勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    2月24日未明に始まったロシアの、ウクライナ侵攻作戦はロシア軍優位の下で進んでいる。ソ連軍は、首都キエフまで至近距離に迫っている。ロシアの陸上兵力は、全体で約85万人に対し、ウクライナ兵力は4分の1以下の約20万人に過ぎない。ウクライナの劣勢は明らかだ。ウクライナのゼレンスキー大統領は25日、これ以上の犠牲を出さないためにもプーチン氏との交渉を希望すると語った。

     

    ウクライナ大統領府のポドリャク顧問は25日、ロイターに対しウクライナは平和を望んでおり、北大西洋条約機構(NATO)に関して中立な立場などについてロシアと対話する用意があると述べた。

     


    一方、中国の習近平国家主席は25日、ロシアのプーチン大統領と電話会談し、ウクライナ危機について、ロシアがウクライナと対話を通じて解決を目指すことを支持すると述べた。プーチン大統領は、ウクライナとハイレベル協議を開催する意向があると述べたもの。中国国営テレビが伝えた。

     

    こうして、ロシアのウクライナ侵攻2日目で双方が、交渉のテーブルに着く可能性が出て来た。これ以上の犠牲者を出さないためにも、早急な「対話」実現が待たれる。プーチン氏は、最終的にウクライナへ何を要求するのか。

     


    『毎日新聞 電子版』(2月25日付)は、「ロシアの狙いは『斬首作戦』か、徹底抗戦のウクライナ 支援求める」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナに侵攻したロシアは3方向から進撃し、一部部隊がウクライナの首都キエフに侵攻を始めた。作戦の狙いはどこにあるのか。ロシア軍によるウクライナへの侵攻が始まった24日、米国防総省高官は、ロシアのプーチン大統領の目的について「ウクライナの現政権を排除し、独自の統治方法を導入することだ」と分析。キエフを制圧し、政権トップをすげかえる「斬首作戦」を進めているとの見方を示した。

     

    (1)「プーチン氏は24日の演説で、作戦の目的を「ウクライナの非武装化」と説明。ペスコフ露大統領報道官も同日、「これはウクライナが最近、外国のおかげで増強してきた軍事的な潜在力を中和することだ」と記者団に語り、「この目的は達成されるだろう」と述べた。さらにプーチン氏はウクライナ政権の「脱ナチズム化」にも言及。2014年の親露派政権崩壊後にウクライナに成立した政権を「ナチスト」と呼んでおり、ゼレンスキー政権を武力で崩壊させることを狙っているとみられる」

     


    ロシアは、ウクライナに傀儡政権をつくる目的である。選挙で選ばれた政権でなければ正統性を持ち得ない。そういう常識も分らないのであれば、ウクライナ問題は簡単に片付かないであろう。ロシアにとって、新たな難題を抱え込むことになる。

     

    (2)「米国防総省も、ロシア軍の最終目標をキエフの制圧とみている。キエフはベラルーシとの国境から約100キロしか離れておらず、24日にはキエフ郊外の空港周辺にロシア軍の空挺(くうてい)部隊が到着。25日も激しい戦闘を続け、キエフへの侵攻を始めた。一方、ウクライナ軍は各地で激しい抵抗を繰り広げている。ザルジヌイ総司令官は24日、「ロシア軍の電撃戦は失敗した」と侵攻を食い止めていることを強調。ゼレンスキー大統領も初日の戦況を「膠着(こうちゃく)状態」と表現した」

     

    ロシア軍は、キエフまで20キロと迫っている。ウクライナが、交渉のテーブルに着く気持ちに傾いたと見られる。

     


    (3)「ただ、ウクライナ軍がどこまでロシア軍の進撃を食い止められるかは未知数だ。ウクライナは近年、米欧から軍事援助を受けてきたが、供与された武器は歩兵の携帯型の対戦車砲や対空ミサイルなどが中心。近代化され、航空戦力も豊富なロシア軍が戦力で勝っているのは明らかだ。ゼレンスキー氏は25日、「我々は孤独の中で国を守っている。強力な戦力を持つ世界(の国々)は遠くから見守っているだけだ」と国際社会に制裁にとどまらない支援を呼びかけた。一方で「我々は自分たちの土地で自らの正義のために戦っている。我々の意志をくじくことはできない」と述べ、徹底抗戦する意志も改めて表明した」

     

    ゼレンスキー氏は、徹底抗戦の姿勢を見せながらも「交渉」という余地も残している。

     


