勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    先にインドネシアで開かれた世界銀行・IMFの年次総会で、中国批判の声が多く聞かれた。中国の技術窃取や「一帯一路」による債務漬けなど、具体的な批判である。

     

    中国は昨年秋の党大会で、共産党結党100年に当る2049年をメドに、世界覇権を狙う意思を明らかにした。これが、米国に中国との「冷戦」を決意させた。その意味で、習近平政権の出現は、世界に緊張をもたらす大きな原因になっている。

     

    中国は「60%現象」という言葉を持ち出して、米中緊張の原因は米国がつくったものとしている。「ある国の国内総生産(GDP)が米国の60%に達すると、米国はあらゆる力を使ってその国をつぶしにかかるという経験則がある」というのだ。1980年代から1990年代にかけて、日本のGDPが米国の60%見当に達したので、米国が「日本潰し」を謀ったとしている。現在、中国のGDPが米国の60%に達したので、日本と同様に「中国潰し」を始めたという解釈だ。

     

    これは、もっともらしく見えるが、日本と中国の場合では決定的に異なる点がある。それは、日本が米国の同盟国であることだ。日本が、米国覇権を脅かす存在でなく、日米貿易不均衡による経済摩擦だけが原因であった。当時の日本は、中国と同じ保護主義で凝り固まっていた。日本は、膨大な対米黒字を計上しており、1985年のG5によるプラザ合意を受入れざるを得ない立場に置かれていた。

     

    現在の中国は、当時の日本と異なり「世界覇権挑戦」が目標であることを明示している。「中国式社会主義」を世界秩序に組入れる意思さえ見せているのだ。現在の世界秩序の基本である自由と民主主義への挑戦である。

     

    米国だけでなく、欧州や日本も同じく「脅威」として受け取らざるを得ない事態だ。中国が、世界の普遍的な価値観に挑戦する以上、米国はそれを守る義務がある。そういう強い信念に基づいて、中国との「新冷戦」を決意した。「新冷戦」とは、「米ソ冷戦」に次ぐ「米中冷戦」という意味である。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月16日付)は、「中国と新冷戦時代へ動き出した米国」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「トランプ政権が周到な計画の下、中国に対して反撃に動き出した。ホワイトハウスには、中国が長年、見境なく攻撃的な振る舞いを続けているとの認識があり、反撃は軍、政治、経済の各分野に及ぶ。両国の関係が一層冷え込む可能性が浮上した。トランプ政権発足から1年半、世界の二大大国である米国と中国の関係にとって、「北朝鮮をどう抑制するか」と「貿易不均衡をいかに是正するか」という2つのテーマをめぐる交渉が全てだったと言える。世界の注目を集めるこうした取り組みの裏で、ホワイトハウスは対中強硬姿勢へのシフトに向けて準備を進めていた。北朝鮮問題で中国の協力が得られなくなり、通商協議も行き詰まる中、対中強硬戦略が表面化してきた。複数のホワイトハウス高官や政府関係者へのインタビューから明らかになったのは、新たな冷戦を思わせる状況下で行われている両国間の最近のやり取りが、米国の対中政策から逸脱していないということだ」

     

    米国が、新たな冷戦を思わせる対中行動には次の点がある。

        ペンス副大統領が今月4日、中国に対して激しい非難演説を行なった。

        米財務省は10日、中国対米投資の安全保障上の審査を強化する新規則を発表した。

        米司法省は中国情報工作員を逮捕・起訴した。

        米エネルギー省は11日、原子力技術の対中輸出規制を強化すると発表した。

        米政府は先ごろ、中国国営メディア2社にメディアとしての資格でなく、外国の代理人としての登録を義務付ける司法省の指示を承認した。

     

    以上の5点が、相次いで中国に対して実施されたことは、いくら情報に鈍感な向きでも、米中間に「何かが起こっている」と思わせるに十分な「事件」であろう。

     

    (2)「アナリストによると、中国政府関係者の多くは米国が一気に対中強硬戦略にシフトしたことに驚いており、米国が事を荒立てる中で中国は関係を安定させようと急いでいる。南京大学で米中関係と国際安全保障を研究する朱鋒教授は『米国は強硬姿勢をますます強めており、あらゆる面で中国と対立している』と指摘する。『中国政府はとにかく冷静でいるべきだ。新たな冷戦が中国の国益になるのか。答えはノーだ』としている」

