勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    あじさいのたまご
       

    国際世論では、米国の撤退に当っての不手際が議論されている。アフガンを整然と撤退できなかったことはミスとしても、これからアフガンの「お守り」をさせられる中国には、どれだけコストを払うのか分からない不気味さがつきまとっている。

     

    「米国が支援してきたアフガニスタンの民主政権崩壊は、中国の指導体制にとって歴史的な重大局面だ。習近平国家主席はずっと前から、アジアの安全保障はアジア人に任せるべきだと主張してきた。そこで今、中国が迫られているのは、アフガニスタンの経済的な安定を後押ししながら、近隣への投資を守ることができると証明することだ。習氏は数多くの大きな課題を抱えたと言える」。『ロイター』(8月16日付コラム「米国が手を引くアフガン、中国に課せられた重い『使命』」と題するコラムでこう述べている。その通りであろう。

     


    『大紀元』(8月21日付)は、「
    アフガンが再び過激派の『聖域』に、国際社会に警戒感」と題する記事を掲載した。

     

    イスラム主義組織タリバンがアフガニスタンの政権を掌握したことで、アフガンが再び過激派らの「聖域」になるのではないか――。国際社会にはこうした警戒感が広がっている。

     

    (1)「タリバンは、アフガンを決して他国攻撃の基地として利用させないと表明した。しかし専門家は、2001年9月11日の米同時多発攻撃を実行したアルカイダや、アフガンの隣国パキスタンなどで活動する幾つかの過激派組織とタリバンは今なお関係を持っていると指摘する。例えばタリバン指導者の1人で最強硬派グループ「ハッカーニ・ネットワーク」を率いるセラージュッディン・ハッカーニ氏は、米政府から国際テロリストに指定されたほど」

     

    タリバンは、決して他の過激組織と無縁の独立した存在ではない。他の過激派組織と結びついていることが明らかにされている。この点が、中国にとっては厄介なことになってきた。

     


    (2)「スタンフォード大学国際安全保障協力センターで南アジアの安全保障問題を研究するアスファンディア・ミール氏は、「ジハード主義者たちはタリバンの復権を大喜びし、感激している。南アジアから中東、アフリカに至る主要な過激派組織はこの事態を認識し、アルカイダ勢力はタリバン復権を自らの勝利と見なしている」と述べた」

     

    アフガンがタリバンの手に墜ちたことは、他の過激派を喜ばしている。近代官僚制があるわけでないから、アフガン国内の混乱が予想されるのだ。

     

    (3)「アルカイダのほかにも、ソマリアのアル・シャバーブ、パレスチナ自治区のハマス、パレスチナ・イスラミック・ジハード(PIJ)といった組織がタリバンに対して祝意を伝えてきた。また米国など西側諸国と敵対しているイエメンの反政府武装勢力フーシ派は、アフガン情勢は外国による「占領」が必ず失敗に終わると証明したと強調している。アフガンのタリバンとは別組織のパキスタン・タリバン運動(TPP)もタリバンとの連携に動くとともに、アフガン国内に収監されていた何百人もの構成員がタリバンの政権掌握とともに解放されたと明らかにした

     

    アフガン・タリバンには、別組織のパキスタン・タリバンも「共闘」の構えであるだけに、「独立性」維持が極めて困難であろう。テロ組織同志の抗争は避けたいだろうから、最終的には一致して動く恐れが強まるに違いない。そうなると、中国にとっては厄介な荷物を背負うことになる。新疆ウイグル族への「連帯闘争」が、始まってもおかしくないからだ。

     


    (4)「国連安全保障理事会に7月、専門家が提出した報告書によると、アルカイダはアフガンの34州のうち少なくとも15州に拠点を築いている。過激派組織「イスラム国」(IS)も首都カブールをはじめ幾つかの州で勢力を拡大し、戦闘員を潜伏させているという。ISはタリバンと対立しているものの、どんな混乱も足場強化のために利用したり、政権樹立に伴って穏健化するタリバンから離脱するよう強硬派戦闘員をそそのかしたりする可能性がある、と一部専門家や政府当局者は警鐘を鳴らす」

