勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    テイカカズラ
       

    韓国は、貿易依存度が58.35%(2020年)と高い経済である。それだけ、海外情勢の変化を大きく受ける位置にある。現に、昨年12月と今年1月は、多額の貿易赤字に陥った。一方、文政権の放漫財政で財政赤字は膨らんでいる。こうして、「双子の赤字」が顕著になっており、韓国経済は警戒姿勢を強めざるを得なくなった。

     

    具体的には、ウォン安相場への警戒である。2月4日は危険ライン1ドル=1200ウォン台から切り返し、ウォン高になったものの油断禁物である。金融当局は、1月末の外貨準備高構成で、預金を277億7000万ドルへ増やしている。昨年12月末の111億3000万ドルから約2.5倍もの増加だ。ウォン投機が起きれば、即座に手持ちの預金で対応できる「臨戦態勢」である。

     

    『中央日報』(2月7日付)は、「韓国経済、『双子赤字』の赤信号が灯った」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「韓国経済では見慣れない「双子赤字」が頭をもたげている。現政権がよどみなく財政を拡大し、その間財政赤字が増えても韓国国民はブレーキをかけることができず見守るしかなかった。それだけ警戒心が鈍っていたということだが、問題が深刻なのは貿易赤字が同時に現れているという点だ。1月貿易収支は48億9000万ドル(約5638億円)の赤字となり、昨年12月に続き2カ月連続で赤字が続いた。2カ月連続で貿易赤字は世界金融危機を体験した2008年以降14年ぶりに初めてだ。特に、財政赤字が悪化の一途をたどっている中、貿易赤字まで体験する状況は懸念される」

     

    12月は、過去最高の輸出高であり意気揚々としていた。だが、国際商品市況の高騰を受けて輸入額が大きく跳ね上がり、貿易収支では多額の赤字に陥った。2ヶ月連続の貿易赤字は14年ぶりである。財政赤字も重なっており、金融危機再来への警戒姿勢が求められる。



    (2)「双子赤字は、1980年代から米国が慢性的に体験している問題で、経済活力を深刻に傷つける原因に選ばれている。まして韓国は米国と違って基軸通貨国ではないうえに、天然資源もない。貿易が経済の主となる開放経済体制では極度に危険な状況だと言わざるを得ない。1997年通貨危機の時も貿易収支赤字が積もっていたが、警戒心がなかったため、結局は国家破産の寸前まで達した。それでも当時、救済を受けた決定的な背景は強固な財政だった。国内総生産(GDP)比国家債務比率は11.4%だった。この比率は今年50%を超えた」

     

    「双子の赤字」は、1980年代の米国経済について回った形容詞である。米国は、これを自由変動相場制への切り替えで乗り切った。以降、この「双子の赤字」なる言葉は消えた。それが、韓国で復活するのでないかという危惧である。

     

    (3)「国の財政が、黒字なのか赤字なのかを示す統合財政収支は、2019年から赤字に陥った。ついに統合財政収支の赤字は昨年100兆ウォン(約9兆6000億円)に迫り、慢性的な赤字状態から抜け出せずにいる。統合財政収支は一般財政に国民年金など社会保険財政を含んでいる。国民年金は現在では支出より収入がさらに多い。これを加えても統合財政収支が赤字というのは、国家財政が深刻な赤字状態に陥っているシグナルだ。近ごろ、毎年100兆ウォンに近い赤字国債を発行して国の借金が増えたためだ」

     

    韓国は昨年、年金収支を加えた統合財政収支でも赤字である。文政権が、自らの経済政策の失敗を毎年100兆ウォンに近い赤字国債で糊塗してきた結果だ。文大統領は、韓国のためになることを一つも行わなかった希有の存在である。

     


    (4)「新型コロナの補償まで重なり、得票に汲々とした政界はこれを気にしない。与野党大統領選候補は今年608兆ウォンに達する本予算も足りないとして、先月編成した14兆ウォン規模の補正予算を35兆ウォンに増額する競争に躍起になっている。洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相が「受け入れ不可」と主張しても力で押しつける態勢だ。共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)候補は「越権責任を問わなければならない」と洪副首相を圧迫し、国民の力の尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補は「(増額反対は)洪副首相の考え(であるだけ)」と追い詰めた」

     

    3月9日の大統領選では、与野党候補が文大統領に輪を掛けた財政の大盤振る舞い発言をしている。

     