     

    中国にとっては、全く想像もできなかった米国の変化であろう。第一、トランプ氏が大統領に当選したこと自体驚きに違いない。だが、中国がGDPで米国を追い上げる。南シナ海では島嶼を窃取して埋め立て軍事基地化する。これら二点だけでも、米国民のプライドに中国が挑戦する大事件である。自由と民主主義を否定する中国の勃興は、とうてい受入れがたいことなのだ。

     

    こういう事態の中で、中国が米国に反抗する姿勢をとれば、ますます泥沼化するので冷静に対応すべきである。こういう意見が、中国国内に出ている。これは、米国を怒らせた理由が、中国にあるという前提から出ている話であろう。

     

    (3)「米国の一連の動きは、1979年の米中国交樹立にさかのぼる「建設的関与」戦略から米国が明確な方向転換を図ったことを意味する。この戦略の土台には、中国が経済、経済の両方で徐々に自由化を進めるとの期待があった。米国が方向転換したのは、2012年に中国トップに就任した習氏が偉大な大国を目指すと宣言し、政治と経済の権限を再び中央に集中し始めてからだ。米国は中国が来た道を戻り始めたと受け止めた」

     

    米国は、中国を日中戦争当時も軍事的・経済的に支援する関係にあった。中国共産党が政権を掌握する事態になってからは、外交関係は断絶した。米中復交後、米国は中国の民主化を期待した。だが、習氏の登場はそれを不可能にしたのである。中国政府は、「過去の道」へ逆戻りして専制色を強めている結果だ。もはや、中国の民主化はあり得ない。そのような結論に達した。それどころか、中国は米国へ挑戦すると言い出したのだ、米国は、民主化の期待を裏切られた上に、米国へ挑戦するという宣戦布告状態に置かれている。米国が、中国を警戒する理由にこと欠かないのだ。

     

     


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    先の世界銀行とIMFの年次総会では、米国への理解と中国批判が鮮明になった。中国が、これまで行なってきた数々の「悪事」が露見しているからだ。これに力を得たのか、米国はさらなる通商・軍事面での対中強硬策を取る気配を見せている。片や中国は、米中の全面対決回避を呼びかけるという対照的な動きを見せている。

     

    『ロイター』(10月12日付)は、「米政権、対中国政策を一段と強硬に、貿易・軍事などー大統領補佐官」と題する記事を掲載した。

     

    ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、貿易、国際問題、軍事、政治の分野で中国は行動を是正する必要があるとし、トランプ政権として対中国政策を一段と強硬にする考えを明らかにした。11日に収録されたラジオインタビューが12日に放送された

     

    (1)「ボルトン氏は、トランプ大統領は中国があまりに長い間、国際秩序を利用してきたにもかかわらず、それに立ち向かう米国民はあまりいなかったと考えていると指摘した。また、トランプ政権は中国を「今世紀の重要な問題」とみなしているとし、「中国はこれほど強硬な米大統領を見たことがない。中国は貿易、国際、軍事、政治などあらゆる分野で行動を変える必要がある」と述べた。その上で「アルゼンチンで来月開かれる20カ国・地域(G20)会合で中国の習近平国家主席がこれらの問題の一部について率直に話す意思を示すかもしれない」と話した」

     

    中国があまりに長い間、国際秩序を利用してきたにもかかわらず、それに立ち向かう米国民はあまりいなかった。ボルトン氏は、こう指摘しているが事実だろう。WTOの自由貿易原則で最大の利益を受けたが、国内は保護主義でガードしている。南シナ海は、米軍がフィリピンから撤退した直後に他国の島嶼を占領するなど、空き巣的な行動を繰り返している。

     

     

    (2)「南シナ海での最近の中国の行動については「危険だ」とし、米国は公海の自由を守ると言明。「南シナ海は中国の領土ではなく、今後もそうはならない」と述べた。また、中国は貿易やビジネスの国際規範に違反して経済力や軍事力を大幅に高めてきたとし、「米国の技術を盗むことが許されない状況に置かれれば、中国の軍事力は著しく後退し、中国が引き起こしているとわれわれが考えている緊張の大部分は緩和されるだろう」と指摘した」

