勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    次期WTO事務局長選は、アフリカ出身で女性の2候補が、有力候補となって浮上してきた。ケニアのアミナ・モハメド氏とナイジェリアのヌゴジ・オコンジョイウェアラ氏である。韓国出身の兪明希(ユ・ミョンヒ)氏は、米国と近すぎるということで、最終候補に残るのは難しい情勢という。

     

    ブックメーカー(賭け屋)のオッズやジュネーブの外交筋の予想では、前記の両氏が他候補より断然優位に立っている。これまで女性やアフリカ出身者がWTOの事務局長に就いた例はない。米中ともに意中の候補を明らかにしていないが、複数のEU高官の個人的見解によると、両国とも通商分野で優れた実績のあるモハメド氏に傾きつつあるという

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(8月4日付)は、「WTO次期トップ有力2候補、米主張の改革支持」と題する記事を掲載した。

     

    世界貿易機関(WTO)の次期事務局長選挙に出馬した2人の有力候補が、米国の抗議で機能停止に陥っている紛争処理制度の上級委員会や、さらなる弱体化が懸念されるWTO全体の改革に支持を表明した。

     

    (1)「8月末に退任するアゼベド事務局長の後任には、ケニアのアミナ・モハメド氏とナイジェリアのヌゴジ・オコンジョイウェアラ氏が有力視されている。両氏は英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)とのインタビューで、上級委が紛争処理手続きで本来の役割を大きく逸脱しているとの米国の批判について正当との認識を示した」

     

    ケニアのアミナ・モハメド氏とナイジェリアのヌゴジ・オコンジョイウェアラ氏は、米国のWTO批判を正統なものと認めた。WTO上級委(二審)が、現実を無視した判断を下してきたと批判している。

     


    (2)「WTOの紛争処理制度の最終審に当たる上級委は、米国が欠員の補充を拒否しているため機能停止に陥っている。低価格品の輸入に対抗して打ち出した規制をWTO協定違反だと繰り返し判断した上級委に対して、米国は強い不満を表明している。米国の批判は妥当かとのFTの質問に、ケニアの外相や貿易相を歴任したモハメド氏は「米国の懸念はもっともだ」と答えた。さらに「加盟国の大半が(上級委は)与えられた権限を逸脱しているとの認識を共有している」と述べ、加盟国はWTOのルールを作る権限を取り戻すべきだと主張した」

     

    前記の二人の有力候補者は、低価格品の輸入に対抗して打ち出した規制が、WTO協定違反だとしてきたWTO上級審の見解を否定している。これは、米国の見解であるが、EUも米国の見解に賛成している。

     

    (3)「同氏はまた、「上級委の委員は与えられた権限だけを行使でき、紛争当事国の権利の加減などはできないと理解する必要がある。そうした権利は加盟国間の交渉に委ねられてきた」と指摘。上級委が慣例として他の国や地域で争われた別の事例を援用し、意図的に先例を作ってきたのは「正しくなかった」と付け加えた」

     

    これまでのWTO上級委が、各国の事情でなく、意図的に先例を作ってきたことは間違いであると指摘している。

     


    (4)「オコンジョイウェアラ氏はナイジェリアの元財務相で、現在はワクチンの開発と接種を支援する国際官民連携団体「ガビ・ワクチンアライアンス」の理事長を務めている。同氏は米国の批判について「大半の人は彼らの主張に同意するだろう。上級委が加盟国間の合意を逸脱した事例もあったかもしれない

     

    オコンジョイウェアラ氏は、上級委が加盟国間の合意を逸脱した事例もあったかもしれないと認めている。上級委は、強い批判を浴びている。

     

    (5)「これまでのところ、各候補者は後継者への強い意欲よりも、自身の能力や政治的影響力の高さをアピールしている。モハメド氏とオコンジョイウェアラ氏が上級委の司法権限逸脱に関する米国の見解を擁護するのも、特に欧州連合(EU)などで米国に共感する声が高まったからだ。両氏はともにニュージーランドのWTO大使デイビッド・ウォーカー氏が示した上級委の改革案を議論のたたき台として提示している」

     

    WTO改革で、米国・EU・日本は三極構造で話合いを進めている。新事務局長が、WTO改革で努力すれば、中国の立場は苦しくなる。

     


