勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    a0001_000268_m
       

    世界中のメモリー型半導体市況の下落で、各国の半導体メーカーは減産体制に入っている。その中で、サムスンは減産しないと強気姿勢を見せる。メモリー型半導体に主要需要先のパソコン・スマホ・ゲーム機などは、いずれも販売不振に陥っている。韓国の半導体輸出も落込んでいるのだ。

     

    サムスンから7~9月の仮決算が発表された。売上76兆ウォン(約7兆8136億円)、営業利益10兆8000億ウォンだ。前年同期比で、売上は2.73%増の反面、営業利益は31.73%もの大幅減益である。この状況下で、メモリー型半導体の減産をしなければ、在庫が増えるだけだ。それに耐える戦略なのだろう。

     

    『中央日報』(10月7日付)は、「半導体不況にもサムスン電子『減産の計画はない』」と題する記事を掲載した。


    (1)「メモリー半導体世界1位のサムスン電子が半導体需要急減の憂慮にもメモリー半導体減産を検討していないと明らかにした。5日(現地時間)、米カリフォルニア州シリコンバレーで開かれた「サムスンテックデー2022」でだ。ライバル社「米国マイクロン」などが設備投資縮小・減産に乗り出すことにした中で、危機を正面突破するという意志を示したものと業界では見ている」

     

    李副会長は先に、贈賄罪による仮釈放が赦免されたことで経営への完全復帰ができたばかりだ。これまでの空白期を乗り切るべき「強気経営」に打って出た背景を見ておく必要がある。ただ、いくら「やる気満々」でも、市況崩落には勝てない。減産しないと宣言することで、市況回復はそれだけ遅れるマイナスが、サムスン自体にも及ぶ矛楯も計算に入れる必要があろう。

     

    (2)「サムスン電子メモリー事業部のハン・ジンマン副社長はこの日、メモリー減産計画を尋ねる質問に「現在としては(減産に対する)議論はない」と答えた。ハン副社長は「人為的減産はないというのが(サムスン電子の)基調」とし「しかし深刻な供給不足・過剰が起きないように努力している」と説明した。先月29日、米国メモリー半導体大手マイクロンは生産量を5%減らし、来年の設備投資を30%削減すると明らかにした。NANDフラッシュメモリー「ビッグ3」とされる日本キオクシア(旧東芝メモリー)も最近、メモリー生産を30%減らすことにした。世界市場調査会社トレンドフォースは7-9月期NANDフラッシュ価格が13%~18%下落したことに続き、10-12月期にも15~20%下落すると見通している」

     

    下線の「深刻な供給不足・過剰が起きないように努力している」発言は、意味深長である。過剰を防ぐには生産調整(減産)しか道はない。つまり、状況次第で減産するという意味だろう。市場調査会社によれば、10~12月も2割程度の市況下落を予測している。サムスンも揃って減産すると表明すれば、ユーザも先行き警戒姿勢を緩める効果があるはず。サムスンの意図が読めないのだ。

     

    敢えて、強気姿勢を見せて世界の耳目を集める戦略にも読める。それは、次のパラグラフにあるとおり、システム半導体(非メモリー型半導体)への宣伝を開始しているからだ。敢えて「非減産」を打ち出して、マスコミの注目を引き出す狙いとも見えるのだ。

     


    (3)「サムスン電子はメモリー減産を検討しない理由について、具体的には明らかにしなかった。しかし同日、製品競争力とメモリー・システム半導体のシナジー効果を通じて、半導体不況を乗り切るという考えをにじませた。この日、サムスン電子は「人間水準に近い」機能のシステム半導体を開発するというビジョンを明らかにした。頭脳の役割を果たすSoC(SystemonChip)をはじめ、イメージセンサー(目)、通信用チップ(神経網・血管)、電力半導体(心臓・免疫体・皮膚)などを披露する予定だ」

     

    サムスンは、人間の頭脳に近いシステム半導体を開発するという。こういう高度の企業秘密を公にするメリットはあるのか。これも、不思議な戦略である。

     


