勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    韓国の国民性は、「感情8割・理性2割」と言われている。頭で考えず、ハートで解釈するパターンである。韓国は新政権に移行し、日韓問題を捉える視点が「理性」のウエイト増大を望みたい。だが、韓国メディアは依然として「感情8割」のままである。

     

    『朝鮮日報』(5月28日付)は、「関係改善は日本からのプレゼントなのか」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の成好哲(ソン・ホチョル)東京特派員である。

     

    日本の読売新聞は26日、「韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が日本との関係改善に向け動き出した」「最大の鍵は徴用工問題で日本が納得できる解決策を尹政権が提示できるかにかかっている」と報じた。同じ日に産経新聞は、「岸田文雄首相は米日首脳会談の際、米国のバイデン大統領に徴用工と慰安婦問題について、これまで韓国が両国の合意を無視した経緯を説明した」と報じた。

     


    (1)「日本は本音と建前が異なる国だ。岸田首相は1カ月前に「日韓関係改善をこれ以上先送りできない」とメディアの前で語っていたが、これを日本式の話法から解釈すれば「関係改善は何としても必要(建前)だが、韓日関係悪化の責任は韓国にあるので、韓国が徴用工問題や慰安婦問題の解決策を持ってこい(本音)」ということだ」

     

    どこの国でも、「本音」と「建前」がある。韓国は、「本音」だけで日韓関係を処理しようとするから、日本と衝突するのだ。外交関係は、「建前」=国際法が原則である。これだけでは、ギスギスするので「本音」を加味して、紛争における「落としどころ」=妥協点を探し出すものだろう。韓国には、こういう外交の微妙な点が理解できずにいる珍しい国である。

     


    (2)「岸田首相としてはそう考えるのも当然だ。岸田首相は2015年、当時の朴槿恵(パク・クネ)政権と慰安婦問題で合意する際の実務担当(外相)だった。次の文在寅(ムン・ジェイン)前大統領が国家間の合意を一方的に無視し、反日感情を政治に悪用したとする日本側の主張には一理がある。徴用工への賠償問題も日本なりの論理がある。1965年の韓日協定で解決したにもかかわらず、韓国の裁判所が突然日本企業に賠償を命じる判決を出したというわけだ。条約当事国の韓国政府が動いてほしいという要請はおかしなものではない」

     

    旧徴用工賠償は、国際法に従えば1965年の日韓基本条約で解決済みである。韓国大法院の判決は、司法が行政の取り決めた条約に介入した点で間違いである。「後進国判決」と揶揄されて当然である。国際的慣例に反するのだ。

     


    (3)「しかし1週間前に東京で取材した市民活動家のアリミツ氏は首をかしげた。アリミツ氏は、「結局は日本が加害者で、韓国は被害者ではないか」「謝罪し許す過程で問題がややこしくなり、その原因を韓国政府が提供したとしても、突然韓国が加害者になるのか」と反問した。裁判・条約・求償権・合意・反日などの言葉を横に置いて見た場合、日本が韓国に対して「先に解決策を提示せよ」と求めている状況の方が問題という指摘だ」

     

    このパラグラフは、韓国人の「感情8割・理性2割」の典型的な内容である。「市民活動家のアリミツ氏」なる人物を登場させて、「感情論100%」を爆発させている。外交関係は、「建前」=国際法のルールに従っている。韓国は、「本音」=反日で対抗してくるから、日本の「建前」に押し返されているのだ。過去の解決済みの問題を蒸返し、「謝罪」と「賠償」を要求するのは、感情論そのものである。韓国政府は、日本が渡した「3億ドル」(1965年)が生み出したその後の利益から払うべき問題である。

     


    (4)「北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、中国が軍事力を誇示する今の状況では、民主主義の価値を共有する韓国と日本が関係を正常化すべきである点は正しい。ただし関係改善は両国の双方にとっての利益であり、日本が韓国に与えるプレゼントにはなり得ない。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は就任したその日、中国の王岐山・国家副主席よりも先に、就任式に出席した日本の林芳正外相と会った。日本を中国よりも礼遇したのだ。韓国外交部(省に相当)は「来月東京で外相会談を」「両国首脳による会談の早期実現を」と呼びかけているが、日本は腕組みするだけだ」

     

