勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国は、人口増加だけをテコにして経済大国へのし上がった国である。これは、科学技術の発展を置き去りにした「模倣経済」のもたらしたものである。習氏は、国民に向かって根拠もなく「中華の夢」を煽った手前、欧米製のワクチンを導入できず、ゼロコロナ政策しか選択できない苦境に立たされている。

     

    『ブルームバーグ』(6月29日付)は、「習主席、ゼロコロナ政策は中国にとって最も経済的かつ効果的」と題する記事を掲載した。

     

    中国の習近平国家主席は6月28日、新型コロナウイルスを徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策は中国にとって最も経済的かつ効果的であり、中国はコロナを根絶する目標を達成することができると表明した。

     

    (1)「国営新華社通信によると、習主席は最初のコロナ禍に見舞われた湖北省武漢市を同日訪れた。今回の発言で、中国がロックダウン(都市封鎖)や大規模検査を軸とするコロナ対応を撤回する計画がないことが明確になった。28日に渡航を巡る制限が予想外に緩和され、中国は慎重ながらも出口戦略に着手しつつあるとの見方もあったが、習氏の発言はこうした期待に水を差すことになりそうだ」

     


    中国本土株の指標CSI300指数は29日、前日比1.5%安で終了した。28日は、渡航を巡る制限が予想外に緩和され、中国は慎重ながらも出口戦略に着手しつつあるとの見方が広がり、前日比1%高で引けたものの帳消しになった。29日の香港市場では、中国のテクノロジー企業から成るハンセンテック指数が3.3%安で引け、悲観ムードに覆われている。中国経済の先行きの不安観を高めた結果である。

     

    コロナウイルスは、次々と新種が登場して感染力を高めている。中国製ワクチンでは、とうてい予防が不可能であり、米欧製ワクチン「mRNA」でなければ対抗不可能とされている。新種のコロナウイルスでも「mRNA」であれば、簡単に対抗可能とされている。こういう高度のワクチは、中国では製造できない状況が続いている。だから、ゼロコロナで都市封鎖して逃げ回っているだけだ。

     


    (2)「新華社によれば、習主席は「中国の人口基盤は大きい。『集団免疫』や『寝そべり』政策を採用すれば、その結果は想像を絶する」と説明。「一時的に経済発展に多少の影響があったとしても、高齢者や子供など人民の生命の安全や身体の健康を損ねるようなことがあってはならない」と述べた。また、中国の発展は独立性と自主性、安全性を高める必要があるとも指摘。科学技術の「命綱」は自国の手でしっかりと握り続けなければならないと言明した」

     

    習氏は、矛楯したことを言っている。「集団免疫」と「寝そべり」は無関係であり、これを並列しているところに習氏の恐怖感が期せずして現れている感じだ。

     


    「集団免疫」は、「ウイズコロナ」によって感染者が増えても、治療態勢が完備していればおのずから達成できる道である。中国では、治療態勢が不備であり、一度感染者が急増すれば、医療崩壊を起す危険性を高めるのだ。そこで、次善の策として感染者そのものを増やさないゼロコロナ対策を取らざるを得ない事情にある。苦し紛れの逃げ道であって、自慢すべきことでなく恥ずべきことなのだ。

     

    寝そべり」は、習氏の強引な政策に対して若者が絶望感のあまり、就職しない・結婚しないという形を変えた政府への抵抗運動である。習氏は、こういう表面的な現象だけを見ており、それが奥深いところで中国共産党への絶望感であることが分らないのであろう。「集団免疫」が実現できる社会環境であれば、「寝そべり」は生まれないのだ。

     

    習氏は、科学技術の「命綱」を自国の手でしっかりと握り続けなければならないと主張している。これも苦し紛れの発言だ。自国だけで有効なワクチンを開発できなければ、人命に関わるだけに米欧からの導入を躊躇してはならない。習氏は、自国ワクチンを自慢し過ぎて、今さら米欧製ワクチンを導入できないというジレンマに立たされている。それを、言葉巧みにカムフラージュしているだけだ。

