勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。


    中国経済は、10月に入って急速に悪化している。この窮迫する事態を正確に認識せず、従来通りの前提で見ていると大きな間違いが起るであろう。

     

    例えば、次のような指摘がある

     

    「国際決済銀行(BIS)によると、中国民間部門(金融を除く)の債務のGDP比率は210%強と急上昇しているが、政府債務比率が50%弱と低く、国全体の債務比率は264%と米国(250%)やユーロ圏(260%)並みにとどまっている」(『日経夕刊・十字路』11月20日付)。だから、中国経済は債務に耐えられると言外に見ているようだが、これは事実誤認である。

     

    中国の債務と米国やユーロ圏では、その質が異なっている。中国は、主として不動産バブルと過剰投資に伴う債務である。米欧は、健全な投資による債務であろう。現に米欧では、対GDP比の債務水準が高くても金融システムに目立った問題が起っている訳でない。中国では、不良債権発生で金融システムが破綻寸前にある。要するに、ここでは「債務の質」が問われている。この現実を忘れてはならない。

     

    『ロイター』(11月20日付)は、「中国、積極財政が必要、金融政策の効果薄れるー人民銀研究局長」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国人民銀行(中央銀行)研究局の徐忠局長は20日、中国経済に対する下押し圧力が一段と強まる中、金融政策による景気刺激効果は薄れているとの見解を示した。徐局長は北京で開かれた金融関連の会合で、中国経済に対する下押し圧力は、不動産規制や地方政府の債務抑制など、これまでの政策調整が一因となって生じていると指摘。中国は短期的な需要管理を改善すべきだとした上で、政策調整の仕組みを向上させ、画一的な政策を避けるべきと述べた」

     

    人民銀調査局長は、「中国経済に対する下押し圧力は、不動産規制や地方政府の債務抑制など、これまでの政策調整が一因となって生じている」と遠回しに言っている。だが、ズバリ単刀直入に言えば、過剰債務の重圧で「信用収縮」が起っていると指摘している。私はこの点を「メルマガ6号」でデータを用いて詳細に説明した。

     

    中央銀行はつい先頃、銀行に対して民間企業への積極貸し出しを要望したばかりだ。その舌の根が乾かないうちに、今度は財政支出を拡大せよと言い出している。この慌てぶりの中に、中国経済の迫り来る危機を感じないとすれば、相当に鈍感という誹りを受けても仕方あるまい。私は、平成バブル崩壊過程における修羅場が記憶に残っている。だから他国のことながら、切迫感を持つのだ。

     

    調査局長は、「経済に対する下押し圧力が一段と強まる中、金融政策による景気刺激効果は薄れている」と言い出した。金利を下げても、人民元相場下落に拍車をかけるだけである。景気刺激効果は少ないとまで言っている中に、中国経済が、もはや金融政策ではどうにもならなくなった。それを告白したものと受け取るべきだろう。

     

    (2)「同局長は、『金融政策は、成長を刺激するよりも景気過熱を抑制する上で効果がある』と指摘。『我が国はより積極的な財政政策を実施すべきだ。財政政策の余地は潤沢にある。積極的な財政政策では、インフラ投資の拡大を重視すべきだ』との認識を示した」

     

    前記のBISによれば、「中国民間部門(金融を除く)の債務のGDP比率は210%強、政府債務比率が50%弱」としている。実は、中国民間部門でも企業債務の半分は国有企業債務である。これは本来、政府債務に合算されるべきものだ。そうなると、政府債務は一挙に160%に達するはずだ。中国財政は、表面的には低い対GDP債務比率だが、実態は決してそのように甘いものではない。この事実を、ぜひ胸に刻み込んでいただきたい。

     



    朴ソウル市長は、かねてから次期大統領選に出馬意欲満々と伝えられている。むろん、「反日」をウリにしている。ソウル市議会で、与党「共に民主党」議員から、日本製品締め出しの質問が出るや、「検討してみる」と含みを残す答弁をした。

