勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    あじさいのたまご
       

    上海市の都市封鎖は、解決の目途が立たない中で、北京市へコロナ拡大の気配を見せている。北京の新規感染者は、感染が広がって4日間で計70人となった。市民の間でロックダウン(都市封鎖)への懸念が広がっている。スーパーでは、野菜などの生鮮食品やカップ麺などの保存食品が、相次ぎ品薄状態になっているという。

     

    北京市中心部に位置する朝陽区は25日、住民や区内への通勤者全員を対象としたPCR検査を始めた。週内に3回の検査を義務づけている。こうした状況で、上海株価と人民元相場は25日、急落した。人民元が対ドルで約1年ぶりの安値(1ドル=6.55元)を付けたほか、上海総合指数が急落し心理的節目の3000を下回った。

     


    習近平氏にとっては、緊急事態発生である。今秋の党大会で、国家主席3期目を目指している。それだけに、何ごとも起こらずスムーズにことが運ぶ平穏な環境がベストだった。皮肉にも、逆の動きが強まっている。原因をたぐっていくと、すべて習氏の強引な政策決定に行き着くのである。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月25日付)は、「中国の封鎖拡大警戒、人民元1年ぶり安値 上海株急落」と題する記事を掲載した。

     

    中国で都市封鎖(ロックダウン)が上海市以外にも拡大しかねないとの懸念が広がり、市場の不安が高まっている。25日は人民元が対ドルで約1年ぶりの安値を付けたほか、上海総合指数が急落し心理的節目の3000を下回った。上海株の終値は約110カ月ぶりの安値水準だった。「ゼロコロナ」政策による物流の寸断などで経済や供給網(サプライチェーン)が一段の打撃を受けるリスクが意識されている。

     


    (1)「
    25日の上海外国為替市場で、人民元は対ドルで5営業日連続下落した。日中の取引時間で一時1ドル=.5579元と昨年4月以来約1年ぶりの安値を付けた。4月中旬以来、中国の長期金利の指標となる10年物国債の利回りは同米国債を下回ることが増えており、利回り面の優位性が消えていた。足元では都市封鎖の拡大懸念が広がる。

     

    人民元相場(25日21時40分:日本時間)は、1ドル6.55元である。日中の急落相場は,一時的な現象でなかったことを示している。中国経済の見通しが最近、急速に悪化していることが背景にある。

     


    (2)「北京市政府は24日、感染者が多い一部の区でPCR検査などの防疫体制を強化すると発表した。16日から移動制限を課す江蘇省蘇州市などでも都市封鎖懸念がくすぶり、各地のスーパーマーケットでは食料や日用品を買い込む市民が目立つ。上海市では3月28日に東部から都市封鎖が始まって1カ月近くが経過するが、全面解除はなお見通せず、経済や社会の安定に深刻な影響が出ている」

     

    北京市でもコロナ感染に警戒感を強めている。上海市のロックダウンでは、市民が食糧不足に陥って、苦情が殺到している。北京でも、その二の舞いにならないかと恐れられている。

     

    (3)「習近平指導部は「堅持こそが勝利」とのスローガンを唱え、「ゼロコロナ」政策の徹底を訴える。都市封鎖が上海市以外の都市に広がれば、中国経済の減速は必至だ。工場の操業停止や物流の寸断で供給網が混乱しかねず、「輸出が急速に落ち込むリスクが存在する」(平安証券の魏偉氏)。これまで人民元相場を押し上げる要因になってきた輸出企業の人民元買い需要がしぼむ可能性が浮上している。UBSは、「コロナで中国経済が試練に直面している」として6月の人民元対ドルレートの見通しを1ドル=.40元から同6.55元に引き下げた」

     

    先進国が、パンデミック下にあったときは、市民は在宅を強いられたので「モノへの需要」が急増し、中国の輸出も増加した。現在は、ウイズコロナで外出が可能になり「サービスへの需要」に転換している。こうして、中国の輸出が急減する一方、世界的なインフレによって輸入物価が高騰し、純輸出(輸出-輸入)が急減している。もはや、人民元高を支える条件は消えたのだ。

     

