勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    4月8日、ソウル市長補欠選開票の最終得票率は、次の通りである。

    「国民の力」の呉世勲(オ・セフン)候補    57.50%

    「共に民主党」の朴映宣(パク・ヨンソン)候補 39.18%

     

    釜山市長補欠選挙開票の最終得票率は、次の通りである。

    「国民の力」の朴亨ジュンパク・ヒョンジュン)候補 62.67%

    「共に民主党」の金栄春(キム・ヨンチュン)候補   34.42%

     

    文大統領は、4年間の政権審判によって、上記のように大敗を喫した。ソウル・釜山の二大市長選で野党候補が大差で勝利を収めたからだ。与党敗因の理由は、言行不一致にある。美辞麗句を並べてきたが、その裏では露骨な私益を追い求める醜い姿が晒された。不動産投機が、その最たるケースである。与党議員でも10名ぐらいが、公共住宅建設予定地情報を事前に入手し土地投機を行い莫大な利益を収めたとされている。

     


    これら土地投機を行なった議員は、いずれ司直の手によって裁かれるが、議員資格を失うだろう。『ハンギョレ新聞』(4月8日付)によれば、与党「共に民主党」は国会で絶対多数を失うかも知れないと、悲観的である。

     

    『中央日報』(4月8日付)は、「ソウル・釜山市長選 韓国大統領府、予想越える大敗に衝撃 174議席でもレームダック不可避」と題する記事を掲載した。 


    (1)「青瓦台内部的では選挙敗北自体より予想よりも大きな得票率の差に衝撃を受けた様子だ。与党の核心関係者はこの日、中央日報の電話取材に対して「ソウルでこのような票差で負けたのは、2007年大統領選挙以上の完敗」とし「事実上、文大統領は与党の圧倒的議席(174議席)と関係なく野党が反対することを強行しにくい環境に直面することになった」と話した」

     

    文政権は事実上、野党の反対する法案を強行議決できなくなるとの予測が出てきた。つまり、レームダック化である。4月7日を境にして、韓国の政治状況は大きく変わった。



    (2)「事実、青瓦台は選挙終盤に入り敗北を予想したという。「今回負けることが来年の大統領選挙に役立つ」という話が出たりもした。政務首席室を中心に選挙敗北に備えた対応戦略も議論した。青瓦台関係者は「選挙に敗れるという前提下で、不動産など主要政策課題を推進する方案を模索してきた」とし「だが、予想を越える大きな敗北のせいで、今後は何をしても容易ではないという気がする」と話した。また別の関係者は「静かに任期を終えること以外に今は他に何があるか。政権再創出にも赤信号がついたことを認めざるを得ない」と話した」

     

    文政権は、このまま何もできず「静かに任期を終える」というのである。無論、来年の大統領選も赤信号である。政権は野党に移るという最悪事態を想定し始めた。



    (3)「青瓦台はレームダックをやむをえず受け入れる雰囲気だ。民主党でも文大統領と距離を置こうとする雰囲気が顕著になりつつあるからだ。与党の核心人物は「文大統領が与党の過ちで行われる補欠選挙に候補を出すように黙認したことから責任があるのではないか」とし「チョ・グク事態、秋美愛(チュ・ミエ)事態、青瓦台参謀の投機問題などの根底には文大統領の意地があった」とした」

     

    与党の中でも、文大統領と距離を置こうという動きが始まっている。次期大統領候補選びで「自由度」を得ようという思惑である。歴代大統領は、任期最後の年にこういう「苦杯」を舐めさせられてきた。

     

    それにしても、文大統領は判断を誤ったケースが多い。「チョ・グク問題、秋美愛問題、青瓦台参謀の投機問題」など、早めに手を打てばこれほど傷を深くすることもなかったであろう。「我」を張りすぎたのだ。



    (4)「文大統領が、現在の政策基調を大々的に修正する可能性は低いという観測が優勢だ。青瓦台の事情に明るい与党要人は、「不動産供給や防疫対策など計画した政策成果を早く出すこと以外に妙策はあるだろうか」と話した。また他の関係者も「文大統領の性格上、国政哲学を変えることはほぼないが、このような姿が与党圏でも『マイウェイ』に映るのではないか懸念される」と話した」

     

    文氏は、柔軟性に欠ける性格である。一度決めたらテコでも動かないという意固地さが、国民から呆れられた理由である。「機を見るに敏」ではなさそうだ。行き着くところまで行って痛い目を見るタイプだ。


