勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国は、衰退期に入ったかどうか。米国では、「衰退期論」が優勢になっている。その衰退を自覚している習近平氏が、敢えて虚勢を張って対外強硬策に出ているという分析である。

     

    衰退を認識すれば、「敵方」に弱点を知られたくないと考えるのは自然の動きである。中国共産党は、これまでも情報の流れを厳しく規制してきた。習近平主席の下で、この取り組みがさらに強まっているのだ。情報開示の禁止から学者が外国人と面会する際、単独での面会が不可能になっている。まさに、「戦時下の情報規制」が始まった。要注意である。

     


    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月7日付)は、「中国経済の実態、データ規制でさらに不透明に」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国は、新たに導入したデータセキュリティー法(数据安全法)によって、外国の企業・投資家が、供給状況や財務に関わるものを含め、情報を得ることが一層難しくなった。中国海域の船舶の位置情報を提供してきた幾つかの企業が、国外との情報共有を停止したため、中国の港湾の運用状況を知るのは難しくなった。中国当局は、石炭の使用に関する情報を制限し、政治的な意見対立に関係する事案を公的司法データベースから排除し、他国との学術交流を停止した」

     

    このパラグラフに取り上げられている事実は、平時におい起こり得ない現象である。習近平氏の頭の中は、すでに「戦時意識」になっているのであろう。

     


    (2)「国際基督教大学(ICU)のスティーブン・ナギ上級准教授(政治・国際関係)は、「中国は以前から巨大なブラックボックスだった」と指摘。情報へのアクセス機会が減ったことで、外国人には中国国内で何が起きているのか理解するのが一層困難となり、「ブラックボックスは、さらに一段とブラックになった」と語った。中国を拠点とする経営コンサルタントのキャメロン・ジョンソン氏は、「中国国内で何が起きているのかだけでなく、中国が国家として目指す目的とゴールについても情報の空白が生じており、それが不信感を助長している」と語る」

     

    もともと「ブラックボックス」の中国が、さらに一段と「ブラック」になったという。何を企んでいるのか不明だが、中国が成長期から衰退期へ向かっていることを自ら証明しているような事態だ。

     


    (3)「航空便のキャンセルや数週間の隔離期間など新型コロナ絡みの厳しい国境規制も、中国国民が外国の人々と対面で交流する機会の大幅な減少につながっており、これが世界との断絶状態を深刻化している。中国民用航空局(CAAC)によれば、航空便による中国の出入国者数は2021年1~8月には約100万人となり、5000万人近かった2019年同期の水準を下回っている。海外への渡航を計画していた中国人の一部は、パスポートの更新を拒否されたり、空港で係官に呼び止められ、渡航を最小限にすることを求める政府の命令を理由に、出国を思いとどまるよう説得されたりしたと話している

     

    下線部は、一般中国人の渡航すら規制し始めている。中国の弱点が海外へ漏れることを警戒しているのであろう。

     

    (4)「中国の秘密主義の拡大を後押しする原動力の1つは、91日に施行されたデータセキュリティー法だ。中国当局は潜在的にセンシティブなデータが海外に流出することに懸念を強めていた。同法は、データの収集・保管・利用と送信などデータ関連活動のほぼ全てを政府の監視対象とした。香港を拠点としている法律事務所レイノルズ・ポーター・チェンバレンの弁護士、ジョナサン・クロンプトン氏によると、同法が制定されて以降、中国本土の企業は金融・医療・公共交通・インフラなどの戦略的な分野で多国籍企業と情報を共有することを、以前に増してためらうようになっている」

     

    91日に施行されたデータセキュリティー法によって、中国の本土企業は戦略的な分野で多国籍企業と情報を共有することを、以前に増してためらうようになった。中国企業の情報漏出を警戒している結果だ。

     


    (5)「当局は何がセンシティブな情報にあたるのかを明確にしていないため、中国企業からすると、海外のパートナーと何を共有できるのかが分かりにくい状況だ。米法律事務所ハリス・ブリッケンの弁護士、スティーブ・ディッキンソン氏は、ある最近のエピソードを紹介してくれた。ある米国の顧客が、ある中国企業が信頼に足る企業かどうか判断するため、その企業に監査済みの財務諸表を要請したところ、断られた。外国人に財務諸表を公開してはならないとする中国政府の方針が理由だった。その顧客はその情報なしに連携を進めることを余儀なくされたという」