    韓国が、新大統領就任式で中国代表より先に日本代表と会談したことは、日本への「プレゼント」と言っている。従来は、米国の次が日本であった。この順番が狂ったのは反日の結果である。これは、帰するところ韓国の安全保障にとって、日本と中国どちらが大切かという問題であろう。中国は、韓国を守るどころか「敵方」に回るリスクを抱えている国である。そういう、潜在的な地政学的リスクを考えるのが、マスコミの仕事の筈である。韓国のマスコミは、もっとしっかりすべきなのだ。

     

    (5)「1カ月前に鄭鎮碩(チョン・ジンソク)国会副議長は岸田首相に会い「孤掌難鳴(こしょうなんめい)」という言葉を使った。「片手の掌だけでは拍手ができない」という意味だ。バイデン大統領に韓国の前政権による過ちを告げ口するような情熱を傾ける前に、まず韓国と直接会っても良いのではないのか。それをしないのであれば、7月に予定されている参議院選挙で「反韓感情を政治に悪用するのでは」と疑われるかもしれない

     

    日本は一度、韓国を「なきもの」として突き放した。文政権時代の韓国とは、とてもまともな外交ができないと断念したのである。日本にとっての韓国は、安全保障上「必須」の存在でなくなっている。韓国こそ、北朝鮮問題を抱えて日本の支援を仰がなければならない立場である。在韓米軍の後方基地は、すべて日本に存在している。それだけ、日本国民の負担がかかっているのだ。韓国には、そういう日本への配慮がゼロで反日に突き進んできた。日本が怒るのは当然である。

     

    下線部は、お門違いの議論である。韓国問題が、参院選の争点でないからだ。「謙韓」が多数派である以上、あえて韓国問題をとり上げる必要性はないであろう。

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    韓国が、新政権になった途端に氷が少しずつ溶ける前兆を見せ始めた。旧徴用工賠償問題は、韓国国内で処理する案が有力になってきた、と次期日本大使候補の朴氏が発言した。

     

    これは、韓国の前国会議長の文氏が提案し、超党派による法案であった。だが、文前大統領が乗り気でなく結局、実現しないで終わった。韓国側は、事前に日本とも打合せし、内々で了解したものであった。文氏は、またとない解決チャンスを自ら捨てたのだ。理由は、「日本は加害者、韓国が被害者」という原則論から一歩も出られなかったことにある。「書生」文在寅の限界である。

     


    旧徴用工賠償問題は、日韓基本条約で解決済みである。無償供与3億ドルに徴用工賠償が含まれていった。ただ、「賠償金」名目でなく、「経済協力金」であったことで、韓国大法院(最高裁)は賠償金と認めず、新たな賠償命令を出すという「三百代言」的な判決である。文氏が圧力をかけた疑いの濃厚な判決であった。

     

    『中央日報』(5月27日付)は、「駐日韓国大使に内定の尹徳敏氏『強制徴用、韓国政府が代わりに弁済するのも方法』」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権初の駐日大使に内定している元国立外交院長の尹徳敏(ユン・ドクミン)氏(63)は、韓国政府が日本と長い間対立してきた強制動員問題に関連して、被害者に「代位弁済」をする方案を解決策として言及した。

     

    尹氏は26日、東京帝国ホテルで開かれた国際交流会議「アジアの未来」にテレビ画像を通じて出席し、約30分にわたって講演した。今年で27回目を迎える「アジアの未来」は、日本経済新聞が主催し、中央日報などがメディアパートナーとして参加している行事だ。

     


    (1)「講演後の質疑応答の時間に、尹氏は「強制徴用現金化問題に対して、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は現金化を望まないとの発言をしたが、尹錫悦政府はどのように見ているか」という質問を受けた。尹氏は「残念に考えている」としながら「文前大統領がもう少し早くそうおっしゃって、両国関係の悪化を放置していなければという気持ちがある」と述べた。続いて「尹錫悦政府は韓日関係のこれ以上の悪化を放置しない」としながら「最近数年間、さまざまな解決案が出てきたが、実行しなかっただけ」と説明した」

     

    文前大統領は、旧徴用工賠償問題で日本政府が話合いたいと申入れても、すべて無視するという外交的欠礼をした。その高い代償として、日本が韓国を「ホワイト国」(一括した輸出手続き)から外して、輸出1件ごとに申請させる制度に切換えた。誠意のない韓国へ「ホワイト国」として礼遇する必要がなくなったからだ。韓国は、これに激怒して「反日不買運動」という実力行使に出てきたのである。