     

    中国は、南シナ海で空き巣泥棒。技術は窃取という具合に、堂々と取引して得たものはない。全て「コソ泥」的な振る舞いを繰り返して現在に至っている。それでも、GDP世界2位を背景に、「既成事実」の積み重ねで一種の「免罪符」になって事後承認の形を狙っているのだろう。米国は、こういう不法行為を絶対に認めないと、踏ん張っている。

     

    一方の、中国は自らに非があることを自覚しているようだ。

     

    『ブルームバーグ』(10月15日付)は、「中国国営メディア、全面対決回避を米国に呼び掛け」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「中国国営の新華社通信は12日の論説で、厳しい言葉遣いをちりばめ、中国と米国の関係は岐路に立っていると指摘し、「容赦のない事実無根の中国たたきのレトリック」は米政府が「全面対決」を望んでいることを示していると主張。米国に対中攻撃をやめ、両国間の相違に対する解決策を見つけるため中国と協力するよう呼び掛けた。新華社は別の論説で、ペンス副大統領が「間違った議論」をしており、同副大統領による指摘は「虚偽でばかばかしい」と断じた。「ペンス副大統領は公平性と互恵性、主権の尊重を基礎とする関係を求めているが、この演説全体がその正反対だ」と反論した」

     

    中国の国営メディアは、具体的な内容もなく、ただ、「仲良くしよう」と言っているだけだ。米国が、「ハイ、そうしましょう」と応じるはずもあるまい。単なるポーズであろう。株式市場と為替市場の緊張感を緩和する効果を狙ったものであろう。

     


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    インドネシア・バリ島で週末に開催された国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会は、中国が掲げる巨大経済圏構想「一帯一路」への風当たりが強くなっていることを印象付けた。『ロイター』(10月14日付)はこう伝えている。

     

    「一帯一路」は、勃興する中国経済を背景にして、大きな野望を掲げていた。だが、この期待は中国経済の抱える問題から、規模縮小に向かわざるを得なくなった。これからどうなるのか。「一帯一路」の存続そのものに、関心が集まるほどになっている。

     

    その背景は、米中貿易戦争で中国経済が受ける被害である。この程度いかんで、経常収支の恒常的赤字化が想定されるからだ。すでに、今年1~6月期の経常収支が、2001年のWTO加盟以降、半期として初めて赤字となった。この状態が恒常化すれば、「一帯一路」などと悠長なことを言っている余裕はなくなる。「人のハエを追うより自分の頭のハエも追え」という批判を浴びるからだ。現に、中国国内でこういう意見を表明し、拘束された大学名誉教授がいる。

     

    前記の『ロイター』は、「色あせる中国、一帯一路、国際金融の舞台で矢面に」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国は一帯一路の構想をグローバル化推進の原動力と位置付けて脚光を浴びたが、保護主義台頭への不安が広がる中、輝きは褪せてきたようだ。国際金融協会(IIF)の前会長、チャールズ・ダラーラ氏は総会で、『中国はある意味で(国際貿易)体制に便乗しているとの見方が西側で広がっていると思う。1980年代の日本に対する西洋の見方を思い起こさせる。そっくりだ』と指摘した。こうした見方はトランプ政権に限らない。ラガルドIMF専務理事もバリ島での貿易会合で、知的財産保護や競争の確保、行き過ぎた市場支配的立場回避の重要性を訴えた。中国を名指しはしなかったが、いずれもトランプ政権がたびたび中国について指摘する課題だ」

     

    今年のIMFと世銀の年次総会は、中国への厳しい批判が集中した。中国はある意味で(国際貿易)体制に便乗しているとの見方が西側で広がっている。1980年代の日本に対する西洋の見方を思い起こさせる、とまで指摘された。1980年代の日本は、保護主義一辺倒で、現在の中国を彷彿とさせるものであった。それが、1985年の「プラザ合意」で、急速な円高への道が作られた。現在の円相場が1ドル=110円台になるきっかけになった。

     