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    先進7ヶ国首脳会議(G7サミット)は、6月28日に終了した。ロシアへの新たな経済制裁は見送られた。G7各国への経済的負担が大きくなることが理由である。一方では、ウクライナへの支援継続を決めた。和平問題は、ウクライナが決めることとし、G7側からの働きかけをしないことを明らかにした。欧州国内での「和平論」は封印された形だ。

     

    ロシアへの新たな経済制裁を見送り、ウクライナへの支援継続となれば、軍事面でウクライナをさらに支援するほかなくなった。ウクライナの要望する大型火器を供給して、ウクライナに有利な和平条件をつくり出す段階へ移っているようだ。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月29日付)は、「即効薬なきロシア制裁策、G7会合では手詰まり感も」と題する記事を掲載した。

     

    先進7カ国(G7)はドイツで3日間にわたり開催した首脳会議(サミット)で、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの追加制裁措置の検討を続けることで合意したものの、侵攻から4カ月が経過し、経済的手段で制裁を加えることの限界も浮き彫りになった。

     

    (1)「これまでは武器供与によって戦況がすぐに変化しており、ウクライナはロシア軍を押し戻すために支援拡大を求めている。ただ、制裁措置は効果が表れるまでに時間がかかり、一部は西側諸国への打撃となって跳ね返っている。最新の制裁措置は複雑になりすぎ、迅速な発動が困難になっている。今回のサミットでは、G7首脳はある程度の結束を示した。ウクライナへの支援を継続することに表立った反対意見はなかった。だが、ウクライナや西側の一部専門家の間では、重火器の増強以外に、ロシアの侵攻を短期的に食い止める方法はないとの見方がある」

     

    戦線で直ぐに効果の出るのは、ウクライナへの大型武器供与である。米国は、重火器供与に舵を切っている。不幸なことだが、これ以外に、侵攻解決の手段はなくなった。

     


    (2)「G7を含む各国が実施した前例のない対ロシア制裁は世界の市場に変動を引き起こし、エネルギー価格の上昇を招いた。ここにきて、高インフレや成長鈍化、さらに欧州における今冬のエネルギー不足への懸念を背景に、西側諸国ではロシアへの制裁を強化する意欲がそがれている。G7各国の間には対ロシア制裁を巡り温度差があり、具体的な追加措置で合意することができなかった。合意したのは、ロシア産石油の価格上限設定や、ロシアからの金の輸入禁止などについて検討していくことにとどまった。ロシアをすぐに罰することができる選択肢はほぼ使い果たされ、検討対象となっているのは複雑で議論の余地のある選択肢しか残されていない」

     

    これまでの経済制裁は、西側諸国の物価高騰という形ではね返っている。経済制裁の限界を示したものだ。ただ、ロシア経済は今年下半期から制裁効果が出てくるという経済予測もあるので、西側は一呼吸おいて状況を見守ることも必要だ。ここは、戦線立直しが優先されるのだろう。ウクライナは、年内の終結を目指している。これに合わせた武器供与が課題に挙がるに違いない。

     


    (3)「G7は声明で、ロシアを制裁する「さまざまなアプローチを検討する」とし、ロシアの原油や石油製品の世界的な海上輸送を可能にするサービスの全面的な禁止などを検討する方針を示した。政府関係者や専門家は、G7が声明で言及した対策はどれも、実施までに長い時間がかかると指摘する。G7議長国ドイツのオラフ・ショルツ首相は、米国が提案したロシア産石油の価格上限設定について「非常に野心的な取り組みであり、もっと時間と作業が必要になる」と述べた。ショルツ氏はその一方で、ロシアへの対応では他に選択肢がないとの見方を示し、「ウクライナ侵攻前の時代に戻ることはできない。なぜなら、状況が変われば、われわれも変わらなければならないからだ」と語った」

     

    下線部分は重要ある。一定の時期に「休戦」を示唆した言葉だ。西側が、十分な武器を供与して、その結果を見て最終判断するという含みに取れるのである。

     