     


    こうして、日韓が感情的に激昂した旧徴用工賠償問題は結局、韓国が国内で賠償金を払うしか道がなくなった。韓国では、まだ「謝罪」が第一と言う関係者もいるほど。だが、「謝罪」の「謝」の字でも出れば、そこで日韓の話合いはストップするはずだ。米つきバッタのように、謝罪の繰り返しはあり得ない。国家の謝罪は一度だけ。これですら、外交的には珍しいケースである。日本は、その珍しい謝罪を何度もしてきたのだ。

     

    (2)「尹氏が個人意見であることを前提に、解決方案の一つとして言及したのが韓国政府の代位弁済だ。裁判所の判決により日本企業が強制動員被害者に賠償するようになっているが、これを韓国政府が代わりに返済する案だ。尹氏はまた、1965年韓日請求権協定に関連した企業が自律的に参加する財団を作り、賠償を支援する方法も紹介した。該当の財団に日本企業が参加するアイデアも付け加えたが、尹氏は「問題解決のためには日本との協力が必要で、相当な時間がかかるだろう」と述べた」

     

    惜しむらくは、韓国大法院が国際法に則った判決をしなかったことである。国際間では、条約が先行しており、司法が介入できないルールになっている。つまり、韓国司法は、日韓基本条約についての判断をしてはならなかったのだ。そのタブーにはまり込んで現在、四苦八苦している。韓国下級裁判所では、大法院と異なる判決を続出させている。このことが、旧徴用工判決がいかに国際的に間違っていたかを示している。

     


    (3)「日本と葛藤しているもう一つの歴史問題、慰安婦問題に対しても遺憾を表した。2015年慰安婦合意に関連して「問題に対する責任がある日本側で、その後『お金ですべての問題が終わった』というような発言が出てきたことから世論が大きく悪化して状況が変わった」と説明した。補償と謝罪は被害者の名誉回復と治癒のための過程の一環にすぎないのに、日本側が補償ですべてのことが終わったと考えることが問題だったという解釈だ」

    このパラグラフは、事実と間違ったことを主張している。文前大統領が、日韓慰安婦合意を破棄したのは、外交部(外務省)が、被害者や関係者の意向を聞かずに独断で日本と合意したから無効という理屈である。だが、26日に外交部文書の一部が公開されて、これが全くの噓であったことが判明した。「問題に対する責任がある日本側で、その後『お金(注:賠償金)ですべての問題が終わった』というような発言が出た」ことが原因とすり替えている。

     

    文前大統領は、選挙公約で日韓慰安婦合意の破棄を主張していた。事実を曲げて、日本に責任があるような論法には、とうてい承服できないのだ。外交部の文書が、雄弁に韓国側の悪意を証明している。

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    いかにも「計算高い」中国らしい振る舞いをしている。中国は、インド洋に浮かぶ紅茶の国・スリランカへ「一帯一路」名目で巨額融資をし、債務返済が滞ると港を「99年租借」にして担保回収に出た。そのスリランカが今度は、国債元利金返済に直面して苦境に立たされている。だが、中国は新規の融資話を断り、スリランカが路頭に迷っている。

     

    スリランカ国内では、外貨不足で為替安に直面し物価急騰を招き、政情不安が高まっている。そこで、緊急融資先として日本へ「SOS」を打つ事態になった。スリランカ大統領によれば、日本との話合いが近くまとまりそうだという。

     


    『日本経済新聞 電子版』(5月27日付)は、「緊急融資『日本に期待』、スリランカ大統領が表明」と題する記事を掲載した。

     

    経済危機に直面するスリランカのゴタバヤ・ラジャパクサ大統領は26日、日本で開催中のシンポジュームに映像メッセージを寄せ、目先の生活必需品の供給や債務再編に向け「緊急のつなぎ融資が必要だ」と述べた。金額には言及しなかったが、日本との間で交渉が進んでいることも明らかにした。

     

    (1)「スリランカの対外債務残高は2021年末時点で500億ドル(約6兆3000億円)を超える。22年中に70億ドル分の支払いが期限を迎えると報じられている。ラジャパクサ氏は映像メッセージで、同国が「深刻な財政危機に見舞われている」と認めた。新型コロナウイルスの感染拡大で激減した観光客の数はなお回復途上で、国際収支が悪化。外貨不足で輸入が滞り、品不足で生活必需品の価格高騰が深刻になっている。スリランカ政府は4月、経済再建策がまとまるまで対外債務の返済を一時停止すると表明した」