    中国も日本と同様な「開国」が要請されている。ラガルドIMF専務理事は、バリ島での貿易会合において知的財産保護や競争の確保、行き過ぎた市場支配的立場回避の重要性を訴えている。このように、中国経済に向けられた批判・要請は極めて大きくなっている。GDP規模に見合った、市場開放が要求されるのは当然であろう。中国は、「中国製造2025」の産業高度化戦略が完成をするまで保護主義を貫く。そういう「言い訳」が、通るはずもないのだ。

     

    (2)「これまでトランプ氏の関税政策について集中砲火を浴びることが多かったムニューシン米財務長官は、今回の会合では従来より自信を増し、『自由で公正な相互貿易』を求めるトランプ氏の望みがより良く理解されるようになったと指摘。さらに、『(同盟国は)中国に圧力をかけるための連合ではない。中国に関連してほぼ共通の課題に直面し、志を同じくする人々の連合だ』と強調した」

     

    米国の主張への理解が、かなり進んでいることは事実だ。それだけ、中国への批判が高まっていることを意味している。この中国批判は、保護主義と一帯一路に向けられている。批判の共通項は、中国が余りにも自国の利益本位で行動するからだ。

     

    (3)「一帯一路に関する世銀のパネル討論会では、この構想に加わった小国の債務の持続性や、小国が中国との交渉力を欠いていることなどについて、中国高官らが質問責めにされた。ブルッキングス研究所のシニアフェロー、デービッド・ダラー氏はパネルで『一帯一路プロジェクトが極めて良いものだったとしても、低所得国にとっては過剰な債務を抱える深刻なリスクがある』と指摘した」

     

    世銀では、「一帯一路」のシンポジュームを開催した。こうなると、中国は逃げ場を失い「集中砲火」を浴びることになった。この席では、低所得国にとって過剰な債務を抱える深刻なリスクがあるとまで指摘されている。例の「債務漬け」を指している。

     

    どうして、こういう無慈悲なことが行えるのか。中国には、日本のODA(政府開発援助)のような被援助国中心の考えが存在しなかった。実際、「一帯一路」融資では商業銀行ベースの金利が課されている。インフラ投資の資金が、商業銀行ベースの金利では採算に乗らず、債務返済できるはずがない。中国は、それを承知で融資した。非難されるゆえんだ。

     

    習近平氏は、今年8月下旬に北京で行われた「一帯一路5周年記念会合」で、次のような演説をしている。「一帯一路は経済協力だけではない。世界の発展モデルや統治システムを改善する重要なルートだ」と明言、新たな国際秩序作りにも意欲を示した。だが、こういう「大風呂敷」を広げるたびに、先進国からは疑念を持たれている。中国が、一帯一路を世界覇権挑戦への足がかりにしようと狙っていると見なされるのだ。こうして、ますます「一帯一路」批判が強まる悪循環に陥っている。

     


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    中国の「一帯一路」」が、世界銀行のシンポジュームのテーマになるほど「時の問題」になったのは、弱小国への「債務漬け」だけでなかった。「一帯一路」プロジェクトの受注はオープンにするとの約束を破り、全体の85%を中国国有企業が受注したことへの批判である。

     

    これでは、仰々しく「一帯一路国際シンポジューム」という名前を付け、主要国を集めた会議など開く必要はないのだ。中国は、このように「一帯一路」を売名行為に使い、実際の受注は中国企業に請け負わせる裏工作をしていた。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2017年5月15日付)は、「『一帯一路』に大きく賭ける欧米企業」と題する記事を掲載していた。

     

    (4)「中国のインフラプロジェクト『一帯一路』は欧米企業にとって巨大なビジネスチャンスを提供する。ただしそれは、中国や対象地域で既に深い関係を築いている場合だ。プロジェクトの対象はアジア、アフリカ、欧州の国々にわたり、道路や港、パイプライン、その他のインフラに対する投資は9000億ドル(約102兆円)を超える見通し。請負業者や納入業者の選定に関して、中国政府からの情報が不足していることに、一部で批判も出ている」

     

    欧米企業は当初、「一帯一路」の巨大プロジェクトへの期待が大きかった。プロジェクトの実施範囲が、アジア、アフリカ、欧州の国々にわたり、道路や港、パイプライン、その他のインフラに対する投資は9000億ドル(約102兆円)を超える見通しであったからだ。この巨額プロジェクトに目を奪われて、日本のメディアも「一帯一路」に参加すべしと沸き立ったものだ。だが、中国の行動パターと中国経済の置かれた深刻な過剰生産実態から見て、受注を他国に渡す度量を持つはずがない。私は、こういう視点からブログで反対し続けた。結果は、中国の「独り占め」に終わって、世界中から総スカンを食っている。

