勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    米国の政権交代まで10日未満というギリギリの段階で、ポンペオ国務長官は米国の台湾に対する外交・軍事の接触制限を廃止すると発表した。中国の強力な反対の動きがあると見られたが、意外と抑制的な動きのようだ。

     

    過激な報道で売っている中国共産党機関紙『人民日報』系、『環球時報』は1月10日、次のように論じた。『レコードチャイナ』(1月11日付)が転載した。

     


    (1)「『米国と台湾が大胆にもポンペオ氏の退任間際の訪台を演ずるなら、台湾現政権に死の鐘が鳴る』と題した社説を掲載。「トランプ米大統領の任期があと10日ほどしか残っていない中で、ポンペオ氏は再び、中米関係と台湾問題において罠を仕掛け地雷を埋めた。これは両岸(中国と台湾)の平和と中米関係のボトムライン(譲れない一線)保持と安定に対する犯罪的性質の構造破壊であり、それによる深刻な悪い結果は予測できないものだ」と批判した」

     

    ここで気付くべきは、台湾政府を攻撃の矢面にしていることだ。ポンペオ米国務長官の発言であり、台湾は直接の当事者でない。それにも関わらず、台湾を非難しているところが、「及び腰」である。米国と真っ正面に喧嘩しにくい一面を見せている。

     

    『環球時報』のパターンから言えば、もっと過激な言葉を使って米国を非難するはずだ。それがないのは、次期バイデン政権の動きを見ようという抑制したものだろう。

     


    (2)「そして、「中国政府は、米国に対し、危険の一歩手前で踏みとどまらねばならないという強烈なシグナルを発するべきだ。米国と台湾民進党当局にはっきりさせなければならない。米台が大胆にもポンペオ氏の退任間際の訪台を演ずるなら、中国の反応は山を押しのけ海を覆すほどにすさまじいものとなるだろう」と警告した」

     

    下線のように、中国政府は米国政府に対して、「危険の一歩手前で踏みとどまれ」としている。これは、言外に「現状を認める」ということである。つまり、「一つの中国論」を破って、相互交流してもやむを得ないというニュアンスが感じられるのだ。

     

    この背景には、英国・ドイツ・フランスの海軍が軍艦を西太平洋へ派遣すると発表していることを警戒しているのであろう。英国は、最新鋭の原子力空母である。これが、日本を母港として常駐する計画である。中国がここでことを荒立てると、自ら米海軍のほかに、欧州列強の海軍を呼込む危険性を察知したのだろう。

     

    欧州の列強海軍は、世界の次の発展地域がアジアとしている。このアジアで、欧州列強も足場を築かねば、次の発展から除外されるという認識を深めているのだ。もはや、中国が独り舞台で軍事的に闊歩できる環境でなくなっていることを示している。

     

    『日本経済新聞 電子版』(1月11日付け)は、「『強烈な非難』中国、米の台湾接触制限撤廃に反発」と題する記事を掲載した。

     

    米国のポンペオ国務長官が台湾側と米国の外交官や軍事関係者の接触を自主的に制限してきた内規をなくすと発表したことについて、中国外務省が11日反発した。趙立堅副報道局長は記者会見で「断固とした反対と強烈な非難を表明する」と話した。

     

    (3)「趙氏は、「いかなる勢力が台湾問題を利用して内政に干渉するのも絶対に許さない」と主張した。中国国務院(政府)の台湾事務弁公室の報道官は「我々は断固として強力な措置をとって米国と台湾の共謀したいかなる行動にも対抗する」とコメントした。中国の習近平(シー・ジンピン)指導部はトランプ米政権が残された任期で新たな対中強硬策を打ち出す事態を警戒しつつも、目線は1月20日に就任するバイデン米次期大統領の出方に移りつつある」

     