     

    アフガニスタン内部には、アルカイダや「イスラム国」が拠点を築いているという。これら組織が、これからどのような動きをするのか。時限爆弾のような存在である。

     

    (5)「国連のグテレス事務総長は安保理に対して、「アフガンで国際テロの脅威を抑え込むためにあらゆる手段を駆使する」よう訴えた。安保理も、どの国も脅威を受けず、攻撃されない道を確保するにはアフガンでのテロとの戦いが重要だとしている。事情に詳しい2人の関係者は、中国からの分離独立を掲げる東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)が最近何度かタリバンと協議していることに、中国政府が神経をとがらせていると明かした。あるタリバン関係者はロイターに「中国側はわれわれに接触してくるといつもETIMの問題を持ち出す」と認めたが、中国に対してはタリバンが何らかの攻撃を許すことはないと保証したと付け加えた」

     

    中国には、新疆ウイグル族「解放」を狙っている東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)の存在が最も気懸りなところだ。上から目線の中国が、これら民族闘争主義者相手にどのような扱いをするのか見ものである。少しでも見下す「戦狼外交」をやれば、一発で発火間違いなしである。

     

     

     

    a1320_000159_m
       


    韓国は、未だに「風水」(迷信)が生きている社会である。これが、科学的知識の普及を阻んでいる。韓国の反原発グループは、福島原発事故の「死者多数」とデマ情報を流し、国内で「反原発ムード」を煽ってきた。

     

    文政権が原発廃止を実行に移した背景には、こうした非科学的な「風水信者」の存在がある。文政権は、反原発=太陽光発電へと進んだ。その裏では、太陽光発電をめぐる「悪徳業者」が跋扈して、補助金を食い物にしてきた実態が明らかになった。

     

    『朝鮮日報』(8月20日付)は、「朴元淳前ソウル市長推進の太陽光事業、14業者が補助金118億ウォン受け取り後に廃業」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「朴元淳(パク・ウォンスン)前市長在任時代の「ベランダ型太陽光普及事業」に参加し、補助金を受け取った後、故意に廃業したと思われる14の業者について、ソウル市が告発することを19日、明らかにした。ソウル市の太陽光事業は苦情が年間2万6000件に達するほど市民たちが不満を訴えている事業だ。呉世勲(オ・セフン)市長は13日、「太陽光関連の複数の業者が相次いで廃業しており、これに伴う被害はそっくりそのまま市民が被っている」として、法的対応を予告した」

     

    前ソウル市長は、セクハラ事件で自殺するという痛ましい歴史を残したが、太陽光発電事業でも悪徳業者を野放しにするマイナスを残した。前市長は、与党「共に民主党」所属である。現市長は、野党「国民の力」出身で元ソウル市長でもある。

     

    (2)「ベランダ型太陽光普及事業は、ソウル市が毎年、一定の資格を有する太陽光業者を選定すると、市民が選定された業者に連絡、業者が住宅のベランダなどに小規模(325ワット)の太陽光設備を設置するという事業だ。設置1台あたり市民が7万ウォン(現在のレートで約6500円)を負担し、ソウル市と区が補助金約43万ウォン(約4万円)を業者に支援する。朴前市長が2014年から推進し、ソウル市内の住宅のあちこちに38.9メガワット規模の設備12万472台を設置した」

     

    悪徳業者は、太陽光設備1台当り約4万円の補助金を狙っていた。市民へ補助金を出す理由は分かるが、設置業者に一律の補助金を出す意味が分からない。無駄である。ここが政治的な狙いであって、業者を「共に民主党」支持にさせる目的であったのであろう。補助金が必要ならば、個別業者に支給するのでなく、協同組合的な組織に与えて後で監査し易くする工夫をすべきであった。それがないのだ。

     

