勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    a1180_012431_m
       


    来年2月の北京冬季五輪開催を前に、米国が「外交ボイコット」を検討している。欧州も同調の動きを見せている。英国と豪州は、「AUKUS」結成し対中軍事戦略で団結しているので、米国と同一行動の可能性が論じられている。この三ヶ国の外に、高度諜報機関「ファイブアイズ」(米英豪加NZ)に加入するカナダやNZ(ニュージーランド)も加わり、5ヶ国が声明を発表して外交ボイコットするとの説も伝わっている。

     

    こういう状況を前に、中国はどういう姿勢を取るかである。「幸い」とでも言うのか、最近は南アを発生源にする新たなコロナ変種「オミクロン株」が発見された。強い伝染力を持つとされるので、中国はこれを理由にして、「外国賓客を招待しない」という決定をして肩すかしを食わすのでないか、という予測が出て来た。

     


    『ニューズウィーク 日本語版』(11月27日付)は、「北京五輪の外交ボイコットに対抗する中国が打つ『先手』」と題する記事を掲載した。筆者は、サム・ポトリッキオ ジョージタウン大学教授である。

     

    アメリカは、中国の人権問題を理由に2月の北京冬季五輪をボイコットするのか。五輪のボイコットに前例がないわけではない。歴史を振り返ると、正式なものだけでも、1956年メルボルン大会、64年東京大会、76年モントリオール大会、80年モスクワ大会、84年ロサンゼルス大会、88年ソウル大会の6つの大会を一部の国がボイコットしている。しかし前回の五輪ボイコットは34年も前のことだ。しかも、大会の規模も昔とは比べものにならないくらい大きくなっている。もしアメリカが北京五輪のボイコットに踏み切れば、激震が走るだろう。

     

    (1)「もっとも、五輪のボイコットは象徴的な意味しか持たない。80年代にアメリカと当時のソ連が互いの国で開かれた大会をボイコットしたときも、五輪に向けて生涯を懸けて準備してきたトップアスリートたちの努力が台無しになる一方で、世界秩序が大きく変わることはなかった。もしアメリカが今回の北京五輪をボイコットすれば、新たな超大国によって地位を脅かされている旧超大国が恐怖心を募らせ、いら立っているという印象を与えかねない。アメリカの国際的な威信と相対的な経済力が低下していることは、ボイコットを思いとどまらせる要因になるかもしれない。中国が報復措置を取った場合にアメリカが被るダメージは昔よりも大きい。五輪スポンサー企業の多くにとって、中国市場の重要性が増していることも無視できない」

     


    この記事は、かなり中国へ偏重した内容である。米国が衰退していると決め付けているが、実態は逆である。中国経済は不動産バブルの崩壊で、経済成長の主柱を欠いた状態だ。この筆者は多分、経済分析では不得手であり、中国包囲の国際情勢についても無関心である。あるいは、中国サイドの学者かも知れない。それほど、経済分析の素養を感じさせないのだ。

     

    中国が、米国へ与えるダメージはない。中国の「借り物技術」の限界が明らかに露呈している。半導体という戦略部門が、未だ「離陸せず」という状態だ。ここで、さらに米国が締め付ければ、中国経済は瀕死の重傷を負うほど追い込まれている。

     

    外交ボイコットは、米国単独で行なうのではない。最低限、米英豪の三ヶ国が行なう。これに、欧州などが中国の人権弾圧反対で起ちあがる。こういう、国際情勢の変化を全く見落とした記事である。

     


    (2)「
    アメリカでは、米国オリンピック・パラリンピック委員会も大多数の選手も、五輪への不参加には強く反対している。それよりも無難で実行しやすいのは、いわゆる「外交ボイコット」だ。選手団は派遣するが、政府高官は派遣しないという形の対応である。このアプローチは開催国である中国に屈辱を与える一方で、80年のモスクワ五輪をボイコットした際の失敗を繰り返さずに済む。アメリカがモスクワ五輪への選手団派遣を見送ったことは、当時のソ連政府に絶好のプロパガンダの機会を与えてしまったという見方が根強くあるのだ。80年のソ連や今の中国のように政府が厳しく情報統制を行っている国では、アメリカが五輪に参加しなければ、アメリカの衰退の表れだと自国民に印象付ける材料に使われかねない

     