    外交部報道官は、「いかなる勢力が台湾問題を利用して内政に干渉するのも絶対に許さない」と米国を名指して非難していないのだ。これは、米国との関係悪化を避けていることを示している。中国が、相当に困った状況に追込まれている証拠である。青菜に塩という状況なのだ。米国は、こういう状態をすべて読んで動いているのであろう。

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    韓国は、市民運動が盛んである。その限りでは立派であるが今や、政治権力を昇る梯子段になっているのだ。普通、市民団体と言えばボランティアで、互いに身銭を切りながら、社会運動をするイメージである。非営利・非政治というのが、市民運動の大原則なのだ。

     

    韓国では、政府から補助金を貰い政治運動をしている。文政権では、広範囲な市民団体へ補助金を出して、文政権「別働隊」という位置づけになっている。韓国の民主主義は、率直に言って未熟である。マッカーサー元帥が、戦後の日本について「民主主義は12歳程度」と言ったと記録されている。この伝で言えば、韓国の民主主義は正直正銘「12歳程度」である。

     

    『朝鮮日報』(1月11日付)は、「『慰安婦利用』運動と『女性利用』運動、実におぞましい」と題する社説を掲載した。

     

    韓国女性団体連合の建物に先日、「女性団体は政治の利益に目がくらみ、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長事件の加害者と一緒になった」という壁新聞がはり付けられた。自身のことを「一番年下の活動家」と称する女性活動家が書いてはったものだ。

     

    (1)「朴元淳前ソウル市長のセクハラ(性的嫌がらせ)告訴の話が、同前市長側に漏れた過程には、同団体の代表を務めた経験のある与党・共に民主党の南仁順(ナム・インスン)議員と現在の代表者、そして同議員の元補佐官が関与していたという事実に激怒したのだ。セクハラ加害者の味方になっただけではなく、被害者を窮地に追い込んだ。同議員は「被害者のことは『被害呼訴女性(被害を受けたと訴えている女性)』と呼ぶべきだ」と固執した。当時、これに同調した当選4回目の議員も、韓国女性団体連合に加盟している団体の元代表だ」

     

    この話は、韓国人権運動の軽薄さを示す典型例である。前ソウル市長が、セクハラで市職員から訴えられた当日、民主党議員からこのことが前市長の耳に入り翌日、市長は自殺した。非公表の話がなぜ、前市長の耳に入ったのか。また、訴えた被害者を「被害呼訴女性」と呼ぶべきだと主張するなど、明らかに「加害者」擁護の立場であった。こういう歪な形にしたのが、韓国女性団体連合に加盟している関係者である。人権意識の「じ」の字も感じられない、お粗末な女性団体なのだ。

     


    (2)「30年余りの歴史を持つ韓国女性団体連合は、女性の権利拡大では役割を果たしたが、今では「自分たちの政治的地位のために党派的に『選択的激怒』をする」と批判される状況に至っている。同じ性犯罪でも、野党の問題なら猛烈に攻撃し、与党の問題なら口を閉ざしたり、盾になって守ったりもするということだ。韓国女性団体連合の元代表で、民主党を通じて首相・閣僚・国会議員になった人物は十数人いる。女性団体ではなく、「女性を利用する団体」になったと言えるだろう」

     

    韓国女性団体が、文政権の補助金によって庇護を受ける立場に転落している。これは、文政権が意図的に行った結果である。文政権によって、政治的出世の階段を提供されたので、女性団体ではなく、「女性を利用する団体」になった、と酷評される始末だ。

     


    (3)「
    日本軍慰安婦被害者たちに対し、日本政府に賠償を命じる判決が出ると、同党の尹美香(ユン・ミヒャン)議員が、「一日も早く正義に反せず正しく問題解決できるよう望む」と述べた。尹美香議員は日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義記憶連帯)理事長や韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)代表だった時、水曜集会を利用して金を集め、その金を不透明な使途に使用して横領・背任など6つの罪で起訴されている状態だ。その口で正義を唱えるとは、おぞましい限りだ」