    (4)「上海株式市場では25日、上海総合指数が前週末比5%安の2928と急落し、2020年6月以来の安値水準となった。1日の下落率としては湖北省武漢市で感染が拡大した20年2月以来の大きさだ。25日は人民元の急落や封鎖拡大懸念を受けて、幅広い銘柄が売られ、769銘柄が制限値幅の下限(ストップ安水準)まで売られた。証券監督管理委員会は21日、主要な機関投資家を集め、「株式投資の割合を増加させる」ことなどを求めたが、今のところ効果は限られている」

     

    株価急落は、総合的な「中国評価」の低下でもある。習近平氏によって、突然の政策転換が行なわれ、見通しがつかなくなっていることが原因である。具体的に言えば、次の点だ。ウクライナへ侵攻したロシア支援、コロナ感染の拡大、諸々の規制強化など3点が、中国の未来展望を遮っている。習氏は、そのことに気づかす「裸の王様」になっている。

     

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    トルコが、ロシアに対してウクライナとの和平交渉へ真剣に立ち向かうように圧力をかけている。具体的には、ロシ軍用機によるトルコの空域通過を禁止したもの。ロシア軍機は、シリアに向かう際、どうしてもトルコ空域を通過しなければならない。トルコは、その弱点を突いて、ロシアに対してウクライナとの和平交渉に真剣に取り組むように促す目的である。

     

    英『フィナンシャル・タイムズ』(4月24日付)によれば、プーチン大統領は黒海艦隊旗艦『モスクワ』が撃沈されたことから、ウクライナとの和平交渉を放棄したと、されている。トルコは、こういう情報に危機感を持って和平交渉を促していると見られる。

     

    トルコ政府は24日、エルドアン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が電話会談したと発表した。エルドアン氏はウクライナ情勢を憂慮するとともに、停戦交渉を支援するとの意向をゼレンスキー氏に伝えた。ロシアのウクライナ侵攻では、両国と良好な関係にあるトルコが交渉を仲介。3月末にはトルコ・イスタンブールで停戦交渉が行われたが、その後、ウクライナ首都キーウ(キエフ)近郊ブチャで多数の民間人虐殺が見つかるなどし、交渉への機運がしぼんでいる。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(4月24日付)は、「ロシア軍機の通過拒むトルコ、ウクライナと和平迫る」と題する記事を掲載した。

     

    トルコがシリアへ向かうロシア軍によるトルコ空域の使用を禁止した。トルコ政府がロシアとウクライナの和平交渉を復活させようとするなか、プーチン大統領への圧力を強めるのが狙いだ。

     


    (1)「トルコのチャブシオール外相は、ロシアの軍用機は今後、シリアへ向かう途中でトルコを経由できないと述べた。ロシア政府はシリアでアサド政権を支える重要な役割を担ってきた。トルコ国営放送によると、チャブシオール氏は訪問先のウルグアイで記者団に「ロシアの軍用機だけでなく軍人をシリアへ運ぶ民間機に対してもトルコ領空を閉鎖した」と語った。トルコはウクライナでの戦争が始まった直後に黒海から地中海へ向かう外国軍艦の通航を制限しており、今回の空路封鎖はロシアにとってシリア国内での後方支援をさらに複雑にするとアナリストらは語る」

     

    トルコが、ロシア軍機の空域通過を拒否したので、シリア支援に支障を来たす。ロシアにとっては困った事態だ。ロシアが、「利用可能な空路補給ルート」は、今やイラン、イラク経由だけになったと指摘されている。

     


    (2)「トルコは、ロシア発着の商用機について今後も領空通過を認め、自国経済にとってのロシア人観光客の重要性を踏まえてロシア機に対する領空閉鎖で欧州連合(EU)に追随することを拒んだ。チャブシオール氏は、トルコのエルドアン大統領がプーチン氏に閉鎖の決定を伝え、両首脳は対話を継続していると語った。この問題に詳しい人物3人によると、ウクライナでロシアの新たな攻撃が始まって以来、トルコ政府はシリア入りするロシア軍による空域使用の許可を徐々に縮小してきた。だが、完全に領空を閉鎖し、それを公表する決定は重大な対応強化となる」

     