    (4)「英国のシンクタンク「チャタムハウス」のジョン・ロック氏は、G7首脳が具体的な追加制裁で合意できなかったことは、既存の制裁措置が西側の政策立案者が許容できる痛みを超えたことを示していると指摘。その上で「ロシア経済に圧力をかけるための最初の選択肢を使い果たし、追加制裁には代償が伴うことを西側の指導者らは今になって身に染みて感じている」と述べた」

     

    経済制裁の限界は、和平交渉への精神的な準備をさせるであろう。

     

    (5)「ショルツ氏はロシアに対抗するための連携拡大を目指し、インド、インドネシア、南アフリカ、セネガル、アルゼンチンなど新興国の首脳をG7サミットに招いた。ところが、こうした国々は対ロシア制裁に加わる意向をほとんど示さなかったと西側当局者は語る。インドのナレンドラ・モディ首相はショルツ氏に対し、ウクライナでの戦争は途上国の経済に打撃を与えており、インドはロシアへのいかなる対抗策にも参加できないと告げた。両氏は27日午後に会談した。インド政府はロシア産石油の購入を正当化している」

     

    G7にオブザーバーとして出席した新興国は、経済制裁に加わる意思のないことを明らかにした。それは、各国がロシアの反撃に耐えられない経済体質であることの結果だ。

     


    (6)「シンクタンクの欧州外交評議会(ECFR)のグスタフ・グレッセル氏は現在議論されている制裁について、軍事ではなく経済でロシアに対応しようとする西側の意向を反映していると指摘する。ただ、ロシアは軍事的に敗北しない限りは侵攻を継続する公算が大きいという

     

    下線のように、ロシアは軍事的な敗北のない限り侵攻を続けるという。ならば、西側諸国も腹を括って大型火器の供与に踏み切らざるを得まい。ロシアの「核脅迫」に怯えていれば、ウクライナ侵攻を長引かせるだけだ。これが、結論のようである。 

     

     

     

     

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    ドイツ経済は、1990年の東西ドイツの統合後、経済成長失速に見舞われた。だが、EU(欧州連合)発足の1993年を機にして、ドイツにとって割安なユーロを武器に輸出急拡大を実現した。特に、ロシアや中国への接近が、ドイツ経済の起死回生につながった。

     

    その中ロが、西側諸国にとって安全保障上のライバルになった以上、ドイツのロシアや中国への政策は抜本見直しを迫られている。大きな衝撃である。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月28日付)は、「ドイツの牧歌的状況の終わり」と題するコラムを掲載した。

     

    先週末、ドイツは平常通りに見えた。柔和なオラフ・ショルツ首相は他の先進7カ国(G7)首脳やゲストたちを、バイエルン州のアルプス山脈に囲まれた豪華なエルマウ城に迎え入れた。しかし、外見は当てにならない。ドイツは第2次世界大戦後の連邦共和国の建国以来、最大の試練に直面している。

     


    (1)「これは突然起きたことだ。2020年の時点では、ほぼ全世界がドイツの独善的な自己評価に同意していた。つまり、ドイツは世界で最も成功した経済モデルを構築し、世界で最も野心的な気候変動対策に着手しておおむね成功し、極めて低コストで自国の安全保障と国際的な人気を確保する「価値に基づく外交政策」を完成させた、というものだ」

     

    これまで、ドイツの経済成長は順風満帆であった。対米外交では、独自性を主張して「我が道を行く」スタイルであった。中ロに太いパイプを築いてきたからだ。防衛費も対GDP比1%と最低に抑制してきた。この状況が、ロシアのウクライナ侵攻で、根本から引っ繰り返った。

     