    (5)「大統領選候補は、双子赤字という赤信号を直視しなければならない。サプライチェーンの大乱とウクライナ情勢が重なり、エネルギー価格が急騰して米国の利上げ予告で米ドルまで急騰している。このため、消費者物価が上昇し続け、貿易赤字が続く可能性が大きい。それこそ韓国経済が「風前の灯火」に置かれている。バラマキの競争をやめ、非常経済対策を講じる時だ」

     

    韓国経済は、貿易依存度が高いことに現れているように、もともと脆弱な構造である。過去2回も通貨危機に見舞われた理由はここにある。頼みの日本との通貨スワップ協定は、切れたままになっている。その後、「日本から依頼してくれば考えてもいい」というトンデモ発言が飛び出し、日本は「絶対ノー」姿勢に固まっている。韓国は、日本に対して絶対に言ってはならない発言をしたのだ。その代償は大きい。

     

     

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    日韓関係は、冷却化したまま動きがない。日本国内では、新たな「嫌韓感情」を刺激されないためか、韓国産のラーメンや焼酎など手軽に買える商品の人気が高まっているという。目先雰囲気を変えて、スーパーなどで韓国産食品を買うという「購買動機」によるものだろう。第一、値段が安いという魅力がある。

     

    『韓国経済新聞』(2月6日付)は、「焼酎・チキン・即席めん・イカゲーム…日本に『韓国』があふれる」と題する記コラムを掲載した。筆者は、成川彩・元朝日新聞記者である。

     

    9カ月ぶりに日本に帰ってきて新たに感じたのは、以前よりもっと「韓国」があふれているということだ。人々の日常会話で飛び出してくる韓国関連の話題もそうだし、店で見る韓国関連商品も確かに多くなった。ネットフリックスなどを通じて韓国ドラマや映画を見る機会が多くなり関心は高まった。これに対し新型コロナウイルスの影響で実際に韓国に行くのは難しくなり、日本国内で韓国関連商品の流通が増えているようだ。

     


    (1)「代表的な商品が韓国焼酎「チャミスル」だ。韓国ドラマに焼酎がしばしば登場したり、特にドラマ『梨泰院クラス』の影響力が大きかった。主人公パク・セロイ(パク・ソジュン)が運営する居酒屋「タンバム」には焼酎がしばしば登場した。セロイと父親が焼酎を飲みながら「酒の味はどうだ」尋ね、セロイが「甘いです」と答えた場面も印象深い。私は韓国ドラマによく登場する酒がビールでもマッコリでもなく焼酎である理由が、時に甘く、時に苦いためだと考える。試験に合格した時、恋人と別れた時、上司に怒られた時などなど、さまざまな感情を感じさせる味だ」

     

    韓国で、濁酒を飲んだことはある。焼酎の味は知らない。ただ、日本の若者まで飲むのは、独特のムードがあって、韓国へ旅行したような気持ちになるのだろう。

     

    (2)「『梨泰院クラス』放映後に日本でチャミスルがよく売れているという事実は知っていたが、いまでは一般の町内のスーパーでもよく見られる。以前は韓国食品専門スーパーに行かなくては買えなかったのだ。若い女性が好みそうなマスカット味やイチゴ味など種類も多様だ。日本のチャミスルの広告も話題だ。小関裕太と佐久間由衣という日本の男女俳優が韓国ドラマをパロディしたものだ。韓国語と日本語を混ぜて女性がキュンとするような男性の行動を中心にドラマ予告編のように作った。日本で韓国焼酎は若い女性が好んで飲むかわいい酒としてイメージが変わったようだ」

     

    日本の20~30代は、「嫌韓」意識が希薄とされる。その背後には、こういう身近な商品を介する親近があるのだろう。

     


    (3)「焼酎だけではない。ディスカウントストアのドン・キホーテには、韓国食品コーナーができた。映画『パラサイト』に出てきた「チャパグリ」で有名になった「チャパゲティ」と「ノグリ」をはじめさまざまな種類の韓国の即席めんが陳列されており、コチュジャンやサムジャンなども売っている。もう韓国から買ってくる必要はなさそうだ。韓国式フライドチキン店も急増した。『愛の不時着』をはじめとする韓国ドラマの影響もあって新型コロナウイルス以降日本でもデリバリー文化が発達したためだ」

     

    『梨泰院クラス』や『愛の不時着』は2年前に放映されたドラマである。日本での人気は、根強く続いている。ネットフリックスで日本の人気作品を見ると、この2つのドラマがいまも10位以内に入っている。繰り返し、韓国ドラマをみながら、韓国産ラーメンと焼酎を飲んで、韓国ムードを楽しんでいるのであろう。パンデミックで、韓国旅行できないストレス発散かもしれない。