    トルコのエルドアン大統領は、なかなかの「曲者」である。大国を手玉にとって外交を行なうという大胆さを見せている。プーチン氏を「手なずける」戦術であるが、どうなるか。プーチン氏は、何らかの回答を迫られている。

     


    (3)「
    米フィラデルフィアにある外交政策研究所で中東部門を率いるアーロン・スタイン氏は、米国やその他の国が、トルコに対しシリアを支援するロシア政府への影響力を行使し、プーチン氏に対する圧力を強めるよう要請してきたと話す。「トルコ政府が話に乗るまで多少時間がかかったが、ほぼ2カ月でトルコ政府はウクライナ問題を巡ってロシア政府にシリアに絡めて圧力をかける新たな措置を講じた」と同氏は語った」

     

    このトルコによるロシアへの圧力は、米国などの諸国が依頼していたものという。

     

    (4)「プーチン氏が、第2次世界大戦以来最大の軍事攻撃に乗り出して以来、トルコは微妙な綱渡りを演じようとしてきた。大半の欧州諸国は戦争が始まった後すぐにロシア機に対して自国領空を閉鎖したが、トルコはむしろ仲介役になろうとした。また、トルコは欧米諸国の制裁に加わることには抵抗したものの、ウクライナ軍に武装ドローン(小型無人機)を供給している」

     

    トルコは、何かにつけてウクライナ側に立っている。ウクライナでの戦争が始まった直後に、黒海から地中海へ向かう外国軍艦の通航を制限した。ロシア軍艦もこの通航制限によって制約を受けている。ウクライナ軍に武装ドローンも供給している。この武装ドローン製造企業(民間)は、エルドアン大統領の女婿とされている。ロシアは、トルコに武装ドローンの供給停止を求めたが、「民間企業の活動に関与しない」との理由で拒否している。

     


    (5)「トルコが、いくつかの広い地域を実質的に支配し、大規模な軍事プレゼンスを持つシリアに関してロシアに圧力をかける政府の決定は、エルドアン氏とプーチン氏の複雑な関係を浮き彫りにする。両首脳は近年、親密な個人的関係を築いたが、シリアやリビア、カフカス地域の係争地ナゴルノカラバフの戦場では繰り返し、互いに対立する側に立ってきた。トルコ政府はウクライナとロシアの和平交渉を仲介しようとした。両国の交渉担当者は3月、4月とトルコでハイレベル会合を2度開いたが、ロシア部隊がウクライナの民間人に残虐行為を働いたとされたことで交渉は進まなかった」

     

    トルコが、ロシアへシリア関連で圧力をかけたのは「和平交渉にもっと真剣に臨むよう」ロシアに強いる狙いだと指摘しされている。これが、ロシアへの圧力となって和平交渉は始まるであろうか。

     


    韓国次期政権は4月24日、日本政府との政策協議団を派遣した。日韓関係改善へ向けて動き出したもの。28日まで5日間の滞日予定である。岸田首相への親書を携えており、大統領就任式へ招待するという。

    政策協議団は訪日中、岸田首相に続き、安倍晋三元首相、菅義偉前首相を相次いで表敬訪問する予定だ。また十倉雅和経団連会長と武田良太日韓議員連盟幹事長、泉健太立憲民主党代表ら政財界主要人物と幅広く面談する。林芳正外相とは25日に夕食をともにする。

     


    『中央日報』(4月25日付)は、「『韓日の誤解を解こう』、韓国次期大統領 就任式に岸田首相招待」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領が冷え込んだ韓日関係に突破口を見出すために日本の岸田文雄首相を大統領就任式に招待するカードを出した。就任式の出席を名分として2年以上断絶していた韓日首脳間の疎通チャネルを復元しようということだ。

    (1)「韓日政策協議代表団は、5月10日大統領就任式の招待内容を記した尹氏の親書を岸田首相に手渡す予定だ。代表団の団長である鄭鎭碩(チョン・ジンソク)国会副議長は、「最悪の状態で放置されてきた韓日関係を改善して正常化することが我々の国益に符合するという認識を尹氏は持っている」とし、「韓日間の密度ある対話を始めたい」と明らかにした。続いて岸田首相の大統領就任式の出席について「通常、各国首脳の出席はその国が決める」としつつも「最終決定事項はまだ受け取っていないが、世界各国のどの首脳も出席意志を送って下されば最善の礼節を守って迎える準備をしている」と答えた」