    (2)「そのいずれも真実ではなかった。ドイツの経済モデルは世界政治に関する非現実的な想定に基づいており、現在の混乱を乗り切れる可能性は低い。ドイツのエネルギー政策は大混乱しており、他の国々にとって何をすべきでないかを示す格好の例となっている。ドイツの「価値に基づく外交政策」への評判は、ウクライナ支援をめぐる煮え切れない対応によって大きく傷ついた。そして、ドイツの安全保障専門家らは、非常に不愉快な真実を受け入れつつある。攻撃的なロシアと対峙(たいじ)すると、ドイツは欧州全体と同様に、安全保障面で米国に完全に依存するということだ」

     

    ドイツは、ウクライナ侵攻後に大慌てで米国から防空システムを購入した。防衛費も対GDP比2%へ引上げると発表し、「歴史的転換点」と国際情勢急変に驚愕した。日本と比べて、極めてナイーブであり過ぎたのだ。それまでのドイツは、日米一体化を日本外交の独自性喪失とみていたほど。ドイツは、目を覚ましたのだ。

     


    (3)「ショルツ氏と同氏の連立政権は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領によるウクライナ侵攻を受け、ドイツの基準で見れば一連の「革命的な変化」で対応してきた。ドイツは再軍備を始めているほか、出だしでつまずきながらもウクライナに兵器を供与している。野心的な気候変動政策を犠牲にしてまでも、ロシアからエネルギー面で独立するための第一歩を踏み出した。石炭火力発電所を徐々に復活させ、新たな天然ガス処理工場を建設する予定だ。欧州全体に対しては、もはや現実的に思えなくなった脱炭素の義務化の先送りを求めている」

     

    このパラグラフのように、ドイツは空想的世界でうたた寝を愉しんでいた。エネルギー政策は、ロシア(天然ガス)とフランス(原発)に依存し、自らは手を汚さずに気候変動政策に熱中してきた。これらの人任せのエネルギー安保政策が破綻したのだ。かねてから、米国が厳しく批判して来た点である。

     

    (4)「しかし、本当の仕事はまだなされていない。現代ドイツの国づくりは、何よりも経済プロジェクトだった。1949年に再建された瞬間から、中心的な目標は経済成長だった。経済成長は戦争による破壊を修復し、平和的な西欧への統合を促進し、共産主義の魅力を低下させた。国民の多大な努力、政治家の現実的な政策、企業経営陣の技能と決意、そして米国主導の世界秩序の形成がもたらした望ましい国際環境により、ドイツ経済は最高潮に達した」

     

    ドイツは、米国主導の世界秩序(NATO)の下で、経済的繁栄を謳歌してきた。この批判は、安倍政権登場までの日本へも向けられた批判である。世界の安全保障政策に責任を分かち合わないという共通の批判だ。

     


    (5)「近年のドイツの経済的な奇跡は、工業力、ロシアから調達する安いエネルギー、世界市場(とりわけ中国市場)へのアクセスという三つの要素に依拠してきた。現在、これらの全てが脅威にさらされている。1世紀にわたる産業界の取り組みを通じてドイツが身に付けてきた自動車の技術は、電気自動車(EV)へのシフトによる挑戦を受けている。19世紀以降、自国の技術で世界をけん引してきた化学業界は、世界的な競争が激化する中、環境面での試練に直面している」

     

    ドイツの経済的な奇跡は、次の三つの要素に依存してきた。

    1)高い工業力水準

    2)ロシアから調達する安いエネルギー

    3)中国市場へのアクセス

     

    ドイツは、前記の「成長三要素」のうち、ロシアを失い、中国はセーブされる。大きな痛手になることは避けられまい。

     

    (6)「ショルツ氏は、リベラルな価値観の重要性や気候変動の危険性に関して、理論上はジョー・バイデン米大統領に賛同するかもしれない。しかし、ドイツの実情を踏まえて計算するはずだ。当然ながら、それはロシアや中国との関係をいかに修復すべきか、という考え方につながる。バイデン氏の仕事は、ショルツ氏とともに西側の価値観を賛美することではなく、米国による安全保障の傘には代償が伴うことを独政府に理解させることだ。世界中で危機が拡大し深刻化している今、米国の政治的現実を考えれば、ドイツは米国を支えるためにさらに行動しなければ米国からの支援継続を期待することはできない」。

