勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    ムシトリナデシコ
       

    習近平氏は、一人で「ゼロコロナ政策」に酔い悦に入っているが、中国14億の人民は、明日の見通しが立たないという絶望状態に追い込まれている。周辺でわずかな人がコロナに感染すると、「一網打尽」で何万、何十万人の人々の生活歯車が止められ、閉じ込められるのだ。これでは、生活設計が立たないのだ。消費を切り詰め貯蓄に励むという「穴蔵生活」が始まっている。中国経済が凍土になろうとしているのだ。

     

    『ロイター』(8月27日付)は、「中国の消費回復は容易ならず、ロックダウンの恐怖まん延」と題するコラムを掲載した。

     

    ロックダウン(都市封鎖)の実施と解除が繰り返されている中国は、「傷」が癒えるのに時間がかかっている。電子商取引大手JDドットコム(京東商城)とスマートフォン(スマホ)メーカーの小米科技(シャオミ)の四半期決算からは、消費者が非必需品の購入を控えている様子が読み取れ、消費が急速に回復するとの期待は打ち砕かれた。消費の回復は政府の見込みよりも遅れる可能性がある。

     


    (1)「当局が上海など主要都市で実施していた厳格なロックダウンを6月に解除した後、大きな打撃を受けていたサービスセクターが持ち直したのは自然な流れだった。コロナ禍の不満を晴らす「リベンジ消費」が小売販売の回復を後押しし、政府統計によると自動車と化粧品の販売は前年比でそれぞれ14%と8%増えた。しかし、リベンジ消費は短命だった。JDドットコムが23日発表した4~6月期の売上高は市場予想を上回ったが、同社は衣料など非必需品の需要は依然として弱いとの危機感を示した。顧客はスマホなど電子製品の買い替えを先延ばしした。シャオミが19日発表した4~6月期の売上高は前年比で20%落ち込んだ」

     

    ロックダウン明けの消費は、一時的な回復を見せたが息は続かなかった。収入見通しが付かない結果である。ロックダウンが、いつ再び始まるか分らない。その恐怖感が、消費を抑制している。

     


    (2)「他にも点滅している赤信号がある。キャピタル・エコノミクスのアナリストによると、自動車販売とサービスセクターの電力消費は7月にわずかに増加したが、都市間交通機関の乗客数は引き続き低迷。キャピタル・エコノミクスが算出する中国の経済活動に関する指数によると、7月の経済生産全体は前年同月比で減少した」

     

    『ブルームバーグ』(8月26日付)は、8月の中国景気を次のように報じている。

     

    不動産市場は8月も低迷。政府が数カ月にわたり住宅ローンを増やしローン金利を引き下げるよう取り組んでいるにもかかわらず、中国の上位4 都市では販売が急減し続けている。自動車販売の伸びも7月に比べて大幅に鈍化した。記録的な干ばつに伴う電力危機や新型コロナの感染再拡大など、8月に生じた逆風は、特に中小企業の景況感を損ねている。英銀スタンダードチャータードが中小企業500社余りを対象に実施した調査は、生産活動が「大幅に減速」し、新規受注が軟化、銀行の資金調達コストが上昇したため、8月に景況感が悪化したことを示している。要するに、8月はさらに悪化する予測である。

     


    (3)「原因のほとんどは、新型コロナウイルスの拡大を厳格に抑える「ゼロコロナ」政策にある。人々はいつ、どこで実施されるか分からないロックダウンに不意に巻き込まれるリスクを計算に入れなければならない。上海のイケアで当局が顧客を店内に閉じ込めようとした時、脱出しようとする顧客の顔に浮かんだパニックの表情を見れば明らかだ。この夏には海南島で新型コロナの感染が確認され、約8万人の旅行客が足止めを食らった」

     

    ロックダウンが、市民に恐怖感を与えている。中国国民は世界で唯一、習氏の「モルモット」実験材料にされている。その結果は、経済的に大きなマイナス点になるが、習氏は自分の「国家主席3期目」の実現しか眼に入らないのだ。