    (6)「モハメド氏は外相時代にWTOで最も影響力のある一般理事会の議長を務めた経験があり、2015年にケニアのナイロビで開催された閣僚会議でも議長として輸出農産物への補助金撤廃の合意を実現した。「私は即戦力の候補者だ。すぐに全力で仕事に取り掛かる準備はできている」と同氏はFTに語った。モハメド氏また、WTOに「新風を吹き込むつもりだ」と述べ、こう付け加えた。「WTOの中枢で働き、制度がどう動いて加盟国間の相違をどう埋めるべきかを熟知し、政治的な才覚を持ち合わせ、他の閣僚との交渉をまとめ上げた経験もある人物が初めてWTOのトップに就くことになる」

     

    モハメド氏が有利な印象を受ける。

     

    (7)「そんなモハメド氏のライバルとなるオコンジョイウェアラ氏は元財務相という経歴から、通商分野は不案内ではないかとの疑念を持たれている。7月にWTO大使を前に行った演説で、その知識不足が浮き彫りになったと一部の出席者は証言する。しかし同氏はインタビューで「デミニミス(最小限)条項の対象外となる総合的計量手段(AMS)に関する質問か? (WTO農業協定の)62項に関してか?」などとWTOの農業補助金に関する専門用語を使いこなし、経験不足との懸念の払拭に努めた。そして、世界銀行専務理事として携わった経済開発やワクチン分野などでの豊富な経験を強調した。オコンジョイウェアラ氏は「WTOはもっと幅広い問題について議論すべきだ。新型コロナウイルス感染症はWTOが主導すべき大変重要な課題だ」と述べた」

     

    オコンジョイウェアラ氏も負けていない。新型コロナウイルス感染症は、WTOが主導すべき大変重要な課題だ、とも述べている。WHOのお株を奪うほどの元気さである。

     

    (8)「残る6人の候補者について言えば、エジプトのハミド・マムドゥ氏は政治的影響力に欠けるとの見方が多い。メキシコのヘスス・セアデ・クリ氏と韓国の兪明希(ユ・ミョンヒ)氏は地政学的に米国と近すぎると中国からみなされる可能性が高い。サウジアラビア、モルドバ、英国の各候補は大きく水をあけられている」

     

    残る6人の候補も優秀であろうが、今回のWTO事務局長は、「アフリカ」と「女性」がキーワードである。前記2氏が頭角を現しているのは、この「キーワード」にそうめんもある。

     

     

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    新型コロナウイルスの起源調査のため7月10日、中国・北京に向かった世界保健機関(WHO)の専門家先発隊2人の消息がようやく掴めた。当時、中国政府はWHO専門家到着したかどうかについても公開しなかった。隠密調査を余儀なくされたのだろう。

     

    『中央日報』(8月5日付)は、「『コロナの真実』探しに中国に向かったWHO先発隊、1カ月ぶりに伝えられた知らせは…」と題する記事を掲載した。


    (1)「WHOのクリスチャン・リンドマイアー報道官は4日、国連ジュネーブ事務所での会見で「先発隊は中国側と広範囲な討議をした。新型コロナウイルスが初めて発生した武漢のウイルス学者らとビデオ討論も進めた」と明らかにした事実をロイター通信が報道した。続けて「疫学研究、生物学と遺伝子分析、動物保健研究などに対する最新の情報を受け取った」と付け加えた」

     

    (2)「WHOは、先発隊が中国保健当局などと具体的にどのような内容を討議したのか、いつ後発隊を派遣し、後発隊の構成がどうなるのかなどについては明らかにしなかった。WHOの新型コロナウイルス起源調査は最大予算支援国だった米国が中国偏向性などを理由で脱退した後に政治的に敏感な事案となった。今回の調査はWHOが主導する事実上初めての新型コロナウイルス起源調査だ」

     

    後発調査隊については、テドロス事務局長が別途の記者会見で、次のように語った。

    「テドロス事務局長は、WHOが行っている中国での新型ウイルス感染源調査の第1段階が終了したと発表した。現在の調査チームはこれでミッションを終えるが、今後は中国の専門家も含めた国際的な専門家グループによって、さらなる調査が行われるという」(『BBC』84日付)。この報道内容を見ると、中国が調査に積極的でないことが分かる。何かを知られたくない、という意図が鮮明である。

     

    (3)「一方、米国政府はこれまで新型コロナウイルスが中国から始まったのに中国政府がこれを初期に隠蔽して世界的な大流行を引き起こしたという「中国責任論」を主張した。ウイルスが中国・武漢にある武漢ウイルス研究所から流出したという疑惑も提起し続けた。米国はまた、WHOのテドロス事務局長が2017年に選出された当時から中国と取引があり、中国に買収されたとも批判した。WHO加盟120カ国は、5月のWHO総会で新型コロナウイルスの起源調査を要求した。中国はWHOが関連調査を主導するがパンデミックが落ち着くまで待つべきと主張していた

