勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    文政権時代は、中国の「魔術」に掛かったように万事、北京の顔色を伺っていた。だが、ユン政権は中国との距離を置きながら日米の推進するインド太平洋重視の外交路線へ切り変えつつある。

     

    韓国左派はロシアのウクライナ侵攻以来、少しずつ世界情勢の急変に気づき始めたようである。しだいに、中国重視という主張が弱まりつつあるのだ。こうした状況変化を受けて、韓国外交は本来あるべき外交路線へ戻りつつある。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月5日付)は、「韓国の外交、『インド太平洋』重視に転換 中国と距離」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が、東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係を強めている。自由や人権が基調の「インド太平洋戦略」で日本や米国と歩調を合わせ、経済協力の相手をインド太平洋の全域に広げる。中国とは距離を置く。日米への接近に慎重で中国や北朝鮮に配慮した文在寅(ムン・ジェイン)前政権との違いを鮮明にする。

     

    (1)「尹大統領は5日、初めて国賓として迎えたベトナムのフック国家主席とソウルの大統領府で会談した。韓国側によると、防衛産業やレアアース開発で連携を広げる方針を確認。包括的戦略パートナーシップをうたう共同宣言には、中国がほぼ全域の「管轄権」を主張する南シナ海の軍事化や現状変更に反対する考えを盛り込んだ。尹氏は会談後の記者会見で「ベトナムは韓国の『インド太平洋戦略』と『韓・ASEAN連帯構想』の核心的な協力国だ」と語った」

     

    各国は、米中デカップリングの影響を受けて、幅広く工場立地の再検討を進めている。台湾有事の際は、否応なく大きな余波を受けるからだ。韓国も、こういう視点から中国の顔色を伺っている余裕はなくなっている。韓国自身の国益に関わる問題であるからだ。

     

    (2)「ベトナムはASEANのなかで、韓国との経済的なつながりが最も深い。2009年にサムスン電子が携帯電話の組み立て工場をベトナムに建てた。スマートフォンに搭載する半導体などの輸出が増え、進出する韓国企業の裾野が広がった。尹政権は11月の国際会議で、半年かけて練り上げた対ASEAN戦略を打ち出した。外交の軸に据える「インド太平洋戦略」は、日米が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」の考え方と同じだ。尹氏はカンボジアの首都プノンペンで開いた東アジア首脳会議で「韓国は普遍的価値を守るインド太平洋(の構築)を目指す。自由や人権が尊重されなければならず、力による現状変更は認められない」と述べた。海洋進出を強める中国を念頭に置いており、その後の日韓首脳会談でも岸田文雄首相と連携を確認した」

     

    ベトナムは、中越戦争で中国の短期間の侵略を受けた苦い経験で、根強い「反中意識」を持っている。これが、西側諸国へと接近させている理由だ。国を挙げて「改革開放」路線を歩んでおり、インドとともにベトナムが、脱中国の受け皿になっている。韓国が、遅いとは言えインド太平洋へ外交基軸を広げることは当然なことである。

     

    (3)「日米韓で足並みをそろえるASEANでの立ち位置を明確にする一方、中国とは一定の距離を保つ構えだ。尹氏はバリ島で会談した中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席に「韓中関係を相互尊重と共同利益に基づいて発展させる」との考えを伝えた。尹政権のアプローチは、文前政権と異なる。文前政権は「新南方政策」と名づけたASEAN諸国との経済連携を掲げたが、外交的な立ち位置は曖昧だった。経済面で依存する中国を刺激するような言動は控えた」

     

    文政権の外交姿勢は、「ヌエ」的なものであった。「曖昧路線」が、国益に適うという考え方である。文政権の民族主義思想とも重なり合い、中国へは親愛の情を込めて接していた。これが、皮肉にも中国から軽んじられる理由になった。外交とは、難しいものだ。

     

    (4)「尹政権はASEANとの経済協力を巡り、「韓・ASEAN連帯構想」を掲げる。ベトナムやシンガポールに集中する韓国の投資をASEAN全域に広げ、電気自動車(EV)向けのリチウムやニッケルなど鉱物資源のサプライチェーン(供給網)を整備する考えだ。ASEANで韓国の存在感は高まっている。韓国の投資額は10年前の2倍に増え、K-POPなど「韓国カルチャー」の人気が韓国製品の市場を広げる追い風となっている」

     

    ユン政権は、はっきりと「インド太平洋」へ外交の舵を切っている。中国経済の後退を計算に入れれば、今が転換する最後のチャンスであろう。

     