     

    中国企業は、外国人に対して財務諸表する公開しなくなっている。これでは、海外株式市場で中国企業の上場が不可能になる。ここまでやって、中国の実態を知られたくないのだ。経済の実態悪化を雄弁に物語っている。

     


    (6)「衛星画像は依然として入手可能なものの、中国周辺の詳細なリアルタイムの船舶動向に関する情報にアクセスができなくなったため、企業は世界最大の貿易国である中国の積み荷の出荷・入荷状況を正確に追跡するのが困難になっている。(データセキュリティー法は)中国の経済成長や貿易などに関し、正確なマクロ経済予測を行うために港湾活動の情報を収集する金融機関の能力を阻害していると指摘した

     

    データセキュリティー法により、中国の経済成長や貿易などに関し、正確なマクロ経済予測が不可能になるという。悪い実態を知られたくないから隠すのだ。

     

    (7)「北京大学国際関係学院の元学院長、賈慶国氏は「過度の管理はわれわれが先進的なアイデアや研究方法、政治経験を海外から学ぶことを阻害する」とし、一部の大学では、研究者は、少なくとも他の同僚1人が同席している場合にしか外国人と交流することが認められていないと指摘した

     

    下線部は、学者の口から中国の悪い話が漏れないように相互監視させる目的であろう。中国が、もはや発展期を過ぎたことを自ら告知するような話だ。

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    韓国文政権は、K防疫の優秀性を自画自賛して、昨年4月の総選挙で大勝した。以来、自信過剰へ陥って、防疫体制の整備を怠ってきた。政府は、病床の整備について命令を出すだけで、実際に増床されたかフォローがなかったのだ。内科医師不足も深刻である。頭数揃えで、皮膚科や眼科という感染症と無縁の医師まで集める悲惨な状態である。これが、死者を増やすという痛ましい結果を招いている。

     

    12月1日現在、韓国の「新型コロナ致命率」(11月21日以前の1週間の新規感染者に比べた12月1日以前の1週間の死亡者数)は1.46%である。主要国の中で、最悪の事態へ落込んでいる。「K防疫モデル」に大きな傷がついた。

     


    『ハンギョレ新聞』(12月7日付)は、「ウィズコロナ以降、主要国のうち韓国だけが『致命率逆戻り』」と題する記事を掲載した。

     

    世界の主要国は新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を始めた後、防疫を緩和するいわゆる「ウィズコロナ」を始めてからは「致命率」が下落したが、韓国だけが上昇傾向にあることが分かった。韓国政府が準備不足の状態で「段階的な日常回復」に踏み切ったことが、致命率の「逆戻り」につながったものとみられる。

     

    (1)「米ジョンズ・ホプキンス大学の新型コロナ関連データを分析した結果によると、12月1日現在の韓国の「新型コロナ致命率」(11月21日以前の1週間の新規感染者に比べた12月1日以前の1週間の死亡者数)は1.46%で、主要国(米国、日本、ドイツ、英国、シンガポール)のうち最も高かった。1日は韓国が段階的な日常回復を始めてちょうど1カ月を迎える日だった」

     

    12月1日現在の韓国の「新型コロナ致命率」は、1.46%である。主要国で最も高い水準である。

     


    (2)「同日、英国の致命率は0.%で、韓国の5分の1の水準だった。シンガポール(0.32%)やドイツ(0.6%)、日本(0.94%)も韓国を大きく下回っており、ワクチン接種率が停滞しデルタ株の感染が拡大している米国も致命率が0.96%で、韓国より低かった。世界の平均致命率も1.31%で、韓国より低かった」

     

    韓国の致命率1.46%は、世界の平均致命率1.31%を上回る。英国の致命率は0.%で、韓国の5分の1だ。日本は、0.94%である。日本と対抗したがる韓国は、地団駄踏んでいることだろう。