    (3)「ソウル市によると、合計68の太陽光業者が協同組合や株式会社などの形でこの事業に参加し、補助金536億ウォン(約50億円)を受け取ったという。このうち、14業者が補助金118億ウォン(約11億円)を受け取った後、3年以内に廃業したとのことだ。これは5業者に1業者の割合になる。11業者は補助金を受け取って1年もたたないうちに廃業した

     

    ソウル市が、途中で廃業するような経営基盤の脆弱な業者を選んだこと自体、責任を問われる問題である。とりわけ、11業者は補助金を受け取って1年以内の廃業である。補助金を返納させるべきであった。

     

    (4)「事業に参加した業者は、補助金を受け取ってから5年間、太陽光パネルやケーブルなどを定期点検・無償修理しなければならないが、これらの業者はアフターサービス義務を負わないよう意図的に廃業したものとソウル市では見ている。ソウル市関係者は、「問題になっている14業者を詐欺、業務上横領、偽計による公務執行妨害などの疑いで警察に告発する予定だ」と語った。これらの業者が設置した太陽光発電装置2万6858台については、ソウル市が別の業者に追加料金を払って点検・メンテナンス作業を任せなければならない。ソウル市はこれに対する損害賠償を請求し、補助金の返還も求める方針だ」

     

    業者への補助金が、定期点検・無償修理名目である。その義務を果たさずに廃業とは契約違反である。補助金返納は当然の措置である。ソウル市の責任も重大だ。

     


    (5)「特に、廃業した業者のうち3業者の代表は、既存の会社を廃業した後、別の法人名義で再び太陽光事業に参加して補助金を受け取っていたことが明らかになった。ソウル市はこれら3業者との契約を直ちに解除し、今後5年間にわたり補助金関連事業から排除することにした。ソウル市関係者は「専門の法律対応チームを設け、近く関連の法的措置を済ませる」と話している」

     

    下線部分は、呆れる話だ。明らかに詐欺行為である。ソウル市は、この詐欺にまんまと引っかかっている。何をかいわんや、である。ソウル市の管理システムがザル法であったほかに、前市長と政治的なつながりがあったのであろう。ともかく、杜撰な話である。

    ムシトリナデシコ
       

    韓国は、「反日」と言えば国を挙げて燃え上がる。だが、経済は厳しい局面へ差し掛かっている。株価やウォンに大きな影響をもたらす、経済のファンダメンタルズで異変が起っているのだ。これを無視し続ければ、韓国は遠からず「三流国」へ転落する。そうなれば、日本へ対抗するという気力も消えるであろう。

     

    8月20日の韓国株式市場で、総合株価指数(KOSPI)は続落した。終値は前日比37.32ポイント(1.20%)安の3060.51と、3月29日(3036.04)以来の安値である。外国為替市場では、ウォンが1ドル3.4ウォン安の1179.6である。危険ラインの1170ウォンを割り込み、「マジノ線」とされる1200ウォンへ接近している。

     

    株価・為替が、8月9日から安値基調に転じているのだ。この間に反転したのは、8月11日の一日だけという「黒星」続き。理由は、下記の3点である。

     

    1)FRBの早期金融緩和基調の打ち止め。この影響で、韓国の利上げが加速化される。

    2)デルタ変異株の流行拡大。韓国のワクチン接種は、OECDで最も遅れている。

    3)半導体シェア低下懸念。米国政府のテコ入れで、インテルの市場奪回戦術開始と半導体受託企業の買収戦略の余波を懸念。

     

    1)は、韓国も外貨流出を食止めるべく「防衛的利上げ」を迫られる。これまでの低金利下でたっぷり借入れをしてきた家計が、利上げの影響を強く受ける。すでに、株価も下落しているので借入金による個人投資家は、株式を処分して返済も覚束ないリスクを抱える。



    2)は、政府の杜撰なワクチン購入交渉が露呈している。モデルナ社との契約では、具体的な購入数量と購入時期が明示されていないという「盲契約」が暴露されている。こうして、韓国のワクチン接種完了時期が見通せないという事態である。