     

    尹美香議員は、元慰安婦支援団体を組織して募金を集め、横領・背任など6つの罪に問われている被告である。その本人が、慰安婦問題について意見を述べるなど、恥の上塗りをしている。「蟄居」(ちっきょ)すべき立場であるのに、それすら忘れているのだ。

     

    (4)「与党には市民団体出身の議員が現在、20人余りいる。これら議員のうち、胸に手を当てて良心に恥じることは何もない、という人は何人いるだろうか。「民主」を利用する民主化運動、環境を利用する環境運動、民族を利用する反日運動、人権を利用する人権運動、女性を利用する女性運動、慰安婦を利用する慰安婦運動など、枚挙にいとまがない

     

    韓国の市民団体は腐敗の極みである。政府が、補助金を支給するからだ。下線部分の批判は痛切である。すべてを「金儲けと出世の手段」に利用しているのである。韓国民主主義は、「12歳」という私の見方が、あながち間違ってもいないだろう。

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    中国は、これまでWHO(世界保健機関)の新型コロナウイルス現地調査受入れを渋ってきた。WHO事務局長テドロス氏は、痺れを切らして「中国に失望した」と発言するにいたり、ようやく「受入れOK」を出した。調査団は、1月14日に中国入りするという。

     

    中国の味方と見られていた、テドロス氏の苦情である。中国外交部は大慌てした。WHOを敵に回したら「大変なことになる」と見たのだろう。早速、調査団の入国を認めた。WHO報告が、中国へ不利となれば一大事。ご機嫌伺いに出たのだ。中国とはこういう国である。強気に出ないと、物事は先に進まないのである。

     


    『日本経済新聞 電子版』(1月11日付)は、「WHOのコロナ発生源調査 中国、14日から受け入れ」と題する記事を掲載した。

     

    中国の国家衛生健康委員会は11日、新型コロナウイルスの発生源を巡り調べる世界保健機関(WHO)の調査団が14日から中国入りすると発表した。WHOは当初1月上旬に予定していたが、中国当局が調査に許可を出さないとして不満を表明していた。

     

    (1)「調査団の規模や調査場所、期間などは現時点で明かしていない。WHOは当初、1月第1週に10人強を派遣することを計画していた。最初に大規模な感染が広がった武漢市を調べ、ウイルスの発生源特定につなげることなどを検討していた。中国外務省の趙立堅副報道局長は11日の記者会見で「WHOと引き続き緊密に連携したい」と話した。中国内でもここのところ感染者が増え続けている」

     

    中国が調査団受入を渋っていたのは、調査団の中に米国人が入っていることだった。この米国人によって実態が米国へ筒抜けになることを警戒していたもの。だが、世界感染症研究のメッカは米国である。米国の研究者を抜きにして原因調査が進む訳がない。中国は、隠している事実があるから、米国人の中国入りを断っていたのだ。今回の調査団に米国人がいるかどうか不明である。

     


    (2)「中国の衛生当局は11日、10日に中国本土で新型コロナウイルスの新規感染者が103人出たと発表した。1日の感染者が100人を超えたのは2020年7月30日以来、約5カ月ぶり。河北省で82人、遼寧省で2人、北京市で1人のほか、海外からの入国者からも18人の感染が確認された。河北省では省都の石家荘市で感染が増えており、当局は8日に約1000万人の全市民に自宅待機を通知した。同市では全市民にPCR検査を実施ずみと主張している。中国全体の累計感染者数は約9万7000人。中国政府の公式発表上は欧米や日本より少ないが、足元では北京市や大連市などでも感染者が増えている」

     

    中国外交部は、WHO調査団の入国遅延理由について、「中国国内のコロナ対策に忙殺されていた」と言い訳をしている。調査団は、現地で治療に当る訳でなく、別途の調査行動である。中国が、調査の遅延を繕っていることは明らか。

     