    (4)「韓国作品が日本で再誕生するケースも増えている。そのうちのひとつがソン・ウォンピョンの小説『アーモンド』の演劇公演だ。2~3月に東京で舞台が開かれる。小説『アーモンド』は2020年に日本で本屋大賞翻訳小説部門1位に選ばれ注目を浴びた。いまも書店に行けばチョ・ナムジュの『82年生まれキム・ジヨン』とともに目立つ場所に陳列されている。演劇『アーモンド』の脚本と演出を担当した板垣恭一さんに会い原作の魅力について尋ねた。板垣さんは小説『アーモンド』の表紙が気に入って本を買ったという。日本語版『アーモンド』の表紙も韓国の原作と同じように無表情な少年の顔の絵だ。感情表現不能症を病んでいる高校生の主人公ユンジェの顔だ」

     

    日韓関係対立で、共通する社会問題への解決などの話合いは途絶えているであろう。韓国ドラマは、社会的底辺の人々が直面する問題点を浮き彫りにしている。日韓で社会問題の共同解明する機会も減っているに違いない。文大統領の引き起した日韓対立の影響は、実に広範囲に及んでいる。

     


    (5)「昨年12月に大阪で放火事件が起きた。現場は病院で、患者と医師、犯人を含め26人が死亡する衝撃的な事件だった。1月には東京大学の前で受験生が凶器で刺される事件が起きた。無差別に人を殺したり傷つける事件のニュースを見て、私は『アーモンド』が思い出された。ユンジェの母と祖母が巻き込まれた事件と似ているように思えたためだ。板垣さんが「知らんぷりをする私たち」と指摘したように、多くの現代人が自分のことに忙しく、孤立した人を見ないふりをした結果としてこうした事件が起きるのではないかという気がした」

    日本でも悲惨な事件が起こっている。韓国では、20代の青年層による極端な選択(自殺)が増えている。2016年に比べ20年には32%も急増した。パンデミックによる社会的な閉塞感が、こうした痛ましいケースを増やしているに違いない。犯罪防止という点で、話合いの必要はあろう。

     

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    五輪競技の裏で何が?

    不味く高い食事の意味

    五輪予算が圧縮される

    崩れた「土地本位性」

    共同富裕論はイカサマ

     

    北京冬季五輪が2月4日に開会した。五輪史上、同一都市が夏・冬の開催地になったのは初めてである。立地的に、同一都市の開催が困難であることを示している。中国は、敢えてそれに挑戦した。習近平氏の民族主義がそうさせたのだ。目的は、国威発揚である。

     

    華北平原は、立地的に水資源が貧困である。地下水に頼るという悪条件下だ。この華北平原は雪が少ないことでも知られている。ここで、冬季五輪を開催するのだから、人工雪に頼らざるを得ない。貴重な水を競技用に使うことでもある。本来なら、食糧増産に向けられるべき水資源が、人工雪に化けたのである。環境専門家からは、批判を浴びている。

     


    五輪競技の裏で何が?

    北京冬季五輪は、過去の五輪と比べて次のような点で目立つ存在だ。

    1)各国首脳の出席者が少ないこと。

    2)選手村や報道陣の食事内容が粗末で値段が高いこと。

     

    これらの問題は些末な問題に見えるが、決してそうではない。中国の国際社会における閉塞状態が各国首脳の出席を減らしている。また、中国が財政的に逼迫化してきた前兆が、食事が高価で粗末になっている背景に窺える。従来であれば、安価でおいしい食事の提供になる筈。それが、予算不足で思わぬ結果を招いているのであろう。これでは、習氏が狙う国威発揚と逆行するであろう。

     

    以下、前記の2項目について取り上げる。

     

    1)各国首脳の出席者が少ないことは、隠しようがない事実だ。2008年8月、北京夏季五輪開会式に出席するため、中国を訪れたロシアのプーチン大統領は、胡錦濤国家主席(当時)に会うため、30分間も並ばなければならなかった。

     


    14年の歳月が流れ、今回の冬季五輪開会式に出席するため、北京を訪れたプーチン大統領に対する中国の態度は、破格の扱いになった。プーチン大統領は、習近平中国国家主席と単独で会談した。エネルギーや金融、宇宙など15分野にわたる協定に署名もしたのだ。プーチン氏は、前回の五輪で「お客様の1人」。今回は「主賓」へと格上げされた。それだけ、中国の外交関係が狭められていることを示している。

