勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国は今、春節(旧正月)のおめでたい季節である。連休を利用して多くの中国人が、海外旅行を楽しんでいる。大気汚染もなく、監視カメラで監視される煩わしさもない。自由の別天地で「命の洗濯」をしているであろう。

     

    中国共産党は、国民1人に平均2台の監視カメラを向けて監視している。なぜ、そこまで自国国民が信用できないのか。弾圧政治のブーメランを恐れているからだ。ここまで、やらなければ共産党権力を維持できない。権力維持に費やされるコストは莫大であろう。これもすべて、国民の勤労で賄われている。

     

    『大紀元』(2月5日付)は、「一人当たり監視カメラ2台が作動、AI監視大国」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「国際市場調査会社IDC130日に発表した報告書によると、中国国内の当局による公共監視カメラの設置台数は2022年に27.6億台に達する見込み。当局は向こう数年間でカメラの追跡と識別能力の技術的向上に300億ドルを投じる計画がある。中国は監視カメラ技術の世界最大の市場となっている。IDCは今日、米国と中国が人工知能(AI)技術の最も成長が早く、有望な市場であると予測する。また、調査会社IHS Markitは、映像で人の顔を認証・検索するデータ処理機器は、世界の流通量の4分の3が中国に購入されるだろうと推計する」

     

    世界の監視カメラの4分の3が、中国に設置されると見られている。人類史上、初めての「人間監視システム」が、中国に登場するのだ。ここまでやって、共産党独裁政権を維持するというのだ。仮に、中国が世界覇権を握れば、北京で世界中を監視する悪魔の時代が来る。その前哨戦が、先ず中国国民を実験の舞台にして始ろうとしている。

     

    世界は、こういう反道徳的野望を黙認していいのだろうか。国連は、内政干渉などという「陳腐」な言葉に縛られず、中国政府に対して行動を始めるべきである。「友好」という言葉の裏に、何とも言えない危うさを感じるのだ。

     

    (2)「中国共産党政権は、顔認証と追跡機能を備えるAI監視カメラを街中に網羅した「スマートシティ」構想を進めている。これにより、治安維持と犯罪防止・抑制、交通網管理、緊急事態対応、防災警報の各効率を向上させるという。『莫大なお金をかけている監視機能は、既得権益層の利益を守るためにある』山東省龍口の人権活動家である姜国臣氏はラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に応じた。広東省に住むクリスチャンの女性・陳さんはRFAに対して、「街は監視の目ばかり」と語った。『確かに人々に影響を与えている。公安がデータを処理している。本当に住民が犯罪被害に遭っても、彼らは対応しない。つまり監視機能は、政権維持のための保障に過ぎない』と」

     

    「莫大なお金をかけている監視機能は、既得権益層の利益を守るためにある」という指摘は、その通りであろう。監視システムは、一握りの最高指導部と、それにつながる人たちの利権を守るための装置である。しかも、そのコストはすべて国民に払わせている。これほど、旨い商売はない。濡れ手に粟であるからだ。

     

    (3)「中国当局は都市部を100%カバーしている(2015年中国政府が発表)AI監視システム、『天網』のほか、昨年農村を監視する『雪亮』プロジェクトの運営を開始した。農村部でのテレビ等の家電や携帯電話から個人情報を収集し、県・郷・村を徹底管理するシステムとされているIDCの報告によると、2019年中国共産党政権は人工知能10つの発展分野として機械学習、融合ビジョン、音声、データ共有網の拡大を明示した 。政府の主張によると、AI監視カメラは年齢、性別、個人番号を正確に認知することができる。しかし中国国内の世論では、共産党主導のAI技術開発は、経済発展や生産性の向上ではなく、当局の監視欲求を満たすことにあると批判されている」

     

    農村を監視する「雪亮」プロジェクトが運営を開始した。農村部でのテレビ等の家電や携帯電話から個人情報を収集し、県・郷・村を徹底管理するシステムとされている。こうなると、農村部での一切合切の動きは、すべて当局が把握する。筆談でもしない限り、秘密は守られない時代が始っているのだ。ここで、極秘に組み込まれているソフトが、ファーウェイの「バックドア」であろう。

     

    中国政府は、こうやって国民を封じ込めれば共産党独裁政権は安泰と見ているのかも知れない。それは、大誤算となろう。中国庶民は、これをくぐり抜ける「手法」を編み出し、当局への憎悪感を深めるだけとなる。同時に、肝心の経済が崩れてゆく。非効率な国有企業中心の経済体制が綻び、破綻するのは不可避である。中国指導部は、余りにも自己に好都合なことばかりを並べ、悦に入っていると言うほかない。視野狭窄症である。