     

    (3)「特に他の諸国は、韓国より先に防疫を緩和して「ウィズコロナ」を始めたが、急激な致命率上昇はみられなかった。昨年冬に致命率が3%を上回るほど状況が悪化した英国は、7月19日に防疫緩和を宣言したが、その後は0.3~0.%の致命率を維持している。新型コロナ防疫の模範国とされるシンガポールは、8月10日に防疫緩和を始めて以来、一時的に致命率が1.%にまで上昇したが、1週間で安定を取り戻してからは0.%前後の致命率を維持している」

     

    韓国は、「ウィズコロナ」の時期を早めすぎたことが致命的になった。日本と対抗するために、準備不足を顧みずに踏み切って、人命の損害をもたらす重大事態に落込んだ。悪いことは言わない。金輪際、日本と対抗するという馬鹿げたことを止めるべきだ。

     

    (4)「日本は、11月の防疫緩和を控えて致命率が2%を超えるなど一時は危機を迎えたが、最近は新規感染者はもとより、死者も激減し、落ち着きを取り戻している。専門家らはこのように世界的な致命率の減少現象について、「昨年のコロナ禍以降、大きな危機に直面した国々も、時間が経つにつれて医療体制が整いつつある」と評価した。致命率は新型コロナに対応する各国の保健医療体制と防疫の水準を端的に示す重要な指標だ。匿名を求めたある疫学専門家は「致命率は結局、国が患者の命をどれほどよく守ったのかを示す指標」だとし、「致命率は感染病対応の実態を正確にみせてくれる」と説明した」

     

    下線部は、重要な指摘である。致命率が保健医療体制と防疫の水準を示す重要な指標であることだ。これにしたがえば、韓国は「K防疫モデル」を返上すべきであろう。

     

    (5)「韓国は10月初めまでも致命率が0.%を下回り、世界でも致命率の低い国に分類されていた。しかし、10月15日頃の0.57%の致命率から、段階的な日常回復を始めた翌日の11月2日頃の致命率1%を超えるまで高まった。現在は、1.%前後を推移している。韓国の新型コロナ致命率が高まった理由としては、感染リスクの高い「高齢者層のブレイクスルー感染の増加」と「病床不足」が挙げられる。デルタ株の出現とワクチン接種後、時間が経ち、新型コロナに脆弱な高齢者層の間でブレイクスルー感染が増えたが、彼らが適時に治療を受けられず、命を落とすケースが増えたことが致命率の増加につながったという説明だ」

     

     

    病床不足が、満足な治療を行えずに致死率を高めている最大の要因であろう。

     

    (6)「ソウル大学のキム・ユン教授(医療管理学)6日、本紙のインタビューで「世界的にも致命率が上昇する国がないのに、韓国だけが上昇しているのは、結局、準備ができていない状況で日常回復を推し進めた結果だ」とし、「年齢効果を補正した11月の致命率は1.01%に達するが、これは5月(0.44%)の2.5倍多い水準で、ワクチン接種前よりも高い」と指摘した」

     

    韓国の飛び抜けた致死率の高さは、ひとえに文政権の責任である。大袈裟に言えば、「罪、万死に値す」だ。

     

    (7)「さらに大きな問題は、高まった致命率を下げる政府の対策が見当たらないという点だ。同日0時基準で、病床不足で待機している患者は全国で計1012人。首都圏の病床待機患者982人のうち、4日以上待っている人も309人だ。首都圏の病床待機者のうち547人(55.%)は70歳以上の高齢患者だという。先月第4週(21~27日)にはこうして病床が空くのを待っているうちに死亡した患者が10人にのぼる。直前の週(14~20日)に3人が死亡したのと比べて3倍増えた

     

    さらに、大きな問題は高まった致死率を引下げる政府の対策が見当たらないことだという。病床と医師の不足が決定的に影響している。

     

    日本では厚生労働省が12月7日、「第6波」に備えた医療提供体制の計画を発表した。今夏第5波ピーク時の3割増となる3万7000人が確実に入院できる体制として、各都道府県が計約4万6000床の病床と、応援派遣できる医師、看護師を各3000人確保したとした。韓国も、こういう準備をすべきだったのだ。