    『日本経済新聞 電子版』(1月9日付)は、「中国、人口1000万都市封鎖、河北省の省都」と題する記事を掲載した。

     

    中国河北省の省都、石家荘市は9日までに、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、全市民に7日間、自宅にとどまるよう通知を出した。同市の人口は約1千万人。中国としてはこの冬初めての大規模な都市封鎖となる。

     

    (3)「中国国営の新華社によると、石家荘市は8日に14人の新規感染者を確認した。新たに無症状感染者も16人みつかった。河北省全体で現時点の感染者は137人で、海外からの感染者も2人いる。医療関係者が定期的に観察している無症状患者は197人で、海外から入ってきた無症状患者も5人いる。石家荘市では全市民を対象とした緊急PCR検査を始めている。検査が終了し次第、自宅にとどまるよう通知した。感染者の拡大に伴い、すでに住民の市外への移動を禁止している」

     

    石家荘市の人口は、約1000万人である。昨年1月~4月まで、最初の都市封鎖になった武漢市の人口は1100万人である。石家荘市も武漢市も、人口規模はほぼ同じである。その都市がロックダウンである。中国政府が、この荒療治を決意したのは、それだけの感染リスクを秘めているのだろう。

     


    (4)「地元紙などによると、中国当局は首都北京市と石家荘市を結ぶ高速道路の一部出入り口を閉鎖した。習近平(シー・ジンピン)指導部は感染対策を担当する孫春蘭副首相を現地に派遣し、対応に当たらせた。孫氏は「コロナ対策の措置は一刻の猶予もならない。できるだけ早くウイルスの拡散を抑制せよ」と指示を出した。北京市の中心と石家荘市はおよそ300㌔㍍の距離で、車で45時間ほど。一連の措置は北京市で感染者を増やさないための「首都防衛」の側面もある。河北省と接する北京市通州地区も感染拡大防止に向け「戦時体制」に入ると宣言した」

     

    首都北京市と石家荘市の距離は、300キロメートルという。北京へ飛び火したら首都機能が麻痺する。それだけに、素早く石家荘市の封鎖に出たのだ。ここで不思議に思われるのは、自慢の中国製ワクチンはどこへ行っているのか。世界へのPR効果を含め、絶好の登場機会のはずである。それにも関わらず、相変わらずのPCR検査の励行というのだ。自慢のワクチンは、まだお目見えできない事情があるにちがいない。


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    韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は11日、「TPP11(環太平洋パートナーシップ協定)への加入を積極的に検討する」と明らかにした。文大統領はこの日午前10時、大統領府で発表した「2021新年辞」で、外交安保分野の国政運営を説明しながら明らかにしたもの。ただ、加盟申し込みをするのではない。加盟を検討したいという意味である。

     

    TPP11と言えば、日本がリーダー国である。先に、旧慰安婦賠償命令が日本政府に出るなど、日韓は最悪の外交関係に陥っている。旧徴用工賠償問題を含め、韓国政府が自ら解決しない限り、日本との話合いは難しいであろう。

     

    文大統領は、TPP11に関して公式に「加盟検討」発言をするまでになっているが、この裏には複雑な思惑が感じられる。中国が、TPP11に参加意思を明らかにしたので、韓国もTPP11への参加検討を安心して公表するようになったに違いない。それは、中韓が共同で加盟条件引下げの策略をするのではないか、という疑惑である。

     

    文政権のことである。いかなる策略を巡らしているか分からないのだ。だが、中韓が共同で加盟条件を引下げさせようとすれば、日本の反対はもちろん、豪州、ベトナム、シンガポールが反対するだろう。韓国の企みは実現しまい。

     

    日本政府は、昨年の時点で韓国のTPP11加盟を歓迎するとしながらも、高い加盟のハードルを越えられるか疑問視している。

     

    『中央日報』(2020年12月9日付)は、「日本政府、文大統領のCPTPP加盟検討の発言に『高いレベルなのか見極める必要がある』」と題する記事を掲載した。

     