     

    日本の首相が韓国大統領就任式へ出席するとなれば、2008年2月李明博(イ・ミョンバク)元大統領就任式に福田康夫首相が出席して以来、14年ぶりとなる。



    (2)「大統領職引き継ぎ委員会は岸田首相が就任式に出席する場合、2年以上中断されていた韓日首脳間の疎通が復活されるとみている。通常、新しい大統領は就任式に出席した各国首脳と会談して祝賀使節団に面会する「就任式外交」を行う。朴槿恵(パク・クネ)前大統領の場合、2013年2月25日に韓印首脳会談に続いて麻生太郎当時日本副首相と面会した。翌日には韓加、韓豪首脳会談に臨んだ」

     

    韓国次期政権は、対日関係で文政権との違いを強く打ち出したいところだ。米韓関係の緊密化には、日韓関係改善がポイントになっている。米国は、日米韓三ヶ国の連携強化がインド太平洋戦略の重要な結節点になると見ているからだ。

     

    『ブルームバーグ』(4月24日付)は、「文政権下で冷え切った日韓関係、尹大統領就任で高まる改善期待」と題する記事を掲載した。

     

    ここ数年悪化の一途をたどっていた日韓関係に転機が訪れそうだ。韓国の尹錫悦次期大統領は日本に歩み寄る姿勢を見せている。

     

    (3)「韓国の代表団が24日から5日間の日程で日本を訪問する。5月10日に大統領に就任予定の尹氏は、文在寅政権下で悪化した日韓関係の修復に意欲を示している。尹氏はすでに米国に代表団を派遣しており、中国にも就任前に送る予定だ。共に米国の同盟国である日韓の関係改善は、バイデン政権にとっても歓迎すべき展開となる公算が大きい。米国は、中国と北朝鮮が突きつける安全保障上の脅威に対抗し、中国の干渉を受けることなく半導体など主要製品のサプライチェーンを確保するために日韓に協力を求めている」

     

    経済が、安全保障と重要な絡みを持つ現在、日韓は半導体などの主要製品の供給面で大きな役割を担っている。米国は、日韓関係の改善を強く期待しているが、従来のように日本へ圧力をかけることを避けている。日韓関係悪化の理由が、韓国側にあることを熟知しているからだ。韓国の姿勢が改まるのをじっと待っていたのである。

     

    (4)「保守系最大野党「国民の力」の尹氏は外交でタカ派姿勢を取る意向を示しており、これは岸田文雄政権が取り組む安全保障上の優先課題とも一部合致するだろう。地域での脅威が高まる中、ロシアのウクライナ侵攻は日韓両国に米国への依存を再認識させており、新政権の誕生は日韓関係正常化への機会をもたらす可能性がある。明知大学校のシン・ユル教授(政治学)は、韓国の安全保障には米国が不可欠であり、日本との関係修復も必要だと尹氏は認識していると指摘。「問題は歴史認識と安全保障のどちらを優先するかだ。選挙戦での公約と当選後の行動を踏まえると、尹氏は後者を優先する可能性が高い」と述べた」

     

    韓国の安全保障には、米国のほかに日本の協力が不可欠である。韓国次期政権は、こういう認識に立っている。文政権は、米韓関係を大事にするが、日本は「主敵」という信じ難い姿勢であった。その意味で、韓国次期政権は対日関係のスタンスが大きく変わる。

     


    (5)「もっとも、親日的と受け止めたられた過去2人の保守系大統領は国民から批判され、支持率の低下や政策の停滞を招いており、関係改善が円滑に進むかどうかは見通しにくい。歴代大統領の中でも支持率が低く、議会の過半数を革新系が占める中で就任する尹氏にはいかなる失敗も許されない」

     

    韓国の最新世論調査では、日本への認識が変わってきた。親日ではないが、日本の存在を必要とするという変化である。この流れが、次期政権の登場によってどこまで深まるかだ。

     



     