     

    中国は、パンデミックが落ち着くまでWHO関連調査を待つべきと主張しているのは、時間の経過で原因調査が曖昧になることを狙っていることが窺える。中国が、新型コロナウイルスに発症国であるという責任を、なんら痛感していないのだ。無責任の極みである。

     

    なぜ、中国はここまでWHOの本格調査に非協力的であるのか。

     

    米国に亡命した中国人ウイルス研究者、閆麗夢(えん れいむ)博士が次のように語っている。「中国当局が中共ウイルスの由来、発生源についての真実、中共ウイルスの情報を公表しないのは、『国際社会にこのウイルスの実態を知られたくないからだ。同時に、各国のワクチン開発、治療薬の研究を長引かせるためだ』と批判した」(『大紀元』83日付)

     

    中国では、人民解放軍が昨年11月からワクチン開発に取り組んでいる。だが、治験の最終段階で3万人以上の治験者が得られず、完成ワクチンの域に達していない。そこで、必死になって、米国のワクチン研究成果のスパイ活動に力を入れている。こういう製品化の行き詰まりから、他国のワクチン開発を妨害させるべく、本格的なWHO調査隊の受入を渋っているのであろう。中国の念頭にあることは、自国のことだけである。他国の迷惑には考えが及ばないのだ。身勝手な国である。

     

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    中国は、一帯一路計画を餌にして発展途上国へ、過大な建設プロジェクト押し付けてきた。その挙げ句、支払いに窮すれば担保を取り上げるという「高利貸し商法」をやっている。EU加盟国のエストニアにもこの手を使おうとしたが「未遂」に終わった。さすがは、エストニアである。人口130万人とはいえ、EU加盟国である。国際情報に疎い訳がない。中国の前歴を調べ上げ、「怪しい」と睨んで、世界一の海底トンネル計画を中止したのだ。

     

    それにしても、中国はエストニアまで手を伸している理由は何か。

     

    2010年以降の北極域は、他の地域の平均と比べて2倍以上のペースで気温が上昇し、特に夏場の海氷域面積は縮小している。この結果、航路利用や資源開発の動きは逆に活発化した。特に目立つのは中国である。中国は18年、「北極近傍国家」を打ち出し、巨大経済圏構想「一帯一路」の一環として「氷のシルクロード」建設を掲げたのである。こうしてエストニアへ急接近することになった。

     

    中国の狙いはEU加盟国であるエストニアを介して欧州市場へのスムーズなアクセスを得ることとされている。また輸出入手続きを効率化できるデジタル技術の活用も視野に入れているという。中国が掲げる「一帯一路」はアジアと欧州、アフリカを陸路と海路で結び、そこに巨大経済圏を生み出そうという野心的な構想だが、エストニアは欧州へのゲートウェイとして中国にとって必要不可欠な存在になっている。

     


    普通ならば、こういう大事なエストニアに対して、慎重な対応をするはず。中国は、逆にエストニアを「カモ」にして大儲けを企み、それが露見して失敗したもの。この失った信頼を取り戻すのは難しいだろう。

     

    『大紀元』(8月4日付)は、「中国資本支援の『世界最長の海底トンネル建設計画』断念へーエストニア」と題する記事を掲載した。

     

    エストニア政府はこのほど、中国資本の支援を受けた、フィンランドの首都ヘルシンキとエストニアの首都タリンを結ぶ「世界最長の海底トンネル建設計画」を却下する見通しだ。

     

    (1)「エストニアのアーブ行政大臣はメディアに対して、「160億ユーロ(約1兆9961億円)もかかる巨額な建設費用の出所が不明瞭な上に、経済的、環境的、安全上の懸念が解消されていない。利用者数および貨物量の予測などについても不安が残っている」と理由を述べた。「話し合いを重ねてきたが、われわれの懸念解消には至らなかった。あらゆる点で国益に反する同プロジェクトを中止するよう政府に助言する」と付け加えた」

     

    約2兆円もする巨大プロジェクトである。採算計画では念には念を入れて計算するもの。その計算根拠が曖昧でエストニアから不審の念を持たれたのだ。発展途上国並みに扱って失敗したのであろう。

     