     

    3)は、半導体の未来問題である。「韓国の半導体」と言われるほどの一枚看板である。米国のインテルが、猛烈な巻き返しを図っているのだ。インテルは、2025年までに世界一を実現すると宣言するほどの気合いを見せている。技術的に最先端を目指しているので、韓国にとって脅威である。

     

    以上のように短期的問題と構造的な問題が絡み合ってきた。これが、韓国経済の未来を一段と暗くさせている。さらに、次のような問題が覆い被さっている。

     


    1)生産年齢人口の低下で、潜在成長率が急減過程にある。

    2)出生率の急減で、人口が50年後に3割減となって財政破綻が懸念される。

     

    『韓国経済新聞』(8月19日付)は、「韓国『経済潜在成長率の急激な下落傾向 逆成長を懸念』」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の生産年齢人口当たり潜在成長率が持続的な下落傾向を見せ、逆成長につながる恐れがあるという警告が出た。



    (1)「韓国経済研究院は、1981年から2019年まで生産年齢人口(15~64歳)当たり潜在成長率を計算した結果、次のような結果が得られた。

    1980年代 7.6%

    1990年代 5.3%

    2000年代 3.8%

    2010年代 2.1%」

     

    過去からの推移を見れば、2020年代の潜在成長率は、1%以下へ低下必至である。年金受給率が53%程度という中で、高齢者の老後をどうやって守るのかという切実な問題が浮上している。韓国政府には、何らの対策もないのだ。ほぼ、日本並みの経済成長率に低下するだろう。財政負担が重くのしかかる。たびたび通貨危機を引き起す韓国経済は、健全財政が絶対条件である。

     


    『中央日報』(8月20日付)は、「50年後には韓国人口3689万人 ソウルも629万人に」と題する記事を掲載した。

     

    (2)「少子高齢化で韓国の人口が持続的に減少し、50年後である2067年には3689万人、100年後である2117年には1510万人に過ぎないだろう予想されている。100年後の人口推計は今回が初めてだ。監査院は、統計庁資料などを分析して最近まとめた「少子高齢化監査結果報告書」で合計特殊出生率0.98人(2018年全国合計特殊出生率)と中位水準の社会的移動が続くと仮定してこのように分析した」

     

    下線部の合計特殊出生率「0.98」は、甘い仮定である。すでに昨年は、「0.84」へ低下している。今年は、「0.7台」へ低下し、来年は「0.6」台という破滅的な予測も出ているほど。政府の対応は、ゼロ同然である。雇用問題が解決しない限り、出生率増加は見込めないからだ。

     


    韓国の人口は、5178万人(2020年)である。これが、50年後には3689万人という予測である。ざっと29%減である実際は、これ以上の減少に見舞われるだろう。現在の10~20台の若者にとっては、想像もできない社会環境になる。文政権を批判して保守党支持に向かう気持ちが分かるのだ。

     

    (3)「ソウルの人口は、2017年977万人で50年後には64%水準である629万人、100年後には27%水準である262万人で4分の1になると推計された。地方の人口減少はさらに激しい」

     

    こうなれば、無理して住宅を購入しても価格は年々、下落していく。もはや、「資産」ではなくなるであろう。この状況でもなお、「反日」をやって気勢を上げるのだろうか。虚しい「こだま」が返ってくるだけだ。



    a0960_008571_m
       

    中国経済は、パンデミックから回復した形だが、実態は相当に苦しんでいる。個人消費が振わないのだ。米国は、大型財政で個人給付金を与えたこともあり、国民の懐はかつてない豊かさだ。中国は、厳しいロックダウンの影響で財布は汲汲としている。

     

    こうして、米中経済が逆転の動きを見せている。今年4~6月期の米国のGDPの伸び率は、前年同期比12.2%となり、中国の7.9%を上回った。多くのエコノミストによれば、米国優位の状況は少なくともあと数四半期続くとみられる。米国の経済成長率が一定期間継続して中国を上回るのは、少なくとも1990年以降では初めてとなる。以上は,『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月19日付)が報じた。