     

    14年前の開会式には、米国など68カ国の大統領・首相ら首脳が出席した。それに比べると今回は、3分の1にも満たない。G7首脳が揃って「外交的ボイコット」をしたことが大きく響いた。『ブルームバーグ通信』の報道によると、今回の五輪開会式には、21カ国の首脳らが出席予定であった。実際には、サウジアラビアとアゼルバイジャン2ヶ国が欠席した。結局、出席国は19ヶ国であり、そのうち強権国家(非民主主義)の出席は8ヶ国となった。

     


    強権国家のうち中央アジア5カ国は、中国政府による5億ドル(約570億円)の支援と新型コロナウイルスワクチン5000万回分提供の表明を受け、首脳参加を発表した。つまり、「経済支援」という土産がついたので北京冬季五輪開会式へ出席した。非強権国家のアルゼンチンのフェルナンデス大統領は、北京滞在中に中国との2カ国間の通貨スワップ協定延長を中国側に要請する目的で五輪開会式に出席している。出席した目的は、外にあったのだ。

     

    前記『ブルームバーグ通信』の計算によると、北京冬季五輪開会式に出席した国々のGDP合計は、世界の6%に過ぎないという。中国は、この国々を含めてせいぜいGDP1割強の国々から支持されているとも言える。こう見ると、習近平氏が力んでいる足下は、実に脆弱そのものと言える。世界GDPの9割弱を占める国々は、中国とは異なる価値観であることを示している。中国には、「真の友人」が少ないのだ。

     


    不味く高い食事の意味

    2)選手村や報道陣の食事内容が粗末で高いことは、端的に予算不足を示している。もっとはっきり言えば、中国当局は、経済的に食事まで気を配る余裕がなくなっていることだ。韓国紙『ハンギョレ新聞』は、食事の粗末さと値段の高いことに不満を漏らす記事を掲載した。

     

    「メインメディア・センター(MMC)構内のレストランでは、ロボットが直接食事を作り、給仕までして話題になった。ところが、すでに参加者の不満は尋常ではなくなっている。値段は高く食事の味は劣るからだ。あまりにひどく、昨年夏の東京五輪の際、競技場の各所に置かれていたピーナッツサンドイッチが恋しくなる」と、意外なところで東京五輪の気配りの良さを指摘するほど。どこが不満なのか。次の記事が示している。

     

    「豚肉丼を55元(約1000円)購入した。ご飯の量は多かった。問題は、肉が極めて少ない点だ。その肉も赤身はほとんどなく、骨が半分以上だった。おかずはザーサイだけ。この程度のご飯と肉では、900ウォン(約90円)のおにぎり2個程度に相当」と厳しい。つまり、豚肉丼は暴利を貪っているという批判である。不満はまだある。(つづく)

    次の記事もご参考に。

    2022-02-03

    メルマガ331号 習近平「3選阻む」要因噴出 経済崩壊・出生率急低下 勢いづく政敵

    2022-01-13

    メルマガ325号 「自縄自縛」習近平の敗北、コロナとバブル崩壊が追詰める中国経済

     

     

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    現在、TPP(環太平洋経済連携協定)加盟を申入れているのは、英国・中国・台湾である。韓国は、この4月に正式に申入れるという。

     

    英国は、今年に正式加盟が認められると見られている。中国は、国有企業問題がからんで加盟は絶望的。台湾は、日豪が「歓迎する」と発言している。日本との間では、福島産海産物の輸入禁止措置が障害になる。だが、台湾は自らこの制限措置を撤廃する意向だ。

     

    韓国は強気である。福島産海産物問題を撤回しないと力んでいる。それならば、TPP加盟を諦めるべきだろう。日本の存在を甘く見て強気を装っているが、いずれ日本の強い拒否感に遭遇するのは必至である。そのときは、「尻尾」を巻いて福島産海産物問題を撤回するはずだ。

     


    『日本経済新聞 電子版』(2月6日付)は、「TPP拡大へ、加盟希望4カ国・地域の狙いは?」と題する記事を掲載した。

     

    TPP入りに向け、昨年9月に加盟申請を行った台湾。中国に1週間ほど申請で先を越され、一時はショックも隠せなかった。だが加盟に向けた強い意欲は変わっていない。中国からの統一圧力が強まるなか、経済的に大きく依存する中国からの自立は喫緊の課題で、台湾はその切り札にTPP加盟を位置づける。

