勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。


    11月11日は、「通販狂騒曲」の日でもあった。熱気に押されて欲しくもない商品を買って返品するなど、大変は社会的なロスも出ている。アリババによると、「11月11日」1日だけの宅配件数は、10億件を超えたというから驚きである。日本の年間の宅配件数の4分1にも当るという。このうち、どれだけが返品されたのか。今年も発表はない。ただ、18年の独身の日の取扱高は、前年比26%増となったとはいえ、17年の39%に比べると伸び率は鈍化している。「消費堅調」とは言えなかった。

     

    『レコードチャイナ』(11月14日付)は、「世界最大の爆買いセールは今年も返品ラッシュ、酔ってクジャクを買った人まで」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「『観察者網』(11月14日付)は、中国では1111日は「独身の日でネット通販最大手・アリババでは今年のセールでの取引総額が過去最高を記録した。その一方で、一時の気の迷いで要りもしない商品をネットでうっかり購入してしまう人も多く、返品ラッシュもすさまじいという。多くは衣類や靴などの小物だが、驚きの商品を買ってしまって後悔する人もいる」

     

    「シャンプーが35%引き、サンダルは2割引きで購入できた」と大喜びの人がいる一方で、酔って購入ボタンを押してしまい悔やんでいる人も。一時の熱気は恐ろしいものだ。

     

    (2)「ある人は、深夜に酒に酔ったままネットショッピングのカートを確かめもせず注文してしまった。翌朝、ペット向けのミニブタと生後8カ月のメスのクジャクが発送待ちだという内容のメールが届いていることに気付いた。メールボックスをよく調べてみると、別のショッピングサイトでもさらになぜか食材として『オオサンショウウオ』まで購入していたことが分かったという。ミニブタとクジャクは運よく注文をキャンセルできたが、オオサンショウウオはキャンセルも返品できず、『料理の仕方をネットで調べているところ』だとSNSで明かしている」

     

    秀逸な「ミス発注」は、ペット向けのミニブタと生後8カ月のメスのクジャクだ。マンション暮らしなら、どうやって飼育するつもりだっただろうか。笑うに笑えない話だ。こんな類いの話はゴマンとあるに違いない。アリババが、公開したならば中国中を駆け巡る「小話」が創作されるだろう。独身の日の副産物である。



    中国人は、昔から「大言壮語」を好む民族とされている。有り体に言えば、「大法螺」を好む習性を持っている。これを的確に表わす調査結果が出てきた。

     

    英誌『エコノミスト』の調査部門「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)」が最近発表した世界50カ国の住民調査リポートによると、中国人の91.4%が自国の未来に対して極めて楽観的な態度を示したという。彼らは、中国は今後10年間も進歩を続け、さらに素晴らしい社会に向け前進していくとの見方を示した。

     

    このような夢と希望に満ちた将来展望を持てる国民は、何と幸せなことかと思う。反面、これからの10年、この夢が叶えられなかった場合、その反動がどれだけ大きいかを想像すると、ゾッとする気持ちに襲われる。

     

    すでに、労働者が抗議ストを始めている。これに中国のエリート大学の卒業生や現役学生が加わって加担している。中国には、前記の世論調査が示す庶民感覚と100%異なる現実が発生している。そのことに大衆が気付き、労働者や学生の抗議の隊列に参加したとき、中国はどうなるのか。「今後10年間は破竹の成長が不可能」という現実とその矛楯を知って愕然とするに違いない。

     

    『レコードチャイナ』(11月13日付)は、「中国人の国家の未来に対する楽観は何に由来するのか」と題する記事を掲載した。この記事は、CRI論説員・苑聴雷氏の執筆である。

     

    (1)「今年はちょうど、中国が改革開放を実行してから40周年だ。改革開放は、中国の指導者である習近平国家主席が『中国を深く改変した。世界をも深く改変した』と称した事業であり、中国の『第二革命』だ。英誌エコノミストの調査部門『エコノミスト・インテリジェンス・ユニット』(EIU)の調査結果はひとつの面を反映している。それは、今日の絶対多数の中国人が国家の将来の発展に対して極めて楽観していることの源泉は、過去40年間の改革開放が中国人に獲得感をもたらしたことであり、彼らは中国が将来も改革開放をたゆまず推進し続けることを期待し、信じているということだ」