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    米国司法省は、先にファーウェイ(華為技術)を23の罪で起訴したが、これとは別件でファーウェイ研究所を家宅捜索した。容疑は、米国企業に新製品サンプルを提出させた後、無断でサンプルを分解し、技術窃取した疑いによるもの。

     

    売上高10兆円以上のファーウェイが、米国の小規模企業の新製品技術まで窃取しようとする行動は異常と言うほかない。改めて、ファーウェイという企業のポリシーと、その背後に控える中国政府の存在に大きな関心が集まる。偶然、米通商代表部(USTR)は4日、中国のWTO規定の順守状況に関する年次報告書を議会に提出。経済・通商分野における中国の現在の姿勢を有意義な方法で制限するWTOの新規定の協議について、成功すると期待することは非現実的だとの見方を示した。

     

    『ブルームバーグ』(2月5日付)は、「華為技術の研究所をFBIが家宅捜索、中国企業を標的とした大作戦」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「4インチ(10センチ強)四方で両面とも透明なそのサンプルは、普通のガラスのように見える。検査のために華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)が所有する米サンディエゴの研究所に送られた際、貴重な標本のように厳重に梱包されていたと、発明者のアダム・カーン氏は確信している。それが昨年8月に送り返されてくると、ひどく破損していた。カーン氏は絶対におかしいと思った。中国の通信機器メーカーの華為は自分の技術を盗もうとしていたのだろうか」

     

    新製品サンプルの性能を検査することは当然としても、解体して技術構造を調べたことは、明らかに技術窃取の意図であろう。

     

    (2)「発明家の常で、カーン氏は製品を模造されることを非常に警戒していた。それでも、潜在的顧客である華為が、サンプルを受け取ってから怪しい行動を取り始めた時には不意を突かれた。米連邦捜査局(FBI)が自身とアカーンの最高執行責任者(COO)のカール・シャーボフ氏に華為を巡る捜査への参加を求めると、さらに驚いた。FBIは両氏に、ラスベガスで先月開かれたコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)で華為の代表団とミーティングすることを求めた。シャーボフ氏は監視用の機器を装着し、会話を録音した。ブルームバーグ・ビジネスウィークの記者は離れたところから見守っていた。この捜査は、最近発表された大陪審による華為起訴とは別件」

     

    この記事は、米国の他誌でも報じられておりFBIがこの事実の公表を認めたこと自体、異例であろう。それだけ捜査の行方に自身を持っているのかも知れない。

     

    (3)「カーン氏は当初、自社の件に関して当局が華為を起訴するか誰かを逮捕するまでは、おとり捜査の詳細を公表しないようビジネスウィークに求めていたが、自社の立場などを考え事件およびFBIへの協力について公にすることにした。FBIが華為の研究施設を捜索した1月28日の夕方、カーン氏とシャーボフ氏は電話で説明を受けるとともに、華為とこれ以上の接触を持たないように指示された。捜査の結果がどうなるかまだ分からないが、まだ収入もないシカゴの小さな企業であるアカーンに本当に中国から手が伸びていたとすれば、米企業の秘密を盗むために華為がどれほど大きな網を広げていたかが鮮明になる。一方、米検察が起訴に持ち込むには不十分、あるいは小さ過ぎると判断すれば、中国企業の不正行為を暴こうとする米国側の必死ぶりが浮き彫りになる例と言えるだろう」

     

    被害者は、シカゴで企業を立ち上げたばかりで、まだ売上実績もないスタートアップ企業である。ここへいち早く目を付けてきたファーウェイは、こういう形で技術窃取に余念がないのだろう。恐るべき「スパイ性」を帯びた企業と言える。


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    韓国メディアの『中央日報』が、現実遊離の不可思議な「中国経済安定論」を流している。その根拠は、生産年齢人口の減少に伴い、雇用確保に必要な高い経済成長率が必要ない、というもの。中国政府発表による失業率の低さをその傍証に掲げている。

     

    『中央日報』と言えば、発行部数は『朝鮮日報』に次いで韓国2位である。経済情報に強いとされるこのメディアが、季節外れの中国安定論を掲載した。当欄は、一言せざるを得ない立場だ。

     

    この記事では、中国が抱える過剰負債問題が、不動産バブルに端を発するという認識が完全に欠落している。しかも、中国政府は失業統計が二種類あって、公表用と実務用(極秘)という認識もなさそうだ。中国政府発表の情報を真に受けるというナイーブさである。

     

