韓国は、貿易依存度が58.35%(2020年)と高い経済である。それだけ、海外情勢の変化を大きく受ける位置にある。現に、昨年12月と今年1月は、多額の貿易赤字に陥った。一方、文政権の放漫財政で財政赤字は膨らんでいる。こうして、「双子の赤字」が顕著になっており、韓国経済は警戒姿勢を強めざるを得なくなった。
具体的には、ウォン安相場への警戒である。2月4日は危険ライン1ドル=1200ウォン台から切り返し、ウォン高になったものの油断禁物である。金融当局は、1月末の外貨準備高構成で、預金を277億7000万ドルへ増やしている。昨年12月末の111億3000万ドルから約2.5倍もの増加だ。ウォン投機が起きれば、即座に手持ちの預金で対応できる「臨戦態勢」である。
『中央日報』(2月7日付)は、「韓国経済、『双子赤字』の赤信号が灯った」と題する社説を掲載した。
(1)「韓国経済では見慣れない「双子赤字」が頭をもたげている。現政権がよどみなく財政を拡大し、その間財政赤字が増えても韓国国民はブレーキをかけることができず見守るしかなかった。それだけ警戒心が鈍っていたということだが、問題が深刻なのは貿易赤字が同時に現れているという点だ。1月貿易収支は48億9000万ドル(約5638億円)の赤字となり、昨年12月に続き2カ月連続で赤字が続いた。2カ月連続で貿易赤字は世界金融危機を体験した2008年以降14年ぶりに初めてだ。特に、財政赤字が悪化の一途をたどっている中、貿易赤字まで体験する状況は懸念される」
12月は、過去最高の輸出高であり意気揚々としていた。だが、国際商品市況の高騰を受けて輸入額が大きく跳ね上がり、貿易収支では多額の赤字に陥った。2ヶ月連続の貿易赤字は14年ぶりである。財政赤字も重なっており、金融危機再来への警戒姿勢が求められる。
(2)「双子赤字は、1980年代から米国が慢性的に体験している問題で、経済活力を深刻に傷つける原因に選ばれている。まして韓国は米国と違って基軸通貨国ではないうえに、天然資源もない。貿易が経済の主となる開放経済体制では極度に危険な状況だと言わざるを得ない。1997年通貨危機の時も貿易収支赤字が積もっていたが、警戒心がなかったため、結局は国家破産の寸前まで達した。それでも当時、救済を受けた決定的な背景は強固な財政だった。国内総生産(GDP)比国家債務比率は11.4%だった。この比率は今年50%を超えた」
「双子の赤字」は、1980年代の米国経済について回った形容詞である。米国は、これを自由変動相場制への切り替えで乗り切った。以降、この「双子の赤字」なる言葉は消えた。それが、韓国で復活するのでないかという危惧である。
(3)「国の財政が、黒字なのか赤字なのかを示す統合財政収支は、2019年から赤字に陥った。ついに統合財政収支の赤字は昨年100兆ウォン(約9兆6000億円)に迫り、慢性的な赤字状態から抜け出せずにいる。統合財政収支は一般財政に国民年金など社会保険財政を含んでいる。国民年金は現在では支出より収入がさらに多い。これを加えても統合財政収支が赤字というのは、国家財政が深刻な赤字状態に陥っているシグナルだ。近ごろ、毎年100兆ウォンに近い赤字国債を発行して国の借金が増えたためだ」
韓国は昨年、年金収支を加えた統合財政収支でも赤字である。文政権が、自らの経済政策の失敗を毎年100兆ウォンに近い赤字国債で糊塗してきた結果だ。文大統領は、韓国のためになることを一つも行わなかった希有の存在である。
(4)「新型コロナの補償まで重なり、得票に汲々とした政界はこれを気にしない。与野党大統領選候補は今年608兆ウォンに達する本予算も足りないとして、先月編成した14兆ウォン規模の補正予算を35兆ウォンに増額する競争に躍起になっている。洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相が「受け入れ不可」と主張しても力で押しつける態勢だ。共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)候補は「越権責任を問わなければならない」と洪副首相を圧迫し、国民の力の尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補は「(増額反対は)洪副首相の考え(であるだけ)」と追い詰めた」
3月9日の大統領選では、与野党候補が文大統領に輪を掛けた財政の大盤振る舞い発言をしている。
(5)「大統領選候補は、双子赤字という赤信号を直視しなければならない。サプライチェーンの大乱とウクライナ情勢が重なり、エネルギー価格が急騰して米国の利上げ予告で米ドルまで急騰している。このため、消費者物価が上昇し続け、貿易赤字が続く可能性が大きい。それこそ韓国経済が「風前の灯火」に置かれている。バラマキの競争をやめ、非常経済対策を講じる時だ」
韓国経済は、貿易依存度が高いことに現れているように、もともと脆弱な構造である。過去2回も通貨危機に見舞われた理由はここにある。頼みの日本との通貨スワップ協定は、切れたままになっている。その後、「日本から依頼してくれば考えてもいい」というトンデモ発言が飛び出し、日本は「絶対ノー」姿勢に固まっている。韓国は、日本に対して絶対に言ってはならない発言をしたのだ。その代償は大きい。