上海市の都市封鎖は、解決の目途が立たない中で、北京市へコロナ拡大の気配を見せている。北京の新規感染者は、感染が広がって4日間で計70人となった。市民の間でロックダウン(都市封鎖)への懸念が広がっている。スーパーでは、野菜などの生鮮食品やカップ麺などの保存食品が、相次ぎ品薄状態になっているという。
北京市中心部に位置する朝陽区は25日、住民や区内への通勤者全員を対象としたPCR検査を始めた。週内に3回の検査を義務づけている。こうした状況で、上海株価と人民元相場は25日、急落した。人民元が対ドルで約1年ぶりの安値(1ドル=6.55元)を付けたほか、上海総合指数が急落し心理的節目の3000を下回った。
習近平氏にとっては、緊急事態発生である。今秋の党大会で、国家主席3期目を目指している。それだけに、何ごとも起こらずスムーズにことが運ぶ平穏な環境がベストだった。皮肉にも、逆の動きが強まっている。原因をたぐっていくと、すべて習氏の強引な政策決定に行き着くのである。
『日本経済新聞 電子版』(4月25日付)は、「中国の封鎖拡大警戒、人民元1年ぶり安値 上海株急落」と題する記事を掲載した。
中国で都市封鎖(ロックダウン)が上海市以外にも拡大しかねないとの懸念が広がり、市場の不安が高まっている。25日は人民元が対ドルで約1年ぶりの安値を付けたほか、上海総合指数が急落し心理的節目の3000を下回った。上海株の終値は約1年10カ月ぶりの安値水準だった。「ゼロコロナ」政策による物流の寸断などで経済や供給網(サプライチェーン)が一段の打撃を受けるリスクが意識されている。
(1)「25日の上海外国為替市場で、人民元は対ドルで5営業日連続下落した。日中の取引時間で一時1ドル=6.5579元と昨年4月以来約1年ぶりの安値を付けた。4月中旬以来、中国の長期金利の指標となる10年物国債の利回りは同米国債を下回ることが増えており、利回り面の優位性が消えていた。足元では都市封鎖の拡大懸念が広がる。
人民元相場(25日21時40分:日本時間)は、1ドル6.55元である。日中の急落相場は,一時的な現象でなかったことを示している。中国経済の見通しが最近、急速に悪化していることが背景にある。
(2)「北京市政府は24日、感染者が多い一部の区でPCR検査などの防疫体制を強化すると発表した。16日から移動制限を課す江蘇省蘇州市などでも都市封鎖懸念がくすぶり、各地のスーパーマーケットでは食料や日用品を買い込む市民が目立つ。上海市では3月28日に東部から都市封鎖が始まって1カ月近くが経過するが、全面解除はなお見通せず、経済や社会の安定に深刻な影響が出ている」
北京市でもコロナ感染に警戒感を強めている。上海市のロックダウンでは、市民が食糧不足に陥って、苦情が殺到している。北京でも、その二の舞いにならないかと恐れられている。
(3)「習近平指導部は「堅持こそが勝利」とのスローガンを唱え、「ゼロコロナ」政策の徹底を訴える。都市封鎖が上海市以外の都市に広がれば、中国経済の減速は必至だ。工場の操業停止や物流の寸断で供給網が混乱しかねず、「輸出が急速に落ち込むリスクが存在する」(平安証券の魏偉氏)。これまで人民元相場を押し上げる要因になってきた輸出企業の人民元買い需要がしぼむ可能性が浮上している。UBSは、「コロナで中国経済が試練に直面している」として6月の人民元対ドルレートの見通しを1ドル=6.40元から同6.55元に引き下げた」
先進国が、パンデミック下にあったときは、市民は在宅を強いられたので「モノへの需要」が急増し、中国の輸出も増加した。現在は、ウイズコロナで外出が可能になり「サービスへの需要」に転換している。こうして、中国の輸出が急減する一方、世界的なインフレによって輸入物価が高騰し、純輸出(輸出-輸入)が急減している。もはや、人民元高を支える条件は消えたのだ。
(4)「上海株式市場では25日、上海総合指数が前週末比5%安の2928と急落し、2020年6月以来の安値水準となった。1日の下落率としては湖北省武漢市で感染が拡大した20年2月以来の大きさだ。25日は人民元の急落や封鎖拡大懸念を受けて、幅広い銘柄が売られ、769銘柄が制限値幅の下限(ストップ安水準)まで売られた。証券監督管理委員会は21日、主要な機関投資家を集め、「株式投資の割合を増加させる」ことなどを求めたが、今のところ効果は限られている」
株価急落は、総合的な「中国評価」の低下でもある。習近平氏によって、突然の政策転換が行なわれ、見通しがつかなくなっていることが原因である。具体的に言えば、次の点だ。ウクライナへ侵攻したロシア支援、コロナ感染の拡大、諸々の規制強化など3点が、中国の未来展望を遮っている。習氏は、そのことに気づかす「裸の王様」になっている。