     

    (5)「習近平国家主席は(2017年)5月14日に北京で開幕した『一帯一路サミット』で、中国が自由貿易を促進する姿勢を示し、新たに1000億ドル超を拠出することを表明した。2013年に立ち上げられた一帯一路プロジェクトは、中国と中央アジア、アフリカ、中東、欧州を結ぶシルクロードを復活させ、中国が同国からの輸出をしやすくすることが狙いだ。ハネウェル・インターナショナル、ゼネラル・エレクトリック (GE)、キャタピラーといった国際企業は、一帯一路プロジェクトに参加する計画を進めている。こうした企業は中国政府と確たる関係を築いており、恩恵を被る態勢にある」

     

    昨年5月のシンポジュームで習氏は、新たに1000億ドル超を拠出することを表明した。これで、国際企業はますます受注への期待を深めた。今になって見れば、全て中国の「空手形」であった。裏切られた感じであろう。

     

    中国は2017年、対外融資のために5000億ドルの債務を増やしている。経常収支の黒字減少も原因で、2017年の対外純資産残高は、それまでの2位(1位は日本)の座をドイツに譲り3位へと後退した。このように、中国の懐事情は悪化している。もはや、習氏の言うように大盤振る舞いできる状態でなくなった。今後は、ますますこの傾向が強まっていくはずだ。金融的に見て、「一帯一路」は縮小せざるを得ない事態に突入している。

     

    (6)「一部企業は、資金調達面では欧米企業よりも中国勢が有利だとみている。中国工商銀行 (ICBC)は、中国企業への融資を優先していると述べ、その多くは既に顧客だと説明。ロンドン拠点の幹部は『欧米の銀行より有利な取引を提示できる』と述べた。そのためシーメンスは、プロジェクト入札時には共同資金調達や協調融資を提案すると幹部は話す」

     

    欧米企業は、「一帯一路」プロジェクトの入札が、純粋な経済要因だけで決まると予想していた。実態は、全く異なっていたのだ。中国政府の「債務漬け」という閉鎖的な手法がとられ、オープンな入札などあり得なかった。商談は、「密室の取引」である。政治的経済的な力関係で決められたのである。これでは、欧米企業の参入できる余地などあろうはずがない。ならば、なぜ「一帯一路」国際シンポジュームなど開催したのか。見栄を張ったのであろう。

     

    米国は、中国による「一帯一路」戦略の歪みを是正させるべく、「一帯一路」に対抗する新組織を立ち上げることになった。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月3日付)は、「『一帯一路』に対抗、米が開発融資で新組織」と題する記事を掲載した。

     

    (7)「米議会では中国に対抗し、世界の開発案件で米国の役割を拡大するための立法化作業が大詰めを迎えている。法案は、あまり知られていない複数の政府機関を集約し、新組織として600億ドル(約6兆7000億円)の開発融資を行う権限を付与する内容だ。融資枠は、国際開発案件を従来担ってきた海外民間投資公社(OPIC)の倍以上の水準に引き上げた。トランプ政権も法案を支持しており、今夏には下院を賛成多数で通過。上院が成立に向けた最大の正念場となっている」

     

    米議会は有名無実化している複数の政府機関を集約し、新組織として600億ドル(約6兆7000億円)の開発融資を行う権限を付与する内容だ。金額的には少ないが、これを土台にして融資規模の拡大を目指すとしている。このニュースに対して、中国外交部報道官は、せせら笑いをして、「言葉だけでなく実行せよ」と挑発した。米国の底力を弁えない「寝言」に聞える。この中国は、日本へ「一帯一路」の資金的SOSを打っている。それを忘れた言動である。

     

    (8)「新たな機関は、幅広い権限を付与されており、世界の大型インフラ整備や開発プロジェクト向け融資で、中国と真っ向から対決する。法案成立への機運が高まっている背景には、すべての道を中国へと向かわせ、世界貿易の流れを塗り替えようと壮大な野心を抱く中国に対し、与野党問わず懸念が高まっていることがある。中国は2013年に一帯一路の計画を発表して以降、世界の高速道路や鉄道、港湾建設などに数兆ドルを投じる構えを見せている」