     


    現在、輸入品を中心とした生活必需品の値上がりが、国民生活を直撃している。4月のコロンボ消費者物価指数は前年同月比29.%増という記録的な水準だ。政権への抗議デモが続き、政権支持者との衝突などによる死傷者も出ている。

     

    政権の要職を親族で独占してきたゴタバヤ・ラジャパクサ大統領らへの批判が高まるなか、5月に入って兄のマヒンダ・ラジャパクサ首相が辞任した。ゴタバヤ氏は挙国一致内閣の設立を訴え、12日に野党の統一国民党(UNP)総裁のウィクラマシンハ氏を新首相に任命した。ラジャパクサ兄弟が親中派と目されてきたのに対し、ウィクラマシンハ氏は親インド・欧米派とされる。

     

    中国はなぜ、新たな融資を断ったのか。真相は不明だが、先の融資では、担保としてハンバントタ港を「99年租借」した。今回、融資してもハンバントタ港のような価値のある資産が見当たらなくなったから断った、という見方もされている。

     


    スリランカ大統領はこの1月、中国の王毅外相と会談。スリランカは、中国に対する債務が少なくとも33億8800万ドル、日本円で4300億円余りにのぼるなど膨らみ続けている。このため、中国に対する債務支払期限の延長など、返済条件の緩和を検討するよう求めたもの。

     

    中国からの債務漬けの発端は、スリランカ南部のハンバントタ港を約14億ドルかけて開発したことにある。金利が高く、港の稼働率も悪かったため、返済のメドが立たなくなってついに、ハンバントタ港の運営権を「99年租借」という形で奪われることになった。中国は、これを見越していたのである。

     

    中国が、スリランカへの新規融資を断ったのは、中国の外貨事情悪化も大きな要因と見られる。中国の経常収支は昨年、パンデミック下の僥倖で大幅黒字を出したが、今年は大幅な減少が見込まれる。今年は、3000億ドルもの資本純流出が見込まれるほどだ。外貨準備高3兆ドル割れもありうる事態である。とても、他国の面倒を見ている余裕がなくなったに違いない。

     


    それに、スリランカを中国へ引きつけて置くメリットがなくなったのであろう。ハンバントタ港の運営権は99年間握った。後は、深入りせずに「実益」を守ることを選んだに違いない。中国の高利貸し的商法が全面に出てきた。

     

    (2)「ラジャパクサ氏は、国際通貨基金(IMF)のプログラムが開始されるまでのつなぎ融資で経済を安定させることが急務だとの認識を示した。「日本からのつなぎ融資についての交渉が近く完了することを期待する」と指摘した。スリランカはインド洋の島国で、中東・アフリカと東アジアを結ぶシーレーン(海上交通路)上の要衝だ。緊張関係にある中国とインドがそれぞれ、経済・安全保障の両面で影響力を競ってきた。ラジャパクサ氏は「インドの惜しみない支援に感謝している」と述べたが、中国には言及しなかった。スリランカは中国主導の広域経済圏構想「一帯一路」の途上にあるが、同国からの過剰な融資を受け入れ、返済に窮している」

     

    日本は、ODA(政府開発援助)で長期・低利の融資で借入れ国の立場で融資をしてきた。スリランカにして見れば、日本の「親切さ」にすがって、危機を乗り切りたいのであろう。

     


    (3)「スリランカの経済危機について、ラジャパクサ氏は「欧州での衝突」も背景にあると述べ、ロシアのウクライナ侵攻による世界経済の枠組みの揺らぎの影響を受けていると示唆した。19年の大統領選で当選したラジャパクサ氏は、兄の大統領経験者を首相に就けるなど、一族で政権を牛耳ってきた。経済危機に抗議する市民らは最大都市コロンボなどでデモを続け、ラジャパクサ氏の大統領辞任を要求している。だが、同氏は辞任を拒否。映像メッセージでは「民主主義の枠組み」を通じ、事態を解決すると主張した」

     