    (4)「システムLSI事業部のパク・ヨンイン部長社長は「サムスン電子はSoC・イメージセンサー・DDI(ディスプレイ駆動チップ)、モデム(通信チップ)など製品のコア技術を有機的に融合する『統合ソリューションファブレス(半導体設計会社)』になるだろう」と明らかにした。サムスン電子の関係者は「モバイル中心事業領域から抜け出し、家電、車両用半導体など様々な領域に拡大していく計画」と話した。匿名を要求した半導体業界関係者は、「景気低迷にもデジタルトランスフォーメーションのための半導体需要は増えるとみられ、メモリーとシステム半導体のシナジーを通じて競争力を確保するという意味」と分析した」

    サムスンは、システム半導体で大きく出遅れている。台湾のTSMCは半導体の受託生産で世界一の実績を上げており、サムスンのはるか先を走っているのだ。サムスンは、こういう追撃の焦りが、今回の記者発表の裏にある感じだ。

    a0001_000268_m
       

    韓国の8月末の外貨準備高4364億ドルは、前々月からワンランク上がって世界8位と発表した。これにはカラクリがある。外貨準備高のうち、有価証券の比重が91.0%にも達しながら時価評価せずに取得原価で表示しているのだ。

     

    外貨準備を持つ理由は、輸入支払いなどの対外決済を円滑に済ませることにある。この目的に合わせると、直ぐに現金化できる資産を持つことが必要だ。この場合、最適資産は現金(米ドル)か米ドル預金になるが、多額の資産である以上、直ぐに現金化可能な有価証券(特に米国債)も選ばれる。韓国の場合、実に外貨準備高の9割が有価証券である。

     

    その評価基準が、時価評価でなく取得原価であることは、「現金化」という外貨準備高の目的から逸脱している。現在のように有価証券が世界的に値下がりしている中では、韓国の外貨準備高も価値を下げているはずだ。それを、取得原価主義でカムフラージュしているのである。

     


    韓国紙『ハンギョレ新聞』(10月6日付)は、「
    韓国が外貨準備高で世界8位だって?『錯視効果』がある」と題する記事を掲載した。

     

    各国が発表する外貨準備高の会計基準が国毎にまちまちであることが分かった。韓国は取得原価を基準にしている一方、他の一部の国は市場価格を反映しているためだ。韓国の場合、時価の変化にともなう短期的変動よりは長期的な推移分析に焦点を置いているが、最近の国債価格の下落傾向を勘案すれば含まれる錯視効果が小さくないと見られる。

     

    (1)「10月5日に発表された韓国銀行の集計によると、韓国の8月末外貨準備高は4364億ドルで、世界8位を占めた。1カ月前より1段階上がった。これまで8位だった香港の外貨準備高が100億ドル減る間に、韓国は22億ドル減少し善戦した結果だ。これには一種の錯視効果が含まれている」

     

    韓銀(中央銀行)は、韓国の外貨準備高が世界8位といかにも豊富であるように取り繕っている。その9割の有価証券が現実に値下がりしている時価で評価せず、取得原価で評価して嵩上げしているのだ。

     


    (2)「世界各国の外貨準備高は、大半が債券や株式などの有価証券で構成されている。韓国の場合も8月末基準で有価証券の比重が91.0%に達し、銀行預置金は3.4%に過ぎない。有価証券の中では米国をはじめとする全世界主要国の国債の比重が大きいと知られている。外国為替当局による変動性緩和措置も、主に米国債を売って調達したドルを市場に供給する方式で行われる。国債の価格が下がるほど、外国為替当局の実弾も減るわけだ」

     

    米国債が値下がりしている場合、取得原価を割っている筈だ。米国債を売却して得られる米ドル(時価)と簿価(取得原価)とは逆ザヤになろう。こういうつじつまの合わないことをするメリットはどこにあるのか。それは、対外的な目眩ましをすることだけだ。

     


    (3)「問題は有価証券の価値を評価する会計基準が国によりまちまちだという点だ。韓国の場合、取得原価を基準に計上する。有価証券の市場価格が買入当時より下がっても帳簿には反映されないという意味だ。一方、香港は現在市場で取引されている価格を反映しているという。韓銀関係者は「取得原価より市場価格を基準とする国家の方が多いと理解している」と話した。今年に入って米国債の価格が継続的に下落傾向を示した点を勘案すれば、錯視効果は小さくないと推定される。米国債10年物の金利は、昨年末の1%台から最近は4%に迫る水準に上がった」

     

    当局は、取得原価主義よりも時価評価主義の国が多いであろうと認識している。韓国は、こういう一般的な評価基準から外れた方法を取っているのだ。

     


