勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    韓国政府は、自らの政策ミスによって生じた「最賃失業」への対応をせかされている。今年の最低賃金引き上げは16.4%、来年は10.9%と連続して、大幅引き上げだ。中小零細企業では、これに追いつけず、やむなく従業員を解雇するという、とんでもないことが起こっている。韓国の最賃法は、業種、地域、性別、年齢を問わない無差別、一律の適用である。違反企業には罰則を伴う厳しさである。

     

    こうなると、企業は犯罪者になりたくないから、涙をのんで従業員を解雇する。韓国では、政治が失業者をつくり出すという前代未聞のことが起こっている。原因は、間違った経済政策にある。「所得主導経済」とやらを狙っているもの。国民の所得を増やすには、最低賃金を引上げる政策が、最も効果的という「珍説」に惑わされている。中国が2010年頃から始めた政策を真似たのだろう。

     

    中国の目的は、所得不平等を解消する目的であった。この面では、所得再分配政策が有効だが、共産党員が既得権益を侵害されるという「わがまま」によって阻止したので窮余の策で始まった。韓国では、「反企業主議」による誤解が原因である。企業は賃上げに消極的だから政府が先鞭を切って最賃を引上げ、「見本」を見せる。そんな意識であったに違いない。

     

    これが、思い上がりというもの。賃上げは、企業が生産性を引き上げて初めて実現する。政府は、反企業主議ゆえに企業への規制を緩和するどころか強化している。これでは、生産性は向上しない。だが、政府の頭は固いから規制を緩和しないのだ。一方で、最賃は引上げる。この状態では、失業者が増えて当然である。

     

    政府は、財政資金を使って「最賃被害者」を救済するという。もう呆れてものも言えないほどだ。貴重な財源を政府の政策ミスを尻ぬぐいすることに使うとは、世も末であろう。韓国経済は、こういう「トンデモ政権」のお陰で体力を消耗する。

     

    『朝鮮日報』(7月18日付)は、「最低賃金引き上げのツケ、韓国政府が税金で穴埋め」と題する記事を掲載した。

     

    「韓国で行き過ぎた最低賃金引き上げによる副作用で、庶民の所得が目減りするのをカバーするため、政府・与党は17日、計画通りに基礎年金を早期に引き上げるほか、低所得層への勤労奨励金を大幅に引き上げることを骨子とする低所得層支援対策を示した。最低賃金引き上げ分を税金で支援(雇用安定基金から3兆ウォン=3000億円)し、低所得層の所得の空白をまたもや税金で埋める格好だ。政府・与党はこのほか、青年求職者に支給する求職活動支援金を現在の月30万ウォン(約3万円)、最長3カ月から月50万ウォン(約5万円)、最長6カ月に拡大することとし、扶養義務者がいても、所得下位70%に属する重度障害者や高齢者がいる世帯に対しては、来年から生活保護支援を実施する」。

     

    日本のアベノミクスから見ると、異次元の政策だ。企業の規制を緩和して活発化させれば、最賃も自然に上昇する。就職難も解決して、求人難に逆転するはずだ。日本に見本があるのに「左翼経済学の虜になって意地を張っている。


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    ロシアW杯サッカーは、フランスの20年ぶり2度目の勝利で閉幕した。数々の名場面は、サッカーファンに忘れられない思い出を残し、その余韻が続いている。日本代表チームも、世界のサッカーファンにさわやかな印象を残した点では「入賞」だ。「期待以上の成績」ランキングで2位に入った。8強には入れなかったが、堂々の2位である。

     

    米スポーツ・イラストレイテッド(SI)が選定する「2018ロシアワールドカップ(W杯)期待以上の成績を出したチーム」順位で日本は2位に入ったもの。SIは18日(日本時間)、2018ロシアW杯に参加した32カ国のうち「期待以上の成績」を出したチームの順位を発表した。

    『中央日報』(7月18日付)は、次のように報じた。

     