    (5)「一部では、文大統領が南北対話で任期終盤の局面転換を試みるのではないかという観測もある。しかし、北朝鮮は文大統領が対話再開の分岐点として期待を寄せてきた東京オリンピック(五輪)に参加しないことを決めた。バイデン米国大統領もトランプ前大統領とは違い、北朝鮮との対話に冷静なスタンスだ」

     

    文氏が南北対話に拘っているのは、「行き着くところまで行って痛い目を見る」タイプの通弊であろう。四囲の状況から見て、絶望的であることは間違いない。肝心の北朝鮮の金正恩氏が、会談に乗り気でないのだ。米国側も否定している。諦めるほかないであろう。 

     

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    中国当局は、1月1日より住宅ローンと不動産開発企業への融資枠を絞り、不動産バブルの沈静化に努めてきた。今年の潜在的危機のトップに、金融危機が上げられてきたほどだ。それが、ついに現実の問題となって表れて来た。

     

    『ロイター』(4月4日付)は、「中国の小都市で住宅バブル崩壊危機、金融システムリスクの懸念」と題する記事を掲載した。

     

    中国河北省の中小都市、タク州市にあるマンションの1室を購入したズーさんは、北京まで通勤できる鉄道を建設する約束を開発業者が果たさなかったため、住宅ローンの支払いを打ち切った。会計の仕事をしながら補償請求運動をしているズーさんを含め、3人の買い手にロイターが話を聞いたところ、業者の対応に腹を立てて昨年ローンの支払いをやめた買い手は1000人前後に上る。

     

    一方、中国南西部の雲南省にある風光明媚(めいび)な都市、大理市では、小規模企業経営者のリーさんが、2年余りもマンション住宅引き渡しで待ちぼうけを食わされている。現在は両親も同居する形で家族が狭い借家に暮らすリーさん。「開発業者は2018年末から都合4回も引き渡しを延期している。彼らへの信頼は、もう完全に失せた」とあきれ顔だ。

     

    (1)「ロイターは、タク州市のマンションを開発した上海株式市場上場の華夏幸福基業股分有限公司にもコメントを求めたが、回答はない。この会社は約57億ドルの債務でデフォルトを起こした、と報じられている。ズーさんやリーさんの苦労の背景には、中小都市で商売をする不動産開発業者が多額の債務を抱えて、どんどん首が回らなくなっているという状況がある」

     

    中小都市の不動産開発業者は経営危機に直面している。後のパラグラフで示されているが、恒常的な人口流出に悩み、地元経済の先行きが暗いという共通項を抱えている。日本経済が1990年代以降に経験したことが始まっている。

     

    (2)「業者の多くは、不動産市場が過熱気味だった16年から18年にかけて野放図な借り入れを進めた結果、今になって過剰債務と需要急減、規制厳格化という「三重苦」に見舞われている。アナリストによると、こうした問題はより小規模な都市に限定されている。大都市の需要は衰え知らずのため、大手の上場不動産開発業者の事業は引き続きうまく回るだろうという」

     

    経営危機の企業は、過去の不動産バブル期に多額の債務を抱えたことが命取りになっている。バブル現象に目が眩んだ結果である。

     


    (3)「一方で、今後は不動産セクターのデフォルトが増加し、金融機関や地方政府にも悪影響が及ぶのではないかとの懸念も示している。上海の不動産コンサルティング会社、同策房産諮詢のシニアアナリスト、ソン・ホンウェイ氏は「恐らく今年はデフォルトが増え、市場はどの業者の債務が多く、どの業者の案件が小規模な都市に集中しているかを見極めようとするはずだ」と述べた」

     

    不動産企業のデフォルト増加は、金融機関や地方政府に波及する。中国政府が危機感を持っているのは、こういう事情が起こっているからだ。金融機関は不良債権を抱え、地方政府は土地売却収益の減少で財源不足に見舞われる。

     

    (4)「中国国家金融・発展実験室(NIFD)のデータによると、昨年の不動産開発セクターの社債デフォルトは、前年から4倍増の266億元。今年も3月半ばまでに、華夏幸福基業の案件を筆頭に87億元に達したとされる。不動産開発セクターで今年に返済期限を迎える国内市場とオフショア市場の社債総額は、さらに42%増える見込み。規模では過去最大の9000億元に達する見通しだ」

     