     

    今年が、改革開放40周年である。この間に、中国は物的には豊かになった。それは、誰も否定できない事実である。同時に、来年が天安門事件から30年経つことも忘れてはならない。精神的な自由を求めた学生たちの純粋な願いは、同胞である人民解放軍の戦車と銃剣によって踏み潰された。この現実は、当局によって闇に葬られ、歴史として記述されることさえ拒まれている。これもまた、否定しがたい中国の姿なのだ。

     

    中国は、物的な豊かさと精神的自由の束縛というコントラストの上に存在する。これほど不安的な国家があるだろうか。物的な豊かさは、精神的自由を解放させる原動力になるはずだ。マズローの人間欲求五段階説でも、それを明確に示している。人間が持つ「自己実現の原則」がここにある。中国の「80後」(1980年代生まれ)、「90後」(1990年代生まれ)は、すでに、マズローの指摘した通りの「自己実現」を人生第一の価値基準にして行動している。この事実を知るべきである。

     

    中国は、物的豊かさが精神的自由を束縛する巨大な矛楯の壁に取り囲まれている。そのことに気付かなければ危険である。来年の天安門事件30周年は、国民の不満が噴き出す絶妙な時期に遭遇する。


    (2)「中国が社会を発展させつつある中で、依然として多くの困難と問題があることは否定できない。例えば中国の指導者は、現代中国社会の主要な矛盾とは、日増しに高まるすばらしい生活に対する人民の求めと、不均衡で不十分な発展の間の矛盾と位置づけている。そして、3年の時間の間に重大なリスクに対する防備と無力化・ピンポイント貧困脱出・汚染の防除という三大戦役を攻略して打ち勝つことを決意した。この三大戦役も、中国がさらに高い質の発展に邁進することを後押しすると予想してよい」。

    中国の指導者は、現代中国社会の主要な矛盾とは、日増しに高まるすばらしい生活に対する人民の求めと、不均衡で不十分な発展の間の矛盾と位置づけている、という。唯物論者の本質的な欠陥を示す認識が、ここに現れている。人間は、「考える葦である」。人間は、葦のように弱い存在だが、考える力を持っている。毛沢東が、軍事革命を思い付いたのもこれである。人間が「矛楯」に気付いたときどのように行動するか。中国共産党はそれを知り尽くしているはずである。自らもそれを実践したからだ。その共産党が今、支配階級として永遠に君臨しようと考え始めた。その邪悪な欲望が、中国危機の発火点である。「人はパンのみに生きるにあらず」なのだ。



    韓国は、経済が沈滞局面入りしているにもかかわらず、政府与党は北朝鮮支援に血眼になっている。このちぐはぐさが何とも奇妙に映るのだ。ここまで革新派が、北朝鮮支援に熱意を込めているのは、北朝鮮の「主体思想」(チュチェ思想)という民族主義を信奉しているからだ。韓国左派は、「86世代」という「親中朝・反日米」派が実権を握っており、北に大きく傾斜した政策を展開する危険性を秘めている。

     

    彼らが韓国政権を握っている以上、「北旋回」は不可避なのだろう。この「86世代」が、韓国の政治と経済に何をもたらすのか。私の「メルマガ5号」(11月15日発売)で特集する。

     

    『朝鮮日報』(11月13日付)は、「宝くじの収益まで北朝鮮支援に振り向ける韓国政府」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「韓国与党・共に民主党所属の国会議員12人が12日、宝くじの収益の一部を南北協力基金に使えるようにする法改正案を提出した。宝くじの収益のうち他の基金に配分される割合は現在35%だが、これを40%とし、その一部を南北協力基金に使うのが目的だ。韓国政府は来年度の南北協力基金予算として1970億ウォン(約1100億円)を確保しているが、南北協力事業が今後拡大すれば足りなくなる恐れがあるため、宝くじの収益をこれに充てるということだ。今後法案が成立し宝くじ収益の配分割合が40%になれば、およそ800900億ウォン(約8090億円)を南北協力基金に使用できるという。また韓国統一部(省に相当)も副予算のうち南北協力基金に振り向ける転出金を今年の800億ウォン(約80億円)から来年は2000億ウォン(約200億円)に引き上げる予算案を提出した」

