中国は、人口増加だけをテコにして経済大国へのし上がった国である。これは、科学技術の発展を置き去りにした「模倣経済」のもたらしたものである。習氏は、国民に向かって根拠もなく「中華の夢」を煽った手前、欧米製のワクチンを導入できず、ゼロコロナ政策しか選択できない苦境に立たされている。
『ブルームバーグ』(6月29日付)は、「習主席、ゼロコロナ政策は中国にとって最も経済的かつ効果的」と題する記事を掲載した。
中国の習近平国家主席は6月28日、新型コロナウイルスを徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策は中国にとって最も経済的かつ効果的であり、中国はコロナを根絶する目標を達成することができると表明した。
(1)「国営新華社通信によると、習主席は最初のコロナ禍に見舞われた湖北省武漢市を同日訪れた。今回の発言で、中国がロックダウン(都市封鎖)や大規模検査を軸とするコロナ対応を撤回する計画がないことが明確になった。28日に渡航を巡る制限が予想外に緩和され、中国は慎重ながらも出口戦略に着手しつつあるとの見方もあったが、習氏の発言はこうした期待に水を差すことになりそうだ」
中国本土株の指標CSI300指数は29日、前日比1.5%安で終了した。28日は、渡航を巡る制限が予想外に緩和され、中国は慎重ながらも出口戦略に着手しつつあるとの見方が広がり、前日比1%高で引けたものの帳消しになった。29日の香港市場では、中国のテクノロジー企業から成るハンセンテック指数が3.3%安で引け、悲観ムードに覆われている。中国経済の先行きの不安観を高めた結果である。
コロナウイルスは、次々と新種が登場して感染力を高めている。中国製ワクチンでは、とうてい予防が不可能であり、米欧製ワクチン「mRNA」でなければ対抗不可能とされている。新種のコロナウイルスでも「mRNA」であれば、簡単に対抗可能とされている。こういう高度のワクチは、中国では製造できない状況が続いている。だから、ゼロコロナで都市封鎖して逃げ回っているだけだ。
(2)「新華社によれば、習主席は「中国の人口基盤は大きい。『集団免疫』や『寝そべり』政策を採用すれば、その結果は想像を絶する」と説明。「一時的に経済発展に多少の影響があったとしても、高齢者や子供など人民の生命の安全や身体の健康を損ねるようなことがあってはならない」と述べた。また、中国の発展は独立性と自主性、安全性を高める必要があるとも指摘。科学技術の「命綱」は自国の手でしっかりと握り続けなければならないと言明した」
習氏は、矛楯したことを言っている。「集団免疫」と「寝そべり」は無関係であり、これを並列しているところに習氏の恐怖感が期せずして現れている感じだ。
「集団免疫」は、「ウイズコロナ」によって感染者が増えても、治療態勢が完備していればおのずから達成できる道である。中国では、治療態勢が不備であり、一度感染者が急増すれば、医療崩壊を起す危険性を高めるのだ。そこで、次善の策として感染者そのものを増やさないゼロコロナ対策を取らざるを得ない事情にある。苦し紛れの逃げ道であって、自慢すべきことでなく恥ずべきことなのだ。
「寝そべり」は、習氏の強引な政策に対して若者が絶望感のあまり、就職しない・結婚しないという形を変えた政府への抵抗運動である。習氏は、こういう表面的な現象だけを見ており、それが奥深いところで中国共産党への絶望感であることが分らないのであろう。「集団免疫」が実現できる社会環境であれば、「寝そべり」は生まれないのだ。
習氏は、科学技術の「命綱」を自国の手でしっかりと握り続けなければならないと主張している。これも苦し紛れの発言だ。自国だけで有効なワクチンを開発できなければ、人命に関わるだけに米欧からの導入を躊躇してはならない。習氏は、自国ワクチンを自慢し過ぎて、今さら米欧製ワクチンを導入できないというジレンマに立たされている。それを、言葉巧みにカムフラージュしているだけだ。