    決勝トーナメント(16強)に進出した日本は2位だった。SIはグループリーグ第1戦でコロンビアのカルロス・サンチェスが前半3分で退場となったことに言及し、これが日本にアドバンテージとして作用したと分析した。また決勝トーナメント1回戦でベルギーに逆転されたものの2-0でベルギーにリードしていた点も印象的だったと分析した」

     

    日本は、ベルギー戦で最初から猛攻を仕掛けて 有利に試合を進めながら、最後に逆転された。その闘いぶりが、世界ファンが魅了されたのであろう。日本人として胸を張れる。

     

    このベルギー戦は、『中央日報』(7月3日付)で次のように報じていた。

     

    「日本の8強進出はならなかったが、海外メディアの好評が続いている。サッカー日本代表は7月3日(日本時間)、ロストフアリーナで行われたロシアワールドカップ(W杯)決勝トーナメント初戦でベルギー代表に2-3で逆転負けを喫した。英BBCは『日本は2回の賭けをした。開幕を控えて監督を交代し、グループリーグ第3戦でも0-1のスコアを維持する選択をした』とし『日本は1966年の北朝鮮、2002年の韓国に続いてアジア史上3番目にW杯8強入りするチームになるところだった』と伝えた」

     

    「また、BBCはベルギーの選手ではなくミドルシュートでゴールを決めた乾をMOM(Man of the match)に選び、ベルギーを追い込んだ日本の競技力を高く評価した。グループリーグ第3戦後に西野朗監督に対し『腹切りとなりかねない戦術を使った』と酷評した英ザ・サンは、『もう少しで日本が忘れられない勝利を築くところだった』と好評した。続いて『2点差となる乾貴士のゴールが決まった時は、ベルギーが突き落とされ、日本が初の8強進出の夢がかなえるように見えた』と伝えた」

     

     


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    韓国は、何かにつけて日本非難が好きである。日本批判記事が韓国では読まれるからだ。日本に非があれば、非難されても致し方ない。ところが、今度は的外れの記事を書いて胸の溜飲を下げているから迷惑というほかない。

     

    韓国メディアの言い分では、日本の防衛費が増えていることが問題だというもの。これは、安倍政権の軍事大国化路線に沿うもので、極めて危険であるとしている。最近の中国は言わなくなったが、日本の防衛費が対GDP比で1%であるかどうかに目くじらを立てていた。こうして日本では、防衛費の対GDP比は1%という不文律ができあがった。

     

    その中国はどうか。国防費は対GDP比で1.87%(2017年)である。散々、日本にクレームを付けて日本の防衛費に難癖付けてきたのに、自らはチャッカリと2%近い増やし方である。このほか、「隠し防衛費」の存在が指摘されている。中国は、自国本位の国である。

     

    韓国も自国本位である。国防費の対GDP比は2.57%(2017年)で、日本の0.93%(同)を2.8倍も上回っているのだ。この日本を「軍事大国化路線」と決めつけてくる。ここに掲げたデータを見れば、記事を書いた記者は赤面するはずだ。

     

    韓国で報じられた記事は、『中央日報』(7月17日付)の「日本の来年度防衛費が過去最大に、安倍首相『軍事大国』暴走」である。

     

    (1)「日本の来年度防衛費(国防費)が過去最大となる5兆3000億円に迫る見通しだ。中期直接防衛費増加率も現在の年0.8%から、2019年からの5年間は年1%以上に高まる。日本の来年の防衛費予算は今年の4兆9388億円だけでなく、1997年の4兆9412億円を上回る過去最大規模だ。日本は2012年に安倍政権が発足した後、2013年から7年連続で防衛費を増やしている」

     

    この記事では、日本の防衛費の伸び率に注目しているが、対GDP比という規模論では素通りしている。また、日本の防衛費は韓国の国防に役立っていることを忘れている。例えば、日本が人工衛星で収集した貴重な情報を韓国へ通知している。

     

    日本の防衛費によって駐日米軍活動が支援されている。その恩恵を受けているのは韓国である。余りにも偏狭な見方である。素直な目で日本を見られないのは気の毒だ。反日教育の結果であろう。