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    文大統領は最近、国内向けに「韓国は世界10位」と宣伝している。立派に先進国入りしたと胸を張っているのだ。だが、先の韓国国会でのウクライナ大統領演説では大ミソを付けた。国会議員300人中、出席した議員はわずか50~60名に過ぎず、国際問題への関心の低さを見せつけたのである。

     

    この様子をみると、韓国の先進国入りという自己宣伝は、眉唾ものに聞えるのである。それどころか、日本社会がウクライナ問題で大きな関心を持っていることを訝っているほど。日本は,ウクライナ侵攻を利用して「軍事大国を狙っているのでないか」という記事まで現れる始末である。日本と比べた韓国の国際感覚は、かなりのギャップが見られるのだ。

     


    『朝鮮日報』(4月24日付)は、「尹錫悦次期大統領、バイデン氏訪韓を『G9』加入の契機とすべき」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の李河遠(イ・ハウォン)国際部部長である。

     

    (1)「世界史的事件であるウクライナ侵攻開始後、米国が新たな国際秩序を作るために動き始めた。集団虐殺を行ったロシアとこれをほう助する国々を苦しい立場に追い込もうというバイデン米大統領の考えがはっきりとうかがえる。バイデン大統領は先月の訪欧時、「ロシアはG20(主要20カ国会議)から除外されるべきか」という質問を受けた。すると、同大統領は少しも迷わず「私の答えはそうだ」と答えた。そして、「もしロシアをG20から排除できないなら、ウクライナを招待する」とも言った」

     

    韓国は、G20が先進国とロシア・中国などの新興国と利害関係が対立しているので、いずれ瓦解すると見ている。

     


    (2)「ジャネット・イエレン米財務長官はさらに一歩踏み込んだ。ロシアがG20から排除されないなら、これを『無用の長物』にするという方針を今月初めに示唆した。「今年、インドネシアで開催されるG20会議にロシアが出席するなら、米国は出席しない可能性がある」とクギを刺した。バイデン大統領はウクライナで人種虐殺や性的暴行を振るったロシアと21世紀の「プトラー」(プーチン+ヒトラー)を容認することができない。進歩主義者として生涯を生きてきた彼の信念がそうさせる。「ロシアとの戦争も辞さない」とも主張する共和党に対抗し、今年11月の中間選挙で勝利するためにも、なおのことそうだ」

     

    韓国は、G20が機能を果たさなくなれば、「G7+α」が機能を拡充して役割を果たすという見立てをしている。この「+α」には、韓国や豪州が加わるだろうと期待している。

     


    (3)「米国際政治学者ヘンリー・キッシンジャー氏は著書『外交(Diplomacy)』で「力の空白は必ず満たされるが、重要なのは誰によって満たされるのかだ」と述べた。ロシアと中国、インドなどを含むG20体制が崩壊したら、世界で代表性を認められる機構が必要だ。その代案の一つとして、G7(主要7カ国会議)の拡大が挙げられる。米国は既に2020年、「G7に韓国やオーストラリアなどを加えて、『G11』体制に拡大しよう」という構想を提示している

     

    下線部分は、米国の前大統領トランプ氏が即興的に言い出した案である。G7を拡大するには、加盟国がすべて賛成しなければならない。

     


    (4)「来月発足する尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は世界秩序再編期を生かし、経済力がほぼ同じオーストラリアと共に「G9」加盟国になるという構想を持って動いた方がいい。G9になると欧州偏重でなくインド・太平洋地域の声を反映させて中国やロシアに効率的に対応できるという論理を推進できる」

     

    韓国は、次期新政権が米国や日本との協力関係強化を強く打ち出している。文政権とは、外交スタイルが全く異なっているのだ。次期政権の日本への使節団が、24日から派遣された。

     

    (5)「大韓民国は既に「30-50クラブ」に世界で7番目に加わっており、G9に入る名分は十分だ。30-50クラブとは、1人当たりの国民総所得が3万ドル(約380万円)以上で、人口5000万人以上という条件を満たす国を意味する。30-50クラブは、G7諸国のうちカナダを除く米国、英国、ドイツ、フランス、日本、イタリアの6加盟国とも一致する」

