勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    韓国の経済状況は、確実に悪化してきた。企業は設備投資を抑制している。韓国経済の将来が見えないからだ。これでは、潜在的な成長率を押上げるエネルギーを欠く「ガス欠経済」に転落必至である。自営業者は、最低賃金の大幅引き上げで労働コスト上昇に耐えきれず廃業する。あるいは、従業員を解雇して家族労働で細々と経営を続ける最悪事態だ。この理由はどこにあるのか。

     

    文政権の経済政策が間違えているからだ。自らが革新政権を名乗っている以上、保守党政権と違うことをやらなければ存在理由がない。そういう錯覚に陥っている。文政権の支持基盤は、労組と市民団体である。これらが、現実から遊離した理想論に固執しており、文政権に圧力を加えている。

     

    理想論は結構であるし、時間が掛かっても実行すべきである。だが、労組も市民団体も最低賃金を大幅に引上げれば、それで韓国経済は好循環すると思い込んでいる。IMF(国際通貨基金)やOECD(経済協力開発機構)の担当官が、韓国の最低賃金の大幅引き上げは経済混乱をもたらすだけ、と忠告した。

     

    『朝鮮日報』(8月4日付)は、「韓国の経済危機は新自由主義のせい?」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のチェ・スンヒョン政治部次長である。

     

    韓国は、相手の議論を封じる時に証拠を出さずに、レッテルを貼ってやり込める風潮が強い。「エビデンス」(証拠)を確認しようとしない悪弊がある。特に、革新派を標榜する側にそれが顕著である。「右翼」という言葉が、相手を罵倒する際に強力な武器として使われている。これに、「反日」のレッテルを貼られたたら再起不能だ。韓国という国は、レッテル貼り=空論が支配する国である。この弊害が、現在の韓国をダメな国に陥れている。

     

    例えば、日韓併合は絶対的な悪と位置づけられている。日韓併合によって専制支配の両班(ヤンバン)制度を根絶し、経済発展の基盤ができた。こういう歴史的な研究は一切棚上げして、あたかも自力で近代化を達成したかのごとき妄念を抱いている。この奢りが、現在の韓国経済に危機をもたらした。戦後の韓国経済の発展は、日本の資本と技術の導入によって軌道に乗った。そういう謙虚な評価が抜け、反省力を奪っている。それが、問題の解決能力を著しく弱体化させた。存在するのは「奢り」だけで、「反省」の一片もない国である。

     

    (1)「韓国の最近の経済危機を巡り、政府・与党から『全ては新自由主義のせいだ』という時代遅れの論理が聞かれる。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は『韓国経済の困難な部分は新自由主義の経済政策と雇用なき成長のせいだ』と述べ、共に民主党の金太年(キム・テニョン)政策委員会議長は『過去10年間の新自由主義政策で賃金格差、所得の不平等がさらに拡大した』と指摘した」

     

    ここにも、韓国社会の悪弊が滲んでいる。誰かを悪者にして自らは責任を回避している。韓国経済が現在の混乱を招いた原因は、現状を無視した大幅な最低賃金上昇にある。この因果関係がなぜ分らないのか。「エビデンス」に基づかない空論の世界で、問題を処理しようとしているところに最大の欠陥がある。これこそ、「積弊一掃」の対象である。韓国経済は、こうやって真の原因から目を逸らして衰退するに違いない。

     

    (2)「自由市場、貿易、規制緩和を要諦とする新自由主義は、簡単に言えば、国家による介入を最小化し、市場の自律的な判断に経済と貿易の流れを委ねることが特徴だ。その反対語として、政府主導の計画中心経済がある。新自由主義が韓国社会で最初に本格化したのは、アジア通貨危機の直後だった。当時の金大中(キム・デジュン)大統領が金融市場を開放し、大規模な整理解雇を実施したほか、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が支持層の反発を顧みず、韓米自由貿易協定(FTA)の締結に踏み切った。これらは全て新自由主義の経済政策だ。現在民主党の代表室に写真が掲げられた歴代大統領2人が韓国の新自由主義の出発点だったのだ」

     

