勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    新聞・テレビでは連日、自民党総裁選挙報道で盛り上がっている。次期首相候補だけに、関心が高まるのは当然である。株価は、すでに新総裁への期待感で上昇している。日本のことなら、日本人以上に関心を持つ韓国紙が、河野当選説を報じている。その根拠を聞いてみた。

     

    『中央日報』(9月19日付)は、「『河野突風』に全組織フル稼働…『隠居』の危機に追いやられ安倍前首相は緊張」と題する記事を掲載した。

     

    「最近安倍前首相の地元の山口県は緊張している」。安倍晋三前首相と近い日本政界関係者が耳打ちした話だ。29日の自民党総裁選挙までと10日。現在の構図は岸田文雄(64)、河野太郎(58)、高市早苗(60)、野田聖子(61)の4氏による争いだ。特に「河野突風」が尋常でない。こうした中、選挙戦中盤まで安倍氏の政治的基盤である山口まで党員投票で河野氏に有利に展開しているというニュースは安倍氏を衝撃に陥れたという。「全組織フル稼動令」が出されたという。



    (1)「安倍氏はすでに保守指向が強い高市氏を支持する意向を明らかにした状態だ。ただ高市氏が本当に1位で総裁になるだろうとは考えていないというのが支配的分析だ。ひとまず高市氏を登板させ1回目の投票で河野氏の過半数得票を阻止した後、決選投票では岸田氏に票を集めるというのが96人を抱える最大派閥である細田派の戦略だ。「1回目の投票で高市氏に60票、岸田氏に30票を配分」という具体的計画まで立てた状態とされる。細田派の最大実力者が安倍氏だ。ただ福田康夫元首相の長男である福田達夫氏(54)を中心にした少壮派6人は河野氏支持で離脱したという」

    世論調査でも、河野支持がトップである。この勢いが、最後まで持つかどうかだ。

     


    (2)「1回目の投票は現役国会議員383人と地方党員383人の同数で行われる。大衆的人気が高い河野氏は地方党員票で大きく上回る見通しだ。ただ過半数の確保に失敗し決選投票に入ることになれば国会議員票は383票でそのままだが地方党員票は47票に大きく減る。都道府県別に1票だけ与えられる。そうなると国会議員票で自信を見せる岸田氏が逆転勝ちできるという分析が出ている」

     

    メディアの予想では、決戦投票に持ち込み「岸田当選」という青写真が大勢である。

     

    (3)「問題は、「もし決選投票に行っても河野氏が勝つほかない状況」(細田派関係者)という点だ。安倍氏の側近が伝えた中盤戦の状況はこうだ。「決選投票時の国会議員票をひとつずつカウントした。結果は岸田氏が10票ほどリードする。問題は地方票だ。47票でその割合は減るがこのうち実に43票が河野氏に入るとみられるという点だ。そうなると最終的に河野氏が20票差で勝利だ」。地方票の場合、決選投票で1回目と違う選択はできないためだ。47都道府県は決選投票に上がった2候補のうち1回目の投票時に多くの票を得た候補に1票を行使することになっている。現在岸田氏の地元の広島県と高市氏の地元の奈良県ほか2カ所ほどを除き河野氏の圧勝が予想される。特に注目すべきは、伊藤博文、岸信介、佐藤栄作ら全国最多8人の首相を輩出し、現在は「安倍氏王国」と呼ばれる山口県まで河野氏支持がリードしているという事実だ」

     

    河野氏が、地方票で広島(岸田)と奈良(高市)を除き圧勝すれば、そのまま決戦投票に反映される。これが、ポイントになるという。こういう分析は、初めて出てきた指摘である。



