党派性しかないのだ。


     

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