勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国の先端技術は、中国人泥棒集団が盗んできた技術で動いているようなものだ。次々と国際的に技術窃取が発覚している。これでは、米国のトランプ大統領ならずとも、中国へ一撃加えてやらなければ、腹の虫が治まらないという向きもいるに違いない。中国にとっては、まさに「国恥」そのものである。

     

       

    中国社会のモラルがこれほど低いとは呆れる。とうてい、国際社会に迎え入れるパートナーになれない国だ。TPPに米国が復帰すれば、中国の泥棒行為はすべて水泡に帰す。販売先がないからだ。

     
    『日本経済新聞 電子版』(1月7日付)は、「台湾当局、半導体技術の対中漏洩で6人逮捕」と題する記事を掲載した。


     

    (1)「台湾の内政部(内政省)刑事局は7日、半導体製造に使う特殊な化学品の技術を中国企業に漏洩した営業秘密法違反の疑いで、化学品世界大手のドイツ企業、BASFの台湾法人の技術者ら6人を逮捕したと発表した。製造業の強化を目指す中国はハイテク分野で革新のカギを握る半導体産業の育成を急ぐ。だが、警戒する米国企業などからの技術獲得が難しくなり、台湾企業を狙ったようだ」

     

    (2)「刑事局によると、漏洩したのは半導体の製造工程で使用する高純度の化学品の製造に関する技術だ。この技術は中国の化学品大手、江陰江化微電子材料(江蘇省)が最近、新工場を立ち上げた際に使われた。漏洩した技術の価値は1億ユーロ(約120億円)に相当する。逮捕された6人のうち1人はBASFの台湾法人の現職技術者。ほか5人も同社に勤務した経験がある。技術を得た江陰側が提示した報酬は計約2億台湾ドル(約7億円)で、この一部は実際に支払われていたという。BASFの台湾法人は「社員1人が知財侵害の疑いで捜査を受けているのは把握しており、既に本人の職務を停止している」とのコメントを出した。捜査に協力するとともに、技術漏洩の防止を徹底するとも表明した」

     

    漏洩した技術の価値は約120億円という。中国企業が泥棒集団に払う報酬額は約7億円。6%の対価で「お宝技術」を窃取する。これほど、「棚ぼた商売」はない。中国人は、不正行為をして新工場を建設する、大胆な振る舞いをするから驚く。政府レベルになれば、何をするか分らない空恐ろしい存在だ。中国はこういう手口で、研究開発費に一銭も払わずに完成技術を手にしてきた。実にあくどいと言うほかない。これが、中国ビジネスの真髄かと思うと鳥肌が立つ。

     

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    米国トランプ大統領は、対中貿易戦争で多大の「戦果」が確実視されて評価を上げている。だが、TPP(環太平洋経済連携協定)では、大統領就任早々の「やる気満々」が誤った方向に向かい、黒星と判定されている。

     

    「米国のTPP離脱は近年の経済史上、最悪のオウンゴール(自殺点)の1つとなった。トランプ氏が残りの任期である今後2年間のうちに方針を再考することはありそうにないが、恐らく次の大統領はそうするだろう」(『ウォール・ストリート・ジャーナル』1月7日社説)

    WSJの社説は、米国がTPPに復帰しなければ大きな損失を招き続けると結論を下している。これが、米議会の支配的な見解になれば、いずれ米国がTPPへ帰ってくるにちがいない。TPP11は、いつでも米国の復帰を可能にできる準備をしている。「早く帰ってこい米国」という構図だ。

     

    前記のWSJは、「米国がTPP11発効で失った市場」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「たとえ米国が動かなくとも、世界は動く。この表現は、貿易においては確かに真実だ。環太平洋経済連携協定(TPP)は、ドナルド・トランプ米大統領が離脱を表明した2年後、TPP11という新たな装いの下で年明けとともに11カ国で始動した。これによる最大の敗者は、米国の生産者だ」

     

    米国はTPPから脱退したが、残った11ヶ国は結束してTPP11を昨年12月30日に発効させた。WSJは、「近年の経済史上、最悪のオウンゴール(自殺点)の1つとなった」と無念の社説を掲げた。

     