    中国は、必死で「米国衰退・中国繁栄」というプロパガンダを行なっている。だが、この「嘘宣伝」をどれだけの中国人が信じるだろうか。パンデミック下で雇用不安を抱え、不満足なワクチンで「ゼロコロナ」に付合わされ、都市封鎖させられている中国に先進性は全く見られないのだ。中国人は、意外に裏情報に精通している民族である。「小話」の多いことが、それを証明している。

     


    (3)「
    アメリカの国際的な地位が低下していることを考えると、アメリカ政府が北京五輪の全面的なボイコットに踏み切ることはおそらく難しい。では、外交ボイコットで落ち着くのか。中国は、非常にプライドを重んじる国だ。アメリカが政府高官を派遣せず、自国のメンツがつぶされる事態は、避けようとするだろう。つまり、アメリカ政府が正式な決定を下す前に先手を打つ形で、新型コロナウイルス対策を口実にして外国政府高官の参加を全て拒否する方針を打ち出すのではないかと、私は予想している」

     

    コロナ変種「オミクロン株」が発見された以上、有効ワクチンを持たない中国は、さらに窮地へ追詰められる。「海外要人招待」を中止は、メンツの問題でなく実利的であるかも知れないのだ。

    a0960_005446_m
       

    中国は、不動産バブルを抑制すべく不動産開発企業へ融資枠をはめている。これが、土地需要を冷やしている。地方政府にとって、土地売却金は重要な財源であり、この減少が財政赤字を生んでいる。この結果、地方債の発行残高は、10月末で540兆にも達した。日本のGDPに匹敵する金額である。年末には561兆円へ達する見込みだ。中央政府も財政赤字が膨らんでいる

     

    『大紀元』(11月24日付)は、「中国の地方債 10月残高540兆円 史上最高」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国財政部(財務省)は23日、地方政府の債券発行量および債務残高を公表した。これによると、10月までの地方政府債務残高は約30兆元(約540兆円)に達し、史上最高となった。財政部の統計によると、110月までに発行された地方債は6兆4916億元(約117兆円)で、昨年同期比6%増えた。新規地方債のうち、再融資債の規模は2兆8291億元(約51兆円)で、同75%急増した」

     

    1~10月の地方債発行高は、117兆円(前年比6%増)。うち、借り換え債が51兆円(同75%増)である。借り換え債のウエイトが高まっているのは、地方財源が逼迫化している証拠だ。土地売却収入減によって借り換え債に依存せざるを得なくなっている。

     


    (2)「再融資債(借り換え債)は、満期を迎えた既発債の借り換えや元本償還のために発行されている。1~10月までに新たに発行された地方債の約半分は、経済活動に投入されておらず、古い債務を返済するために発行されたと見受ける。中国メディアなどは、再融資債の拡大が1~10月地方債の増加の主因であると指摘した。地域別でみると、広東省が発行した地方債の規模が最も大きい。5894億元(約11兆円)に達した」

     

    借り換え債発行は、過去に発行された債券返済目的である。それだけ、新規事業へ投入されたことにはならない。要するに、資金繰りをつけるための発行であり、「自転車操業」状態に入っている。

     

    (3)「10月末までの地方政府債務残高は29兆7000億元にのぼる。中国金融学者の鞏勝利氏は米ラジオ・フリー・アジア(RFA)に対して、地方政府の「金欠状態」は「前例のないほど深刻化している」と指摘した。同氏は地方政府債務残高は今年、30兆元を上回る可能性が大きいとした。「中央政府が小康(ややゆとりのある)社会を実現できたと宣言すれば、エネルギー問題や都市建設など、資金を必要とする分野がさらに増えるからだ」と指摘」

     

    下線部のように、地方政府の資金繰りは前例のないほどの「金欠状態」である。不動産バブルのストップで、さらなる地価値上り状況でなくなった。今年の地方債発行残高は30兆元(約561兆円)になると予想されている。

     

    (4)「鞏氏によると、中国国内に使われている電力の72%は火力発電に頼っている。「他の自然エネルギーへの転換は大きな事業である。一次エネルギーの多くは海外からの輸入に依存している。資金がなく、地方債などを発行しなければ、一次エネルギーを得られないので、中国当局にとって大きな難題である」と同氏は述べた。金融学者の陳有成氏は、中国不動産企業の過剰債務問題が深刻化しているため、地方政府の財政は過去のように「不動産市場や土地収入に頼れなくなった」とした。地方債発行は、地方政府にとって「(財源確保の)唯一の方法になっている」と陳氏は述べた」