    中国当局のデータによれば、昨年の不動産開発セクターの社債デフォルトは、前年から4倍増の266億元(約4442億円)である。今年も3月までで87億元(約1452億円)で、年間ベースでは5811億円となり、昨年の30%増になろう。

     


    (5)「こうした業者によるデフォルトの危険性によって生じる潜在的な金融システムリスクをアナリストらは懸念する。しかし、そのリスクがどれぐらいの大きさか見極めるのは至難の業だという。北京のZhixin Investment Research Instituteのエコノミストチームは、リポートで「借入比率が大きく、資本回転率が低調な一部の不動産業者は、短期債務返済の面で相対的に高い圧力に直面している。引き締め的な金融環境が今後、資金繰りのひっ迫につながり、不動産業者から信託基金、第三者の理財商品運用業者にまたがるクロスデフォルト(デフォルトの連鎖)が起きる可能性がある」と警告した」

     

    中国当局は、住宅バブル抑制に動いている。借入比率が大きく、資本回転率が低調な一部の不動産業者は、資金繰りに窮する事態になろう。長年のバブルを放置してきたので、後始末は尋常でない。来るべきもの来たのだ。

     


    (6)「ロイターが政府統計に基づいて計算したところ、中国全体で見れば住宅価格はなお上昇基調を維持しており、昨年の上位70都市の平均上昇率は4.9%だった。ところが、中国社会科学院のデータでは、最も規模が小さい19都市の住宅価格は、ピークだった17年と18年に比べて2桁の下落率を記録した。恒常的な人口流出に悩み、地元経済の先行きが明るくない多くの小規模都市では、住宅在庫が40カ月超分の販売数に匹敵する水準まで積み上がっていることが、調査会社CRICのデータで確認できる。別のアナリストは、開発業者が支出を抑えることで新規開発プロジェクトの落ち込みが長期化すれば、土地売却で資金を調達する傾向のある地方政府が、債務返済能力で影響を受けるのではないかとみている」

     

    下線を引いた小都市は、人口流出に悩み住宅在庫が40ヶ月を超え、販売数に匹敵する事態を迎えている。この現象は、やがて大都市へ波及するはずだ。大都市でも2割が空き家(投機用住宅)になっている。すでに、実需で見た住宅需要は超過供給である。危機状態に突入していると言える。

     

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    若者の期待裏切る文在寅

    家計破綻に追い込まれる

    出産望まずが過半占める

    党派を超えて公正が基軸

    次期政権は野党が獲得へ

     

    ソウル市の有権者数は、韓国全体で23%を占める。ソウル市長選は、来年3月の大統領選を占う意味でも関心を集めてきた。前ソウル市長は、与党民主党出身であったが、セクハラ問題で自死した結果を受けた選挙である。

     

    選挙結果は、野党候補の呉氏が大差で当選した。事前の世論調査でも「野党優勢」という結果が出ていたので番狂わせは起こらなかった。同時に行なわれた韓国第二の都市である釜山市でも市長選が行なわれた。釜山市も、セクハラ問題で与党出身市長が辞任。その後任選挙となった。こちらも、野党候補が大差で当選を果たした。

     

    昨年4月の総選挙では、与党が議席の6割を占める圧倒的な勝利を収めた。その一年後に、皮肉にも今度は与党が大敗したのはなぜか。それは、文政権が、強引は政権運営を行なったからにほかならない。進歩派与党が、野党を完全無視の議会運営を行なったのだ。これが、国民の厳しい審判を招くことになった。

     

    常識から言えば、進歩派は民主的な議会運営を行い、民意を十分に汲んだ丁寧な政権運営を想像する。韓国の与党「共に民主党」は、こういう常識からかけ離れた民族主義的保守派である。朴槿惠(パク・クネ)前大統領が国政壟断で弾劾された後の政権ゆえに、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の施策に大きな期待が掛かっていた。それが、前述のような「暴走政権」になって、期待は絶望に変わったのである。

     


    若者の期待裏切る文在寅

    今回のソウル市と釜山市の市長選は、そういう国民の絶望感を示したと見るべきだろう。ソウル市長選では、これまで文政権支持の核であった20~30代が、野党候補の選挙カーへ志願して同乗し、演説する従来にない光景を見せた。若者と言えば、進歩派候補を応援するというこれまでの姿が一変した。

     

