勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。


    中国国家副主席の王岐山氏は先頃、久しぶりに沈黙を破って発言し、「米中貿易戦争は対話で解決すべし」と呼びかけた。このブログで紹介済みだが、その具体的な動きが浮かび上がってきた。王氏は、米国金融界と深い関係にあることで知られている。王氏と接触したと見られる米国金融界大物(OBや現役)が、秘かに米中和解へ動き出している。

     

    『ロイター』(11月9日付)は、「米中通商問題に口はさむ金融幹部は外国の代理人ー米通商政策局長」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米ホワイトハウスのナバロ通商製造政策局長は9日、トランプ大統領に中国と通商問題で合意するよう圧力をかけようとしている金融業界の現幹部や前幹部は未登録の『外国のエージェント(代理人)』だと厳しく批判し、金融業界は米中通商協議に関与するべきではないとの考えを示した」

     

    米金融界大物は、11月末の米中首脳会談で貿易戦争を終わらせるべく、ホワイトハウスへ圧力をかけていると批判したもの。この裏に、王岐山氏の働きかけがあることは確実である。

     

    (2)「ナバロ局長は戦略国際問題研究所(CSIS)で、「こうした無給の『外国のエージェント』がいわゆる外交に関与すれば、大統領の交渉力が低下する。こうしたことで何も良い結果は得られない。(米中通商問題で)合意が得られる場合、金融業界ではなくトランプ大統領の条件によるものとなる」と述べた」

     

    ナバロ局長は、こういう一連の働きかけが「外国のエージェント」に当ると批判する。米国では、「エージェント」行為をする場合、政府への登録を義務付けられている。それほど、この種の行為は規制されているのだ。中国の代理人として、米国金融界の大物が恥ずかしげもなくホワイトハウスへ働きかけている。これが、ナバロン氏の批判点だ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月8日付)は、「米中経済に『鉄のカーテン』 元財務長官の警告」と題する記事を掲載した。

     

    元財務長官とは、ヘンリー・ポールソン氏である。ゴールドマン・サックス・グループ時代にも、米財務長官としても、政界の長老としても、米国の対中関与政策を強力に支持し、実現させてきた。まさに、米金融界の大物である。

     

    ポールソン氏は財務長官として2008年の金融危機に対応したことで知られるが、米中経済関係でも同じくらい重要な役割を果たしたと言える。ポールソン氏が最初に中国を訪問したのは1990年代初めだ。ゴールドマンとして投資銀行事業に乗り出すためで、やがて中国の主要国有企業数社の再建と株式上場を支援した。2006年にはジョージ・W・ブッシュ政権の財務長官に就任し、米中高官が2国間関係に対処するための経済戦略対話を開始したことで知られている。

     

    (3)「ポールソン氏は7日、シンガポールで講演し、中国の振る舞いが米国内で仲間を失う結果を招き、米国民を反中で結束させたと訴えた。米国を厳しく批判することはなかったが、米国は中国にも同盟国にも非現実的な期待をかけているとの見解を示した。米中のいずれも方針転換しなければ『米中関係に長い冬が訪れ』『とてつもなく大きなシステミックリスク』が生じると述べた」

     

    ポールソン元財務長官の警告とは、「とてつもなく大きなシステミックリスクが生じる」点にある。それは、中国の金融破綻が起るという指摘だ。中国経済が、金融的にギリギリのところまで追い込まれていることを証明している。事態は切迫しているようだ。

     

    この点は、私の「メルマガ」(11日発行)で解明したい。



    韓国経済は泥沼にはまり込んできた。政府系シンクタンクが、来年6月まで就業者は増えないだろう、という予測を出すほど深刻だ。理由は、大幅な最低賃金引き上げにある。文大統領は、最低賃金の大幅引き上げが、社会の公正を守る砦であると頑張っている。いやはや、大学生の弁士が、弁論大会で喋るようなことを恥ずかしげもなく言っているのだ。

