2月24日未明に始まったロシアの、ウクライナ侵攻作戦はロシア軍優位の下で進んでいる。ソ連軍は、首都キエフまで至近距離に迫っている。ロシアの陸上兵力は、全体で約85万人に対し、ウクライナ兵力は4分の1以下の約20万人に過ぎない。ウクライナの劣勢は明らかだ。ウクライナのゼレンスキー大統領は25日、これ以上の犠牲を出さないためにもプーチン氏との交渉を希望すると語った。
ウクライナ大統領府のポドリャク顧問は25日、ロイターに対しウクライナは平和を望んでおり、北大西洋条約機構(NATO)に関して中立な立場などについてロシアと対話する用意があると述べた。
一方、中国の習近平国家主席は25日、ロシアのプーチン大統領と電話会談し、ウクライナ危機について、ロシアがウクライナと対話を通じて解決を目指すことを支持すると述べた。プーチン大統領は、ウクライナとハイレベル協議を開催する意向があると述べたもの。中国国営テレビが伝えた。
こうして、ロシアのウクライナ侵攻2日目で双方が、交渉のテーブルに着く可能性が出て来た。これ以上の犠牲者を出さないためにも、早急な「対話」実現が待たれる。プーチン氏は、最終的にウクライナへ何を要求するのか。
『毎日新聞 電子版』(2月25日付)は、「ロシアの狙いは『斬首作戦』か、徹底抗戦のウクライナ 支援求める」と題する記事を掲載した。
ウクライナに侵攻したロシアは3方向から進撃し、一部部隊がウクライナの首都キエフに侵攻を始めた。作戦の狙いはどこにあるのか。ロシア軍によるウクライナへの侵攻が始まった24日、米国防総省高官は、ロシアのプーチン大統領の目的について「ウクライナの現政権を排除し、独自の統治方法を導入することだ」と分析。キエフを制圧し、政権トップをすげかえる「斬首作戦」を進めているとの見方を示した。
(1)「プーチン氏は24日の演説で、作戦の目的を「ウクライナの非武装化」と説明。ペスコフ露大統領報道官も同日、「これはウクライナが最近、外国のおかげで増強してきた軍事的な潜在力を中和することだ」と記者団に語り、「この目的は達成されるだろう」と述べた。さらにプーチン氏はウクライナ政権の「脱ナチズム化」にも言及。2014年の親露派政権崩壊後にウクライナに成立した政権を「ナチスト」と呼んでおり、ゼレンスキー政権を武力で崩壊させることを狙っているとみられる」
ロシアは、ウクライナに傀儡政権をつくる目的である。選挙で選ばれた政権でなければ正統性を持ち得ない。そういう常識も分らないのであれば、ウクライナ問題は簡単に片付かないであろう。ロシアにとって、新たな難題を抱え込むことになる。
(2)「米国防総省も、ロシア軍の最終目標をキエフの制圧とみている。キエフはベラルーシとの国境から約100キロしか離れておらず、24日にはキエフ郊外の空港周辺にロシア軍の空挺(くうてい)部隊が到着。25日も激しい戦闘を続け、キエフへの侵攻を始めた。一方、ウクライナ軍は各地で激しい抵抗を繰り広げている。ザルジヌイ総司令官は24日、「ロシア軍の電撃戦は失敗した」と侵攻を食い止めていることを強調。ゼレンスキー大統領も初日の戦況を「膠着(こうちゃく)状態」と表現した」
ロシア軍は、キエフまで20キロと迫っている。ウクライナが、交渉のテーブルに着く気持ちに傾いたと見られる。
(3)「ただ、ウクライナ軍がどこまでロシア軍の進撃を食い止められるかは未知数だ。ウクライナは近年、米欧から軍事援助を受けてきたが、供与された武器は歩兵の携帯型の対戦車砲や対空ミサイルなどが中心。近代化され、航空戦力も豊富なロシア軍が戦力で勝っているのは明らかだ。ゼレンスキー氏は25日、「我々は孤独の中で国を守っている。強力な戦力を持つ世界(の国々)は遠くから見守っているだけだ」と国際社会に制裁にとどまらない支援を呼びかけた。一方で「我々は自分たちの土地で自らの正義のために戦っている。我々の意志をくじくことはできない」と述べ、徹底抗戦する意志も改めて表明した」
ゼレンスキー氏は、徹底抗戦の姿勢を見せながらも「交渉」という余地も残している。
(4)「米政府高官は、「第二次世界大戦以来、このような形の国家対国家の戦争を見たことがない。我々の予想している展開になれば、多くの血が流れる。今後、欧州の安全保障に長期間の重大な影響を与えるだろう」と語った」
キエフの市街戦になれば、ロシア軍は長期間の戦いと相当の犠牲者を覚悟しなければならない。ウクライナが、交渉の意思がある以上、ロシアがそれに応じるのは「渡りに船」である。