     


    中国にとっては、「臥薪嘗胆」(がしんしょうたん)の思いであろう。GDPで米国追撃の大方針に狂いが生じたのだ。習近平氏が焦りに焦って始めたのが、「高額所得者」虐めである。

     

    『大紀元』(8月20日付)は、「習近平氏、『高所得者へ富の再分配』『共同富裕』を強調、毛時代再来の兆し」と題する記事を掲載した。

     

    中国共産党の習近平総書記は17日、共産党中央財経委員会の会議に出席し、新たな富の再分配を強調し、高額所得者層への「規制と調節」を強化するよう指示した。民間企業への取り締まりが相次ぐ中、高額所得者もターゲットになったことについて、「資産家や地主を打倒し、土地を分け合う」政治運動を始めることと文化大革命の再来を意味するとの指摘がある。

     


    (1)「国営新華社によると、習近平氏は高官らに対して、当局は「社会的な公正」を推進するために、富の再分配を行う制度を構築しなければならないと述べた。習近平氏は会議で、「高額所得者に対する規制と調整を強化する必要があり」、「過剰な所得を合理的に調整し、高額所得者や企業に対して社会への還元を促す」などと発言した。米CNNは、新華社の報道は詳細を明らかにしなかったものの、習近平政権が高額所得者への大増税などで、富の再分配を行っていく可能性があると分析。また、新華社が「高額所得者」の定義や判断基準を公表しなかったことに対して、中国国民は自身が当局の規制対象になるのではないかと強い不安に陥っているという」

     

    高額所得者と言っても、「フロウー」(所得)と「ストック」(財産)がある。ここで、所得だけを狙って大増税しても、「ストック」の住宅(固定資産税)を見逃せば、新たな不公平を呼ぶ。住宅は、共産党幹部が複数所有しており、こちらを見逃せば片手落ちだ。詳細を発表しないだけに、「フロウー」だけを狙っているのかも知れない。

     

    (2)「CNNや『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)などの米メディアは、習近平氏が同会議で述べた「共同富裕」に注目した。習近平氏は会議で、共同富裕は国民全体の富裕という意味で、「一部の人が富裕になることではない」と強調した。毛沢東は1950年代、共同富裕という概念を考案した。この政策方針の下で、毛沢東の統治時代では、共産党は裕福な地主やエリートから土地と資産、権利を次々と奪った」

     

    共同富裕は、社会的不平等の解消である。この中に、共産党幹部を入れるのか。多分、除外するだろう。そうしなければ、「習3選」の支持を得られないので、民営経営者だけを対象にする可能性が強い。

     

    (3)「習近平政権はこのほど、金融リスクの回避や国家安全保障上の懸念などの理由で、国内のIT企業、金融企業、教育関連企業に対して締めつけを強化した。このため、中国国内外の株式市場で、これらの企業の株価が急落し、投資家に莫大な損失をもたらした。米CNBCは、中国当局が企業に対して規制を強化した背景には、この富の再分配と共同富裕という当局の方針があるとの見方を示した」

     

    株価を下落させることは、富の再分配ではない。「家畜を太らせて食べる」という建前からいえば、株価を下落させるのは下策である。高い株価を維持して、それを社会福祉機関へ贈与させる方法がベターな選択であった。株価下落は、習政権が何らの青写真も持っていない証拠である。

     


    (4)「豪州在住の中国人学者、皇甫静氏は米『ラジオ・フリー・アジア』(RFA)に対して、国際社会の中国対抗の動きが加速する中、「習氏は『土豪を倒し、土地を分ける』という政治運動を新たに起こすことで、国民の共産党政権に対する支持を得たいという狙いだ」と指摘した。共産党は結党した1920年代、富裕層の資産を貧困層に分け与えることによって一般労働者の支持を取り付け、革命の成功につながった。「土豪を倒し、土地を分ける」は当時、打ち出されたスローガンだった。いっぽう、革命成功後、労働者に与えた土地を「人民公社化運動」を通じて再び奪い取った」