    (4)「安倍氏としては放っておけない状況だ。終盤の10日間に安倍氏がこれをひっくり返せない場合、来年初めの「細田派」領袖への復帰はおろか選挙後の急激な影響力低下で、隠居し退かなければならないだろうという危機感が安倍陣営を覆っている。麻生太郎元首相も派閥のトップの座を河野氏に譲り渡さなければならない状況になりかねない。どのようになろうが日本政界の「異端児」と呼ばれる河野氏が自民党総裁になる場合、およそ10年間の2A(安倍・麻生)、あるいは広く3A(安倍・麻生・甘利明元自民党政調会長)が主導してきた日本政治が河野氏を支持するSIN(菅義偉首相・石破茂元幹事長・二階俊博幹事長)中心の体制に再編される可能性が大きい」

     

    「河野当選」になれば、自民党は3A主導からSIN主導になるという。二階氏が引き続き勝ち馬に乗る構図だ。

     

    (5)「自民党関係者は、「河野氏が首相になれば11月初めに予想される衆議院総選挙を意識して大衆的人気が高い小泉進次郎氏(40)を官房長官に就けて若い人材を大挙登用するだろう。最大のカギは安倍氏・麻生氏と犬猿の仲である石破氏を自民党幹事長として起用するのかどうか」と指摘した。河野氏がもし首相就任後に石破氏を重用する場合、これは安倍氏・麻生氏に対する全面戦争宣言で見なされかねず、場合によっては安倍氏・麻生氏の「ハードコア保守」勢力と、河野氏とSINの「ソフト保守」勢力が党を分裂させかねないとの見通しも出ている。現実化すれれば1955年の創設後初の分党だ

    下線部分は、韓国紙らしく自民党の内紛を期待している様子である。

    (6)「河野氏が首相になれば脱原発、対中スタンス、女系天皇問題をめぐりどたばたするだろうという世論を広めるために「安倍氏の腹心」と呼ばれ政策の鬼才と知られる今井尚哉元首相補佐官(63)を岸田陣営に緊急投入した。財界にもSOSを打った状況だ。日本政界、さらには日本社会の「安定回帰本能」に訴えるという戦略だ。実際に「河野氏が首相になれば1年ももたない」といううわさが終盤戦になりきき始めている。日本経団連は16日に岸田氏支持を明らかにした。河野氏当選を阻止するための安倍氏の全方向の努力が果たして成功するのかに今後の日本政治10年がかかっているといっても過言ではない」

     

    下線部分は、日本では報じられていないようだ。「脱原発、対中スタンス、女系天皇問題」は、河野氏が立候補の弁と質疑の中で否定している。対中スタンスは、国民の総意である以上、変えられるはずがない。それは、日米関係の破綻である。河野氏が、自民党総裁に当選するかどうか関係なく、外相と防衛相の経験者である以上、そんな愚かなことをするとは思えないのだ。

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    中国の不動産開発企業大手の恒大集団は、金融危機に見舞われている。この20日に支払う銀行への金利を繰り延べる手続きをするほど窮迫状態である。問題が、対金融機関で止まっている段階は、まだ危機も本格化しないと見られる。ただ、高利の理財商品を約110社以上から借入れていることが判明している。ここへ、本格的に波及すると、事態は予断を許さない状態になるとみられる。恒大集団も理財商品の扱いについて神経過敏になっている。

     

    恒大集団は18日、グループで取り扱っている投資である理財商品の前倒し償還を受けた複数の幹部を処分したと発表した。投資家よりも早く情報を得る幹部の公平性を欠く行為は一段の批判を招きそうだ。

     


    グループ傘下の恒大財富の投資商品に関して、51日から97日の間に6人の幹部が前倒しで償還を受けていたことが判明した。償還を取り消し、厳しい処分を下したという。「公平性、公正性を確保し、(すべての人に対し)分け隔て無く振る舞う」とする。

     