    (2)「2018年に行われたトンネル実現のための可能性調査によると、「2050年までに年間1250万人の乗客と400万トンの貨物が輸送可能だ」という。プロジェクトの建設費用が高いため、費用便益比はわずか0.45だった。エストニア政府は昨年8月から、同計画を疑問視していた。同国のタービ・アズ経済インフラ大臣はメディアに対して、「開発企業はいまだに利用者数をどのように算出したのかを説明できていない」と不信感をあらわにした」

     

    海底トンネルの費用便益比は、わずか0.45だった。費用1に対して、便益が0.45である。これは、中国式のインフラ投資の算式かも知れない。エストニアが、首を縦に振るはずがない。「中国の開発企業はいまだに利用者数をどのように算出したのかを説明できない」という、考えられない杜撰さであった。費用便益比は、1以上でなければ「事業」として成り立たないのだ。

     

    (3)「このプロジェクトは中国資本や中国企業からの支援を受けている。フィンランド・エストニア・ベイエリア開発会社は昨年、中国のタッチストーン・キャピタルから150億ユーロ(約1兆8714億円)の建設資金を調達した。また、中国鉄道国際グループ、その親会社である中国鉄道、中国交通建設からも支援を受けている。アーブ行政大臣は、「エストニアとフィンランドの公的機関が支援する別のトンネルプロジェクトに賛成している。 国境を越えたトンネルの設置は、両国の共同事業とその共通の意志があってこそ可能になる」と述べた」

     

    約1兆9961億円もかかる巨額な建設費用に対して、中国企業から約1兆8714億円の建設資金を調達した。ほとんど、中国丸抱えである。パキスタンでも、この方式で中国企業が受注した。その後、パキスタン側が工事費を再計算して、利息の二重計算や見積額にデタラメさが発覚して大問題になっている。多分、エストニアでもこれと同じインチキ計算がされていたに違いない。エストニアは、目ざとくそれを「発見」して、計画を白紙にして難を免れたのだ。

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    米国は、中国の海洋進出に備えて防衛線の再配置を進めている。これまで、朝鮮半島が軍事紛争の発火点と見てきたが、北朝鮮経済の疲弊からそのリスクが低下していると分析。南シナ海や東シナ海が、今後の防衛線になるとの結論に達した。これを踏まえて、在韓米軍の縮小を行なうという見方が強くなっている。

     

    『中央日報』(8月4日付)は、「在韓米軍の縮小、目を背けても迫る(中央日報)と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のナム・ジョンホ論説委員である。

     

    7月末、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)に在韓米軍縮小関連の記事が掲載され、議論を呼んだ。3月に米国防総省が在韓米軍縮小案をホワイトハウスに報告したという内容だった。すると韓国国防部側は「(この問題が)韓米間で議論されたことはない」と強調した。縮小の可能性はないというニュアンスだ。果たしてそうだろうか。この問題が韓米間の十分な議論を経て決定される事案なら正しいかもしれない。しかし歴史はそうではない。

    (1)「米国が韓半島(朝鮮半島)から米軍を抜いた(縮小)のはニクソン、カーター、ブッシュ政権当時の3度だ。ところがすべて韓国との議論なく一方的に決定した。決定の過程で韓国は影も見えない。したがって韓米間で話が出ていないからといって軍撤収はないという考えは妄想にすぎない。米政府が軍撤収を控えていつも韓国軍の戦力強化に努力した点も注目される。3人の大統領ともに米軍撤収による韓半島の安保空白が心配になったようだ。7月28日に宇宙ロケットに対する固体燃料使用制限を米国が解除したのが尋常でないと感じられるのもこのためだ。米軍追加縮小のための整地作業かもしれない」

     

    過去3回、在韓米軍は縮小されてきた。その際の共通現象は、韓国軍の戦力強化に努力したことである。今回は、米国が7月28日に宇宙ロケットに対する固体燃料使用制限を解除した。この措置を「尋常でない」と感じなければならないのだ。

     


    (2)「それだけではない。在韓米軍縮小の兆候はあちこちに表れている。7月29日に公式発表された在独米軍の3分の1縮小、そして同月21日に公開されたエスパー国防長官の発言も在韓米軍の縮小を予告する。エスパー長官はあるセミナーで「韓国から軍隊を撤収しろという命令を出したことはない」と述べたが、これを韓国メディアは縮小説を否認する発言と解釈している。しかしこれも誤解だ。当時、エスパー長官は「米軍の縮小や撤収を考慮しているのか」という質問に対し、撤収だけを否認した。縮小の可能性は残しておいたのだ。さらにエスパー長官は「米軍の最適化のためにすべての地域司令部の調整を検討中」と話した。脈絡上、完全に撤収することはないが、再配備という名で在韓米軍の一部を他の地域に送るという意味と考えることができる

