勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    a0960_001611_m

    中国の「債務漬け融資」は、世界中に知れ渡っている。アフリカで最貧国とされるシエラレオネの新政権が、前政権が中国政府と契約した4億ドルの空港建設案を拒否した。中国は、米国ペンス副大統領からも「債務漬け外交」と厳しい批判を浴びている。小国による「中国拒否」は、時代のトレンドになった感じがする。

     

    「過ぎたるは猶(なお)及ばざるがごとし」、とは論語の一節である。中国は、世界覇権を目指し世界中に資金をばらまき、政治的支配力を及ぼうとした。その野望も頓挫した形だ。一寸の虫にも五分の魂である。小国を侮って、中国の野望で餌食にしようとし、手を噛まれたと言えそうだ。

     

    『大紀元』(10月11日付)は、「アフリカ最貧国シエラレオネ新政権、中国融資での新空港建設を拒否」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「アフリカの途上国シエラレオネ新政府1010日、中国から4億ドルの融資を受け建設する予定だった、空港プロジェクトを破棄したと発表した。ジュリアス・マダ・ビオ大統領は、前政権で計画された首都フリータウンでの新たな空港建設案の必要性が認められず、国民の多くは基本インフラや教育、福祉医療を必要としていると述べた」

     

    シエラレオネは、西アフリカで大西洋岸に面する。人口755万人(2017年)、平均寿命51.8歳、名目GDPは36億7500万ドル(同)、1人当たり名目GDPは491ドルである。中国は、このシエラレオネに4億ドルの融資をして、新空港を建設させようとしていた。シエラレオネの首都には空港があり、ここでは世界銀行からの融資2億ドルで改修工事を進める計画である。シエラレオネに二つも空港は不必要である。

     

    中国が、シエラレオネで何を狙っていたかは明らかだ。融資・工事・空港運営権という「おいしい」ところをすべて「しゃぶり尽くす」新植民地主義の牙を剥いていた。恐ろしいことを考えついたものだ。「悪事に長けた中国」という批判は免れない。

     

    (2)「中国は、連携国へのインフラ整備事業『一帯一路』構想に基づき、アジアやアフリカの発展途上国に高額な融資を負わせ、政治的影響力を拡大している。資金は中国政府系ファンドが融資し、労働者や建設事業は中国が請け負う。現地経済に寄与するものが少なく、現地権力者らの腐敗を生み出すとして『債務トラップ外交』と呼ばれている。こうした一帯一路のインフラ計画は、キャンセルが相次いでおり、シエラレオネはその最新例となった。前政権アーネスト・バイ・コロマ大統領は、3月の政権交代前に、中国との融資契約を結んだ」

     

    シエラレオネ新政権は、前政権が中国政府に丸込められた融資契約を破棄した。危うく、中国の餌食になるところだった。

     

    (3)「現地メディア『シエラレオネ・テレグラフ』によると、空港建設の資金はすべて中国が融資し、中国企業が建設し、空港管理権限も中国側が担うことになっていた。国際通貨基金(IMF)は、この空港プロジェクトの財政的な危うさに警告を発していた。西アフリカ地域は観光客の来訪を歓迎しているものの、すでに世界銀行は、シエラレオネ政府と2億ドルの融資契約を結び、首都フリータウンにある空港の拡張工事計画を約束していた。IMFは、多くのアフリカ諸国が、中国による国の経済規模を超えた融資により、債務不履行(デフォルト)になる危険が高まると警鐘を鳴らしている」

     

    シエラレオネは、世銀からの2億ドル融資で空港改修計画を立てている。そこへもう一つの空港は不必要である。シエラレオネを債務漬けにして勢力圏拡大の足場にしようと企んでいたのであろう。シエラレオネ国民は、新政権を選んで中国の野望を食い止めた。

    a0007_001449_m

    中国の抱える難題は多い。とりわけ、カネにまつわる事件が多発している。この国は、何ごとも自然発生的に始り、制度として確立させないで終わっている。その間、多くの被害者が出て悲運の涙を流しているのだ。

     

    オンライン融資の「P2P」(ピアツーピア)もその一つである。10%という高い金利で資金を集めてゆきづまり倒産する。実質的に金利自由化が行なわれていない結果、銀行預金より高い金利を付ける、怪しげな詐欺まがいの「P2P」が出現している。