    恒大は巨額の債務問題に揺れており、グループで取り扱う投資商品も焦げ付きが懸念されている。中国メディアなどによると12日には広東省深圳市の恒大本社ビルに数百人の投資家らが押し寄せて抗議した。投資商品が期限内に償還されなかったことのほか、グループ幹部が財産保護のために前倒しで償還を受けたとの疑念が広がっていたためとされる。以上は、『日本経済新聞 電子版』(9月18日付)が報じた。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月17日付)は、「中国の不動産バブルははじけたのか」と題する社説を掲載した。

     

    中国の習近平国家主席は次の課題として、経済面でこれまでで最も難しい離れ業に挑戦しようとしている。それは経済の崩壊を避けながら不動産バブルに穴を開けることだ。危険を感じ取るには、不動産大手の中国恒大集団(チャイナ・エバーグランデ・グループ)の状況を見てみるのがいいだろう。深圳市に本社を構え香港市場に上場している同社は、中国最大級の不動産開発業者だ。同社の負債総額は3000億ドル(約32兆9000億円)前後に上る。このケタ数はタイプミスではない。同社は債務の返済方法が分からないようで、返済計画を作成するため外部のアドバイザーを招き入れている。

     

    (1)「恒大集団は一部の債券や銀行融資についてデフォルトを認められる可能性があるが、中国政府には恐らく同社の全面的な崩壊を回避できる能力があるとみられる。中国は金融システムが比較的閉鎖されており、国有銀行が多くあるほか、法の支配が緩いこともあり、政府が企業再編の指揮をとりシステミックな崩壊を回避することが可能だ。しかし、この比較的明るいシナリオでも、経済は党が歓迎しないような痛みを感じる可能性がある」

     

    恒大集団の問題が、この金融機関レベルで止まっている間は、政府も事態の解決が可能であろう。だが、これ以上に炎が燃え広がり個人レベルへ拡大すると局面は変わると指摘している。ここが、重大なポイントである。

     


    (2)「主な問題は、どこに危険があるかを理解することだ。恒大集団の890億ドルの借り入れと債券発行による債務は、問題の一部に過ぎない。それよりはるかに大きいのは、同社がサプライヤーに負っている債務だ。債務の一部は現在、中国のグレーな金融市場を循環しているはずだ。そうした市場では、売掛金などの資産の売却が、普通の銀行融資の代わりになっている場合がある。恒大集団はまた、新築物件を多くの個人購入者に引き渡さなければならない。購入者はまだ完成していない物件について一部ないし全額を支払っており、購入のためにお金を借りた可能性もある。恒大集団絡みで誰がどれほどのリスクを負っているかを当局が理解するには、時間とかなりの労力が必要となるだろう

     

    下線部分が重要である。「借入金」として処理されていれば銀行マターだが、資材サプライヤーの「売掛金」になると手形として流通している。これが、最終決済されていなければ時限爆弾になって「爆発」する。当局が、このリスクを把握するには相当の時間がかかるので危険である、としている。

     


    (3)「一部の債権者たちは我慢できなかった。中国各地の恒大のオフィスでは、債権の返済を要求するサプライヤーや住宅購入者の抗議行動が起きた。抗議した人々の中には、恒大によって保証された資産運用商品である、
    いわゆる「理財商品」の投資家も含まれていた。この商品は、銀行の低金利な普通預金の代わりに家計部門が投資してきた規制の緩い金融商品である。現在、中国当局は抗議行動を抑え込む手段を持っているとはいえ、これは中国政府が恐れるある種の社会不安だ」

     

    理財商品は、中間層が購入している。この理財商品が現金で償還されなければ、不満として爆発する。当局は、これを抑え続けることは不可能である。社会不安に繋がるのは必至である。

     


    (4)「北京の住宅市場の冷え込みが続く中で、トラブルに直面する可能性が大きい他の不動産業者が出てくることで問題が何倍にもなり、それに加えてこうした事業者のサプライヤー、所有する物件の価格下落が見込まれる住宅購入者、融資を行った銀行も巻き込まれることを想定してみよう。中国版の「リーマン・モーメント」、つまり2008年の米リーマン・ブラザーズ倒産をきっかけとする金融市場の崩壊と景気後退に似た状況が起きるという説は時期尚早だ。しかし、中国政府が打ち出した信用部門の修正は、共産党中枢の政策立案者が考える以上に対処が難しい可能性がある