    (4)「韓銀は、長期時系列の観点では取得原価方式がより適切だと見ている。債券金利の変動によって金額が変動すれば、むしろ外貨保有高の推移を分析しにくくなるということだ。市場が敏感に反応し、為替レートの変動性がさらに大きくなるとの懸念もある。また、会社の存続能力を評価するために市場価格を適時に反映させる企業会計とは根本的な違いがあるとも説明した」

     

    下線部分は、言い逃れである。外貨準備高の目的が「即金性」にある以上、有価証券の評価法は、時価評価主義にするべきである。屁理屈は要らないのだ。企業も資産評価基準は時価評価主義である。その時点で、いくらの資産評価になるか。この目的では、企業会計と外貨準備高評価で寸分の違いがあるわけでない。

     


    (5)「現在のように債券金利の短期変動性が大きい状況では、不正確な情報が提供されるという限界がある。韓銀関係者は「単純に債券金利の変動による外国為替保有額の変化という点を市場が理解し、過度に敏感に反応しなければ市場価格方式が適切でありうる」としつつも「しかし韓国市場の情緒から見てそれは難しいという憂慮が大きい」と話した」

     

    下線部では、時価評価主義が正しいと言っている。だが、韓国の場合、通貨危機が直ぐに取沙汰されるような底の浅い経済であり、外貨準備高を嵩上げする必要がある。そこで、便宜的に取得原価主義にして、通貨危機時の防波堤にしようとしているのだ。韓国が、真に健全な経済体質になるとき初めて、外貨準備高の有価証券評価は時価評価主義になるのだろう。道遠しだ。

    a1320_000159_m
       

    習近平国家主席は現在、3期目を目指して権謀術数を巡らしている最中であろう。中国経済の「超不振」には目もくれず、ロシアのプーチン大統領との提携を軸に、「反米戦線」結成で舞い上がった状況である。

     

    海外資本は、こういう中国へ危機感を漲らせている。まさに、「中国リスク」満載に映るのだ。フランスの銀行ソシエテ・ジェネラルはここ数週間に、中国の取引相手に対するエクスポージャー(市場変動リスクの高い)を約8000万ドル(約115億6000万円)縮小した。世界の銀行は、中国を巡る地政学的リスクの高まりに警戒しているのだ。『ブルームバーグ』(10月6日付)が報じた。

     

    さらに、ソシエテにとって中国は引き続き戦略の重要部分であるものの、他の国際的な企業と同様、幹部らはここ数カ月に中国に打撃となった数々の問題に懸念を深めていると関係者が述べたという。もはや、「上り坂」中国というイメージでなく、「下り坂」中国という暗い雰囲気に囲まれた国になっている。

     


    『日本経済新聞 電子版』(10月6日付)は、「中国市場、海外マネー流出続く 『ロシア不安』も重荷」と題する記事を掲載した。

     

    中国の金融市場からの海外マネーの流出が止まらない。外国人投資家は8月まで7カ月連続で中国債券の保有を減らし、その間に12兆円が流出した。株式も9月は単月で売り越しに転じた。景気の急減速や米中金利の逆転に加え、ロシアにまつわる地政学リスクを警戒する声も根強い。人民元への売り圧力も強まっている。

     

    (1)「中国中央結算公司などのデータによると、外国人投資家の中国債保有額は8月末に3兆4756億元(約70兆円)となり、7カ月連続で前月を下回った。この間の資金流出額は5940億元(12兆円)にのぼった。外国人の債券保有は香港を通じて取引できる「ボンドコネクト」(注:香港と中国本土間の債券相互取引)が導入された2017年からほぼ一貫して増えてきた。2019年以降は機関投資家が参照する債券指数に相次いで組み入れられたのも追い風になっていた。足元の売りはデータを遡れる15年以降で最大だ。みずほセキュリティーズアジア債券調査ヘッドのマーク・リード氏は「債券売りは中国経済の逆風や、米中利回り差の変化を受けたものだ」と指摘し、「地政学的な懸念から投資家が中国資産の保有を減らしている可能性もある」と付け加える」

     

    外国人投資家の中国債保有額は8月末まで、7カ月連続で売越しになった。この間の資金流出額は5940億元(12兆円)にのぼる。2015年以降で最大の減少である。理由は、地政学的な懸念からの売却と見られる。西側投資家にとって、ロシアを支持する中国は、薄気味悪い存在に映るのだろう。