    スリランカは、外国人観光客でもっている国である。2019年のGDPへの寄与は4.3%。40万人余の雇用を生み出したという。外国人観光客の動向が、経済成長の鍵を握っているのだ。その入国者数は、新型コロナの影響から大きく減少している。2021年は、2019年比89.8%減の19万5000人へと激減したほど。これでは、経済が回らないであろう。

     

    今年は、これから「ウイズコロナ」で次第に外国人観光客も増えるであろう。それに期待して経済立直しをするほかない。くれぐれも、中国の「口車」に乗せられて高利の融資を受けないように。世界中の新興国にとっても教訓になろう。

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    日米豪印の「Quad(クアッド)」開催中の5月24日、中国軍のH6爆撃機とロシア軍のTU95爆撃機が2機ずつ、日本海と東シナ海の上空を飛んだ。その後に、中国機2機がH6爆撃機と推定される別の2機と入れ替わり、沖縄本島と宮古島の間を通過して東シナ海と太平洋を往復したと報じられている。

     

    この中ロ空軍の合同飛行は、日米豪印の「クアッド」へ警戒姿勢を見せたもので、「中ロ枢軸」を一段と印象づけることになった。中国としては、ロシアとの合同訓練によって「自国が孤立しているわけではない」と国民に訴えかけられる内政上の利点もあると指摘されている。

     


    中国軍爆撃機H6には、核兵器を搭載できるタイプもあるという。中国軍は、自らの「虎の子」兵器であるJL3を無力化するため米軍が日本海北部に進入するなら、戦術核兵器でこれを排除することも辞さないとの強烈な威嚇を合同飛行によって示したと専門家は指摘する。JL3とは、射程延伸型のSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)及びそれを搭載するための新型SSBN(弾道ミサイル搭載原子力潜水艦)を指す。

     

    中国のH6爆撃機が、日本海を飛行した裏には、以上のような狙いがあるとされる。ただ、中国の海空軍は、百戦錬磨の米軍と交戦した経験がない。この米軍と対抗するには、ロシア軍に共同訓練などを頼み、技量の向上を図ることが欠かせないと指摘されている。

     

    ロシアは近年、地下資源や武器など自国産品を中国に購入してもらうっている。ロシアは最近、ウクライナ侵攻に伴う経済制裁下で、中国に原油や天然ガスの購入量をさらに増やして貰わなければならない事情を抱える。こうしたわけで、中国から合同訓練を頼まれれば断れないと推測される。ロシアは、協力させられているという見立てだ。

     


    『日本経済新聞 電子版』(5月27日付)は、「中国・ロシア、軍事面で相互運用拡大 爆撃機共同飛行」と題する記事を掲載した。

     

    中国とロシアが日本周辺の軍事協力を拡大してきた。爆撃機の共同飛行や海上演習を通じて既成事実を積み上げ、相互運用力を高めようとする狙いがある。中国はウクライナ侵攻を巡りロシア支持を控えるものの、軍事面の結びつきは強める構図が浮かぶ。東アジアの安全保障の脅威となる。

     

    (1)「防衛省は27日、自民党の国防部会で中ロ両軍の爆撃機の飛行状況を説明した。これまでのうちもっとも南方まで飛行した。飛行時間もロシア国防省は13時間と発表した。前回は「10時間超」だった。防衛省は「爆撃機に護衛の戦闘機がついてきておらず、実戦的な意味合いは少ない示威行為だ」と指摘した。「中ロの協力の進化を示す意義があったのではないか」との分析を示した」

     

    爆撃機に護衛の戦闘機がついていないのは、演習でなくただの「威嚇飛行」と見られる。嫌がらせの飛行だ。

     


    (2)「防衛省が、日本周辺で中ロ両軍の長距離共同飛行を公表したのは2019年以降、4年連続4回目となる。これまでは1年ほどだった飛行の間隔は今回、前回から半年後と短くなった。機数は21年が4機だったのに対し、今回は計6機へ増えた。自衛隊の杉山良行元航空幕僚長は、「軍事演習は繰り返すことに意味がある。日本海に入って政治的なメッセージを強めている」と語る。「爆撃目標など高いレベルの戦術は確認していないと推定するが、恒常的に示威行動を続けて作戦の相互運用性を高めているとも言える」と話す」

     

    中ロの軍機が、飛行中に無線連絡して実践感覚を磨いているのであろう。中ロの共通語は何だろうか。まさか英語ではあるまい。興味が持たれる点だ。

     