     

    「一次エネルギー」とは、加工されない状態で供給されるエネルギーで、石油、石炭、原子力、天然ガス、水力、地熱、太陽熱などを指す。中国の石炭は品質が悪い(二炭化炭素が多い)ので、輸入に頼らざるを得ない。こうして地方政府は、石油、石炭、天然ガスを輸入しなければならないのだ。一方では、インフラ投資の責任も持たされるという重荷を負わされている。それだけに、土地売却収入減は地方政府にとって最大の問題である。

     


    地方政府だけが火の車であるわけでない。中央政府の財政赤字も急拡大する見込みである。それによると、2025年には10兆元(約170兆円)を突破し、21年の2.3倍になる見通しだ。税収の伸びが鈍るほか、22年から中国版「団塊世代」の大量退職も始まり、年金や医療の給付が増える。健全とされてきた財政の急速な悪化は中国経済の新たな火種になる。

     

    以上の見通しは9月27日、政府系シンクタンクである中国財政科学研究院が発表したもの。過去の税収や財政支出、将来の経済成長率見通しをもとにはじいた。増減税や制度改革の影響は盛り込んでいない。中央政府の財政も悪化の一途である。地方政府の困窮ぶりを助ける余地はなさそうだ。不動産バブルが支えてきた中国経済は、米国と覇権争いできるゆとりは一段と消えて行くであろう。

     

    テイカカズラ
       


    『中央日報』(11月26日付)は、韓国の有名ラジオパーソナリティによる「日本の感染者急減、韓国の診断キットなくて変異株検出できず」と題する記事を掲載した。この記事は、本欄でもその荒唐無稽さを非難した。日本の読者は、さらに痛烈なコメントを載せ、掲載紙の『中央日報』までがその見識を疑われる事態となっている。

     

    2021-11-27

    韓国、「妄言」進歩派ジャーナリスト、日本の感染者激減 低PCRで患者発見できない結果と「ラジオ放送」

     

    韓国のトップ購読数を誇る『朝鮮日報』は、この記事について韓国医学界の意見を取材して、「日本はバカというに等しい暴言」と批判する始末だ。

     

    『朝鮮日報』(11月27日付)は、「金於俊氏、『日本には韓国製の診断キットがないのでデルタ株を捕捉できない』、K防疫の危機でまたまた陰謀論」と題する記事を掲載した。

     

    日本は今年8月の時点では1日の感染者数が2万人を上回っていた。ところが9月から感染者数が激減し、10月には1000人以下、11月に入ると100人を下回るようになった。これについて、金氏は日本が韓国の診断キットを使用しないため、コロナの検査数に比べて陽性率も2.0%台から0%台に急減したと結論づけたのだ。

     


    (1)「これに対して専門家は「あり得ない話だ」と口をそろえる。梨花女子大学木洞病院呼吸器内科の千恩美(チョン・ウンミ)教授は、「日本は基礎科学が非常に発達した国だ。デルタ株を捕捉できない診断キットを開発したというのは科学的に納得しがたい主張だ」と指摘した。高麗大学予防医学科の崔在旭(チェ・ジェウク)教授も金氏の主張について、「根拠のない無責任な主張」と批判した。崔教授は「変異ウイルスかどうかは感染後の遺伝子分析によってスパイクタンパク質の変異を調べることでわかるが、診断キットでは変異ウイルスの種類は絶対に特定できない」「(診断キットは)あらゆる種類のコロナ・ウイルスが検出できるように設計されているので、(金氏の主張は)話にもならない」と指摘した」

     

    日本を貶めようという「親文派」(文大統領親衛隊)の策略である。韓国のコロナ感染者激増を隠すために、日本の悪口を言う「反日手法」である。一般の韓国人は、こういう策略に乗せられるであろう。だが、医師という立場になると、見識があるから反論されるのだ。

     