     

    (2)「日本政府が防衛費を増やし続けているのは、『憲法改正を通じ日本を戦争可能な国にする』という安倍政権の政策目標が反映されたものと分析される。韓半島(朝鮮半島)周辺の緊張は緩和されているが、日本は北朝鮮の核・ミサイルの脅威が少なくなく、中国の国防費増加などで安保環境が悪化していると主張している」

     

    日本を戦争可能な国にするという議論は、国内でも起こっている。日本の人口動態(少子高齢化)と財政状態の逼迫化を考えれば、戦争は不可能である。可能な限り、戦争に巻き込まれない方法を考えることがベストだ。単独での防衛は不可能である以上、同盟国の一員になることしか道はない。とすれば、どうするのか。軍事大国化は、日本を滅ぼす道であるので選択肢にない。韓国メディアが懸念するには及ばないのだ。


     


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    北朝鮮との外交交渉は、「忍耐」の二文字を必要とするようだ。約束した場所へ現れない。「ドタキャン」どころか「すっぽかし」である。先に米朝の実務者会談が板門店で開催される予定であった。だが、北朝鮮側が現れず、米国代表団は待たされた挙げ句に連絡も無いままに終わった。徹底的に独りよがりな国である。こういう相手と交渉するにはどうするか。世界覇権国の米国が、最貧国の北朝鮮に振り回されている構図は漫画そのものである。

     

    韓国の文大統領は、こう言っている。

     

    北朝鮮が望んでいる相応の措置に関連しては、『過去のような制裁緩和や経済的補償ではなく、敵対関係の終息と信頼の構築』としながら『これは北朝鮮の過去の交渉態度とは大きな違いがある』と強調した」(『中央日報』7月13日付「文大統領、北の米国非難は戦略、実務交渉長くかかるだろう」)

     

    北朝鮮は、米国の出方を見ながら信頼感を増しながら交渉する。過去のような制裁緩和や経済的な補償を第一義にする姿勢から変わった、というのだ。だが、約束した時間に現れず、すっぽかすのは困った相手である。米国はいつまでも北朝鮮の好き勝手にさせるわけにはいかない。ぴしっとさせる必要がある、それにはやっぱり軍事力という背景がなければ、実務交渉を引き延ばされるだけで、過去と同じ失敗の繰り返しに終わる。

     

    そこで、米国が取りつつある戦術は、つぎのようなものだ。ステルス戦闘機搭載のミニ空母を西太平洋(北朝鮮を含む)へ配置し、無言の圧力をかけることである。「米国を舐めるなよ」というファイティングポーズを取って緊張感を保とうという戦術である。

     

    『中央日報』(7月17日付)は、「米軍、斬首作戦戦力が静かに出港、北朝鮮を意識か」と題する記事を掲載した。

     

    この記事では、「ミニ空母」の「エセックス」がサンディエゴを出港式もなく静かに北朝鮮を含む西太平洋海域へ派遣されたという記事である。注目すべきは、ステルス戦闘機(F-35B)を搭載していることだ。北朝鮮防空網を突破して主席宮やバンカーなど北朝鮮最高指導者を精密打撃する『斬首能力』を備えている。北朝鮮が、米軍を欺いて核実験を行なっていたというような最悪事態に備えていることが窺える。米国は和戦両様の構えだ。

     

    (1)「米国が非核化交渉を進行中の北朝鮮を意識したのか。ステルス戦闘機を搭載した米海軍の『ミニ空母』が7月10日(現地時間)、米カリフォルニア州サンディエゴを出港した。目的地は韓国が含まれる西太平洋。『エセックス』は全長257メートル、排水量4万500トン規模の大型艦。飛行甲板があるため『ミニ空母』とも呼ばれる。『エセックス』には米海兵隊の第211海兵戦闘攻撃飛行大隊(VMFA)が配属されている。この飛行大隊はステルス戦闘機F-35Bを保有する。ステルス戦闘機が関心を引くのは、北朝鮮防空網を突破して主席宮やバンカーなど北朝鮮最高指導者を精密打撃する『斬首能力』を備えているからだ」