     

    この質問をした議員は、ソウル市内の学校で日本製品を使うなという質問をしたことのある「反日議員」である。今度はソウル市庁に矛先を変えて質問してきたもの。

     

    『朝鮮日報』(11月19日付)は、「ソウル市長、市庁内の日本製品、韓国製品で代替できるか検討」と題する記事を掲載した。

     

    ソウル市の朴元淳(パク・ウォンスン)市長は19日、「市庁で使用している日本製品を韓国製品で代替することが可能かどうか綿密に検討する」との考えを明らかにした。朴市長は同日午前に行われたソウル市議会の市政質問で、日本製品の使用禁止を提案した与党「共に民主党」のホン・ソンリョン議員の質疑に答えたもの

     

    (1)「ホン議員は、『ソウル市と教育庁(教育委員会に相当)が自主的に日本製品の使用を禁止することは、国際条約違反には当たらない。単なる歴史認識の問題だ」と述べた。朴市長は「ドイツの場合、冷戦終了後に財団を設立し、戦犯企業が(隣国に)賠償した。(日本は)欧州に比べ、履行が十分ではない。日本の戦犯企業が生産した製品をなぜ政府や地方自治体が購入するのかという(ホン議員の)問題提起に共感する」と述べた。その上で朴市長は「ソウル市が購入した日本製品は放送設備、医療機器、水質測定器、漏水探知機など特定分野のものであり、代替が容易ではない」と説明した。朴市長は「政府調達に関する条約は、法律より上位の効力を持つと憲法で定められているため(日本製品の使用を禁止すれば)この条約に違反する恐れがある」と述べた』

     

    ソウル市議会では、浮き世離れした質疑をして日本への憂さ晴らしをしている感じだ。日本企業に対して、「戦犯企業」というレッテルを貼っているからだ。多分、今回の韓国大法院の徴用工判決から出てきた言葉だろう。「旭日旗」は「戦犯旗」と呼ばれ、日本企業は「戦犯企業」になっている。公式の場で、よくここまで軽蔑した言葉を使えるものと「感心する」のだ。「感情8割、理性2割」の国民だと実感する。

     

    ならば、聞きたい。韓国では、その「戦犯企業」へ韓国大学生を就職させようと奨励金まで出す熱の入れ方だ。韓国は、言っていることと、やっていることが全く異なっている。

     

    このソウル市議会の質疑に対して、韓国市民は次のような反応をしている。

     

    『レコードチャイナ』(11月20日付)は、「ソウル市の日本製品を韓国製に替える?韓国ネットから懸念の声多数『韓国の技術では無理』」と題する記事を掲載した。

     

    (2)「韓国のネットユーザーからは、『これからは国産品だけ使うようにすべき!』というコメントが寄せられているものの、『国民の血税で購入した物をむやみに取り替えるべきではない』『しっかり使ってから取り替えるべき。予算は節約しないと』などの意見が多い。また、『人気取りのために必死だね』『市長の家では日本製品や外国製品は使ってないのか?税金を使って妙なことをしないでくれ』などの市長への批判や、『日本の高価な機器、技術不足で簡単に代替なんて無理な物が多いだろうに…』『放送装備に医療機器…。韓国には技術がないし、作れるところはないだろうね。特に放送装備は世界中で日本製品が使われている』などの指摘が多く見られた」

     

    市民の方が冷静である。就職口探しに必死の若者にとって、日本への就職は夢である。簡単に日本の悪口には乗らなくなってきたのだろうか。



    インド洋の島国モルディブで17日、9月の大統領選で野党統一候補として勝利したモルディブ民主党(MDP)のイブラヒム・モハメド・ソリ氏が大統領に就任した。前政権が親中国派を鮮明にしてきたが、「債務漬け」で批判を浴びて親インド派大統領就任という伝統的な関係に戻った。中国がインド洋にまで手を伸ばしたのは、「一帯一路」によってインドを地政学的に孤立させる目的である。