     

    「30-50クラブ」が、正式に存在するわけでない。韓国が、勝手に線引きして「先進国風」を吹かしてきたものだ。

     


    (6)「駐韓米国大使に指名されたフィリップ・ゴールドバーグ氏に対する先日の議会聴聞会は、韓国の立場をあらためて確認する場だったと言っても過言ではない。同氏は、「韓国は新型コロナウイルス、世界民主主義、気候問題といったグローバルな挑戦に対応することにおいても米国と共にいた」「米国は『グローバル・コリア』を必要とし、歓迎する」と述べた。来月のバイデン大統領訪韓・訪日は国際秩序転換期に繰り広げられる超大型の外交舞台だ。いつにも増して重要な時期のバイデン大統領訪韓を対北朝鮮抑止力強化という視点からしか見ないのは外交の下級者だ。韓米同盟をアップグレードするのはもちろん、世界で韓国の役割と影響力を広げる機会としなければならない」

     

    韓国は、アジアで重要な地位になってきた。ただ、これまでの文政権は、「中ロ」のご機嫌伺いに熱心で、「クアッド(日米豪印)参加を渋ってきた国である。この路線をどのように変えるのか。実績を見なければならない面もある。

     


    (7)「韓国が世界の先導諸国と肩を並べるG9国家化は、米国の賛成だけでは実現しない。何よりもアジアで唯一のG7国家として活動してきた日本が支持してくれなければならない。韓日関係が暗闇の中にある状況で、それこそ外交の総合芸術が繰り広げられなければできないことなので、この事案は尹錫悦政権にとって最初の試験の場になるかもしれない。大韓民国のG9加入は、経済力は大幅に伸びたものの、発展途上国レベルの低い市民意識や浅はかな政治現象を改善し、「真の先進国」になる良い契機だ。尹錫悦政権序盤にこれに関して朗報を聞くことになれば、政権の順調な航行にも助けになるだろう」

     

    仮にG7を拡大することになるとしても、日本が首を縦に振らなければ話が進まないのだ。この厳しい事実を知れば、文政権のような「反日政策」は成り立たなくなる。文政権、いかに世界を知らなかったかを物語っている。

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    「いつまでもあると思うな親と金」は、親が子どもを戒める言葉である。これがそっくり,中国へ当てはまる局面になった。「いつまでも続くと思うな人口世界一論」が、中国の苦悩を浮き彫りにしている。

     

    中国は今年、人口減社会へ突入する。21年の中国の出生数は1062万人。一方、死亡者は1014万人と接近。昨年の「自然増」は48万人にすぎず、今年から「自然減」は不可避であるからだ。こうした人口動態の悪化が、早くも中国の長期金利低下に現れていると読めるのである。

     


    『日本経済新聞 電子版』(4月24日付)は、「中国、金利低下が映す『人口の崖』 バブル処理困難に」と題する記事を掲載した。

     

    中国の長期金利が低下している。指標となる10年物国債の利回りは同米国債利回りを約12年ぶりに下回った。習近平(シー・ジンピン)指導部が堅持する「ゼロコロナ」政策で経済の下振れリスクが高まっているためだ。見逃せないのは中国の金利低下の根底に人口減少と過剰債務という2つの長期的な構造問題が横たわっていることだ。経済停滞から抜け出せない「日本化」に陥りかねない。

     

    (1)「UBSグローバルウェルスマネジメントの胡一帆氏は、「4月の経済指標には大きな下押し圧力が掛かっている」と警鐘を鳴らす。新型コロナウイルスの感染拡大で、中国最大の経済都市、上海市が1カ月近く都市封鎖(ロックダウン)され、中国経済は短期的に下振れリスクが浮上している。野村の陸挺氏は「4~6月の国内総生産(GDP)が前年同期比で減少に転じるリスクが高まっている」と見る」

     


    中国は、上海市のコロナによるロックダウン(都市封鎖)によって、経済活動がストップしている。それだけでない。長江デルタ地帯の経済の要であるので、「上海経済圏」は中国GDPの2割を占める。この巨大経済圏が、麻痺状態に陥っているのだ。4~6月のGDPは、マイナスの危険性が高まっている。