    (2)「カナダは、米国がTPPに残留していた場合よりも大きなGDP押し上げ効果を得られる見通しだ。これは主に、日本の市場から追い出される公算が大きい米国の農家が犠牲になることで生じる。日本政府は通常、牛肉に38.5%の関税をかけており、米国にはこれが適用されるが、カナダ・ニュージーランド・オーストラリアからの輸入品にかかる関税は9%に下がる。カナダ政府は結果として牛肉の総輸出が10%増えるだろうと予測している。米小麦協会のビンス・ピーターソン会長は先月ワシントンで、TPP11が発効すれば、日本で53%を占めている米生産者の市場シェアが、『直ちに崩壊する』恐れがあると述べていた。日本に輸出される米国産小麦の価格は、カナダ産や豪州産より1ブッシェル当たり40セント不利になる見通しだ」

     

    TPPで、米国は日本の農畜産物市場を開放させ大きな利益を得るはずだった。ところが、その最も「おいしい部分」をカナダ・豪州・ニュージーランドなどに奪われてしまい、指をくわえて見ているほかない。米国の無念ぶりが分る。

     

    (3)「米国と日本は2国間貿易協定について改めて交渉を行うが、2国間協議よりも容易に、そしてはるかに迅速に日本市場を開放する道はTPPだった。新協定のTPP11はまた、他の参加諸国の内部変革にも拍車を掛けている。ベトナムは同協定の一環として外国小売企業に対する制限の緩和、金融部門に対する外国企業の投資上限引き上げを行っている。マレーシアはTPP11加盟国の銀行に対し、同国内での支店開設数を従来の2倍に拡大することを認める」

     

    農畜産物だけでない。ベトナムやマレーシアは小売業や銀行の門戸を開放する。この分野では、日本が先陣を切るので米国の得られる利益を日本が取り込む形になる。ベトナムは、中国に代わって、「世界の工場」を目指している。

     

    TPPが、発効して加盟国の利益がはっきり浮かび上がってくると、米国はさらに焦るであろう。米国がTPPへ復帰すると、中国が最大の被害者になる。中国にサプライチェーンを置く意味がなくなるからだ。米国のTPP復帰は、中国経済の凋落を促進するという関係にある。中国が最も神経を使っている点だ。

     

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    韓国は、日本へ威勢の良い発言を続けているが、経済面で競争すれば負けると観念している。だから、数多くの国と自由貿易協定(FTA)を結んでも、日本だけは避けてきた。最大の要因は、韓国自動車が日本に負けるからだ。自動車は、工業製品で最大の雇用吸収先である。この聖域を日本車に荒らされれば、韓国経済は立ち往生する、として日本とのFTAを避けてきた。これが、TPP加盟を渋ってきた理由だ。韓国が、日本とのFTAを結ばない結果、国内消費者は米国の販売価格より高い価格で韓国車を買わされている。この矛楯は、国内市場が関税(自動車は8%)で保護されている結果だ。これが、「貴族労組」が高賃金を実現しており、韓国経済の宿痾(しゅくあ:長年の病気)となっている。この際、韓国はTPPに加盟して国内の保護体質を一掃すべきである。こう主張する説を取り上げたい

     

       

    『中央日報』(1月7日付)は、「韓国経済、CPTPPを再飛躍のステップにすべき」と題する寄稿を掲載した。筆者は、崔炳鎰(チェ・ビョンイル)/梨花女子大国際大学院教授/韓国国際経済学会会長/リセットコリア通商分科長である。

     

    この寄稿によって、韓国経済の競争条件がいかに整備されていないかが浮かび上がっている。TPPが浮上する以前、韓国は世界で最大の自由貿易協定(FTA)を結んでいた国である。だが、FTA効果は国民に還元されていないと指摘している。中間段階の流通マージンが吸収している結果だ。約20年前に、日本でも持ち上がった問題である。韓国で、自営業が就業者数の25%も占めている背景には、こういう流通の前近代性が大きな影響を与えていることで頷けた。

     

    (1)「韓国政府はCPTPP(TPP11)に参加するかどうかを昨年決めると明らかにしたが、年を越した。何が韓国政府をためらわせるのか。農産物と水産物の追加開放が負担となっている。経済状況も厳しい中、農漁村の反発を招く政治的な冒険を敢行するのは難しい。FTAを擁護してきた大企業も消極的だ。日本市場で惨敗した自動車分野は反対を明確にしてきた。『輸出は良く、輸入は悪い』という重商主義フレームで接近すれば、問題の本質は見えなくなる」

    韓国自動車産業は、日本と直接関わるTPPもFTAも忌避している。だが、次のパラグラフで指摘しているように、日本との競争をテコにして、韓国経済の立て直しをすべきとしている。自動車労組の甘えを絶つには、TPPで日本車と真剣勝負させるべきだという注目すべき意見である。

     