     

    事態が、恒大集団だけの不始末で終わればまだ救われる。だが、不動産全般への不安として拡大すれば、「燎原に火がつく」状態へ拡大する。まさに、「金融不安」や「取り付け」ということになりかねない。

     

    ましてや、現在の中国経済は最悪事態へ突入している。SNSで経済見通しの悪化を伝えるようなものは、すべて閉鎖されるという異常事態である。こういう中で、中小の不動産会社が倒産して物件を投げ売りすれば、万事休すとなろう。現在は、その瀬戸際に来ているのだ。不動産市況は、一斉に暴落へ転じる。収拾がつかなくなるだろう。

     

    この社説の「副題」は、「恒大集団の苦況は崩壊の始まりに過ぎない可能性も」とある。なかなか、意味深長なサブタイトルである。

     

     

     

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    中国の習近平国家主席が9月17日、第21回上海協力機構(SCO)会議に画像で参加して、「戯れ言」を発した。米国に向けて、「いかなる外部勢力の説教、内政干渉も受け入れない」と明らかにしたもの。一方で米国に対して、アフガニスタンの再建に責任を持てと王毅外相に発言させている。都合の悪いことは聞かず、資金の掛かることは米国に回すという身勝手さを見せている。

     

    『中央日報』(9月18日付)は、「習主席『外部勢力の説教・内政干渉を拒否』 『AUKUS』創設の米国に向け」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国外務省がこの日に公開した演説によると、習主席はこの席で「我々は我々のシステムに対する自信を強め、他国をあごで動かすように説教するのを決して受け入るべきではない」と述べた。続いて「外部勢力がいかなる口実でも内政に干渉することを決して許容せず、我々の未来と運命を自らの手で確実に統制しなければいけない」とも話した。さらに「国際問題の解決でいわゆる『優越な(力の)地位』から出発したり、覇権と覇道、懲らしめを強行したりしてはならない」と強調した」

     


    内政干渉という言葉は便利なものだ。海外からの批判を一切、遮断できるからだ。だが、普遍的な価値にもとる行為は保護されないのだ。習氏は、その区別ができず世界から批判されている。下線部分は、習氏が南シナ海や東シナ海で行っていることだ。それへの天誅が、民主主義国の同盟体から行われるのは当然のこと。習氏らしくなく、いつになく弱気になっている。

     

    (2)「こうした発言は、米国のバイデン政権が15日(現地時間)、英国・オーストラリアとインド太平洋地域の新たな安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」を創設した直後に出てきたという点で目を引く。SCOは2001年6月に創設され、中国とロシアをはじめ、インド、パキスタン、カザフスタン、ウズベキスタンなどが加盟する政治・経済協議体。イランはその間、準会員資格で参加してきたが、今回の会議で正式会員となった。中国がロシアやイランなど米国の牽制勢力を結集させる状況だ」

     

    インドは、以前の中国との関係が良かったころにSCOへ参加したが、今回は出席していないようだ。当然である。中印国境の紛争で、インド兵20名が中国兵に惨殺されたからだ。中国は、SCOメンバー国すら非情にも襲う国である。

     

    超強気の習氏が、珍しく「AUKUS」の結成に弱気を見せている。豪州が米英の最新鋭原潜で立ち向かってくる姿を想像して、「豪州を虐めすぎた」と後悔していることだろう。後悔先に立たず、だ。

    『ロイター』(9月18日付)は、「米、タリバンに向き合う必要 アフガン再建に責任=上海協力機構首脳」と題する記事を掲載した。

     