     


    (4)「だからといってオンラインでスマホが買えなくなるわけではない。危険なのは、消費者信頼感の悪化が慢性化することだ。例えば日本ではデフレ状態が何年も続いたため、物価は下がり続けるものだとの考えが定着し、買い物を先延ばしするのが当たり前になった。日本がなんとかこうした消費行動を変えるまで長期にわたり景気は低迷している。しかも、その変化はまだ道半ばだ。中国の貯蓄率は既に世界最高水準だが、最近の中銀の調査によると、消費するより貯蓄したいと答えた人の割合は58.3%と、過去20年間で最高となった」

     

    ロックダウンは、消費者の信頼感を奪っている点が重大問題である。将来見通しが付かない点では、バブル崩壊後の日本経済と瓜二つである。中国は、無自覚のうちに日本の辿って来た道に嵌り込んでいる。「反日」中国が、日本の歩んだ道へ迷い込んでいる。皮肉なことだ。

     


    (5)「景気低迷の広がりを考えて、民間部門は投資と雇用を圧縮している。『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』によると、電子商取引大手アリババは4~6月期に人員を1万人近く削減した。中国政府が消費者の信頼感回復に手間取れば、悲観論が自己強化されるリスクは大きくなる」

     

    アリババだけでない。他の大手通販も同じである。昨年7月の「共同富裕論」以来のIT関連ビジネスへの締め付けてきた結果である。国民から雇用を奪っているのだ。

     

    つぎの記事もご参考に。

    2022-08-22

    メルマガ388号 習近平の「大罪」、27年後の建国100年 人口7億人「亡国の淵」

     

     

    あじさいのたまご
       

    習近平氏は口を開けば、「中国式社会主義」と自画自賛している。だが、現在の長江一帯地域での停電騒ぎは、その自画自賛とほど遠いことを物語っている。異常気象による干ばつの責任は、「中国式社会主義」にないとしても、その対応を巡る当局の判断ミスは追及されるべきだ。市場経済であれば、こういう事態に対してもっとスマートな対応ができる筈だ。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月27日付)は、「ぜい弱な中国の電力供給、猛暑に重なった政策ミス」と題する記事を掲載した。

     

    中国では今月、干ばつで多くの工場が閉鎖に追い込まれ、市民は暗闇の中での通勤を余儀なくされた。上海中心部の観光名所、外灘(バンド)からも明かりが消えた。

     

    (1)「干ばつによるエネルギー不足は、大きな被害を受けた四川省の地元当局者と電力会社幹部らの判断ミスによってさらに増幅されたことが明らかになった。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)が文書の内容を確認した。同省は7月、貯水池の水量を使い果たし、1年前を15%上回る水準まで他省への電力供給を増やしていた。当局者らは、通常は雨期に当たる8月に貯水池は再び満たされると見込んでいた」

     

    これまで、自然エネルギーの重要性が叫ばれてきた。今回の四川省の停電騒ぎは、異常気象により水力発電が機能しなかった典型例になった。改めて「ベースロード」電源確保の必要性を突きつけている。自然エネルギーは万能でなかったのだ。今後の異常気象頻発リスクを考えると、中国はサプライセンターとして危険地帯になった。

     


    (2)「
    今回の問題は、中国のエネルギーシステム自体のもろさと、気候変動に起因する異常気象に対するぜい弱さを露呈することになった。中国では、異例の猛暑に見舞われる中で、豊かになった市民による冷房需要が急増している。四川省は水力発電が盛んで、通常なら隣接する省に電力を融通することができる。だが、水力発電に頼るエネルギー供給は、干ばつによる影響をもろに受けやすい。同省には非常用の石炭火力発電所もあるが、フル稼働しても、不足分を補うことはできない

     