     

    最低賃金引き上げは正しい。だが、現実の生産性を大幅に上回る引上げは、経済を混乱させるだけである。薬でも、医師の処方箋通りに飲まないと治療効果は上がらない。最賃も同じだ。生産性上昇に見合った引上でなければならない。これは、IMFやOECDも警告している。これを受入れずに暴走する。もはや打つ手はない。暴走して大怪我をし、やっと目が覚めるのだろう。

     

    『中央日報』(11月10日付)は、「文大統領 韓国経済ツートップを同時交代」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「文在寅(ムン・ジェイン)大統領が9日、金東ヨン(キム・ドンヨン)経済副首相兼企画財政部長官と張夏成(チャン・ハソン)大統領政策室長を同時に交代した。これで現政権初代の経済指令塔の役割を果たしてきた金副首相と張室長は1年6カ月で退陣することになった。文大統領はこの日、金副首相の後任には洪楠基(ホン・ナムギ、58)国務調整室長を内定し、張室長の後任では金秀顕(キム・スヒョン、56)社会首席を抜てきした」

     

    日本流に言えば、大臣と次官を同時に更迭したような荒業である。張夏成大統領政策室長は大学教授であり、名うての「やり手」という評価であった。周囲がなんと言おうとも、絶対に協調しない人物像が伝えられてもいた。最低賃金の大幅引き上げには、最適であろうと抜擢されたが、余りの硬骨漢で周囲も手を焼くほど。自分の責任を認めず、前政権に責任を被せるという「典型的な韓国人」の振る舞いを見せていたのだ。

     

    この大統領府の政策室長更迭は、最賃の手直しを行なう前兆であろうか。もし、それが実現すれば、更迭による局面転換が期待されよう。政策の手直しがなければ、「コップの中の争い」に終わる。

     

    (2)「金副首相と張室長の同時交代は、効果を出すことができなかったので刷新したもの。また、それだけでなく経済政策をめぐって、両氏の間に葛藤を生じていたことも刷新理由になった。学者出身である張室長と、実物経済を扱ってきた金副首相の間で、所得主導成長をめぐって不協和音を露呈していた。これに先立ち、文大統領は6月に経済首席、雇用首席を交代するなど、青瓦台経済チームの雰囲気の反転を狙う一方、8月には二人の経済首長に「完ぺきなチームワーク」を呼びかけ、「結果に職を賭けるという決議で臨んでほしい」と公式に警告したりもした」

    経済政策の根本を変えずに、責任者の首のすげ替えを行なっても効果はあがらない。6月に大統領府の経済首席、雇用首席を交代させた。だが、経済実態は悪化の一途である。今回の大掛かりな人事交代があっても結果は見えている。


    台湾企業が、中国から撤退するには絶好の機会がやってきた。中国の台湾企業が米国へ輸出すれば高い関税をかけられる。「メードイン台湾」ならば、その懸念は消える。もう一つ、台湾企業が中国のIT技術向上に貢献することは、「天に向かって唾する」も同然。回り回って、台湾の安全保障を脅かすことになる。そこで、究極の選択として、台湾企業が中国を撤退することが最も理に適っているはずだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月9日付)は、「台湾高官、補助金で中国から企業の回帰後押しも」

     

    台北で日本経済新聞のインタビューに応じた台湾の『国家発展委員会』の陳美伶・主任委員(閣僚)は、過熱する米中貿易戦争について『中国への制裁関税(の規模や対象)がさらに拡大すれば打撃はもっと大きくなる」という見通しを示した。

     

    (1)「台湾の多くのIT(情報技術)企業は中国を生産拠点として、米国に製品を輸出している。すでに『40社を大きく超える企業が中国から台湾への(生産拠点の)回帰を目指している』と指摘。こうした企業の動きを後押しするため、台湾当局が補助金支給などを検討していると明らかにした」

     