     

    『ブルームバーグ』(10月11道付)は、「中国でP2P倒産ドミノ 資産回収困難、自殺する出資者も」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「彼らと闘うには私はあまりにも小さな存在だ」。9月上旬、中国浙江省出身の31歳の女性はそう書き残してこの世を去った。オンライン融資の『ピアツーピア(P2P)』を手掛ける会社が倒産し、約4万ドル(約450万円)を失ったことを苦にした自殺だった。『国有系のP2Pが逃げ出し、株主も責任を取ろうとせず、捜査当局の腰も重い。疲れ果てて希望が見えない』と訴えた女性の両親宛ての手紙がソーシャルメディア『微博』のチャットグループに投稿された」

     

    この問題は、以前にもブログで取り上げている。自殺者が出るという事態になるまで放置してきた当局の責任は重い。監視カメラで市民を監視するが、こういうインチキ金融ビジネスを監視しない。裏で、賄賂が動いているのだろう。

     

    (2)「倒産したPPミャオで損失を被ったとして何百人もの人々が8月下旬、抗議のために上海の国際ファイナンスセンターの外に集まった。ここに同社と関係する企業がオフィスを構えていたが、地元の警察や警備員に追い返された。被害を受けたと訴える出資者らによると、PPミャオが破綻した結果、最大4000人が計1億1700万ドルを失った。その多くが資金の返還を求めて中国の主要都市に集まっている」

     

    地元の警察は、被害者が抗議に集まれば追い払う。何とも不思議な構図である。当局は、被害者よりも加害者の側に立つ例が多いのだ。清朝時代とどこが違うだろうか。いつも泣き寝入りさせられるのは、名もない庶民である。この国に生まれた底辺の人々は、常に権力によって踏みつけられているようだ。

     

    (3)「上海の調査会社、盈燦集団によれば、今年6月から8月までで400社余りのP2Pプラットフォームが破綻。それでも1800社程度が残っているが、今後も倒産ドミノが続き200社弱まで減少すると中国国際金融(CICC)は見込んでいる。中国のP2Pは、銀行の預金金利を大きく上回る10%以上のリターンで5000万人を引き寄せてきた。これは米国のニューヨーク、テキサス両州を合わせた人口を上回る。6月時点の投資残高は過去最大の2000億ドルだ。従来の銀行セクターではない金融機関、いわゆるシャドーバンキング(影の銀行)の一角で、ほぼ野放し状態だったP2Pに対し、中国政府は監視を強めようとしている。P2Pのサイトに資金を預けるなら全てを失ってもかまわないとの覚悟が必要だと、銀行監督当局は今年の夏に警告した」

     

    今年6月から8月までで400社余りのP2Pプラットフォームが破綻。まだ、1800社程度が残っているが、今後も倒産ドミノが続き200社弱まで減少するという予想だ。いくら「自己責任」の原則とは言え、金融ビジネスは常時、当局が監視すべき対象である。もともと、「P2P」事業モデルに問題があるのだ。ここまで来たら、すぐに一斉に事業を停止させ、資金を確保し出資者を保護する。そういう緊急対応が取れないのか。当局と業者が裏でつながっているのだろう。賄賂社会の宿命である。


    a0960_001613_m
    a0960_001613_m

    米中貿易戦争の勃発は、中国経済にとって大きな痛手のはずである。ようやく、デレバレッジ(債務削減)に取りかかったところで、米国の関税引上げという強烈な一発をあびたからだ。さらに悪いことに、「徹底抗戦」などと言わなくてもいいことまで発言して、米国を刺激した。問題の発端は、中国のWTO(世界貿易機関)のルール違反であるから、中国は慎重に対応すべきであったのだ。

     

    最早、賽(さい)は投げられた。中国は、米国の関税引上げによる打撃を内需でどれだけカバーするかである。内需と言っても個人消費は低下傾向にある。そうなると、インフラ投資という中国の十八番の出番である。インフラ投資はこれまで、GDPの40%以上を占める最大の需要項目だ。この資金の多くが債務で賄われてきた経緯から見て、さらなる債務拡大が避けられなくなっている。この結果、中国経済に何が起こるかである。

     