    野党「国民の力」は、ソウルで3月27日から若い有権者を遊説車両へ乗せ演説させた。「20~30世代市民参加遊説団」と称して実行したのだ。一日平均で、20人程の演説が続いたと報じられている。本来は、進歩派が行なうべきことを、保守派が先行した。

     

    以下は、『中央日報』(4月6日付)から引用した。

     

    1)野党候補支持の演説を志願した大学生(20歳)は、次のように訴えた。

    「ソウル市は大統領の次に最も重要な地位」とし「民主党にソウル・釜山(プサン)市長を任せた過去の日を思い出してほしい。公共医療、粒子状物質、民主主義がすべて退歩した」と主張した。

     


    2)野党候補応援の大学院生(26歳)は、生活苦を率直に訴えた。

    「私の友人は5坪にもならないワンルームで50万ウォン(約4万5000円)、60万ウォン(約5万4000円)を出して暮らしている。昨年までは家賃を払っても暮らすことができたが、今は不動産価格が上がって、家賃を支払えば残るお金はなく貯蓄することもできない」と話した。

     

    上記二つの演説は、若者の危機感を率直に訴えている。

    要約すれば、民主主義の危機と生活の危機である。進歩派政権の下で民主主義の危機とは、極めて奇異なことである。これは、先述の通り韓国進歩派は、革新派でなく民族主義の一派であることだ。北朝鮮へ異常なまでの譲歩を重ねる裏には、自由と民主主義を犠牲にしてでも、民族統一を実現したいという強い欲求が存在する。はっきり言えば、韓国が共産化してもいいから南北を統一したいのである。

     

    文政権支持者に、米軍は朝鮮戦争で中朝軍と戦ったことで、南北統一を妨げたと考える層が多い。マッカーサーは、仁川へ奇襲上陸し北朝鮮軍の補給路を断ち、戦況を一変させた。これが、韓国を敗戦寸前から救ったのである。仁川には、マッカーサーの偉業を称える「銅像」が建てられている。進歩派はこれを不快に思い、ペンキを塗ったり、放火する事件が跡を絶たない。これでは、韓国で戦死した3万6524人の米軍兵士の霊も浮かばれまい。韓国を救った米国を恨む異常心理である。

     


    文政権によって生活苦が進んだことも事実である。2018~20年にかけて最低賃金を30%余も引上げたことが、雇用情勢を急速に悪化させた。最低賃金は、雇用主が守らないと罰せられる。生産性上昇を上回る最低賃金の引上であったので、雇用主はやむなく解雇せざるを得なかった。こうして、文政権下で3年間も最賃嵐が吹き荒れ、失業者を増やしたのである。まさに経済的人災である。(つづく)

     

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    2021-04-01

    メルマガ245号 文在寅「天誅下る」 次期大統領選は野党勝利 政権交代で「被告席」

     

    テイカカズラ
       

    4月に入って、ソウル・釜山の市長選に関する世論調査で、与党候補が不利であることが一層はっきりしてきた。それに伴い、与党内では「敗戦」がもたらす来年の大統領選の暗い影に怯え始めているという。今後、民主党政権を20年、50年継続させるという夢は急速に萎んできた。

     

    『中央日報』(4月7日付)は、「真朴鑑別師と親文候補論」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のソ・スンウク政治チーム長である。

     

    権力の非情は多くの逆説とアイロニーも生み出している。いわゆる「積弊捜査」で李明博(イ・ミョンバク)元大統領と朴槿恵(パク・クネ)前大統領を監獄に送った、「保守の時代」に終止符を打った尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検察総長が現在、保守層の圧倒的な支持を受けている。

     


    (1)「李元大統領と朴前大統領を輩出した保守の心臓のTK(大邱・慶北)は尹前総長の牙城になりつつある。李元大統領の青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)参謀を務めた政治家さえもためらわず「尹錫悦大統領づくりに力を注ぐ」と話す。敵の敵は味方であり、現政権を倒すためには過去の敵とも手を握るという心情であるようだ。わらをもつかむという怒りで保守勢力は復讐の刀を研いでいる」

     

    ユン前検察総長は、李明博元大統領と朴槿恵前大統領の捜査を行い、2人の大統領経験者を起訴した。このユン氏が、文政権で権力の不正を暴こうとして「迫害」され、ついに辞職の道を選んだ。保守派は次期大統領候補に、このユン氏に白羽の矢を立てている。ユン氏が、文政権でも職務に忠実であったことを買っているのだ。まさに、「恩讐を超えて」という立場である。