     

    ドイツは、いずれ自国の国益追求でロシアや中国の関係修復に動き出すかも知れない。だが、ドイツは安全保障で米国を助ける行動が求められる。そうでなければ、米国から安保上のメリットを受けられないことを知るべきである。日本は、すでに日米安全保障で同一歩調を取っている。ドイツも、同じことが求められるであろう。

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    韓国は、去年から人口減になった。日本の人口減入りが2010年である。韓国はあらゆる経済データが、日本と約30年のタイムラグがある。このパターンから言えば、韓国は2040年に人口減入りしても不思議でなかった。それが、2021年の人口減だ。19年も前倒しである。ちなみに、中国は今年から人口減入りが確実である。

     

    中韓に見られる、大幅前倒しで人口減入りする原因は、「合計特殊出生率」の急低下にある。韓国は、人口横ばいに必要な合計特殊出生率「2.08」を大きく下回って、「0.84」と世界最低記録を更新中だ。

     

    この背景には、儒教特有の「男尊女卑」がある。韓国の若者社会では、男性と女性の意識が鋭く対立している。若い女性が、結婚・出産に乗り気でない理由の一つに、夫の育児協力のなさを上げている。女性は、職業と育児の両立は不可能としており、韓国の「男尊女卑社会」の悪弊が改まらない限り、出生率はさらに低下する運命のようだ。

     


    米ノースウェスタン大学経済学科のマティアス・ドゥプケ教授の研究チームが5月、全米経済研究所(NBER)を通じて公開した「出産の経済学:新しい時代」と題する報告書が注目されている。OECD(経済協力開発機構)加盟国を中心に約40カ国が調査対象だ。

     

    それによると、女性の経済活動が活発な国で出生率が高いこと。また、男性が育児と家事にあまり積極的ではない国で出生率が低い傾向が見られた。男性の家事や育児への貢献度の高いスウェーデン、アイスランド、ノルウェー、フィンランド、米国の上位5カ国は、いずれも合計特殊出生率が1.8人を超えた。寄与度の低い下位5カ国は1.5人未満だった。チェコ、日本、韓国、ポーランド、スロバキアがこれに属した。日本にとっても耳の痛いデータだ。

     

    『中央日報』(6月28日付)は、「『韓国』が絶滅する?」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のキム・チャンギュ経済エディターである。

     

    テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は先月、韓国の人口減少に言及した。日本の人口が11年連続で減少していることについて「出生率が死亡率を超えるような変化がない限り、日本はいずれ存在しなくなるだろう」と警告した後だ。マスクCEOはツイッターで「韓国と香港は最も速いペースの人口崩壊に直面している」とし、世界銀行の2020年国別出生率の順位表も共有した。

     

    (1)「これによると韓国の出生率は0.84人で、200カ国のうち最も低い。世界で人口が最も急速に減少している国が韓国だ。香港は0.87人で199位、日本は186位(1.34人)だった。マスクCEOは「韓国の出生率が変わらなければ3世代のうちに韓国の人口は現在の6%以下に減少するだろう」とコメントした」

     

    欧州の出生率も、ゆっくりと下がっている。男女同権が地に着いているので、夫の育児協力は当たり前のことだ。それでも低下しているのは、女性の高学歴化と社会進出によるもの。韓国では、男性は女性より「偉い」という根拠なき優越感に浸って、夫「風」を吹かせているようだ。日本もその嫌いはあるが、韓国はより鮮明に出ている。儒教の悪しき弊害であろう。

     


    (2)「最近の韓国経済は風前の灯火のようだ。原油価格が上昇し、サプライチェーン問題で世界はインフレーションの恐怖に包まれている。今回の景気沈滞は、韓国にとって時期的に良くない。韓国は2020年(注:正しくは2021年)から人口の減少が始まった。初めて死亡者数(31万人)が出生数(27万人)より多い「デッドクロス」が発生した。人口の減少は成長潜在力を低下させる。統計庁の将来人口推計によると、総人口は2020年の5184万人から2030年に5120万人、2040年に5019万人、2050年に4736万人に減少する。30年間に釜山の人口(336万人)の1.3倍ほどの448万人(8.6%)が消える」