    文政権と与党「共に民主党」は、韓国経済疲弊の原点を保守政権に求め、そのバックにある新自由主義なるものを批判している。しかし、資本主義経済は本来、自由な企業の行動の上に築かれるものだ。中国の「社会主義市場経済」は、まやかしの市場経済である。文政権と与党は、どうやら中国式モデルを頭に描いて、市場経済システム自体を排斥しようと考えているにちがいない。そうでなければ、新自由主義批判という話が出てくるはずもあるまい。

     

     


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    文在寅大統領の支持率が、7週間も下落し続けている。最新調査では60%になった。就任以来の最低だが、下げ止まる要因は見当たらない。経済状況悪化が、文氏の支持率を引下げているからだ。このまま、どこまで下がってゆくか、妙な関心を持つにいたった。

     

    文氏は目下、夏休み中である。ご丁寧にも、休暇中の読書リストが公開されたが、その中には一冊の経済書も見られなかった。やっぱり、この大統領は経済に関心がないとお見受けする。

     

    『朝鮮日報』(8月4日付)は、次のように伝えた。

     

    「韓国ギャラップが3日に発表した文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率は、先週に比べて2ポイント低い60%だった。文大統領の支持率は7週連続で下落しており、ギャラップによる今回の調査もこれまでで最も低い結果となった」

     

    支持しない理由は

        経済問題や国民生活の問題が未解決:38

        北朝鮮との関係・親北的な政策:11

        最低賃金引上げ:6

     

    不支持の理由では、①と③の経済問題・最賃引上が、合計で44%も占めている。国民の不満が経済問題にあることは確実である。

     

    支持する理由は

        北朝鮮との対話再開:12%、

        外交政策がうまくいっている:11

        対北朝鮮政策・安全保障政策:9%

    庶民のための努力と福祉拡大:9

     

    支持する理由では、北朝鮮関連(①と③)が合計で21%を占める。南北対話が文政権支持の主因である。

     

    与党「共に民主党」の支持率も先週に比べて7ポイント低い41%にとどまり、昨年5月の大統領選挙以来最低となった。これに対して正義党の支持率は先週よりも4ポイント高い15%で、共に民主党に次いで2位となった。これは201210月の結党以来最も高い数値だ。

     

    与党の「共に民主党」支持率は41%である。文支持率の60%から見て、見劣りのする数字だが、与党支持以外に「文ファン」が19%ポイント存在することを窺わせている。




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    米中貿易戦争は、新たな段階を迎えた。中国が600億ドル相当の米国製品に最大25%の関税を科すと発表した。米国は、中国により知財権を侵害されているとして、先の2000億ドル25%課税案を発表した。米国は現在、加害者の中国が刃向かってきた。そういう認識であり、この争いはさらに拡大する見通しだ。米国は、EU(欧州連合)を初めメキシコ・カナダ・日本・豪州の国名を上げ、中国へ共同戦線を張ると発言する事態である。

     

    『ロイター』(8月3日付)は、「中国、報復関税発表 600億ドル相当の米製品対象 税率最大25%」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国は3日、600億ドル相当の米国製品に追加関税を課す報復措置を講じる方針を発表した。液化天然ガス(LNG)や、小・中型の航空機など5207品目に対し、5%から25%の税率をかける。トランプ米政権が今週、2000億ドル相当の中国製品に課す関税について、税率を当初発表の10%から25%に引き上げることを提案していると発表したことを受けた動き。中国商務省は追加関税措置の導入時期について、米国の出方次第としたほか、報復措置の内容は理にかなっていると強調。声明で『米国は状況を悪化させ、企業及び消費者双方の利益を脅かす状況を引き起こしている』とし、『中国は国民の尊厳と利益、自由貿易、多国間体制を守るために必要とされる報復措置を講じる必要がある』とした」

     

    中国側の声明で、「国民の尊厳と利益、自由貿易、多国間体制を守るために」と言っている。国民の尊厳と利益を一貫して踏みにじっている中国共産党が、こういう時には国民の名前を出すから吹き出す思いだ。常に念頭にあるのは、共産党員の利益だけである。固定資産税も共産党員の反対で導入できず、住宅バブルによる過剰債務のつけは、庶民に回している。そういう共産党政権が、軽々に「国民の尊厳と利益」なる言葉を使ってはならない。

     

    米国はじめ先進国の知財権を盗み出している中国が、米国の関税引き上げに報復すること自体、反省がないことを示している。泥棒が、警察官に向かい物を投げつけて対抗している構図だ。本来ならば、公務執行妨害罪に相当する。