     


    (2)「地政学リスクを巡る警戒感もにじむ。債券で売りが目立つのが中国国家開発銀行や中国農業発展銀行などが発行する「政策銀行債」だ。外国人の債券保有はピークだった1月末との比較で25%減り、国債が8%減だったのに比べて資金流出の大きさが目立つ。政策銀行は国策に沿った融資を手掛ける金融機関で、国債並みの信用力と持つと考えられている。元建て債上場投資信託(ETF)が積極的に投資しており、足元の主な売り手は資産運用会社とされる。政策銀行はエネルギー関連のロシア向け融資を抱えるため、欧米諸国による制裁を懸念した売りとの見方も出ている」

     

    中国国家開発銀行や中国農業発展銀行などの発行する「政策銀行債」が、大きく売られている。これら金融機関は一帯一路プロジェクトで発展途上国へ多額の貸付けをしている。その6割が未回収リスクを抱えている模様だ。

     


    (3)「国際金融協会(IIF)は、13月の債券売越額のうち中銀の売りが占める割合は10%程度と推計する。「大きな資金流出は中銀による外貨準備の調整が原因ではない」とし、地政学リスクを懸念した投資家の売りが大きいとの見方を示した。英調査会社ウィズ・インテリジェンスによると、中華圏投資に特化するヘッジファンドからの資金流出額は17月で計36億ドル(約5200億円)と、08年以降で最大だった。外国為替市場では、外国人投資家が売買できるオフショア人民元の売り圧力が根強い。対ドル相場は9月、データを遡れる10年以降で最安値を記録した。米ムーディーズ・アナリティクスのシャオチュン・シュ氏は、「中国のゼロコロナ政策は海外からの直接投資に水を差し、(投資家の)安全資産への逃避が一段の元安につながる」と分析している」

     

    中華圏投資に特化するヘッジファンドからの資金流出額は、17月で計36億ドルと2008年以来の高額に達した。2008年といえば、リーマンショックの年だ。現在の中国に対する地政学的リスクが、いかに大きいかを端的に示している。

     

     

     

    a0070_000030_m
       

    ロシア軍は、これまで大量の武器弾薬を残して敗走した。ウクライナ軍は、これら武器で改修すべきものは修理して、ロシア軍追撃に利用する皮肉な現象が起こっている。これに気付いたロシア軍は、「徹底抗戦」しないで早めに撤収する戦術に変わった様子だ。ウクライナ軍に、遺した武器弾薬を利用されまいという苦肉の策だろう。

     

    『CNN』(10月6日付)によれば、ウクライナ軍が南部ヘルソン州で前進する中、ロシア軍部隊は多大な損失を被っている。負傷者と兵器は、ドニプロ川を越えた最寄りの救護施設に避難させようとしている。ウクライナ軍参謀本部は、「敵は負傷した軍人150人と破損した軍事装備50台ほどをカホフカ水力発電所近くのベセレ集落に移動させた」と述べた。

     


    南部ヘルソンは、クリミア半島の水源でもある。ロシア軍にとっては死守すべき防衛線の筈だが、早めに負傷者と武器弾薬を安全な場所へ避難させている。これまでにない「逃げ腰戦術」である。武器弾薬も避難させたのは、新たな補給がない証拠だ。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月6日付)は、「ウクライナ軍、奪ったロシア製兵器でさらに攻勢」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ軍が同国東部で攻勢に出る中、捕獲されたか放棄されたロシア軍の戦車・榴弾砲・戦闘車両は、今やロシア軍に対する攻撃に使われている。こうした装備品に付いていた、ロシア軍を象徴する「Z」マークは速やかにこすり取られ、代わりにウクライナ軍を表す十字架が描かれている。

     


    (1)「軍当局者によると、ウクライナが1カ月前にハリコフ州で急速に戦果を上げた結果、ロシア軍が無秩序な撤退に追い込まれ、重火器や複数の倉庫内の物資を置き去りにしたため、何百ものロシアの装備品がウクライナ側に渡ったという。ロシア軍の装備品の中には、すぐに使用できるものもあれば、前線で再び使うために修理中のものもある。損傷があまりにひどく修理できない戦車やその他の車両・銃は解体され、部品は予備用に回される。さらにロシア軍が、ウクライナではほとんど使い尽されたソ連式の砲弾を大量に残していったのは重要なことだ

     