    (4)「米政府高官は、「第二次世界大戦以来、このような形の国家対国家の戦争を見たことがない。我々の予想している展開になれば、多くの血が流れる。今後、欧州の安全保障に長期間の重大な影響を与えるだろう」と語った」

     

    キエフの市街戦になれば、ロシア軍は長期間の戦いと相当の犠牲者を覚悟しなければならない。ウクライナが、交渉の意思がある以上、ロシアがそれに応じるのは「渡りに船」である。

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    韓国は、ロシア軍のウクライナ侵攻に対する経済制裁について混迷している。ロシアへの抗議声明を出したものの、具体的制裁案がないのだ。韓国はかつて、朝鮮戦争で北朝鮮からの侵略を受け、国連軍の支援を受けた国である。その韓国が、ロシアを恐れて西側諸国と共同歩調を取って独自制裁できないのだ。

     

    『中央日報』(2月25日付)は、「『国際社会の制裁に参加』と言いながら対露『独自制裁』では線ひいた韓国政府」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのウクライナ侵攻が現実化した中で韓国政府が24日、国際社会の制裁に参加すると明らかにした。だが、その一方で独自制裁はしないと線を引く自己矛盾的な立場を見せた。青瓦台(チョンワデ、大統領府)はこの日午後、文在寅(ムン・ジェイン)大統領がウクライナ事態に関連した徐薫(ソ・フン)国家安保室長の報告を受けて「国際社会の責任ある一員として経済制裁を含む国際社会の取り組みに支持を送り、これに参加していく」と述べたと伝えた。だが、外交部当局者は直後に記者団と会い、「一部国家の場合は金融制裁を含む(対ロシア)独自制裁を考慮しているが、我々はこれを考慮していない」と説明した。

     


    (1)「ロシアに対する非軍事的対応としては制裁を科すことが最も強力な方案だ。ロシアが常任理事国として拒否権を行使する国連安全保障理事会は動くことができないので、各国が独自制裁に出るのが事実上唯一の方法だ。国際社会の制裁に参加するとしながらも独自制裁はしないという政府の立場は辻褄が合わないとの指摘があるのはこのためだ。これについて外交部当局者は「韓国は国際経済上の地位もあり、積極的に制裁に参加するというメッセージを出すことだけでも大きな意味がある」と話した。「政府が参加する制裁措置に対しては関連部署で検討をしている。また、このような制裁措置によって経済と韓国企業に発生しうる問題と被害を最小化する方法もあわせて模索し、必要な支援をしていくという立場」としながらだ」。

     

    下線部のように、韓国外交部には誠意の一片も感じられない「口先外交」そのものである。朝鮮戦争で、共産主義の蹂躙を受けた韓国政府が、取るべき態度であるまい。

     


    (2)「2014年クリミア半島事態とは違い、今回のウクライナ事態は直接的な軍事力を動員した一方的な現象変更の試みであり、事実上の「戦争」に該当する。青瓦台国家安保会議(NSC)常任委員会もこの日午後の会議の後、「ロシアが国連憲章をはじめとする国際法に違反した」と明らかにした。その一方で独自制裁とは努めて距離を置こうとする韓国政府の態度を巡り、米国とロシアという二兎を追おうとして、かえって政府が強調してきた「国際社会の責任ある一員」とは異なる姿に映りかねないとの憂慮も出ている。また、いくら内容の側面では米国が主導する制裁を忠実に履行するのが狙いだとしても、独自制裁の発表という形式を選んで自ら拘束力を付与することとは対米メッセージという次元において、その重みに違いが生じざるを得ない」

     

    韓国は、朝鮮李朝末期の外交も「日本・中国・ロシア」の三ヶ国に別れて統一できなかった。今回も「二股外交」を行なおうとしている。朝鮮民族の哀しいまでの「強者依存症」が出ている。民族特性と言えばそれまでだが、土壇場までソロバンを弾いている。正義はないのだ。

     


    (3)「実際、リンダ・トーマス=グリーンフィールド国連駐在米国大使は23日(現地時間)、国連総会の演説でロシアのウクライナ侵攻への対応に関連して「折衷案はない」と強調した。「(ロシアとウクライナの)双方に緊張を解くよう求めることは、ロシアを黙認することにすぎない」としたからだ。ウクライナの主権と領土保全を支持しながら、ロシアに対する独自制裁までしないという韓国の立場には、痛烈な指摘と聞こえる部分だ。ウクライナの首都キエフがミサイル攻撃を受けているにもかかわらず、韓国政府が相変らず現状況を「全面戦争」と規定しないことに対しても批判が提起されている」