    (2)「日本車が押し寄せてくるので韓日FTAに反対するというのは国内自動車業界には反対の論理になるかもしれない。だが、消費者と革新を考慮すべき政府当局者は、口実にすることではない。自動車生産世界5位の韓国の消費者は、なぜ国産自動車を米国より高く購入しなければいけないのか不満を抱いている。長期間にわたり韓国市場を閉鎖して、国産車だけを販売してきた結果、雇用継承に固執する労働組合や生産性を超越する超高賃金を招いたことに対し、消費者は怒りを表している。公正を叫ぶ時代の精神はどこにあるのか」

    文政権は、口を開けば「公正」を叫んでいる。公正には二つの意味がある。①公正な競争、②公正な分配である。韓国自動車市場で、日本車への壁を厚くしているのは①の公正な競争に反している。その結果、「労働貴族」を産み出し、韓国経済全体に害を及ぼしている。

     

    (3)「公正・革新を強調する政府なら、韓日FTAを恐れる理由はない。国内市場にさらに競争を取り入れ、国内価格のバブルを除けば、消費者の実質所得を増やすことができる。競争を促進して消費者主権を強め、生活の質を改善できるビジョンを込めてこそ、韓国は前に進むことができる」

    文政権は、言行一致を貫き「公正・革新を強調する政府」らしく、振る舞わねばならない。中間流通マージンを削減して最終販売価格を下げれば、消費者利益が増加して韓国経済全体が潤うのだ。


    (4)「(文政権は)言葉だけで『人間中心の経済』を叫んでも庶民の生活は良くならない。CPTPPを輸出機会の確保、経済領土拡張で包装すれば、それは決して勝つことができない戦いを始めることだ。包容的成長を渇望する時代の精神にも合わない。これまでの数多くのFTA締結にもかかわらず生活必需品の体感価格が下がらないことに対し、韓国の消費者は疑問を感じている。もう開放の恩恵は消費者に向かうようにしなければいけない。開放の効果を独占してきた中間流通段階に生じているバブルを取り除いてこそ可能だ。輸入製品と国産製品の競争、国産製品間の競争を消費者は強く望んでいる。企業も同じだ。公正な競争、競争の活性化があってこそ、創業の基盤が形成され、革新成長も始めることができる」

    文氏が言う「人間中心の経済」とは、消費者利益が最大になる経済システムのはずだ。だが、文氏は2日に発表した「年頭の辞」で、先進国経済の道を歩まないと宣言した。人間中心の経済」だというが、これは言葉の綾というべきもの。消費者利益が最大の経済こそ、人間中心の経済である。文氏は、「組織労働者中心の経済」が人間中心の経済と誤解している。

     

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    米中の通商協議は、北京で今日から明日にかけて行なわれている。米国が圧倒的に有利な条件で協議が進んでいると見られる。土俵際に追い込まれている中国は、米国の要求する5項目(実質的には4項目)に応えるしか生きる道がなくなった。

     

    こんな無様な形で、「ディール」に応じざるを得ないのは、国内での経済・社会面での不安や不満の増大がある。今年6月は天安門事件から30年を迎える。景況悪化は、当時と現在が極めて似通っている。中国が交渉で米国へ粘る余力を失っている理由だ。

     

    『ロイター』(1月7日付)は、中国 軟調な経済が通商協議合意への動機にートランプ米大統領」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米大統領は6日、中国との通商協議は非常に順調に進んでいると述べ、中国の軟調な経済状況が同国に合意に向けて取り組む動機を与えているとの見解を示した。米中当局者は今週、中国の北京で通商協議を行う。トランプ氏と中国の習近平国家主席が昨年12月に貿易戦争の90日間停止で合意して以降、初の直接会合となる。

     

    (1)「トランプ氏は、ホワイトハウスで記者団に対し『中国は解決を望んでいる。中国の経済はあまり好調ではない』と指摘。『それが中国に交渉する大きな動機を与えていると思う』と述べた。中国人民銀行(中央銀行)は4日、国内の景気減速や米国による関税の影響を背景に銀行の預金準備率を引き下げた。トランプ氏は、今週の北京での協議で何を期待するかとの質問に『中国との協議は非常に順調に進んでいる。彼らはディール(取引)を望んでいると私は確信している』と語った」

     

    米国は、政策金利を引き上げている一方で、中国は利下げもできず預金準備率引き下げでお茶を濁している。この違いこそ、米中の置かれた経済状況が真逆であることを示している。すでに「勝負あった」の感じだ。

     

    米国は、さらに中国の技術スパイに恒久的に対応する準備を進めている。

     