     

    景気が悪いことは、出生率低下に拍車をかける。雇用不安を抱えていたのでは、結婚・出産を諦めるからだ。韓国で、今年1月から4月までに全国産婦人科など医療機関で新生児を分べんした産婦は8万1454人。過去最低で、今年は年間で25万人程度と最悪予想が出ている。「韓国絶滅」は、冗談として聞き逃せなくなった。

     


    (4)「人口が減れば創業する人が減り、雇用も減少する。こうなると成長が鈍って所得が減る。収入が減れば若者が結婚を避け、子どもを持とうとしない。結局は「人口減少→成長率低下→所得減少→人口減少」の悪循環に入る。英国の人口学者ポール・ウォーレス氏は人口減少が大地震に劣らずマイナスの影響を与えるとし、これを「
    人口地震」と表現した。状況がこれほど深刻であるにもかかわらず、政府も民間も総体的な対応をしない。政策決定権者が主に暮らす大都市では人口減少を肌で感じることができないからだ」

     

    文政権は、出生率低下に対して冷淡であった。北朝鮮と統一すれば、全体の人口が増えると言った感覚であったのだろう。新政権では深刻に捉えている。

     


    (5)「2005年に低出産高齢社会委員会が発足してから15年間、220兆ウォン(約23兆円)以上の資金を少子化対策に投入した。それでも人口問題は悪化していった。最悪の状況になればその時には打つ手がない。いま韓国は、徐々に温まっていく水の中のカエルと同じだ。新政権も24日、人口危機対応TFを設置した。過去の前轍を踏まないためには国を救うという使命感を持って取り組む必要がある。韓国という国を存続させるために」

    韓国に巣食う儒教倫理の男尊女卑社会を改めなければならない。「社会改造」する気迫で取り組まなければ、韓国は消える運命だ。

     

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    中国が、3隻目の空母「福建」の進水式を行なった。実際に就役するのは数年後とみられている。空母は、「金食い虫」と言われるほど維持費に高い費用がかかる。そういう「高コスト」空母をさらに増やした理由はなにかだ。

     

    空母は、遠距離での戦闘に使われる。「移動する基地」と言われる理由のように、本国から遠く離れた場所での戦闘に不可欠である。だが、台湾は中国と「目と鼻」という至近距離である。空母を台湾侵攻作戦に使うとしても、相手国から潜水艦やミサイルで攻撃される危険性が極めて高くなる。そういうリスクを冒してまで、空母を建艦するのは別の目的とみられる。近隣国への威嚇用だ。潜水艦を持たない国には、中国の潜水艦は恐怖の的。中国は、そこへ付け入る計画であろう。

     

    『ニューズウィーク 日本語版』(6月27日付)は、「なぜ今どき空母?『ポスト米国』見据える中国の不可解な3隻目『福建』」と題する記事を掲載した。

     

    中国は6月17日、3隻目の航空母艦を進水させた(純国産としては2隻目)。真にグローバルな機動力を備えた軍事大国を目指す中国政府の決意を見せつけるものだが、そこにはアメリカの誇る世界最強の空母艦隊と対等に張り合いたいという願望も透けて見える。

     

    (1)「アメリカの軍事的優位を支えてきたのは海軍力であり、海軍力の要は空母艦隊だ。しかし今、中国は「うちのほうが巨大で高性能な空母を造れるぞ」と言いたいらしい。だが、まだ無理だ。「福建」と名付けられたこの空母(狭い海峡を隔てて台湾と向き合う省の名であるのが不気味だ)が、既存の2隻より高性能なのは確かだ。今までの2隻は小さく、艦載機の発進にはスキーのジャンプ台のように反り上がった甲板を使っていた。しかし福建には、アメリカの最新鋭空母ジェラルド・フォードと同様に電磁式カタパルトが採用されている」