    (2)「とりわけ崔教授は、「『日本は韓国製診断キットを使用していない』とする金氏の前提そのものが間違っている」とも述べた。崔教授は「日本は確かに韓国の診断キットを輸入していない。ただし政府や医療機関では使用しないが、それ以外で一般人が購入して使用することはできる」「政府が行う検査で韓国製品を使用しないだけで、米国など他国の製品は使用している」と説明した。匿名を条件に厳しい批判をする専門家も多かった。ある医学部教授は、「一瞬にして日本をグローバルな田舎者、世界のバカに仕立てた」「金氏の発言があまりにもひどいので、その耳を疑った」などと批判した」

     

    韓国技術の多くは、日本技術に依存している。こういう現実を忘れて、途方もないことを言って、人を煙に巻くのだ。

     


    (3)「ソウル市内のある病院長は、「日本が感染者の数をねつ造しているとの主張もあるが、ねつ造するならオリンピックの前にやるはずで、オリンピックが終わった今になってねつ造する必要などない」「今度こそ日本に負けられないと扇動してきた親文としては、あんなおかしな論理を使ってでも自分たちを慰めたいのだろう」と反論した」

     

    下線部の指摘は、正鵠を得ている。文大統領も罪作りなことをさせているものだ。「反日」で煽り、大統領に当選した人物である。文氏の周囲に集まってくる応援団は、その質も良くないのだろう。

     

    (4)「この日、金氏は自らの主張と相反する専門家の声が伝えられると、これに改めて疑問を呈した。一方で慶北大学医学部予防医学科のイ・ドクヒ教授は16日、カカオが運営する「ブランチ」で「日本は最初から国が感染対策と銘打って無症状あるいは軽症で終わる自然感染を防がなかった」と説明し、日本で感染者数が急減している理由を「自然感染の拡大にある」と主張した。その上でイ教授は「今もPCR検査をしていないとか、データをねつ造しているといったおかしな説明が歓迎されている。そんな説明をしてでも、韓国の方が優れているという幻想にとらわれていれば、自分自信を慰めることができるからだ」とすでに指摘している」

     

    慶北大学医学部予防医学科のイ・ドクヒ教授は、正当な感染病予防の手法を明らかにしている。それによると、日本式が正しく韓国の「全数調査」は誤りだと指摘している。医師の世界では、科学に反する「反日」を振り回しても無意味なのだ。

     


    (5)「これらの主張は前日からメディアを通じて報じられ、その後も検索サイトのニュースなどでも数多く取り上げられている。金氏はこの日、ブルームバーグが発表した「COVIDレジリエンス(耐性)ランキング」で韓国が上位にあることに言及し、「このニュースはネットであまり報じられていない」とした上で「ポータルサイトのAI(人工知能)がなぜこの記事を選ばないのか、韓国の防疫が失敗したと言いたいのだろう」と主張した」

     

    ブルームバーグが発表した「COVIDレジリエンス(耐性)ランキング」は、10月末のデータである。11月については、韓国のランキングは大きく低下しているはずだ。こういう、都合の良いデータだけ集めて「K国防疫」自慢すべきでない。

     

    (6)「これまで金氏は、大統領選挙における不正選挙から旅客船セウォル号などに至るまで、数々の陰謀論を広めてきた。最近は文在寅政権が輸入を進めるアストラゼネカ製ワクチンがFDAで未承認となっていることについて、「アストラゼネカは英国企業なのでFDAは承認を遅らせているが、これにはファイザーやモデルナなどの米国企業が影響力を行使している側面もあるはずだ」という趣旨の発言も行った。金氏は、そのたびに「小説を書いてやる」「合理的な推論」などと口にしながら自らの陰謀論を訴えたが、今回の主張については「仮説」として取り繕った」

     

    ともかく、金氏はジャーナリストとしての資格を問われるほどの問題を抱えている。文大統領支援のためなら、何でもやるという人物なのだ。こういう熱狂的な支援者が、文大統領を支えている。

     

    次の記事もご参考に。

    2021-11-26

    韓国、「コロナ」日本の防疫対策参考にせず、中国並の手法採用し大失敗「Kモデル失墜」

     

     

    a0960_008417_m
       
       

    日本の民放では、ワイドショーで韓国政治が取り上げられる。芸能番組並みの扱いである。米国の大統領選を扱う姿勢とは明らかに違っている。その理由は、「反日」「嫌日」で凝り固まった韓国政治家が、何を言い出すのか。それに関心があるからだ。そのたびに、「笑ったり」「怒ったり」という刺激を受ける。一種の見世物扱いである。