     

    宝くじの収益のうち、他の基金に配分される割合は現在35%である。これを40%に引き上げ、その一部を北朝鮮支援に振り向ける議案が国会へ提出されたこの宝くじで分配金が約80~90億円も北朝鮮へ流れる仕組みができる。だが、北は核放棄を実行しないで、これだけの援助が得られれば、ますます非核化が遠くなる。韓国政府は、この点のバランスをどうするのか。韓国の支援金が核開発に向けられない保証は何もないのだ。北朝鮮は「棚ぼた」である。

     

    (2)「韓国国内の道路や鉄道整備に使われる予算のうち、これまで使われず残ったか残る見通しの予算は12兆ウォン(約12000億円)に上るが、この巨額の予算も北朝鮮への支援に使われるという。おそらく最初から北朝鮮に振り向ける意図で予算が編成されていたのだろう。だとすれば完全に国民を欺いたことになる。さらに統一部は南北協力基金のうちおよそ4000億ウォン(約400億円)を使途が公表されない「非公開編成額」としているが、この予算は国会の監査も受ける必要がない」

     

    文政権は、道路や鉄道整備に使われる予算を使わずに余しているという。その金額が1兆2000億円にもなるという。日本の会計検査院であれば、絶対に「予算流用」は認められない事項だ。この使い残しを北朝鮮支援に振り向ける。話がここまで脱線してくると、意図的にやっていることは疑いない。まさに「積弊一掃」に値する事項である。保守党政権に代わったら、この不明朗な動きは絶対に捜査すべき対象である。北と密約を結んでいたとなれば、「大疑獄事件」となろう。



    不動産会社は、今年1~3月期では大量の土地を仕入れていた。住宅販売にブレーキがかかり始めているのに、何と鈍感な営業活動をしているのか。余計なことながら、そういうコメントを付けてきた。その鈍感経営も、7~9月はついに土地仕入れを大幅に圧縮して、慎重な姿勢に変わった。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月12日付)は、「中国、万科など大手20社不動産用地取得6割減」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国の不動産大手が新規用地取得に慎重になっている。万科企業(広東省)など大手20社が201879月に取得した総面積は、前年同期に比べて6割強減った。米中貿易摩擦による景気の先行き不透明感に加え、直近の販売額の伸びが鈍化したことなどから各社が当面、大きな需要が見込めないと判断したようだ」

     

    中国景気は、すでに停滞局面入りしている。今後2年間で、1%ポイント見当の経済成長率が低下しそうな局面で、住宅購入層が大いに絞られるのは当然である。不動産業界は意外と、長年のバブルで経営感覚が狂っているのだろうか。

     

    (2)中国の不動産大手20社の実績を集計によると、同期間の取得面積は前年同期を63.%下回った。取得金額も57%減り、特に9月単月では下げ幅は7割以上になった。このうち中国海外発展は期間中、計16カ所で土地を取得した。ただマンション需要の強い大都市では北京の2カ所にとどまり、取得金額は10%減った。各社が用地取得をためらう背景にあるのが景況感の厳しさだ。20社の79月のマンション販売総額は35%伸びたが、伸び率は46月に比べて4.6ポイント下落。需要が鈍化傾向にあることがうかがえる」

     

    7~9月期の取得面積は前年同期を63.%下回った。取得金額も57%減り、特に9月単月では下げ幅は7割以上になった。9月の取得金額が7割以上も減ったのは、完全な「戦線縮小」である。来年後半の住宅販売が、この土地取得減に見合った減少率になるのは不可避であろう。「住宅大不況」の到来を予告している。



    米中間選挙が終わって、2年後の大統領選に照準が合わされている。共和党は、現職のトランプ氏。民主党は前回選挙で死闘を演じたヒラリー・クリントン氏という説が出てきた。現在、民主党には有力候補者がいないと言われている。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月13日付)は、「次の大統領選・ヒラリーはまた出馬する」との寄稿を掲載した。

     