    それは、「限界資本係数」の上昇という望ましからぬ事態を招くことである。限界資本係数とは、GDP1単位を生み出す投入資本の単位である。少ない投入資本で多いGDPを産み出せれば効率の高い経済といえるが、中国は多額の投入資本を必要としている。自動車で言えば「燃費」が悪いクルマである。この燃費の悪いクルマが、今回の貿易戦争を凌ぐため、さらにガソリン(資本)を食う状態になった。病状の悪化である。

     

    中国の限界資本係数は、2009年~11年当時で5.0である。他国は、2~3近辺であるから極めて非効率な経済である。それが、2015年には6.8にも跳ね上がっている。つまり、投資効率が悪化状態に陥っている。リターンを生まないインフラ投資を拡大していることの必然的な結果だ。

     

    中国は、よく資金が豊富だという。「一帯一路」で各国へ資金を貸し付けていることを見てそう言われているのだ。それは、間違いである。本来の対外直接投資資金は、経常収支の黒字で賄うべきもの。それを計る尺度が、対GDPの経常収支黒字比率である。中国は今、これが急速に低下している。今年は、1%を割る懸念が強い。その背景にあるのが、先の限界資本係数の上昇だ。非効率経済ゆえに、対GDPの経常収支黒字比率を引下げている。対外直接投資を自前の経常収支黒字で賄えない状態である。だから、中国は「一帯一路」で日本へ資金的な協力を求めてきたのである。中国は、決して資金豊富な国ではない。

     

    やや、小難しい話をしてきたので、整理しておきたい。

     

     

    今回の貿易戦争に突入する以前に、中国は「借金漬け経済」に陥っていた。それが、さらに借金を重ねざるを得ないので一層、「限界資本係数」が跳ね上がって危険な状態になる。それが、対GDPの経常収支黒字比率を押し下げ、対外直接投資に余裕を失せるだろう。ここまで追い込まれた中国経済に輝きなど残っているはずがない。要するに、中国経済の危機は一段と進行するだろうと見るのだ。

     

    習近平氏は国家主席へ就任後、4年間の政府活動報告で「市場経済重視」姿勢を見せていた。今年の活動報告では、なぜかそれが消えている。政府関係者は、書き忘れたと弁解している

    と言うが、年一回の政府活動報告でそのような事態は考えられない。明らかに意図的な抹殺行為である。

     

    中国政府は、市場機能について書き忘れたとすれば、これに対する認識が急速に低下してきたことを裏付けている。中国の現状が、市場機構によって解決できる段階を超えており、権力で強制的に整理しなければならない段階を意味するのかも知れない。「モラトリアム」状況に立ち至っている証拠である。確かに、市場経済機能に任せていたら、中国の不動産バブルはここまで悪化することもなかったであろう。政府の意図的なさじ加減の結果、現在まで延命しているが、それだけ、内部矛楯=債務拡大=限界資本係数上昇=対GDPの経常収支黒字比率低下をもたらしたのである。

     

    習氏は、市場経済機能を蛇蝎のように嫌っている。中国政府の意向通りに管理できないからだろう。逆に言えば、市場経済機能を生かしていれば、ここまで債務が過剰状態になることはなかったはずだ。習氏は、中国経済を自らの権力維持に利用できるようにコントロールしたいだけであろう。そういう恣意的な経済運営方針が、今日の危機を招いた背景である。

     

    マルクス用語では、「全般的危機の深化」という言葉を使う。これは、資本主義経済批判に向けられものだ。皮肉にも、現代のマルクス経済の「殿堂」中国が、この状態に落込んでいる。過剰債務の処理以外、中国経済を回生させる道はない。ただ、それがもたらす政治的危機=共産党危機を恐れて微温的な対症療法で逃げており、病状はさらに進んでいる。

     


    a0960_001640_m

     

    ニールセン米国土安全保障長官とレイ米連邦捜査局(FBI)長官は10日、上院国土安全保障委員会で証言した。中国は11月の米中間選挙を前に全米世論の操作を画策し、前例のない活動を展開しているほか、米国は諜報防止において最大の脅威に直面しているとの認識を示した。ロイターが10日伝えた。

     

    中国は、米国への「内政干渉」を一切していないと否定している。米国当局者の議会証言であるから、虚偽とは思えない。平然と技術窃取をしている中国のことだから、「火のない所に煙は立たない」の喩え通り、何か仕掛けているのだろう。事実とすれば、「断交」ものであろうが、米国はどのように対応するつもりか。