    中国企業は、台湾のIT企業に照準を合わせて、高給での技術者引き抜きに積極的である。これを防ぐには台湾企業が、中国から撤退して中台の関係を薄めることも重要な戦術として浮かび上がる。台湾技術者に精神的な壁を高くさせることだ。同時に、米中貿易戦争で中国からのIT製品輸出には、高関税率がかけられる。この際、台湾企業に長期的な経営戦略として「脱中国」へ舵を切らせる必要があろう。それには、台湾のTPP加盟も重要な前提になろう。

     

    中国進出の台湾企業40社超が、台湾回帰に前向きであるという。ビジネスの枠組みが大きく変わろうとしている以上、台湾政府が補助金を出すことは有力なテコになる。

     

    (2)「また、『中国に(台湾から)人材や技術を供給する専門の台湾企業がある』と述べ、台湾から中国への技術流出に強い警戒を示した。流出防止に『現行法では十分に対応できてなく、(知財侵害などで)刑事罰を強化する必要がある』とも強調した。ハイテク部門で米国に追いつこうとしている中国は、カギを握る半導体産業を育成するため、台湾企業からの技術移転に力を入れている」

     

    将来、台湾を武力で解放する方針の中国へ、台湾企業が技術的にも貢献する必要はない。敵に塩を送るような行為は愚策なのだ。安全保障の面から見れば、アジア諸国が中国と「ウイン・ウイン」の関係になることはあり得ない。中国は、領土拡大が国是になっている国であるからだ。もっとも、中国と不可侵条約でも結べば別だろうが、中国は絶対に結ばないだろう。中国の将来の行動を縛るからだ。中国の存在は、このくらいシビアに見ておくべきである。口先だけの「友好」は危険である。油断させられるからだ。



    韓国文政権は、困惑の極にある。文大統領は昨年8月、「徴用工の請求権は消えていない」と発言。韓国大法院の判決に流れをつくった張本人である。さぞや、本意にそった判決が出て満足であろう。それだけに、日本がこれだけ反発することへの対策がゼロであった。

     

    安倍首相は、文大統領と会談する際、必ず徴用工裁判を取り上げ、日本は絶対に請求権要求に応じない旨を申入れてきたという。こういう日本側の強い姿勢から、請求権容認の判決が出た場合、日本がいかなる対応を取るか予想していたはずだ。それが、実際は準備ゼロである。恐るべき程、文政権の「危機管理能力」が低いことを証明した。

     

    『中央日報』(11月9日付)は、「強制徴用判決、『国際世論戦を始めた』日本、韓国は10日以上も『対策準備中』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日本政府が強制徴用をめぐる韓国最高裁の判決に対し、本格的な国際世論戦を始めた。『韓国は国際法違反国家』として世界の在外公館を中心に全面戦争に乗り出したのだ。9日の産経新聞によると、日本政府は韓国最高裁の強制徴用判決が不当だという点を各国の在外公館を通じて発信するよう指示したと報じた」

     

    韓国は、日本から「国際法違反国家」というレッテルを貼られることを最も恐れている。国際法では、海外公館近くで相手国を不快にさせる物を置くことを禁じている。「慰安婦少女像」は、「第1号違反」を冒した。今回の徴用工判決は、「第2号違反」に当る。日本がこの実態を広く世界に訴えることは当然だ。

     

    ここでは、産経新聞記事を引用している。韓国メディアは産経新聞を目の敵にしている。「日本の代表的は右翼新聞」などと報じてきた。反対に、朝日新聞は神格化されている。こういう極端な韓国メディアが、産経新聞について悪意ある形容詞を控えている。よほど、韓国に対する「国際法違反」の形容詞が痛手なのだろう。

     