     

    「土豪を倒し、土地を分ける」という革命運動の原点に戻るならば、江沢民氏が行った民営経営者を共産党へ入党そうさせたこと自体が誤りである。だが、こうした民営経営者を党から排除する動きに出られるはずはない。「習3選」が絡むからだ。

     


    (5)「皇甫氏は、「習近平氏は完全に毛沢東の失策を繰り返しているだけ」と批判し、「中国が毛時代の鎖国状態に戻ることは、国民にとって大きいな災いになる」と述べた。1989年に学生らの民主化運動に参加した万潤南氏は、「習近平氏の会議での発言と中国共産党の歴史を合わせてみると、中国当局は今後、国内で再び文化大革命を展開する恐れがある」と推測した」

     

    習氏は、3選を確定させた後に、民営経営者を党から排除するという荒療治に出るだろうか。こういう手荒いことを始めざるを得ないほど、中国経済は苦境に立っていることを物語っている。苦境の度合いが大きいほど、手荒なことを始めるに違いない。文化大革命再来という最悪事態では、中国経済の破綻を意味する。

    あじさいのたまご
       


    韓国与党政治は、もはやどうにもならないほど「腐敗」している。来年3月の大統領選を有利にするために、「マスコミ規制法」(言論仲裁法)を強引に成立させる動きを見せている。

    与党「共に民主党」は8月19日、韓国国会文化体育観光委員会(以下、文体委)全体会議で、「言論抹殺、言論掌握」という野党の反発を押し切り単独議決した。これで、国会で採決を待つだけとなった。

    何が問題か。裁判所がニュースについて、いわゆる「フェイクニュース」と「虚偽情報」を決められるようにした点だ。これは、言論の自由に司法が介入することである。政権に不利なニュースは、「フェイクニュース」と「虚偽情報」として司法に訴え取り締るという天下の悪法である。「解釈の乱用」につながる恐れが大きく、萎縮した記者は自ら検閲をすることになるのだ。

     


    文政権は、これから始まる大統領選で与党候補の批判記事を「フェイクニュース」「虚偽情報」として取り除こうと言う魂胆である。今年4月の2大市長選で与党候補は大敗しているだけに、何が何でも政権維持という「悪あがき」を始めた。これが、韓国を滅亡の淵へ連れて行くのだ。それが分からないとは、どうにもならない愚直の極みである。

     

    さらに驚くべきは日頃、正論らしきことを滔々と述べ、日本がいかに正義に反しているか糾弾している『ハンギョレ新聞』が、この言論取締法について一言半句も論じていないことだ。このあからさまな文政権支持ぶりは、自ら言論の自由を放棄した「政権機関紙」に成り下がっている。

     


    『中央日報』(8月20日付)は、「言論抑圧法を共助、韓国与党・政府・大統領府『沈黙のカルテル』」と題する記事を掲載した。

     

    19日午後、韓国新聞協会・寛勲クラブ・大韓言論人会・韓国記者協会・韓国新聞放送編集人協会・韓国記者協会・韓国インターネット新聞協会の国内メディア7団体は共同声明を出し、「言論にくつわを噛ませた違憲的立法の暴挙を糾弾する」とし「反民主的悪法に転落した言論仲裁法改正案を今からでも廃棄することを国会に要求する」とした。

    (1)「言論仲裁法改正案が一気に常任委の関門を通過したのは、民主党の「言論抑圧法5人衆」が決定的な役割をした。しかし、与党・政府・青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)内部の新派が沈黙のカルテルでフリーパスの道を開いたという見方が出ている。国民の力は「言論の自由の破壊の共犯」と批判した。青瓦台の沈黙が代表的だ。大統領選候補時代の2017年、文在寅(ムン・ジェイン)大統領はメディアの「崔順実(チェ・スンシル)ゲート」報道に「メディアの沈黙は国民のうめき声」と述べた。しかし、今回の議論について、青瓦台は沈黙ばかり繰り返した。同法案が文体委を通過した19日にも、青瓦台関係者は「国会で議論し、議決する事案」とだけ述べた」