     

    (2)「中国の発表を受け、カドロー米国家経済会議(NEC)委員長は『トランプ大統領を過小評価すべきではない』と警告。米国が欧州連合(EU)と連携し『中国に対する共同戦線を張る』ほか、北米自由貿易協定(NAFTA)再結束に加え、日本やオーストラリアとも協力していく方針を示し、『中国は孤立化し、経済は弱含む』と述べた。さらに『中国による米国の技術盗用は許さない』と言明した。ホワイトハウスのサンダース報道官『中国は報復に出るのではなく、不正な貿易慣行を巡る長期にわたる懸念に対処すべき』との声明を発表した」

     

    先のパラグラフで説明したように、中国の報復関税は「公務執行妨害罪」である。米国は、この一点で同盟国と意思疎通しており内々、中国へ共同行動とる合意を得ていると見られる。すでに、日米欧の3極は、知財権侵害で中国をWTOへ訴える点で調整済みだ。これに、豪州とNAFTA(北米自由貿易協定)加盟のカナダやメキシコが加わって、中国包囲網を引くという話であろう。

     

    中国は、自らの行動がWTOに違反している現実を認識して、謝罪して改めるべきである。この際、民主主議諸国は結束して中国に反省と改善を求めるべきだ。


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    人民元相場が下落している。1ドル=6.845元まで下げるなど、米中貿易戦争の先行きの厳しさを反映したもの。往年の中国経済の輝きは、完全に失った。米国政府は、これと反対に意気軒昂である。

     

    米大統領経済諮問委員会(CEA)のハセット委員長は8月1日、米経済は戦後最長の景気拡大に達するとの認識を示した。「今後5年は毎年3%程度のペースで成長する」と語り、米経済は今後も力強い拡大が続くとした(『日本経済新聞』8月2日付)

     

    弱り目の中国経済に対して、ホワイトハウスのクドロー国家経済会議(NEC)委員長は、次のように語った。『ブルームバーグ』(8月4日付)が、「人民元の下落、劣悪な投資先との評価も反映」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「人民元相場が下落している理由の一つは中国が『劣悪な投資先』だからだとし、中国をこき下ろした。中国は3日、米国の対中追加関税計画が実行された場合、中国は米国からの輸入品に関税を賦課するとして、その対象リストを発表していた。クドロー氏は3日、ブルームバーグテレビジョンのインタビューで、『元安の背景には、中国が劣悪な投資先だから資金が逃げていることもあり、これが続けば中国経済に本当の被害が及ぶと私は思う』と語った」

     

    人民元安は、現象面から言えば「人民元を売って米ドルを買っている」ことである。この背景を、クドローNEC委員長が、ズバリと指摘したもの。「中国が、劣悪な投資先になったから、人民元を売って米ドルに換えて逃げ出した」ことになる。このまま、人民元安が続けば、中国経済の被害が拡大すると警告している。

     

    (2)「クドロー氏は、『中国から資金が逃避した場合、そして通貨はその先行指標となり得るが、中国にとって大変なことになる。よって私は、中国が経済的に弱い立場にあると主張する。中国にとりそのような状況は、向かい合って貿易交渉をする上で適していない』と述べた。さらに『中国経済は成長が鈍化しているように見える。ほぼ全面的に弱まっている。人民銀は強力な資金の追加供給や与信により、景気を押し上げようとしているようだ』と語った」

     

    人民元安は、中国からの資金逃避を示している。これは、中国経済が弱い立場に置かれていることを物語る。金融緩和によって、この状態を改善すべく貸出を増やす工夫をするほど追い込まれている。この状態が、「信用収縮」=「貸し渋り」と呼ぶ。かつての日本経済が、バブル崩壊後に起こった深刻な事態である。日本の経験したあの苦しみが、中国で始まったのだ。楽観できない事態である。

     

    クドロー氏は、「中国にとりそのような状況は、(米国と)向かい合って貿易交渉をする上で適していない」とまで言われている始末だ。つまり、意地を張らずに自らの「技術泥棒」行為を認めて改めよ、と突き付けられている。


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    中国共産党中央政治局会議は7月31日、今年下半期の経済政策について話し合いが行われた。その結果、緩和的な金融政策と積極的な財政政策を実施する方針を示した。一方、当局は、債務圧縮政策を継続し、「住宅価格の上昇」を断固として阻止していくとの姿勢を示した。

