韓国は、世界的な半導体不足で価格高騰の恩恵を受けて輸出が好調である。7月の輸出額が前年同期より29.6%も増えた。貿易統計を集計し始めた1956年以降の65年で月間基準では最高を記録した。3月からは、5カ月連続で輸出額が500億ドルを突破したほど。
この韓国で異変が起こったのだ。輸出急増の裏で「ウォン安」に見舞われたもの。理由は簡単である。今後の輸出変調を先取りした動きである。韓国は、日本経済を抜いたと豪語するが、海外から見た韓国経済への評価はこの程度。お気の毒にも、底が浅く「漂流するコリア経済」という評価に変わりないのだ。
『朝鮮日報』(8月14日付)は、「『3大悪材料』に見舞われた韓国、10カ月ぶりウォン安水準」と題する記事を掲載した。
米FRBの早期テーパリング示唆・デルタ変異株流行拡大・半導体シェア低下懸念が、韓国を襲っている。外国人投資家たちの韓国株売却「セル・コリア」により、株式市場だけでなく外国為替市場の不安も膨らんでいる。外国人投資家たちが韓国株を売って得た金をドルに変えていることから、13日のウォン=ドル相場はこの10カ月間で最もウォン安の1ドル=1169ウォンを記録した。
(1)「昨年末(1086.3ウォン)に比べて7.6%のウォン安だ。今週(9~13日)だけで2.4%(26.9ウォン)のウォン安になった。専門家は「米国が早期にテーパリング(量的金融緩和政策の段階的縮小)を行う可能性があるため、世界的に見てもドル高傾向にあるが、最近のウォン安は主要国の通貨に比べても急だ」と語った」
14日の韓国株式市場で、総合株価指数(KOSPI)は7日続落した。終値は前日比37.09ポイント(1.16%)安の3171.29。終値ベースでは5月28日(3188.73)以来2カ月半ぶりに3200を割り込み、5月27日(3165.51)以来の安値となった。ウォン=ドル相場の終値は7.8ウォン安の1169.0。こうした「セル・コリア」の背景は、次の3点とされる。
1)米FRBの早期金融緩和基調の打ち止め。この影響で、韓国の利上げが加速化される。
2)デルタ変異株の流行拡大。韓国のワクチン接種は、OECDで最も遅れている。
3)半導体シェア低下懸念。米国政府のテコ入れで、インテルの市場奪回戦術開始と半導体受託企業の買収戦略の余波を懸念。
(1)「外国人投資家たちの離脱を加速化させる3大悪材料に挙げられているのは、「米国の早期テーパリングの可能性」「明るいとは言えない半導体展望」「世界の下位圏にある韓国の新型コロナワクチン接種率」だ。米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)のクリストファー・ウォラー理事は8月2日、「早ければ10月から債券買い入れを減らしていく可能性がある。9月には、(テーパリング)計画の発表を準備しなければならないだろう」と述べ、来年ではなく今年の秋にテーパリングが開始される可能性を示唆した」
韓国経済の弱点は、輸出依存度の高いことである。世界景気の変調が、最初に韓国輸出統計に現れる点で、「炭鉱のカナリヤ」とも呼ばれる存在である。炭鉱で二酸化炭素が発生すれば、最初にカナリヤに現れるという意味だ。韓国輸出は、7月まで絶好調であったが、それは過去のことである。先行きについては、全く違う尺度で韓国を計っているのである。気の毒だが、韓国の評価はこの程度なのだ。
(2)「韓国の主力産業である半導体の展望が明るくないことも問題だ。今月12日と13日の二日間、外国人投資家たちは韓国時価総額1位のサムスン電子株を4兆ウォン(約3770億円)、2位のSKハイニックス株を1兆ウォン(約942億円)売り越した。ジョー・バイデン米大統領が500億ドル(約5兆4800億円)規模の半導体支援策を議会に要求したというニュースで、韓国・台湾の半導体市場シェアが低下するだろうとの懸念が高まった。サムスン電子の半導体業界におけるライバル企業・TSMCの比重が高い台湾加権指数も13日に1.4%下がった」
半導体も、米国の巻き返しが始まる。半導体の「総本家」は米国だ。そのことを忘れて、「半導体の韓国」などと有頂天になっていると、足元をさらわれるのである。日本も台湾企業と組んで「再興」を狙っている。サプライチェーン再編成という流れの中で、韓国は翻弄される運命だ。
(3)「デルタ変異株の拡散による景気回復遅延の懸念も、外国人投資家たちのセル・コリアをあおる要因だ。韓国の新型コロナワクチン接種完了率は15%台で、経済協力開発機構(OECD)諸国の中で最も低い。ポール・チェCLSA証券リサーチセンター長は「ワクチン接種が遅れており、景気回復が遅いことが影響している」、「当分の間、外国人投資家たちの売りムードが変わる理由がこれといってない」と語った」
韓国の半導体購入契約は、昨秋から始まるなど大きく出遅れた。この影響で、ワクチン接種率が15%台とOECDでは最低ゾーンに沈んでいる。インド型の変種が襲来しているので、韓国は未接種率の大きさとからみ脅威になっている。
(4)「外国人投資家たちの売りは、世界的なドル高現象と相まってウォン安を加速化させている。外国人投資家たちは普通、ウォン安になると為替差損を懸念して韓国株を売る。ところが、外国人投資家たちが売った株があまりにも多いため、ウォン安がいっそう急速に進むという悪循環に陥っているものだ。ブルームバーグ通信によると、最近3カ月間の対ドルレートの下落幅は韓国ウォンが-3.4%と最も大きかった。日本円(-0.8%)はもちろん、最近企業に対する規制強化で経済が打撃を受けている中国元(-1.8%)も、韓国より下落幅が小さかった」
外人投資家にとって韓国株は、「オモチャ」扱いである。バッド・ニュースは敏感に反応して売り抜け、資金を回収している。外人投資家は、中国株で酷い目に遭っているので、それだけ対応(売り抜け)は早くなっている。これが、ウォン安へはね返るもの。1ドル=1200ウォンが、マジノ線である。「ウォン危機」が、取沙汰される価格ゾーンだ。
問題は株安の襲来で、20~30代のにわか投資家が、大きな痛手を受けることである。住宅高騰で資金作りが間に合わず、株式投資に手を出した「初心者投資家」がゴマンといる。こちらは、どうするのか。他人事には思えないのだ。与党の大統領選候補にはマイナス材料である。