    『中央日報』(2月4日付)は、「中国の成長率が落ちても習主席が動揺しない理由」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「昨年、中国は28年ぶりに低い水準の経済成長率となった。国家統計局は2018年の中国のGDP成長率が6.6%と明らかにした。中国指導部は危機意識を強調し、景気鈍化に積極的に対処するという意志を見せている。しかし現在の状況を非常事態とは認識していない。JPモルガン・チェースの朱海斌・中国担当チーフエコノミストは『中国政府は6%台の成長率も悪くないと考えている』と話す。成長率が低下する中でも中国政府の緊張感が高くない理由は何か」

     

    JPモルガン・チェースのエコノミストは、「6%台の成長は悪くない」という認識だという。だが、この6%台の成長率を維持するために、中国は対GDPで300%超の債務残高を背負っている経済である。気息奄々と言う過重な債務を背負って、ようやく実現した成長率なのだ。「悪くはない」というほど、余裕ある経済成長でなかった。中国政府の発言・弁明を真に受けた見方というべきだろう。

     

    中国政府の緊張感は、きわめて高いのだ。中国国家発展改革委員会(NDRC)は1月29日に、北京市における家電購入で、最大120ドル(約1万3000円)の補助金が付けると発表した。期間は3年間である。この期間に注目していただきたい。消費不況は、3年は続くという前提である。事態は相当に深刻化している証拠だ。

     

    また、大学新卒者が運営する小規模事業や低所得者を対象。半年以上、失業している者に税額控除を実施する。期間は今年1月から21年末までの3年間だ。ここでも3年間としている理由は、景気低迷が最低このくらいは続くという前提であろう。世帯ごとに総額1万2000元(約19万2000円)の税額控除である。収める税金からこれだけ控除するもの。

     

    政府が、以上の2点に見られる減税対策(3年間有効)を発表したこと自体、経済の落込みを深刻に受け止めている証拠である。この現実から目を逸らしてはならない。

     

    (2)「朱海斌氏はこう説明する。「10年前までは内部的に『マジックナンバー』が存在した。例えば、少なくとも8%の成長率を維持してこそ新しい雇用900万件を創出できるというものだ。当時はまだ8%が安定した雇用市場を維持するためのマジノ線だった」。しかし中国の社会構造が変わり、「マジックナンバー」と「雇用公式」に対する認識が変わった。2011年から中国の生産可能人口が減り始めたのが決定的な要因だ。変わった人口構造では、労働市場の安定のために7%または8%という形の成長率目標値に固執する必要はない

     

    中国の総人口に占める生産年齢人口(15~59歳)比率は、2010年がピークである。それ以降は「人口オーナス期」と言われ、潜在的な経済成長率が低下に向かっている。こういう状況で、失業者を増やさないためには、逆に潜在成長率を引上げる生産性向上努力をすべきである。「生産年齢人口比率が低下しきたから成長率は低くて当然」という発想はあり得ない。これは、韓国政府の考えに通じるものがある。韓国政府は、生産年齢人口比率低下=失業者増加としている。これは間違いである。

     

    現在の日本の生産年齢人口比率は、60%ギリギリ(2017年)と低下している中で、潜在成長率引上げ努力をしている。昨年の有効求人倍率は、1.61倍と過去2番目の高さになった。前記のJPモルガン・チェースのエコノミストの発言によれば、日本のこのような政策は不要のはずである。そうではない。生産年齢人口比率が低下するから、生産性引上の政策を行なうべきである。これが、日本の失業率を減らす結果となった。

     

    (3)「ほかの政権と同じく、習近平政権も雇用の安定を最も重視する。失業者が大幅に増えない限り成長率の下落は乗り越えられると考える。中国政府が懸念する経済リスクは失業率の上昇であり、成長率の下落だけではないということだ。では、どんな状況が失業率の上昇を触発するのか。まず、米国との貿易戦争の影響が最も大きい。貿易が急減すれば、輸出製造業の失業率が増加するおそれがある。中国のGDPで輸出が占める比率は20%だ」。

    人口動態変化(生産年齢人口比率低下)によって、潜在成長率は低下する。これは、いかなる経済においても不可避である。だが、潜在成長率を引上げる生産性向上努力をする経済では、失業率が低下する。そのことを日本経済が立証したのだ。人口動態変化にまかせて、生産性向上の努力をしない経済、例えば、韓国や中国のような経済では、経済成長率が低下し、同時に失業率が高まっていくのだ。




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    日中関係が、友好関係を深めてきた。争っているよりもはるかに望ましいことだ。ただ、ソロバン勘定第一で、中国へ前傾姿勢を取り過ぎることは危険である。なぜ、米国がこれまでの姿勢を投げ捨てて、冷戦覚悟の戦略に大転換したか。経済人といえども、日本の「安全保障論」について、明確なポリシイを持つべきであろう。