    (5)「尹氏は11月、ASEANの首脳と個別に会談した。カンボジアのフン・セン首相とは、インフラ整備などにあてる経済協力基金の支援限度を15億ドル(約2000億円)に倍増する方針でまとまった。フィリピンのマルコス大統領とは同国への原子力発電施設の輸出を巡って協議した」

     

    韓国は、カンボジアにも外交の焦点を合わせている。フィリピンへも手を伸ばし始めた。文政権時代には見られなかった展開である。

     

     

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    中国はここ3年間、新型コロナウイルスに振り回され続けている。これまで羊のように温和しかった若者が、ついに「牙」を剥いて街頭へ繰り出し不平不満を公然と言い募る事態だ。アップル製品を組立てる主力工場(河南省鄭州市)では、労働者がコロナによる閉じ込めに反発し、工場を脱出して帰郷する騒ぎまで起こっている。こうした一連の騒ぎの中で、アップルは中国依存の生産体制に見切りを付ける段階になった。 

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月5日付け)は、「米アップル、生産拠点を中国外に移す計画加速」と題する記事を掲載した。 

    米アップルは生産拠点の一部を中国外に移す計画を加速している。協議に関わる複数の関係者が明らかにした。中国は同社のサプライチェーンで長らく支配的な地位を占めてきた。関係筋によると、同社はサプライヤーに対し、インドやベトナムなどアジアの他の国でアップル製品を生産することをもっと積極的に計画するよう伝えている。電子機器受託製造大手、鴻海科技集団(フォックスコン・テクノロジー・グループ)を中心とする台湾勢への依存を減らしたい考えだという。

     

    (1)「iPhone(アイフォーン)」シティーと呼ばれる中国・河南省鄭州市の大規模製造拠点での混乱がアップルの生産移転の加速につながった。フォックスコンが運営するこの工場では約30万人が働いており、iPhoneなどのアップル製品を製造している。市場調査会社カウンターポイント・リサーチによると、一時期はこの拠点だけでiPhone Proシリーズの約85%を製造していた。この工場では11月下旬、従業員による抗議活動が起きた。オンラインに投稿された動画では、賃金や新型コロナウイルス関連の制限に憤慨した従業員が物を投げ、「権利のために立ち上がろう」と叫んでいる様子が映っている」 

    鄭州市で、iPhone Proシリーズの約85%を製造していた。こうした一カ所での集中生産リスクが、今回の労働者の「大量帰郷」によって現実化した。このリスクを避けるのは、経営として当然である。

     

    (2)「アップルのサプライチェーンの関係者やアナリストによると、安定した製造拠点としての中国の地位を弱める出来事が1年にわたり相次いだ末に起きた今回の混乱で、アップルは事業の大部分を一つの場所に依存するのは問題だと考え始めた。フォックスコンの元米国幹部は「以前、人々は集中リスクを気にしなかった」と指摘。「自由貿易が標準で、状況は十分に予測可能だった。今は新しい世界に入った」と述べた」 

    中国では、これまでの低賃金と社会安定という二大要因が消えかかっている。厳格な社会統制のもたらした歪みである。アップルは、中国に代わる新たな生産拠点が求められる時代に転換していることを認識した。

     

    (3)「アップルのサプライチェーンに携わる関係者によると、対応策の一つは、中国に拠点を置く企業を含め、より多くの組み立て業者を利用することだ。アップルとの取引拡大を狙う中国企業としては、立訊精密工業(ルクスシェア・プレシジョン・インダストリー)と聞泰科技(ウィングテック)の2社が挙げられるという。ルクスシェアの幹部は今年行われた投資家との電話会議で、消費者向けエレクトロニクス製品企業の一部顧客が、コロナ対策や電力不足などによって引き起こされた中国のサプライチェーンの混乱を懸念していると述べた。企業名は明かさなかったが、これらの顧客はルクスシェアに中国国外の生産を増やす手助けをしてもらいたいと考えているという」 

    アップルは、鴻海(ホンハイ)と深いつながりを持ってきたが、新たに中国の二社とも関係を持ち、中国国外の生産に進出する。

     

    (4)「アップルが生産拠点を中国以外に移す動きは、中国の経済力を脅かす二つの要因によって進行している。中国の若者の中には、裕福な人が使う電子機器の組み立てを低賃金で行うことに抵抗感を抱くようになった者もいる。不満の原因の一つは政府の強引なコロナ対策だが、そのコロナ対策自体もアップルをはじめとする多くの西側企業にとって懸念材料だ。コロナの流行が始まってから3年たつが、他の多くの国々がコロナ禍前の日常に戻ったのに対し、中国はいまだに隔離などの措置で感染を抑え込もうとしている」 