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    米国ホワイトハウスのサキ報道官は12月6日(現地時間)、来年2月の北京冬季五輪に外交使節団を派遣しない「外交ボイコット」を発表した。中国による新疆ウイグル自治区などの人権侵害に抗議する狙いがある。この決定で、韓国はどのような選択をするのか。

     

    先に行なわれた中韓外交当局者の会談は、中国が呼びかけたものである。狙いは、北京冬季五輪への首脳出席依頼であった。米国が、正式に外交ボイコットを発表した以上、悩ましい決定を」迫られよう。

     

    『中央日報』(12月7日付)は、「米中間の一本綱渡りの危うさ」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のナム・ジョンホ/中央日報コラムニストである。

     

    2つの強大国、米国と中国の間に挟まった韓国は物悲しい。ともすると両国の表情を一度に見なければならない境遇に追い込まれる。2日後の9日開幕する「民主主義首脳会議」もそのような場所だ。

    (1)「ジョー・バイデン米大統領の主導で開かれる今回のオンライン会議には110余カ国の首脳が参加するが、すでに妥当性問題に苦しめられている。民主主義の守護という名分を掲げているが、トルコ・フィリピン・イラクなどその名分とはかけ離れた権威主義国家の指導者が多数招かれているためだ。反面、民主主義のために戦ってきた反独裁の要人は招かれなかった」。

     

    韓国が米韓同盟を結んでいる以上、「民主主義サミット」に招待されたのは当然のことだ。このコラムの筆者は、米韓同盟の存在自体を忘れたような書き方である。米国が主宰である以上、米国の国益を見据えた招待メンバーになるであろう。それを、いぶかしく思うこと自体、世界情勢への認識が不足している。



    (2)「今回の首脳会議が、外見は民主主義水の守護と言っているが、中国・ロシア封鎖のために国際的スクラムを組むことであるのは実は誰もが知っている。ゆえに韓国の立場としては非常に苦しい。参加国は権威主義勢力抑制のための国内外的アイデアと実践方案を出すことになっている。一歩間違えれば中国の怒りを買いかねない

     

    下線の部分は、韓国が米韓同盟を結んでいることを忘れ中国を恐れている。滑稽ですらあるのだ。これが、韓国言論人の心情とすれば、「中国恐怖症」は重篤である。韓国が、北京五輪へ「外交ボイコット」することなど、全く考えられない事態だ。

     

    (3)「最近、文在寅(ムン・ジェイン)政権は任期末にもかかわらず、なんとかして終戦宣言を成し遂げようと全力を傾けている。終戦宣言が成功するためには米中両側の全面的な支持が不可欠だ。今月2日、青瓦台(チョンワデ、大統領府)の徐薫(ソ・フン)国家安保室長が中国天津に駆けつけて楊潔チ中央政治局委員に終戦宣言を支持してほしいと頼んだのもこのためだ。だが2人の会談後、中国外交部が出した報道資料では終戦宣言の話には全く触れられていなかった。おそらく中国は終戦宣言に対して関心がないという意味だろう」

     

    文大統領は、残り任期僅かとなって何か一つ「レガシー」を残したいと必死である。最後の望みは、北朝鮮との朝鮮戦争「終戦宣言」である。だが、中国は無関心である。それよりも、北京五輪への外交使節団派遣問題が重大事である。中国は、韓国へそれを要請したのだ。韓国はこの会談で、「北京冬季五輪の成功を祈る」と発言している。それ以上は、踏込まなかったようだ。

     


    (4)「このような局面で、民主主義首脳会議に参加した文大統領が米国の対中封鎖政策に積極的に参加すればどうなるかは明らかだ。その一方で終戦宣言のもう一つの鍵を握っているバイデンの要求も無視することはできない境遇だ。文政府としてはこれもあれも困難な窮地に追い込まれた」

     

    韓国には、このパラグラフにない北京冬季五輪への外交使節団派遣問題がある。韓国が、民主主義サミットへ出席したから、バランスを取って北京冬季五輪へ使節団を送るという選択を考えても不思議はない。まさに、「二股外交」の極致である。