    日本政府は8日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP、TPP11)」に加盟したいという意向を表わしたことに対して歓迎するという立場を明らかにしながらも高いレベルを満たす用意ができているか見極める必要があるとした。

     


    (1)「共同通信によると、加藤勝信官房長官はこの日午後、記者会見で文大統領のCPTPP参加検討の言及に関連して「様々な国・地域による関心表明は歓迎したい」と述べた。ただし、CPTPP加盟国は高い水準の市場アプローチと規則の整備が求められることを取り上げ、「高いレベルを満たす用意ができているかについては、しっかりと見極める必要がある」と指摘した」

     

    日本政府は、TPP11が「高い水準の市場アプローチと規則の整備」を求めている点から、韓国がこれをクリアできるのか懸念している。TPP11の自由化率(工業製品)は99%だ。日英EPA協定は自由化率100%である。TPP11は、これにつぐレベルである。かつ、市場整備の完璧さが要求されている。

     

    韓国は、こういう厳しい条件を超えられるのか。その際、中国を引入れて中韓が加入条件引下げを求めることは十分にあり得るのだ。日本はこれを警戒しているのであろう。

     

    韓国が、中国を引入れるであろうという裏には、日韓関係の悪化がある。徴用工や慰安婦という歴史問題で、75年経った今も紛争の種は尽きない。こういう状況下で、韓国が日本とまともな交渉をできるか疑問である。そこで、中国を隠れ蓑にし素知らぬ顔で、TPP11交渉に臨みたいという狙いがあるかも知れない。

     


    (2)「11月、中国が積極的に参加した東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に署名した文大統領は、米国が復帰を検討しているCPTPPに参加する可能性を残した。米中の間で韓国外交のバランスを取るための悩みが反映されたとみられる。文大統領が前日主宰した首席・補佐官会議では「米国ジョー・バイデン行政府発足以降、CPTPPとRCEPの調和を悩もう」という趣旨の議論があったと伝えられた」

     

    ここでは、韓国がRCEPに加入したからこれで中国への義理を果たした。次は、米国が復帰するかも知れないTPP11へ韓国も参加して、米国への義理を果たすという主旨である。だが、これは表面的な見方であろう。中国が、TPP11へ参加意思を表明している現在、中韓が揃ってTPP11の加盟条件引下げを狙っていると見た方が妥当だろう。

     

    昨年秋から、中国外交首脳陣が相次いで訪韓している裏には、かなり切迫した打合せ事項があったと見るべきだろう。TPP11問題も議論されていたであろう。





     




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    米国トランプ政権は、あと10日余りを残す任期という土壇場で、米台の外交・軍事の接触禁止令を撤廃することになった。9日、ポンペオ国務長官が発表したもの。中国の反応は、現時点では不明だが、厳しい反対を表明することは間違いない。米中復交時に取り交わした「一つの中国論」に抵触するからだ。ただ、先に中国によって香港に関する「一国二制度」が破棄されたこともあり、米国が台湾について「一つの中国論」廃止は十分に予想されていた。

     

    昨年8月、チェコが80名に及ぶ大使節団を台湾に送った。チェコは、公然と「一つの中国論」を破っており、それに続く国が米国になるとは予想外であった。

     

    『BBC』(1月10付)は、「米国務長官、米台関係に制約不要と台湾との公的接触規制を解除へ」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米国務省は声明で、台湾当局者との接触に関する「自主規制」は、台湾に対する自国の主権を主張する中国政府を「なだめる」ため数十年前に導入されたものだと説明。現在は「無効」だとした。今回の対応は中国の怒りを買い、米中間の緊張を高めることになりそうだ。ドナルド・トランプ大統領の任期終了が20日正午に迫る中、「自主規制」解除が発表された」