    下線部こそ、中国が異質の社会であることを自ら証明した。「ゼロコロナ」という非科学的な措置を「中国式社会主義」として押し通す感覚は、完全に世界の動きからずれてしまっているのだ。

     

    (5)「中国の各都市で最近行われた抗議デモでは、習近平国家主席の退陣を求める声も上がり、コロナ対策の規制措置に対する批判が政府に対するより大きな運動に発展する可能性がうかがえた。加えて、中国の軍事力の急速な拡大や中国製品に対する米国の関税などを巡り、米トランプ・バイデン両政権下で米中間の軍事・経済的緊張が5年以上続いている」 

    中国は、台湾侵攻という地政学的リスクを抱えている。台湾有事になれば、中国での生産はストップしてアップルは大損害を被る。こういうリスクを計算に入れる段階になっているのだ。

     

    (6)「アップルのサプライチェーンに詳しい天風国際証券のアナリスト郭明錤氏によると、アップルの長期目標は、インドからのiPhone出荷割合を現在の1桁から40〜45%に拡大することだという。アップルのサプライヤーによれば、ベトナムはAirPods(エアポッズ)やスマートウオッチ、ノートパソコンなど他のアップル製品の製造をより多く担うとみられる」 

    インドからのiPhone出荷割合は、現在の1桁から40〜45%に拡大するという。インドが、いずれ中国に代わって主力工場所在地に踊り出ることになろう。ベトンナムは、iPhone以外のアップル製品を生産すると見られる。こうなると、中国は空洞化するはずだ。

     

     

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    プーチン大統領は、ウクライナ戦争解決の条件として、米国がロシアの支配地域を「新ロシア領」と認めず、妥協の可能性を妨げているとの立場を示した。ロシアのぺスコフ大統領府報道官が、明らかにしたものである。 

    こういう「虫のいい」条件に対して、西側諸国は一斉に非難を浴びせている。だが、プーチン氏にとっては、前述のような条件が受入れられるまで、粘りに粘って戦争を継続することで、西側諸国の「戦争疲れ」を誘い出そうとする意図は明白である。 

    ウクライナ東部バムフトの最前線では、ロシア軍兵士の奇妙な動きが頻繁に見られる。「ロシア軍が無計画に攻撃しているように見える。『装備や見た目、行動や動作から判断すると、ロシア兵は単にウクライナ軍の陣地近くへ忍び込み、走り、歩いているだけ。訓練された軍人が近くにいるわけでもなく、(ウクライナ軍への攻撃的)戦術もない』」という。 

    こうしたロシア兵の行動は、ウクライナ軍の標的になることで、ウクライナ軍の所在場所を探る目的と見られる。連日、これが繰返されており犠牲者を増やしているのだ。『ロイター』(12月5日付)が伝えた。

     

    『ロイター』(12月5日付)は、「プーチン大統領『和平協議に真剣でない』米国務次官」と題する記事を掲載した。 

    ヌーランド米国務次官は3日、ロシアのプーチン大統領はウクライナ市民への電力供給を断つことで戦争の野蛮さの度合いを増しており、和平協議について誠実でないとの見方を示した。 

    (1)「同次官は、ウクライナへの支持を示すためキーウ(キエフ)でゼレンスキー大統領らと面会。「誰もが当然、外交を目標としているが、前向きな相手が必要だ」と記者団に述べ、「エネルギー(インフラへの)攻撃であれ、ロシア大統領府の発言や態度全般であれ、プーチン大統領が(外交について)誠実でなく、用意ができていないのは非常に明白だ」とした」 

    プーチン氏は、和平について語るようになったが、真に和平を求めるという真剣なものではない。ただ、口先だけの「おしゃべり」に過ぎない。それは、和平交渉に値する内容でないからだ。

     

    (2)「バイデン米大統領は12月1日、プーチン大統領がウクライナ戦争の終結に関心を示せば協議する用意があると述べたが、ロシア大統領府は同国が宣言したウクライナ4地域の併合を西側が承認する必要があるとの立場を示した。ヌーランド次官はこれについて、ロシアが和平協議に「いかに真剣でないか」を示していると述べた」 

    ロシアは、あたかも「戦勝国のような振る舞い」で和平を口にしている。米国が、ロシアの占領した4州をロシア領と認めれば、和平交渉に応じるという、非現実的な空論を述べているに過ぎないのだ。 