     

    まことに不謹慎な言い方だが、日韓関係はそこまで落ちてしまった。日韓が協力してアジアの安定に寄与しようなどという、真面目で前向きな話はとっくの昔に消えてしまったのだ。不幸な関係であると思う。

     

    こういう関係は、ここ20年に強まった感じである。韓国が、日本とのGDP格差を縮めるたびに、韓国の対日要求の度合いが強くなってきた。解決済みの問題を持出し、「謝罪せよ、賠償せよ」の繰り返しである。いかに「気の良い」日本人でも、こういう韓国の度を超した態度には「ノー」としか言いようがない。日韓対立の根本点はここにある。仏の顔も三度までなのだ。

     

    韓国は、来年3月の大統領選を前にして候補者が出そろった。与党候補と最大野党候補で、事実上の一騎打ちが予想されている。与党候補の李在明氏は、名うての「反日論者」である。この8月の東京五輪では、ボイコット発言をした一人である。これだけでない。日本は「大陸進出の野望に燃えている」と時代錯覚な発言をする始末だ。こんな候補者が、韓国大統領選に出ているのである。ワイドショーならずとも、この人物の外交発言を検証したい気持ちになるのは仕方ない。

     

    『中央日報』(11月26日付)は、「韓国与党大統領候補 対日強硬? 『それは誤解、私は一言で実用外交主義者』」と題する記事を掲載した。

     

    反省と刷新を連日強調している韓国与党「共に民主党」の大統領候補である李在明(イ・ジェミョン)氏が25日、外交・安全保障政策分野での「実用路線」を提示した。25日にソウルプレスセンターで開かれた外信記者クラブ懇談会で、だ。外交・安保政策でも強硬なイメージが色濃かった李氏が柔軟な実用的一面を前面に掲げる姿を見せた。

    (1)「李氏はこの日、挨拶の言葉で「私を一言で表現するなら『実用主義者』ということができる」とし「国民の人生を良くすることができるなら、保守・進歩、左・右を問わない。これは外交・国防・経済でも同じ」と述べた。李氏は続いて「理念と選択の論理を越える、国益中心の実用外交路線を堅持するというのが私の確固たる立場」と明らかにした」

    この発言は、自ら迎合主義者であることを認めたに等しいことである。「理念と選択の論理を越える」とは、どういうことか。本人は多分、「実用主義者」を名乗っているから米国哲学の「プラグマティズム」を言っている積もりだが、そうではない。プラグマティズムは、理念と現実の相克からうまれるものだ。理念は、現実によって検証され新たな理念へと発展する。これが、米国で産声を上げたプラグマティズムの真髄である。

     

    李氏が、こういうプラグマティズムを理解しているとは言い難い。要するに、変幻自在な政策を行なうと言っているだけであろう。

     


    (2)「李氏は挨拶の言葉で「韓日関係の改善にも積極的に動いていく」とし、1998年「金大中(キム・デジュン)・小渕宣言」をその解決法として提示した。李氏は「小渕首相が明らかにした植民支配に対する痛烈な反省と謝罪、基調を日本が守っていくなら、いくらでも未来志向的な韓日関係を構築することができる」と強調した。
    だが、日本の記者は「強硬発言を繰り返してきた李候補が大統領になれば韓日関係がさらに難しくなるという恐れがある」「以前、日本を『敵性国家』としていたが、今でもそのように考えているか」などの質問をぶつけた」

     

    李氏は、「韓国のトランプ」と言われた人物である。直情径行的な傾向が強く、大統領という元首に向く性格ではなさそうだ。必ず、摩擦を起すことになろう。李氏は、本質的に「反日」であり、骨の髄まで染みこんでいる。だから、そういう色のついた発言が頻繁に行なわれている。

     


    (3)「李氏は、「私が日本に対して強硬態度を取るというのは一側面だけをみた誤解」とし「韓国と日本は地理的に最も近く、相互依存的関係にあるため、協力し合い助け合えるところを探っていくべきだと考える」と回答した。李氏はまた「個人的に日本国民を愛していて、彼らの質素さと誠実さ、礼儀正しさを非常に尊重している」「何度か訪問した時も情感を強く感じた」とした」

     