     

    モルディブをめぐるインドと中国の対立構図は、新大統領就任式にはっきり現れた。インドはモディ首相が出席したのに対して、中国は日本経済新聞の報道では文化旅行部トップとか。中国の掌がえしの対応が目立った。モルディブでは、中国の「負け戦」という対応だ。

     

    『日本経済新聞』(11月19日付)は、「モルディブ新大統領就任、対中債務の圧縮めざす」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「2008~12年に大統領を務めたMDP党首、モハメド・ナシード氏は今月、記者団に対し『私の知る限り、対中債務は30億ドルに上る。新政権は国の発展と同時に債務を返済していく』と語った。中国側はモルディブの対中債務を6億ドルと主張し数値に開きはあるが、新政権は中国とのインフラ整備事業の契約見直しなどに着手する方針だ」

     

    新政権は、30億ドルに上る対中債務圧縮に臨むという。中国は、実質GDPが30億6900万ドル(2016年)のモルディブへ30億ドルも貸し付ける。正常な感覚ではない。返済不能を見込んで、担保権を執行する積もりであったのだろう。新政権は、中国と交わしたインフラ事業の見直しを始める。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月20日付)は、「モルディブ、対中FTA見直し、新政権幹部が表明」と題する記事を掲載した。

     

    (2)「インド洋の島国モルディブは2017年12月に中国と交わした自由貿易協定(FTA)を見直す方針だ。17日に就任した親インド派のイブラヒム・モハメド・ソリ大統領の参謀役で、与党モルディブ民主党(MDP)党首のモハメド・ナシード元大統領がロイター通信に『対中貿易の不均衡が非常に大きい。(対中FTAを)維持できない』などと指摘した。国連統計によると、17年の中国からモルディブへの輸出額は2億9500万ドル(約332億円)だったが、モルディブから中国への輸出額は62万ドルにすぎない」

     

     中国は、モルディブへの輸出額は2億9500万ドル。輸入額がたったの62万ドルである。これでは、FTAが成り立つ基盤がない。中国に上手く丸め込まれて締結させられたに違いない。FTAを名乗るには、貿易のバランスが取れなければ意味はないのだ。中国は低い関税で利益を上げていたのだろう。中国の悪辣なビジネスが浮かび上がる。

     

     



    権力とは恐ろしいものである。妄想に基づく最低賃金大幅引き上げによって、80万人の国民が安定した生活基盤を奪われたからだ。今後も革新政権を継続させるには、労組と市民団体の支持を得なければならない。それには、これら支持団体の希望を叶えることだ。最低賃金の大幅引き上げの裏に、こういう思惑がある。権力維持のためには国民を犠牲にする。北朝鮮の金ファミリーと似た部分がある。

     

    朝鮮日報』(11月19日付)は、「最低賃金引き上げの逆説、韓国の中長期就業者80万人減」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「行き過ぎた最低賃金引き上げの影響で、低所得、低学力、低熟練という『3低』の労働者や自営業者が直撃を受けている。年初来10月末までの統計庁の雇用統計を分析した結果、最低賃金を16.4%引き上げた今年、短期就業者が過去最高となる一方、中長期の就業者は通貨危機当時以降の減少を示した」

     

    最低賃金引き上げの目的は、社会の底辺で苦吟する「低所得・低学力・低熟練」という「3低」の人々の賃金引き上げを意図するものだ。韓国は、これと逆のマイナス効果を生む最低賃金引き上げをやっている。ノーベル経済学賞受賞のミルトン・フリードマンは、最低賃金制度は雇用を破壊するとして反対した。労働需給に合わせた賃金決定が最善の策と指摘したのだ。文政権の生産性を無視した最低賃金引き上げを見ると、フリードマンの慧眼に敬服するほかない。

     