    プーチン氏が、このように時間稼ぎの発言をしている裏には、プーチン氏がロシア国内のメディアを支配する数十年来の旧友を持っていることだ。これによって、ロシア国内の言論を抑えられるという自信に裏づけられていると思われる。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月5日付)は、「プーチン氏の最強兵器? 陰で支えるメディア王」と題する記事を掲載した。 

    ロシアのウラジーミル・プーチン大統領によるウクライナ侵攻の決定を後押ししてきた陰の実力者がいる。戦争でロシアの国力を証明できると訴えた富豪ユーリ・コバルチュク氏(71)だ。同氏はプーチン氏とは数十年来の旧友だ。強力な軍事大国であり、米国に対する文化的な対抗軸としてロシアをとらえる点でプーチン氏と共通する。コバルチュク氏を知る複数の関係者が明かした。2月の侵攻開始以降、コバルチュク、プーチン両氏は頻繁に会っているほか、電話やビデオを通じても連絡を取っている。コバルチュク家の友人や元ロシア情報当局者が語った。


    (3)「プーチン氏はかねて、信頼する側近らにロシアの重要産業の運営を任せてきた。だが、コバルチュク氏はプーチン氏との個人的な関係の深さや世論誘導で果たす役割という点において、突出した存在だ。財務情報や裁判所文書、元情報当局者や友人らへの取材で分かった。米財務省はコバルチュク氏を制裁対象に指定した2014年、プーチン氏の「お抱え銀行家」と呼んだ。また同氏はロシア屈指のメディア王で、プーチン政権のプロパガンダを拡散することの多いテレビ局や新聞、ソーシャルメディアを多数抱える」 

    プーチン氏の盟友コバルチュク氏は、プーチン政権のプロパガンダを拡散することの多いテレビ局や新聞、ソーシャルメディアを多数抱えている。プーチン氏は、この「御用メディア」に援護されて、負け戦も「勝利」のように報道され守られているのだ。

     

    (4)「ウクライナでの戦況が悪化すると、コバルチュク氏のメディア帝国は侵攻を絶賛するプロパガンダを大量に投下し、反政府派を弾圧。懸念を強める国民の注意をそらすなど、プーチン政権にとって一段と強力な武器になっている。シンクタンク「ストックホルム自由世界フォーラム」のシニアフェローでエコノミストのアンダース・アスルンド氏は、コバルチュク氏について「プーチン(氏)にとって二つの重要な役割を果たす」と解説する。「彼はカネとメディアを操る人物だ」と指摘する」 

    プーチン氏が、ウクライナ侵攻で時間稼ぎできるのは、盟友による「御用メディア」で守られているという自信によるものだろう。ウソ情報にダマされて真実を知らされないロシア国民は、いつ真相を知ることになるのか。

     

    テイカカズラ
       

    韓国のトラック運転手ストは、すでに10日を過ぎており、産業界での被害は3000億円を超えるほどだ。政府は、労組に対して業務復帰命令を出しているが、労組によるILO(国際労働機構)介入要請受託で新事態を迎えた。政府の業務復帰命令をテコにした、早期解決は難しくなっている。ストによる被害は、拡大される見通しだ。

     

    『ハンギョレ新聞』(12月5日付)は、「貨物連帯の要請に応じたILO、『直ちに介入』」と題する記事を掲載した。

     

    ILOは、貨物連帯のストライキに対する韓国政府の労働基本権侵害疑惑に対して、直ちに介入に乗り出した。 今回の措置は、民主労総がILOに「介入」を要請してから5日後に行われた。貨物連帯のストライキに対して業務開始命令の発動など強硬対応中の韓国政府は、国際社会から条約違反に対する懸念を表明されることになった。

     

    (1)「ILOの介入は、加盟国の労働組合などの要請があれば、ILO条約の内容と該当政府に対する従来の勧告、事案の深刻性を総合的に評価して行われる。ILOには「結社の自由委員会」のような監督機関が存在するが、これを通じた提訴や条約違反の有無に対する判断あるいは勧告までは時間がかかるため、事案が深刻で緊急な場合、事務局長の職権で当該事案に「介入」できるようになっている」

     

    ILOが、「介入」を決定したことは、政府の業務復帰命令がILO条約に違反の疑いがあるということである。となれば、ストライキは今後も継続される。

     