     

    (2)「米海軍は、『エセックス』揚陸準備団の出港を発表しなかった。盛大な出港式もなかったという。3月に別のミニ空母『ワスプ』(LHD1)がF-35Bを搭載して出港したが、当時の盛大は出港式に比べると音沙汰なく出港したということだ」

    出港式もなく、静かに任地に向かって出港したことは、北朝鮮の万一の「騙し作戦」にも対応可能な意気込みを内外に示しているように思える。米国が不退転の決意で、「絶対に騙されない」ことを前提に対応しているように見える。


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    鉄の団結を誇る中国共産党の内部がざわついている。習近平国家主席への個人崇拝に反対する動きが表面化しているからだ。毛沢東に対する個人崇拝が、10年にわたる文化大革命という騒乱をもたらした。この反省に立って、個人崇拝を止めたはずである。だが、習氏の無期限「国家主席」への道が開かれた途端に、再び習氏への個人崇拝の動きが出始めたもの。

     

    党内で、個人崇拝を阻止しようという動きがあることは、習氏の統治が万全でないことを物語っている。この背景には、米中対立問題が蔭を落としていることは言うまでもない。「中国製造2025」は習氏が音頭を取って始めた事業だ。米国がここへ狙いを付けて、貿易戦争を仕掛けてきた。中国は有効な対応ができず、右往左往している。

     

    習氏は当初、「米国に殴られたら殴り返す」と威勢いのいい啖呵を切っていたが、7月に入って方向転換した。「米国と争うな」と言う始末である。米国への報復関税を科す前に、党内では闘わずに妥協の道を選べという意見が公然と出ていたほど。それを一蹴しておきなら、トランプ氏が「5000億ドルの製品に10%の追加関税」と発言した途端、方向転換を言い出したことへの批判だろう。

     

    米中対立の始まりは、習氏の演説である。昨年秋の党大会で、2050年ごろに米国の覇権に対抗する経済力と軍事力を保持すると言い放った。これが、米国トランプ大統領の怒りに火を付けた可能性がある。「米国第一」は「世界第一」の宣言であったとも読める。習氏は、米国を甘く見て「放言」したのだ。

     

    以上の習氏を取り巻く事態の変化を頭に入れて、次の記事を見て頂きたい。

     

    『共同』(7月15日付)は、「習主席統治に不満噴出か、党内に異変相次ぐ」と題する記事を掲載した。

     

    中国共産党内で、権力集中を進める習近平国家主席の統治手法に不満が噴出しているとの見方が出ている。国営メディアが習氏への個人崇拝批判を示唆、習氏の名前を冠した思想教育も突然中止されるなどの異変が相次いでいるためだ。米国の対中攻勢に手を焼く習氏の求心力に陰りが出ている可能性も指摘される。『習近平同志の写真やポスターを全て撤去せよ』。12日、習氏の宣伝用物品を職場などに飾ることを禁じる公安当局の緊急通知の写真が出回った。通知の真偽は不明だが、写真は会員制交流サイト(SNS)などで一気に拡散された。同時期に国営通信の新華社(電子版)は、毛沢東の後継者として党主席に就任した故華国鋒氏が個人崇拝を進めたとして党内で批判を受けた経緯を詳述する記事を伝えた。党が80年に『今後20~30年、現職指導者の肖像は飾らない』と決定したことにも触れた。記事はすぐ削除されたが、習氏を暗に非難したと受け止められた」

     

    習近平氏は、どんなに力んでみても毛沢東にはなれない。そういう限界を教えているのかも知れない。毛沢東が率いた中国社会と、習近平が率いる中国社会では質的に異なっている。それに、毛沢東は共産党「創業者」である。習近平は雇われ社長に過ぎない。習氏は、この違いを自覚して行動しないと、永久政権は空手形に終わる可能性が強い。党員と国民を畏れる。そういう謙虚な姿勢が求められているように見える。

     

     

     


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