    (3)「中ロ両軍が、合同演習「平和の使命」を開始したのは05年だ。12年以降、定期的な海軍合同演習「海上連合」を展開する。18年からはロシアが毎年実施する最大規模の軍事演習に中国軍が参加するようになった。21年10月には「合同海上パトロール」と称して津軽海峡や大隅海峡を初めて一緒に通過し、日本列島をほぼ1周した」

     

    中ロ軍機が、同時並行で飛行するのは、中ロにとっては「見せ場」であろう。ただ、ロシアがウクライナ侵攻で評価を落としているから、西側諸国から見る中国のイメージは芳しいものでない。中国側は、それをどこまで理解しているか疑問だ。中国は、ただの「鬱憤晴らし」に行なっているとすれば、取り返しのつかないイメージダウンになる。

     


    (4)「中ロ両政府は、表向きには正式な軍事同盟ではないと主張する。それでも中国は1990年以降、戦闘機や駆逐艦、潜水艦などの武器をロシアから購入し始めた。最大の武器供給国はロシアとなり、軍事面でのつながりの深さは明らかだ。弾道ミサイルや宇宙ロケットの発射計画を相互に通告する政府間協定も結ぶ。これらの動きを中ロは、「新時代の包括的・戦略的協力パートナーシップ」と呼ぶ。ロシアのプーチン大統領はかつて中国と軍事同盟を形成する可能性を「理論的には十分想像できる」と述べた」

     

    ロシアのウクライナ侵攻で、ロシア空軍はその評価を大きく下げている。「ロシア空軍は米軍より30年遅れている」と米軍専門家が見下げているのだ。ロシア空軍の戦闘法が、過去と全く変わらず、やたらとミサイル攻撃しているだけだと指摘する。そのミサイルも、極めて命中度が低く、40%にも達していないという。精密な半導体不足も影響しているのだろう。

     


    (5)「中ロの接近は東アジアの最大のリスクとされる台湾有事とも密接だ。自民党安保調査会の小野寺五典会長は27日の党部会で、「中国、ロシアにあわせたかたちで北朝鮮が弾道ミサイルを実験する。まさしく3正面が現実に起きている」と強調した。台湾有事になると、ロシアが権威主義国の枠組みで中国に加勢し、北朝鮮も足並みをそろえるといったシナリオだ。岸田文雄首相とバイデン米大統領はこうした動きを踏まえ、23日の首脳会談で抑止力と対処力を強化することで一致した。共同声明で「軍事面における中ロ間の協力に引き続き注意を払っていくことに関与する」とうたった」

     

    中朝ロが一体化して、日米へ攻撃をしけてくるか。その場合、中国にはメリットがあるとしても、ロシアと北朝鮮には何のメリットもない。第一、ロシア軍がウクライナ侵攻で被った被害が簡単に癒えるはずがない。厭戦気分が蔓延している。さらに、経済制裁が長期に続けば、ロシアの軍需生産は止まる危険性が高まる。ロシアの武器生産が止まれば、中国も購入不可能だ。よって、日米へ開戦したくても武器が整わない事態となろう。日米は、中ロの開戦抑止を怠ってならないが、無闇に恐れる必要もあるまい。

     

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    文政権下で日韓関係は、最悪事態に陥った。日韓慰安婦合意の破棄と徴用工賠償問題だ。慰安婦合意破棄理由は、当時の朴政権が旧慰安婦や支援団体の意見を聞かずに合意した、とするものだった。これが、外交部(外務省)の文書公開によって虚偽であることが判明したのだ。

     

    虚偽であったのは、韓国外交部が旧慰安婦支援団体の責任者である尹美香(ユン・ミヒャン)氏が、2015年に韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)代表時代、韓日慰安婦合意の主な内容を外交部から事前に通知されたと、外交部文書に明記されていたのだ。

    尹氏は、文大統領と面会して、朴政権が支援団体や被害者と事前に相談しなかったと語り、日韓慰安婦合意の破棄を主張した。これに対して、日韓慰安婦合意協定を結んだ外交部長官(当時)は、外交文書が公開されれば真実が分ると指摘していたのだ。その外交文書の一部が公開された。

     


    日韓の外交関係を損ねる事態にまで発展した問題が、「ウソ」に基づいていたとは驚愕である。文政権(当時)は、外交文書に明記されている事前相談していた事実を知りながら、日韓慰安婦合意を破棄した。なんとも「おぞましい」話に発展してきた。