    中国産石炭は、有害物質が多く火力発電に向かない限界を抱えている。こうなると、ベースロード電源は原子力発電か水素発電に頼らざるを得まい。中国の、エネルギー問題は異常気象下において極めて深刻な事情を抱えていることを浮き彫りにしている。

     

    もともと中国は、異常気象には最も脆弱体質と指摘されてきた。中国北部の水源不足が原因で、地下水を恒常的にくみ上げすぎてきた。その結果、華北平原は熱波に耐えられないという科学データが提示されている。「呪われた大地」になっているのだ。

     


    (3)「四川省のエネルギー当局や電力取引所、国有電力配送会社である国家電網公司の子会社2社による内部報告書は、7月に警戒すべき兆しが出ていたにもかかわらず、当局者が干ばつ被害の深刻さを甘くみていたことを如実に物語っている。WSJがその内容を確認した。その結果、8月には4つの極めて大きな要因が一気に重なり、電力不足に陥ったと報告書の1つで指摘されている。具体的には、過去最高の気温と過去最大に上る電力需要、過去最少の降雨量、そして貯水池・水力発電所に流れる水量が過去最低となったことだ」

     

    四川省当局は、事前に干ばつ被害の大きいことを予告されていた。それを無視して、他省への電力販売契約をしたことが、停電騒ぎを大きくした理由だ。四川省が、財源不足を補うべく背に腹を変えられずに、電力販売契約したものと推測される。「貧すれば鈍する」というケースだ。

     


    (4)「四川省のエネ当局によると、冷房使用で一般世帯の電力消費が7月に前年比で45%も増加している。四川省は8月に状況が悪化した場合に備えてエネルギーや水の使用をできる限り節約する措置は講じなかった。むしろ、水力発電量を前年比4%減の水準に維持するため、貯水池の水量を大きく減らした。文書によると、8月半ばまでには、四川省西部の貯水池の水位は使用可能な最低水準をわずか4%弱上回る程度にまで落ち込んだ。雨期に貯水池の水量を減らしておくことは一般的な慣例で、楽観する根拠もあった。中国気象庁は8月の気温は平均を上回るものの、四川省北部と北西部で歴史的な平均水準を最大20%上回る降雨量になるとの予報を出していたためだ。同省の送電会社の文書から分かった」

     

    中国気象庁も雨量の予測違いをした。四川省は、この予測に従いダムの水をほぼ空にして雨期に備えていた。中国水利省は、気象庁とは別に長期の水不足を予告している。四川省、この二つの上部機関の間で揺れ動いたのだ。気象庁にも責任の一半があるのだ。

     


    (5)「四川省は複数の省との間で電力供給の取り決めを結んでおり、7月には240億キロワット時の電力を他省に振り向けた。別の文書によると、猛暑や干ばつによる電力ひっ迫に見舞われていた四川省は同時に、近隣の陝西省 に緊急の電力供給を依頼していた。だが、熱波が中国中部や東部にも波及する中で、四川省が他省から支援を得ることもできなかった」

     

    干ばつは、四川省だけに起こった問題でない。周辺地域に起こっている。四川省が、電力不足に陥っても他省が救援できる余裕はなかった。

     

    (6)「8月を通して記録的な熱波と干ばつが中国を襲う中で、状況はさらに悪化。四川省の当局者は8月15日、産業向けの電力供給を6日間制限したが、専門家からはそれでも過度に楽観的だとの指摘が上がっていた。結局、状況は改善せず、20日には制限措置が延長された。天風証券では四川省の停電だけで、中国の鉱工業生産を最大で推定0.6ポイント押し下げると分析している」

     

    水利省は、発電できるまで水量が回復するには数ヶ月を要するとしている。だが、来年2月頃は渇水期を迎える。水力発電が満足にできるかどうか見通しは難しい。

     