     

    『ロイター』(10月10日付)で、「中国、米世論操作狙い前例ない活動米当局者ら最大の脅威と証言」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ニールセン米国土安全保障長官とレイ米連邦捜査局(FBI)長官は10日、上院国土安全保障委員会で証言した。中国は11月の米中間選挙を前に全米世論の操作を画策し、前例のない活動を展開しているほか、米国は諜報防止において最大の脅威に直面しているとの認識を示した」

     

    (2)「ニールセン長官は中間選挙に向け、1)世論操作、2)投票者登録リストや投票機器など選挙インフラの障害や不正侵入──といった脅威が存在するとした上で、『中国が全米世論の操作に向け前例のない取り組みを行使していることは間違いない』と断言。『中国による選挙インフラへの不正侵入を狙った行為はこれまでのところ確認されていない』とも述べた。レイ長官は、『中国に関し、米国は多くの点で最も広範かつ複雑で、長期的な諜報防止の脅威に直面している』とさらに踏み込んだ発言を行った。この問題を巡っては、トランプ大統領も9月下旬、『中国は私や共和党に勝利してほしくない』と述べ、同国が中間選挙への介入を画策していると非難していた」

     

    事の真偽について書く資格はないが、次のような記事が報じられている。

     

    『ブルームバーグ』(10月10日付)は、「中国ハッキング用チップで新たな証拠、米通信大手のネットワークでも」と題する記事を掲載した。

     

    この記事では、米大手通信会社のネットワークで、スーパーマイクロ・コンピューターが供給したハードウエアの中にハッキングを可能にするチップが見つかったというもの。発見者が写真入りで名乗り出ている。ハッキング用チップであれば、通信過程でいかようにも情報が操作されるわけで、米当局の議会証言は、このハッキング用チップと関係があるのだろうか。

     

    しかも、この種の「工作」は中国の下請け業者が行えるということだから、現場の特定は困難という。こうなると、一切、中国へ仕事を出さないことが最善の防御策となる。トランプ大統領が、米国の安全保障は中国と疎遠になることだと発言しているが、不幸な事態が起こったものだ。

     

    (3)「米大手通信会社のネットワークで、スーパーマイクロ・コンピューターが供給したハードウエアの中にハッキングを可能にするチップが見つかり、8月に除去されたと、この通信会社から委託を受けたセキュリティー専門家が明らかにした。米国向けに生産されたテクノロジー部品が中国で不正に手を加えられたことを示す新たな証拠となる」

     

    (4)「ブルームバーグ・ビジネスウィークは今月、スーパーマイクロの中国下請け業者が2015年までの2年間、中国情報当局の指示により、サーバー向けマザーボードに問題のチップを埋め込んでいたと報じている。通信会社から委託されたヨッシ・アップルバウム氏はこのほど、チップ発見に関する文書や分析、その他の証拠を提供した」

     

    (5)「アップルバウム氏はかつてイスラエル軍情報機関のテクノロジー部隊に所属、現在は米メリーランド州に本拠を構えるセピオ・システムズの共同最高経営責任者(CEO)を務める。同社はハードウエアのセキュリティーを専門とし、通信会社の大型データセンター数カ所の調査に起用された。アップルバウム氏は顧客と秘密保持契約を結んでいるため、ブルームバーグは問題が見つかった企業の名称を明かさない方針。アップルバウム氏によると、スーパーマイクロ製サーバーで異常な通信が見つかり、サーバーを綿密に調査した結果、ネットワークケーブルをコンピューターに接続するサーバーのイーサネットコネクタに問題のチップが埋め込まれているのを発見した」

     

    (6)「同氏は、別の複数企業が中国の下請け業者を使って製造したハードウエアの中にも、同じように手が加えられているのを見たことがあるとし、スーパーマイクロの製品だけではないと述べた。『スーパーマイクロは犠牲者だ。どの企業もそうだ』と同氏は語った。ハッキング用チップを仕込むことができる中国国内のサプライチェーンは数え切れないほどあり、発生カ所を特定するのはほぼ不可能な点が懸念だと指摘。『中国のサプライチェーンはそこが問題だ』と続けた」

     