     

    『朝鮮日報』(5月27日付)は、「韓日慰安婦合意の内容を知っていたのに伏せた尹美香 偽善の飾りはこれだけなのか」と題する社説を掲載した。

     

    韓国外交部(省に相当)が2015年韓日慰安婦合意の当時、正義記憶連帯(正義連)の尹美香常任代表(現在は無所属議員)と数回にわたって会い、合意内容をあらかじめ教えていたという内容を含む文書が公開された。

     


    (1)「弁護士の集まりである「韓弁」が情報公開請求訴訟で入手した4件の外交文書を見ると、韓国外交部(省に相当)は慰安婦合意発表の9カ月前から少なくとも4回にわたって、尹代表に交渉の内容を教えていた。特に、発表前日には「対外保安」を前提として「日本政府の責任痛感、首相直接の謝罪・反省表明、10億円水準の日本政府予算拠出」などを説明した。慰安婦合意の「核心内容」だ」

     

    韓国外交部は、慰安婦合意の「核心部分」をすべて慰安婦支援団体の尹美香氏に説明していた。この協定を推進した裏方は、当時の米国副大統領のバイデン氏である。早期の日韓関係修復が目的であった。米国が、文政権に対して距離を置く姿勢を見せた背景には、慰安婦合意破棄がある。

     


    (2)「ところが、慰安婦被害者の李容洙(イ・ヨンス)さんは「尹美香は合意の内容を私たちに教えてくれなかった」と主張した。「10億円が日本から入ってくるのを、尹美香だけが知っていた」とも発言した。尹議員は外交部の事前説明を聞いても、被害者には知らせていなかったのだ。尹議員は「少女像撤去、不可逆的解決、10億円拠出などが抜けたまま聞いた」と釈明した。「核心内容」は聞いていなかったというのだ。しかし外交部の文書には「10億円拠出」を伝えたと明示されている。当時、合意の核心は「日本政府の予算で10億円を拠出して日本の責任をはっきりさせる」というものだった。ところが尹議員は核心内容を隠し、うそまでついたのだ」

     

    尹議員は、慰安婦破棄の「功績」を認められ、「共に民主党」から国会議員にまで上り詰めたが、慰安婦募金の流用や不動産問題で離党せざるを得なくなり、現在は無所属である。尹氏による虚偽の発言によって、日韓関係を悪化させ慰安婦問題を「永続化」させた理由は、慰安婦問題が解決すると、「募金が継続できなくなる」点にあった。あくまでも、カネ目当ての慰安婦問題である。

     


    (3)「尹美香・正義連代表は、慰安婦合意の発表を強く非難した。その「功績」が認められて民主党比例代表議員にもなった。ところが、慰安婦被害者のおばあさんたちのために使うべきお金1億ウォン(約1000万円)を私的に使った疑いが発覚し、裁判にかけられた。後援金でカルビを買って食べ、マッサージを受け、速度違反の反則金も払っていた。こんな破廉恥な事件でも、起訴されてから13カ月を経てようやく裁判が開かれた。不動産を巡る不正疑惑まで浮上したが、民主党は尹氏を離党させただけで議員ポストは維持してやった。尹氏は今も議員バッジを付けている」

     

    「共に民主党」は慰安婦問題を政治利用すべく、尹氏を国会議員にまで取り立てた。外交文書の一部公開でその虚偽が分った以上、何らかの釈明が必要であろう。「共に民主党」支援紙の『ハンギョレ新聞』は、この一件について、日本語版では一行も触れていない。恥ずかしいのであろう。

     


    (4)「文在寅(ムン・ジェイン)前大統領は就任直後、慰安婦合意について「重大な欠陥が確認された」「新たに交渉を行うべき」として事実上合意を破棄した。任期中ずっと「反日駆り立て」を国内政治に利用した。そうしておいて昨年1月、突如「(慰安婦合意は)両国政府間の公式合意だったという事実を認める」と一夜にして立場を180度変えた。本当に恥ずかしいことだ」

     

    文前大統領は、「人権弁護士」を売り物にしてきたが、虚偽の発言を鵜呑みにして日韓関係を破綻させた。その責任は重大である。日本にとって、「文在寅」の名前は、永遠に忘れられない存在になった。

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