     

    下線部は、直接的には中国を批判している。中国は、ロシアとウクライナの双方に深い関係を持つ。そうならば、和解仲介に出ても良さそうだが出ないで、「洞が峠」を決め込んでいる。双方に「いい顔」をしようという狙いだ。韓国も、この線を狙っているのだろう。

     

    (4)「韓国外交部は、ロシア侵攻直前のこの日午前、資料を通じて制裁参加の意向を明らかにしながらも前提条件としてロシアの「全面戦争」敢行に言及した。だが、今まさにロシアが全面戦争に着手したというのに、政府は状況規定自体を避けた。外交部当局者は、「全面戦争がどのような状況であるかに対して必ずしも定義する必要はないと考える」とし、「全面戦争状況になれば国際社会とともに制裁措置に参加するという意向を明らかにしたことが重要だ」と話した。「制裁参加の条件で全面戦争に言及しながら、なぜ現状況が全面戦争かどうか判断を下さないのか」という質問に、「ウラジーミル・プーチン大統領の特別軍事作戦決定発表に続く一連の状況は『武力侵攻』が発生した状況とみている」と述べるにとどまった」

     

    韓国の本心は、対ロ制裁をしないで「口先メッセージ」に止めようとしている。米国は、こういうずる賢い韓国外交を見て、どのように判断するだろうか。韓国は、中国の台湾侵攻の際も同様の姿勢であろう。米国は、この韓国と同盟を結んでいる。相手を間違えた感じが強いのだ。 

     

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    韓国は、米韓軍事同盟を結びながら「二股外交」を平然と行なっている。ロシアによるウクライナへの軍事圧力にも無関心を通してきた。だが、ロシアはついに軍事侵攻に及んで、これまでの「無関心」を脱し、西側の経済制裁に加わることになった。それも、「嫌々ながら」という姿勢である。

     

    文政権が、経済制裁に慎重な姿勢であった理由は、ロシアから経済問題で不利益を被ることを警戒してきたと説明されている。だが、これは「言い訳」に過ぎない。西側諸国は、自国への跳ね返りがあっても覚悟の上での制裁参加である。韓国は、「親中ロ」という外交路線を堅持しているので、これが壁になっていたことに違いない。

     


    『中央日報』(2月24日付)は、「米国の要求が強硬だったか、半日で『対露制裁の可能性もある』と立場変えた韓国外交部」と題する記事を掲載した。

     

    新北方政策などを理由に米国主導の対ロシア制裁に参加することは困難としていた文在寅(ムン・ジェイン)政府が半日で、「ロシアが全面戦争を敢行した場合、韓国も制裁に参加せざるを得ない」と立場を変えた。ただし、明確に「制裁をする」というよりは、避けられないことを強調することに傍点を打った。

     

    (1)「韓国外交部は24日午前11時22分、出入記者団に携帯メールを送り、「国際社会の度重なる警告にもかかわらず、ロシアが何らかの形で全面戦争を敢行した場合、韓国政府としても輸出統制など制裁に賛同せざるを得ないことは明確にする」と立場を表明した。予告になかった公示だった。わずか半日前の22日(現地時間)、外交部当局者は、フランス・パリの駐在特派員と会い、韓国政府が独自制裁を加える可能性を問われると、ロシアが新北方政策の核心国家のため「現実的に難しいと思う」とし、「制裁に参加しても経済的被害を最小化しなければならないが、容易ではない」と述べた。事実上、制裁に参加できないという立場だった」

     


    韓国は、ウクライナが不法な侵攻を受けることへの同情よりも、ロシアからの経済的利益を手放したくないという、極めてエゴ丸出しの姿勢である。それが22日の外交部の公式態度であった。EU諸国に聞かれたら顔から火が出るほど恥ずかしい姿勢であったのだ。韓国は、全てが経済的利益追求である。日韓関係がこじれているのも、韓国の「賠償金」欲しさに起因することを改めて思い起こさせる。韓国は、金、金である。

     

    (2)「このような立場からの変更は結局、米国の強い要求のためと見られる。ホワイトハウス高官は22日(現地時間)、制裁について「我々は欧州連合(EU)、英国、カナダ、日本、オーストラリアなど同盟国およびパートナーと協議し、一日足らずで最初の制裁を発表した」と説明した。外信はシンガポールと台湾も制裁に参加すると報じた。米国の主要同盟国の韓国だけが抜けていた。同盟及び友邦との連合戦線の形成が、米国が構想する「対露スクラム」の核心だが、安保同盟の韓国の不在は亀裂と認識されざるを得ない状況だった。特に米国が韓国政府に代理制裁賛同関連協議を要請したのは、ここ数日間のことではないという。制裁構想初期から協議してきたということだ」