    中国とロシアが主導する地域協力組織の上海協力機構(SCO)は17日に開いた首脳会議で、米国に対し、アフガニスタンを掌握したイスラム主義組織タリバンに向き合い、同国に対する支援を実施するよう呼び掛けた。同時に、タリバンに対し他の民族出身者も含む内包的な政権を構築するよう訴えた。今回の首脳会議の中心議題はアフガニスタン問題。西側諸国が人道危機の回避に責任を負っているとし、とりわけ米国が役割を果たす必要があるとの考えが示された。

     


    (3)「ロシアのプーチン大統領は、「米国、および北大西洋条約機構(NATO)は、アフガニスタンに長く駐留したことで引き起こされた深刻な結果に直接的な責任を負っている」とし、「再建に関連する費用の大部分は米国とNATO加盟国が負担するべきだ」と述べた。その上で、タリバン暫定政権は薬物や武器の取引で資金を得ようとする恐れがあるとし、米国に対しアフガニスタン中央銀行の資産凍結を解除するよう呼び掛けた。中国の習近平国家主席は、現在の状況を引き起こした「特定の国々」がアフガニスタンの将来的な発展に責任を果たすべきとの考えを示した。ただ、米国を名指しすることはしなかった

     

    習近平氏は、下線部では米国名を伏せている。王毅外相は、米国を名指しでアフガン復興に協力(資金面)を迫っている。アフガンのテロ集団が、新疆ウイグル族救援に向かってくることを極度に警戒している結果だ。米国は、これを見越してアフガン撤退を敢行したもの。安易な協力をするはずがない。アフガンで中国を苦しめる、という戦術に立っているのである。

     


    (4)「各国首脳は同時に、パシュトゥン人を中心に構成されるタリバン暫定政権に懸念を表明。パシュトゥン人はタリバンの主要支持母体だが、アフガニスタンの人口に占める割合は半分以下。パキスタンのカーン首相が、タリバンは全ての民族が参加する内包的な政治機構を樹立する必要があると指摘したほか、プーチン大統領は「暫定政権では他の民族が代表されていないため、内包的と見なすことはできない。取り組みが必要だ」と述べた」

     

    一番気の毒な存在は、アフガンの国民である。人権弾圧の狂信集団が政権を握っているからだ。中国は、そこへ接近して「獲物」を探している。何ともみすぼらしく、恥ずかしい構図である。

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    韓国は、複雑な思いで9月16日(米国時間)に発表された米英が豪州へ原子力潜水艦技術を移転する計画発表を聞いたはずである。韓国も、原潜開発計画を立てており、米国へ内々技術移転の話を持ちかけていたからだ。

     

    米英豪三ヶ国な、「AUKUS」(オーカス)なる名称で軍事面など密接な関係を築くという。また、米国が豪州へ原潜技術の移転を行うのは「特別のケース」としており、韓国が同様な待遇を受ける機会はなさそうである。それだけに、「豪州優遇」が目立つ。その裏には、確固とした米豪関係がある。その点、米韓関係は北朝鮮次第で揺らぎ、さらに中国まで変数が多いのだ。

     

    『朝鮮日報』(9月17日付)は、「中国けん制のため 米英、原子力潜水艦の極秘技術を豪に移転」と題する記事を掲載した。

     

    米国が英国、オーストラリアと共に3カ国の新たな安保協力体「AUKUS」を立ち上げることを15日(現地時間)に正式に発表した。米国、日本、オーストラリア、インドによる4カ国連合体「クアッド(Quad)」に続きまた新たな対中けん制ネットワークが誕生する運びとなった。

     


    (1)「オーストラリア(A)、英国(UK)、米国(US)の頭文字を合わせた名称となったAUKUSは3カ国による初の協力事業として、オーストラリアに「原子力潜水艦艦隊」を立ち上げることにした。米国と英国が全面的に支援を行うという。米国が原子力潜水艦の建造に必要な原子力関連技術を他国に移転するのは、1958年に英国に移転して以来63年ぶりとなる。3カ国首脳はこの日発表した共同声明で「可能な限り早い時期にオーストラリアがこの能力を実戦配備できるようにしたい」との考えを示した。オーストラリアは近くアデレードで原子力潜水艦の建造を開始する予定だ」