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    日本は2019年、韓国に対して「半導体主要3素材」の輸出手続き規制を行なった。いわゆる「ホワイト国」扱いからの排除である。輸出手続きを一括して行なうことから、個別手続きに戻したに過ぎず、韓国はこれを「輸出規制」と騒いできた。実態は、輸出手続きの問題であり、輸出そのものの規制ではない。

     

    韓国は、これを不服として大々的な「反日不買運動」を始めたが、同時に「ホワイト国へ戻せ」と要求している。現在もこの要求は続いているが、「ホワイト国」一覧を見ると、親日国ばかりである。「反日」などあり得ないという国々だ。それに比べると、韓国は異質である。日本の誠意が通じず、常に「謝罪と賠償」を言い立ててくる国である。

     


    韓国のユン政権は、日本接近の外交姿勢を見せているが、再び進歩派(民族主義)政権に戻って、「反日運動」をしない保証はないのだ。「輸出手続き規制」は、手続きの煩わしさはあっても輸出の障害にはならない。「半導体主要3素材」の輸出手続き規制を続けて、韓国の「反日」へのブレーキにすべきである。韓国は、日本の善意を「韓国の権利」と錯覚する国である。こういう国情を忘れると、日本は再び悔しい思いをさせられるにちがいない。転ばぬ先の杖である。

     

    『中央日報』(8月27日付)は、「韓日関係専門家『経済安保協力レベルで輸出規制の解除を』」と題する記事を掲載した。

     

    韓日関係の専門家が早期に韓日首脳会談を実施し、両国首脳のシャトル外交を再開すべきだと促した。また両国経済安保協力レベルで日本が韓国に断行した輸出規制を緩和すべきだと主張した。



    (1)「韓国国際交流財団(KF)と日本国際交流センター(JCIE)が24~26日に東京で開催した「第30回韓日フォーラム」の出席者は26日に発表した共同声明で、現在の韓日関係の改善のために「両国首脳が国民を説得して突破口を開くためのリーダーシップを発揮する必要がある」と提言した。このためには「早期に首脳会談を実現させ、首脳間のシャトル外交を復活させるのがよい」とし「韓国と日本が国際社会で多くの利益と価値を共有するパートナーという点を実践で見せなければいけない」と明らかにした」

     

     

    このパラグラフの指摘する点には何の異議もない。その通りだが、文政権が見せた反日行動は日本として絶対に忘れてならないことだ。日本を中ロ以上の敵国扱いしていた事実を見過ごしてはならない。韓国進歩派の本質を見せたのである。

     


    (2)「韓日フォーラム韓国側議長の柳明桓(ユ・ミョンファン)元外交通商部長官と日本側議長の小此木政夫慶応大名誉教授、代表幹事を務める添谷芳秀慶応大名誉教授はこの日、出席者を代表して記者会見に出席し、「両国の新政権が関係改善の意志を持つ現状況を良い機会と考え、民間の立場と観点で真摯に議論した」と説明した。双方は声明で「韓日両国の新政権が直面した課題は強制徴用問題への迅速な対応と2015年の慰安婦合意の尊重」とし「両国の困難を突破できるカギは政治的リーダーの決断にあり、戦略的な対話による信頼回復にある」と明らかにした」

     

    日本は、国際法を守らない国である韓国へどのような外交姿勢を取るべきか。それは、慎重な上にも慎重であるべきだ。韓国の次期政権が再び進歩派に戻れば、再びガリガリの民族主義の旗を立ててくるに違いない。そのとき日本は、「臍(ほぞ)をかむ思い」をさせられる筈だ。日本外交の「お人好し」が世界の笑いものになるだけである。

     


    (3)「日本政府が、2019年7月に施行した対韓国輸出規制問題には経済安保協力の側面で接近すべきだと提言した。韓国と日本の経済は競争関係にあるが多国籍の枠組みで対等に協力できる関係だとし、「多国間協議を視野に入れた韓日協議、例えば経済閣僚による『2プラス2』の制度化などが必要だ」と明らかにした。また、こうした環境を形成するためには「すでに形骸化した日本の対韓輸出規制を見直すことが合理的な選択肢」と強調した」

