ロシア軍は、ウクライナ侵略で多くの戦死者を出している。その中で、少数民族出身者が2割を占めている。ロシア連邦の民族構成から見て多すぎると指摘されている。
ウクライナ軍当局の発表によるとゼレンスキー大統領暗殺のために差し向けられた危険な任務の特殊部隊は、チェチェン出身者である。チェチェンは、ロシアの「属国」的な存在である。その意味では、少数民族と見て間違いない。このチェチェン特殊部隊兵士は、発音の違いなどから見破られ、ことごとく排除されたという。首都キーウ西部のブチャで破壊された大規模車両もチェチェン部隊の所属であることが分かった。また、戦争初期ホストメル空港に侵入しようとしたチェチェン兵士は、ウクライナ軍の攻撃で数百人が死亡した。
韓国紙『中央日報』(4月1日付)は、「『ロシアの少数民族兵士、特に多くの犠牲者』と題する記事を掲載した。
希望の見えないロシアの辺境を脱するために軍に入隊し、ウクライナ侵攻に動員された少数民族の青年たちが相次いで遺体となって故郷に帰ってきている。
(1)「英国の日刊紙『ガーディアン』の3月30日の報道によると、シベリアの端のモンゴル国境に接するブリヤート共和国の首都ウラン・ウデで3月28日(現地時間)、ウクライナで戦死した4人の兵士の葬儀が仏教の比丘尼たちの取り仕切る中で行われた。戦死者の一人、ブラト・オドエフさんは軍隊生活10年目の軍人で、3月15日に故郷から6400キロ離れたウクライナのキエフ(現地読みキーウ)付近で死亡した。兄の妻のオルガさんは「彼は、仲間の期待に応えようとして参戦した。私たち家族の(戦争についての)考えは、政府当局とは異なるが、私たちには何もできない」と語った。そして「私たちは混乱している。この流血事態は終わらせるべきだ。私たちの青年たちが死んでいっている」と嘆いた」
貧しい辺境の少数民族出身者が、軍隊を志願している。戦前の日本では、貧困な農家出身の若者が、軍隊では満足な食事が摂れると喜んで出征したという「悲話」が残されている。少数民族出身者は、これと似たような生活環境であるのだろう。
(2)「ブリヤート共和国は、モンゴル系のブリヤート族が全人口の40%ほどを占めるロシアの辺境中の辺境だ。住民たちの月平均給与は、4万4000ルーブル(約6万4000円)に過ぎない。このような貧困から脱するために、多くの若者が軍への入隊を選択している。ブリヤートの地域メディア「ルディ・バイカラー」は、ブリヤート出身の戦死者はこれまでに45人確認されているとしつつ、実際の戦死者はこれよりはるかに多いだろうと伝えた」
少数民族の月平均給与は、約6万4000円程度という。こういう中では、軍隊へ入ったほうが生活も楽かも知れない。だからと言って、侵略戦争の最前線へ立たせるのは、余りにも残酷な話である。
(3)「近隣のトゥバ共和国出身の兵士もこれまでに96人が死亡しており、カスピ海に接する山岳地域ダゲスタン共和国からも少なくとも130人の戦死者が出ているとガーディアンは伝えた。これら3つの共和国出身の271人の戦死者は、ロシア政府が公式発表している1351人の戦死者の20%にのぼる。人口を考えれば、この高い割合はアンバランスだ」
ロシア政府発表の戦死者名簿では、少数民族出身者が約2割を占めている。人口構成を考えれば多すぎて不自然である。何らかの意図があったと見られる。
(4)「ロシアの軍事専門家パベル・ルージン氏は、「ブリヤート共和国のような貧しい『少数民族』出身の兵士に戦死者が多いということが、ますます明らかになりつつある」と指摘した。そして、階級の低い兵士は主に少数民族出身者が占めていると語った。ルージン氏は「不幸にも、普通のロシア人はモスクワやサンクトペテルブルク出身の青い目の兵士が死んだ時と比べると、ブリヤートやダゲスタン出身の兵士の戦死はあまり気にとめない」と指摘した。軍事作戦を企画する幹部たちもこれを知っているため、他の兵士を送らない場所に少数民族の兵士を送ると同氏は付け加えた」
ロシア大都市出身者が戦死した場合、「反戦運動」が起こりやすい。だが、少数民族出身者の戦死では、社会的な反響が異なる。ロシア政府は、そういう計算をしているという。
(5)「兵士の犠牲が相次いでいることで、ブリヤート族の間からは反戦の声もあがっている。ブリヤート出身のビャチェスラフ・マルハエフ国家ドゥーマ(議会)議員は、ウラジーミル・プーチン大統領が「最も近い我々の隣人と全面戦争するという計画を隠した」としてウクライナ侵攻を批判した。外国に居住するブリヤート人たちも「戦争に反対するブリヤート人」という反戦キャンペーンを繰り広げている。だが、ブリヤート現地は恐怖と戦争支持が交錯する中、表向きは平穏を保っているとガーディアンは伝えた」
少数民族出身者は、じっと声を潜め泣き寝入りさせられている。だが、いつかこの不合理な事実が、ロシア社会全体に知れ渡ったとき、大きな衝撃を呼び起こそう。プーチン氏が引き起した少数民族出身者を使った侵略戦争。今回のウクライナ戦争の隠された事実である。