     

    (1)「台湾は輸出立国型経済であり、輸出の4割強が中国向けで、他国を圧倒する。中国無しに台湾経済は成り立たないのが現状だ。これを解消しようと、台湾は以前から米国との自由貿易協定(FTA)締結を悲願としてきた。米国とFTAを結べれば、中国に配慮していた他国も遠慮が無くなり、台湾とFTAを結ぶ国が増えると考えた」。

     

    台湾は、対中経済依存度を下げるためにもTPP加盟が必須条件である。ベトナムも、「脱中国」を目指してTPPの原加盟国になった。中国が、どれだけ危険な貿易相手国かを例証している。

     

    (2)「台湾は長年、住民の反対で米国産豚肉の輸入を大幅制限し、米との通商交渉も長年進まなかった。ただ、ようやく蔡英文(ツァイ・インウェン)総統が英断を下し、21年1月に同豚肉の大幅解禁を実現させた。12月にはその是非を問う住民投票も行われたが、否決されることなく、継続的な米国産豚肉の輸入が決まった。これは米台間の通商問題でTPPに直接の関係はないが、加盟国は台湾がどんな判断を下すのかを注目していた」

     

    台湾は、国内市場の開放について、これまで拒否意向が強かった。それが、改まらない限り、TPPによる市場開放など不可能であったからだ。その懸念は、住民投票によって脱中国の重要性が認識され解決した。

     


    (3)「仮に米国産豚肉の輸入が再び制限されれば、台湾のTPP入りは絶望的だった。日本との課題も解決に向かいそうだ。台湾は東日本大震災以降、福島県など5県の農産品の輸入を全面禁止にし、TPP加盟の大きな障害になるとみられていた。だが今春までには解決に向かうとの観測が出ており、この障害は取り除かれる可能性がある」

     

    台湾は、福島産海産物などの輸入禁止措置を行なっている。これが、今春までには撤廃される見込みという。そうなれば、日本も台湾のTPP加盟を強力に後押しできる。

     

    (4)「韓国は4月中にTPP加盟を申請する。輸出が国内総生産(GDP)の5割を占める韓国は、FTAを結んだ地域を比喩的に「通商領土」と表現する。TPPは貿易立国としての「通商領土」拡大に不可避の選択として、農業団体などの反発覚悟で申請に踏み切る。韓国にとってTPPは自由貿易相手国の「面」的拡大だけでなく「質」を高める試金石でもある。韓国は2012年に米国、15年に中国とのFTAを発効させた。ただ、米中とのFTAに集中したことで、ほぼ同時期に交渉が大詰めを迎えていたTPPに乗り遅れた」

     

    韓国がTPPへ加盟しなかったのは、日本製品の流入を恐れたのだ。その後、福島産海産物輸入規制をしているが、台湾が撤廃すれば規制について何ら正当性がなくなる。それでも、韓国は屁理屈を並べるだろう。そうであれば、日本は韓国をTPPに加盟させる必要はない。拒絶することだ。

     


    (5)「韓国加盟の課題は日本の説得だ。TPPは全加盟国の同意が必要だが、日本政府内には韓国がTPPの求める高い水準を満たせるかどうか懐疑的な見方がある。日韓関係の悪化も影を落とす。元徴用工問題を巡る政治的な対立は日本による韓国向け輸出管理強化、韓国による日本の世界貿易機関(WTO)提訴と通商問題に波及した。韓国では5月に新政権が発足する。韓国のTPP加盟の可否は新政権の日韓関係の改善意志とも関わってきそうだ」

     

    日本が、韓国を拒否する理由はいくらでもある。この際、これまでの「反日」への代償を求めるべく、すんなりと加盟させることはない。日本の「有難み」を徹底的に知らしめることで、今後の反日の芽を摘むことが必要である。「一札」取っておくべきだろう。TPP加盟をめぐる交渉では、そのくらい日本は強気に対応することが必要である。

     

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    一昨日の北京冬季五輪開会式で、中国国旗入場で韓服を着た女性が登場した。これは、韓国が中国の「属国」であることを示すような印象を世界に与えるものだ。韓国政府は、これに対して抗議しないという。日本への対応と180度の違いである。文政権は、中国に何も言えない体質を示している。

     

