4月8日、ソウル市長補欠選開票の最終得票率は、次の通りである。
「国民の力」の呉世勲(オ・セフン)候補 57.50%
「共に民主党」の朴映宣(パク・ヨンソン)候補 39.18%
釜山市長補欠選挙開票の最終得票率は、次の通りである。
「国民の力」の朴亨ジュンパク・ヒョンジュン)候補 62.67%
「共に民主党」の金栄春(キム・ヨンチュン)候補 34.42%
文大統領は、4年間の政権審判によって、上記のように大敗を喫した。ソウル・釜山の二大市長選で野党候補が大差で勝利を収めたからだ。与党敗因の理由は、言行不一致にある。美辞麗句を並べてきたが、その裏では露骨な私益を追い求める醜い姿が晒された。不動産投機が、その最たるケースである。与党議員でも10名ぐらいが、公共住宅建設予定地情報を事前に入手し土地投機を行い莫大な利益を収めたとされている。
これら土地投機を行なった議員は、いずれ司直の手によって裁かれるが、議員資格を失うだろう。『ハンギョレ新聞』(4月8日付)によれば、与党「共に民主党」は国会で絶対多数を失うかも知れないと、悲観的である。
『中央日報』(4月8日付)は、「ソウル・釜山市長選 韓国大統領府、予想越える大敗に衝撃 174議席でもレームダック不可避」と題する記事を掲載した。
(1)「青瓦台内部的では選挙敗北自体より予想よりも大きな得票率の差に衝撃を受けた様子だ。与党の核心関係者はこの日、中央日報の電話取材に対して「ソウルでこのような票差で負けたのは、2007年大統領選挙以上の完敗」とし「事実上、文大統領は与党の圧倒的議席(174議席)と関係なく野党が反対することを強行しにくい環境に直面することになった」と話した」
文政権は事実上、野党の反対する法案を強行議決できなくなるとの予測が出てきた。つまり、レームダック化である。4月7日を境にして、韓国の政治状況は大きく変わった。
(2)「事実、青瓦台は選挙終盤に入り敗北を予想したという。「今回負けることが来年の大統領選挙に役立つ」という話が出たりもした。政務首席室を中心に選挙敗北に備えた対応戦略も議論した。青瓦台関係者は「選挙に敗れるという前提下で、不動産など主要政策課題を推進する方案を模索してきた」とし「だが、予想を越える大きな敗北のせいで、今後は何をしても容易ではないという気がする」と話した。また別の関係者は「静かに任期を終えること以外に今は他に何があるか。政権再創出にも赤信号がついたことを認めざるを得ない」と話した」
文政権は、このまま何もできず「静かに任期を終える」というのである。無論、来年の大統領選も赤信号である。政権は野党に移るという最悪事態を想定し始めた。
(3)「青瓦台はレームダックをやむをえず受け入れる雰囲気だ。民主党でも文大統領と距離を置こうとする雰囲気が顕著になりつつあるからだ。与党の核心人物は「文大統領が与党の過ちで行われる補欠選挙に候補を出すように黙認したことから責任があるのではないか」とし「チョ・グク事態、秋美愛(チュ・ミエ)事態、青瓦台参謀の投機問題などの根底には文大統領の意地があった」とした」
与党の中でも、文大統領と距離を置こうという動きが始まっている。次期大統領候補選びで「自由度」を得ようという思惑である。歴代大統領は、任期最後の年にこういう「苦杯」を舐めさせられてきた。
それにしても、文大統領は判断を誤ったケースが多い。「チョ・グク問題、秋美愛問題、青瓦台参謀の投機問題」など、早めに手を打てばこれほど傷を深くすることもなかったであろう。「我」を張りすぎたのだ。
(4)「文大統領が、現在の政策基調を大々的に修正する可能性は低いという観測が優勢だ。青瓦台の事情に明るい与党要人は、「不動産供給や防疫対策など計画した政策成果を早く出すこと以外に妙策はあるだろうか」と話した。また他の関係者も「文大統領の性格上、国政哲学を変えることはほぼないが、このような姿が与党圏でも『マイウェイ』に映るのではないか懸念される」と話した」
文氏は、柔軟性に欠ける性格である。一度決めたらテコでも動かないという意固地さが、国民から呆れられた理由である。「機を見るに敏」ではなさそうだ。行き着くところまで行って痛い目を見るタイプだ。
(5)「一部では、文大統領が南北対話で任期終盤の局面転換を試みるのではないかという観測もある。しかし、北朝鮮は文大統領が対話再開の分岐点として期待を寄せてきた東京オリンピック(五輪)に参加しないことを決めた。バイデン米国大統領もトランプ前大統領とは違い、北朝鮮との対話に冷静なスタンスだ」
文氏が南北対話に拘っているのは、「行き着くところまで行って痛い目を見る」タイプの通弊であろう。四囲の状況から見て、絶望的であることは間違いない。肝心の北朝鮮の金正恩氏が、会談に乗り気でないのだ。米国側も否定している。諦めるほかないであろう。