    このパラグラフは、咄嗟にお世辞を言っているだけ。「個人的に日本国民を愛していて、彼らの質素さと誠実さ、礼儀正しさを非常に尊重している」ならば、敵性国家という言葉が出るはずはない。



    (4)「強制徴用賠償判決問題に関連しては、「韓国の被害者は補償金を受け取るのは次の目的で、(まず)謝罪を受けなければならないということ」としながら「それぞれ違いを認めて、その上で真剣に謝れば、最後に残った賠償問題は現実的な方案を探し出すことができる」と述べた」

     

    このパラグラフも信じられない。徴用工問題は、日韓基本条約で解決済みである。当該者に賠償金を払わなかったのは韓国政府の作為である。日本側は、有償3億ドル(1965年時点)を支払っている。それは、賠償を含んでいたのだ。謝罪が欲しくて裁判を起した、と言っているが、解決済みの問題に対して再び「謝罪せよ」という裁判を聞いたことはない。すべて、金銭欲しさから始まった裁判である。韓国の国民性では、「物質的豊かさ」を最大の価値とする民族である。先進国の「家族が最も大切」という価値観と異なっているのだ。

     


    (5)「
    李氏は、日本の右翼政界に対してはこの日も批判をやめなかった。「現実的に権限を持っている政治勢力が具体的にどのような考えをしているかという点でみるなら、特定の時期には(韓国を侵攻した)大陸進出の欲望が一瞬かすめる時もある」と述べた。これに先立ち、李氏はこの日午前、ソウル中区(チュング)ウェスティン朝鮮ホテルで開かれた韓国日報のコラシアフォーラムでも「日本の政界が終戦宣言を反対することに対して、我々は大韓民国の国益を守るという面ではっきりと立場を表明して指摘しなければならない」と述べた。

     

    全くの時代錯誤的な発言である。韓国は、右翼とか左翼とかレッテル貼りの政治感覚である。この伝で言えば、自民党は右翼になる。その右翼が握っている日本政治とどうやって折り合いをつけるのか。海洋国家の日本が、なぜ、朝鮮半島へ再び触手を延ばすことになるのか。米韓同盟が生きている韓国へ、自衛隊がどうやって攻めていくのか。常識で考えられない妄想に耽っているのである。まともには、考えられない相手である。

    a0960_008532_m
       


    南アフリカの国立伝染病研究所などは11月25日、同国で新型コロナウイルスの新たな変異ウイルスを確認したと発表した。ウイルス表面の突起状のたんぱく質「スパイク」に多数の変異が生じており、感染力が強くワクチンが効きにくい可能性がある。英国などが相次ぎ南アや周辺国との直行便を禁止するなど、各国は警戒を強めている。『日本経済新聞 電子版』(11月26日付)が報じた。

     

    南アの保健当局は新たな変異型が22件確認され、検出される割合は増加傾向にあると明らかにした。首都プレトリアや最大都市ヨハネスブルクなどで新たな変異型の感染者が増えている。南アで同日に確認された新型コロナの全感染者数は2400人超で、500人を切っていた今月中旬から急増しているという。わずか10日余りで5倍弱の増加である。これだけでも、感染力の強さが分かる。

     


    『中央日報』(11月26日付)は、「『歴代最悪の変異株』…デルタより強力な『ニュー』型、すでに南アを襲っていた」と題する記事を掲載した。

     

    今月11日、アフリカ南部ボツワナで初めて見つかった新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)の新型変異株ウイルス(B.1.1.529)の急速な拡大で、世界保健機関(WHO)が緊急対策会議を招集した。「歴代最悪の変異株」の可能性に対する警告が出ている中、英国やイスラエルなどはこれら拡大国からの入国禁止を宣言した。

     

    (1)「25日(現地時間)、英紙『フィナンシャル・タイムズ』(FT)などによると、WHOは26日、新型ウイルスB.1.1.529にギリシャのアルファベットを名付けた新しいコード名「ニュー(N)」を付与してこれに対する対策を議論する予定だ。WHOは新型ウイルスの感染力などの特性を考慮して「懸念される変異株(VOC)」や「注目すべき変異株(VOI)」などに指定して管理している

     

    WHOは、最初から「危険変異株」として管理している。コロナに感染したエイズ患者で新型株が発生したとみられることから、一層、危険視されているようである。

     