    筆者のマーク・ペン氏は19995~2008年にビル・クリントン氏やヒラリー・クリントン氏の世論調査員やシニアアドバイザーを務めた。アンドリュー・スタイン氏は民主党マンハッタン区責任者やニューヨーク市議会の議長を務めた経験を持つ。両氏とも、政界と関係が深い点で、深層部分を把握しているのであろう。

     

    (1)「ロシアが米大統領選に介入したとの主張と選挙人団制度の不公平さを盾に、クリントン氏は敗北を本当には認めなかった。またも略奪されたのだと自分に言い聞かせた。だが2年にわたって思い悩み、解き放たれた。クリントン氏は、素人がもたらした屈辱的な敗北で自身のキャリアを終わらせたりはしないだろう。同氏が再び大統領選に出馬すると期待していい。上院民主党から出馬表明が相次ぐ序盤ではなさそうだが、予備選が本格化するまでには必ずそうする」

     

    ヒラリー氏は、落選後の2年間で吹っ切れた。政治の素人であるトランプ氏に敗れた屈辱のままに、自らの政治生命を終わらせる積もりはないという。再度、トランプ氏と戦い雌雄を決する覚悟を固めたというのだ。

     

    (2)「クリントン氏は民主党支持者から75%の支持を得ている。米国初の女性大統領になる使命を帯び、トランプ氏には個人的に憤りを覚えている。トランプ氏の支持者は「彼女を収監しろ!」とシュプレヒコールを上げてクリントン氏をさらし者にした。その復讐(ふくしゅう)はなされなくてはならない。ヒラリー4.0(ヴァージョン4)は強気に出そうだ。自身を受け入れなかったアイオワ州の党員集会参加者を何としても取りに行くとみられる。彼らの目に映るクリントン氏は、強く、党派心に満ち、左寄りで、民主党そのものだろう。肝が据わり、経験豊富で、打倒トランプ氏を冷酷に狙っているように見えるはずだ。クリントン氏にはこれまで2年間、何が悪かったかを分析し、トランプ氏との再対決の戦略を練る時間があった」

     

    前回大統領選では、ほぼ勝利を手中にしていたかのごときヒラリー氏は、メールの私用問題でケチがつき土壇場で勝利を逸した。彼女は、これまで大きな局面転換において、自らの立ち位置を変え新たな「ヴァージョン」を立ち上げて乗切ってきた。今回は、最後の「ヴァージョン4」で、トランプ打倒に立ち向かう、というのだ。女性初の大統領として、女性の地位向上を賭けた戦いをすると見ている。

     

    (3)「リチャード・ニクソンは1960年の大統領選でジョン・F・ケネディに敗れたが、68年の大統領で勝利を手にした。ニクソンは再挑戦の手本になりそうだ。クリントン氏は、フーマ・アバディン氏とバンで移動して小さなイベントや地道な活動を行うことはしないとみられる。正攻法に転じ、背後にいるプロの女性軍団を動員し、自身のソーシャルネットワークを駆使し、寄付金を集めまくるだろう。誰にも止められない『トランプおろし』の勢力になることを目指し、「#MeToo」運動や皆保険や銃規制を訴えて戦うだろう。自信あふれる自立した候補として、今回はクリントン元大統領やオバマ氏を脇に追いやり、2人が選挙資金調達で果たす役割を抑えることになりそうだ」

     

    ヒラリー氏は、ニクソンを手本にして再挑戦すると見られる。その武器になるのが、次の点だと指摘している。

       プロの女性軍団を動員し、自身のソーシャルネットワークを駆使し、寄付金を集めまくるだろう。

       「トランプおろし」の勢力になることを目指し、「#MeToo」運動や皆保険や銃規制を訴えて戦うだろう。

       夫クリントンやオババ氏から独立して、彼らは後方の資金調達係に徹するだろう。

     

    トランプ氏にとって脅威になるのは、②である。「#MeToo」運動、皆保険、銃規制は、米国を二分する価値観の対立に生んでいる。ヒラリー氏が、この対立に終止符を打つ目標を掲げれば、相当の効果が期待できそうである。

     

    ヒラリー氏の外交政策は、保守党寄りである。内政問題が、大きな争点になるに違いない。今後2年間、米国内外の情勢は大きく変わるであろう。その変化を、いかに味方につけるか。ヒラリー氏の勝負どころになる。


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