     

    中国が、数兆ドルに及ぶ資金を投入するというのは、単なるアドバルーンである。実現不可能だ。日本に資金援助を求めていることが、「一帯一路」破綻の前兆である。だが、中国は米国の覇権を狙っていることを明らかにした以上、中国に遅れをとる訳にはいかない。そういう「意地」が、米国を動かしている。

     


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    中国政府は、日本へ急接近する対日外交を展開している。10月末には安倍首相が、日本の首相として7年ぶりに訪中する。こういう日中融和ムードの中で「精神日本人」(精日)という現象が起こっている。中国政府は、締め付けに必死だ。

     

    こういう現象が起こっている背景は、次の点が考えられる。

     

       訪日中国観光客の激増である。今回の国慶節連休中、海外旅行先として日本が初めて1位になったように人気が高い。これまでの「反日教育」で刷り込まれてきた印象と、全く異なっている事に気付いたのだ。「日本再発見」である。これは、同時に中国政府への疑念を呼んでいる。

     

       「80後」(1980年代生まれ)や「90後」(1990年代生まれ)の間で、次第に「意識変革」が起こっている。これは、所得水準の上昇とともに自意識が高まって結果である。中国政府の一方的な宣伝に疑問を持ち始めている。その具体的な現象が、「精神的日本人」の登場である。

     

    最近も、「私は安倍首相の実子である」という投書が現れて話題を呼んだ。前回の「安倍首相は父親である」という投稿者は、警察に勾留された。今度は、「安倍首相の実子」の登場である。期せずして、こういう動きが見られることは、共産主義への強い拒絶感が社会の底流にあることを示唆している。現に、意識調査で「日本を好きだという」比率が4割にも増えている。これは、習氏への拒否感を間接的に表わしたものと盛るべきだろう。

     

    『レコードチャイナ』(10月15日付)は、「中国で増える精神日本人、言動がたびたび問題に」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「『北京青年報』(10月15日付)は、『精日(精神日本人)』と呼ばれる人々が中国でひそかに増えており、ことあるごとに問題発言を繰り返していると批判した。南京大屠殺記念館が11日、公式SNSで「南京大虐殺の生存者の1人である沈淑静(シェン・シュウジン)さんが94歳で世を去った」と伝えたところ、あるネットユーザーが『南京大虐殺はなかった』とコメントし、大きな波紋を呼んだ。このネットユーザーは過去にも同様の発言を繰り返していたという。南京市警察当局は調査に着手した」

     

    南京大虐殺を否定する言動は、日本にもある。この事件は、現実に存在した。日中戦争中の悲劇である。問題は、南京被害者の数が日中で大きく違っている点である。中国は、政治的に取り上げている。その結果、過大な被害者数を腰だめで発表し日本批判の材料に使っている。日本は、こういう不謹慎な姿勢を批判する。被害者の数を正しく認識して犠牲になった方々への謝罪と供養をする。こういう宗教的な姿勢と根本的な食い違いがある。

     

    (2)「記事は、『中国ではこうした発言は反社会的と見なされるが、ドイツではナチスを公に称賛する発言、米国では人種差別的な発言、日本では皇室批判がタブーなように、国によって公に発言が禁じられる内容は異なる』と紹介。その上で、『抗日戦争は中国にとって複雑で重大な意味を持つ歴史であり、革命に命をささげた先祖の思いを踏みにじり、日本の軍国主義を称賛するような行為には相応の法的代償が伴われるべきだ』とし、「『精日』が姿を現した場合には、ゼロ容認の姿勢で厳しく対処すべきだ」と主張している」

     

    南京虐殺事件は、日本軍と国民党軍との間で起こった。共産党軍(八路軍)は、この南京から遠い地域(陝西省延安)へ遁走していた。あたかも八路軍と日本軍との戦闘行為のように言いふらしていることは史実と異なる。日本が南京虐殺事件で、中国共産党の言い分に反発する点はこれだ。当事者でなかった共産党が、あたかも全面的に日本軍と戦ったように言いふらしているのは虚偽である。


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