    ロシアが、軍事行動に踏み切っている以上、西側諸国がこれに制裁を加えて、ブレーキを掛けさせるのは当然の権利である。韓国は、この権利行使へ「嫌々ながらの参加意思表明」である。文政権をここまで優柔不断な姿勢にさせているのは、「親中ロ」という外交姿勢がもたらしているに違いない。

     


    (3)「しかし、政府は消極的立場で一貫していた。22日、ウクライナ事態と関連した公式の立場を表明し、「ウクライナの緊張が高まっている状況について深刻な懸念を表明する」(外交部報道官の声明)と言うに留めた。「ウクライナの状況」を懸念しただけで、国連憲章違反と見なすことのできるロシアの軍事的措置については糾弾や遺憾の表明さえしなかった。外交部当局者は、制裁への賛同に関する相次ぐ質問にも「協議中」という答えばかりオウムのように繰り返した。翌日、米国がこれをロシアの「侵攻」と規定した後、再び立場を問い合わせたが、外交部は「既存の立場と変わりない」とした」

     

    韓国のこういう煮え切らない態度は、米同盟国として疑問符のつくものである。文政権が、残り任期3ヶ月足らずで見せたこういう「洞が峠」的姿勢は、今後の外交史で語り草になろう。決断できない文在寅を象徴している。


    日本に対して高姿勢を貫いた文氏は、思想信条が「反日米」であるから悩むことはなかった。自らの信条に従って暴走できたのでる。だが、文氏の「親中ロ」心情からいって、ロシアへの経済制裁は「断腸の思い」なのだ。文氏は個人的な心情に囚われ、まともな外交ができない人間である。 

     

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    中国が、年金原資の確保対策で懸案の定年延長1年に踏み切る。と言っても全国一律ではない。江蘇省で3月からの実施である。

     

    日本では、定年延長について歓迎ムードである。現役として働くことが生きがいであるからだ。中国では、定年延長で年金受給が遅れて「損する」という認識である。若者も反対である。就職難が解決しないという理由だ。就職難の中国だけに、早く就職したいという気持ちが強くなるのだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月24日付)は、「中国、3月から定年延長 第1弾は江蘇省 少子高齢対策」と題する記事を掲載した。

     

    中国で3月、定年退職の年齢引き上げが始まる。第1弾として沿岸部の江蘇省が着手する。本人の申請が前提で、延長期間は最短で1年だ。働き手を増やし社会保障負担を抑える狙いだが、市民には「年金の受け取り開始が遅れるだけだ」との反発も多い。当局は本人の意向を重視する形で、懸念を払拭したい考えだ。

     


    (1)「中国の退職年齢は国務院(政府)の法規で、原則として男性が60歳、女性幹部が55歳、女性従業員が50歳と決まっている。江蘇省は国務院の法規変更に先立ち、独自に定年退職の延長制度を設ける。江蘇省は上海市に隣接し、古くから製造業などが発展した地域だ。2020年末時点の人口は8477万人で、中国全体の6%を占める。江蘇省政府の通知によると、基礎年金の受給額は同省都市部の平均月給や本人の待遇、社会保険料の納付期間で決まる。定年退職の時期を引き延ばせば、勤務年数とともに納付期間も長くなり、退職後に月々受け取れる年金が増える公算が大きい」

     

    強権政治の中国が、不思議にも定年延長だけは手を焼いている。国民が、「銭計算」になるとシビアになり、鋭い政府追及姿勢が予測される結果であろう。「平均寿命延長」に見合った、定年延長というほど神経を使っている。

     


    「定年延長で年金が貰えなくなるから損」という認識が不思議である。給料の方が年金額より上であろうから、働いた分は得になるはずだ。だが、何も働かずに年金を受給する方が幸せなのだ。中国人の勤労観は、日本人と全く異なっている。

     

    (2)「年齢の引き上げは一律でない。定年退職の延期は本人の申請と勤め先の同意が前提だ。勤務延長の期間が1年以上であることを条件に、個人の判断に委ねる。退職年齢引き上げへの反発が少なくないためだ。中高年層では「保険料の支払期間が延びるだけで、年金の受取総額が減る」との懸念が消えない。祖父母が共働きの夫婦にかわって孫の面倒をみる現代中国の子育てスタイルも、定年退職の延長議論を難しくしている。江蘇省は退職年齢に到達した働き手の自主判断を尊重することで、制度導入のハードルを引き下げた格好だ」