    (2)「今回の措置は、11月28日に民主労総、公共運輸労組、国際運輸労働組合連盟が「貨物連帯のストライキに関して韓国政府が業務開始命令を検討し代替輸送人材を投入したのは、ILOの『結社の自由および団結権の保護に関する条約(第87号)』と『強制労働に関する協約(だい29号)』の違反」だとして、介入を要請したことに伴うものだ」

     

    韓国の労組は、国際的に見ても十二分に団結権が保護されている状態だ。ただ、ILO自体が、労働者側に立つ機関であるから、労組に不利な決定を出すことは考えられない。現在のストライキは、今後も続くと見るほかない。

     

    『中央日報』(12月5日付)は、「韓国、物流まひ拡散 ガソリンスタンド休業続出 石油・鉄鋼業界の被害3兆ウォン」と題する記事を掲載した。

     

    韓国政府の業務開始命令後に物流量が少しずつ回復傾向を見せている港湾とセメント業界とは違い、石油精製、鉄鋼、石油化学業種では物流まひにともなう影響が雪だるま式に拡大している。秋慶鎬(チュ・ギョンホ)経済副首相兼企画財政部長官は、「石油精製、鉄鋼、石油化学などだけで3兆ウォン規模の出荷支障が発生した」と話した。

     

    (3)「産業への影響が大きくなると、この日尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は追加業務開始命令発動準備を指示した。韓国政府は石油精製と鉄鋼分野に対する業務開始命令発動準備を終えた。運送拒否する貨物ドライバーは原油価格補助金支給と高速道路通行料減免対象から除外することにした。運送拒否に対して退かないという意志を見せ政府が強硬策を出したのだ」

     

    韓国政府は、労組への業務開始命令の追加準備を始めた。ただ、ILOの介入決定で政府の命令は効力を失う。

     

    (4)「全国のガソリンスタンドのガソリン需給は、ますます悪化している。週末を過ぎてガソリンが品切れになったガソリンスタンドは全国で100カ所を超えると推定される。産業通商資源部によると、この日午後2時基準で全国の在庫がなくなったガソリンスタンドは88カ所だった。ソウルと京畿道(キョンギド)が54カ所と首都圏が最も多く江原道(カンウォンド)が10カ所、忠清南道(チュンチョンナムド)が10カ所、忠清北道(チュンチョンブクド)が6カ所などだった」


    ガソリンが品切れになったガソリンスタンドは、全国で100カ所を超えている。この被害がさらに広がらなければ、ILOは労働者の権利としてストを容認するであろう。

    (5)「石油化学業界はコンテナ運送人材確保と運搬などが困難となり出荷量が通常の5分の1水準まで急減した。10日間の石油化学業界の累積出荷支障量規模は約78万1000トンで、金額に換算すると1兆173億ウォンに達する。鉄鋼業界もやはり累積出荷支障規模が合計1兆ウォンを超えた。韓国5大鉄鋼会社であるポスコと現代製鉄、東国製鋼、世亜製鋼、KGスチールの出荷支障額だけで9000億ウォンに達する。ストが続き6月のスト当時より損失規模はさらに大きくなると予想している。特に中小鉄鋼会社は積載空間が不足し製鉄所内の道路や空き地に鉄鋼材を積み上げて持ちこたえなければならない状況に追い込まれた。世亜ベスチール関係者は「部分的に工場稼動を中止する側で対応する案を検討している」と話した」

    鉄鋼会社では、ストのために製品搬出ができず、操業停止に追込まれるケースも出てきた。ILOは、こういう状態をどのように判断するかだ。

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    ロシアは、30万人の動員令募集を終了したが、いつ再び動員令が出るか分からないことからジョージアへ出国した人たちは帰国しないという。ロシア国内の殺伐とした雰囲気を伝えている話だ。

     

    『ロイター』(12月4日付)は、「ジョージア避難のロシア人、動員完了後も帰国急がず」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアがウクライナ侵攻部隊の増強策として実施した部分動員の完了を発表してから1カ月が経過した。だが、招集から逃れようと隣国ジョージアへと脱出した多くのロシア人男性は、全く帰国を急いでいないという。

     

    (1)「ロシアのプーチン大統領は9月21日、ウクライナの一部でのロシア軍撤退を受けて部分動員令を発表。前線へ送られる懸念から、対象年齢にある数万人の男性がジョージアやアルメニア、カザフスタンなどの国へ向かった。ジョージア政府が発表した統計によれば、2022年に11万人以上のロシア人がジョージアへ避難した。こうした動きはジョージアに好景気をもたらす一方、反ロシア感情の強い同国内での反発も招いている」

     