    ウクライナ軍が9月に、ハリコフ州で行なった電撃作戦で、ロシア軍が大量の武器弾薬を遺して敗走した。これは、大変な戦利品であり、ウクライナ軍の攻撃力を強化している。ロシア軍が、その後の戦いで徹底抗戦せずに、武器弾薬を遺さずに持って撤退する方式へ切り変えたと原因と見られる。ロシアの兵站(補給)が弱体化している証拠である。

     


    (2)「こうした装備品は、ウクライナ軍が要衝リマンを含む同国東部ドネツク州の一部を奪還し、さらに東に隣接するルガンスク州に進軍する際に戦力の一部となっている。ウクライナのカルパシアン・シーチ大隊の副参謀長ルスラン・アンドリーコ氏によると、同隊は先月、ハリコフ州の要衝イジュムに入った後、10台の近代的なT80型戦車と5門の2S5ギアツィント152ミリ自走式榴弾砲を奪い取った。同氏は「われわれにはあまりにも多くの戦利品があり、それらをどうすればいいのかさえ分からない。初めは歩兵大隊として戦闘に加わったが、今では機械化された大隊になりつつあるようなものだ」と話す」

     

    ロシア軍の遺した武器弾薬は、ウクライナ軍がその後に行ったロシア軍追討作戦で威力を発揮している。ウクライナ歩兵大隊は、ロシア軍の遺した武器によって、「機械化大隊」に変身しているという。大変な皮肉である。

     


    (3)「ハリコフ州の前線で戦うウクライナ砲兵大隊の参謀長によると、「ロシア軍はもはや、火力で優位性を持たない。われわれは攻撃前にロシアの砲兵部隊をたたきつぶしてから迅速に前進を始めたため、ロシア側は戦車に燃料を補給したり、荷物を積んだりする時間さえなかった。彼らは何もかもを置いて逃げていった」と述べた。公開情報を利用する軍事アナリストによると、ロシアが4月にキーウ(キエフ)などのウクライナ北部の都市から撤退した際に奪い取った兵器に今回の分が加わったことで、ロシアはウクライナにとって群を抜いて最大の武器供給国となり、その数は米国やその他の同盟国や友好国を大きく上回った。ただし、西側諸国が供与する武器は、より先進的で精度が高いことが多い」

     

    ロシア軍はもはや、火力で優位性を持たないという。ウクライナ軍が、「ハイマース」で弾薬庫をピンポイント攻撃し、兵站線を叩き潰した結果である。これでは、ロシア軍の本格的な反攻作戦は無理だろう。雌雄は、すでに決した感じだ。

     


    (4)「公開情報を利用したコンサルティングを提供するOryx(オリックス)がソーシャルメディアや報道から集めた視覚的な証拠によると、ウクライナはロシアの主力戦車460台、自走式榴弾砲92門、歩兵戦闘車448台、装甲戦闘車195台、多連装ロケット発射機44基を奪い取った。奪い取った全ての兵器が映像に収められているわけではないため、実際の数はもっと多い可能性が高い。全ての兵器が先進的というわけではない。Oryxで兵器損失リストを集計しているヤクブ・ヤノフスキ氏は、「彼らが奪い取っているのは、かなり有効に使える現代的な兵器と、本当は博物館に置いておくべき兵器の両方だ」と話す」

     

    ロシア軍は、最新兵器と博物館行きの古い武器で武装していたことが分った。ロシア軍の弱さを見る思いがする。ロシア軍は、この先どこまで戦えるか疑問符がつくのだ。

     

     

     

    テイカカズラ
       


    最近の円相場は、一進一退の動きである。1ドル=145円を割る勢いを失った感じを見せているのだ。為替市場では、介入を強く警戒している。この裏にある、世界的なドルピーク説が唱えられ始めていることに注目すべきだ。米国市場でのインフレ期待率が、急速な低下に向かっていることから、利上げも限界に近づいているとの見方である。円安ブレーキの背景には、こういう米国市場の動きが絡んでいることに注意したい。

     

    『日本経済新聞』(10月6日付)は、「為替トレンド 転換点なるか 円安一服感、介入を警戒 1ドル145円を『強烈に意識』」と題する記事を掲載した。

     

