習近平氏は、一人で「ゼロコロナ政策」に酔い悦に入っているが、中国14億の人民は、明日の見通しが立たないという絶望状態に追い込まれている。周辺でわずかな人がコロナに感染すると、「一網打尽」で何万、何十万人の人々の生活歯車が止められ、閉じ込められるのだ。これでは、生活設計が立たないのだ。消費を切り詰め貯蓄に励むという「穴蔵生活」が始まっている。中国経済が凍土になろうとしているのだ。
『ロイター』(8月27日付)は、「中国の消費回復は容易ならず、ロックダウンの恐怖まん延」と題するコラムを掲載した。
ロックダウン(都市封鎖)の実施と解除が繰り返されている中国は、「傷」が癒えるのに時間がかかっている。電子商取引大手JDドットコム(京東商城)とスマートフォン(スマホ)メーカーの小米科技(シャオミ)の四半期決算からは、消費者が非必需品の購入を控えている様子が読み取れ、消費が急速に回復するとの期待は打ち砕かれた。消費の回復は政府の見込みよりも遅れる可能性がある。
(1)「当局が上海など主要都市で実施していた厳格なロックダウンを6月に解除した後、大きな打撃を受けていたサービスセクターが持ち直したのは自然な流れだった。コロナ禍の不満を晴らす「リベンジ消費」が小売販売の回復を後押しし、政府統計によると自動車と化粧品の販売は前年比でそれぞれ14%と8%増えた。しかし、リベンジ消費は短命だった。JDドットコムが23日発表した4~6月期の売上高は市場予想を上回ったが、同社は衣料など非必需品の需要は依然として弱いとの危機感を示した。顧客はスマホなど電子製品の買い替えを先延ばしした。シャオミが19日発表した4~6月期の売上高は前年比で20%落ち込んだ」
ロックダウン明けの消費は、一時的な回復を見せたが息は続かなかった。収入見通しが付かない結果である。ロックダウンが、いつ再び始まるか分らない。その恐怖感が、消費を抑制している。
(2)「他にも点滅している赤信号がある。キャピタル・エコノミクスのアナリストによると、自動車販売とサービスセクターの電力消費は7月にわずかに増加したが、都市間交通機関の乗客数は引き続き低迷。キャピタル・エコノミクスが算出する中国の経済活動に関する指数によると、7月の経済生産全体は前年同月比で減少した」
『ブルームバーグ』(8月26日付)は、8月の中国景気を次のように報じている。
不動産市場は8月も低迷。政府が数カ月にわたり住宅ローンを増やしローン金利を引き下げるよう取り組んでいるにもかかわらず、中国の上位4 都市では販売が急減し続けている。自動車販売の伸びも7月に比べて大幅に鈍化した。記録的な干ばつに伴う電力危機や新型コロナの感染再拡大など、8月に生じた逆風は、特に中小企業の景況感を損ねている。英銀スタンダードチャータードが中小企業500社余りを対象に実施した調査は、生産活動が「大幅に減速」し、新規受注が軟化、銀行の資金調達コストが上昇したため、8月に景況感が悪化したことを示している。要するに、8月はさらに悪化する予測である。
(3)「原因のほとんどは、新型コロナウイルスの拡大を厳格に抑える「ゼロコロナ」政策にある。人々はいつ、どこで実施されるか分からないロックダウンに不意に巻き込まれるリスクを計算に入れなければならない。上海のイケアで当局が顧客を店内に閉じ込めようとした時、脱出しようとする顧客の顔に浮かんだパニックの表情を見れば明らかだ。この夏には海南島で新型コロナの感染が確認され、約8万人の旅行客が足止めを食らった」
ロックダウンが、市民に恐怖感を与えている。中国国民は世界で唯一、習氏の「モルモット」実験材料にされている。その結果は、経済的に大きなマイナス点になるが、習氏は自分の「国家主席3期目」の実現しか眼に入らないのだ。
(4)「だからといってオンラインでスマホが買えなくなるわけではない。危険なのは、消費者信頼感の悪化が慢性化することだ。例えば日本ではデフレ状態が何年も続いたため、物価は下がり続けるものだとの考えが定着し、買い物を先延ばしするのが当たり前になった。日本がなんとかこうした消費行動を変えるまで長期にわたり景気は低迷している。しかも、その変化はまだ道半ばだ。中国の貯蓄率は既に世界最高水準だが、最近の中銀の調査によると、消費するより貯蓄したいと答えた人の割合は58.3%と、過去20年間で最高となった」
ロックダウンは、消費者の信頼感を奪っている点が重大問題である。将来見通しが付かない点では、バブル崩壊後の日本経済と瓜二つである。中国は、無自覚のうちに日本の辿って来た道に嵌り込んでいる。「反日」中国が、日本の歩んだ道へ迷い込んでいる。皮肉なことだ。
(5)「景気低迷の広がりを考えて、民間部門は投資と雇用を圧縮している。『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』によると、電子商取引大手アリババは4~6月期に人員を1万人近く削減した。中国政府が消費者の信頼感回復に手間取れば、悲観論が自己強化されるリスクは大きくなる」
アリババだけでない。他の大手通販も同じである。昨年7月の「共同富裕論」以来のIT関連ビジネスへの締め付けてきた結果である。国民から雇用を奪っているのだ。
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2022-08-22 |