    (2)「この日、FTはある関係者の言葉を引用して「WHOはまず新ウイルスをVOIに入れて監視する予定」と説明した。WHOのVOIリストには今年1月にコロンビアで初めて報告されたもっとも最近の「ミュー株」を含めてラムダ、イータ、イオタ、カッパ株などが含まれている。WHO指定のVOCには現在アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ4種がリストインしている。WHOが11月11日に初めて報告されたB.1.1.529変異株をVOIとして登録する場合、これは現在の優勢種であるデルタ事例より数カ月以上早い。デルタ株の場合、昨年10月にインドで初めて報告されてから今年4月4日のVOI指定、その後1カ月過ぎた5月11日にVOCに格上げされた」

     

    現在のデルタ株が、今年4月4日にVOI指定された経緯に比べ、今回のB.1.1.529変異株がVOIとして登録されれば、いかに「猛威」であるかをうかがわせている。危険な変種と言える。

     


    (3)「WHOが、このように素早い対応に出た理由は、今回の新型変異株が防疫専門家の間でも「最悪の変異株」という評価を受けているためだ。この変異株はウイルスが宿主細胞に浸透する過程で使われるスパイクタンパク質だけで32の遺伝子変異がある。強い伝播力が特徴のデルタよりも2倍多い。英国保健安全庁は、「新型の変異株が現在新型コロナワクチンの基盤としている従来のコロナとは劇的に異なるスパイクタンパク質を持っている」とし「以前の感染で獲得した自然免疫とすでに発売されているワクチン接種で生成された免疫反応をすべて回避する可能性がある」と発表した」

     

    デルタ変異株の伝播力は、2.8と言われている。今回の変種株がデルタ変異株の2倍とすれば、何と5.6にも達する。想像しただけでも卒倒しそうな伝染力である。

     

    (4)「これに先立ち、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの遺伝学者、フランソワ・バロー教授は、該当の変異株に対して「コロナに感染したエイズ患者で新型株が発生したとみられる」とし「免疫力が低下した体内でウイルスが長く留まりながら抗体を避ける方向で進化した可能性がある」と分析した。すでに南アフリカ東北部ハウテン州などでは新型株の感染者が続出している。

     

    発生源は、エイズ患者であることが、「免疫力が低下した体内でウイルスが長く留まりながら抗体を避ける方向で進化した可能性」をもたらしているという。

     

    (5)「BBCによると現在までに確認された新規感染者は南アフリカ77人、ボツワナ4人、香港1人など82人となっている。ただし南アフリカ伝染病対応および革新センター(CERI)のオリベイラ所長は「ハウテン地方で新たに報告された新型コロナ感染者1100人中90%ほどは新しい変異株に感染したとみられる」とし「この変異株は南アフリカで2週も経っておらず、デルタ株を圧倒している」と評価した

     

    この変異株は、南アフリカで2週も経っていないが、デルタ株を圧倒する感染力を見せている。日本は、水際で食止めなければならない。

     

    日本も、一難去ってまた一難ということになりかねないが、最近、コロナ感染者で重症化する人とそうでない人との間に、ある特色が見られるという。

     


    『ニューズウィーク 日本語版』(2020年12月3日付)は、「
    新型コロナが重症化してしまう人に不足していた『ビタミン』の正体」と題する記事を掲載した。

     

    満尾正医師の研究成果という。「この研究からは、「重症者は明らかに血中ビタミンD濃度が低い」ことがわかりますが、軽症者でも血中ビタミンD濃度が低いということは、重症度にかかわらず新型コロナに罹患する人は血中ビタミンD濃度が低い傾向があるのかもしれません。ただし、血中ビタミンD濃度が低い人と高い人で罹患しやすいかどうかを比較したわけではありませんので、現時点では、血中ビタミンD濃度が低いと新型コロナに罹患しやすいと断言することはできません」としている。

     

    ワクチン接種のほかに、マスク励行、手洗い励行、換気励行という生活習慣を守るほか、食べ物による免疫力向上も不可欠のようだ。ビタミンDは、いわし丸干し、サケ、さんま、しらす、きのこ、キクラゲなど、日本人の食卓に馴染みあるものばかりだ。日本人のコロナ犠牲者が少ないとされる理由は、こういう食品群の摂取にあるのかも知れない。

    このページのトップヘ