     

    在韓米軍の縮小は、在ドイツ米軍の縮小と合せて米軍の再配置論と絡んであり得ることだ。韓国は、南シナ海問題について中国に遠慮して発言せずにいる。こういう韓国に対して、米軍がどのような印象を持っているか明らかだ。韓国の中国寄りを苦々しく見ているはずだ。

    (3)「これに関連して特に関心を引くのは、7月17日に発表された米陸軍戦略大学傘下の戦、略問題研究所(SSI)の報告書だ。このリポートを読むと、縮小は時間の問題という確信を与える。軍事専門家および現役将校の15人が2年間かけて共同作成したというこの報告書の核心は2つある。まず米国と中国の「超競争」がよりいっそう激しくなるのに対し、北朝鮮の脅威は弱まるというものだ。すなわち、今は米国の軍事力が上回るが、すぐに技術格差が消えて中国が追いつくということだ」

     

    中国軍の脅威が高まるが、北朝鮮脅威は減少する。米国は、こういう判断で在韓米軍を縮小して、海洋防衛に配置するというのだ。

     


    (4)「一方、北朝鮮の場合、深刻な経済難のため通常兵器の軍事力はしだいに弱まると、この報告書は予測する。このため北東アジアに集中している米軍をグアムなど南シナ海沖に配備するのが当然だというのが、この報告書の結論だ」

     

    北朝鮮の脅威は低下するので、在韓米軍をグアムなど南シナ海沖に配備するという戦略変更である。

    (5)「このように在韓米軍の縮小があす発表されてもおかしくない状況にもかかわらず、当局は傍観している。実際、李仁栄(イ・インヨン)統一部長官は人事聴聞会でこのように述べた。「在韓米軍の縮小や撤収に関して政府はいかなる立場も持っていない」と。必死に防ごうとした過去の政権とは完全に違う状況だ」

     

    韓国政府は、在韓米軍縮小の穴を埋める努力をしないどころか、反日で憂き身をやつしている。在韓米軍縮小の動きを傍観しているのだ。韓国外交部の金仁チョル(キム・インチョル)報道官は8月4日の定例会見で、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)に関して「日程にとらわれずにいつでも終了できる」との立場を示した。GSOMIAはますます必要になるにもかかわらず、「日本憎し」で正常な判断力を失っている。どこか狂っているのだ。


    (6)「もちろん在韓米国の縮小だけでなく完全撤収もいつかは終えなければいけない。とはいえ、国益のためにいつ、どのように推進するのがよいかは別の問題だ。明確なのは、我々の生命がかかる事案であり、在韓米軍の撤収は北朝鮮の全面的非核化と交換をするほどのカードとして活用しなければならないという点だ。そうではなくトランプ大統領の再選用サプライズショー程度として使用されるなら、これは取り返しがつかない国家的浪費だ。政府は今後の対北朝鮮交渉のためにもどうにかしてこうした惨事は防ぐ必要がある」

     

    在韓米軍縮小が不可避となれば、日本と争っている場面であるまい。そういう地政学的な配慮の全くできない国家である。



    ムシトリナデシコ
       

    中国は、世界中で自国の政治的影響力拡大に努めている。日本もその対象国である。だが、日本人の「中国嫌い」は世界でも並外れて強い。中国の対日浸透は、容易でないという報告が出た。米国有力シンクタンクCSIS(国際戦略研究所)の分析である。

     

    『大紀元』(8月4日付)は、「中国による対日工作、NPOや創価学会がパイプ役=米シンクタンク報告」と題する記事を掲載した。

     

    米国の有力シンクタンク・国際戦略研究所(CSIS)は721日、中国共産党による対日工作についての報告「China’s Influence in Japan」をまとめた。報告に当たって、関係者の取材から、共産党に対する融和姿勢を構築するため、NPO法人や宗教法人がそのパイプ役を担っていると指摘した。報告作成者はデビン・スチュワート氏で、CSISの元非常勤顧問。同氏による報告作成のために行った関係者への取材によると、中国は日中関係の融和的な関係構築のために、政治家や大手企業幹部、退役将校などを招いた日中フォーラムを利用していると明かした。具体的には、「東京・北京フォーラム」の名前が挙がった。