     

    下線部は、間違っている。韓国への輸出手続き規制が、経済安保協力の障害になっている証拠はない。輸出規制が行なわれていないからだ。韓国の「我が儘」を事前に止めるブレーキは絶対に必要である。韓国に対して、日本への感情的「自主規制」をさせるには、こういう装置が必要なのだ。未だに日韓併合時代の話を持ち出して、「謝罪と賠償」を求める国があるだろうか。こういう特異の民族には、それなりの防御策が必要である。

     

    (4)「ロシアのウクライナ侵攻と北朝鮮の核・ミサイル能力進展など安全保障環境が急変する中、両国は「早期に戦略対話チャンネルを再開し、韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の正常な運用を通じて韓日米安全保障協力を進展させることが求められる」と付け加えた」

    GSOMIAは、韓国に必要な協定である。日本はありがたがって、その見返りをする必要はない。

     

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    ウクライナ戦線は、膠着状態となっている。侵攻したロシア軍が攻めあぐねている状況である。そこで、自らに都合のいい「停戦シナリオ」を描いている。欧州が、今冬のガス不足に音を上げて停戦に動くのでないか、という淡い期待である。

     

    だが、西側は戦争に関する決定はすべてウクライナ政府の意思に従うという「一札」を入れているのだ。予想される「ガス不足」で、欧州がウクライナへ停戦を働きかけるであろうというロシアの期待は、自らの軍事的弱体を告白しているようにも見える。米国は、長期の支援体制であり、23年に供給する武器供与まで発表済である。

     


    『ロイター』(8月25日付)は、「ロシアが賭ける停戦シナリオ、冬のガス不足で西側が根負け」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアはかつて、「冬将軍」の加勢を得てナポレオンとヒトラーを打ち負かした。プーチン大統領は今、欧州がこの冬にエネルギー不足やとその価格高騰に根負けし、ウクライナに停戦を迫るというシナリオに賭けている。しかもロシアの望む条件で。大統領府の考え方に詳しい2人のロシア筋は、これが同国の想定する唯一の和平への道だと語る。ウクライナは同国全土からロシアが撤退しない限り交渉に応じない姿勢だからだ。

     

    (1)「ロシア筋の1人は、「われわれには時間があり、待つことができる。この冬は欧州にとって厳しい季節になるだろう。抗議活動や社会不安が起こる可能性もある。欧州の一部指導者らは、ウクライナを支援し続けるべきかどうか考え直し、交渉に応じる時が来たと思うかもしれない」と語った。もう1人は、既に欧州の結束にはほころびが見えており、冬の厳しさの中でそれに拍車がかかるというロシア政府の見方を紹介。「戦争が秋冬まで長引けば、本当に厳しくなるだろう。だから(ウクライナ側が)和平を申し出ると期待できる」と述べた。ロイターはロシア政府にコメントを要請したが、回答を得られていない」。

     


    EUは、すでにエネルギーの「脱ロシア」で手を打っている。もはや、ロシア産へは戻れない購入先転換を進めているのだ。今後、苦境に立つのはロシアである。有力な販売先を失うからである。EUは、歯を食いしばっても耐えるほかない。

     

    (2)「ウクライナと、同国を強力に支援する西側諸国は、降参するつもりはないとしている。複数の米高官は匿名を条件に、ウクライナへの支援が揺らぐ兆しは今のところ皆無だと述べた。欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長はウクライナ独立記念日の24日、「EUはこの戦いにおいて当初からあなた方の味方だ。必要とされる限り、味方であり続けるだろう」とツイートした。ウクライナは、戦場において状況を変えられる可能性があると考えている。ウクライナのポドリャク大統領顧問はロイターに対し「ロシアとの交渉を可能にするには、前線の現状をウクライナ軍優勢に変える必要がある」と述べた。「ロシア軍が戦術的に大敗を喫することが必要だ」という」