     

    祖父母は、定年後に孫の世話が待っている。だから、定年を延長されると孫の面倒が見られなくなるので反対、という人もいる。そういう人は、定年を延長しなくてもいいであろう。そこは、個人の選択である。中国は、家族のつながりが深く、孫を保育園に入れるという習慣が一般化していないのか。核家族という概念とほど遠いようだ。

     

    (3)「定年退職を遅らせる人がどのくらい申し出てくるのか予測が難しい。働き手の確保や社会保障負担の抑制といった効果も想定ほどには高まらない可能性がある。中国も急速に人口の少子高齢化が進み、働き手の減少傾向が続く。21年末時点の年齢層別人口を10年前と比べると、16~59歳は5%減ったが、60歳以上は45%増えた」

     

    中国は、21年から超高齢社会へ移行している。22年からは、人口減社会である。「過剰人口」と言われた中国が、急速に「人口縮小」状態へ移行する。人口老大国へ変貌するのだ。

     


    (4)「22年には中国版「団塊世代」の大量退職が始まる。多数の餓死者を出した大躍進政策後の1962年から出生数が大幅に増えたためだ。中国人力資源・社会保障省の予測では、2021~25年の退職者が4000万人を超える一方、生産年齢人口は3500万人減る。中国政府は25年までの5カ年計画で「法定の退職年齢を徐々に引き上げる」との方針を掲げている。江蘇省のほかの地域でも、市民の懸念に配慮した制度設計によって、定年延長が広がる可能性はある。中国政府が、全国規模で定年延長への理解が深まったと判断できた段階で、法規で定めた退職年齢を引き上げるとの見方もある」

     

    2021~25年の退職者が、合計4000万人を超える。年間平均で800万人も増える計算だ。生産年齢人口は3500万人減る。年間平均で700万人の減少。働き手が減って退職者が増える。これだけ、年金財源は減っていく計算になる。政府が、定年延長に躍起となる背景がよく分かる。だが、共産党無謬論が災いして、「年金財源危機」を大ぴらに叫べない弱みもあるのだろう。

     

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    2月24日未明、ロシアがウクライナへ軍事行動を開始した。この侵攻作戦は、いかなる目的を持っているのか。ロシアは、ウクライナに親ロ派で米国の影響を受けない新政権の樹立を狙っていると、ロシア与党の幹部議員が語った。ロシア下院国際問題委員会の第1副委員長を務めるニコノフ議員は、「ウクライナ新政権にはロシアとの建設的な関係を支持することを求める」と国営テレビで述べ、「その実現に必要なことは何でもする」と主張した。以上は、『ブルームバーグ』(2月24日付)が伝えた。

     

    ロシア国内では、この無謀な戦いの先行きを懸念して株価の暴落とルーブルの急落を招いている。ロシアでもこの侵攻が招く経済制裁によって、混乱することを予感しているのだろう。

     


    『ブルームバーグ』(2月24日付)は、「ロシア株大幅安、ルーブルは対ドル最安値-中銀が為替介入へ」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア資産の価格が24日の金融市場で急落した。通貨ルーブルは対ドルで急落し、最安値を更新。株式相場も過去最大の下落となり、MOEX指数は一時45%下げた。

     

    (1)「ロシア銀行(中央銀行)は外国為替市場に介入し、金融市場の安定化を図る措置を講じると発表した。介入は数年ぶり。同中銀は利上げには言及していないものの、1兆ルーブル(約1兆3700億円)の翌日物レポ入札を同日実施し、銀行システムに追加の流動性を供給するとした。午後の取引で株価とルーブルは下げ幅を縮小。一時9.4%安となったルーブルはモスクワ時間午後0時59分(日本時間同6時59分)現在、3.6%安の1ドル=84.2250ルーブル。MOEX指数は25%安。ロシア最大の銀行ズベルバンクの株価は45%安、ガスプロムは39%下げた」

     

    ロシア国内では、多くがウクライナ侵攻をないと見ていた。それだけに、その反動が大きくなっている。今後、本格化する西側諸国の経済制裁の事態が明らかになると共に、株価はルーブルへの影響が大きく出るであろう。

     