     

    リトアニアは、中国との関係悪化を覚悟して台湾との関係強化に乗出している。1991年まで、共産主義の支配によって辛酸を舐めさせられた。こういう自らの経験から、中国によって圧迫されている台湾へ国交を結ぶ動きを始めた。韓国の日和見姿勢と180度異なっているのだ。

     

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    韓国は、米国の同盟国だが「中国シンパ」である。米国が、中国の対外膨張政策を封じ込めるべく、EU(欧州連合)や日本と協議を重ねている現実に対して、ほとんど関心はなさそうだ。それよりも、中国のご機嫌を損じることなく、少しでも輸出を増やそうという乞食根性が優先している。

     

    これは、韓国の国民性にも理由がある。国際世論調査で分かったことは、韓国が「物的豊かさ」を選択の一位に上げていることで裏付けられる。日本を初めG7の諸国は、すべて「家族」が一位に選択されている。これは、国家間に直せば「同盟国」を大切のすることだ。韓国は、経済優先で同盟国である米国よりも中国を重視することと符節が合うのである。

     


    『中央日報』(12月6日付)は、「米国の要求を背に防衛力を強化する日本 中国と代理戦?」と題する記事を掲載した。

     

    「日本は同盟および地域の安全保障を一層強化するために自らの防衛力を強化することを決意した」。4月16日、当時の菅義偉首相とバイデン米大統領が首脳会談後に発表した共同声明には、こうした内容が盛り込まれた。両国が合意した事案を主に反映さる首脳会談の共同声明に「防衛力強化」の「決意」をしたという内容が入り、話題になった。外交関係者の間では「歴代の日米首脳会談の声明で見られなかった積極的な文言」という評価があった。

    (1)「日本はその後、この決意を着実に現実化している。10月に就任した岸田文雄首相が率先する姿だ。先月26日に閣議決定した35兆9895億円の補正予算には、過去最高となる7738億円の防衛費が含まれた。従来の予算の5兆3422億円と合わせると6兆1160億円で、初めて防衛費が6兆円を超える。東京新聞によると、補正予算を合わせると日本の防衛費は2012年以降8回もGDPの1%を超えた。自民党は10月末の衆議院選挙で防衛費を「GDP比2%以上」まで引き上げるという公約を出した」



    GDPの1%枠は、かつて中国が日本へ文句を言ってきた結果、自然にこの線に落ち着いたもの。その中国は、すでに実質GDP比2%台へ膨張させている。NATO(北大西洋条約機構)は、米国の要請で国防費をGDP比2%にするように求めているほどだ。

     

    韓国の国防費も、GDP比2%台である。この現実に目を瞑って、日本が1%を少しでも上まわると問題視するのは、余りにも身勝手な議論である。ならば、韓国は防衛費を削減できるのか。自国を棚上げして日本だけを批判すべきでない。

     

    (2)「日本政府は、防衛費増額の理由に周辺安全保障環境の悪化を挙げる。中国の軍備増加、北朝鮮の核・ミサイル挑発などに備えるためには避けられないという主張だ。防衛省は今年の防衛白書で、購買力基準で換算すると、ロシアや韓国の防衛費はすでに日本の防衛費を超えたとし、増額の必要性を強調した。背後には米国の存在がある。米国は対中戦略で日本がより大きな役割をするよう持続的に要求してきた。共同通信によると、バイデン大統領は10月初めの岸田首相との最初の電話会談でも、日本の防衛費増額方針に期待を表明した」

     

    米国は、日本だけに国防費増額を求めているのではない。前述の通り、NATOも同じ要求である。このように米国を悪者にして、中国の増額を黙認するような姿勢は、けっして褒められたことでない。中国の軍事膨張の現実に対応するには、不幸なことだがそれに見合った国防費を支出するほかない。韓国は、GDP比2%台の国防費が許されて、日本は不可という議論が成り立つと思うとしたら、ジャーナリズム失格である。

     