    中国が、ここまで執念を燃やして「米国打倒」に立ち向かっているとすれば、空恐ろしさを覚える。中国4000年の歴史は、陰謀と裏切りの4000年であった。人間を信じられない。裏切ることしか生きる術のない中国。最近の習近平氏の政敵追放のすさまじい振る舞いを見ていると、漢族の裏切りがDNA(集合的無意識)となって受け継がれているにちがいない。こういう「種族」とは関わりを持たない。接近しない。これも一つのサバイバルであろう。


    a0960_006579_m

    中国社会は二極分化である。国慶節の大型連休で、海外旅行へ出かける裕福層の一方で、30元(約490円)の映画代を節約する堅実派に分かれた。米中貿易戦争の余波が、庶民の手近な娯楽を奪った形だ。

     

    中国でパスポートを所持する人口は全体の1%と言われる。残りは全員、庶民という訳だろう。この人々が映画代を節約した結果、大型連休中の興行収入は前年比で21%も減ったという。万年不況地帯の「東北三省」では4割減である。

     

    9月の製造業PMI(購買担当者景気指数)では、雇用状態が悪化している。好不況の分岐点50を割り込んだ。失業者が増えている。これでは映画代の節約は当然であろう。

     

    『日本経済新聞 電子版』(10月10日付)は、「中国映画、急成長に陰り、国慶節でも興収21%減」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「国慶節休暇は春節(旧正月)と並ぶ中国の一大商戦期で、今後の中国消費を占う先行指標となる。中国の映画調査会社、芸恩諮詢(エントグループ)によると、その国慶節休暇(1017日)における映画の興行収入は188900万元(約308億円)と前年同期比で21%も減った。同社は不振理由に、ヒット作不在のほか、映画料金の高さなどを挙げた。実際、米中貿易戦争のあおりで足元の景気に不透明感が増すなか、消費者の節約志向は強まっている。中国の映画料金は30元(約490円)と割安だが、そんな映画でさえ節約志向が広がる。特に男性の住む遼寧省、吉林省、黒竜江省の「東北3省」は景気低迷が加速し、期間中の興行収入は、いずれも前年比で約4割も落ち込んだ」

     

    興行収入不振理由として、ヒット作不在のほか、映画料金の高さなどが上げられている。ヒット作不在は、映画館への足を遠ざける理由だろう。このヒット作の出ない理由として、①大連万達集団の経営不振、②当局の監視が厳しいという指摘がある。さらに、③景気の不透明要因を考えると、中国映画界はしばらく谷間に置かれる感じだ。

     

    (2)「映画界の変調の背景には、中国映画をけん引してきた中国最大手のつまずきもある。大連万達集団(ワンダ・グループ)だ。同社は欧米の映画関連企業にM&A(合併・買収)攻勢をかけ、国内でも映画館の新設や米ハリウッドと映画の共同制作を進めてきた。同社の王健林董事長は「いずれ、米ウォルト・ディズニーなどに並ぶ映画配給会社になる」と豪語してきた。しかし度重なるM&Aで有利子負債が急増。17年に債務の焦げ付きを懸念した中国当局が国内銀行に対して万達への融資制限を迫った。その後、万達は借入金の返済に追われ、新規投資はほぼストップする羽目になり映画事業にも影響を与えた」

     

    (3)「さらに急成長のひずみとみられる問題も噴出しており、中国共産党が監視の目を強めていることも映画界には大きい。従来は政府機関である国家新聞出版広電総局が映画を管理してきたが、今年3月から党の中央宣伝部の管轄に移した。これまでのような自由さで映画を制作できるようにはならなくなった。今後、さらに党の意向をより強く反映した作品があふれるようになれば、客足はさらに遠のきかねない」

     

    共産党から映画まで監視され、「習近平万歳」を言わされそうな時代的な雰囲気では、国民は窒息させられる。こういう上から国民を押さえる手法は、下の下である。だが、党は不安だから取り締まる。国民は不満を持つ。共産党は相当、危機感を持っているが、「トランプ危機」とでも言うのだろう。今の日本人は気楽な生活だ。戦時中の日本は暗かった。「一億玉砕」「欲しがりません勝つまでは」「米英撃滅」。これからの中国は、この暗い時代へ向かうのか。


    このページのトップヘ