    米国が、「一つの中国論」を放棄することは歴史的な事件である。これまで中国に遠慮して、米高官が台湾を訪問することを控えて来た。この「禁足令」を放棄した訳で、米国は公然と中国へ対抗する姿勢を見せることになった。

     

    (2)「中国と台湾は1949年に分断した。中国は台湾を離れた領土とみなしているが、台湾の指導者たちは、台湾は主権国家だと主張している。両者の関係はぎくしゃくしており、台湾と友好的なアメリカを巻き込みかねない衝突の危険にさらされている」

     

    米国は、すぐに中国が台湾への軍事攻撃を始めるとは見ていない。台湾の完全占領には中国兵30万人が動員されると見ている。この大軍が台湾海峡を越えるには、相当の準備が必要で事前察知が可能という。

     

    米国が強硬姿勢に転じたのは、英国、ドイツ、フランスが西太平洋へ軍艦を派遣することを決めたことも大きな理由であろう。英国は、最新鋭空母「クイーン・エリザベス」が日本を母港にして長期派遣する。こうなると、中国軍が大軍を台湾海峡へ殺到させることができなくなる。

     


    (3)「ポンペオ氏は9日の声明で、米国務省がアメリカの外交官と台湾との接触を制限する複雑な規制を導入したと説明。「本日、これらの自主規制を全て解除すると発表する」と述べた。「アメリカと台湾の関係は、この国の官僚制度が自らを縛ってきた自主規制に制約される必要がなく、制約されるべきでないことを認める」と長官は表明した。さらに、台湾は活気あふれる民主主義の場所で、信頼できるアメリカのパートナーだとし、外交関係への規制はもはや有効ではないと付け加えた」

     

    他の報道では、外交・軍事の接触を可能にするとしている。外交官以外に、国防省高官の接触も解禁である。米国は、国内法として「台湾関係法」を整備している。この中で、安全保障として、次の事項を決めている。

     

    1)平和構築関係維持の為に台湾に、台湾防衛用のみに限り米国製兵器の提供を行う。

    2)米合衆国は台湾居民の安全、社会や経済の制度を脅かすいかなる武力行使または他の強制的な方式にも対抗しうる防衛力を維持し、適切な行動を取らなければならない。

     

    2)によって、米国が台湾を防衛する義務を決めているのだ。今回の「一つの中国論」廃止は、米国の強い台湾防衛を鮮明にしたのだ。

     

    (4)「昨年8月にはアレックス・エイザー保健福祉長官が台湾を訪れ、蔡英文総統と会談した。1979年にアメリカが台湾と断交して以来で最高位の訪問となった。これに対し中国は、「一つの中国」の原則を尊重するようアメリカに求めた。米国は台湾に武器も売却しているが、日本や韓国、フィリピンとのような正式な防衛条約は結んでいない

     

    防衛条約は通常、相互防衛条約である。米台の間では、米国が国内法で台湾関係法を定め、一方的に台湾防衛義務を負うという内容だ。台湾は、米国防衛の義務がない。逆に、米国によって防衛されるのだ。

     

    (5)「中国政府は長年、台湾の国際的な活動を制限しようとしており、両者は太平洋地域での影響力をめぐり争ってきた。中国と台湾の緊張は近年高まっている。中国側は台湾を奪還するため、武力行使も辞さない構えを示している。台湾を正式に国として認めている国はわずかだが、民主的に選出された台湾政府は貿易で多くの国と結びつくほか、諸外国政府と非公式のつながりを持っている」 

    中国は、台湾を外交的に孤立させるべく画策している。現在、台湾の国交維持は15ヶ国に減っている。米国は台湾と断交して中国と国交を結ぶ国に対して、経済援助をしないなどの圧力を掛けている。こうして、米国が台湾の後ろ盾になる理由は、「インド太平洋戦略」で台湾が重要な地政学的位置にいるからだ。次期バイデン政権が、このトランプ政権の政策を踏襲するか注目される。

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