    人口370万人のジョージアへ、ロシア人が11万人以上も緊急避難してきた。お陰で、ジョウージア経済は潤っている。ただ、ジョージアでは反ロシア感情が強いので、必ずしも「安住の地」とは言えないが、兵隊に取られる心配はないので、その点で天国である。

     

    (2)「ロシアのプーチン大統領やショイグ国防相が招集完了を発表して1カ月が経ったが、避難したロシア人の多くは、すぐに国へ戻ることはないと口をそろえる。「何よりもまず、紛争を終わらせなければならない」と、ゲーム開発者のエミールさん(26)。ロシアから出国するために国境の行列に並び、2日を費やしたという。トビリシで行われた取材に対し、こう訴えた。「男性をはじめ、誰もがリスクに直面している状況だ。私は自分自身の安全を第一に考えている。警察の前を歩いて通り過ぎただけで逮捕される可能性がある国には、もちろん戻りたくない。自由と安心が欲しい」。ロシア政府は動員令そのものは撤回しておらず、事前通告なく追加動員が発令されるのではないかとの憶測も広がっている」

     

    ジョージアへ移ってきたロシア人は、職業を持っているので生活に困らない。ロシアへ戻れば、いつ動員令が掛かるかも知れないのだ。先の動員令では、勤務先でそのまま徴兵され、家族が後から探しに来たという例も珍しくない。こういう非人道的な徴兵だけに、「逃げるが勝ち」である。祖国愛とはかけ離れた暴力的な徴兵だ。

     

    (3)「モバイルゲーム業界で働くスラバさん(28)は、「何がどうなればロシアに戻りたいと思うか、漠然と考えてはいる。ただ、今は、トビリシにあるアパートを6カ月借りて、営業登録もしている。あと6カ月はここにいるだろう」と語る。「ロシアで何が起きているか、注視するつもりだ。一部のことを除けば、進んで帰国したいとは思っている。ロシアで暮らすことは気に入っているし、ロシアが大好きだから」という」

     

    ロシアが大好きなロシア人でも、動員令を逃れてきたケースもある。巷間伝えられる、徴集兵の待遇の悪さを考えれば、逃げ出すのも致し方ない。

     

    (4)「人口わずか370万人、ロシアに比べて経済力の弱い国に比較的裕福なロシア人が大勢流入したことで、緊張も生まれている。ジョージアで野党議員を務めるサロメ・サマダシビリ氏は、自身のオフィスにあるウクライナ国旗の前で「事態は収拾できない状態にあるという見方もある」と指摘する」

     

    ジョージアへ突然、人口の3%に当るロシア人が移住してきたので摩擦があるのは当然だ。いざこざを起せば、ロシア介入の良いきっかけを与えることになる。それだけに、ジョージア人は、我慢している面もあるのだろう。

     

    (5)「ジョージアのアブハジア地方、南オセチア地方は、ロシアを後ろ盾とした分離独立主義者が実効支配している。2008年、ロシアは、両地方がジョージア政府の脅威にさらされているとして、ジョージアの他の地域へも短期間の軍事介入を行った。サマダシビリ氏は、プーチン氏がウクライナ侵攻時と同様、ジョージア国内のロシア人を「保護するため」との口実をジョージアへの侵攻拡大に利用しかねないと懸念を示す。ジョージア人の多くは、国の5分の1がロシアの占領下にあると考えており、抗議活動の際などにはそうした訴えの声も上がる」

     

    ジョージア人の反ロシア感情が強いのは、国土の5分の1がロシアに支配されている結果である。ロシアは、他国領でも「ロシア人保護」という名目で侵略するどう猛性を見せている。ウクライナ侵攻と全く同じケースだ。

     

    (6)「戦争やロシア国内でのプーチン氏による強権政治に反発してやって来た大勢のロシア人は、こうしたメッセージに共感している。中にはジョージアに定住を決めた人もいる。3月にトビリシに引っ越した起業家のデニス・シェベンコフさんは、「移住を決意したのは、もっと自由を感じるためだ」と話す。シェベンコフさんは6月、トビリシでコーヒーの事業を開始。先月にはロシアのサンクトペテルブルクで元々開いていたコーヒー店を畳んだ。「サンクトペテルブルクにいた警察の態度や、自治体政府や当局がしていたことを思い返すと、全く戻りたいと思わない」と指摘」

     

    ジョージアで永住を決めたロシア人もいる。ロシア当局の強圧的姿勢を思い出すだけで、怒りが込み上げるのであろう。日本人には理解できないことかも知れない。

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