     

    「AUKUS」という三ヶ国の名称を付けて、米英豪三ヶ国の結束を固めるというのは、「血は水より濃し」を象徴するようなケースであろう。米国が「とっておき」の原潜技術を豪州へ渡すのは、それなりの結束が必要なはずだ。韓国のように、中国との間で「二股外交」を行う国には絶対に移転するはずがない。

     


    (2)
    「米国がオーストラリアに原子力潜水艦技術の移転という破格の支援を決めたことは、「確実に米国側に立つことの手本を提示した」という意味合いもある韓国政府は昨年9月、青瓦台(韓国大統領府)国家安保室の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)第2次長を米国に派遣し「原子力潜水艦の建造に必要な核燃料の供給を米国から受けたい」との考えを伝えたが拒否されたという

     

    下線のように、韓国は昨年9月、米国へ原潜技術の移転を交渉して断られたという。韓国政府はこの事実を隠してきた。現在、韓国が進めている原潜計画では、米国からの技術移転を前提にしているが、米国が拒否した以上、自力開発しか道はなくなった。

     


    (3)「これについてバイデン政権のある幹部はこの日、ホワイトハウス担当の記者団に「この(原子力潜水艦)技術は極度に敏感なものだ。率直に言ってこれ(オーストラリアへの技術移転)は多くの側面で米国における政策の例外だ」と強調した上で「このようなことが今後別の状況で行われるとは予想していない。これはたった1回だけ行われることだ」と述べた。米中間で曖昧な態度をとり続ける韓国が米国から原子力潜水艦技術の移転を受ける望みはなくなったと考えられそうだ」

     

    下線のように、米国が虎の子技術を移転するのは極めて稀なケースとしている。韓国が、米韓一体の外交姿勢を取らず、「経済は中国、安保は米国」という使い分けしている状況では不可能であろう。

     

    『中央日報』(8月29日付)は、「韓国型次期潜水艦は原潜に決定、いまや政治的決断だけが残った」と題する記事を掲載した。

     

    韓国型原子力潜水艦が徐々に姿を現している。今年初めに原潜の作戦要求性能(ROC)が確定した。事業の最大の山場である燃料問題でも進展を見せている。今年が過ぎる前に韓国型原潜関連の公式発表が出てきそうだ。



    (4)「国産原潜を就航させるには、予算、技術、原子炉、核燃料が必要だ。予算と技術は問題にはならない。海軍が自主国防ネットワークに原潜導入検討を依頼した結果、原潜開発に7年が必要で、費用は1隻当たり1兆3000億~1兆5000億ウォンになると出てきた。韓国は張保皐I、張保皐II、張保皐IIIと潜水艦を相次いで建造し、関連技術を蓄積してきた。不足する技術は国内研究で埋め合わせたり海外から導入すれば良い。カギは原潜の心臓である原子炉と原子炉を稼動する核燃料だ。原潜の原子炉は韓国型小型原子炉であるSMARTを修正して使うものとみられる。この原子炉は旧ソ連の原潜の原子炉を基に設計された

     

    韓国は、原潜建艦に興味を持ち続けている。原子炉と核燃料をどのように調達するかでる。

     


    (5)「SMART原子炉は設計図にとどまっており、現在商用化を推進している。ソウル大学原子核工学科のソ・ギュンリョル教授は「SMART原子炉を土台にした韓国型原潜原子炉は4年以内に試運転できる」と話した。一部では米国や英国、フランスのようにすでに原潜を自力で作った国から技術とノウハウを学ぶ必要性が出ている。米国との協力は必須だ。特に原潜原子炉の動力源である核燃料がカギだ。韓米は米国産ウランを20%未満だけで濃縮でき、軍事目的に使用できないようにする内容の原子力協定を結んだ。米国の原潜は90%以上の高濃縮ウランを使う」