    (2)「すでに米国、英国、フランスなど一部の大使館は韓国最高裁の判決が出た直後、河野太外相の名義で発表した談話を英文版に翻訳し、ホームページと大使のSNSに掲載している。さらに領事館を含む在外公館などに対し、現地メディアを積極的に活用すべきという指示も出した。産経新聞は外務省幹部の言葉を引用し、「韓国最高裁の判断は明確な国際法違反に当たる」という内容で大使が現地メディアに寄稿するのが対外発信の中心になると伝えた。別の外務省幹部は「日韓間の問題をひとごとだと考えている諸外国にも正しく理解してもらうには、今のタイミングで発信していくべきだ」と述べた。日本政府が今回の韓国最高裁の判決を控え、他国への対応まで準備するなど緻密に戦略を立ててきたことが分かる」

     

    日本は、慰安婦騒動で韓国の日本を貶める戦術を学んでいる。それだけに今回は、先手を打って韓国の不法性を世界に訴える国際広報戦を準備してきた。韓国大法院の判決が出た直後、日本は米国、英国、フランスなど一部の大使館が、河野太郎外相の名義の談話を翻訳して掲載した。

     

    (3)「一方、韓国政府は最高裁の判決から10日ほど経っても政府の基本的立場さえも示せない状況だ。韓国政府は判決当日の10月30日、李洛淵(イ・ナギョン)首相の名義で『司法府の判断を尊重し、関連事項を綿密に検討する。関係部処、民間専門家と共に政府の対応を用意していく』という声明を発表した後、事実上、沈黙を維持している」

    韓国は、日本に甘えている。声高にいつも日本を批判するが、朝鮮戦争で多大の人命と物的の大損害を受けた、中国と北朝鮮には「従者」のように振る舞っている。この差は何か。日本は何でも韓国の要求を受入いれる甘さがあるのだろう。韓国でも保守派の人々は、一連の反日騒動を苦々しく見ているのだ。日本は、韓国を一括りで「反日国家」と見るのでなく、頑迷な「革新派」と峻別すべきだろう。



    中国では、「不動産信仰」が根強く、住宅が投機対象になっている。最近の調査では、5000万戸が、値上がり期待で空き家になっているという。だが、住宅の実需は尻つぼみになってきた。この先、値下がり期待が強まれば一気に売りに出されるはず。その時期が迫っている。

     

    『ブルームバーグ』(11月9日付)は、「中国の住宅の5軒に1軒は空き家、全体で5000万戸余り」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「住宅は居住するためのものであるべきだと主張する習近平中国国家主席のスローガンは、聞き流されているようだ。中国全体で数千万戸に上るアパートや家が空き家となっている。調査を行った四川省成都市の西南財経大学の甘犁教授によると、中国の都市部の住宅のうち空き家は約22%であることが近く公表される研究結果に示されており、5000万戸余りに上るという」

     

    主要国空き家率は下記の通りである。

    日本 13.5%

    台湾 14.2%

    米国 12.7%

    中国 22.4%

     

    中国の空き家率が、際だって高い。中国では、内装をしないままで住宅を売買する。だから、空き家でも新築並みの値段で売却可能だ。固定資産税がない国である。住宅投機を奨励しているようなものだ。多くが、共産党幹部が持ち主。固定資産税がかからないので、長期保有が可能である。

     

    (2)「政策当局者にとって悪夢のシナリオは、不動産市場が傾き始めた場合に空き家所有者が物件売却を急ぐ展開で、価格下落の悪循環を招きかねないという。2017年の調査に基づく最新データでは、政府の不動産投機抑制策も十分に奏功していないことが示唆されている。甘教授は、『空き家率がこれほど高い国はほかにない』と述べ、『不動産市場で亀裂が表面化した場合、売りに出される住宅が洪水のように中国に打撃を与えるだろう』と述べた」

     

    住宅価格は最近、変調が起っている。本格的な値下がりに転じれば、空き家の5000万戸が売り手として不動産市場へ登場する。市況は一気に崩落して修羅場と化す。その時期は近い。中国の金融状況が切迫しているからだ。外貨流出と人民元投機が重なって騒然となるだろう。住宅価格が無傷であるはずがない。


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