     

    EUがロシアへ「降参」することは、他国でのロシアの侵攻を認めることになる。第二次世界大戦で、ナチスの侵略を打ち破った欧州が、ロシアの侵攻を認める訳にはいくまい。停戦は、現在のリスクと未来のリスクの比較とされる。ここで停戦すれば、ロシアの未来の侵攻を認めることになる。引いては、中国の台湾侵攻を許すことに繋がる。米国が、長期にウクライナ支援で臨むのは、台湾問題を抱えているからだろう。

     


    (3)「欧州諸国はこの冬、ロシアに代わるエネルギーの供給源確保や省エネによって冬を乗り切ろうと模索しているが、需要を全て賄えると予想するエネルギー専門家はほとんどいない。駐欧州陸軍司令官を務めたベン・ホッジス氏は、「米国は中間選挙、英国は首相交代を控え、ドイツは天然ガス不足を死ぬほど心配し、ライン川の水位が大幅に低下している以上、われわれが(ウクライナの戦争への)関心を失うことをロシアはもちろん期待しているだろう」と話す。
    戦争とは兵站、そして意志のテストだ。試されるのは、われわれ西側がロシアに勝る意志を持っているか否かだろう。厳しい試練になると考えている」と指摘する」

     

    下線のように、ロシアの侵攻を絶対に許さないという意思表示が求められている。3~4ヶ月の冬季にガスが入手できるかどうかという次元の問題ではない。永遠の平和問題である。耐えるほかない。

     


    (4)「戦争が長引くほど燃料、ガス、電気、食料の価格高騰による痛みは激しくなり、西側がウクライナを巡って分裂するリスクは増す。「全ての経済指標が今、マイナスに転じている。ウクライナが勝ちそうな様子が見えない限り、アパートで震えている人々を(苦難を受け入れるよう)動機付けるのは難しくなるだろう」とメルビン氏は予想する。そうなると政治的な和解を求める圧力が高まり、EUと北大西洋条約機構(NATO)双方に亀裂が入りかねないという」

     

    EUとNATOにひび割れするのは、最悪事態だ。それこそ、プーチン氏の狙いどこである。仮に分裂すれば、欧州はロシアの言いなりになろう。



    (5)「もっと楽観的な意見もある。元駐欧州陸軍司令官のホッジス氏は、「ロシアの兵站システムは疲弊しており、すぐに良くなることはないだろう」と指摘。「米英を中心とする西側諸国が約束したものを提供し続ければ(中略)ウクライナが年末までにロシアを2月23日の線まで押し戻すことは可能だと楽観視している」と話す」

     

    下線部は、軍事専門家が等しく指摘する点である。米英が、核になってロシアへ対峙する。その場合、独仏の国際的な発言権は低下する筈だ。経済だけが目標の「腑抜け」という評価が定着するであろう。


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    不動産開発企業の資金繰り問題は、昨年7月から始まったが、もはや手遅れの感が強い。中央政府が、不動産開発企業への融資を要請しても一部の政府系金融機関では拒否の動きを見せているほど。貸付けても、必ず返済される見通しがないからだ。まさに、断末魔の状態へ落込んでいる。

     

    中国経済の長期的な健全性維持には、不動産市場が再生できるか、どうかにかかっている。習政権は現在、不動産高騰が国民生活の不平等をもたらした「元凶」という認識だ。もともと不動産バブルを煽ったのは習政権である。景気回復の切り札に不動産市場を利用してきたのだ。それにも関わらず、手のつけられないまでに不動産が暴騰したので、責任を不動産開発企業へ擦り付けようとしていることは疑いない。それゆえ、不動産開発企業へ冷淡に振舞ってきたにちがいない。習近平氏のやり口である。

     