    (3)「日本の防衛力増強の動きは、こうした米国の要求に日本保守派の欲望がうなずいた結果だ。東京のある軍事専門家は「日本に中国対応の相当部分を負担させたい米国と、平和憲法の枠から抜け出して『軍事的普通国家』を追求する自民党保守層の利害が一致した」とし「日本の軍備増強は今後も続くだろう」と話した」

     

    このパラグラフは、100%「親中朝・反日米」という文政権の立ち場と共通している。韓国は、民主主義陣営であるはず。少しは、国際情勢の変化を織込んだ記事が書けないだろうか。

     

    (4)「こうした日本の防衛力強化の核心にある概念が、「敵基地攻撃能力」だ。安倍首相は北朝鮮・中国などの弾道ミサイル能力向上に対抗し、日本も攻撃を受ける前に相手の拠点基地を先制打撃できる能力を備えるべきだと主張してきた。日本が2020年代末まで射程距離1000キロ以上の長距離巡航ミサイルを開発して配備することにしたのもその一環だ。日本が現在保有するミサイルは射程距離100~200キロで、北朝鮮・中国などの脅威に対応するのは難しいという判断だ」

     

    中国は、中距離ミサイルを日本や韓国、さらに米国海外基地へセットしている。後は、ボタンを押すだけなのだ。韓国も、800キロを超すミサイルの開発を始めている。日本が、中国への対抗上1000キロのミサイルを保有してはいけない理由があると思えない。戦争抑止とは、相手と同等の軍備を持って初めて可能になる。記者として、こういう事実を知らないはずがない。

     


    (5)「岸田首相も敵基地攻撃能力の保有について「あらゆる選択肢を排除せずに検討する」と意欲を見せている。防衛省は2022年末に改定する国家安全保障戦略(NSS)に敵基地攻撃能力保有を明記し、中長期防衛戦力の防衛大綱と5年単位の細部計画である中期防衛力整備計画にもこれを具体的に明示する方針を明らかにした。しかし敵基地攻撃能力の保有は日本憲法が規定した専守防衛(攻撃を受けた場合に限り防衛力行使)原則に明確に反するという指摘が続いてきた。野党はもちろん連立与党の公明党も推進に消極的な立場だ。敵基地攻撃能力の保有は憲法9条改正にまでつながる事案であり、日本国内の反対のほか、中国・韓国など周辺国の反発を招くしかない」

    ASEAN(東南アジア諸国連合)では、中国の横暴が止まらない理由として、日本が余りにも「内向き」であることを上げている。中国を抑止する役割として、日本が積極的に関わるべしとしている。ASEANで、最高の評価を得ているのは日本だ。半分以上の支持を得ている。米国を上まわっているほどである。豪州が、日本を最も頼りにする理由である。中韓を除けば、日本が軍備を強化しても反対する国はないはずだ。




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    「大国を治むるは、小鮮を烹るがごとし」という。小魚を煮るときは型崩れしないように弱火でじっくりと。大国の統治も料理と同じだと老子は説いたのである。現代風に言えば、小魚である「リトアニア」が、台湾との国交を決めて中国が振り回されているのだ。中国は、リトアニアへ経済制裁したくても、リトアニアの対中国輸出は全体の1%に過ぎない。まさに、「箸にも棒にもかからない」状態である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月7日付)は、「中国、対リトアニア『制裁』で苦慮、欧州への影響拡大懸念か」と題する記事を掲載した。

     

    中国が、台湾と急接近する欧州の小国リトアニアへの対応に苦慮している。同国で台湾の代表機関が開設されたのに反発し、中国は外交関係を格下げしたものの、断交などの踏み込んだ措置は見送った。背景には、リトアニアに追随する動きが欧州で広がることへの警戒がある。中国による対立国への経済的な圧力の限界も浮き彫りになっている。

     

    (1)「中国外務省の趙立堅副報道局長は11月下旬の記者会見で、「あしき前例をつくった。代償を払わなければならない」とリトアニアに警告した。中国が激怒した直接の原因は、11月に台湾がリトアニアに開いた事実上の大使館となる「台湾代表処」にある。欧州に置く代表機関で初めて名称に「台北」ではなく「台湾」の採用を認め、台湾を不可分の領土とする中国が駐リトアニア大使の召還を8月に発表するなどして反対していた」