    常に正義ぶったことを得意に喋る文大統領が、言論封殺法ではこのざまである。自らの利害関係になると沈黙して受入れる。社会派弁護士の看板が泣くのだ。 

     


    (2)「青瓦台の関係者は、中央日報の電話取材に「今回の件は、民主党が最初から全体を主導した」とした。しかし、文大統領と青瓦台のこのような態度については「強硬な親文(文在寅派閥)や党内の主導勢力に事実上の『OK』サインを出す無責任な行動」と批判が出ている。野党では「与党よりも卑怯なのは、沈黙する文大統領」との反応が出た」

     

    文大統領は、「巧言令色、鮮し仁」の典型例である。司法出身者が、言論の自由を踏みつける。そこまでして権力を維持したいのだ。「権力亡者」に成り下がった。

     

    (3)「記者出身の民主党議員も沈黙を貫いている。民主党大統領選候補者の中には、東亜日報で21年間記者を務めた李洛淵(イ・ナギョン)前代表がいる。李洛淵候補は「記者出身としてメディア仲裁法の通過をどのように見るか」という問いに「メディアが産業として持続可能性を持たなければならないのと同時に、信頼を回復し、国民の愛を受けることを願う」と曖昧な態度を堅持した」。

     

    元首相の李洛淵氏は、東亜日報記者出身である。権力維持のためなら「心の操」を売る人間になってしまった。これが、韓国社会と言ってしまえばそれまでだが、世界中のジャーナリストが法案に反対している。

     


    『聯合ニュース』(8月19日付)は、「韓国の『偽ニュース規制法』に国内外から批判 与党は来週成立目指す」と題する記事を掲載した。

     

    韓国与党「共に民主党」が、メディアの故意・重過失による虚偽報道に対して損害賠償を請求できる「言論仲裁法」改正案を19日の国会文化体育観光委員会で可決したことについて、国内外のメディア団体などが一斉に反発した。

    (4)「韓国与党「共に民主党」が、メディアの故意・重過失による虚偽報道に対して損害賠償を請求できる「言論仲裁法」改正案を19日の国会文化体育観光委員会で可決したことについて、国内外のメディア団体などが一斉に反発した。メディアに対する懲罰的な損害賠償が可能になるとされる同改正案を野党の反対を押し切って与党が可決したことについて、大韓言論人会、韓国記者協会、韓国新聞放送編集人協会など業界関連7団体は共同で批判声明を発表し、国会本会議での採決を見合わせて社会的合意を得るための手続きを取るよう要求。強行する場合は憲法裁判所に違憲訴訟を起こすなどと表明した」

     

    25日の本会議で正式議決の見込みである。メディア団体は、憲法裁判所へ違憲訴訟するという。憲法の判断を仰ぐことになろう。

     

    (5)「海外からも批判が出ている。国際新聞編集者協会(IPI)は17日にホームページで公開した声明で、「韓国は『フェイクニュース規制法』の新設を撤回しなければならない」とし、懲罰的損害賠償の導入は権力を監視する報道を威嚇すると指摘した。世界新聞協会も声明で、「全世界のメディアは『フェイクニュース法』と戦っている韓国の報道機関と共にある」と表明している。国内外の関連団体やメディアから言論の自由が損なわれる可能性を指摘され、撤回が求められているものの、与党は25日の本会議での成立を目指している」

     

    海外からも批判されている。これで、韓国政治の後進性が明らかにされた。こういう韓国政治が、日本を非難してくることに耐えられない思いがする。「正義とは何か」について理解していない彼らが、日本を糾弾することに強い違和感を覚えるのだ。

    このページのトップヘ