    外国為替市場では日本政府・日銀が9月に実施した円買い・ドル売りの為替介入をきっかけに円安の流れが停滞している。一方、米国ではドル高によるグローバル企業の収益悪化懸念などが顕在化し強いドルがもたらす「負の影響」について議論が活発だ。為替市場の潮目の転換点になるのか注目が集まる。

     


    (1)「外国為替市場で対ドルの円安一服を見込む声が増えつつある。政府・日銀は9月22日に24年ぶりとなる円買い・ドル売りの為替介入を実施した。市場では為替介入した1ドル=145円が節目として意識され、オプション市場では円安への備え以上に、急な円高に対して警戒が強まっている。これまで円を売ってきた個人投資家が145円で買い戻す注文も膨らんでいる。5日の東京外国為替市場で円相場は1ドル=143円台半ばと9月26日以来1週間半ぶり円高水準に上昇する場面もあった。3日昼には一時1ドル=145円40銭と介入後の安値を付けたものの、わずか10分間で再び144円台に戻された。その後再び145円台を付けたものの、定着せず144円台に押し戻された」

     

    最近の円相場は、1ドル=145円を節目に警戒されている。145円台を付けてもすぐに144円台へ押し戻されているのだ。市場の力学が変わってきた。

     


    (2)「9月中旬までは円売り需要の方が強かった。それが14日には日銀が為替介入の前段階とされる「レートチェック」を実施、22日に実際に為替介入に動いたことで、オプション市場では円高・ドル安に備えて円コールの需要が強まった。さらに144円台後半に集まる円買い注文も一方的な円安を阻んでいる。海外投機筋のみならず、「FX(外国為替証拠金)取引を手掛ける国内個人投資家も145円より先の円安は進みづらいとみて、多くの円買い注文を入れている」(国内FX会社)という。為替介入に対する警戒感も高まっている。円相場が145円近辺で少しでも大規模な円買い注文が入ると市場参加者が「為替介入か」と反応し買いが買いを呼ぶ展開となりやすくなっている。人工知能(AI)などを活用したアルゴリズム取引もこうした動きを増幅しているとの指摘もある」

     

    これまでの円安は、国内のドル買い派がリードしてきたと言われている。円売りで利益を上げてきた層が、円売りの旨味を知ったのだ。だが、それも限界に来たことを政府介入で思い知らされたのであろう。次の記事は、情緒でなく合理的にドル高ピーク説を説明している。

     


    『ロイター』(10月6日付)は、「
    ドル高に陰り、新興国投資にチャンス到来か」と題するコラムを掲載した。

     

    多くのFRB高官が、最優先課題は引き続きインフレ抑制であり、利上げはまだ終わっていないとのメッセージを投資家の胸に刻み込んでいる。だが、このメッセージは世界の資産価格にすでに織り込まれており、これが今年の資産価格急落の主因になったと言ってもまず間違いないだろう。

     

    (3)「投資家はその先を見ている。投資家が視野に入れているのは、ドル高の失速を示唆する状況だ。失速はすでに始まっているのかもしれない。主要通貨バスケットに対するドル指数は5日連続で下落。大した話には聞こえないが、これは過去1年余りで最長の下落だ。新興国各通貨に対するドル指数も、ピークを迎えつつあるのかもしれない」

     

    世界の投資家は、ドル高失速を嗅ぎ取り始めている。主要通貨バスケットに対するドル指数が5日連続で下落していることだ。これは、重大なシグナルである。

     


    (4)「消費者と市場が予想する米国の期待インフレ率は、着実かつ大幅に低下している。2年~20年物のブレークイーブンインフレ率は9月30日に2.15%まで低下した。1年半ぶりの低水準で、FRBの中期目標である2%が視界に入った。FRBが先月75ベーシスポイント(bp)の利上げを実施して以降、米国債利回りとインプライド金利は最大50bp低下した。トレーダーの間では、75bpの追加利上げ観測に冷めた見方が出ている。これは新興国市場の投資家、また特に自国通貨買い介入を実施している新興国の政策当局者にとっては、朗報と言える」

     

    ブレークイーブンインフレ率とは、市場が推測する期待インフレ率を示す。物価連動国債の売買参加者が予測する今後最大10年間における年平均物価上昇率である。このブレークイーブンインフレ率が、2.15%とFRB(連邦準備制度理事会)の中期目標である2%に接近していることだ。このことから、利上げも最終段階に来ていると推測するのであろう。とすれば、ドル高も終わるという筋書きである。

    このページのトップヘ