     

    韓国技術で原潜原子炉は4年以内に試運転できるという。このメドが立っているならば、米国からの技術導入を待たなくても実現できるはずだ。

     

    (6)「米国の態度は強硬だった。米海軍海上システムコマンドのジェームズ・キャンベル分析官は2019年のある討論会で「米国は韓国が同盟国であっても(原潜)技術を渡さないだろう」と話した。韓国はこれまで米国に旧型原潜を貸与または販売を執拗に要求した。しかし米国は自国の戦略資産である原潜を海外に売った前例がないという理由で拒絶した。ところが米ワシントンの雰囲気は変わっている。北朝鮮が原潜を開発すると明らかにし、中国を牽制するのに必要なため韓国の原潜保有を認めようという世論が米国議会でも出ている」

    韓国は、米国からの技術移転であれば、事故もなく安心して稼働できる。だが、米国は拒否している。韓国への信頼感が足りないのだ。韓国は、原子炉の自主開発が可能ならば、独自の道を進むしか方法はない。

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    米国が、中国の軍事的な弱点である潜水艦作戦に衝撃を与えた。豪州が、米国・英国との新たな安全保障協力の枠組みを通じ、原子力潜水艦の技術供与を受けることになったからだ。豪州は、10年計画で8隻の攻撃型原潜を建艦する。

     

    豪州のモリソン首相は9月16日、原潜配備が「防衛能力の向上へ最大の前進になる」と表明した。自由主義陣営の一員として、インド太平洋への進出を強める中国をけん制する姿勢を改めて強調した。モリソン氏は、「核武装を目指しているのではない」と述べ、核兵器を保有する可能性を明確に否定した。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月18日付)は、「
    米豪が原潜でタッグ、深海での中国の弱み突く」と題する記事を掲載した。

     

    オーストラリアが米国からの技術供与を受けて原子力潜水艦8隻の建造を決めたことで、米国は中国に対する制海権を強化できそうだ。また、インド太平洋における原潜による防衛網の構築を促し、中国の海洋進出に対する抑止力となる可能性がある。

     

    (1)「中国は今年の国防支出が2000億ドル(約22兆円)を超えるなど、近年急速に軍拡を進めており、海軍の規模では米国を抜いた。だが、米国は秘匿性の高い強力な潜水艦を有しており、水面下での優位性を維持している。米国は豪州に技術供与し、防衛関係を深化させることで、自国のアジア艦隊を事実上、増強できることになる。米豪両国は中国を抑止するという目標で一致している」

     

    中国の猛烈な軍拡に対して、米国は豪州への原潜技術供与で対抗する構図を明らかにした。中国の「戦狼外交」がもたらした破綻である。中国は、こうして周辺に敵対国をつくるという自滅の道を進んでいる。愚かという一言であろう。

     


    (2)「オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)の国防戦略・国家安全保障プログラム責任者、マイケル・シューブリッジ氏は「これらは極めて強力な攻撃兵器であるため、インド太平洋における長期的な軍事バランスがリセットされることになる」と指摘する。今回建造が決まった原潜は、他の潜水艦や水上艦を破壊する能力を持ち、豪州にとっては初の攻撃型潜水艦となる。
    実際に展開できるまでには10年以上を要する見込みだが、とりわけ原子力船など潜水艦の探知・破壊能力という中国の相対的な弱みの1つを脅かすことになる」

     

    豪州の建艦する原潜は攻撃型とされる。米英が、豪州原潜の運用面でも協力するので、米英豪の連合原潜部隊の出現になる。中国にとっての驚きは、一通りでないはず。中国は、これまで豪州へ経済制裁を加えて悦に入っていたが、その何十倍もの「お返し」を受ける身になった。