     

    2010年以来、中国が日本に対して取ってきた敵対姿勢を忘れて、日本の製品を買ってくれれば上得意である、という認識だけでは余りにも淋しい話しだ。侍スピリットを持てとは言わないまでも、中国の国際戦略である世界覇権を助けるようなことだけは慎むべきだ。

     

    明治維新以降、日本が平和で発展できた時代は、すべて米国との関係が安定していた時期である。日本が米国と争う事態になると、日本経済は破綻した。こういう客観的な事実を認識すれば、日本外交の基本路線をどこに置くべきか。答えは、自ずと出てくるはずだ。くれぐれも、今年や来年の企業業績という短期的な視点で、日本の安全保障という超長期の問題を損ねることのないようお願いしたい。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月4日付)は、「中西経団連会長、『中国は敵ではない』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日本の経済界首脳は、中国経済の減速で同国への依存度の高さが鮮明になる中、貿易摩擦を巡り米国に比べ穏健な姿勢を示している。日本経済団体連合会(経団連)の中西宏明会長(日立製作所会長)はインタビューで、中国について『敵に回したりしては日本は存在し得ない。米国の場合はそれができるかもしれないけど、日本はそうはいかない』と語った」

     

    中西氏は、中国について「敵に回したりしては日本は存在し得ない」と情けない発言をしている。典型的が商人の発言である。物を買ってくれる先はすべてお客さんにしても、ここまで諂(へつら)うべきだろうか。自社の技術に自信があるなら、もっと頭を上げて発言すべきだろう。

     

    ならば、お尋ねしたい。TPP(環太平洋経済連携協定)は、中国を加盟国から外している。その理由は、中国の世界覇権封じにある。究極的に、商売と安全保障のどちらが重要なのか。今期の業績だけを考えた発言は控えるべきなのだ。

     


    (2)「中国は、2018年に日本から1460億ドル(約16兆円)の財を輸入。前年比では6.8%増加し、米国の輸入額をわずかに上回った。そのほか香港も日本から350億ドル相当を輸入した。かつて米国に家電を輸出していた日立など日本勢は、中国メーカーへの供給という、目立たないが収益性の高い事業に軸足を移している。中西会長は『裏側の材料とか、それに半導体の製造装置であるとか、あるいは工作機械とか、そういう商売を日本がずっと享受しているが、それにブレーキがかかったのは事実だ』と話した」

     

    ビジネスは、双方にメリットがあるから行なわれている。中国に買って貰っていても、万一、それが軍需に転用されて、日本の安全保障を損ねることになった場合、どのように責任を取るのだろうか。取れるはずがない。そうならば、政治がビジネスの大枠を決めることもあり得る。経済成長も大事だが、その国の安全保障が万全であるという前提において、初めて実現するのだ。この順序を忘れて、ソロバン勘定優先の話しには、説得力を持てぬであろう。

     

    (3)「さらに、中国は地元提携先への技術移転の義務づけなどの外資規制を撤廃すべきだと指摘。ただ、中国政府にあまり強い圧力をかけるのは賢明ではないと説明した。中西氏は、『貿易赤字の問題、技術移転の問題だけに焦点を当てるのはおかしいと思う』とし、『関税の攻防戦はもう全く意味がないと思う。お互いに誰も勝者はいない』と話した。ただ、米トランプ政権の不興を買うと日本にも関税をかけられかねないため、あまり強くは主張しないと語った」

     

    中西氏は、米中貿易戦争の本質の理解が一般と異なっている。次の2点がそれだ。

        中国政府にあまり強い圧力をかけるのは賢明ではない

        貿易赤字の問題、技術移転の問題だけに焦点を当てるのはおかしい

     

    米中貿易戦争について、当初は米国批判が強かった。その風向きが変ったのは、中国ビジネスが、WTO(世界貿易機関)の原則から著しく逸脱していることが分ったからだ。米中貿易戦争の原因は、中国の不正貿易慣行にある。中西氏は一度、WTO関連の情報を手に取るべきだろう。完全に、中国サイトでモノを言っている点が気懸りである。

     

    (4)「中西氏は、中国側には李克強首相ら、応じる構えのある首脳もいると指摘。「無理やり『技術をよこせ』という話はもうよしましょう、と言わないといけない。『その通りだ』とトップの指導者に言われる」と述べた。さらに、「李克強さんは特にそういうことの担当だから『何か問題があったらいつでも俺に言ってくれ』と言ってくれる。ただ現場は時々、そうじゃないことがいっぱいある」と語った」