    ルーブル安は、国内消費者物価を刺激する。昨年9月から前年比8%台の上昇率である。今年1月は8.73%でジリジリと上昇速度が上がっている。今回のルーブル安が、輸入物価を押し上げるのは確実。消費者の不満を高めるであろう。

     

    『ロイター』(2月23日付)は、「プーチン大統領に残された選択肢は戦線拡大」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのプーチン大統領はウクライナ東部ドンバス地方の親ロシア派が実効支配する地域を独立国家として承認し、手持ちのカードがこれで尽きたわけではないと述べた。同氏は22日、「今後どんな行動を取り得るのかを具体的に示すことは到底できない。現地の状況次第だ」と話した。

     

    (2)「政治コンサルティング会社R・ポリティークの創設者タチアナ・スタノバヤ氏は、「ロシア軍の侵攻が親ロ派地域にとどまるわけがない。さらに戦線を広げなければ彼らにとって意味がない」と語る。「プーチン氏の論法に従えば、ウクライナの大部分を手に入れる必要がある」。スタノバヤ氏はさらにこう付け加えた。「ウクライナに対する攻撃をどう正当化するのか想像もできないが、ほかに選択肢は見当たらない。目標は今の状態のウクライナを終わらせることだ。ウクライナがなくなれば、問題は解決する」と指摘する」

     

    プーチン氏は、ウクライナを消さない限りロシアの安全保障が維持できないという極端な考えに立っている。これは、西側諸国と完全に対立する考えである。プーチン氏は、解決のない道へ踏込んでしまった感が強い。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月22日付)は、「プーチン氏の終盤戦、ウクライナ超えた野望」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「ジョンズ・ホプキンス大学のメアリー・サロッティ教授(歴史学)は指摘する。プーチン氏はベルリンの壁が崩壊したとき、独ドレスデンの旧ソ連国家保安委員会(KGB)にいた。その後、ソ連が崩壊する直前の1990年に自国に戻された。サロッティ氏によると、プーチン氏は現在、ソ連時代のようにロシア周辺に緩衝地帯を築き、超大国の米国と肩を並べ影響力を誇示したいと考えているプーチン氏のアプローチは、他のNATO加盟諸国を通り越して米国と真っ向勝負することを狙っている。それには同氏の信念が見て取れる。つまり、世界の問題はロシアを含む大国が解決するべき、というものだ」

     

    プーチン氏は、ロシアの国力を忘れて米国と真っ向勝負する覚悟という。米ソ対立時代の再現である。これは、プーチン氏の認識錯誤である。米国には同盟国が控えている。ロシアへ共同経済制裁することを忘れているのだ。こういう点から、プーチン氏は故サッチャー英国首相と同様に辞任寸前の「頑迷固陋」に陥っているのでないか。もっとはっきり言えば、「認知症」を疑われているのだ。

     


    (4)「プーチン氏はこれまで、危機の瀬戸際で能力を発揮してきた。今回、プーチン氏は相当大きな賭けに出ており、簡単には出口が見えない状況に自ら身を置いている。軍部隊を撤退させ、西側各国指導者の注目を集めたばかりか、欧州の安全保障について協議するという米国の約束を得たと主張することもできるが、実現は困難であろう新安保条約を同氏が要求していることを考えれば、従順な段階的緩和を行えば面目を失いかねない」

     

    プーチン氏は、大きな賭けに出ている。ウクライナを消してしまうほどの振る舞いである。途中での妥協を許さないもの。それだけ、解決が難しくなる。

     


    (5)「プーチン氏がウクライナを侵攻するなら、リスクは高まる。西側の軍事専門家はロシア軍が勝利するとみている。だが、敵対的な住民を長期間服従させようとすれば、泥沼にはまる可能性がある。ウクライナの一部地域を切り取ろうとして軍部隊を派遣する場合(例えば、ロシアが併合したクリミアをロシアとつなぐ横断陸路の建設)でも、西側は大規模な制裁を科す可能性が高い。そうなれば、2024年の再選を目指すプーチン氏にとって大きな逆風となる恐れがある

     

    下線部は、重要な指摘である。西側は経済面で優位に立っている。ロシアの産物は、穀物(小麦とトウモロコシ)、原油・天然ガスである。工業製品では見るべきものがない。西側諸国は、ここを狙って経済制裁を加える。半導体も輸入禁止だ。いずれ、ルーブルが米ドル決済機構から追放される。ロシア経済は万事休すとなろう。プーチン氏は、ここまで考えているとは思えない。「認知症」疑惑が、つきまとう理由である。

     

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