     


    (3)「米国防総省は昨年、中国の軍事力に関する年次報告書で、中国は海中戦闘能力を進化させているが、「深海での強固な対潜戦闘能力が引き続き欠如している」と指摘していた。中国は昨年、対潜軍事演習に関して異例の公表に踏み切るなど、潜水艦への反撃能力を改善しようとする意図をうかがわせている。米国防総省によると、米中は潜水艦の数ではほぼ肩を並べているが、米国が保有する52隻すべてが原潜であるのに対し、中国の攻撃型潜水艦62隻のうち原潜は7隻にとどまる。残りはディーゼル式攻撃型潜水艦で、ディーゼル式は排ガスの除去やバッテリー充電のために頻繁に海面に浮上する必要がある。原潜は速度でもディーゼル式に勝る」

     

    米国は、保有する海軍力の6割をインド太平洋戦略に向けると発表している。保有原潜52隻の6割は31隻である。これに豪州原潜の8隻が加われば、39隻になる。中国の原潜7隻に対して5倍強の布陣である。圧倒的に米豪の連合原潜部隊が優位に立つ。

     


    (4)「安全保障分野のアナリストは、中国台頭への懸念を背景に結成された「クワッド」と呼ばれる日米豪印4カ国による防衛協力の仕組みが強化されていることで、いずれはインド太平洋地域全体で各国の潜水艦隊の展開をある程度連携させていくのではないかと指摘している。インドは2018年に初の弾道ミサイル搭載原子力潜水艦を就役させており、ディーゼル電気攻撃潜水艦およそ15隻を保有する。一方、日本はディーゼル電気攻撃潜水艦およそ24隻を持っている。シンガポールの国際戦略研究所(IISS)のアジア太平洋安全保障担当アナリスト、ユアン・グラム氏は、豪州が南方に位置していることで、同国の潜水艦はインド洋の安全保障でインドとともに役割を担うことができると指摘する」

     

    インドは、ディーゼル電気攻撃潜水艦およそ15隻保有する。日本が同24隻である。中国にとっては、こうした劣勢挽回でロシアを引入れるであろう。

     


    (5)「潜水艦隊間の幅広いネットワークはインド太平洋における重要な貿易ルートを確実に開かれたものとし、マレーシアとインドネシアの間にあるマラッカ海峡といった航路の要所を守る一助となる。グラム氏は、このような取り決めには、軍事情報や諜報(ちょうほう)の共有に向けて大きく前進することが必要だと話す」

     

    米英豪三ヶ国の「AUKUS」(オーカス)と、日米豪印4ヶ国の「クアッド」が戦力を糾合すれば、中国は簡単に開戦の決断を付けにくくなろう。戦争抑止効果は、かなり大きくなるはずだ。

     

    (6)「ホワイトハウスによると、クワッドの4カ国首脳は9月24日、ワシントンで対面会談を行い、自由で開かれたインド太平洋の促進に向けた方策を協議する。豪州が潜水艦建造に要する何年もの間に、中国の軍事能力が向上するとの警告も専門家からは出ている。また豪州は潜水艦8隻が見込まれているが、一度に展開できるのは2~3隻となる公算が大きいという。しかしながら、地域の軍事バランスにおいては、なお重要性が高いと考えられている。豪有力シンクタンク、ローウィー研究所の国際安全保障プラグラム責任者、サム・ロッゲビーン氏は、「これはいかなる敵国にとっても重大な戦略的重みを持つ、大きな戦力となるだろう」と述べる」

     

    豪州の原潜が、一時に8隻全て揃うことはなくても、共同防衛への方向性が定まったという意味で、中国にとって重圧になるはずである。中国は、香港へ強引に「国家安全維持法」を導入し、「一国二制度」を破棄した跳ね返りが、こういう形で襲って来ている。習近平氏は、ここまで読めなかったであろう。全ては、身から出た錆である。

     

     

     

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