    (2)「韓国統計庁によると、今年に入り、労働時間が週1~17時間の短期就業者は前年同期比(10カ月平均値)で17万3000人増えた。統計を取り始めた1980年以降で最高だ。アルバイトが大半を占める短期雇用は給与が低い。一方、週36時間以上の中長期就業者は80万1000人減少した。通貨危機当時の1998年(165万人減)以降で最も激しい減少だった。昨年中、長期就業者が42万1000人増えたのと対照的だ」

     

    文政権は、安定した雇用構造を破壊した。労働時間が週1~17時間の短期就業者は、前年同期比(10カ月平均値)で17万3000人増えた。これは、政府が公的資金を使ったアルバイト募集の結果である。一方、週36時間以上の中長期就業者は80万1000人も減少した。公的資金の救済がなかったからだ。この文政権が、あと3年続く。韓国経済は崩壊する。



    中国経済の末端にある民間企業は、景気減速で塗炭の苦しみに遭っている。「信用収縮」というこれまでなかった事態で、企業も従業員も深刻な状態に追い込まれている。

     

    『大紀元』(11月19日付)は、「中国、景気鈍化で民間企業が苦境、賃金未払い・リストラ頻発」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米『ラジオ・フリー・アジア:RFA』(15日付)によると、広東省東莞市の家具生産会社『名将家具』が経営難のため、従業員への給料未払いが続いている。これに抗議して、14日同社の従業員数人が会社ビルの屋上に集まり、賃金が支払われなければ集団飛び降り自殺すると経営陣に迫った。東莞市民の鄭さんはRFAに対して、米中貿易摩擦、人件費の高騰、高い税金負担、原油価格の上昇などが原因で、地元の景気が悪化し、多くの民間企業が倒産したと話した。『現在、倒産を免れた企業も厳しい経営環境に直面している。来年には廃業に追い込まれる企業も多数ある。特に輸出関連の企業は非常に苦しい』という」

     

    家具メーカーの従業員数人が、会社の屋上から飛び降り自殺すると抗議するほど、賃金未払いが深刻になっている。家具は米国の関税引き上げ対象であるから、すでに業績へ影響が出ているのであろう。来年になれば、さらに多くの企業が廃業に追い込まれる見込みだという。

     

    (2)「中国メディア『中国経済網』は15日、農業農村部の8日の発表を引用し、約740万人の出稼ぎ労働者が『起業のため地元に帰った』と報じた。報道は、「ますます多くの農民工、大学・専門学校の卒業生、技術者、企業経営者などが、起業して豊かになるため、広大な農村で活躍を見せるだろう」と強調。ネットユーザーは当局の論調を疑問視している。30万人以上のフォロワーを持つ経済ブロガー『顔値財経程凌虚』は、『740万人との数値は、この前メディアが報道した『今年上半期に504万社(中国企業の総社数は約3100万社)の企業が倒産した』ことと合致していると帰郷が農民工の大規模な失業であると主張した』

     

    中国農業農村部(日本の農業水産省)によると、約740万人の出稼ぎ労働者が「起業のため地元に帰った」という。農民工による「起業」などあるはずがない。ウソ情報である。今年上半期に504万社(中国企業の総社数は約3100万社)の企業倒産による失業者の数に合致するという。

     

    民間企業の倒産社数は、中国全土の16%に上がっている。これだけで、社会不安が起っても不思議はない。この高い倒産比率が、信用収縮によることは間違いない。「貸し渋り」が深刻化している証拠だ。中国人民銀行は、民間向け貸出の増加目標を掲げている。だが、信用不安が起っている中で「焼け石に水」であろう。これぞまさに、「信用恐慌」の第一歩が始ったと見るべきだ。金融機関への波及を食い止めなければ、大変な事態になる。こういう事態を理解するには、金融状況を知ることが先決であろう。私の「メルマガ6号」(11月18日発行)を見ていただきたい。

     


    このページのトップヘ