     


    (2)「一方、権力の味を知った与党は追われる立場だ。この人たちは一度握った権力を逃した時にどんなことが起きるかを非常によく知っている。「朝鮮第22代王の正祖が死去した1800年からの220年間、金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の執権10年を除いては改革勢力が執権したことはない。偏向性に対する復元を図るには20年は着実に執権しなければいけない」「今後、民主党が大統領10人をさらに当選させるべき」という李海チャン(イ・ヘチャン)元代表発の「20年執権論」「50年執権論」もこうした危機感の表れだ。20年、50年どころか、わずか4年にすぎないが、政権を逃した瞬間に崖っ縁に立つことは彼らも李元大統領もよく知っている」

     

    李海チャン(イ・ヘチャン)元民主党代表は、「20年執権論」「50年執権論」を吹聴して、積弊一掃を派手にやってきた。だが、ソウル市・釜山市の市長選に見せた世論の逆風によって、民心がすでに文政権を離れていることを知った。それだけに、慌て始めたのだ。

     


    (3)「
    特にソウル・釜山(プサン)市長補欠選挙の成績表を待つ「親文(在寅)」勢力の動きが尋常でない。回顧録を執筆中と話していた李海チャン元代表も選挙を控えてすでにリングに再登場した。党内では「李在明(イ・ジェミョン)や李洛淵(イ・ナギョン)の代わりに文在寅大統領に最後まで忠誠をつくす本物の親文派大統領候補を擁立する」という、いわゆる「親文第3候補論」に火がつく状況だ。丁世均(チョン・セギュン)首相と金慶洙(キム・ギョンス)慶尚南道知事が「予備候補群」に挙がると、「制度圏の政界を離れて元の場所に戻る。今後の時間はまた統一運動にまい進したい」として政界引退を示唆した人物の名前も言及されている」

     

    民心が政権を離れていることは、世論調査で明らかになっている。これから、文大統領はレームダック化が懸念される段階へ足を踏み入れる。次期大統領候補選びが始まる中で、過去もそうだったが、与党の関心事は大統領の意向よりも次期大統領候補に向かう。ここで、現大統領「忠臣」が現れて、与党内をかき回す事態になる。いわゆる「親文在寅」が現れるのだ。元民主党代表の李海チャン氏が、「親文派」を引き連れて騒ぎを起こすのでないかと見られ始めた。韓国政治は、ガタガタになるのだ。国会での絶対多数が、一挙に弱体化して行くのである。

     


    (4)「国民とは異なる現実を生きているのだろうか。
    大統領支持率は30%序盤まで落ち、4年間蓄積した国政運営の荷物は補欠選挙世論調査数値にそのまま反映されている。こうした状況で出てくる「親文第3候補論」に拍手をして共感する人はどれほどいるだろうか。似た状況を5年ほど前に見たことがある。2016年の総選挙を控えて、いわゆる「真朴(真の親朴槿恵派)鑑別師」という腕章をつけた人たちがあたかも閻魔のように恐ろしい顔で登場した。自分たちはすべて正しく、他の人々はすべて間違っているという鳥肌が立つような二分法だった」

     

    文大統領支持率は、すでに32%まで落ち込んでいる。中道派が支持から、不支持に回った結果だ。文大統領は、ユン前検察総長を辞任へ追込むべく、あの手この手を使っていたころが、最後の「華」であった。過ぎ去ってみれば、権力は一場の夢である。儚いものだ。

     

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    あじさいのたまご
       

    韓国文大統領は、東京五輪を舞台に南北会談構想を練ってきたが、北朝鮮の不参加決定で水の泡になった。韓国与党では、来年2月の北京冬季五輪に期待を繋ぐ向きもある。ただ、来年5月退任の文大統領と会談しても、実効は期待できない。となれば、東京五輪での南北接触が不可能になったことで、文大統領の4度目の南北首脳会談は事実上、消えたと言える。

     

    『朝鮮日報』(4月7日付)は、「北朝鮮『東京オリンピックに参加しない』、文大統領の南北構想に狂い」と題する記事を掲載した。

     

    北朝鮮が6日、東京オリンピック・パラリンピックへの不参加を宣言した。これによって北朝鮮をオリンピックに参加させ、「南北関係の改善」から「米朝対話の再稼働」へとつなげたかった文在寅(ムン・ジェイン)大統領のいわゆる「平昌アゲイン構想」も水の泡になった。外信(ロイター)は「北朝鮮が韓国の希望を打ち砕いた」と報じた。