     

    この政策転換に対して、中国株式市場は失望を呼び株価は8月1~3日まで大幅な下落となった。欧米メディアは、逆にこの政策転換を評価して中国経済は時間を置いて立ち直るのでないか。そうなると、トランプ政権による「中国圧力」効果が薄れると懸念する報道が出てきた。

     

    株価の上海総合指数は8月1日に前日比1.8%安。2日は、同2%安をつけた。3日は、同1%安の2744ポイントに終わった。現在の上海市場は個人投資家よりも機関投資家の参加率が高いとされている。機関投資家は、総合経済対策が打たれても中国経済の先行きに、米中貿易戦争の影響が待っている。そう強く見ている証明であろう。

     

    中国経済は、輸出が経済成長率に大きく寄与していると誤解されている。輸出から輸入を差し引いた純輸出のGDP寄与度はマイナスの時期が多いという意外な結果が出ている。

    次に、その実績を示したい。

    2011年 -0.8%ポイント

      12年  0.2%ポイント

      13年 -0.1%ポイント

      14年  0.3%ポイント

      15年 -0.1%ポイント

      16年 -0.6%ポイント

      17年  0.6%ポイント

      18年 -0.7%ポイント(1~6月)

     

    上記のデータを見れば、輸出が中国のGDPを引っ張り上げる力は弱い。加工貿易構造になっているために、付加価値率が低い産業構造である。ここから、「中国製造2025」というハイテク産業計画が登場した理由である。だが、先進国の技術窃取という「技術泥棒」による産業構造高度化計画は許されるものでない。中国は、この辺が見境なく、手当たり次第やるので米国を初め先進国から反発を受けている。

     

    本格的な米中貿易戦争に突入すれば、中国輸出はますます減る。純輸出のGDP寄与度は一段とマイナス幅を拡大させるはずだ。この中で、インフラ投資依存というこれまで使い古した方法を引っ張り出しても効果は薄いはずだ。インフラ投資を行なった時点ではGDPを押上げるが、リターンの少ないインフラ投資では収益性が低く、利益による債務返済は不可能だ。インフラ投資をやればやるほど、債務が膨らむ悪循環にはまる。これまで、中国が過剰債務を抱えた理由は、全てここにある。

     

    共産党中央政治局会議が7月31日に決めたことは、過去の繰り返しで債務によるインフラ投資の継続・拡大である。債務削減を一時的に中止し、先へ繰り延べるという決定に過ぎないのだ。西側メディアは、この借金漬けインフラ投資の効果が大きいと見ているが、それは誤解だ。インフラ投資に効果があれば、債務拡大という悪循環は起こるはずがなかった。中国のインフラ投資は、極めつけの「非効率投資」であることは間違いない。何ら、評価にも値しない代物である。

     

    金融政策も「窓口指導」の復活をするという。日本の高度経済成長時代、資金不足のために、日銀が市中銀行ごとに貸出枠を指示した制度である。中国人民銀行は、この「窓口指導」を利用するが主旨は全く異なる。主要銀行ごとに「貸出増加枠」を決めて実行させるのだ。日銀は、「貸出抑制枠」に使った。同じ「窓口指導」でも中身は180度異なる。

     

    中国人民銀行が、ここまでやって貸出を増やそうとする理由は、銀行が貸出しに慎重であるからだ。確実に回収できるか分らない相手企業に融資するはずがない。すでに、「信用収縮」が起こっている。放っておけば新規融資は減るばかりだ。末端の信用状態は、ここまで悪化している。そこで、銀行に新規融資の「割り当て」をして貸出を増やせ、と言っているもの。この辺りの事情が分れば、中国経済が政策転換で蘇る期待は限りなくゼロに近いはずだ。

     

    上海総合株価指数が3日連続で安値を更新した事情は、こういうものであったはずだ。ブルームバーグの集計データによると、中国株は8月2日の下落で時価総額が6兆900億ドル(約680兆円)に目減りした。これに対して日本株は6兆1700億ドルで、ついに日本が時価総額で中国を抜いて、再び世界2位の座に立ち戻った。これは、象徴的な話であろう。中国が、時価総額2位の座を滑り落ちた。日本が復活したのだ。

     

     


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