    現状は、そういう責任の擦り付けの段階をはるかに超えている。中国経済の命運を左右する事態になっているのだ。不動産バブル崩壊による不良債権が、中国の経済活動を麻痺させるのである。この道は、すでに日本経済が経験済みである。中国リスクが高くなっているのだ。

     

    『ロイター』(8月25日付)は、「中国当局の不動産支援要請、一部政府系金融機関が拒否―関係筋」と題する記事を掲載した。

     

    中国政府は銀行業界に不動産業界支援を要請しているが、財務悪化を懸念する一部政府系金融機関が要請を拒んでいることが複数の関係者情報で分かった。

     


    (1)「銀行側が懸念するのは、政府の保証もないまま、資金繰り難の不動産企業に貸し付けて焦げ付くこと、またそうした信用リスクの高い融資を巡り当局から責任を問われる事態だ。ロイターは先週、関係筋情報として、中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)が不動産業界向け融資のシステミックリスクを評価するため、一部の国内・外国金融機関の融資内容を調査していると報じた。関係者によると、当局はここ数週間、非公開会議を複数回開き、銀行や証券会社などに不動産開発業者の資金調達を支援するよう促した。中国人民銀行(中央銀行)も政府系金融機関に、相対的に強靭な不動産開発業者の資金調達を支援するよう働きかけているが、今のところ具体的な指示は出していないという」

     

    当局は、一種の「行政指導」のような形で、不動開発企業への融資に圧力を掛けている。金融機関は万一、不良債権化した場合に当局が救済措置を保証しない限り、とても危険で融資できない事態なのだ。当局は、不良債権になったときの責任を回避したい。だから、金融機関への融資斡旋で終わっているにちがいない。

     

    (2)「国有銀行2行と政府系資産管理会社3社の関係者は、不動産業界を支援するよう規制当局から「窓口指導」を数回受けたものの、今年初めから不動産債券の保有高を減らしていると述べた。中国政府は2年前に債務削減政策を掲げており、融資拡大はモラルハザード(倫理の欠如)となる。そこで当局は今年、資金調達の正常化に向けて有力建設業者に国内での債券発行を促している。こうした債券発行で主な引き受け手になるのは銀行などの金融機関だ。だが、財務内容が比較的健全な不動産開発業者が発行する債券でも購入を見送るところもある。上海に本拠を置く政府系資産管理会社のクレジットアナリストは「満期までの変動に耐える余裕はない。帳簿がめちゃくちゃになる」と述べた」

     

    人民元建て社債では、「トリプルA」格付けの3年物でも、その利回りは国債と比較して、2006年以降で最も低い水準に放置されている。国債であれば、国の保証があるので元利金の支払いに懸念はない。だが、民間債券では「どうなるか分らない」という恐怖感が先立っている状態だ。

     

    ましてや、デフォルト(債務不履行)の多発している不動産開発企業の債券となると、人気は一段の離散は当然であろう。住宅の成約販売で、中国上位50社の不動産開発会社が保有する傘下企業で、今年に入り元建て債発行にこぎ着けたのは28社だけである。昨年の同じ時期と比べ38%少ないことをブルームバーグの集計データが示している。債券市場では、不動産開発企業は「鬼門」になっている。

     


    (3)「4大国有不良債権管理会社の一つである華融資産管理会社は、行き詰まった不動産プロジェクトを調査する任務を負っているが、黙認するケースが多いという。一部不動産開発業者は、業界安定化に向けた国の保証が必ずしも銀行融資の拡大につながらないことを認識しつつある。不動産開発業界関係者は、今や債券の発行は容易でないと述べた。買い手を見つけるのが難しく、投資家の多くが保有を減らそうとしているという。銀行も全ての発行者に対し十分な購入枠を持っていない可能性もあると指摘した」

     

    国有不良債権管理会社ですら、行き詰まった不動産プロジェクトの内容の悪さに呆れているほど。手が付けられないほどだが黙認しているというのだ。ここまで、「腐った資産内容」に落込んでいるのが、中国不動産開発企業である。

     

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