     

    (2)「中国人民銀行(中央銀行)は25日から預金準備率を引き下げる。金融緩和色の強まりで、中国の長期金利は22日時点で2.878%と、新型コロナの大流行で湖北省武漢市が都市封鎖された2020年春の水準(2.%前後)にじわじわ近づいている。一方、新型コロナウイルスとの共生を志向する「ウィズコロナ」政策にかじを切った米国などの先進国は利上げの手を緩めない。中国の長期金利は4月中旬以来、米国の長期金利を下回る場面が増えている」

     

    中国の長期金利が、ロックダウンを反映して2.878%と低下し、米国の長期金利を下回る局面が増えてきた。これは、米中経済の潜在成長率を反映しており、中国経済は米国経済を抜けないことを暗示している。長期金利は、設備投資需要を映す。中国経済の「短命」を予告しているのだ。

     


    (3)「米国を下回る中国の金利水準は、長期的には人口減少社会の到来と過剰債務という不都合な未来を映す鏡でもある。中国の21年の出生数は1949年の建国以来最も少なかった。2021年から解禁した3人目の出産政策の効果は乏しい。「一人っ子でも経済負担は大きい」(湖北省武漢市の女性)。一人っ子同士の夫婦が双方の両親4人と子ども1人、計5人の面倒を見なければならないケースが大半だからだ」

     

    中国の出生率低下は構造的要因である。女性の高学歴化によって、職業キャリアを出産よりも優先させる傾向が強まっている。中国は、女性社員が出産で休暇を取ることを奨励しない雰囲気が強く、結婚しても出産しない。あるいは「一人っ子で十分」というムードを高めている。こうして、二人、三人という子どもは望めなくなっている。

     


    (4)「中国では今後、人口減少が確実視されている
    。国連の最も出生率が低い低位推計では人口の減少は25年から始まる。今秋の共産党大会での続投を前提にすると、習氏の次の5年の任期(22~27年)中に減少に転じ、2100年には約6億8000万人と半減する。米国は2100年まで一貫して人口増加が続く。低位推計でも、人口減が始まるのは48年からとなる」

     

    私が、冒頭に掲げたように今年から中国は「人口減」社会に突入している。国連による出生率の低位推計さへ下回る出生率に低下したのだ。このパラグラフは、大幅に修正する必要がある。米中の人口動態比較からみても、米中経済の逆転は起こりようがない。従来の逆転論者は、目を覚ますべきだろう。



    (5)「人口が減少すると潜在成長率を押し下げ、デフレ圧力を通じて実質的な債務返済の増大をもたらす。国際決済銀行(BIS)によると、中国の民間企業債務(除く金融部門)はGDP比で161%(20年)。米国(85%)の2倍近い。約2兆元の負債を抱え、部分的な債務不履行(デフォルト)に陥った中国恒大集団がその象徴的存在と言える」

     

    中国の人口減少は、潜在成長率を押し下げるので、デフレ圧力を通じて実質的な債務返済の増大をもたらすはずだ。これまで、中国経済についてバラ色論をまき散らしてきた国際機関は、中国の現状を深く認識して撤回すべきであろう。中国企業は,潜在成長率低下の中で過剰債務の返済に苦しむのだ。

     


    (6)「苦しむのは企業だけではない。人民銀の調査によると、中国の都市部の持ち家比率は9割を超す。一人っ子同士の夫婦の間に生まれた子どもは少なくとも3戸の住宅を相続する可能性が高い。建築ラッシュが続いた住宅の価格が下落に転じれば、投資目的で複数の住宅を保有する富裕層や不動産会社が売り急ぎ、負の循環を引き起こしかねない。中国に先行して人口減が続く日本はバブル崩壊後に長期停滞に陥った」

     

    一人っ子が将来、少なくの3戸の住宅を相続する形になる。2戸は不要になるので売却対象だ。住宅市況は、大幅下落に見舞われるであろう。それは、新築住宅の販売不振へと跳ね返り、中国GDPを押し下げるに違いない。人口減社会は、こういうこれまで想像もできなかった現象をもたらす。中国経済の「終り」が、始まるのだ。 


     

     

     

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