     

    中西氏と李首相の会話で、米中に横たわる根本的な問題が解決するほど、生やさしいものではない。いわば、茶飲み話が、あすにでも実現すると見ている点に大変な違和感を覚えるのだ。国際関係の厳しさを、余りご存じないような印象すら受ける。


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    中国で4日、春節(旧正月)に伴う大型連休が始まった。期間中、中国では延べ約30億人が帰省などで移動するという。民族大移動である。春節では、故郷の両親が年頃の娘の縁談を気にかけており、帰郷の際に見合いをさせられるケースも多いという。これを避けるべく、考え付かれたのが「男性レンタル」。春節期間中だけ、恋人役をするというもの。このレンタル業は人気があった。今年は、違うレンタル業が登場している。

     

    「男性レンタル」には、ユーモラスさがあって笑える。だが、今年の春節ではレンタルの対象が男性から「高級品」に変ったという。不況で失業したり給料が減って着飾って帰郷できない懐事情になっているからだ。「高級品レンタル」で、さも裕福らしく演技するという「哀しい話し」が聞かれるようになった。不動産バブル崩壊の影響だ。

     

    『レコードチャイナ』(2月4日付)は、「中国旧正月の帰省シーズン、手頃なレンタル高級品人気、景気減退を反映か」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「24日、旧正月の休暇シーズンを迎えた中国では、都市部に務める地方労働者にとって面子維持のための高級品レンタルが人気だ。購入に踏み込めない景気減退の反映とも考えられる。帰省者はカメラ、バッグ、時計、電子製品に至るまで、レンタル業者の手を借りて、社会的地位の誇示としての『富』を着飾る。高級品レンタルというビジネスに、多くの大陸中国人は共感を示している。『帰省中は元同級生や親せきの集まりに何度も参加しなくちゃいけない。良い格好が必要になる。でも買うまでもない』北京の会社員劉さんは同紙に語った。そこで、劉さんは市場価格1万元(16万円)のカバンを、一日50元(800円)の使用料で借りた」

     

    中国社会では、相手の価値を判断する上で、持ち物や衣類が重要な役割をする。ましてや、春節では家族が全員集まる重要なイベントである。少しでも見栄を張りたいのはいたしかたない。人間の情というものだ。

     

    過去の好景気時では、大枚をはたいて高級品を買えたが、現在は全く状況が変った。失業したり職が不安定になっている。そこで編み出されたのが「高級品レンタル」である。市場価格1万元(16万円)のカバンを、一日50元(800円)の使用料で借りられるというのだ。参考までに800円を16万円で割った「レンタル料率」は、1日0.5%。7日間レンタルすると5600円になる。貸す側は、いい商売かも知れない。

     

    (2)「レンタル需要の高まりから、所有する高級カバンを貸し出す個人もいる。四川省成都で働く張さんは、現地紙『四川網』の取材に対して1万元で購入したカバンをレンタルサイト「百格包包」に出品し、一週間で100元(1600円)貸出料を付けた。『多くの女性はカバンを持っているけど、クローゼットにしまいっぱなしで、中には未使用のものもある。未使用品をネットで中古販売しても、購入価格からは非常に低い値段になるため、とても損をする』『レンタルサイトは、節約にもなるし、ほんの少しのお金で、色々なバックを楽しめる』と張さんはそのメリットを語った」

     

    個人が所有するカバンをレンタルする場合、1万元のカバンは1週間のレンタル料が1600円だという。レンタル料率は1週間で1%になる。先のパラグラフでは、レンタル業者のカバン・レンタルだから、レンタル料が高くなるのだろう。

     

    (3)「官製メディア『春城晩報』(126日)は、旧正月の特別評論で、友人や家族の前で自慢するために、購入品ではなくレンタル品を利用することを批判した。当局がこうした経済効果の著しくないレンタル事業を批判するのは、経済の低迷を反映していると考えられる。中国求人サイトでは企業の求人が減り、2018年11月当局は740万人の地方出身者の帰郷を指示した。アリババ集団や京東、華為科技(ファーウェイ)、小米、滴々行来など大手IT企業も人員削減を計画し、失業率の上昇が見込まれる」

     

    景気底入れに必死の当局の目からすれば、高級品のレンタルは困ったことになろう。それだけ、品物が売れなくなるからだ。企業の人員整理の声は、あちこちで聞かれる。無駄な出費を減らすのは生活防衛上、やむを得ないこと。中国経済の「陽」は確実に西へ傾いている。

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