     

    中国は、「戦狼外交」で他国を脅してきたが、リトアニアの方が一枚上手である。リトアニアは、中国と「一つの中国」で外交関係を結んできたが、新たに台湾と国交を結んで、「一つの中国」を反古にしたのだ。

     

    リトアニアにも言分がある。台湾は民主主義国であるが、中国から圧迫されて気の毒な立ち場である。かつて、リトアニアは旧ソ連の支配下で辛酸をなめさせられた。台湾へ同情するとしている。だが、リトアニアの目的はこれだけでない。台湾から半導体企業を誘致したいのだ。具体的に、「商談」を始める雰囲気になっている。

     

    (2)「中国による報復措置は、現段階では政治的なメッセージの意味合いが大きい。リトアニアとの外交関係を格下げし、大使を送らず代理大使にすると11月に決めた。中国共産党系メディアの環球時報が可能性を指摘していた断交には踏み切らなかった。リトアニアへの圧力を巡る混乱もうかがえる。11月に領事業務の一時停止を発表した在リトアニア中国大使館は、ウェブサイトに載せた発表を公開後まもなく削除した。8月にもリトアニアと結ぶ貨物列車の運行を中国が一時停止すると欧州メディアが報じた後で、中国の鉄道運行会社が環球時報などへのコメントで打ち消した経緯がある」

     

    「大国」中国は、「小国」リトアニアを制裁しても、EU(欧州連合)から強い反発を受けるリスクが大きいのだ。こうなると、中国は打つ手がない。EUは、人権擁護で結束している。中国は、リトアニア制裁で大火傷になりかねないのだ。

     

    (3)「背景には、欧州との対立が先鋭化するのは避けたい中国の考えがある。欧州連合(EU)は人権問題で中国を非難しつつも、中国と経済関係が深いドイツのメルケル首相が対中外交をけん引してきた。同氏の退任でEU内の力のバランスが変わりかねず、中国は「欧州との関係を全体的に安定させる必要がある」(北京の国際関係学者)。EU加盟国のリトアニアへの報復を小出しにしながら、ほかの国々の反応を見極めているとみられる」

     

    前述の通り、リトアニアは台湾から半導体企業の誘致で前向きの回答をえている。EU全体も、半導体ビジネスを盛り立てたいところだけに、心情的にも台湾へ傾斜している。こういう状況下で、中国がリトアニアへ報復すれば、大きなブーメランを浴びることは必至だ。

     

    (4)「リトアニアと台湾は、バイデン米政権が9~10日に開く「民主主義サミット」にも招待された。この時期のリトアニアへの制裁は、参加国の結束を強めてしまうとの懸念も中国にはありそうだ。リトアニアは強気の姿勢を崩さない。11月末には同国を中心とするバルト3国の議員団が訪台して台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統と会談し、対中国を念頭に関係強化で一致した」

     

    リトアニアは台湾と並んで、12月9~10の米国主宰の「民主主義サミット」へ招待されている。これは、リトアニアにとって米国の支援を受けられる資格を得たようなもの。中国は、ますます迂闊に手を出せなくなっているのだ。

     


    (5)「リトアニアでは2020年12月に人権擁護などを重視する連立政権が発足した。旧ソ連による武力併合を経て1990年に独立回復を宣言(91年にソ連が承認)した歴史を有し、強権国からの圧力への警戒が強い。輸出額に占める中国向けの割合が20年に約1%と経済の中国依存が低く、「失うものがほとんどない」(米政治専門サイトのポリティコ)点も厳しい対中姿勢を裏打ちする。3日には少なくとも同国の5社の製品が中国の税関を通らなくなっていることが明らかになったが、大きな影響はないとみられる」

     

    リトアニアは、ソ連崩壊直前の1991年2月にソ連から独立した。それだけに、自由への希求は極めて強い国家である。中国から威嚇されても、平然と受け流す強靱さを持っている。韓国に見倣わせたいほどである。 

     

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