    米上院情報特別委員会のマーク・ワーナー副委員長(民主党)とマルコ・ルビオ委員(共和党)は4日、国家ぐるみの技術盗用の阻止や米国の重要なサプライチェーンの防衛を目的とした組織をホワイトハウスに設置する超党派の法案を提出した。『ロイター』が7日伝えた。

     

    両氏の声明によると、法案は中国など外国勢力が米国の安全保障にもたらすハイテク分野の脅威に対抗するため省庁間の戦略連携を図る「重要技術安全保障局(Office of Critical Technologiesand Security)」の設置を目指すという。米国の中国対策は完璧を期している。

     

    けさ発行しましたメルマガ19号(有料)で詳細に取り上げました。

    「追い詰められる被告席の中国、冷戦回避に躍起の理由は」

     



    習近平氏が、台湾統一を目指した5つの提案を出した。急ぎ始めた背景に何があるか興味深い。

     

        米中貿易戦争による国内経済の落込みで、習氏に批判が集中していること。それを回避すべく台湾問題を持ち出している。

        中国へ進出している台湾IT企業が、台湾回帰の動きを見せていること。中国にとって、宝の山である台湾企業が回帰すれば大きな損失だ。そこで編み出したのが、蔡総統を外して台湾の各政党と交渉しようという作戦である。

     

    台湾側にすれば、自由を謳歌している現状を放棄して、大陸(中国)と一体化することは、牢獄に入るようなものだ。いくら、「一国二制度」を保証すると言っても共産党政権が存続している限りは、第二の「香港」である。本土の支配を受けて身動きできなくなる。

     

    米国がどう動くかも焦点である。米中冷戦が目前に来ている段階で、台湾を「手放す」はずがない。国民党は、どこまで大陸と密約を結んでいるか分らないが、動きは注目すべきだ。長い目で見た場合、中国経済の凋落は不可避である。米中が冷戦化すれば、その凋落はさらに早まる。その際、中国本土で何が起るか分らないのだ。中国の誘いに乗るのは得策でない。習氏の支援をするようなものだろう。

     

    『日本経済新聞 電子版』(1月6日付)は、「中国、台湾統一へ5提案、蔡政権外しで分断図る」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国の習近平国家主席は演説で5項目の台湾政策を示し、台湾当局以外との協議や中台経済の一体化によって統一をじわじわと進める方針を掲げた。平和統一や一国二制度を軸とする従来の基本方針を踏襲しつつ、独立志向の民進党、蔡英文政権への圧力を強化。2020年1月の台湾総統選に向けて統一への機運を高める」

     

    台湾で、言論弾圧と人権弾圧の大陸と統一したいという市民がどれだけいるだろうか。政府を少しでも批判すれば、国家反逆罪という独裁国家が中国である。中国の経済的な魅力は、はっきりと下降線を描いている。輝きをすべて失うのは遠くない。台湾は、米国と密接な関係を保つことが生き残る道である。

     

    (2)「習氏が2日の演説で提唱したのは次の5項目である。

    (1)平和統一の実現

    (2)台湾版の「一国二制度」を検討

    (3)1つの中国」原則を堅持し、外国の介入には武力使用も放棄しない

    (4)中台経済の一体化加速

    (5)同胞意識の強化」

     

    仮に、統一を目指すには、(5)同胞意識の強化が先決である。台湾人は、自らを中国人と認識していないのだ。これが統一を妨げる最大の要因であろう。今後、時間が経てば経つほど、中国経済の成長率は落ちていく。これまでの「駿馬」は、いずれ「駄馬」に成り下がる。バブル経済の崩壊とは、そういうものである。中台統一は、台湾が食い物にされるだけ。年金の支払いも保証はないのだ。

     

    (3)「過去の国家主席演説との最大の違いは、江氏や胡氏が協議相手として念頭に置いた『台湾当局』という言葉を使わず『「両岸の各政党や各界」との統一に向けた協議を呼びかけたことだ。蔡政権を相手にしない考えを示唆する。一国二制度に関しては統一後も私的財産や信教を保障すると明言した

     

    中国得意の揺さぶりが始っている。こういう揺さぶりが、成功すると考えている習氏の構想力は貧弱である。台湾側が一層、警戒するリアクションを考えるべきだ。統一後も、信教と私有財産を保証する。当たり前のことで、統一のメリットは台湾にゼロである。進んで監獄へ入るようなものだ。大陸の知識人が、改革開放40周年で発表したインターネット上での宣言(すぐに削除)は、余りにも痛々しい。台湾の人々で、そんな苦痛を自ら引き受ける奇特な人はいない。

     

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