     


    初めて電磁式カタパルト(艦載機押出し装置)を装備するが、大変に電力を消費する。そういう電力多消費のカタパルトが、通常動力の空母には不適当というのが軍事専門家の意見だ。台湾侵攻目的であれば、戦闘機は中国本土の基地から飛び立つ方が効率的である。中国の本当の狙いは何か、だ。

     

    (3)「福建は、原子力空母ではない。だから補給なしの航続距離は限られる。しかも進水したばかりで、実戦仕様にまで高めるには何年もかかる。一方でアメリカには福建級の空母がたくさんあり、どれも福建以上の戦闘能力を備えている。第2次大戦時のミッドウェー海戦のように、空母を中心とした艦隊の激突が21世紀に再現される可能性は低い。今や攻撃の主役は潜水艦や対艦ミサイルであり、空母はその標的になりやすい」

     

    中国空母が、台湾海峡で作戦行動するケースを考えると、その前に米国の原子力潜水艦攻撃で沈没させられているとみられる。中国海軍は、近代戦を戦った経験がゼロだ。米海軍は、世界の海軍で古い歴史と豊富な実戦経験がある。米中海戦で、中国海軍の劣勢は免れないとされる。米海軍の総合戦略は、中国の比でないのだ。

     


    (4)「そもそも冷戦終結後のアメリカが空母を実戦で使ったのは、海からの攻撃に無防備な国(イラクやリビア)に対してだけだ。中国の意図も同じだろう。中国は巨大空母を弱小国に対する威圧や懲罰に使いたいのであり、アメリカと戦うつもりではない。もちろん、現時点で中国が太平洋に空母艦隊を出そうとすれば、どこかでアメリカの安全保障ネットワークに引っ掛かる」

     

    中国は、ロシア軍の戦略を採用している。ロシア軍が、ウクライナ軍にてこずっていることから分るように、中国軍が米軍と戦えばその帰趨は明らか。日清戦争に次いで「二連敗」を喫しよう。

     


    (5)「アジア太平洋に張り巡らしたアメリカの安全保障ネットワークが、ほころんできたらどうか。現に中国は南シナ海で、ほとんど誰にも邪魔されずに人工島を造ってきた。
    つまり中国は、アジアにおけるアメリカの軍事的存在感が今よりも低下する時代を見据え、「アメリカ以後」のアジア太平洋で周辺国を威圧するために福建のような空母を必要としている。ただし、空母艦隊だけでアジアの海を支配するのは無理だ。太平洋は広い。いくら中国の軍事的リソースが豊富でもカバーし切れない」

     

    「ポスト・アメリカ」という想定は非現実的である。米中経済の比較では、中国が先に衰退過程へ入ることになる。人口動態から見て、中国の衰退は不可避なのだ。となると、中国が空母を建艦しても「お飾り」程度の役割しか果たさないであろう。周辺国への威嚇目的である。

     


    (6)「そもそも中国が力を入れてきたのは、自らが太平洋における覇を唱えるための戦力ではなく、アメリカの覇権を阻止し、後退させるための戦力だ。そのために対艦攻撃能力を向上させ、潜水艦をはじめ、超低空飛行ミサイルを搭載した航空機、小型の高速艇、航行中の船舶を標的にできる弾道ミサイルなどの配備を進めてきた。こうなると、米軍の艦艇も容易には中国の沿岸部に近づけない。中国が、軍事面でアジアの海洋大国になるのを全面的に阻止するのはコストもリスクも高すぎる。空母は中国のパワーの象徴ではあるが、だからといって、中国が必然的にアジア海域を支配するようになるとは限らないのだ

     

    中国海軍は、世界覇権を目指す戦略に基づくものでなく、米軍を中国沿岸部に近づけない目的としている。ならば、空母は不必要となろう。矛楯した戦術になるのだ。あわよくば、世界覇権を狙うという戦略の飛躍も隠されている。ここに、落し穴があるのだ。

     

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