     

    (1)「2005年に設立された「東京・北京フォーラム」は、非政府組織「言論NPO」と、中国国営の出版最大手「中国国際出版集団」が主催している。フォーラムは、東京と北京で交互に開催され、ビジネス、政治、学術、メディアの各界から数百人の影響力のある参加者が参加する。最近のフォーラムは、2019年10月に北京で開催された。「アジアと世界の平和、発展を維持するための日中責任」というテーマに焦点が当てられた」

     

    2018年のフォーラムも同様なテーマにより東京で開催され、双方の政府あいさつは日本側が西村康稔(当時・内閣官房副長官)、中国側は程永華(当時・駐日本特命全権大使)だった。登壇者のなかには福田康夫・元内閣総理大臣で「東京・北京フォーラム」最高顧問、基調講演には、徐麟・中国共産党中央宣伝部副部長兼国務院新聞弁公室主任を迎えている。

     

    日中友好促進という儀礼的なレベルのフォーラムである。ただ、尖閣諸島を巡る日中対立が先鋭化する事態になると、こういうフォーラムの運営は困難になろう。その時、初めて真価が問われるはずだ。

     


    (2)「防衛研究所の増田雅之・地域研究部中国研究室主任研究官は、こうした日中フォーラムの影響は限定的だと指摘する。「日本の対中援助(ODA)の終了、日本社会における中国の好感度の低さ、外務省権力の縮小、首相官邸の権力の上昇を考えると、中国はずっと日本に影響を与えるための代替手段を模索してきた。しかし、特にロシアや中国の政府高官との接触には強い規制がある」と増田氏は言う。「中国は人民解放軍(PLA)が主催するシンポジウムの招待で、日本の退役将校との関係を深めようとしている。しかし、日本では民間人が政策の大半を握っているため、そうはいかない」。このため「中国が日本で影響力ある作戦を成功させるのは難しい」と結論づけた」

     

    日本のマスコミでも、「中国賞賛」ニュースを流すことは難しい。読者が、一斉に拒否反応を示すからだ。新中国当時、日本人は日中戦争への反省も手伝い「親中派」が圧倒的であった。その中国が、平和路線から外れ武闘派に転じて以来、「親中派」は僅かな存在になっている。

     

    (3)「国際台湾研究所のラッセル・シャオ執行長は2019年、米シンクタンク・ジェームスタウン財団の調査報告「日本での中国共産党の影響力作戦の予備調査」を発表。中国が日本で影響力を行使するために使用しているいくつかの中国共産党中央委員会の統一戦線工作部(統戦部)の手段について詳述している。シャオ氏は報告の中で、日本に影響を与えるために、孔子学院、日中友好協会、貿易協会、日本文化交流など、様々な統戦部の関係機関を列挙している。しかし、CSISの報告では、こうした在日中国組織の活動は「成功」していないとの見方を紹介している」

     

    法政大学の福田まどか氏は、CSISインタビューで次のように答えた。「日中友好協会は、日本人の中国文化に対する親近感を求めているが、対中感情の悪さから、日本人は協会の活動に参加しようとしない。また、協会の活動手法は日本の文化に合っていない」と指摘している。

     

    日本人は古代中国に興味を持つが、現代中国には拒否反応を示している。日本人の価値基準と外れすぎており、中国が世界の「攪乱国」というイメージであるからだ。

     


    (4)「日本は、中国に対して世界で最もネガティブな考えを持つ国として際立っている。2019年ピュー・リサーチの世論調査によると、日本人の中国に対する否定的な見方は、調査対象となった34カ国の中で最も高く、85%の否定的な見方を示した。法政大学の菱田正晴氏は、次のように分析する。「1989年の天安門弾圧、中国が社会主義の原則を守らなかったという日本左翼への裏切り、中国での日本人研究者の逮捕などに嫌悪感が強い」と話した。また、ネガティブな報道を求める国民の声に呼応して、ニュースも否定的な側面を報道するようになったと指摘した」

     

    日本人の中国観は、調査対象となった34カ国の中で、85%も否定的な見方を示している。むろん、世界一である。日本人の中国嫌いと韓国嫌いは、誰から強制されたものでもない。自然発生的である。中国の傲慢さが嫌いという人は多いのだ。これは、中国文化自体が持つ本質的欠陥である。世界の普遍的価値観から完全に外れた、「田舎文化」であるからだろう。この異端文化が、世界覇権を握ることは不可能である。心から賛同する国が、存在しないからだ。

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