     

    北朝鮮体育省は同日、「共和国オリンピック委員会は総会(3月25日)で、悪性ウイルス感染症(コロナ)による世界的な保健危機状況から選手たちを守るため、オリンピック競技大会に参加しないことを討議・決定した」と発表した。南北は東京オリンピック・パラリンピックで女子バスケットボール、男女のボート、男女の柔道、女子ホッケーで合同チームを組む方向ですでに合意していた。

     

    (1)「大統領府はいわゆる「ハノイ・ノーディール(米朝首脳会談決裂)」以降、完全に行き詰まり状態にある米朝関係を改善させるため、東京五輪を積極的に活用する計画を進めていたようだ。北朝鮮の平昌冬季五輪参加を通じて実現した南北の高官級による交流を通じ、その後南北首脳会談から米朝首脳会談まで一気に実現させた「2018平昌の春」をもう一度繰り返すという構想だった。そのために強行一辺倒だった対日政策も大きく見直した。文大統領は先日の三・一節における演説で「東京五輪は韓日間、南北間、朝日間、そして朝米間の対話のチャンスになり得る」として「韓国は東京五輪の成功に向け協力したい」との考えを示していた」

     

    南北首脳会談は、2018年4月、5月、9月と続けて行なわれた。雪解けムードが一気に高まった。文大統領の人気が最も高まった時期である。半年間に3度も南北首脳会談が行なわれたことは、韓国が北朝鮮へ相当に深い約束をしたと見られる。それが、ことごとく実施できなかったので、北朝鮮の受けたショックも大きいであろう。北朝鮮が、4度目の会談に応じる可能性は小さい。

     

    (2)「北朝鮮はオリンピック不参加の口実として「選手保護」を挙げたが、実際は「韓国への圧力」という側面が大きいとの分析もある。かつて国家安保戦略研究院長などを歴任した劉性玉(ユ・ソンオク)氏は、「韓米連合訓練の完全中断といった根本問題の解決なしには南側に会わないということだ」との見方を示した。北朝鮮が先月25日に下した不参加の決定を12日も過ぎてから公表したことも、このような見方を後押ししている。韓国政府の安保部処(省庁)関係者は「与党勢力にとって悪材料となる知らせがよりによって補欠選挙の前日に発表された。これは韓国に対する高度な心理戦だ」との見方を示した」

     

    北朝鮮は、米韓軍連合訓練の完全中断を要求している。これが実現しなければ、南北首脳会談に応じない姿勢と見られる。日本が、韓国の国際法違反判決を自国で解決せよ、と要求しているようなものである。北朝鮮と日本の主張は無関係だが、韓国は簡単に答えの見つからないだけに苦しい立場である。

     

    米韓軍連合訓練の完全中断は、北朝鮮が核開発を中止することと同等の重みを持っている。韓国は、なぜそのことを北朝鮮に伝えて核開発中止と核放棄を迫らないのか。ただ、南北が会談しても解決の糸口は見つかるはずがない。

     


    (3)「それでも韓国政府は文大統領の任期中に南北関係改善のモメンタム(勢い)を取り戻すことを諦めていない。韓国統一部の関係者は「韓半島の平和、そして南北による対話と協力が可能となるきっかけを探し求める政府の立場に変わりはない」とした上で「今後もそのきっかけを見いだすための努力を続けていくだろう」と述べた。

     

    南北問題は、今や米中問題になっている。韓国は、「南北関係改善のモメンタム(勢い)を取り戻す」と言っているが無駄なことだ。国際情勢の急変を見落としている。

     

    (4)「与党などからは、「現実的に考えて北京冬季五輪が南北関係改善の最後のチャンスだ」との見方も出ている。平昌、東京、北京での五輪については文大統領も昨年8月15日の演説で「史上初めて迎える東アジアでのリレー・オリンピックだ」として「東アジアが友好と協力の土台を固め、共同で繁栄する道へと進む絶好の機会だ」と呼び掛けていた」

     

    北朝鮮は、来年2月の北京冬季五輪で南北首脳会談に応じるだろうか。その可能性はゼロであろう。残り任期2~3ヶ月しかない文大統領を相手に、会談する意味がないのだ。韓国の外交センスはずれていると言うほかない。

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