    昨年夏の東京五輪では、竹島が聖火リレーの地図に描かれていたことを理由に、ボイコット騒ぎをした。また、韓国選手団の選手村で、「臣にはまだ5000万国民の応援と支持があります」と書かれた垂れ幕を掲げて問題化した。このように、日本へは大騒ぎできても中国には沈黙。余りにもかけ離れた姿勢である。

     


    『中央日報』(2月6日付)は、「『韓服議論』の質問に…抗議しないという韓国文化体育観光部長官『独島問題とは違う』」と題する記事を掲載した。

     

    「東京五輪での独島(ドクト、日本名・竹島)問題とは違う」。文化体育観光部の黄熙(ファン・ヒ)長官が4日に北京五輪開会式での韓服をめぐる議論に対し遺憾の意を示した。黄長官は中国に対して公式な抗議はしないという意向を明らかにした。強硬な態度を見せた昨年の東京五輪とは異なる立場を見せており議論が予想される。

     

    (1)「黄長官は5日、北京五輪メインメディアセンターを訪問して韓国取材陣と会った席で、開会式での韓服をめぐる議論に対する質問を受けた。黄長官は「中国側では朝鮮族を少数民族のひとつと見たが、朝鮮族自治区があるのは事実だが大韓民国は世界文化の中心地であり世界10位圏の経済大国だ。少数民族としてもし転落する恐れがあるならば両国関係にも役に立たない誤解の素地が生じかねない」とした」

     


    韓国が、世界10位圏の経済大国であるとすれば、中国の国旗入場式に韓服を着た女性の登場は好ましいものでない。韓国は、プライドにかけても抗議すべきだろう。こういう弱腰が、中国をますます増長させるのだ。これで、韓国国内の中国嫌いが増えるであろう。それは、大統領選で与党候補がさらに不利となるに違いない。

     

    (2)「4日に北京国立競技場で開かれた北京五輪開会式では、中国内56の民族代表が中国国旗の五星紅旗を伝達するパフォーマンスが繰り広げられた。その中には朝鮮族を象徴する韓服を着た女性が含まれた。合わせて24回目の冬季五輪を迎え、二十四節気を紹介する映像にも韓服を着た人物の映像が含まれた。映像の内容で直接的に示したものではないが、最近の中国内で韓服を「中国を起源とするもの」と主張する「韓服工程」ともあいまって議論が起きている」

    中国は、意図的に行なっている。中国内で韓服を「中国を起源とするもの」と主張する意見が強まっていることと重ね合せれば、五輪開会式の場で「公式化」させる狙いであろう。こういう中国の意図が分らず、韓国は「へらへら」笑って見ているのだ。



    (3)「黄長官は、「東京五輪での独島問題に比べて消極的」という質問には「領土の部分とは違うようだ。揺さぶることはできない部分だ。侵略した国が謝罪し配慮して申し訳なく思わなければならない相手に問題の地域で紛争を起こすのは容認できない部分」と答えた。昨年開かれた東京五輪で組織委員会は聖火リレーの地図に小さな点で島根県の上に独島を竹島として表記した」

     

    黄長官は、苦し紛れの答弁をしている。韓服は朝鮮民族のシンボルである。そのシンボルが、中国のものとされている。竹島は、明らかに日本領である。米国が、サンフランシスコ講和会議で認めている。つまり、日本のシンボルである。韓国は、この日本のシンボルを横取りしている。韓国は、中国へは抗議せず、日本へは間違った主張をしてことを荒立てている。外交感覚がずれているのだ。



    (4)「黄長官は、「気分のまま話すことはできない。中国との関係でさまざまな国益に対する部分も考えなければならない。国民世論と感情も考慮しなければならない困難もある」と話した。続けて「中国が五輪開会式を通じて何を伝えようとしたのかは理解する。だが重要な近隣諸国である韓国を考えてもっと細かく気を遣っていたならば、という残念さがある」とした。黄長官は公式な抗議の意志に対しては「そうした必要性までは考えていない。ただ両国に誤解の素地がある部分に対しては中国のスポーツ相など政府関係者らと会った席で韓国の国内世論などに言及する必要があると考える」とした。

    下線部分は、まさに語るに落ちたというべきである。韓国は、中国との貿易による経済的な利益を考えれば、強く出られないと言外に示唆している。ならば、日本に対してはどうか。半導体の主要3素材を日本製品へ依存している。それにも関わらず、大々的な反日不買運動を行なっている。韓国は、中国に対しては卑屈になり、日本へは傲慢な振る舞いをする。日本が、韓国へ違和感を持つのは当然であろう。

     

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